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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ソーラーシェアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/20 20060101AFI20230912BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230912BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230912BHJP
   H02S 20/10 20140101ALI20230912BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230912BHJP
【FI】
A01G9/20 B
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H02S20/10 C
H02S20/10 T
H01M8/12 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020152130
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046201
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2021-04-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】310011549
【氏名又は名称】株式会社光エンジニア
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】江部 巳春
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】津熊 哲朗
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-258390(JP,A)
【文献】登録実用新案第3152366(JP,U)
【文献】特開2015-17489(JP,A)
【文献】実開昭47-8627(JP,U)
【文献】中国実用新案第209861782(CN,U)
【文献】特開2003-250358(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-123130(KR,A)
【文献】特開2009-12849(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-11410(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00-7/06
A01G 9/14-9/26
H01M 8/00
H01M 8/04
H01M 8/12
H02S 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を栽培する農地に設置される複数の支柱及び屋根材からなる架台と、該架台に太陽電池モジュールを備えてなり、上記架台の屋根材の屋根勾配の軒先部分に雨樋装置を配置し、上記農地に該雨樋装置からの雨水を貯留する貯水槽を設置し、雨樋装置と貯水槽との間に縦樋が設けられ、貯水槽に補助の水道水を供給する水路管及び溢流管を設け、該架台に作物に栽培用のLED光を照射するLED栽培装置を設置し、上記貯水槽に水中ポンプを設置すると共に該作物に該貯水槽の水を供給する複数個の散水ノズルを該架台に配置してなる散水栽培装置を設置し、該架台に空気供給源に接続された空気噴出管を設置すると共に該架台と該農地との間を該架台に設置した空気噴出管の噴出穴からの空気流で遮断して栽培空間を形成するエアーカーテン装置を配置し、該太陽電池モジュールからの直流電力を交流電力に変換するPVインバータ及び、電力会社からの電気を買ったり、太陽光発電で余った電気を余剰電力として売電したりする際の電力系統との連係保護機能並びに、災害や雷などによる停電時でも太陽光発電の電気を使用できる自立運転機能を備えてなるパワーコンディショナを配置し、水素ガスにより発電する燃料電池を配置し、上記太陽電池モジュールからの電力により水素ガスを発生させる水素ガス発生装置を配置し、該水素ガス発生装置からの水素ガスを上記燃料電池に供給し、上記栽培空間に複数個の温水管及び循環管を配置し、該燃料電池から排出される温水を貯留する温水タンクを配置し、該温水タンク内の温水をポンプにより該温水管及び循環管で循環させ、該温水を利用して上記栽培空間を温室化する温水循環装置を配設し、該燃料電池からの電力を上記LED栽培装置、上記散水栽培装置、上記エアーカーテン装置及び温水循環装置に供給してなることを特徴とするソーラーシェアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業と太陽光発電を同時に行うソーラーシェアリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のソーラーシェアリングシステムとして、作物を栽培する農地に設置される架台と、架台に太陽電池モジュールを備え、上記架台に雨樋装置を配置し、架台に作物にLED光を照射するLED栽培装置及び作物に散水する散水栽培装置を設置してなる構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3192984号
【文献】特許第5960332号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来構造の場合、作物に対する雨水利用及び、架台と農地との間の栽培空間の温室化並びに、上記LED栽培装置、上記散水栽培装置の電力の確保に不十分なことがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、作物を栽培する農地に設置される複数の支柱及び屋根材からなる架台と、該架台に太陽電池モジュールを備えてなり、上記架台の屋根材の屋根勾配の軒先部分に雨樋装置を配置し、上記農地に該雨樋装置からの雨水を貯留する貯水槽を設置し、雨樋装置と貯水槽との間に縦樋が設けられ、貯水槽に補助の水道水を供給する水路管及び溢流管を設け、該架台に作物に栽培用のLED光を照射するLED栽培装置を設置し、上記貯水槽に水中ポンプを設置すると共に該作物に該貯水槽の水を供給する複数個の散水ノズルを該架台に配置してなる散水栽培装置を設置し、該架台に空気供給源に接続された空気噴出管を設置すると共に該架台と該農地との間を該架台に設置した空気噴出管の噴出穴からの空気流で遮断して栽培空間を形成するエアーカーテン装置を配置し、該太陽電池モジュールからの直流電力を交流電力に変換するPVインバータ及び、電力会社からの電気を買ったり、太陽光発電で余った電気を余剰電力として売電したりする際の電力系統との連係保護機能並びに、災害や雷などによる停電時でも太陽光発電の電気を使用できる自立運転機能を備えてなるパワーコンディショナを配置し、水素ガスにより発電する燃料電池を配置し、上記太陽電池モジュールからの電力により水素ガスを発生させる水素ガス発生装置を配置し、該水素ガス発生装置からの水素ガスを上記燃料電池に供給し、上記栽培空間に複数個の温水管及び循環管を配置し、該燃料電池から排出される温水を貯留する温水タンクを配置し、該温水タンク内の温水をポンプにより該温水管及び循環管で循環させ、該温水を利用して上記栽培空間を温室化する温水循環装置を配設し、該燃料電池からの電力を上記LED栽培装置、上記散水栽培装置、上記エアーカーテン装置及び温水循環装置に供給してなることを特徴とするソーラーシェアリングシステムにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、作物を栽培する農地に複数の支柱及び屋根材からなる架台が設置され、架台に太陽電池モジュールが配置され、架台の屋根材の屋根勾配の軒先部分に雨樋装置が配置され、農地に雨樋装置からの雨水を貯留する貯水槽が設置され、雨樋装置と貯水槽との間に縦樋が設けられ、貯水槽に補助の水道水を供給する水路管及び溢流管が設けられ、架台に作物に栽培用のLED光を照射するLED栽培装置が設置され、上記貯水槽に水中ポンプが設置されると共に作物に貯水槽の水を供給する複数個の散水ノズルを架台に配置してなる散水栽培装置が設置され、かつ、架台に空気供給源に接続された空気噴出管が設置されると共に架台と上記農地との間を架台に設置した空気噴出管の噴出穴からの空気流で遮断して栽培空間を形成するエアーカーテン装置が配置され、太陽電池モジュールからの直流電力を交流電力に変換するPVインバータ及び、電力会社からの電気を買ったり、太陽光発電で余った電気を余剰電力として売電したりする際の電力系統との連係保護機能並びに、災害や雷などによる停電時でも太陽光発電の電気を使用できる自立運転機能を備えてなるパワーコンディショナが配置され、上記LED栽培装置、上記散水栽培装置及び上記エアーカーテン装置に太陽電池モジュールからの電力が供給されることになり、夜間や冬期間での日照不足や灌水不足を解消することができると共に栽培空間内への害虫の侵入を防ぐことができ、農地における作物の栽培を良好に行うことができ、さらに、水素ガスにより発電する燃料電池を配置し、燃料電池からの電力を上記LED栽培装置、上記散水栽培装置、上記エアーカーテン装置及び温水循環装置に供給し、上記栽培空間に複数個の温水管及び循環管を配置し、燃料電池から排出される温水をポンプを貯留する温水タンクを配置し、温水タンク内の温水をポンプにより温水管及び循環管で循環させ、温水を利用して温水循環装置により上記栽培空間に温水を循環して栽培空間の温室化を図ることができ、作物の栽培を良好に行うことができ、作物の収穫量を向上することができ、さらに、上記太陽電池モジュールからの電力により水素ガスを発生させる水素ガス発生装置を配置し、水素ガス発生装置からの水素ガスを上記燃料電池に供給するから、燃料電池により確実に発電させることができ、太陽電池モジュール及び燃料電池により電力を得ることができ、農業と太陽光発電を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態例の構成系統図である。
図2】本発明の実施の形態例の説明側面図である。
図3】本発明の実施の形態例の拡大説明側面図である。
図4】本発明の実施の形態例の拡大説明平面図である。
図5】本発明の実施の形態例の拡大説明斜視図ある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1乃至図5は本発明の実施の形態例であって、本発明のソーラーシェアリングシステムは、図2の如く、大別して、作物Wを栽培する農地Tに設置される架台1と、架台1に複数の太陽電池モジュールS・・を備え、架台1に雨樋装置2を配置し、農地Tに雨樋装置2からの雨水Mを貯留する貯水槽3を設置し、架台1に作物WにLED光Lを照射するLED栽培装置4及び作物Wに貯水槽3の水を供給する散水栽培装置5を設置し、架台1と上記農地Tとの間を空気流Aで遮断して栽培空間Rを形成するエアーカーテン装置6を配置し、太陽電池モジュールS・・からの直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ7を配置し、上記LED栽培装置4、上記散水栽培装置5及び上記エアーカーテン装置6に太陽電池モジュールS・・からの電力Dを供給すると共に水素ガスGにより発電する燃料電池FCを配置し、燃料電池FCから排出される温水Hを利用して上記栽培空間Rを温室化する温水循環装置8を配設し、燃料電池FCからの電力Dを上記LED栽培装置4、上記散水栽培装置5、上記エアーカーテン装置6及び温水循環装置8に供給するように構成している。
【0009】
この場合、図3図4の如く、上記架台1は上記農地Tに立設される複数の支柱1a・・、桟部材1b・・及び屋根材1c・・からなり、又、上記太陽電池モジュールSは軽量かつフレキシブルにして、太陽光Eを電気エネルギーに変換する複数の太陽電池セルが内蔵されている。
【0010】
又、この場合、図3の如く、上記架台1の屋根材1c・・の屋根勾配の軒先部分に雨樋装置2が配置され、一方、農地Tに雨樋装置2からの雨水Mを貯留する貯水槽3が設置され、雨樋装置2と貯水槽3との間に縦樋が2aが設けられ、貯水槽3に補助の水道水を供給する水路管3a及び溢流管3bを設けて構成している。
【0011】
又、この場合、図3の如く、上記作物WにLED光Lを照射するLED栽培装置4は各種の作物Wの栽培に適する各種の波長のLED(発光ダイオード)4aが用いられ、又、上記作物Wに貯水槽3の雨水Mを供給する散水栽培装置5として、上記架台1に複数個の散水ノズルN・・を配置し、貯水槽3に水中ポンプ3cを設置し、水中ポンプ3cと散水ノズルN・・とを通水管3d・・で接続し、水中ポンプ3cによりくみ上げた雨水Mを散水ノズルN・・から作物Wに散水するように構成されている。
【0012】
この場合、図3図5の如く、上記エアーカーテン装置6は、上記架台1に複数個の空気噴出管6a・・が設置され、空気噴出管6a・・に送風機等の図外の空気供給源が接続され、複数個の空気噴出管6a・・の噴出穴6b・・から空気流Aが噴出され、架台1と上記農地Tとの間を空気流Aで遮断して栽培空間Rを形成するように構成されている。
【0013】
又、この場合、上記パワーコンディショナ7は、上記太陽電池モジュールSからの直流電力を交流電力に変換するPVインバータ及び、電力会社からの電気を買ったり、太陽光発電で余った電気を余剰電力として売電したりする際の電力系統7aとの連係保護機能並びに、災害や雷などによる停電時でも太陽光発電の電気を使用できる自立運転機能を備えて構成されている。
【0014】
又、この場合、図2の如く、上記温水循環装置8は上記栽培空間Rに配置される複数個の温水管8a、循環管8b及び上記燃料電池FCから排出される温水Hを貯留する温水タンク8cからなり、上記燃料電池FCから排出される温水タンク8c内の温水Hポンプ8dにより温水管8a及び循環管8bで循環させ、温水Hを利用して上記栽培空間Rを温室化するように構成している。
【0015】
又、この場合、上記燃料電池FCとして、例えば、高効率の固体酸化物形燃料電池(SOFC)が用いられ、燃料極に燃料ガス(水素、一酸化炭素など)、空気極に空気(酸素)を供給して発電させる構造となっている。すなわち、内部改質反応によってセルスタックの内部で水素(H)と一酸化炭素(CO)となり、空気極側から電解質中を移動してくる酸素イオン(O2-)が燃料極と電解質の界面で燃料の水素(H)や一酸化炭素(CO)と反応して電子(e)を放出すると同時に水蒸気(HO)あるいは二酸化炭素(CO)を生成し、酸素イオン(O2-)から放出された電子(e)は空気極に移動し、空気極と電解質の界面で空気中の酸素(O)が移動してきた電子(e)と反応して酸素イオン(O2-)になり、酸素イオン(O2-)は電解質中に取り込まれて燃料極側に移動し、電子(e)が外部回路を移動して電気が流れ、発電反応を行うことになる。勿論、他の燃料電池や他の燃料ガスを用いることがある。
【0016】
9は水素ガス発生装置であって、図2の如く、上記燃料電池FCに供給する水素ガスGを発生させる構造なっており、水を電気分解して高純度の水素ガスGを発生供給するオンサイト型水素発生装置が用いられている。なお、水素ガス発生装置9に代えて水素ガスボンベを用いることができる。
【0017】
この実施の形態例は上記構成であるから、図1図2図3の如く、作物Wを栽培する農地Tに架台1が設置され、架台1に太陽電池モジュールS・・が配置され、架台1に雨樋装置2が配置され、農地Tに雨樋装置2からの雨水Mを貯留する貯水槽3が設置され、架台1に作物WにLED光Lを照射するLED栽培装置4及び作物Wに貯水槽3の水を供給する散水栽培装置5が設置され、かつ、架台1と上記農地Tとの間を空気流Aで遮断して栽培空間Rを形成するエアーカーテン装置6が配置され、太陽電池モジュールS・・からの直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナ7が配置され、上記LED栽培装置4、上記散水栽培装置5及び上記エアーカーテン装置6に太陽電池モジュールS・・からの電力Dが供給されることになり、夜間や冬期間での日照不足や灌水不足を解消することができると共に栽培空間R内への害虫の侵入を防ぐことができ、農地Tにおける作物Wの栽培を良好に行うことができ、さらに、水素ガスGにより発電する燃料電池FCを配置し、燃料電池FCからの電力Dを上記LED栽培装置4、上記散水栽培装置5、上記エアーカーテン装置6及び温水循環装置8に供給し、上記栽培空間Rに複数個の温水管8aを配置し、燃料電池FCから排出される温水Hをポンプ8dにより温水管8aで循環させ、温水Hを利用して温水循環装置8により上記栽培空間Rに温水Hを循環して栽培空間Rの温室化を図ることができ、作物Wの栽培を良好に行うことができ、作物Wの収穫量を向上することができる。
【0018】
又、この場合、図1図2の如く、上記太陽電池モジュールS・・からの電力Dにより水素ガスGを発生させる水素ガス発生装置9を配置し、水素ガス発生装置9からの水素ガスGを上記燃料電池FCに供給するから、燃料電池FCにより確実に発電させることができ、太陽電池モジュールS・・及び燃料電池FCにより電力Dを得ることができ、農業と太陽光発電を確実に行うことができる。
【0019】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、太陽電池モジュールS、LED光L、空気流A、栽培空間R、燃料電池FC、温水H、架台1、雨樋装置2、貯水槽3、LED栽培装置4、散水栽培装置5、エアーカーテン装置6、パワーコンディショナ7、温水循環装置8、水素ガス発生装置9の構造等は適宜変更して設計される。
【0020】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0021】
W 作物
S 太陽電池モジュール
T 農地
M 雨水
L LED光
A 空気流
R 栽培空間
G 水素ガス
FC 燃料電池
H 温水
D 電力
N 散水ノズル
1 架台
1a 支柱
1c 屋根材
2 雨樋装置
2a 縦樋
3 貯水槽
3a 水路管
3b 溢流管
3c 水中ポンプ
4 LED栽培装置
5 散水栽培装置
6 エアーカーテン装置
6a 空気噴出管
6b 噴出穴
7 パワーコンディショナ
7a 電力系統
8 温水循環装置
8a 温水管
8b 循環管
8c 温水タンク
8d ポンプ
9 水素ガス発生装置
図1
図2
図3
図4
図5