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特許7347741マイクロ流体カートリッジを封止するためのカートリッジ被覆要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】マイクロ流体カートリッジを封止するためのカートリッジ被覆要素
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20230912BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20230912BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20230912BHJP
   B29C 63/02 20060101ALI20230912BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20230912BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230912BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J7/22
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J11/08
C09J5/00
B29C63/02
B29C65/48
B32B7/12
B32B27/00 M
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021505746
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070622
(87)【国際公開番号】W WO2020025670
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102018118581.2
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515069912
【氏名又は名称】ローマン ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】クール、オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】シントラー、カースティン
(72)【発明者】
【氏名】サンドラム、コルネリア
(72)【発明者】
【氏名】ローター、ライムント
(72)【発明者】
【氏名】シュトレラー、ルーヴ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-081406(JP,A)
【文献】特開2007-322265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの層状接着剤(30)を含む、マイクロ流体カートリッジ(20)を封止するためのカートリッジ被覆要素(10)において、前記層状接着剤(30)が硬化を誘発するためにUV活性化可能であり、活性化の後でオープンタイムの終了時まで室温において粘着性であって、
前記層状接着剤(30)が、
i. 2~40重量%のフィルム形成剤、
ii. 10~70重量%の芳香族エポキシ樹脂、
iii. 35重量%以下の脂環式エポキシ樹脂、
iv. 0.5~7重量%のカチオン開始剤、
v. 0~50重量%のエポキシ強化ポリエーテル化合物、及び
vi.0~20重量%のポリオール
を合計して100%含むことを特徴とする、カートリッジ被覆要素(10)。
【請求項2】
少なくとも一つの層状接着剤(30)を含む、マイクロ流体カートリッジ(20)を封止するためのカートリッジ被覆要素(10)において、前記層状接着剤(30)が硬化を誘発するためにUV活性化可能であり、活性化の後でオープンタイムの終了時まで室温において粘着性であって、
前記カートリッジ被覆要素(10)が、230~450nmの範囲において自家蛍光を示すことを特徴とする、カートリッジ被覆要素(10)。
【請求項3】
前記層状接着剤(30)の厚さが、2~1000μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項4】
前記層状接着剤(30)の厚さが、5~500μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項5】
前記層状接着剤(30)の厚さが、5~100μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項6】
前記層状接着剤(30)が、フィラー(40)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項7】
前記層状接着剤(30)が、セラミックフィラー又はポリマー系フィラーを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項8】
前記フィラー(40)が、固体ガラス球状体、中空ガラス球状体、及び/又はポリマー球状体であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項9】
前記フィラー(40)の最大寸法が、前記層状接着剤(30)の厚さよりも小さいことを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項10】
前記層状接着剤(30)の第一の面(32)の上にカバー層(50)が配置されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項11】
前記層状接着剤(30)の第一の面(32)の上にプラスチックフィルムが配置されていることを特徴とする、請求項10に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項12】
前記層状接着剤(30)の第二の面(34)の上にカバー層(51)が配置されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項13】
前記層状接着剤(30)の第二の面(34)の上に取り外し可能なフィルムが配置されていることを特徴とする、請求項12に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項14】
前記カバー層(50、51)が、前記層状接着剤(30)に対向する面(52、53)上、及び/又は、前記層状接着剤(30)とは反対側の面(54、55)上に接着剤反発コーティングを有することを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項15】
前記カバー層(50,51)が、耐熱性及び耐媒体フィルムであることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項16】
前記カバー層(50,51)が、PETフィルム、PCフィルム、又はCOPフィルムであることを特徴とする、請求項10~14のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)を製造する方法であって、前記方法は、
a)キャリア材料上に室温において粘着性である前記接着剤を付与する工程、及び
b)当該複合物を乾燥する工程
を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載のカートリッジ被覆要素(10)でマイクロ流体カートリッジ(20)を封止する方法であって、前記方法は、
前記カートリッジ被覆要素(10)をUV活性化する工程、
前記層状接着剤(30)のオープンタイム中に、前記カートリッジ被覆要素(10)の第二の面と前記マイクロ流体カートリッジとを接合することによって前記マイクロ流体カートリッジ(20)を封止する工程、及び
前記マイクロ流体カートリッジ(20)上の前記カートリッジ被覆要素(10)を硬化する工程
を含む、方法。
【請求項19】
前記UV活性化が、前記マイクロ流体カートリッジ(20)から空間的に離れて起こることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記UV活性化が、前記カートリッジ被覆要素(10)と前記マイクロ流体カートリッジ(20)とを接合する前又は接合する間に起きることを特徴とする、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体カートリッジのためのカートリッジ被覆要素、カートリッジ被覆要素を製造する方法、及びマイクロ流体カートリッジを封止する方法に関する。
【0002】
以下の説明で用いられる用語は、次のように理解される。
【0003】
以下の「接着フィルム」とは、あらゆる種類の面接着剤系に関するものであり、すなわち、文言上厳密な意味での接着テープだけではなく、接着フィルム、接着ストリップ、接着プレート、又は接着性の打ち抜きされたパーツにも関する。
【0004】
「感圧接着剤」とは、2つの接合パートナーが中間接着層により結合され、その後加圧される接着結合を意味する。接着シームが接着結合において最も弱い結びつきであるため、この結合は、2つの接合パートナーを損傷することなく再び分離できるという点で可逆である。
【0005】
「構造的」接着結合は、分離される際に、結合が必ずしも接着シームで開放されるのではなく、特定の状況下において、接合パートナーの片方が結合中の最も弱い結びつきを構成しており、分離によってその後損傷を受けうるような方法で、接合パートナーが結合されている結合である。このことは、「構造的」接着結合が高い強度を有することを意味する。準静的引張せん断試験によって測定される強度は、構造用結合については6MPa超えである。エポキシ系接着剤の構造的接着結合として望まれる典型的な値は、30MPaである。
【0006】
本ケースでは、UV放射は、UV-A又はUV-Cの波長範囲における放射、特に「UV-A」又は「UV-C」光と理解される。UV-A放射は、約380~315ナノメートル(nm)の波長範囲にあり、UV-C放射は、約280~100nmの波長範囲にある。一般に、どちらも可視光より短い波長における電磁放射線を構成している。UV-A光のエネルギー入力は約3.26~3.95電子ボルト(eV)であり、UV-C光のエネルギー入力は約4.43~12.40eVである。
【0007】
「活性化」とは、UV光の照射後に接着剤の硬化が始まること、すなわち、接着剤に含まれる光開始剤が光の照射によって活性化され、ポリマー鎖の形成を開始することによって硬化プロセスが開始することを意味する。通常、UV硬化接着剤は、接合パートナーが組み合わされた後に照射される。このためには、用いられるUV放射に対して十分な透過性のある基質が必要である。接着シームは、硬化が十分に進行するまで照射される。
【0008】
「オープンタイム」とは、接着剤の付与と結合との間の時間を意味する。UV活性化接着剤の場合、オープンタイムは、UV活性化と接着結合との間の時間、すなわち、接着結合が形成できる活性化後の時間であると理解される。例えば、オープンタイム中、封止されるカートリッジにカートリッジ被覆要素が付与される。カートリッジ被覆要素に含まれる接着剤は、必要な接着性を提供する。接着剤の粘度は一般的に付与後に増加するため、接着剤のオープンタイムは時間的制約により限定される。
【0009】
「硬化時間」とは、接合パートナーの接合から結合の最終強度に達するまでの時間である。
【0010】
「暗反応」とは、接着剤にUV光を短時間照射することで硬化反応が開始され、追加の照射を行うことなく硬化が完了することを指すものとする。
【0011】
「カバー層」とは、カートリッジを常に被覆する接着剤の上に配置された層を指すものとする。カバー層は、保護の目的で、カートリッジ被覆要素の上に常に保持されていてもよい。あるいは、カバー層は、使用前、すなわち、カートリッジに接合される前に取り除かれる取り外し可能なフィルムとして設けられていてもよい。
【背景技術】
【0012】
マイクロ流体システムは、様々な病気の体外診断又は診断的治療観察のためのポリマーテストキャリアとして使用される。テストキャリアは、生物学的分析を自動で処理できるマイクロ流体システムを通常含む。
【0013】
テストキャリアの製造にはカートリッジの提供が必要であり、例えば、カートリッジはマイクロ熱成形又は射出成形技術を用いて製造される。その後、カートリッジには所望の機能に必要な試薬(固体及び液体)が装備される。そして、カートリッジは、封止フィルムによって封止される。
【0014】
カートリッジを封止するための通常の技術は、低温封止、熱拡散封止、レーザー溶接及び溶媒封止を含む。
【0015】
低温封止(接着剤)においては、アクリレート系フィルムがカートリッジ上に設置され、マイクロカプセルを破壊する圧力がかけられることで、所望の場所のみに接着性が発生する。これにより接着結合は容易に得られるものの、カートリッジのマイクロ流体ダクトの閉塞を引き起こす可能性があり、特に高温における比較的劣った封止シームの性質及び強度に関係している。
【0016】
熱拡散封止は、高い封止シーム強度によって特徴づけられる。しかし、熱感受性の試薬を用いる場合、この方法は封止温度による悪影響を受けやすい。さらに、封止フィルムは、市販で容易に入手しにくい。
【0017】
レーザー溶接は、プロセス技術の観点から容易に実行できるが、透明/透明材料については、十分に高度な技術水準にはまだ達しておらず、高い仕入れコストがかかる。
【0018】
溶媒封止は、高い封止シーム強度を可能にする。しかし、溶媒封止は、用いられる溶媒(主に毒性溶媒)により取り扱いが難しく、安全な作業空間(ベント)を必要とし、生化学的試薬に悪影響を与える可能性がある。
【0019】
国際公開第2017/117163号は、二段構造用結合接着剤に関する。
【0020】
米国特許出願公開第2015/0184034号は、接着層及び接着シートに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来技術から、本発明の一つの目的は、マイクロ流体カートリッジを封止するための改善されたデバイス及び対応する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有するマイクロ流体カートリッジを閉じて封止するためのカートリッジ被覆要素、請求項11に記載の特徴を有するカートリッジ被覆要素を製造する方法、及び請求項12に記載の特徴を有するマイクロ流体カートリッジを封止する方法によって実現される。有利なさらなる実施形態は、従属項から得られる。
【0023】
本発明の第一の態様は、少なくとも一つの層状接着剤を含む、マイクロ流体カートリッジを封止するためのカートリッジ被覆要素に関する。本発明によると、層状接着剤は、硬化を誘発するためにUV活性可能であり、活性化後にオープンタイムの終了時まで室温において粘着性である。選択的には、層状接着剤はUV活性化前においても粘着性を有していてもよい。
【0024】
層状接着剤が、オープンタイムの終了前に非活性化状態において粘着性であることにより、カートリッジ被覆要素は、「通常の」感圧接着テープのように取り扱うことができる。すなわち、カートリッジ被覆要素は、軽度の粘着性を示す間に付与されることができ、必要に応じては、オープンタイムの終了前に、再び取り外されることも可能であり、又は、再配置されることさえも可能である。接合パートナーは、オープンタイムの終了後にのみ最終的に構造的に結合される。
【0025】
好ましい実施形態によると、マイクロ流体カートリッジを封止するためのカートリッジ被覆要素は、少なくとも一つの層状接着剤を含み、この層状接着剤は、
2~40重量%のフィルム形成剤、
10~70重量%の芳香族エポキシ樹脂、
35重量%以下の脂環式エポキシ樹脂、
0.5~7重量%のカチオン開始剤、
0~50重量%のエポキシ強化ポリエーテル化合物、及び
0~20重量%のポリオール
を含み、割合の合計は100%である。驚くべきことに、UV活性化により硬化が開始される層状接着剤の組成により、この層状接着剤はオープンタイムの間は粘着性であり、オープンタイムの終了後に最終的に構造的複合物強度をもたらすことが見出された。
【0026】
層状接着剤における有利な成分は、フィルム形成剤である。フィルム形成剤は、粘度を調節する熱可塑性ポリマー化合物又はエラストマーポリマー化合物であることができる。例えば、フィルム形成剤としては、以下のポリマー、すなわち、アクリレート、ポリアミド、フェノキシ樹脂、ポリウレタン又はエチレン酢酸ビニル(EVA)が使用可能であり、好ましくは、ポリウレタン及びエチレン酢酸ビニル共重合体が使用される。
【0027】
エポキシ樹脂としては、芳香族、脂肪族及び脂環式のエポキシ樹脂を用いてもよい。粘度の観点から、これらは、液体、高粘性又は固体であることができる。好ましくは、混合物のエポキシ当量の割合により測定されるとき、芳香族樹脂の割合は、脂環式エポキシ樹脂の割合よりも高い。さらなる実施形態では、全エポキシ樹脂のエポキシ当量における脂環式エポキシ樹脂のエポキシ当量の割合は、0%~35%の範囲内にある。
【0028】
さらなる実施形態では、全エポキシ樹脂のエポキシ当量における芳香族エポキシ樹脂のエポキシ当量の割合は、60%超えである。
【0029】
このような配合により、最大60分のオープンタイムが通常実現できる。
【0030】
有利には、層状接着剤は、エポキシ基で誘導体化された少なくとも一つのポリエーテル化合物を含む。特に好ましくは、これらは、エポキシ強化ポリエチレングリコール又はエポキシ強化ポリプロピレングリコールである。さらなる実施形態では、全エポキシ樹脂のエポキシ当量におけるエポキシ強化ポリエーテル化合物のエポキシ当量の割合は、0%~40%の範囲内にある。ポリエーテル化合物の割合に基づき、オープンタイムを効果的に調整することができる。
【0031】
例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、又はポリプロピレングリコールなどの複数の遊離ヒドロキシ基を有する化合物(ポリオール)は、層状接着剤の別の成分を構成してもよい。文献(A.Hartwig、”Kationisch hartende Epoxidharzklebstoffe”、「エポキシ樹脂接着剤のカチオン硬化」、2012年2月)によると、ポリオールの添加は、硬化反応を遅らせる。この文献によると、伝達反応が硬化反応を延長し、結果として暗反応をもたらす。エポキシ強化ポリエーテルとともに、ポリオールは、オープンタイム及び架橋反応速度を制御するのに結果として有効である。
【0032】
層状接着剤のための開始剤としては、カチオン光開始剤を用いることができる。好適な開始剤は、例えば、アリールスルホニウム塩、ヨードニウム塩、フェロセニウム塩、又はチオキサテニウム(thioxathenium)塩であり、特に好ましくは、トリアリールスルホニウム塩である。これらは、比較的低いUV照射における速い崩壊反応に特徴付けられる。開始剤が崩壊する際に、エポキシ樹脂を硬化する酸が形成される。
【0033】
層状接着剤のためのさらなる成分として、当業者に知られている以下のエポキシ系接着テープのための添加物が利用できる。すなわち、耐衝撃性改質剤、有機又は無機フィラー、さらに、火炎防護物質、染料、エージング防止剤、平滑化及びレオロジー補助剤などの機能性フィラーも利用できる。
【0034】
好ましいさらなる実施形態では、層状接着剤は、UV活性化後に0秒~60分のオープンタイムを有し、好ましくは0秒~30分であり、特に好ましくは10秒~60分であり、その間フィルムは粘着性である。
【0035】
層状接着剤は、好ましくはUV活性化後に熱やUV光を与えることなく硬化する。
【0036】
さらに別の実施形態では、層状接着剤は、硬化中に熱硬化性フィルムを形成する。
【0037】
さらなる実施形態では、層状接着剤は、硬化後にマイクロ流体カートリッジの表面にのみ接着し、例えば、CОP、PC又はABSなどの基質に存在する。有利には、層状接着剤は、ダクトの位置においては、もはや粘着性ではない。
【0038】
さらなる実施形態では、反応性エポキシ樹脂系により、非常に薄い接着層の厚さで、非常に高い封止強度を得るのに十分である。これは、カートリッジのダクトが接着剤により閉塞されないという利点を有することができる。すなわち、接着剤の厚さが薄いほど、ダクトが接着剤によって閉塞されるリスクが少なくなる。
【0039】
さらに別の実施形態では、層状接着剤の厚さは、2~1000μm、あるいは、5~500μm、5~200μm、又は5~100μmである。層状接着剤によるダクトの閉塞を防ぐのと同時に十分な接着力を与えるように厚さを選択することが有利である。層状接着剤のより薄い厚さは、とりわけ、使用する必要のある接着剤が少ないという利点に関係する。
【0040】
さらに別の実施形態では、層状接着剤はフィラーを含む。フィラーは、とりわけ、セラミックフィラーでもよく、あるいは、ポリマー系フィラーでもよい。例えば、フィラーは、固体ガラス球状体、中空ガラス球状体、及び/又はポリマー球状体でもよい。有利には、フィラーの最大寸法、あるいはフィラーの直径、あるいはフィラーの最小直径は、層状接着剤の厚さより小さい。フィラーは、とりわけ、層状接着剤の弾性特性又はカートリッジ被覆要素の弾性特性に好影響を有していてもよく、これにより、マイクロ流体カートリッジの有利な封止をもたらす可能性がある。フィラーの添加は、また、層状接着剤、あるいは、カートリッジ被覆要素全体が比較的経済的な方法で製造されることができるという効果を有していてもよい。
【0041】
さらに別の実施形態では、層状接着剤の第一の面上に、カバー層、好ましくは、カバーフィルムとして機能するプラスチックフィルムが配置されている。カバー層は、例えば、キャリア材料の機能を担っていてもよい。加えて、カバー層は、特に、マイクロ流体カートリッジの使用時にカバー層がデバイスに残っている場合に、カートリッジ被覆要素の安定性を高めることができる。さらに、カバー層は、例えば、化学的、物理的又は機械的影響などの外部影響に対して、層状接着剤を保護してもよい。カバー層は、プロセスにおいて、層状接着剤がそれ自体に貼り付くことなく、カートリッジ被覆要素を巻き上げることを可能にするため有効である可能性がある。さらに、カバー層は、層状接着剤同士が貼り付くことなく、多数の独立したカートリッジ被覆要素を積み重ねることを可能にする可能性がある。
【0042】
好ましいさらなる実施形態では、カバー層は取り外し可能である。例えば、カバー層は、取り外し可能なフィルム又は剥離ライナーであってもよい。したがって、カバー層は、カートリッジ被覆要素とマイクロ流体カートリッジとを接合した後、又は、層状接着剤が硬化した後に再び取り外されることができる。これは、例えば、カートリッジ被覆要素の光学的特性が厳しい品質要求を満たす必要がある場合に有利である。
【0043】
層状接着剤の硬化はUV活性化により開始される。硬化中に熱硬化性フィルムが形成される。好ましくは、硬化された層状接着剤は、特に化学的、物理的又は機械的な影響である外部影響に対する必要な復元力、及び/又は、必要な安定性を示す。
【0044】
有利なさらなる実施形態では、層状接着剤の厚さは、5μm超え、100μm超え、500μm超え、又は1000μm超えである。
【0045】
別の実施形態では、カバー層は、層状接着剤の第二の面上に配置され、好ましくは、取り外し可能なフィルムとして機能してもよい。このカバー層もキャリア材料として機能してもよい。加えて、カバー層は、例えば、化学的、物理的及び/又は機械的影響などの外部影響に対して、層状接着剤を保護する。さらに、このカバー層は、層状接着剤がそれ自体に貼り付くことなく、カートリッジ被覆要素を巻き上げることを可能にするため、又は、層状接着剤同士が貼り付くことなく、多数の独立したカートリッジ被覆要素を積み重ねることを可能にするため、有効である可能性がある。
【0046】
カバー層は、取り外し可能であってもよい。例えば、カバー層は、取り外し可能なフィルム又は剥離ライナーであってもよい。したがって、カバー層は、カートリッジ被覆要素及びマイクロ流体カートリッジに接合される前に、取り外されることができる。
【0047】
さらなる実施形態では、カバー層は、層状接着剤に対向する面上、及び/又は、層状接着剤とは反対側の面上に接着剤反発コーティングを備えている。層状接着剤に対向する面上の接着剤反発コーティングは、カバー層が取り外し可能とされる場合に特に有利になり得る。層状接着剤とは反対側の面上の接着剤反発コーティングは、カートリッジ被覆要素が巻き取り可能であるべき場合に有利になり得る。
【0048】
さらなる実施形態では、接着剤反発コーティングは、シリコーン系であり、特に、カバー層上のシリコーン層コーティングである。有利には、接着剤反発コーティングは、層状接着剤に対して十分な剥離度合いを示すように選択される。
【0049】
さらなる実施形態では、層状接着剤の第一の面上のカバー層、及び/又は、層状接着剤の第二の面上のカバー層は、耐熱性及び耐媒体フィルムであり、好ましくは、PETフィルム、PCフィルム、又はCOPフィルムなどである。耐熱性フィルムは、好ましくは80℃を超える温度、特に好ましくは90℃~125℃を超える温度に耐える。フィルムの媒体耐性は、例えば、DIBt(ドイツ土木工学協会)チェックリストに基づいて分類してもよい。
【0050】
さらなる実施形態では、カートリッジ被覆要素は、230~450nmの範囲において自家蛍光を示す。300~450nmの範囲における自家蛍光は、層状接着剤に加えて、少なくとも一つのカバー層(例えば、キャリアフィルム)を含むカートリッジ被覆要素によって達成されることができる。
【0051】
さらなる実施形態では、カートリッジ被覆要素の層状接着剤は、300~450nmの範囲において本質的な自家蛍光を示す。この特性は、マイクロ流体カートリッジに頼ることが多い体外診断において特に有利である。結果は、通常、蛍光分光法を用いて分析される。したがって、カートリッジ被覆要素が、基本的に、一般的に用いられる蛍光色素の典型的な励起及び検出波長の範囲において有意な自家蛍光を示さない場合に、有利である。この範囲は、約460~720nmである。
【0052】
別の実施形態では、カートリッジ被覆要素は、COP及びPETからなるプラスチック表面が前もってプラズマでエネルギー的に増大された場合に、これらのプラスチック表面に接着するのに特に適している。
【0053】
別の実施形態では、カートリッジ被覆要素は、金属、ガラス、セラミック、繊維強化プラスチック(FEP)、炭素繊維プラスチック(CFP)、及び/又は他の高エネルギー表面からなる表面に接着するのに特に適している。
【0054】
さらなる実施形態では、カートリッジ被覆要素は、配合の詳細、放射線量及び接着基質に応じて、接着中において6~20MPaの接着強度を示す。
【0055】
さらなる実施形態では、カートリッジ被覆要素は、プラスチック及びさらに低エネルギーの表面の(半)構造的結合に適している。
【0056】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様に係るカートリッジ被覆要素を製造する方法に関する。この方法は、次の工程を含む。
【0057】
・室温において粘着性である接着剤のキャリア材料への付与。例えば、接着剤は、ブレードを用いてキャリア材料に塗布してもよい。例えば、キャリア材料は、ポリエステルフィルムでもよい。有利には、ポリエステルフィルムは、10~200μmの厚さを有する。キャリア材料は、耐熱性及び耐媒体フィルム、あるいはPETフィルム、PCフィルム、COPフィルムなどであってもよい。さらなる実施形態では、接着剤は溶媒を含んでもよい。有利には、キャリア材料は、その片側又は両側に接着剤反発コーティングを含んでもよく、好ましくはシリコーン層を含んでもよい。
【0058】
・当該複合物の乾燥。例えば、複合物は、初めに室温で10分間乾燥し、その後、対流式オーブン内で80℃で10分間乾燥してもよい。塗付される量は、乾燥後に所定の層厚さが得られるように調整される。乾燥は、溶媒混合物の除去に相当していてもよい。乾燥後、粘着性あるいは粘着性層状の接着剤を得ることができる。
【0059】
一つの実施形態では、この接着剤は、製品に残存することを意図するキャリア材料の片側に既に接着している。別の実施形態では、接着剤は、接着剤反発キャリア材料(例えば、シリコーン強化フィルム)の上に始めにコーティングされ、その後、乾燥後に製品に残存することを意図するカバー層の上に積層されていてもよい。
【0060】
さらなる実施形態では、第二カバー層が当該複合物に追加されてもよく、第二カバー層は有利に複合物を保護する働きをする。
【0061】
さらなる実施形態では、原材料及び接着剤を取り扱う間又はコーティングのために、UV光に対する保護対策を必要としない。UVランプから離れた通常の実験条件下で作業すれば十分である。さらなる遮蔽は必要とされない。
【0062】
さらなる実施形態では、打ち抜きされたパーツを当該複合物から製造することができる。
【0063】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様に係るカートリッジ被覆要素でマイクロ流体カートリッジを封止する方法に関する。この方法は、次の工程を含む。
【0064】
・カートリッジ被覆要素のUV活性化。接着フィルム及び打ち抜きされたパーツの硬化は、UV光、好ましくはUV-A又はUV-C光を用いて活性化される。例えば、波長が365nmのUV LEDランプをこの目的で用いてもよい。通常、この状況で使われるフィルムは、付与される前にUV光で殺菌される。この工程は、さらなるプロセス効率を生み出すように活性化工程と組み合わせることができる。
【0065】
・層状接着剤のオープンタイムの終了前、オープンタイム中に、カートリッジ被覆要素の第二の面とマイクロ流体カートリッジとを接合することによるマイクロ流体カートリッジの封止。さらなるカバー層(例えば、取り外し可能なフィルム)が接着剤のこの面に設けられる場合、接合前に取り外されるべきである。例えば、接合は、マイクロ流体カートリッジの上にカートリッジ被覆要素を配置することで実行されてもよい。有利には、このプロセスの間、軽度の圧力がかけられる。カバー層をカートリッジ被覆要素においてカートリッジとは反対側の面に設けることによって、接着剤の部分がクランプ手段(例えば、クランプ板)に貼り付いたままになることを防ぐことができる。
【0066】
必要に応じて、接着剤の第一の面に配置されたカバー層は、加圧後に取り外すことができる。あるいは、カバー層は、硬化後に取り外されてもよい。したがって、カバー層の光学的特性(例えば、自家蛍光又は透明性)に関する要求はないか、あるとしても少ない。
【0067】
・マイクロ流体カートリッジ上のカートリッジ被覆要素の硬化。UV活性化後、接合パートナーが最終的に調整され接合されることができる一定の期間が残る。さらなる実施形態では、硬化がUV光によって引き起こされた後に追加の活性化を必要としない。
【0068】
カートリッジ上における接着テープの瞬間的な接着力により、封止されたカートリッジはすぐにさらに輸送されることができる。保存中、エポキシ樹脂接着剤は、いずれの追加的な介入も必要とせずに、硬化プロセスを十分に完了してもよい。硬化反応は、多数の段階で起こる。暗反応プロセスの継続時間は、例えば、用いられるエポキシ樹脂成分(脂環式又は芳香族エポキシ樹脂)、鎖の長さ、開始剤の種類、照射時間、照射線量(UV波長)又は温度などの様々な要因に依存する可能性がある。
【0069】
照射後の硬化時間は、前記の要因及びそれらの相互作用によって、0秒~60分に達することができる。
【0070】
さらなる実施形態では、層状接着剤は、最大で2時間後に基本的に反応を完了し、ダクト内の接着剤が粘着性でなくなる。熱硬化性樹脂は、温度及び化学物質に対して高い耐性を有していることが知られている。モノマーに対して敏感に反応する分析試料については、その後の保存(例えば、約60℃で1時間)が最後のモノマーの反応の終了を促進してもよい。
【0071】
さらなる実施形態では、層状接着剤は熱を与えられることなく硬化する。
【0072】
さらに別の実施形態では、層状接着剤は熱を与えられることで硬化する。
【0073】
層状接着剤は、熱封止フィルムの封止強度に匹敵する非常に高い封止強度を示してもよいが、室温で硬化するため、熱感受性試薬に使用されることもできる。有利には、この方法は、熱封止ステーションを必要としない。あるいは、マイクロ流体カートリッジの表面上の層状接着剤の濡れが、例えば、35℃~45℃まで温度をわずかに上げることによって向上できることから、そのような熱封止ステーションを利用してもよい。
【0074】
さらなる実施形態では、層状接着剤は、UV光を追加的に与えられることなく硬化する。
【0075】
さらに別の好ましい実施形態では、UV活性化は、マイクロ流体カートリッジから空間的に分離している間に起こり、あるいは、UV活性化は、マイクロ流体カートリッジ上(これはカートリッジ被覆要素とカートリッジとを接合する間、又は接合した後を意味する)で起こる。
【0076】
別の実施形態では、UV活性化は、カートリッジ被覆要素とマイクロ流体カートリッジとを接合する前、あるいは、カートリッジ被覆要素とカートリッジとを接合する間又は接合した後に起きる。
【0077】
接着剤がオープンタイムの間にUV活性化後でも一定の時間粘着性のままであり得ることを考慮すると、UV活性化は、カートリッジ被覆要素とマイクロ流体カートリッジとの接合前にすでに起こっていてもよい。このことは、また、例えば、提供されたマイクロ流体カートリッジを有する封止ステーションの外部において、マイクロ流体カートリッジから空間的に分離している間に層状接着剤をUV活性化することを可能にする。このことは、UV放射がマイクロ流体カートリッジの機能性又は用いられる試薬の機能性に影響しないことを可能にする。好ましいさらなる実施形態では、空間的に分離している間のUV活性化は、カートリッジ被覆要素の殺菌につながる。
【0078】
逆に、接合後における層状接着剤のUV活性化は、プロセス効率を向上するのに有利となることができる。例えば、UV活性化は、マイクロ流体カートリッジを殺菌する働きもし、これにより個別の殺菌工程を省くことができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0079】
本発明の好ましい実施形態は、次の図面の説明によってさらに詳細に示される。
【0080】
図1図1は、第一カバー層を含むカートリッジ被覆要素10を概略的に示す。
図2図2は、追加的な第二のカバー層51を含む図1のカートリッジ被覆要素10を概略的に示す。
図3図3は、取り外し可能なフィルムを含むカートリッジ被覆要素10を概略的に示す。
図4図4は、取り外し可能なフィルムを両面に含むカートリッジ被覆要素10を概略的に示す。
図5図5は、マイクロ流体カートリッジを封止しているカートリッジ被覆要素10を概略的に示す。
図6図6は、フィラー40を含む層状接着剤30を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図に基づく好ましい実施形態を以下で説明する。ここで、同一又は同様の要素、又は同様の効果を有する要素は、異なる図において同一の参照符号で示され、これらの要素は冗長性を避けるために繰り返し説明されない。
【0082】
図1は、層状接着剤30を含むカートリッジ被覆要素10の実施形態を概略的に示している。層状接着剤30の組成は、以下に規定される範囲によって決定される。
【0083】
i. 2~40重量%のフィルム形成剤
ii. 10~70重量%の芳香族エポキシ樹脂
iii. 35重量%以下の脂環式エポキシ樹脂
iv. 0.5~7重量%のカチオン開始剤
v. 0~50重量%のエポキシ強化ポリエーテル化合物
vi.0~20重量%のポリオール
割合の合計は100%である。
【0084】
本実施形態では、層状接着剤30は以下を含む。
【0085】
i. 11重量%のフィルム形成剤
ii. 58重量%の芳香族エポキシ樹脂
iii. 10~70重量%以下の芳香族エポキシ樹脂
iv. 2重量%のカチオン開始剤
v. 12重量%のエポキシ強化ポリエーテル化合物
vi.7重量%のポリオール
【0086】
以下には、層状接着剤30における個々の成分について特定の製品名を一覧で示す。
【0087】
i. 11重量%のフィルム形成剤、特にDesmomelt 530
ii. 58重量%の芳香族エポキシ樹脂、特に38%のAraldite GT 7072及び20%のD.E.R. 331
iii. 10重量%の脂環式エポキシ樹脂、特にUvacure 1534
iv. 2重量%のカチオン開始剤、特にChivacure 1176
v. 12重量%のエポキシ強化ポリエーテル化合物、特にD.E.R. 736 P
vi.7重量%のポリオール、特にPEG 400
【0088】
図1に示すカートリッジ被覆要素では、層状接着剤の厚さは30~70μmである。あるいは、層状接着剤の厚さは、2~1000μmでもよく、好ましくは5~500μm、特に好ましくは5~100μmであることができる。層状接着剤の第一の面32及び層状接着剤の第二の面34もまた概略的に示されている。
【0089】
カバー層50は、層状接着剤30の第一の面32の上にポリエステルフィルムキャリアの形で配置されている。その他のいずれのカバー層もカバー層として用いることができ、好ましくはプラスチックフィルムを用いることができる。有利には、カバー層50は、耐熱性及び耐媒体フィルムでもよく、好ましくは、PETフィルム、PCフィルム、又はCOPフィルムなどでもよい。
【0090】
この実施形態におけるカバー層50の厚さは、100μmであるが、異なる厚さであってもよく、特に10~200μmであってもよい。この実施形態におけるカバー層50は、層状接着剤30とは反対側の面54上に接着剤反発コーティングを有するが、その他のいずれの接着剤反発コーティングを設けてもよく、特にシリコーン系であってもよい。
【0091】
有利には、接着剤反発コーティングは、エポキシ樹脂系に対して十分な剥離度合いを示すように選択される。これは、例えば、カートリッジ被覆要素10を保存の目的で巻き上げるのに有利である。
【0092】
カバー層50は、その自家蛍光が通常の蛍光色素に用いられる波長範囲に入らないように好ましく選択される。この実施形態では、接着剤及びカバー層の自家蛍光が230~450nmの範囲内にあるため、上記に該当しない。
【0093】
この実施形態におけるポリエステルフィルムキャリア50は、層状接着剤30に対向する面52上にさらなるコーティングを有しない。この実施形態において、このことは、カバー層50が層状接着剤30の上に残存することが意図されているため、有利である。したがって、例えば、カバー層50は、カートリッジ被覆要素10の層状接着剤30のための片面保護フィルムとして機能してもよい。
【0094】
層状接着剤30は、硬化を誘発するためにUV活性化可能であり、活性化の前及び後でオープンタイムの終了時まで室温において粘着性である。
【0095】
図2は、図1のカートリッジ被覆要素10に基本的に対応するカートリッジ被覆要素10を概略的に示している。図2に示すカートリッジ被覆要素10は、以下に概略を説明する特徴に関して、図1に示すカートリッジ被覆要素とは異なる。
【0096】
この実施形態では、層状接着剤30の第二の面34上に追加的なカバー層51がPETフィルムの形で配置されている。あるいは、その他のいずれのカバー層が配置されていてもよく、好ましくは、取り外し可能なフィルムの形で配置されていてもよい。この実施形態におけるカバー層51の厚さは、50μmであるが、異なる厚さであってもよく、特に2~1000μmであり、好ましくは5~500μmであり、特に好ましくは5~100μmであってもよい。
【0097】
カバー層51は、層状接着剤30に対向する面53上にシリコーンコーティングを有するが、その他のいずれの接着剤反発表面を含んでいてもよい。有利には、接着剤反発コーティングは、エポキシ樹脂系に対して十分な剥離度合いを示すように選択される。これは、マイクロ流体カートリッジへの接合工程の前にPETフィルムを取り除く能力に必要となる可能性がある。このように、カバー層51は取り外し可能なフィルムとして機能する。
【0098】
さらに、カバー層51は、層状接着剤30とは反対側の面55の上にシリコーンコーティングを有する。あるいは、カバー層は、その他のいずれの接着剤反発表面を有していてもよい。層状接着剤30とは反対側の面55上のシリコーンコーティングは、保存の目的で役立ち、例えば、カートリッジ被覆要素10が巻き上げた状態で保存されるものである場合に、その巻き取り及び展開を促進する。
【0099】
図3は、図1の接着剤に対応する層状接着剤30を含むカートリッジ被覆要素10を概略的に示している。
【0100】
図3に係るカートリッジ被覆要素は、PETフィルムの形で層状接着剤30の第二の面34上に配置されたカバー層51を単に有する。図3に示すカバー層51の構成及び特性は、図2の第二カバー層の構成及び特性に対応する。カバー層51は製品に残存しないため、その自家蛍光特性に関する要求はない。
【0101】
図4は、図1のカートリッジ被覆要素に基本的に対応するカートリッジ被覆要素10の実施形態を概略的に示している。
【0102】
図4に示すカートリッジ被覆要素4は、PETフィルムの形であるカバー層50が、層状接着剤30に対向する面52上にシリコーンコーティングを有する点で、図1に係るカートリッジ被覆要素とは異なる。あるいは、カバー層50は、その他のいずれの接着剤反発表面を含んでいてもよい。
【0103】
有利には、接着剤反発表面は、十分な剥離度合いを示すように選択される。すなわち、大きな力をかけることなく、かつエポキシ樹脂系の接着表面において外部ダメージ又はネガティブな機能障害を引き起こすことなく、手動又は自動で取り外されることができるように選択される。これは、マイクロ流体カートリッジに接合される前にカバー層50を取り除く能力に必要となる可能性がある。カバー層50は、また、層状接着剤30とは反対側の面54上にシリコーンコーティングを有する。このコーティングも選択的にその他のいずれの接着剤反発表面であってもよい。
【0104】
このように、図4に係るカートリッジ被覆要素10は、取り外し可能なカバー層50、51を接着剤30の両面に有する。両面の取り外し可能なフィルムは、製品の光学的外観に関する顕著な品質要求に対して特に有利である可能性がある。
【0105】
図5は、マイクロ流体カートリッジ20に接合されたカートリッジ被覆要素10を概略的に示している。カートリッジ20は、一つの上面の上に、例えば体外診断を実行するための体外分析試料などの試薬を受ける働きをする、空洞、チャンバー、及びダクトなどの凹部を有する。この状況では、カートリッジ被覆要素10は、カートリッジ20の表面における凹部が周囲に対して封止されるようにカートリッジ20の上に配置される。
【0106】
図6は、固体ガラス球状体の形であるフィラー40を含む層状接着剤30を概略的に示している。フィラー40の最大寸法は、層状接着剤30の厚さよりも小さい。フィラー40は、とりわけ、層状接着剤の弾性特性及びカートリッジ被覆要素の弾性特性に好影響を有していてもよく、これにより、マイクロ流体カートリッジを有利に封止できる可能性がある。
【0107】
あるいは、層状接着剤30は、例えば、中空ガラス球状体及び/又はポリマー球状体などのその他のフィラー40を含んでいてもよい。しかし、特に、セラミックフィラー又はポリマー系フィラーなどの異なる物質からなるフィラー40も用いることができる。層状接着剤の第一の面32及び層状接着剤の第二の面34も概略的に示されている。
【0108】
該当する限り、例示的な実施形態に示されているすべての個別の特徴は、発明の範囲から外れることなく、組み合わせることができ及び/又は交換することができる。
【0109】
体外診断で用いるための所望の物質特性(シリコーン層、キャリア、接着剤系)を以下に示す。
【0110】
病原体DNA複製するためには、周期的な加熱及び冷却が必要である。この目的で、試薬は、約50~100サイクルで、約95℃に30秒間加熱され、続けて約60℃に冷却される。フィルム材料及び封止材は、これらの温度サイクルに耐えられる必要がある。有利には、封止材は、90℃以上において20秒間を50~100回耐える耐熱性がある。
【0111】
結果は、蛍光分光法を用いて検出される。検出のためには、光透過性封止材(透過率>90%)が有利である。以下の波長が検出に用いられ、変更されることなく物質を透過できる必要がある。
【0112】
緑:励起:470±10nm;検出:510±5nm
黄:励起:530±5nm;検出:557±5nm
オレンジ:励起:585±5nm;検出:610±5nm
赤:励起:625±5nm;検出:660±10nm
クリムゾン:励起:680±5nm;検出:712±5nm
【0113】
結果の検出が蛍光分光法を用いて行われるため、物質は検出波長の範囲内では蛍光を示さないべきである。
【0114】
封止溶接強度は、100℃において1bar(0.1N/mmに相当)の圧力に耐えることができるべきである。
【0115】
製品と接している封止層は、試料物質又は試薬の生化学に影響する可能性があるいずれの成分も含むべきではない。
【0116】
プロセス中においては様々なアルコール溶媒が用いられる。したがって、エタノール又はイソプロパノール(50%の希釈液)などの溶媒に対する化学的安定性があることが有利である。
【0117】
材料は、製造後に脆化するべきではなく、柔軟性を保持している(しかし、曲がりやすくはない)べきである。また、例えば、病原体で汚染された試薬又は血液などの物質の漏れを防止するために、使用後の廃棄物除去の間に壊れないべきである。
【0118】
フィルムの加工の間、操作又は作業する者の健康に悪影響を及ぼす可能性がある毒性物質の漏れを防ぐべきである。
【0119】
材料は、低い吸水度(2時間のプロセス時間において10%未満)を示すべきである。吸水度が低いほど、病原体が材料に蓄積する又は付着するリスク、又は材料特性が変化するリスクが低くなる。
【0120】
適切なプロセス実行時間を確保するためには、その後に実装できるように、20秒の後に封止フィルムがマイクロ流体カートリッジ20に十分に接着するべきである。硬化プロセスは、保存している間に完了してもよい。
【0121】
接着剤に関するもう一つの光学的要求としては、接着剤成分の硬化中に気泡が形成されないことである。
【0122】
マイクロ流体カートリッジは、約35~50rHの一般的に低い湿度条件でクリーンルーム内において被覆される。
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
少なくとも一つの層状接着剤(30)を含む、マイクロ流体カートリッジ(20)を封止するためのカートリッジ被覆要素(10)において、前記層状接着剤(30)が硬化を誘発するためにUV活性化可能であり、活性化の後でオープンタイムの終了時まで室温において粘着性であることを特徴とする、カートリッジ被覆要素(10)。
<2>
前記層状接着剤(30)が、
i. 2~40重量%のフィルム形成剤、
ii. 10~70重量%の芳香族エポキシ樹脂、
iii. 35重量%以下の脂環式エポキシ樹脂、
iv. 0.5~7重量%のカチオン開始剤、
v. 0~50重量%のエポキシ強化ポリエーテル化合物、及び
vi.0~20重量%のポリオール
を合計して100%含むことを特徴とする、<1>に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<3>
前記層状接着剤(30)の厚さが、2~1000μm、好ましくは5~500μm、又は、特に好ましくは5~100μmであることを特徴とする、<1>又は<2>に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<4>
前記層状接着剤(30)が、フィラー(40)、特にセラミックフィラー又はポリマー系フィラーを含むことを特徴とする、<1>~<3>のいずれか一つに記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<5>
前記フィラー(40)が、固体ガラス球状体、中空ガラス球状体、及び/又はポリマー球状体であることを特徴とする、<4>に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<6>
前記フィラー(40)の最大寸法が、前記層状接着剤(30)の厚さよりも小さいことを特徴とする、<4>又は<5>に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<7>
前記層状接着剤(30)の第一の面(32)の上にカバー層(50)、好ましくはプラスチックフィルムが配置されていることを特徴とする、<1>~<6>のいずれか一つに記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<8>
前記層状接着剤(30)の第二の面(34)の上にカバー層(51)、好ましくは取り外し可能なフィルムが配置されていることを特徴とする、<1>~<7>のいずれか一つに記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<9>
前記カバー層(50、51)が、前記層状接着剤(30)に対向する面(52、53)上、及び/又は、前記層状接着剤(30)とは反対側の面(54、55)上に接着剤反発コーティングを有することを特徴とする、<7>又は<8>に記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<10>
前記カバー層(50,51)が、耐熱性及び耐媒体フィルムであり、好ましくは、PETフィルム、PCフィルム、又はCOPフィルムなどであることを特徴とする、<7>~<9>のいずれか一つに記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<11>
前記カートリッジ被覆要素(10)が、230~450nmの範囲において自家蛍光を示すことを特徴とする、<1>~<10>のいずれか一つに記載のカートリッジ被覆要素(10)。
<12>
<1>~<11>のいずれか一つに記載のカートリッジ被覆要素(10)を製造する方法であって、前記方法は、
a)キャリア材料上に室温において粘着性である前記接着剤を付与する工程、及び
b)当該複合物を乾燥する工程
を含む、方法。
<13>
<1>~<11>のいずれか一つに記載のカートリッジ被覆要素(10)でマイクロ流体カートリッジ(20)を封止する方法であって、前記方法は、
前記カートリッジ被覆要素(10)をUV活性化する工程、
前記層状接着剤(30)のオープンタイム中に、前記カートリッジ被覆要素(10)の第二の面と前記マイクロ流体カートリッジとを接合することによって前記マイクロ流体カートリッジ(20)を封止する工程、及び
前記マイクロ流体カートリッジ(20)上の前記カートリッジ被覆要素(10)を硬化する工程
を含む、方法。
<14>
前記UV活性化が、前記マイクロ流体カートリッジ(20)から空間的に離れて起こることを特徴とする、<13>に記載の方法。
<15>
前記UV活性化が、前記カートリッジ被覆要素(10)と前記マイクロ流体カートリッジ(20)とを接合する前又は接合する間に起きることを特徴とする、<13>又は<14>に記載の方法。
【符号の説明】
【0123】
10 カートリッジ被覆要素
20 マイクロ流体カートリッジ
30 層状接着剤
32 層状接着剤の第一の面
34 層状接着剤の第二の面
40 フィラー
50 カバー層
51 カバー層
52 カバー層の層状接着剤に対向する面
53 カバー層の層状接着剤に対向する面
54 カバー層の層状接着剤とは反対側の面
55 カバー層の層状接着剤とは反対側の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6