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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20230912BHJP
   B60K 7/00 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
H02K5/22
B60K7/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019031753
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020137359
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 真理子
(72)【発明者】
【氏名】田口 啓
(72)【発明者】
【氏名】吉川 広宣
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531465(JP,A)
【文献】特開2006-036025(JP,A)
【文献】特開2014-158410(JP,A)
【文献】実開昭57-085846(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
B60K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータを取り付ける本体部と、を備えた搬送車であって、
前記モータは、
ステータと、
中心軸に沿って延びる軸部を含むシャフトと、を備え、
前記シャフトは、前記軸部の径方向外側に設けられ外側面で軸受を支持するフランジ部を有し、
前記フランジ部は、
前記中心軸よりも上側に位置し、前記ステータから延びるリード線を通す開口と、
中心軸から見て、前記開口の径方向外側で径方向厚みの薄い薄肉部分と、
前記開口と前記フランジ部の外側面とを接続する切欠きと、
が設けられており、
前記フランジ部が有する前記薄肉部分は切欠きによって周方向に分断されている、
搬送車。
【請求項2】
前記切欠きは、前記開口における周方向の中心に位置する、
請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記本体部は、前記モータの上側に設けられる天板を含み、
前記モータは、前記開口から前記天板までの距離が最小となるように、前記本体部に取り付けられる、
請求項1又は2に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にはインホイールモータが開示されている。インホイールモータはアウターロータを採用するため、モータ内部と外部とを接続する配線をモータの回転の影響を受けない場所を通す必要がある。例えば、大型のモータの場合、軸の内部を通して配線を外まで引き出すことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/133277号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、インホイールモータを取り付ける搬送車を小型化や軽量化を図るべく、インホイールモータ自体を小さくしたいとの要望もあるが、インホイールモータを小型化すると軸の内部に配線を通せなくなるため、異なる場所から配線を外部に引き出す必要がある。また、搬送車において、インホイールモータには地面からの衝撃や振動が直接伝わるため、インホイールモータの機械的強度を維持する必要がある。そこで、機械的強度の維持と小型化とを両立させた新たな技術の提供が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、機械的強度を維持しつつ小型化が可能な搬送車を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送車の一つの態様は、モータと、前記モータを取り付ける本体部と、を備えた搬送車であって、前記モータは、ステータと、中心軸に沿って延びる軸部を含むシャフトと、を備え、前記シャフトは、前記軸部の径方向外側に設けられ外側面で軸受を支持するフランジ部を有し、前記フランジ部は、前記中心軸よりも上側に位置し、前記ステータから延びるリード線を通す開口と、中心軸から見て、前記開口の径方向外側で径方向厚みの薄い薄肉部分と、前記開口と前記フランジ部の外側面とを接続する切欠きと、が設けられており、前記フランジ部が有する前記薄肉部分は切欠きによって周方向に分断されている、搬送車。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、機械的強度の維持と小型化とを両立させる搬送車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は搬送車の全体構成を示す図である。
図2図2は車輪取り付け部に取り付けられた車輪の要部構成を示す図である。
図3図3図2を軸方向一方側から平面視した図である。
図4図4はシャフトを軸方向一方側から平面視した構成を示す平面図である。
図5図5はステータコアとシャフトとの取付け構造を示す分解図である。
図6図6はモータの要部構成を示す分解図である。
図7図7は変形例に係るステータコアの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。本実施形態のモータは、搬送車の車輪に組み込まれるインホイールモータに関するものである。
【0010】
以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。特に断りのない限り、中心軸に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸を中心とする周方向、すなわち、中心軸の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。さらに、以下の説明において、「平面視」とは、軸方向から見た状態を意味する。また、水平面に載置した搬送車の鉛直方向を「上下方向」と呼び、上下方向の一方である上方を「上側」と呼び、上下方向の他方である下方を「下側」と呼ぶ。
【0011】
図1は搬送車の全体構成を示す図である。
図1に示すように、搬送車100は、本体部101と、本体部101に設けられた複数(本実施形態では例えば、4つ)の車輪102と、を有する。本体部101は、天板103と、車輪102と同じ数の車輪取り付け部104と、を含む。天板103は、搬送車100による搬送物を載置する上面に載置する。各車輪102は車輪取り付け部104にそれぞれ取り付けられる。車輪取り付け部104は天板103の下側に設けられている。車輪取り付け部104は不図示のサスペンションにより天板103に揺動可能とされている。
【0012】
図2は車輪取り付け部104に取り付けられた車輪102の要部構成を示す図である。
図2に示すように、車輪取り付け部104はシャーシ板13を含む。シャーシ板13は板状の金属板で構成される。シャーシ板13には、車輪102を取り付けるための取付孔13aが設けられている。
【0013】
本実施形態において、モータ1はアウターロータ方式のモータであって、車輪102に組み込まれるインホイールモータである。モータ1は、ロータの側面が車輪102のホイールとして機能する。
【0014】
モータ1は、ステータ2と、ロータ3と、一対のベアリング4a,4bと、センサ基板5と、中心軸Jに沿って延びるシャフト20と、を備えたアウターロータ型のモータである。ステータ2は、ステータコア34と、ステータコア34に装着されたコイル32とを有する。シャフト20の中心は中心軸Jと一致する。シャフト20は、軸受機構の一部となるベアリング4a,4bを軸方向においてそれぞれ支持する。シャフト20は、一端側がシャーシ板13にナット14により固定されている。
【0015】
ステータコア34は、複数枚の板状体を積層した積層体として形成されている。ステータコア34の外周部には、各磁極としての複数のティースが円周方向に所定間隔で配置されている。また、各ティースの内側の磁気回路を構成する腕部に、インシュレータ(不図示)を介してコイル32が巻回されている。このようにして、ステータコア34にコイル32を巻回したステータ2が構成される。
【0016】
ロータ3は、ベアリング4a,4bを介して中心軸Jを中心にステータ2に対して回転可能に支持される。ロータ3は、中心軸Jを中心とする略有蓋筒状であって磁性を有する金属製のロータコア33と、ロータコア33の側壁部の内側(すなわち、内周側)に設けられてステータ2のコイル32と対向して配置されるマグネット31とを備える。
【0017】
センサ基板5はモータ1の内部に設けられる。センサ基板5の表面には、各種の電子部品が半田付け等により実装される。例えば、センサ基板5において軸方向一方の側のロータ3側を向く面5aには複数のホール素子6が実装されている。ホール素子6は、中心軸J周りに回転するマグネット31から漏れる磁束変化を検出することで、ロータ3の中心軸J回りの回転角を検出する。
【0018】
シャフト20は、中心軸Jに沿って延びる軸部21を含む。シャフト20は、フランジ部25をさらに有する。フランジ部25は、シャフト20の軸部21における径方向外側に張り出して設けられる。本実施形態において、フランジ部25は軸部21と一体に形成されるが、フランジ部25と軸部21とを別体で構成し、接合してシャフト20を構成してもよい。
【0019】
シャフト20は、軸方向一方側に設けられたネジ部22と、挿入部(接続部)23と、軸方向他方側に設けられたベアリング保持部24と、をさらに含む。ネジ部22はシャフト20の軸方向一方の先端部に設けられており、外周面に雌ネジが形成される。シャフト20は、ネジ部22の雌ネジにナット14を取り付けることでシャーシ板13に固定される。
【0020】
挿入部23は、ネジ部22とフランジ部25とを接続する部位であり、軸部21の一部で構成される。挿入部23は、シャーシ板13の取付孔13aに挿入される。挿入部23における軸方向の長さは、シャーシ板13の厚さ、すなわち取付孔13aの深さに一致する。
【0021】
ベアリング保持部24は、シャフト20の軸方向他方の先端部に設けられており、外周面にベアリング4bを保持する。なお、ベアリング保持部24の外径は軸部21よりも小さい。
【0022】
フランジ部25は平面で構成された第1面25bを有する。第1面25bは、フランジ部25の軸方向におけるネジ部22側の面である。フランジ部25は、外面25aにベアリング4aを保持する。フランジ部25は、軸方向他方側につば部26を有する。つば部26は、フランジ部25の外面25aの周方向に沿って設けられ、外面25aから径方向外側に張り出している。つば部26はベアリング4aの軸方向他方側の側面に接触している。本実施形態において、フランジ部25はベアリング4aをガイドするガイド部材としての機能を有する。
【0023】
ところで、従来、インホイールモータは軸(シャフト)をシャーシ側にネジ止めすることで搬送車に取り付けられていた。近年、搬送車自体の小型化や軽量化を図るべく、搬送車に取り付けるインホイールモータを小さくしたいとの要望がある。しかしながら、インホイールモータを小型化した場合、ネジ止めするためのスペースが確保できなくなってしまう。
【0024】
そこで、軸の一方側に雌ネジを形成し、軸自体をナットで締め付けることで搬送車に取り付ける手法も考えられる。
しかしながら、例えば、モータを取り付ける際、ナットの締め付け力が軸とモータ本体との圧着力よりも大きくなり過ぎると、軸がモータ本体から抜けてしまい動作不良等の不具合を生じるおそれがある。
【0025】
これに対し、本実施形態のモータ1は、軸部21と一体化したフランジ部25を有するシャフト20を備えている。また、フランジ部25は、ネジ部22側の第1面25bを平面で構成している。
【0026】
これにより、上述のようにシャフト20をシャーシ板13の取り付ける際にナット14を締め付けた場合に、シャフト20には軸部21だけでなく軸部21と一体化したフランジ部25もシャーシ板13側に引っ張られる力が働くようになる。これにより、シャフト20は、フランジ部25の端面とシャーシ板13の面とが接触する。すなわち、平面からなる第1面25bがシャーシ板13の表面13bに面接触した状態で、シャフト20がシャーシ板13に固定される。
【0027】
したがって、本実施形態のモータ1によれば、軸部21と一体化したフランジ部25の第1面25bがシャーシ板13の表面13bと面接触することでナット14側への移動が規制される。そのため、仮にナット14を締め付け過ぎた場合でも、シャフト20がナット14に引っ張られてモータ本体(ステータ2)から抜けてしまうことがない。よって、モータ1の取付け時のナット14の締め付け過ぎによるシャフト抜けによる動作不良等の不具合の発生を抑制できる。
【0028】
図3図2を軸方向一方側から平面視した構成を示す図である。図3において、搬送車100における上下方向は両矢印Aの方向に一致する。図4はシャフト20を軸方向一方側から平面視した要部拡大図である。なお、図4において、両矢印Aの方向は搬送車100における上下方向に一致する。
【0029】
図3及び図4に示すように、フランジ部25の外形は円形である。フランジ部25は、開口27と、切欠き28と、を備える。開口27は軸方向においてフランジ部25を貫通した状態に設けられ、少なくとも開口27における径方向内側が軸部21の外面21aに沿う形状を有している。
【0030】
開口27における径方向内側の開口端27aの少なくとも一部が軸部21の外面21aと面一となっている。本実施形態において、開口27は周方向に沿って湾曲した長円形状を有している。開口27には後述するようにステータ2側から延びるリード線が通る。この開口27を介して、リード線はモータ1の内部から外部に引き出される。なお、開口27の大きさはステータ2側から延びるリード線の数や太さに応じて適宜設計される。
【0031】
切欠き28は、フランジ部25の外面25aの一部に設けられ、径方向において開口27に接続する。切欠き28は、軸方向においてフランジ部25の全体を切り欠くように設けられる。開口27は、切欠き28によって外部と連通した状態とされる。
【0032】
挿入部23は円形状の外縁部における上側の一部を直線状にカットした略D型の平面形状を有する。すなわち、挿入部23の中心軸Jに直交する断面は非円形状となっている。挿入部23は、上述したようにシャーシ板13の取付孔13aに挿入される。取付孔13aの内面形状は、挿入部23の外形に対応している。本実施形態のモータ1において、挿入部23及び取付孔13aはそれぞれ非円形状となっているため、シャフト20は中心軸J周りの回転が規制された状態でシャーシ板13に取り付けられる。なお、挿入部23の平面形状は、シャフト20のシャーシ板13に対する回転を規制可能な形状であれば上述のD型状に限定されるものではない。
【0033】
ところで、従来のインホイールモータにおいて、シャフト(軸)とステータとは例えばネジ止めによって固定されている。しかしながら、インホイールモータを小型化する場合、ネジ止めするためのスペースが確保できなくなってしまう。
【0034】
そこで、シャフトとステータとを接着剤で固定することも考えられるが、搬送車の走行時に生じる振動や衝撃がインホイールモータに伝わることで接着剤が剥離し、耐久性および信頼性の点で問題が生じるおそれがある。
【0035】
これに対し、本実施形態のモータ1では、下記構成を採用することでステータ2とシャフト20とを良好に固定することで耐久性および信頼性に優れたものとなっている。以下、ステータコア34とシャフト20との取付け構造について説明する。
【0036】
図5はステータコア34とシャフト20との取付け構造を示す分解図である。
図5に示すように、シャフト20は、軸部21の外面21aに中心軸Jに沿って延びるように設けられた第1の溝部29を有する。ステータコア34は、シャフト20の軸部21が挿入される挿入穴35と、挿入穴35の内周面35aに軸方向に沿って設けられた第2の溝部36と、を有する。
【0037】
本実施形態のモータ1では、ステータコア34とシャフト20とをピン30によって固定している。シャフト20は、第1の溝部29及び第2の溝部36における周方向の位置を一致させた状態で、挿入穴35に軸部21を挿入する。ピン30は、第1の溝部29及び第2の溝部36に挿入されることでステータコア34に対するシャフト20の周方向における回転を規制した状態で固定する。
【0038】
本実施形態において、ピン30の軸方向における寸法は挿入穴35の軸方向における寸法と同等である。第2の溝部36は挿入穴35の軸方向の全体に設けられている。これにより、ピン30は第2の溝部36に挿入されることでシャフト20の軸部21を挿入穴35の軸方向の全体に亘って固定する。以上のようにしてピン30は、ステータコア34に対するシャフト20の回転を規制する回転規制部材として機能する。なお、ピン30の軸方向における寸法は挿入穴35の軸方向における寸法より短くてもよい。
【0039】
ピン30の形状は、第1の溝部29及び第2の溝部36によって構成される穴形状に対している。本実施形態において、第1の溝部29の内面は平面で構成され、第2の溝部36の内面は曲面で構成される。本実施形態のピン30は、第1の溝部29に挿入される部分の断面が略矩形状であり、第2の溝部36に挿入される部分の断面が略円形状となっている。なお、ピン30は回転規制部材としての機能を有していればよく、ピン30の形状は上記形状に限定されない。例えば、ピン30の形状が円柱状や角柱状であってもよい。この場合、第1の溝部29及び第2の溝部36の形状はピン30の形状に応じて変化する。
【0040】
本実施形態のモータ1によれば、ピン30を用いることでステータコア34とシャフト20とを良好に固定することができるので、シャフトとステータとを接着剤で固定する場合のように搬送車100の走行時に生じる振動や衝撃がモータ1に伝わることで接着剤が剥離することがない。よって、ステータコア34に対してシャフト20が回転することでステータコア34に巻回されたコイル32から引き出される後述するリード線が断線するといった不具合の発生を防止した耐久性に優れたものとなる。
また、ピン30を用いることでステータコア34とシャフト20とを安価に固定できるので、ステータ2の製造コストを低減できる。
【0041】
センサ基板5はシャフト20に保持されている。センサ基板5は、軸方向において、ステータ2とフランジ部25との間に設けられる。センサ基板5は、中心軸Jに直交する板状からなる。センサ基板5は凹部7と突起部8とを有する。凹部7は、シャフト20の軸部21の外面21aに沿うように径方向内側に窪んだ形状を有する。突起部8は、凹部7の外縁7aにおける周方向中心部分から径方向内側に延びる。凹部7の外縁7aの中心は中心軸J上に位置する。
センサ基板5において、複数のホール素子6は、凹部7の径方向外側に、中心軸J周りの周方向に間隔をあけて配置される。本実施形態において、ホール素子6は、計3個が、中心軸J周りに60°ずつの間隔をあけて配置される。なお、ホール素子6の配置間隔は60°に限らない。
【0042】
シャフト20は、軸部21を凹部7に挿入することでセンサ基板5を保持する。より具体的にセンサ基板5は、第1の溝部29に突起部8をはめ込んだ状態で、凹部7にシャフト20の軸部21が挿入されている。センサ基板5はシャフト20に対する周方向の回転が規制された状態となっている。よって、センサ基板5は周方向における位置ずれが低減されることで高い検出精度を得ることができる。また、シャフト20をセンサ基板5の位置決めに用いることでモータ1の組み立て性を向上させることができる。
【0043】
図6はモータ1の要部構成を示す分解図である。図6はモータ1の構成部品のうちステータ2の周辺構成を示したものである。
図6に示すように、ステータ2は、コイル32から引き出されたリード線R1を含む。リード線R1は、ステータ2においてU相、V相、W相の各相のコイル32に直接接続される。リード線R1は先端部にコネクタR1tを備える。また、センサ基板5はホール素子6の検出結果を外部に出力するリード線R2を含む。リード線R2は先端部にコネクタR2tを備える。
【0044】
本実施形態のモータ1はアウターロータ型であるため、モータ内部と外部とを接続する上記リード線R1,R2をモータ1の回転の影響を受けないロータ3とは異なる場所から外側に引き出す必要がある。例えば、モータが大型であれば、シャフトの内部に配線を通して外まで引き出すことも可能となる。
【0045】
しかしながら、インホイールモータを小型化する場合、シャフト内部に配線を通すスペースがなくなってしまう。仮に、シャフト内部に配線を通すことができたとしても、コネクタを通すスペースがないと、シャフト内部に配線を通した後でコネクタを接続する必要が生じ、モータの組立時間が延びて生産性が低下してしまう。
【0046】
これに対し、本実施形態のモータ1は、シャフト20のフランジ部25に設けられた開口27及び切欠き28を介してリード線R1,R2をモータ1の外まで容易に引き出すことができる。リード線R1,R2はシャフト20の軸部21の外面21aに沿って軸方向一方側(ネジ部22側)に引き出される。フランジ部25に設けられた開口27及び切欠き28は、シャフト20の軸部21に対する各パーツ(コイル32およびステータコア34)の組み付け位置の基準としても機能するため、モータ1の組み立て性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態において、図3及び図4に示したように開口27内は切欠き28によって外部と連通した状態とされる。そのため、リード線R1,R2は切欠き28を介して径方向外側から開口27内に配置することができる。
【0048】
したがって、本実施形態のモータ1によれば、仮にリード線R1,R2の先端に設けられたコネクタR1t,R2tの大きさが開口27よりも大きい場合でも、コネクタR1t,R2tを開口27に通すことなく、リード線R1,R2を切欠き28を介して開口27内に通すことでシャフト20の軸方向一方側まで引き出すことができる。
【0049】
本実施形態のシャフト20は、開口27における径方向内側の開口端27aの少なくとも一部が軸部21の外面21aと面一となっているため、外面21aと開口27の内面との間で段差が生じない。そのため、軸部21の外面21aに沿って開口27まで引き出されたリード線R1,R2は、開口27と外面21aとの間で生じる段差による折り曲げや段差の角部によるダメージ等といった不具合の発生が抑制される。よって、リード線R1,R2における断線の発生を抑制できる。
【0050】
図4に示したように、フランジ部25は、径方向における厚みの薄い薄肉部分28aを有している。薄肉部分28aは切欠き28によって2つに分断されている。本実施形態において、切欠き28は開口27における周方向の中心に位置するため、2つの薄肉部分28aにおける周方向の長さは略等しい。
【0051】
ここで、切欠き28が開口27における周方向の中心からずれた場合について考える。この場合、薄肉部分28aの一方における周方向の長さは、切欠き28を周方向の中心に設けた場合の各薄肉部分28aの周方向の長さよりも長くなってしまう。薄肉部分28aにおける周方向の長さが必要以上に長くなると、フランジ部25の機械的強度が低下してしまう。また、2つの薄肉部分28aの周方向の長さに差が生じることで機械的強度のバランスも悪くなる。
【0052】
これに対し、本実施形態のシャフト20によれば、切欠き28を開口27における周方向の中心に位置させることで2つの薄肉部分28aにおける周方向の長さを揃えることができる。これにより、薄肉部分28aにおける周方向の長さが必要以上に長くなることによるフランジ部25の機械的強度の低下を抑制することができる。また、2つの薄肉部分28aの周方向の長さを揃えることでフランジ部25の周方向における強度バランスを安定させることができる。
【0053】
開口27によりシャフト20の軸方向一方側まで引き出されたリード線R1,R2は、シャーシ板13に設けられた貫通孔13cによってシャーシ板13の裏面13d側に引き出される。シャーシ板13の裏面13dに引き出されたリード線R1,R2のコネクタR1t,R2tは、例えば、不図示の天板103の下側に設けられた制御基板等に電気的に接続される。
【0054】
本実施形態のモータ1は、図3に示したように、フランジ部25に設けた開口27の位置が本体部101の天板103側にある状態で、搬送車100のシャーシ板13に固定される。フランジ部25に設けた開口27は中心軸Jよりも上側に位置する。
【0055】
より具体的に本実施形態のモータ1は、開口27と天板103との距離が最短となるように、本体部101(シャーシ板13)に取り付けられる。ここで、開口27と天板103との距離とは、開口27の中心27Cから天板103の表面までの距離を意味する。
本実施形態のモータ1において、シャフト20は、フランジ部25に設けられた開口27が最も上側に位置する、すなわち最も地面から離間した場所に位置するように、本体部101に取り付けられる。
【0056】
インホイールモータとして用いられるモータ1は、ロータ3が車輪102のホイールとして機能するため、地面からの衝撃や振動が直接伝わる。その際、地面から負荷を受けた場合、シャーシ板13に対するモータ1の固定部分であるシャフト20に外力が加わる。
【0057】
ここで、比較例として、例えば、フランジ部25の開口27が中心軸Jよりも下側に位置するようにシャフト20がシャーシ板13に固定されている場合について考える。すなわち、開口27および切欠き28が地面に対向する位置に配置されるようにモータ1がシャーシ板13に固定された場合について考える。
【0058】
このように開口27および切欠き28が地面に対向する位置に配置された場合において、モータ1が地面から負荷を受けると、フランジ部25のうちの下側部分、すなわちフランジ部25における開口27および切欠き28が設けられた部分に力が加わる。開口27および切欠き28が設けられた部分は機械的強度が低いため、外力によって外形に歪みが生じ、外形が円形からくずれてしまうおそれがある。フランジ部25の外形が円形から歪むと、フランジ部25に保持されるベアリング4aが回り難くなることでモータ1の回転不良が生じるおそれがある。
【0059】
これに対し、本実施形態の搬送車100では、フランジ部25の開口27が中心軸Jよりも上側に位置した状態で、シャフト20がシャーシ板13に固定される。より具体的に、本実施形態のモータ1は、開口27から天板103までの距離が最小となるように、シャーシ板13に取り付けられている。
【0060】
そのため、本実施形態の搬送車100において、モータ1が地面から負荷を受けると、フランジ部25のうちの下側部分、すなわちフランジ部25における開口27および切欠き28が設けられていない部分に外力が加わる。開口27および切欠き28が設けられていない部分は、開口27および切欠き28が設けられた部分に比べて相対的に機械的強度が高いため、外力の影響を受け難い。そのため、外力によって外形が歪むことによるフランジ部25の変形に起因したモータ1の回転不良の発生を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態のモータ1では、上述のように切欠き28が開口27における周方向の中心に設けられるため、2つの薄肉部分28aの周方向の長さを揃えることができる。これにより、切欠き28を設けることによるフランジ部25の機械的強度の低下を抑制するとともに、フランジ部25の周方向における強度バランスを安定させることができる。よって、上述したフランジ部25の変形をより抑制することでモータ1の耐久性をより向上させることができる。
【0062】
以上述べたように本実施形態の搬送車100によれば、フランジ部25の開口27が中心軸Jよりも上側に位置するので、走行時の振動や衝撃等によって、フランジ部25における開口27および切欠き28が設けられていない部分に外力が加わるようになる。開口27および切欠き28が設けられていない部分は開口27および切欠き28が設けられた部分に比べて強度的強度が相対的に高いため、外力の影響を受け難い。よって、フランジ部25の変形に起因したモータ1の回転不良の発生を抑制できる。
したがって、機械的強度を維持しつつ小型化が可能な搬送車100を提供できる。
【0063】
また、本実施形態の搬送車100によれば、フランジ部が径方向において開口27に接続する切欠き28を有するので、仮にリード線R1,R2の先端に設けられたコネクタR1t,R2tの大きさが開口27よりも大きい場合でも、コネクタR1t,R2tを開口27に通すことなく、リード線R1,R2を切欠き28を介して開口27内に通すことでシャフト20の軸方向一方側まで引き出すことができる。
【0064】
また、本実施形態の搬送車100によれば、切欠き28が開口27における周方向の中心に位置するので、2つの薄肉部分28aにおける周方向の長さを揃えることができる。よって、フランジ部25の機械的強度の低下を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態の搬送車100によれば、本体部101がモータ1の上側に設けられる天板103を含み、モータ1は開口27から天板103までの距離が最小となるように、本体部101に取り付けられるので、外力によって外形が歪むことによるフランジ部25の変形に起因したモータ1の回転不良の発生を抑制できる。
【0066】
以上に、本発明の一実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0067】
例えば、上記実施形態では、ステータコア34に対するシャフト20の回転規制部材としてピン30を用いる場合を例に挙げたが、回転規制部材としてはピン30に限定されない。図7は変形例に係るステータコアの構成を示す図である。図7に示すように、変形例のステータコア34は、シャフト20の軸部21が挿入される挿入穴35の内周面35aに設けられた柱状部37を有している。
【0068】
本変形例では、ステータコア34とシャフト20とを柱状部材37によって固定している。シャフト20は、第1の溝部29及び柱状部材37における周方向の位置を一致させた状態で、挿入穴35に軸部21を挿入する。柱状部材37は、第1の溝部29に挿入されることでステータコア34に対するシャフト20の周方向における回転を規制した状態で固定する。
【0069】
柱状部材37は軸方向において挿入穴35の全体に亘って設けられている。そのため、柱状部材37は、挿入穴35の軸方向の全体にわたってシャフト20の軸部21を固定することができる。このように柱状部材37は、ステータコア34に対するシャフト20の回転を規制する回転規制部材として機能する。
【0070】
本変形例の構成によれば、ステータコア34に対してシャフト20を挿入するといった簡便な工程でステータ2を組み付けることができる。よって、ステータ2の製造コストを低減できる。
【0071】
また、上記実施形態では、開口27の少なくとも径方向内側が軸部21の外面21aに沿う形状を有する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、開口27はリード線R1,R2を引き出し可能な形状であれば、径方向内側が軸部21の外面21aに沿わない形状を有していてもよい。
【0072】
上記実施形態では、開口27が周方向に沿って湾曲した長円形状を有する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、開口27はリード線R1,R2を引き出し可能であれば、例えば、矩形状、楕円状、円形状、三角形状などであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…モータ、2…ステータ、20…シャフト、21…軸部、25…フランジ部、26…部、27…開口、27C…中心、28…切欠き、100…搬送車、101…本体部、103…天板、J…中心軸、R1,R2…リード線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7