(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】トラジピタントによるアトピー性皮膚炎の改善された治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20230912BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230912BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230912BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230912BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230912BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61K31/444 ZMD
A61P17/00
A61P17/04
A61P37/08
A61P43/00 111
G01N33/68
G01N33/50 Q
(21)【出願番号】P 2020515146
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 US2018048825
(87)【国際公開番号】W WO2019055225
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-12
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313006588
【氏名又は名称】バンダ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VANDA PHARMACEUTICALS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロポウロス、ミハエル、エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、チャンフ
(72)【発明者】
【氏名】ビルズニク、ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】へイトマン、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スミシェク、サンドラ
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/141341(WO,A1)
【文献】特開2004-250329(JP,A)
【文献】特表2008-530522(JP,A)
【文献】特開2014-193155(JP,A)
【文献】特表2016-523260(JP,A)
【文献】PLoS One,2016年,Vol.11, No.5, e0156077,pp.1-15
【文献】Acta Dermato Venereologica,2015年,Vol.95,p.886, Abstract OP22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 37/00
A61P 17/00
A61P 43/00
G01N 33/00-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掻痒症又はアトピー性皮膚炎に罹患している患者
の治
療において使用するための、トラジピタント又はその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、ここで前記
治療は、
前記患者からの生体サンプル中
にバイオマーカーが存在するか存在しないか
の同
定、ここで、
前記バイオマーカーはトラジピタント治療効果に関連
し、以下のa)~c)
a)
前記患者の遺伝子配列における、ベースラインIgE濃度と関連する
1つ又は複数のSN
P遺伝子型
の存在、ここで、前記SNP
遺伝子型は、rs4575660
TT、rs276555
CC、rs74416548
ATAT、rs276556
GG、rs276560
CC、rs276561
TT、rs276562
GG、rs276563
CC、rs276564
GG、rs276571
GG、rs140796
TATTGTATTG、rs276573
TT、rs276574
GG、rs4895474
TT、rs4895475
GG、rs9483989
TT、rs9373178
CC、rs4896234
CC、rs2327798
GG、rs62420823
GG、rs17252967
CC、rs9494657
AA、rs9402871
GG、rs9402872
CC、rs9399201
GG、rs4896235
AA、rs719640
AA、rs9373179
AA、rs9385784
TT、rs2146275
AA、rs6941440
TT、rs4896237
TT、rs6929580
GG、rs4896239
TT、rs4895479
CC、rs4895480
TT、rs4280975
GG、rs6911523
AA、rs6912319
GG、rs2280090
非GG、及びrs57930837
非AAからなる群から選択される、
b)
前記患者の遺伝子配列における1つ又は複数のSNP遺伝子型の存在、ここで、前記SNP
遺伝子型は、rs16847120
GG、rs249122
AA、rs6862796
CC、rs249137
TT、rs249138
TT、rs144713688
GAGAA、rs73258486
GG/GA、rs6480251
CC/CT、rs6480252
TT/TC、rs10822978
TT/TA、rs10997525
GG/GA、rs10997527
CC/CA、rs7074325
CC/CT、rs57930837
CC/CA、rs11453660
CACA/CAC、rs2199792
AA/AG、rs4963245
非CC、rs12990449
非TT、rs727162
非CC、rs58161637
非GG、rs62622847
非CC、rs3213755
非AA、rs41521946
非TT、rs28362678
非AA、rs35624343
非AA、rs28362677
非TT、rs11207832
非CC、rs1954436
非CC、rs11207834
非CC、rs370530530
非CTCT、rs11207838
非TT、rs150980554
非AA、rs7551886
非CC、rs6664979
非CC、rs12043665
非AA、rs12030784
非TT、rs79037385
非GG、rs74568317
非CC、rs3790575
非CC、及びrs77939406
非GGからなる群から選択される、及び
c)
100kU/Lの閾値濃度より大きい、ベースラインにおける血漿中IgE濃度
から選択される;並びに
トラジピタント治療効果と関連するバイオマーカーが存在する場合
における、前記患者
への有効用量でのトラジピタント
の投
与
を含む、組成物。
【請求項2】
トラジピタントの前記有効用量は170mg/日である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
トラジピタントの前記有効用量は85mgを一日二回(bid)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
トラジピタント治療効果に関連するバイオマーカーが存在しない場合は、前記有効用量よりも大きい用量で前記患者にトラジピタントを投与することをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記有効用量よりも大きいトラジピタントの前記用量は170mg/日超340mg/日以下である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記有効用量よりも大きいトラジピタントの前記用量は170mg/日超255mg/日以下である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記ベースラインにおける血漿中IgE濃度は150kU/L
超である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ベースラインにおける血漿中IgE濃度は200kU/L
超である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ベースラインにおける血漿中IgE濃度は300kU/L
超である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項10】
掻痒症又はアトピー性皮膚炎に罹患している患者を治療するためのトラジピタント又はその薬学的に許容される塩の有効用量を同定する方法であって、
前記患者からの生体サンプル中
にバイオマーカーが存在するか存在しないかを同定すること、ここで、
前記バイオマーカーはトラジピタント治療効果に関連
し、以下のa)~c)
a)
前記患者の遺伝子配列における、ベースラインIgE濃度と関連する
1つ又は複数のSN
P遺伝子型
の存在、ここで、前記SNP
遺伝子型は、rs4575660
TT、rs276555
CC、rs74416548
ATAT、rs276556
GG、rs276560
CC、rs276561
TT、rs276562
GG、rs276563
CC、rs276564
GG、rs276571
GG、rs140796
TATTGTATTG、rs276573
TT、rs276574
GG、rs4895474
TT、rs4895475
GG、rs9483989
TT、rs9373178
CC、rs4896234
CC、rs2327798
GG、rs62420823
GG、rs17252967
CC、rs9494657
AA、rs9402871
GG、rs9402872
CC、rs9399201
GG、rs4896235
AA、rs719640
AA、rs9373179
AA、rs9385784
TT、rs2146275
AA、rs6941440
TT、rs4896237
TT、rs6929580
GG、rs4896239
TT、rs4895479
CC、rs4895480
TT、rs4280975
GG、rs6911523
AA、rs6912319
GG、rs2280090
非GG、及びrs57930837
非AAからなる群から選択される、
b)
前記患者の遺伝子配列における1つ又は複数のSNP遺伝子型の存在、ここで、前記SNP
遺伝子型は、rs16847120
GG、rs249122
AA、rs6862796
CC、rs249137
TT、rs249138
TT、rs144713688
GAGAA、rs73258486
GG/GA、rs6480251
CC/CT、rs6480252
TT/TC、rs10822978
TT/TA、rs10997525
GG/GA、rs10997527
CC/CA、rs7074325
CC/CT、rs57930837
CC/CA、rs11453660
CACA/CAC、rs2199792
AA/AG、rs4963245
非CC、rs12990449
非TT、rs727162
非CC、rs58161637
非GG、rs62622847
非CC、rs3213755
非AA、rs41521946
非TT、rs28362678
非AA、rs35624343
非AA、rs28362677
非TT、rs11207832
非CC、rs1954436
非CC、rs11207834
非CC、rs370530530
非CTCT、rs11207838
非TT、rs150980554
非AA、rs7551886
非CC、rs6664979
非CC、rs12043665
非AA、rs12030784
非TT、rs79037385
非GG、rs74568317
非CC、rs3790575
非CC、及びrs77939406
非GGからなる群から選択される、及び
c)
100kU/Lの閾値濃度より大きい、ベースラインにおける血漿中IgE濃度
から選択される;並びに
前記生体サンプル中における前記バイオマーカーの存在の有無に基づいてトラジピタント又はその薬学的に許容される塩の有効用量を同定すること
を含み、
前記生体サンプル中に
1つ又は複数のバイオマーカーが存在する場合にはトラジピタントの前記
有効用量は170mg/日であり、前記生体サンプル中
にバイオマーカーが存在しない場合にはトラジピタントの前記
有効用量は170mg/日超340mg/日以下である、方法。
【請求項11】
前記生体サンプル中に前記バイオマーカーが存在する場合には、トラジピタントの前記有効用量は85mgを一日二回(bid)である、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記生体サンプル中に前記バイオマーカーが存在しない場合には、トラジピタントの用量は170mg/日超255mg/日以下である、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記ベースラインにおける血漿中IgE濃度は150kU/L
超である、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記ベースラインにおける血漿中IgE濃度は200kU/L
超である、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
前記ベースラインにおける血漿中IgE濃度は300kU/L
超である、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年9月13日出願の米国仮特許出願第62/558,303号及び2017年10月14日出願の米国仮特許出願第62/572,456号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis、AD)は、皮膚の過敏反応によって引き起こされる一般的で慢性的な再発性の炎症性皮膚疾患であり、激しい持続的な掻痒感や痒みの症状を特徴とし、このような掻痒感や痒みは局部的又は全身性であり得、また、掻いても解消されないものでありうる。その他の臨床的特徴には、紅斑、擦過傷、浮腫、苔癬化、滲出、及び乾皮症が含まれる。痒みを原因とする掻破は、剥けた、過敏性の膨潤した皮膚につながり得、それにより皮膚が感染しやすくなりうる。アトピー性皮膚炎(AD)はアトピー性湿疹又は湿疹としても知られており、小児期に頻繁に現れる。
【0003】
免疫グロブリンE(IgE)を介したアレルギーは、アトピー性皮膚炎及び喘息や食物アレルギーなどの他の臨床表現型の病態生理において中心的な役割を果たす。アトピー及び血漿IgE濃度は遺伝的に複雑な特性であり、IgEの調節不全と臨床的アトピーとにつながる特定の遺伝的危険因子は盛んに研究されている領域である。
【0004】
他の遺伝子もアトピー性皮膚炎の表現型に関与している。CTNNA3は、細胞間接着に重要である構造カドヘリンをコードする。CTNNA3は、アレルギーや喘息にも重要である。CTNNA3レベルの低下は、喘息患者の気管支生検で見られ、好酸球数と逆相関している。CTNNA3のバリアントは、ゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study、GWAS)において、小児喘息におけるグルココルチコイド療法への応答と関連付けられている。
【0005】
INADLは、密着結合(タイトジャンクション)や上皮細胞の頂端膜に局在する複数のPDZドメインを持つタンパク質をコードする遺伝子である。アトピー性皮膚炎を有する患者では、タイトジャンクション異常が示されている。具体的には、タイトジャンクションは角質層直下に存在し、傍細胞経路の選択的透過性を制御する。
【0006】
アトピー性皮膚炎によって引き起こされる慢性掻痒症などの慢性掻痒症は、深刻かつ満たされていない医学的ニーズを示している。痒みを感じることは、少なくとも部分的には、内因性神経ペプチドであるP物質(substance P、SP)の作用により、複数の皮膚細胞上に発現するNK-1Rでの結合を介して誘発されると考えられている。
【0007】
NK-1Rは、身体の様々な組織に発現しており、主要な活性は神経組織に見られる。神経組織におけるSP及びNK-1Rの相互作用は、局所的に神経性炎症を制御し、また中枢神経系を介した疼痛知覚経路を制御する。内皮細胞及び免疫細胞などその他の組織も、SP及びNK-1R活性を示している。天然リガンドSPによるNK-1Rの活性化は、疼痛の知覚、行動ストレッサー、渇望、吐き気や嘔吐のプロセスなど、多くの生理学的プロセスに関与している。神経組織又は末梢でのSPの不適切な過剰発現は、物質依存、不安、悪心/嘔吐、及び掻痒などの病理学的状態を引き起こす可能性がある。NK-1Rアンタゴニストは、NK-1Rのこうした過剰刺激を低減させる能力を有し得るものであり、結果として、これらの状態における症状の根本的な病態生理に対処し得る。
【0008】
トラジピタント(Tradipitant)は、以前はVLY-686として知られていた強力かつ選択的なニューロキニン1受容体アンタゴニストであり、化学名は2-[l-[[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]-5-(4-ピリジニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-yl]-3-ピリジニル](2-クロロフェニル)-メタノン及び{2-[1-(3,5-ビストリフルオロメチルベンジル)-5-ピリジン-4-イル-lH-[l,2,3]トリアゾール-4-イル]-ピリジン-3-イル}-(2-クロロフェニル)-メタノンであり、以下の化学構造式を有する。
【0009】
【0010】
トラジピタントは、米国特許第7,320,994号に開示され、6つの主要な構造コンポーネント(3,5-ビス-トリフルオロメチルフェニル部分、2つのピリジン環、トリアゾール環、クロロフェニル環、及びメタノン)を含む。トラジピタントの結晶型IV及びVは、米国特許第7,381,826号に開示されている。トラジピタントを合成するプロセスは、米国特許第8,772,496号、第9,708,291号、及び第10,035,787号に開示されている。
【発明の概要】
【0011】
本明細書に開示される本発明の様々な態様は、そのような治療に有効な量でトラジピタントを投与することにより、それを必要とする個体における掻痒症又はアトピー性皮膚炎を治療する改善された方法に関する。1つのそのような改善によれば、患者の遺伝子型が、高IgEレベルあるいはそれ以外の点でポジティブなトラジピタント治療応答に関連する遺伝子型を含むという判定に基づいて、前記患者を治療対象に選択し得ることが提供される。具体的には、掻痒症又はアトピー性皮膚炎を有する患者を治療するために有効な量のトラジピタントを投与することからなる方法において、本発明の1つの態様は、前記患者の遺伝子型が、高IgEレベル又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連する遺伝子型を含むという判定に基づいて、前記患者を治療対象に選択すること、を含む改善である。
【0012】
これについて、高IgEレベルと関連する前記遺伝子型は、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571 GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989 TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657 AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179 AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択されてもよい。
【0013】
さらに、ポジティブなトラジピタント治療応答と関連する前記遺伝子型は、rs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択されてもよい。
【0014】
掻痒症又はアトピー性皮膚炎を有する患者を治療するために有効な量のトラジピタントを投与することからなる方法における本発明の別の態様は、前記患者のIgEレベルが50kU/L以上であるという判定に基づいて、前記患者を前記の治療の対象に選択すること、を含む改善を含む。
【0015】
あるいは、前記患者が75kU/L以上、100kU/L以上、150kU/L以上、200kU/L以上、又は300kU/L以上のIgEレベルを有する場合に、当該改善がなされる。いずれにしても、上記のような改善された方法は、前記患者にトラジピタントを100~400mg/日、100~300mg/日、又は100~200mg/日の用量で内服投与することによって実施されてもよい。具体的には、前記一日当たり用量は、前記患者にトラジピタントを85mgの用量で1日2回(bid)内服投与することを含んでいてもよい。
【0016】
本発明は、以下を含む、掻痒症又はアトピー性皮膚炎に罹患している患者をトラジピタントで治療する改善された方法をさらに提供する:
最初に、IgEレベル又はトラジピタント治療効果に関連する1又は複数の一塩基多型(SNP)における前記患者の遺伝子型の同定に基づいて、前記患者を治療するのに有効な投与量を選択すること、
その後、前記患者が高いIgEレベル又はトラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連する遺伝子型を有する場合は、前記患者の遺伝子型の同定が無い場合に選択されるはずの、前記患者における掻痒症又はアトピー性皮膚炎を治療するために有効な投与量で前記患者にトラジピタントを内服投与すること、及び、
前記患者が高いIgEレベル又はトラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連しない遺伝子型を有する場合は、前記患者の遺伝子型の同定が無い場合に前記患者のために選択されるはずの前記投与量よりも高い投与量でトラジピタントを前記患者に内服投与すること。
【0017】
前述の方法は、高IgEレベルに関連するSNPにおける前記患者の遺伝子型を同定することにより実施してもよく、前記SNPは、rs4575660、rs276555、rs74416548、rs276556、rs276560、rs276561、rs276562、rs276563、rs276563、rs276564、rs276564、rs276571、rs140796、rs276573、rs276574、rs4895474、rs4895475、rs9483989、rs9373178、rs4896234、rs2327798、rs62420823、rs17252967、rs9494657、rs9402871、rs9402872、rs9399201、rs4896235、rs719640、rs9373179、rs9385784、rs2146275、rs6941440、rs4896237、rs6929580、rs4896239、rs4895479、rs4895480、rs4280975、rs6911523、rs6912319、rs2280090、及びrs57930837からなる群から選択される。
【0018】
例えば、この方法は、高IgEレベルと関連する前記遺伝子型が、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571 GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989 TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657 AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179 AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択されるものであるとして実施してもよい。
【0019】
あるいは、この方法は、トラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連するSNPにおける患者の遺伝子型を同定することにより実施してもよく、前記SNPは、rs16847120、rs249122、rs6862796、rs249137、rs249138、rs144713688、rs73258486、rs6480251、rs6480252、rs10822978、rs10997525、rs10997527、rs7074325、rs57930837、rs11453660、rs2199792、rs4963245、rs12990449、rs727162、rs58161637、rs62622847、rs3213755、rs41521946、rs28362678、rs35624343、rs28362677、rs11207832、rs1954436、rs11207834、rs370530530、rs11207838、rs150980554、rs7551886、rs6664979、rs12043665、rs12030784、rs79037385、rs74568317、rs3790575、及びrs77939406からなる群から選択される。
【0020】
あるいは、前述の方法は、トラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連する前記遺伝子型は、rs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択されるものとして実施してもよい。
【0021】
本発明の別の態様は、以下を含む、掻痒症又はアトピー性皮膚炎を有する患者を治療に有効な量のトラジピタントを投与することにより治療する方法に関する:
前記患者のベースラインIgEレベルを同定することに基づいて、前記患者を治療するのに有効な投与量を選択すること;並びに、
前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有する場合は、前記患者のベースラインIgEレベルの同定が無い場合に選択されたはずの、前記患者における掻痒症又はアトピー性皮膚炎を治療するために有効な投与量で、前記患者にトラジピタントを内服投与すること、及び
前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有さない場合は、前記患者のベースラインIgEの同定が無い場合に前記患者のために選択されたはずの前記投与量よりも高い投与量でトラジピタントを前記患者に内服投与すること。
【0022】
前述の方法は、前記患者からの生体サンプルを試験して前記生体サンプル中のIgEの量を決定することにより前記患者のベースラインIgEレベルを同定することをさらに含んでいてもよい。さらに、前記方法によれば、遺伝子型に基づいて差示的な投与量となり、これには、より高い用量のトラジピタントの投与を受ける患者に、170mg/日超~340mg/日の量が内服投与されるよう、より具体的には170mg/日超~255mg/日の量が内服投与されるよう、投薬することが含まれる。より具体的には、170mg/日超の量は、例えば、170mg/日よりも約25%高い値であってもよい。投与量選択の一例では、約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有するとして特定された患者について、170mg/日の投与量が選択される(例えば、85mg bid(1日2回))。
【0023】
本発明のさらに別の態様では、以下を含む、アトピー性皮膚炎に罹患している患者を治療するのに有効なトラジピタントの投与量を選択する方法が提供される:
(1)rs4575660、rs276555、rs74416548、rs276556、rs276560、rs276561、rs276562、rs276563、rs276563、rs276564、rs276564、rs276571、rs140796、rs276573、rs276574、rs4895474、rs4895475、rs9483989、rs9373178、rs4896234、rs2327798、rs62420823、rs17252967、rs9494657、rs9402871、rs9402872、rs9399201、rs4896235、rs719640、rs9373179、rs9385784、rs2146275、rs6941440、rs4896237、rs6929580、rs4896239、rs4895479、rs4895480、rs4280975、rs6911523、rs6912319、rs2280090、rs57930837、rs4963245、rs12990449、rs727162、rs58161637、rs62622847、rs3213755、rs41521946、rs28362678、rs35624343、rs28362677、及びrs11207834からなる群から選択される1又は複数のSNPにおける前記患者の遺伝子型を同定すること、及び
(2)約170mg/日の投与量を以下の場合に選択すること:
(A)前記患者の遺伝子型が、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571 GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989 TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657 AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179 AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択される、高IgEに関連する1又は複数のバリアントを含む場合、若しくは、
(B)rs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択されるポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のバリアントを含む場合、又は
(3)前記患者の遺伝子型が、高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連するバリアントを含まない場合は、約170mg/日超の投与量を選択すること。
【0024】
本発明には、アトピー性皮膚炎に罹患している患者であってベースラインIgEレベルが同定されている患者を治療するのに有効なトラジピタントの投与量を決定する方法であって、前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有する場合に約170mg/日の投与量を選択すること、又は前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有さない場合に170mg/日を超える投与量を選択すること、を含む方法も含まれる。同様に、本発明には、以下を含む、患者がトラジピタントによるアトピー性皮膚炎の治療に応答する可能性が高いと判定する方法も含まれる:
(1)rs4575660、rs276555、rs74416548、rs276556、rs276560、rs276561、rs276562、rs276563、rs276563、rs276564、rs276564、rs276571、rs140796、rs276573、rs276574、rs4895474、rs4895475、rs9483989、rs9373178、rs4896234、rs2327798、rs62420823、rs17252967、rs9494657、rs9402871、rs9402872、rs9399201、rs4896235、rs719640、rs9373179、rs9385784、rs2146275、rs6941440、rs4896237、rs6929580、rs4896239、rs4895479、rs4895480、rs4280975、rs6911523、rs6912319、rs2280090、rs57930837、rs4963245、rs12990449、rs727162、rs58161637、rs62622847、rs3213755、rs41521946、rs28362678、rs35624343、rs28362677、及びrs11207834からなる群から選択される1又は複数のSNPにおける前記患者の遺伝子型を同定すること、及び
(2)前記患者の遺伝子型が、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571 GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989 TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657 AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179 AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択される1又は複数のバリアントを含む場合に、又はrs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択されるポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のバリアントを含む場合に、前記患者が前記治療に応答する可能性が高いと判定すること。
【0025】
同様に、本発明には、IgEレベルがトラジピタントによるアトピー性皮膚炎の治療に応答する可能性が高いと特定されている患者を同定する方法であって、前記患者のベースラインIgEレベルが約100kU/Lを超える場合に、前記患者をトラジピタント治療に応答する可能性が高いと判定することを含む方法が含まれる。
【0026】
上記に基づいて、本発明は、以下のように記載することもできる多数の態様を有する。
本発明の第1の態様において、トラジピタントを内服投与することによる、掻痒症又はアトピー性皮膚炎の治療を必要とする個体における掻痒症又はアトピー性皮膚炎を治療する改善された方法が提供される。
【0027】
本発明の第2の態様では、掻痒症及び/又はアトピー性皮膚炎の治療を必要とする個体にトラジピタントを内服投与することにより、前記個体における掻痒症及び/又はアトピー性皮膚炎を治療することを含む方法が提供される。前記方法では、前記患者が閾値以上のIgEレベルを有するという判定に基づいて、前記患者を治療対象に選択してもよく、前記閾値は、例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/Lであってもよい。
【0028】
前記第1の態様及び第2の態様のいずれにおいても、トラジピタントの用量は、例えば、100~400mg/日、100~300mg/日、100~200mg/日、又は約170mg/日であってもよく、これは85mg bid(1日2回)として投与してもよい。
【0029】
本発明の第3の態様では、掻痒症及び/又はアトピー性皮膚炎に罹患している患者をトラジピタントで治療する方法が提供される。前記方法は、以下のステップを含む:
IgEレベル又はトラジピタント治療効果に関連する1又は複数の一塩基多型(SNP)における前記患者の遺伝子型を同定するステップ、及び
前記患者が高いIgEレベル又はトラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連する遺伝子型を有する場合は、前記患者にトラジピタントを第1の投与量で内服投与するステップ、及び
前記患者が高いIgEレベル又はトラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連しない遺伝子型を有する場合は、前記第1の投与量よりも多い第2の投与量でトラジピタントを前記患者に内服投与するか、又はトラジピタント以外の医薬有効成分を内服投与するステップ。
【0030】
本発明の第4の態様では、掻痒症及び/又はアトピー性皮膚炎に罹患している患者をトラジピタントで治療する方法が提供される。前記方法は、以下のステップを含む:
前記患者のベースラインIgEレベルを同定するステップ;並びに、
閾値以上のベースラインIgEレベルを前記患者が有する場合、第1の投与量で、前記患者にトラジピタントを内服投与するステップ、ここで前記閾値は、例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/Lであってもよい、及び、
前記閾値を超えるベースラインIgEレベルを前記患者が有さない場合、前記第1の投与量よりも多い第2の投与量でトラジピタントを前記患者に内服投与するか、又はトラジピタント以外の医薬有効成分を内服投与するステップ。
様々な実施形態では、前記第1の投与量は、約170mg/日であってもよく、これは85mg bid(1日2回)として投与してもよく、前記第2の投与量は、例えば、約170mg/日超~340mg/日、又は約170mg/日超~255mg/日であってもよい。
【0031】
本発明の第5の態様では、高IgEレベル又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のSNPにおける患者の遺伝子型を同定することを含む、アトピー性皮膚炎に罹患している患者の治療のためのトラジピタントの投与量を選択する方法が提供され、ここで
前記患者の遺伝子型が高IgEレベルに関連する1又は複数のバリアントを含む場合、前記投与量は約170mg/日であり、
前記患者の遺伝子型が高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連するバリアントを含まない場合、前記投与量は約170mg/日超である。
【0032】
本発明の第6の態様では、アトピー性皮膚炎に罹患している患者についてベースラインIgEレベルを同定することを含む、アトピー性皮膚炎に罹患している患者の治療のためのトラジピタントの投与量を選択する方法が提供され、
ここで、前記患者のベースラインIgEが閾値レベル以上である場合、前記投与量は約170mg/日であり、ここで前記閾値レベルは、例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/Lなどであり、
前記患者のベースラインIgEが前記閾値レベル以下である場合、前記投与量は約170mg/日超である。
【0033】
本発明の第7の態様では、高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のSNPにおける患者の遺伝子型を同定することを含む、アトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症のトラジピタントによる治療に患者が応答する可能性が高いかどうかを予測する方法が提供され、
ここで、前記患者の遺伝子型が高IgEに関連する1又は複数のバリアントを含む場合、前記患者は前記トラジピタント治療に応答する可能性が高く、前記患者の遺伝子型が、高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連するバリアントを含まない場合、前記患者は前記治療に応答する可能性が低い。
【0034】
本発明の第8の態様では、患者についてのベースラインIgEレベルを同定することを含む、アトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症のトラジピタントによる治療に患者が応答する可能性が高いかどうかを予測する方法が提供され、ここで、
前記患者のベースラインIgEが、閾値レベル以上である場合、前記患者は前記トラジピタント治療に応答する可能性が高く、ここで前記閾値レベルは、例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/Lなどであり、
前記患者のベースラインIgEが前記閾値レベル以下である場合、前記患者は前記治療に応答する可能性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、実施例1に記載の、VAS変化対トラジピタントの濃度-重量(スピアマン(Spearman)の相関のP値=0.0204)の散布図を示す。
【
図2】
図2は、実施例1に記載の、濃度*重量対受診時間を示すトラジピタントの血清レベルの散布図を示す。
【
図3】
図3は、実施例3に記載された試験のデザインを示す。
【
図4】
図4は、実施例3に記載された試験における時間経過対掻痒のベースライン結果からの変化を示す。
【
図5】
図5は、実施例3に記載される試験における時間経過対疾患の結果を示す。
【
図6】
図6は、実施例5に記載の、SNP rs276571とIgEのレベルとの関連を示す。
【
図7】
図7は、実施例5に記載の、SNP rs276571とベースラインSCORADとの関連を示す。
【
図8】
図8は、実施例5に記載の、SNP rs4575660と対数変換されたIgEレベルとの関連を示す。
【
図9】
図9は、実施例5に記載の、SNP rs2280090とIgEのレベルとの関連を示す。
【
図10】
図10は、実施例6に記載の、CTNNA3 rs57930837マイナーアレルを保有している人々における、アトピー性皮膚炎のトラジピタント治療に対する応答者と非応答者の割合を示す。
【
図11】
図11は、実施例6に記載されるように、CTNNA3 rs57930837遺伝子型によって分けられたアトピー性皮膚炎のトラジピタント治療に対する応答者及び非応答者の数(n)を示す。
【
図12】
図12は、
図6に記載のCTNNA3 rs57930837バリアントとIgEレベルとの関連を示す。
【
図13】
図13は、実施例6に記載されるように、INADL rs11207834バリアントと最悪痒みの変化との関連を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載の改良された方法は、トラジピタントを使用して掻痒症及び/又はアトピー性皮膚炎を治療する方法、アトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症に罹患している患者の治療に使用するためのトラジピタントの投与量を選択する方法、及び患者がアトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症に対するトラジピタント治療に応答する可能性が高いと判定する方法を含む。
【0037】
患者におけるアトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症を治療するためにトラジピタントを使用する方法は、IgEレベル及びトラジピタント治療効果のうちの一方又は両方に関連する1又は複数のSNPにおける患者の遺伝子型を最初に同定することを含んでいてもよい。以下の実施例に示すように、ベースライン免疫グロブリンE(IgE)レベルは、トラジピタント治療効果と関連している。このため、IgEの遺伝的修飾因子は、トラジピタント治療効果のマーカーであると考えることも可能である。さらに、本明細書では、IgEレベルとは無関係にトラジピタント治療効果に直接関連する多数の遺伝子マーカーが同定される。そのようなSNPの例は、本明細書に記載されており、例えば表8、表10、表11、及び表12に示されている。
【0038】
同定するステップは、多くの異なる同定方法を含んでいてもよい。一態様では、遺伝子型を同定することは、治療対象の患者から採取された生体サンプルに対して遺伝子型決定アッセイを行うことを含んでいてもよい。生体サンプルは、当技術分野で知られているように、例えば、血液、血清、唾液、尿などを含んでいてもよい。別の態様では、遺伝子型を同定することは、患者の病歴、結果報告、又は以前に実施されたアッセイ又は遺伝子検査の結果を含む他の文書を見返すことを含んでいてもよい。さらなる態様では、前記同定することは、別の個体によりアッセイを実施させるようにすること又はそのように要求すること、又は患者の病歴、結果報告、又は以前に実施されたアッセイ又は遺伝子検査の結果を含む他の文書の見返しが行われるようにすること又はそのように要求することを含んでいてもよい。
【0039】
示されたSNPの1つにおける患者の遺伝子型が高免疫グロブリンE(IgE)レベル及び顕著なトラジピタント治療効果のうちの一方又は両方に関連する場合、前記方法は、第1の投与量でトラジピタントを患者に内服投与することをさらに含む。前記第1の投与量は、例えば、100~400mg/日、100~300mg/日、100~200mg/日、又は約85~170mg/日であってもよく、例えば、50~200mg bid(1日2回)、50~150mg bid(1日2回)、50~100mg bid(1日2回)、又は約85mg bid(1日2回)として投与してもよい。
【0040】
前記患者の遺伝子型が、前記示されたSNPのどれにおいても、高IgEレベル又は顕著なトラジピタント治療効果のいずれとも関連していない場合、前記方法は代替的治療を含む。そのような代替的治療は、例えば、前記第1の投与量より多い第2の投与量でのトラジピタントの内服投与を含んでいてもよい。例えば、前記第2の投与量は、前記第1の投与量の150%、200%、250%、又は300%であってもよく、又は170mg/日超~255mg/日、又は170mg超/日~340mg/日であってもよい。170mg/日超とは、例えば、170mg/日よりも25%大きい値を意味してもよい。そのような増加された用量と共に、患者モニタリングを増加させてもよい。他の実施形態では、前記代替的治療は、トラジピタント以外の活性医薬成分を内服投与することを含んでいてもよい。
【0041】
患者におけるアトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症を治療するためにトラジピタントを使用する別の方法は、最初に、患者のベースラインIgEレベルを同定することを含んでいてもよい。患者のIgEレベルは、例えば、患者から生体サンプルを得て、前記生体サンプル中に存在するIgEの量を定量することにより、同定してもよい。前記生体サンプルは、例えば、血液サンプル、血清サンプル、又は当該分野で知られているような類似物であってもよい。
【0042】
痒み及び疾患重症度の両方で、高IgEレベルと低IgEレベルとを区別するために使用される特定のカットオフに関わらず、低IgEレベルと比較して高IgEレベルを有する患者の間で一貫してより強い治療効果が観察される。例えば、この関連は、高IgE群が、例えば、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/Lなどの閾値を上回ることによって定義されているかどうか、並びに低IgE群が、例えば、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/Lなどの閾値未満であることによって定義されているかどうかに関係なく観察される。本発明を実施する上では、高IgEレベル又は低IgEレベルについてのこれらの定義のうち任意のものを使用してよい。
【0043】
患者が高いIgEレベル(例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/Lの閾値以上のIgEレベル)を有すると判定された場合、患者は顕著なトラジピタント治療効果を示すと予測することができる。そのような患者は、第1の投与量でトラジピタントを内服投与してもよい。ただし、患者が選択された閾値を下回るベースラインIgEレベルを有する場合、例えば、50kU/L未満、75kU/L未満、100kU/L未満、150kU/L未満、200未満kU/L、又は300kU/L未満のIgEレベルを有する場合、患者に、前記第1の投与量を上回る第2の投与量でトラジピタントを内服投与してもよく、又はトラジピタント以外の活性医薬成分を内服投与してもよい。前記第1の投与量及び前記第2の投与量は、実質的に、前述の投与量であってもよい。
【0044】
アトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症を罹患している患者の治療のためのトラジピタントの投与量を選択する方法も、本明細書に開示されている。このような方法は、IgEレベル及びトラジピタント治療効果のうちの一方又は両方に関連するとして本明細書に記載される1又は複数のSNPにおける患者の遺伝子型を同定すること、又は、別の選択肢として、患者のIgEレベルを同定することを含んでいてもよい。前記遺伝子型又はIgEレベルを同定する方法は、先に検討された、遺伝子型又はIgEレベルを同定する方法を含んでいてもよい。個体の遺伝子型又はIgEレベルの同定又は判定に基づいて、投与量を当該特定の患者のために選択してもよい。例えば、患者の遺伝子型が、高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のバリアントを含む場合、又は患者のIgEレベルが閾値(例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/L)を上回ると同定された場合、約170mg/日の投与量を前記患者に選択してもよい。そのような投与量は、より具体的には、例えば、85mg bid(1日2回)であってよい。患者のIgEレベルが閾値を下回っていると、例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/L未満であると同定された場合、前記患者には約170mg/日を超える投与量を選択してもよい。そのような投与量は、例えば、約170mg/日である前記第1の投与量の150%、200%、250%、又は300%であってもよい。したがって、前記投与量は、例えば、約170mg/日超~255mg/日、又は約170mg/日超~340mg/日であってもよい。
【0045】
本明細書では、患者がトラジピタントによるアトピー性皮膚炎の治療に反応する可能性が高いかどうかを予測する方法がさらに開示される。該方法は、IgEレベル及びトラジピタント治療効果のうちの一方又は両方に関連するとして本明細書に記載される1又は複数のSNPにおける患者の遺伝子型を同定すること、又は、別の選択肢として、患者のIgEレベルを同定することを含んでいてもよい。前記遺伝子型又はIgEレベルを同定する方法は、先に検討された遺伝子型又はIgEレベルを同定する方法を含んでいてもよい。個体の遺伝子型又はIgEレベルの同定又は判定に基づいて、患者がアトピー性皮膚炎及び/又は掻痒症のトラジピタントによる治療に好ましく応答する可能性が高いかどうかを予測可能である。例えば、患者の遺伝子型が、高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のバリアントを含む場合、又は患者のIgEレベルが閾値(例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/L)を上回ると同定された場合、前記患者はトラジピタント治療に応答する可能性が高い。しかしながら、患者の遺伝子型が、高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連するいかなるバリアントも含まない場合、又は患者のIgEレベルが閾値(例えば、50kU/L、75kU/L、100kU/L、150kU/L、200kU/L、又は300kU/L)を下回ると同定された場合、前記患者は、トラジピタント治療に応答しそうにない、若しくは応答する可能性がより低いと、又はトラジピタント治療に顕著な応答を示す可能性がより低いと考えてもよい。そのような情報は、トラジピタントによる治療から特に恩恵を受けることになる患者を予め特定する上での価値のために、及び成功した治療法を特定するための試行錯誤の試みを減らすために患者及び医療専門家にとって有用であり、特に170mg/日の用量でのトラジピタント治療に応答しそうにない個体の場合に、患者及び医療専門家にとって有用である。そのような個体は、例えば、異なる活性医薬成分による治療、又はより大きい用量でのトラジピタントによる治療から利益を得てもよい。
【0046】
本明細書で使用される場合、「患者」及び「個体」という用語は、例えば、アトピー性皮膚炎、掻痒症、及びアトピー性皮膚炎に関連する掻痒症など、トラジピタントの投与によって改善される1又は複数の障害を被る哺乳動物を指す。モルモット、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、ヒツジ、及びヒトは、この用語の意味の範囲内の哺乳類の例である。最も好ましい患者はヒトであることが理解されるであろう。
【0047】
当業者は、有効量のトラジピタントで、前記障害を現在被っている患者を治療することにより、又は前記障害を被る患者を予防的に治療することにより、前記障害に影響を及ぼしてもよいことが認識される。したがって、「治療」及び「治療する」という用語は、本明細書に記載の疾患又は障害の進行の遅延、妨害、停止、制御、又は中断が生じ得る全てのプロセスを指すことが意図されており、そのような障害の予防的治療を含むことを意図しているが、必ずしも全ての障害症状が完全に排除されることを指すものではない。
【0048】
本明細書で使用する場合、トラジピタントの「有効量」という用語は、本明細書に記載されている障害を治療するのに有効な量を指す。
【0049】
投与に関して、「qd」は1日1回の投与を指す。bid投薬とは、典型的には、朝1回及び夕方1回の投薬を意味し、一般的に、約8時間以上約16時間以下の間隔、例えば、10~14時間間隔、又は12時間間隔(Q12H)である。
【0050】
本明細書で使用する場合、「第1の」、「第2の」などの用語は、何らかの順序、数量、又は重要度を示すのではなく、一つの要素を別の要素から区別するために使用され、「a」及び「an」という用語は、本明細書では、数量の制限を示すのではなく、記載対象物が少なくとも1つ存在していることを示す。量に関連して使用される「約」という修飾語は、記載された値を含み、文脈によって決定される意味を持つ(例えば、特定の量の測定値に関連する誤差程度を含む)。本明細書で使用される接尾辞「(s)」は、それが修飾する対象の用語が単数である場合及び複数である場合の両方を含むことを意図しており、それにより当該用語の1つ又は複数を含む(例えば、metal(s)は1つ又は複数のmetalを含む)。本明細書に開示される範囲は、両端値を含むものであって、また、独立して組み合わせることができる(例えば、「最大約25mg、又はより具体的には、約5mg~約20mg」の範囲は、「約5mg~約25mg」の範囲の端点及び全ての中間値を含む、等々)。
【0051】
当業者は、追加の好ましい実施形態を、上記好ましい実施形態を組み合わせることによって、又は本明細書に示される実施例を参照することによって選択してもよいことを理解するであろう。
【実施例】
【0052】
実施例1:アトピー性皮膚炎を有する患者における慢性掻痒症の治療のためのトラジピタント単独療法
第II相プルーフ・オブ・コンセプト臨床試験(試験ID:VP-VLY-686-2101、「アトピー性皮膚炎に関連する治療抵抗性掻痒症を有する被験者におけるVLY-686のプルーフ・オブ・コンセプト」)を実施し、アトピー性皮膚炎を有する患者における慢性掻痒症の治療における単独療法としてのトラジピタントの安全性及び有効性について検討する。
【0053】
痒みについての100mmユニットの視覚的評価スケール(VAS)で測定した、トラジピタントによるベースラインからの高度に顕著で臨床的に有意義な改善(ベースラインから40.5mmの改善、p<0.0001)にもかかわらず、ベースラインからの変化については非常に高いプラセボ効果(ベースラインから36.5mmの改善、p<0.0001)があるため、プラセボからの統計的差異とはならなかった。しかしながら、本試験の全患者にわたる集団PKサンプルのその後の分析により、掻痒症のアセスメント時にトラジピタントへの曝露レベルがより高い個体で評価された複数の転帰を通して、有意で臨床的に有意義な応答が明らかにされる。
【0054】
第II相プルーフ・オブ・コンセプト臨床試験における事前に指定された主要エンドポイントは、痒みについての視覚的評価スケール(VAS)におけるベースラインからの変化である。プラセボ効果が高いため、この事前に指定されたエンドポイントにおいてプラセボとの有意な差異は無い。
【0055】
しかし、その後の分析で、曝露量-反応関係があることが見いだされた。トラジピタントの血漿レベルがより高い個体で評価されたいくつかの掻痒症関連転帰を通して、有意かつ臨床的に有意義な応答が存在することが観察される。本試験を通して調査されたデータに基づくと、より低いトラジピタントの血漿レベルは、患者の掻痒感を軽減する有効性閾値を下回っている可能性がある。
【0056】
方法
本試験では、試験組み入れ前の2日間のいずれかで視覚的評価スケール(VAS)スコアが70mmを超える患者を、100mgトラジピタント(n=34)又はプラセボ(n=35)の1日1回夕方経口投与に無作為に割り振る。本試験のトラジピタントアームでは、トラジピタントは、標準的な賦形剤を含むカプセルで、患者に100mgの量で夕方に経口投与される。臨床アセスメントは、毎日の処置を3週間又は4週間行った後、又は3週間後及び4週間後の両方で行われ、各アセスメントは、最後の処置の翌日の午前又は最後の処置の翌日の午後に行われる。前記トラジピタントは、カプセル中にトラジピタント及び薬学的に許容される賦形剤を含む即時放出形態で投与される。トラジピタントの粒径は、おおよそD10:<5μm、D50:<10μm、及びD90:<25μmであり、D10は、平均粒径が表示された値である粒子が10%であることを意味し、D50は、平均粒径が表示された値である粒子が50%であることを意味し、D90は、平均粒径が表示された値である粒子が90%であることを意味する。
【0057】
ベースラインVASスコアは、トラジピタントアーム及びプラセボアームで、それぞれ76.1及び77.2である。有効性は多くの臨床試験機器により評価される。さらに、有効性評価時、トラジピタントの血漿中濃度を測定するために、PK分析用の血液サンプルが採取される。
【0058】
結果
図1に示すように、トラジピタント治療アームにおける薬物動態-薬力学分析(PK-PD(pharmacokinetic-pharmacodynamics)analysis)は、トラジピタントの血中濃度とベースラインからのVASの変化との間の有意な相関を示す(p<0.05)。有効性評価時にトラジピタントの循環レベルがより高い個体は、大きさがより大きい応答を示す。
図2に示す掻痒症アセスメントの時刻についての別個のPK分析では、本試験の患者のおおよそ半分が、掻痒症アセスメントのために午前中の受診(午前(AM)群、投与後約12時間以内)に訪れたこと、これらの患者はまた、午後に来訪した患者(午後(PM)群、投与後約18時間以内)よりもトラジピタントの血中濃度が高いことが示される。
【0059】
AMで評価された患者及びPMで評価された患者におけるトラジピタントの平均血漿中濃度は、約125ng/mL~約225ng/mLである。午後に評価された患者(PM)(平均=最終投与の約20時間後)は、午前に評価された患者(AM)(平均=最終投与の約15時間後)よりも、トラジピタントの血漿中濃度が低い傾向がある。PM群の平均血漿中濃度は、約125ng/mLであり、AM群の平均血漿中濃度は、約225ng/mLであり、この違いの多くは投与後の経過時間の長さによるものである。さらに重要なことに、結果は血漿中濃度と有効性との相関関係を示しており、この相関関係によれば、血漿中濃度が100ng/mLを超える(例えば、約125ng/mL以上、約150ng/mL以上、約175ng/mL以上、約200ng/mL以上、又は約225ng/mL以上の)患者は、血漿中濃度が低い患者よりも有効性が高い傾向がある。
【0060】
AM群をさらに分析すると、プラセボと比較して、トラジピタントの有意で臨床的に有意義な効果が明らかとなる。当該分析を表1に示す。本試験では、トラジピタントの濃度がより高いことは、慢性掻痒症の治療効果がより高いことと関連している。PM群において同様の分析をしても、トラジピタントとプラセボとの間に有意差は示されない。
【0061】
【0062】
これらのデータは、NK-1Rアンタゴニストであるトラジピタントが掻痒症患者の症状を緩和(VAS、VRS、主観的SCORAD)し得るという仮説と整合する。
【0063】
基礎疾患に対応するエンドポイントも試験で収集される(SKINDEX、客観的SCORAD、EASI、及びDLQI)。これらの結果は、短期の4週間の試験では、痒みの症状を対象とした薬剤から期待されるプラセボとの有意な差を示していない。重要なことに、アトピー性皮膚炎に伴う難治性の痒みである掻痒症は患者の主訴であるため、CGI-Cスケール及びPBIスケールでも見られる効果は、臨床医及び患者の両方の観点から、認識可能で全体的な、臨床的に有意義な効果を示唆する。
【0064】
結論
これらのデータは、掻痒症(例えば、アトピー性皮膚炎に関連する掻痒症)に罹患している患者において、トラジピタント(例えば、形態IV(Form IV)又は形態V(Form V)のトラジピタント)(又はその薬学的に許容される塩)を、約100ng/mL以上(例えば、125ng/mL以上、150ng/mL以上、175ng/mL以上、200ng/mL以上、又は225ng/mL以上)の血漿中濃度を達成するために必要な量及び投与頻度で経口投与することにより患者を治療し得るという結論を裏付けるものである。そのような血漿中濃度レベルは、例えば、即時放出固形剤形で1日1回、より高い用量でトラジピタントを経口投与することにより、若しくは改善されたバイオアベイラビリティを有する即時放出剤形でトラジピタントを経口投与することにより、若しくは制御放出剤形でトラジピタントを経口投与することにより、又は即時放出剤形若しくは制御放出剤形で、1日複数回(例えば1日2回、若しくは3回以上)低用量でトラジピタントを経口投与することにより達成し得る。試験データでは、即時放出カプセル中の100mg/日の固形のトラジピタントによる処置後約12~18時間(例えば約15時間)で有効な血漿濃度を達成することができることが示されているが、異なる用量及び/又は異なる製剤を使用して有効な血漿中濃度を達成することも可能であり、異なる製剤としては制御放出製剤が含まれるがこれに限定されない、ことも理解されよう。
【0065】
結論として、主にプラセボ効果が大きいことにより、本試験では、試験のためにあらかじめ定義された用量のトラジピタントの全体的な効果が示されてはいないが、本試験は、PK応答の関係並びにトラジピタントの血中濃度がより高い時に評価された患者群における重要な利点を実証している。本試験では、トラジピタント100mg qd(1日1回)投与は忍容性が高く、有害事象のプロファイルは穏やかであってプラセボと同様である。
【0066】
患者の治療は、患者における掻痒症の症状が改善又は排除されるまで続けてもよく、例えば、患者が、起床時間中は多かれ少なかれ正常に機能し、睡眠時間中は多かれ少なかれ正常に睡眠できるように前記症状が軽減されるまで、治療を継続してもよい。
【0067】
上記のように、データは、掻痒症(例えばアトピー性皮膚炎に関連する掻痒症)に罹患している患者では、トラジピタントを経口投与することによって当該患者を治療し得ることを示している。
【0068】
さらなる研究により、様々な投与レジメンの安全性及び有効性が示されている。
【0069】
実施例2:トラジピタントの血漿中濃度レベル
健康な参加者である対象に試験3日目に85mgのトラジピタントを経口投与し、次に試験4日目~試験16日目に85mgのトラジピタントを12時間間隔で経口投与する試験を実施する。トラジピタントの血漿中濃度レベルは、3日目、7日目、及び11日目のそれぞれで測定される。
【0070】
試験は、(3日目における)85mgトラジピタント qd(1日1回)投与により、0~12時間での平均血漿中濃度が、実施例1のPM群で観察された血漿中濃度の約50%になることを示している。7日目及び11日目においては、85mgトラジピタントの bid(1日2回)(具体的には、Q12H(12時間間隔))投与後0~12時間での平均血漿中濃度は、実施例1のPM群で観察された血漿中濃度の約150%である。各時点における0~12時間での平均血漿中濃度は、0~12時間のAUC((時間)x(ng/mL))を12時間で除算することによって求められる。
【0071】
これらの結果は、掻痒症(例えば、アトピー性皮膚炎に関連する掻痒症)に罹患している患者において、実施例1のPM群で観察された125ng/mLを超える血漿中濃度を達成するために、例えば、トラジピタント(例えば、形態IV又は形態Vのトラジピタント)(又はその薬学的に許容される塩)を85mg bid(1日2回)の量で(例えば、85mg Q12Hで)経口投与することにより前記患者を治療し得ることを示す。
【0072】
実施例3:アトピー性皮膚炎に関連する掻痒症のトラジピタント治療
第II相、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床試験(「アトピー性皮膚炎に関連する治療抵抗性掻痒症におけるトラジピタント」、ClinicalTrials.govにおける試験ID:NCT02651714)を実施して、VASで測定した慢性掻痒症の軽減におけるプラセボと比較したトラジピタントの有効性を判定する。
【0073】
方法
試験の選択基準は、患者の病歴によれば治療に不応性の、アトピー性皮膚炎に関連する慢性(6週間以上)の痒み、(100mm中)70mm以上のVASによる平均痒みスコア、無作為化の前の過去3日間の少なくとも1日における3以上の口頭応答スコア(VRS)、及び80未満のSCORADを含む。試験の人口統計を以下の表2に報告する。
【0074】
【0075】
患者を、85mgのトラジピタント又はプラセボ(1:1)をbid(1日2回)の投与を受けるよう、無作為に割り振る。無作為化、プラセボ対照、二重盲検試験の設計を
図3に示す。アトピー性皮膚炎に関連する慢性掻痒症を有する個体には、85mgのトラジピタント bid(1日2回)又はプラセボを8週間投与する。平均の痒み重症度及び最悪痒み重症度は、VASによって評価され、VRSは2週間ごとに評価される。さらに、治療は、客観的及び主観的両方のSCORADインデックス(アトピー性皮膚炎の重症度スコア:The SCORAD Index, Consensus Report of the European Task Force on Atopic Dermatitis, Dermatology 1993; 186:23-31)及び湿疹面積と重症度指数(EASI)(Hanifin et al., The eczema area and severity index(EASI):assessment of reliability in atopic dermatitis, Experimental Dermatology 10(1):11-18(2001))を使用して隔週で評価される。
【0076】
臨床上の医師による全般的な変化の印象(CGI-C)スケール、痒み及びアトピー性皮膚炎の両方に関する患者による全般的な変化の印象(Patient Global Impression of Change、PGIC)スケール、患者の利益指標(PBI)、及びSKINDEX-16スケールもアセスメントに使用される。1日2回アンケートに回答することで、数値評価スケール(numeric rating scale、NRS)で最悪痒み及び平均の痒みを報告する。
【0077】
客観的SCORADアセスメントは、伸展、激しさ、表皮剥離、紅斑、滲出、痂皮、浮腫や丘疹の存在、苔癬化、及び皮膚の乾燥などのパラメーターを含む。主観的SCORADアセスメントは、痒みや不眠症についての患者アセスメントを含む。
【0078】
結果
記載したように、試験に参加した168人の患者は、 トラジピタント85mg bid(1日2回)(n=84)と プラセボ bid(1日2回)(n=84)とに無作為に割り振られている。試験のトラジピタントアームに無作為に割り振られた84人の患者のうち、56人の患者が試験を完了し、28人が中止している。プラセボに無作為に割り振られた84人の患者のうち、59人が試験を完了し、25人が中止している。
【0079】
試験の結果を、以下の表3~表4、及び
図4~
図5に示す。上記実施例1で説明した試験のAMの結果と同様に、最悪痒み(p=0.019)、PBI(p=0.038)、CGIC(p=0.007)、及び客観的SCORADスケール(p=0.005)について、トラジピタント及びプラセボの間に統計的に有意な差が見られる。さらに、痒み及び疾患の重症度の両方において治療効果は、2週目という早期に明白となっている(
図4~
図5)。アトピー性皮膚炎の症状のサブセットは毎日の日記により収集されるが、該日記は2週目より前における差異についても示す。
【0080】
これらの結果はまた、痒み及びアトピー性皮膚炎の両方についてのPGI-Cアセスメントに関して統計的有意差(それぞれ、p=0.0246及びp=0.007)を示しており、SCORADアセスメントで50%以上の改善又はEASIアセスメントで75%以上の改善を経験した患者の割合は、プラセボと比較して、トラジピタントで治療された患者で統計的に高くなっている。
【0081】
【0082】
【0083】
結論
上記の結果は、トラジピタントが、患者が経験する最悪痒みの激しさ及びアトピー性皮膚炎の疾患重症度を改善することを示している。トラジピタントは、多くの痒み測定指標において、有意かつ臨床的に有意義な改善を示している。具体的には、最悪痒みの視覚的評価スケール(VAS)の測定で大幅な改善が見られる(p=0.019)。トラジピタントはまた、最悪痒みのVASスコアにおいてベースラインから40ポイント以上の改善を達成した患者において最悪痒みのresponder分析における有意な効果(p=0.037)を示し、また最悪痒みのVASスコアにおいてベースラインから30ポイント以上の改善を達成した患者において最悪痒みのresponder分析における有意な効果(p=0.049)を示している。事前に指定された主要エンドポイントである平均痒みVASについて、トラジピタントはプラセボと比較して改善を示しているが、高いプラセボ効果及びこの測定に感度が欠けているために、この改善は有意ではない。
【0084】
最悪痒み(これは、掻破行動に関連する)で観察された改善と整合して、トラジピタントはまた、合計SCORADスケールにおける有意(p=0.008)な改善及び客観的SCORADスケールにおける有意な(p=0.005)な改善を示すことにより、疾患修飾特性を示している。具体的には、トラジピタントは、表皮剥離、紅斑、滲出、及び乾燥を含む、アトピー性皮膚炎の重症度のいくつかの臨床的特徴において有意な改善を示している。
【0085】
これらの臨床的に意味のある効果は、臨床上の医師による全般的な変化の印象(CGI-C)スケールにおける有意な改善(p=0.007)、患者による全般的な変化の印象スケール(PGI-C)痒みにおける有意な改善(p=0.024)、PGI-Cアトピー性皮膚炎における有意な改善(p=0.007)も伴っている。同様に、トラジピタントは、患者の利益指標(PBI)で測定された、直接患者から報告された利益も示している(p=0.037)。これらの改善、及びEASIアセスメントによって測定される改善(疾患の範囲(頭及び首、胴体、上肢、並びに下肢という4つの身体領域のそれぞれにおける被覆率)及び重症度(発赤、肥厚、掻破、及び苔癬化のアセスメント))は、掻痒症状に加えて、根底にあるアトピー性皮膚炎疾患の重症度についての測定指標を改善することにおけるトラジピタントの有効性を実証する。
【0086】
実施例4:免疫グロブリンE
上記の実施例3に記載された試験では、免疫グロブリンE(IgE)レベル、並びにアトピー性皮膚炎及び掻痒症に対するトラジピタントによる治療の効果を分析するために探索的分析が行われている。この分析の目的においては、100kU/L以上のIgEレベルを有する試験参加者は高いIgEレベルを有するとみなされ、100kU/L未満のIgEレベルを有する試験参加者は低いIgEレベルを有するとみなされる。全試験集団、高IgE群、低IgE群のそれぞれにおけるSCORAD総計のベースラインの平均及び範囲を以下の表5に示す。
【0087】
【0088】
表5に示されるSCORAD総計の平均及び範囲は、試験集団が軽症から重症まで、疾患の重症度が様々な層にまたがっていることを示している。表5は、高IgE群と低IgE群との間の疾患重症度の類似性も示している。
【0089】
表6(以下に示す)は、高いベースラインIgEレベル(IgE≧100kU/L)を有する個体のアトピー性皮膚炎に関連する治療抵抗性掻痒症におけるトラジピタントの試験結果を示し、表7(以下に示す)は、低いベースラインIgEレベル(IgE<100kU/L)を有する個体のアトピー性皮膚炎に関連する治療抵抗性掻痒症におけるトラジピタントの試験結果を示す。表6~表7のデータは、上記の表4に示されるデータのIgEレベルによる区分けを表す。
【0090】
【0091】
【0092】
表6~表7のデータは、ベースライン測定値と比較した結果を示している。表6のデータで示されるように、ベースラインIgEが高い患者では、トラジピタントは、例えば、最悪痒みや睡眠など、調査したほとんどのパラメーターで有意な効果(p<0.05)を示している。
【0093】
驚くべきことに、低いIgEレベルを有する個体(表7)と比較すると、高いIgEレベルを有する個体(表6)も、アトピー性皮膚炎の疾患重症度の測定指標において有意な治療効果を示している。8週目における同じ分析では、トラジピタント治療を受けた患者の47%がSCORADについて少なくとも50%の減少(SCORAD 50)を達成しており、一方、プラセボ治療を受けた患者においては達成した患者の割合は11%であった(p=0.0008)。
【0094】
本分析の目的においては、100kU/L以上のIgEレベルを有する個体は、高IgEレベルを有するとみなされ、100kU/L未満のIgEレベルを有する個体は、低IgEレベルを有するとみなされる。高IgEレベルを有する個体を、50kU/L以上のIgEレベルを有すると定義した~300kU/L以上のIgEレベルを有すると定義したさらなる分析も行われる。痒み及び疾患重症度の両方で、高IgE群が、例えば、IgE≧50kU/L、≧100kU/L、又は≧300kU/Lにより定義されるかどうか、及び低IgE群が、例えば、IgE<50kU/L、<100kU/L、又は<300kU/Lによって定義されるかどうかに関わらず、低IgE群と比較して高IgE群では一貫してより強い治療効果が観察される。100kU/L以上は、参照試験所により成人の正常範囲の上限とみなされる値として、最も詳細な分析(表6~表7)の高IgE群のカットオフに選択される。これらの結果及び小児における正常範囲への外挿に基づき、痒み及びアトピー性皮膚炎の疾患重症度におけるトラジピタント効果について小児集団の高IgE群を定義することも可能である。
【0095】
これらのデータから、高いベースラインIgEレベルを有する患者は、低いIgEレベルを有する患者よりも掻痒症及び疾患重症度の両方について大きな効果量(エフェクトサイズ)を示すと結論付けられる。表6~表7では、IgEの高レベルと低レベルとを区別するためのカットオフとして100kU/Lが使用されているが、例えば75kU/L超、100kU/L超、150kU/L超、200kU/L超、30~700kU/L、50~200kU/L、100~200kU/L、又は200~2,000kU/LのIgEレベルを有する個体を高IgEレベルを有する個体とみなしてもよいことに留意すべきである。したがって、75kU/L超、100kU/L超、150kU/L超、200kU/L超、30~700kU/L、50~200kU/L、100~200kU/L、又は200~2,000kU/LのIgEレベルを有する個体を、例えば、トラジピタントなどのNK-1受容体アンタゴニストによる治療対象に選択してもよい。
【0096】
さらに、前述のデータは、トラジピタントがアトピー性皮膚炎に対して有意な疾患修飾効果を有することを示している。この効果は、例えば、IGA、EASI、SCORAD、CGIC、及びPGIC、並びにそれらそれぞれのアトピー性皮膚炎兆候及び症状などの測定指標を使用して定量可能である。
【0097】
実施例5:IgEの遺伝的修飾因子
IgE調節不全を引き起こす遺伝的危険因子を特定するために、117の全ゲノム配列決定アトピー性皮膚炎サンプルを使用して、ゲノム全体の関連分析を行う。線形回帰を使用して、14,322,979の一塩基多型(SNP)及び対数変換されたIgEレベル間で関連を直接試験する。機能的関連性の最も有意な座位には、LRPIB、IL20RA、及びIL22RA2が含まれる(以下の表8を参照)。
【0098】
LRPIB、IL20RA、及びIL22RA2並びにIgE
IgE調節不全に関連するSNPには、インターロイキン20受容体サブユニットα(IL20RA)やインターロイキン22受容体サブユニットα(IL22RA2)などの免疫応答遺伝子を含む6q23領域内の強いシグナルが含まれる。このサイトカインのファミリーは、炎症促進効果を有し、皮膚の炎症に関与している可能性がある。この分析における上位の座位は、サイトカイン受容体活性及びインターロイキン20結合に富んでいる(G0:0042018、GO:0042020)。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
図6に示すように、rs276571 SNP(表8)は、GG rs276571遺伝子型を有する個体が、AG又はAA rs276571遺伝子型を有する個体よりも高いIgEレベルを有するように、より高いレベルのIgEに関連するSNPの例である。また、
図7に示すように、同定されたバリアントはIgEレベルの修飾因子であるだけでなく、ベースラインSCORADに大きな影響を与える。具体的には、GG rs276571遺伝子型は、AA又はAG rs276571遺伝子型と比べて有意に高い、アトピー性皮膚炎疾患重症度のベースラインSCORAD測定値を付与する。前記リスクアレルはまた、IL20RAのより高い発現と相関している。rs276571座位は、遺伝子型組織発現(GTEx)においてIL20RAの有意な発現量的形質座位(eQTL)であることが示されている。以下に示す表9は、rs276571アレルの集団内頻度を示している。
【0103】
【0104】
LRP1B遺伝子内に見られる別の着目すべきSNPであるrs4575660(表8)もIgEレベルと関連している。
図8に示すように、TT rs4575660遺伝子型を有する個体は、TG又はGG rs4575660遺伝子型を有する個体よりも有意に高いIgEレベルを有する。rs4575660座位では、マイナーアレルにより高いIgEレベルが与えられる。以下でさらに説明するように、LRP1Bにおけるバリアントは、実施例6(下記)において説明されるVAS及びSCORADとの関連性のため、特に興味深いものである。
【0105】
ADAM33とIgE
さらに、ディスインテグリン・メタロプロテアーゼ33遺伝子(ADAM33)内で見られるミスセンスバリアントrs2280090も、IgE調節不全と関連している。
図9に示すように、ヘテロ接合AG rs2280090遺伝子型を有する個体は、GG rs2280090遺伝子型を有する個体よりも有意に高いIgEレベルを示す。試験参加者の中で、AA rs2280090遺伝子型の個体は、n=0である。
【0106】
結論
上記の実施例4で説明したように、掻痒症及びアトピー性皮膚炎の疾患重症度の両方について、高いベースラインIgEレベルを有する個体は、低いIgEレベルを有する患者よりも大きいトラジピタント治療効果量を示す。よって、表8で高IgEレベルと関連していると同定された1又は複数のSNP遺伝子型を遺伝子型に含むアトピー性皮膚炎に罹患している患者は、遺伝子配列に表8で高IgEと関連していると同定された前記SNPのいずれも含まない患者よりも、掻痒症及びアトピー性皮膚炎の疾患重症度の両方でより大きなトラジピタント治療効果量を示すことが期待され得る。
【0107】
実施例6:トラジピタント治療への応答と相関する遺伝子マーカー
トラジピタント治療に対するポジティブな応答と直接相関する追加の遺伝子マーカーを特定するために、さらなる試験を行う。遺伝子マーカーを同定するために、ロジスティック加法モデルを使用して関連分析を行う。視覚的評価スケール(VAS)を、応答結果測定基準として用いる。同定されたバリアントを以下の表10に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
さらに、CTNNA3におけるバリアントであるrs57930837は、アトピー性皮膚炎のトラジピタント治療に対する応答者及び非応答者を有意に区別することが理解される。
図10に示すように、アトピー性皮膚炎のトラジピタント治療への応答を示さなかったマイナーアレル保有者と比べると、マイナーアレル保有者の多くは、アトピー性皮膚炎のトラジピタント治療への応答を示している。
図11は、rs57930837遺伝子型によって分けられたトラジピタント治療に対する応答者及び非応答者の数を示す図である。示されるように、CC rs57930837遺伝子型を有するすべての個体は治療に応答し、CA rs57930837遺伝子型を有する個体の多くは治療に応答し、AA rs57930837の個体の多くは治療に応答しない。rs57930837バリアントは、コントロール(0.04)と比較して増加したマイナーアレル頻度(MAF)(0.44)を有していることがわかる。応答のマーカーであることに加えて、
図12に示すように、CC/CA遺伝子型を持つ個体においては、この座位がAAの場合と比較してのIgEレベル分布の有意な差が見られる。この分析では、前記バリアントは最高レベルの有意性(rs57930837、P=2.19×10
7、7%対83%)に達している。
【0111】
非応答者から治療応答者を区別する上位座位の生物学的影響を評価するために、遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を行う。他の重要な座位は、低密度リポタンパク質受容体活性(GO:0005041)及び生理活性脂質受容体活性(GO:0045125)が豊富なLRP1Bリポタンパク質(非同義バリアント)、MYO10リポタンパク質、及びNRXN3リポタンパク質を指し示している。rs57930837 SNPは、オープンクロマチンの領域にマップされ、DNase過敏を特徴とし、Foxpl及びその他の調節モチーフの存在のエビデンスを示す。
【0112】
p値カットオフによって選択された上位の有意なSNPを使用して、曲線下面積(AUC)0.95(10分割交差検証)で、個体をトラジピタント治療に対する応答者ステータスで分類する。機能喪失(LOF)及びタンパク質コーディングバリアントは、症例のコホートでのVASアウトカムの観点から検討される。表11に示すように、NPSR1、KRTAP1-1、CD200R1L、LRP1B、及びBTNL2の遺伝子内で有意なバリアントが検出される。
【0113】
【0114】
加えて、本明細書の実施例4、表6に記載される治療したコホート内で、最悪痒み(VAS)の変化を修飾するとして同定される上位座位は、以下の表12に示すINADL遺伝子内に位置するバリアントである。
【0115】
【0116】
図13に示すように、rs11207834のマイナーアレルは、最悪痒み(VAS)の変化によって測定される、85mg bid(1日2回)のトラジピタントによる治療に対する低下した応答と関連している。対照的に、rs11207834遺伝子型がTTである、アトピー性皮膚炎に罹患している患者では、痒みスケールの改善への関連が見られ、当該個体は治療後により大きな効果を示すことが期待され得る。
【0117】
本明細書では様々な実施形態が説明されているが、それら実施形態において要素の様々な組み合わせ、変形、又は改善が当業者によってなされてもよく、それらも本発明の範囲内であることを明細書から理解されたい。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、多くの改変を行ってもよい。よって、本発明は開示された特定の実施形態に限定されず、本発明は添付の特許請求の範囲内の全ての実施形態を含むことが意図されている。
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1> 掻痒症又はアトピー性皮膚炎を有する患者を治療するために有効な量のトラジピタントを投与することからなる方法における、
前記患者の遺伝子型が高IgEレベル又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連する遺伝子型を含むという判定に基づいて、前記患者を治療対象に選択することを含む改善。
<2> 前記遺伝子型は、高IgEレベルと関連し、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571 GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989 TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657 AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179 AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択される、<1>に記載の改善。
<3> 前記遺伝子型は、ポジティブなトラジピタント治療応答と関連し、rs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択される、<1>に記載の改善。
<4> 掻痒症又はアトピー性皮膚炎を有する患者を治療するために有効な量のトラジピタントを投与することからなる方法において、前記患者が50kU/L以上のIgEレベルを有するという判定に基づいて、前記治療の対象に前記患者を選択することを含む改善。
<5> 前記患者が、75kU/L以上、100kU/L以上、150kU/L以上、200kU/L以上、又は300kU/L以上のIgEレベルを有する、<4>に記載の改善。
<6> 100~400mg/日の用量で前記患者にトラジピタントを内服投与することをさらに含む、<1>~<5>のうちいずれか一項に記載の改善。
<7> 100~300mg/日の用量で前記患者にトラジピタントを内服投与することをさらに含む、<6>に記載の改善。
<8> 100~200mg/日の用量で前記患者にトラジピタントを内服投与することをさらに含む、<6>に記載の改善。
<9> 85mg bid(1日2回)の用量で前記患者にトラジピタントを内服投与することをさらに含む、<8>に記載の改善。
<10> 掻痒症又はアトピー性皮膚炎に罹患している患者をトラジピタントで治療する改善された方法であって、
IgEレベル又はトラジピタント治療効果に関連する1又は複数のSNPにおける前記患者の遺伝子型を同定することに基づいて、前記患者を治療するのに有効な投与量を選択すること、
前記患者が高いIgEレベル又はトラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連する遺伝子型を有する場合は、前記患者の遺伝子型の同定が無い場合に選択されたはずの、前記患者における掻痒症又はアトピー性皮膚炎を治療するために有効な投与量で、前記患者にトラジピタントを内服投与すること、及び
前記患者が高いIgEレベル又はトラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連しない遺伝子型を有する場合は、前記患者の遺伝子型の同定が無い場合に前記患者のために選択されたはずの前記投与量よりも高い投与量でトラジピタントを前記患者に内服投与すること、を含む、
掻痒症又はアトピー性皮膚炎に罹患している患者をトラジピタントで治療する改善された方法。
<11> 前記患者の遺伝子型を同定することは、高IgEレベルに関連するSNPにおける前記患者の遺伝子型を同定することをさらに含み、前記SNPは、rs4575660、rs276555、rs74416548、rs276556、rs276560、rs276561、rs276562、rs276563、rs276563、rs276564、rs276564、rs276571、rs140796、rs276573、rs276574、rs4895474、rs4895475、rs9483989、rs9373178、rs4896234、rs2327798、rs62420823、rs17252967、rs9494657、rs9402871、rs9402872、rs9399201、rs4896235、rs719640、rs9373179、rs9385784、rs2146275、rs6941440、rs4896237、rs6929580、rs4896239、rs4895479、rs4895480、rs4280975、rs6911523、rs6912319、rs2280090、及びrs57930837からなる群から選択される、<10>に記載の方法。
<12> 高IgEレベルと関連する前記遺伝子型は、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571 GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989 TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657 AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179 AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択される、<11>に記載の方法。
<13> 前記患者の遺伝子型を同定することは、トラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連するSNPにおける患者の遺伝子型を同定することをさらに含み、前記SNPは、rs16847120、rs249122、rs6862796、rs249137、rs249138、rs144713688、rs73258486、rs6480251、rs6480252、rs10822978、rs10997525、rs10997527、rs7074325、rs57930837、rs11453660、rs2199792、rs4963245、rs12990449、rs727162、rs58161637、rs62622847、rs3213755、rs41521946、rs28362678、rs35624343、rs28362677、rs11207832、rs1954436、rs11207834、rs370530530、rs11207838、rs150980554、rs7551886、rs6664979、rs12043665、rs12030784、rs79037385、rs74568317、rs3790575、及びrs77939406からなる群から選択される、<10>に記載の方法。
<14> トラジピタントによる治療に対するポジティブな応答に関連する前記遺伝子型は、rs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択される、<13>に記載の方法。
<15> 掻痒症又はアトピー性皮膚炎を有する患者を治療に有効な量のトラジピタントを投与することにより治療する方法であって、
前記患者のベースラインIgEレベルを同定することに基づいて、前記患者を治療するのに有効な投与量を選択すること、並びに
前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有する場合は、前記患者のベースラインIgEレベルの同定が無い場合に選択されたはずの、前記患者における掻痒症又はアトピー性皮膚炎を治療するために有効な投与量で、前記患者にトラジピタントを内服投与すること、及び
前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有さない場合は、前記患者のベースラインIgEの同定が無い場合に前記患者のために選択されたはずの前記投与量よりも高い投与量でトラジピタントを前記患者に内服投与すること、
を含む方法。
<16> 前記患者のベースラインIgEレベルを同定することは、前記患者からの生体サンプルを試験して前記生体サンプル中のIgEの量を決定することをさらに含む、<15>に記載の方法。
<17> より高い投与量のトラジピタントの投与を受ける患者は、170mg/日超~340mg/日の内服投与を受ける、<10>~<16>のうちいずれか一項に記載の方法。
<18> 前記の、より高いトラジピタント投与量は、170mg/日超~255mg/日である、<17>に記載の方法。
<19> 前記患者は約100kU/L超のベースラインIgEレベルを有し、前記投与量は170mg/日である、<10>~<16>のうちいずれか一項に記載の方法。
<20> 前記投与量は、85mg bid(1日2回)である、<19>に記載の方法。
<21> アトピー性皮膚炎に罹患している患者を治療するのに有効なトラジピタントの投与量を選択する方法であって、
(1)rs4575660、rs276555、rs74416548、rs276556、rs276560、rs276561、rs276562、rs276563、rs276563、rs276564、rs276564、rs276571、rs140796、rs276573、rs276574、rs4895474、rs4895475、rs9483989、rs9373178、rs4896234、rs2327798、rs62420823、rs17252967、rs9494657、rs9402871、rs9402872、rs9399201、rs4896235、rs719640、rs9373179、rs9385784、rs2146275、rs6941440、rs4896237、rs6929580、rs4896239、rs4895479、rs4895480、rs4280975、rs6911523、rs6912319、rs2280090、rs57930837、rs4963245、rs12990449、rs727162、rs58161637、rs62622847、rs3213755、rs41521946、rs28362678、rs35624343、rs28362677、及びrs11207834からなる群から選択される1又は複数のSNPにおける前記患者の遺伝子型を同定すること、及び
(2)以下の場合に約170mg/日の投与量を選択すること:
(A)前記患者の遺伝子型が、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571
GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989 TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657 AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179
AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択される高IgEレベルに関連する1又は複数のバリアントを含む場合、若しくは
(B)前記患者の遺伝子型が、rs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択されるポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のバリアントを含む場合、
又は(3)前記患者の遺伝子型が、高IgE又はポジティブなトラジピタント治療応答に関連するバリアントを含んでいない場合は、約170mg/日超の投与量を選択すること、
を含む方法。
<22> ベースラインIgEレベルが特定されているアトピー性皮膚炎に罹患している患者を治療するのに有効なトラジピタントの投与量を決定する方法であって、
前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有する場合に約170mg/日の投与量を選択すること、又は前記患者が約100kU/Lを超えるベースラインIgEレベルを有さない場合に170mg/日を超える投与量を選択すること、
を含む方法。
<23> 患者がトラジピタントによるアトピー性皮膚炎の治療に応答する可能性が高いと判定する方法であって、
rs4575660、rs276555、rs74416548、rs276556、rs276560、rs276561、rs276562、rs276563、rs276563、rs276564、rs276564、rs276571、rs140796、rs276573、rs276574、rs4895474、rs4895475、rs9483989、rs9373178、rs4896234、rs2327798、rs62420823、rs17252967、rs9494657、rs9402871、rs9402872、rs9399201、rs4896235、rs719640、rs9373179、rs9385784、rs2146275、rs6941440、rs4896237、rs6929580、rs4896239、rs4895479、rs4895480、rs4280975、rs6911523、rs6912319、rs2280090、rs57930837、rs4963245、rs12990449、rs727162、rs58161637、rs62622847、rs3213755、rs41521946、rs28362678、rs35624343、rs28362677、及びrs11207834からなる群から選択される1又は複数のSNPにおける前記患者の遺伝子型を同定すること、及び
前記患者の遺伝子型が、rs4575660 TT、rs276555 CC、rs74416548 ATAT、rs276556 GG、rs276560 CC、rs276561 TT、rs276562 GG、rs276563 CC、rs276563 CC、rs276564 GG、rs276564 GG、rs276571 GG、rs140796 TATTGTATTG、rs276573 TT、rs276574 GG、rs4895474 TT、rs4895475 GG、rs9483989
TT、rs9373178 CC、rs4896234 CC、rs2327798 GG、rs62420823 GG、rs17252967 CC、rs9494657
AA、rs9402871 GG、rs9402872 CC、rs9399201 GG、rs4896235 AA、rs719640 AA、rs9373179 AA、rs9385784 TT、rs2146275 AA、rs6941440 TT、rs4896237 TT、rs6929580 GG、rs4896239 TT、rs4895479 CC、rs4895480 TT、rs4280975 GG、rs6911523 AA、rs6912319 GG、rs2280090 非GG、及びrs57930837 非AAからなる群から選択される1又は複数のバリアント、又は
rs16847120 GG、rs249122 AA、rs6862796 CC、rs249137 TT、rs249138 TT、rs144713688 GAGAA、rs73258486 GG/GA、rs6480251 CC/CT、rs6480252 TT/TC、rs10822978 TT/TA、rs10997525 GG/GA、rs10997527 CC/CA、rs7074325 CC/CT、rs57930837 CC/CA、rs11453660 CACA/CAC、rs2199792 AA/AG、rs4963245 非CC、rs12990449 非TT、rs727162 非CC、rs58161637 非GG、rs62622847 非CC、rs3213755 非AA、rs41521946 非TT、rs28362678 非AA、rs35624343 非AA、rs28362677 非TT、rs11207832 非CC、rs1954436 非CC、rs11207834 非CC、rs370530530 非CTCT、rs11207838 非TT、rs150980554 非AA、rs7551886 非CC、rs6664979 非CC、rs12043665 非AA、rs12030784 非TT、rs79037385 非GG、rs74568317 非CC、rs3790575 非CC、及びrs77939406 非GGからなる群から選択されるポジティブなトラジピタント治療応答に関連する1又は複数のバリアントを含む場合に、前記患者が前記治療に応答する可能性が高いと判定すること、
を含む方法。
<24> IgEレベルがトラジピタントによるアトピー性皮膚炎の治療に応答する可能性が高いと特定されている患者を同定する方法であって、前記患者のベースラインIgEレベルが約100kU/Lを超える場合に、前記患者はトラジピタント治療に応答する可能性が高いと判定すること、を含む方法。