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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20230912BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C13/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019221437
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021091252
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】児玉 紀彦
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-503577(JP,A)
【文献】実開昭63-121102(JP,U)
【文献】特開2008-296861(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/026600(JP,A1)
【文献】特開平11-151909(JP,A)
【文献】特開平04-002506(JP,A)
【文献】特開2014-151755(JP,A)
【文献】特開2003-175708(JP,A)
【文献】特開2020-001617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、サイドウォール部と、前記トレッド部と前記サイドウォール部の間に設けられたバットレス部と、前記バットレス部にタイヤ周方向に沿って設けられたえぐり部と、トレッド部のタイヤ幅方向外側にタイヤ周方向に沿って設けられたショルダー主溝とを備え、
前記えぐり部の底面の断面形状は、曲率半径の異なる複数の円弧をタイヤ径方向に並べて配置し、隣接する円弧が共通の接線を持つ接点において接続された曲線形状、又は、曲率半径の異なる複数の円弧が共通の接線を持つ接点を結ぶ直線によって接続された形状をなし、
前記接点が、前記ショルダー主溝の溝底よりタイヤ径方向内方に位置し、
前記サイドウォール部に設けられたサイドウォールゴムのタイヤ径方向外側端が、前記ショルダー主溝の溝底よりタイヤ径方向外方に位置する空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記サイドウォールゴムのタイヤ径方向外側端が、前記ショルダー主溝の溝底から溝深さの50%以下の位置にある請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記サイドウォールゴムのタイヤ径方向外側端が、前記接点からタイヤ径方向に4mm以上離れている請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部にベルトを備え、
タイヤ幅方向中央から前記ベルトにおいて最もタイヤ幅方向外側に位置するベルト端から前記接点までの距離が12mm以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記えぐり部のタイヤ径方向外側端に細幅の突部が設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記えぐり部の底面は、タイヤ径方向外側に設けられた上側円弧部と、前記上側円弧部のタイヤ径方向内側に設けられた下側円弧部とを備え、
前記上側円弧部の断面は、前記下側円弧部の断面より曲率半径の大きい円弧からなり、
前記上側円弧部のタイヤ径方向の長さが、前記下側円弧部より長い請求項1~5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、通常、走行時にトレッド部の接地端近傍において接地圧が高くなるため、接地端近傍の摩耗量が他の部分より大きくなる、偏摩耗が問題となることがある。このような偏摩耗を抑制するため、トレッド部とサイドウォール部との間に設けられたバットレス部にタイヤ周方向に沿って延びる環状凹溝を設けることが知られている(例えば、下記特許文献1)。バットレス部に環状凹部を設けた空気入りタイヤでは、トレッド部の接地端近傍における剛性を低下させて接地圧を低減し、偏摩耗の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-136936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バットレス部に環状凹部を有する空気入りタイヤにおいて、トレッド部の接地端より径方向内方に離れた位置に環状凹部を設けると、接地端近傍における剛性を充分に低下させることができず、偏摩耗を抑制することができない。
【0005】
偏摩耗を抑制するために環状凹部をトレッド部の接地端に近接させて設けることが考えられる。しかし、その場合、サイドウォール部に設けられたサイドウォールゴムのタイヤ径方向外側の端部を起点とするゴムのクラックが生じやすくなる。
【0006】
つまり、環状凹部をトレッド部の接地端に近接させて設けると、サイドウォール部に設けられたサイドウォールゴムのタイヤ径方向外側端部に環状凹部が近接する。バットレス部に環状凹部を有する空気入りタイヤでは、トレッド部の接地端近傍で受けた荷重により生じる歪みが環状凹溝に集中しやすい。その結果、環状凹部の近接するサイドウォールゴムの端部は、環状凹溝に集中した歪み応力の影響を受けてゴムのクラックが生じやすい。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、トレッド部の接地端近傍における剛性を低下させて偏摩耗の発生を抑えつつ、サイドウォール部に設けられたサイドウォールゴムのクラックを抑えることができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部と、サイドウォール部と、前記トレッド部と前記サイドウォール部の間に設けられたバットレス部と、前記バットレス部にタイヤ周方向に沿って設けられたえぐり部と、トレッド部のタイヤ幅方向外側にタイヤ周方向に沿って設けられたショルダー主溝とを備え、前記えぐり部の底面の断面形状は、曲率半径の異なる複数の円弧をタイヤ径方向に並べて配置し、隣接する円弧が共通の接線を持つ接点において接続された曲線形状、又は、曲率半径の異なる複数の円弧が共通の接線を持つ接点を結ぶ直線によって接続された形状をなし、前記接点が、前記ショルダー主溝の溝底よりタイヤ径方向内方に位置し、前記サイドウォール部に設けられたサイドウォールゴムのタイヤ径方向外側端が、前記ショルダー主溝の溝底よりタイヤ径方向外方に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤでは、バットレス部に設けられたえぐり部と、サイドウォールゴムのタイヤ径方向外側端部とを離隔して配置することができるため、トレッド部の接地端近傍における剛性を低下させて偏摩耗の発生を抑えつつ、サイドウォール部に設けられたサイドウォールゴムのクラックを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの半断面図。
図2図1の要部拡大図。
図3】本発明の第2実施形態に係る空気入りタイヤの要部を拡大して示す断面図。
図4】本発明の第3実施形態に係る空気入りタイヤの要部を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における上記各寸法は、特に言及した場合を除いて、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。また、本明細書において、接地端Eとは、空気タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた正規荷重状態において、路面に接地するトレッド面のタイヤ幅方向端部のことである。
【0012】
正規リムとは、タイヤが使用される市場の規格において、当該規格がタイヤ毎に定める適用リムであり、例えばJATMAであれば適用リム、TRAであれば"Approved Rim Contours"、ETRTOであれば"ApprovedRim"となる。正規内圧とは、タイヤが使用される市場の規格において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば対象タイヤの最大負荷能力に対応する空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の対象タイヤの最大負荷能力に対応する空気圧、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。例えば、タイヤサイズが295/75R22.5(LR=G)のタイヤである場合には760kPaとすることができる。また、正規荷重とは、タイヤが使用される市場の規格において、各規格がタイヤ毎に定めている許容荷重であり、JATMAであれば対象タイヤの単輪最大負荷能力値、TRAであれば上記の表に記載の対象タイヤの単輪最大負荷能力値、ETRTOであれば対象タイヤの単輪"LOAD CAPACITY PER AXLE"値である。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の空気入りタイヤ10について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の一例を示すタイヤ子午線断面図である。なお、空気入りタイヤ10は、左右対称であるため、図では右半分のみを示している。
【0014】
図1の空気入りタイヤ10は、左右一対のビード部12と、ビード部12から半径方向外方に延びる左右一対のサイドウォール部14と、トレッド面を構成するトレッド部16と、トレッド部16のタイヤ径方向内側Riに配置された左右一対のバットレス部18とを備える。ここで、バットレス部18は、トレッド部16とサイドウォール部14との境界領域であり、トレッド部16とサイドウォール部14との間を繋ぐように設けられている。
【0015】
空気入りタイヤ10は、一対のビード部12間にトロイダル状に架け渡して設けられたカーカスプライ20を備える。一対のビード部12には、それぞれリング状のビードコア22が埋設されている。ビードコア22の外周側には、タイヤ半径方向外側に向かって先細状に延びる硬質ゴム材よりなるビードフィラー34が配されている。
【0016】
カーカスプライ20は、トレッド部16からバットレス部18及びサイドウォール部14を経て、ビード部12にてビードコア22により係止されている。カーカスプライ20は、ビード部12、サイドウォール部14、トレッド部16、及びバットレス部18を補強する。カーカスプライ20は、この例では、両端部がビードコア22の周りをタイヤ幅方向内側Wiから外側Woに折り返すことにより係止されている。カーカスプライ20の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナー24が配設されている。
【0017】
カーカスプライ20は、スチールコード等の金属コードや、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等の有機繊維コードをタイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、70°~90°)で配列し、トッピングゴムで被覆してなる少なくとも1枚のプライからなる。この例のカーカスプライ20は1プライで構成されている。カーカスプライ20を構成するコードとしては、例えば、スチールコード等の金属コードが好ましく用いられる。
【0018】
トレッド部16におけるカーカスプライ20の外周側にはベルト26が配設されている。すなわち、ベルト26は、トレッド部16においてカーカスプライ20とトレッドゴム28との間に設けられている。ベルト26は、ベルトコードをタイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、10°~75°)で配列した、複数枚の交差ベルトプライからなる。ベルトコードとしては、スチールコードや高張力を有する有機繊維コードが用いられる。
【0019】
ベルト26は、この例では、最もタイヤ径方向内側Riに位置する第1ベルト26Aと、その外周側に順番に積層された第2ベルト26B、第3ベルト26C及び最もタイヤ径方向外側Roに位置する第4ベルト26Dの4層構造である。第2ベルト26Bが、4層のベルト26a、26B、26C、26Dのうち最も幅の広い最大幅ベルトである。
【0020】
トレッド部16の表面には、タイヤ周方向Sに沿って延びる複数本の主溝36が設けられている。具体的には、主溝36は、トレッド部16の接地端Eに近接する位置に設けられた一対のショルダー主溝36Bと、一対のショルダー主溝36Bの間に設けられて一対のセンター主溝36Aとから構成されている。タイヤ幅方向外側Woとは、タイヤ幅方向Wにおいてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。
【0021】
上記の4本の主溝36により、トレッド部16には、2本のセンター主溝36Aの間に中央陸部38が形成され、センター主溝36Aとショルダー主溝36Bとの間に中間陸部40が形成され、2本のショルダー主溝36Bのタイヤ幅方向外側Woにショルダー陸部42が形成されている。
【0022】
この例では、中央陸部38、中間陸部40、及びショルダー陸部42は、タイヤ周方向に連続したリブからなる。なお、中央陸部38、中間陸部40及びショルダー陸部42は、横溝によりタイヤ周方向に分断されたブロック列であってもよい。
【0023】
ショルダー陸部42のトレッド面のタイヤ幅方向外側端は、接地端Eをなしている。この接地端Eには、タイヤ径方向内側Riへ延びタイヤ側面上部を構成するバットレス部18が接続されている。
【0024】
そして、図1及び図2に示すように、バットレス部18の外表面には、接地端Eからタイヤ径方向内側Riへ延びる傾斜部48と、傾斜部48よりタイヤ径方向内方Riに設けられたえぐり部50とが形成されている。
【0025】
傾斜部48は、接地端Eからタイヤ径方向内側Riへ行くほどタイヤ幅方向Wへ広がるように(つまり、タイヤ幅方向外側Woに行くほど縮径するように)傾斜している。この傾斜部48は、ショルダー陸部42の接地端E側の剛性を弱めて轍などの路面の段差を乗り越える際のワンダリング性能を向上させる。
【0026】
なお、本実施形態では、図2に示すように、傾斜部48の先端側(タイヤ幅方向外側)はタイヤ径方向内側Riに向かって折れ曲がった屈曲部49が設けられ、屈曲部49の先端にえぐり部50のタイヤ径方向外側端50aが接続されている。
【0027】
えぐり部50は、バットレス部18の外表面よりタイヤ幅方向内側Wiへ向けて陥没するタイヤ周方向に延びる環状の凹溝である。えぐり部50の底面の断面形状は、曲率半径の異なる2つの円弧をタイヤ径方向に並べて配置し、隣接する円弧が共通の接線を持つ接点Cにおいて接続された曲線形状をなしている。
【0028】
具体的に、えぐり部50の底面は、タイヤ径方向外側Roに設けられた上側円弧部51aと、上側円弧部51aのタイヤ径方向内側Riに設けられた下側円弧部51bとからなる。上側円弧部51aは、断面が曲率半径raの円弧からなる曲面であり、下側円弧部51bは、断面が曲率半径raより小さい曲率半径rbの円弧からなる曲面である。上側円弧部51aのタイヤ径方向Rの長さL1が、下側円弧部51bのタイヤ径方向Rの長さL2より長い。一例として、上側円弧部51aの曲率半径raを10~40mm、下側円弧部51bの曲率半径rbを3~15mm、上側円弧部51aのタイヤ径方向Rの長さL1を5~14mm、下側円弧部51bのタイヤ径方向Rの長さL2を2~9mmに設定することができる。
【0029】
えぐり部50の底面を構成する上側円弧部51a及び下側円弧部51bは、接点Cにおいて共通の接線を持つように接続されており、接点Cにおいてえぐり部50の底面からタイヤ幅方向外側Woへ突出する突条が生じることなく滑らかに接続されている。
【0030】
えぐり部50は、上側円弧部51aと下側円弧部51bとの接点Cがショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向内方Riに位置するようにバットレス部18に配置されている。
【0031】
えぐり部50のタイヤ径方向外側端50aには、タイヤ周方向に延びる突部60が設けられている。突部60は、えぐり部50と屈曲部49とに跨がって設けられている。この突部60は、タイヤモールドに設けられたソーカットと呼ばれる細溝により成型される突起である。一例として、突部60のタイヤ径方向Rに沿った長さ(突部60の幅)を0.50~1.50mm、突部60の高さを0.50~1.50mmに設定することができる。突部60は、タイヤ周方向に連続して延びる環状の突起であってもよく、あるいは、タイヤ周方向に断続的に延びる突起であってもよい。突部60が断続的にタイヤ周方向に延びる場合、タイヤ周方向に隣り合う突部60の間隔を8~50mmに設定することができる。
【0032】
なお、えぐり部50は、トレッド部16の接地端Eから接点Cまでのタイヤ径方向Rの距離が30mm以内となるように設けられることが望ましい。また、最も幅広の第2ベルト26Bのタイヤ幅方向端26B1から接点Cまでの距離Dが12mm以上であることが望ましい。
【0033】
サイドウォール部14においてカーカスプライ20の外側(即ち、タイヤ外面側)にはサイドウォールゴム32が設けられている。サイドウォールゴム32は、サイドウォール部14の表面(外表面)を構成するゴム部材であり、耐カット性及び耐候性の高いサイドウォール用配合のゴム組成物により形成されている。
【0034】
サイドウォールゴム32は、ビード部12のビードフィラー34のタイヤ幅方向外側Woからタイヤ外表面に沿ってタイヤ径方向外方Roへ延びている。サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、ショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向外方Roに位置している。つまり、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、えぐり部50の接点Cよりタイヤ径方向外方Roに位置している。
【0035】
なお、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、ショルダー主溝36Bの溝底36B1から溝深さHの50%以下の位置にあることが望ましい。つまり、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aが、ショルダー主溝36Bの溝底36B1から溝深さHの50%の位置Pとタイヤ径方向Rにおいて同じ位置にある、あるいは、位置Pよりタイヤ径方向内方Riに位置することが望ましい。また、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、上側円弧部51aと下側円弧部51bとの接点Cからタイヤ径方向外方Roに4mm以上離れていることが望ましい。
【0036】
以上のような本実施形態の空気入りタイヤ10では、上側円弧部51aと下側円弧部51bとの接点Cが、ショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向内方Riに配置され、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aが、ショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向外方Roに配置されている。
【0037】
これにより、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aをトレッド部16の接地端E近傍に配置してバットレス部18における耐カット性及び耐候性を向上することができ、悪路走破性及び耐久性を向上することができる。
【0038】
しかも、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、タイヤ接地時に歪みが集中しやすいえぐり部50の接点Cを避けて配置される。そのため、えぐり部50によりトレッド部の接地端近傍における偏摩耗を抑えつつ、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aを基点とするサイドウォールゴム32のクラックを抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態において、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aが、前記ショルダー主溝の溝底から溝深さの50%以下の位置にあれば、摩耗末期までサイドウォールゴム32がトレッド部16の外表面に露出することがないため、摩耗初期から中期にかけてトレッド部16の外表面に異なるゴムが配置されることがなく、所望のタイヤ性能を維持することができる。
【0040】
また、本実施形態において、最も幅広の第2ベルト26Bのタイヤ幅方向端26B1から接点Cまでの距離Dが12mm以上であれば、ベルト26の端部からえぐり部50の底面までゴム厚みを十分に確保することができ、ベルト26の端部からトレッドゴムが剥離するセパレーションが発生しにくくなる。
【0041】
また、本実施形態において、えぐり部50のタイヤ径方向外側端50aに細幅の突部60が設けられていれば、空気入りタイヤ10を加硫成型するタイヤモールドにおいて、えぐり部50を形成する突形状のえぐり形成部のタイヤ径方向外側端に細溝が設けられ、えぐり形成部近傍のゴム流れが良好になり、ベア(タイヤ表面の凹)など加硫成型不良を抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態において、えぐり部50のタイヤ径方向外側Roに設けられた上側円弧部51aの曲率半径R1が、えぐり部50のタイヤ径方向内側Riに設けられた下側円弧部51bの曲率半径R2より大きく、上側円弧部51aのタイヤ径方向Rの長さL1が、下側円弧部51bのタイヤ径方向Rの長さR2より長い場合であると、次のような効果がある。
【0043】
すなわち、トレッド部の接地端近傍における接地圧の低減を図るため、えぐり部50をトレッド部16の接地端Eに近接配置しても、えぐり部50の接点Cをタイヤ径方向内方Riへ配置することができる。そのため、歪みが集中しやすいえぐり部50の接点Cから離れた位置にサイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aを配置することができ、偏摩耗とサイドウォールゴム32の分離とを高いレベルで両立することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の空気入りタイヤ100について、図3に基づいて第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成のものについては、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
上記した第1実施形態では、えぐり部150の底面の断面形状が、曲率半径の異なる2つの円弧が共通の接線を持つ接点Cにおいて接続された曲線形状をなしている場合について説明した。本実施形態では、図3に示すように、えぐり部150の底面の断面形状が、曲率半径の異なる3つの円弧をタイヤ径方向に並べて配置し、隣接する円弧が共通の接線を持つ接点C1,C2によって接続された形状をなしている。
【0046】
具体的に、えぐり部150の底面は、最もタイヤ径方向外側Roに設けられた上側円弧部151aと、最もタイヤ径方向内側Riに設けられた下側円弧部151bと、上側円弧部151aと下側円弧部151bとの間に設けられた中間円弧部151cとを備える。上側円弧部151aは、断面が曲率半径raの円弧からなる曲面であり、下側円弧部151bは、断面が曲率半径raより小さい曲率半径rbの円弧からなる曲面である。中間円弧部151cは、断面が曲率半径ra及び曲率半径rbより大きい曲率半径rcの円弧からなる曲面である。上側円弧部151aのタイヤ径方向Rの長さL1は、下側円弧部151bや中間円弧部151cより長い。
【0047】
上側円弧部151a及び中間円弧部151cは、接点C1において共通の接線を持つように接続されている。中間円弧部151c及び下側円弧部151bは、接点C2において共通の接線を持つように接続されている。これにより、上側円弧部151a、中間円弧部151c及び下側円弧部151bは、接点C1、接点C2において突条が生じることなく滑らかに接続されている。
【0048】
一例として、上側円弧部151aの曲率半径raを10~40mm、下側円弧部151bの曲率半径rbを3~15mm、中間円弧部151cの曲率半径rcを100~250mm、上側円弧部151aのタイヤ径方向Rの長さL1を5~14mm、下側円弧部151bのタイヤ径方向Rの長さL2を2~9mm、中間円弧部151cのタイヤ径方向Rの長さL3を1~4mmに設定することができる。
【0049】
えぐり部150は、上側円弧部151aと中間円弧部151cとの接点C1及び中間円弧部151cと下側円弧部151bの接点C2が、ショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向内方Riに位置するようにバットレス部18に配置されている。言い換えれば、えぐり部150は、全ての接点C1,C2がショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向内方Riに位置するようにバットレス部18に配置されている。
【0050】
なお、えぐり部150は、トレッド部16の接地端Eから上側円弧部151aの接点C1までのタイヤ径方向Rの距離が30mm以内となるように設けられることが望ましい。また、最も幅広の第2ベルト26Bのタイヤ幅方向端26B1から接点C1までの距離D1や接点C2までの距離D2が12mm以上であることが望ましい。
【0051】
第1実施形態と同様、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、ショルダー主溝36Bの溝底36B1から溝深さHの50%以下の位置にあることが望ましい。また、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、下側円弧部151bの接点C2からタイヤ径方向外方Roに4mm以上離れていることが望ましい。
【0052】
以上のような本実施形態の空気入りタイヤ100であっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の空気入りタイヤ200について、図4に基づいて第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成のものについては、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0054】
上記した第1実施形態では、えぐり部250の底面の断面形状が、曲率半径の異なる2つの円弧が共通の接線を持つ接点Cにおいて接続された曲線形状をなしている場合について説明した。本実施形態では、図4に示すように、えぐり部250の底面の断面形状が、曲率半径の異なる2つの円弧が共通の接線を持つ接点C3,C4を結ぶ直線によって接続された形状をなしている。
【0055】
具体的に、えぐり部250の底面は、タイヤ径方向外側Roに設けられた上側円弧部251aと、上側円弧部251aのタイヤ径方向内側Riに設けられた下側円弧部251bと、上側円弧部251aと下側円弧部251bとを接続する直線部251cとを備える。上側円弧部251aは、断面が曲率半径raの円弧からなる曲面であり、下側円弧部251bは、断面が曲率半径raより小さい曲率半径rbの円弧からなる曲面である。
【0056】
接点C3における上側円弧部251aの接線が接点C4における下側円弧部251bの接線と共通する、つまり一致するため、接点C3と接点C4を接続する直線部251cは、接点C3における上側円弧部251aの接線に一致するとともに、接点C4における下側円弧部251bの接線とも一致する。これにより、上側円弧部251a及び下側円弧部251bは、接点C3、接点C4において突条が生じることなく直線部251cを介して滑らかに接続されている。
【0057】
一例として、上側円弧部251aの曲率半径raを10~40mm、下側円弧部251bの曲率半径rbを3~15mm、上側円弧部251aのタイヤ径方向Rの長さL1を5~14mm、下側円弧部251bのタイヤ径方向Rの長さL2を2~9mm、直線部251cのタイヤ径方向Rの長さL3を1~4mmに設定することができる。
【0058】
えぐり部250は、上側円弧部251aの接点C3及び下側円弧部251bの接点C4がショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向内方Riに位置するようにバットレス部18に配置されている。言い換えれば、えぐり部250は、直線部251cがショルダー主溝36Bの溝底36B1よりタイヤ径方向内方Riに位置するようにバットレス部18に配置されている。
【0059】
なお、えぐり部250は、トレッド部16の接地端Eから上側円弧部251aの接点C3までのタイヤ径方向Rの距離が30mm以内となるように設けられることが望ましい。また、最も幅広の第2ベルト26Bのタイヤ幅方向端26B1から接点C3までの距離D3や接点C4までの距離D4が12mm以上であることが望ましい。
【0060】
第1実施形態と同様、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、ショルダー主溝36Bの溝底36B1から溝深さHの50%以下の位置にあることが望ましい。また、サイドウォールゴム32のタイヤ径方向外側端32aは、下側円弧部251bの接点C4からタイヤ径方向外方Roに4mm以上離れていることが望ましい。
【0061】
以上のような本実施形態の空気入りタイヤ200であっても、上記した第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0062】
(変更例)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0063】
例えば、上記した実施形態では、えぐり部50がタイヤ周方向に完全に連続した環状をなしている場合について説明したが、周方向の所々で断続しているものであってもよい。
【0064】
また、上記した第1及び第2実施形態では,えぐり部の底面の断面形状が、曲率半径の異なる2つ及び3つの円弧からなる場合について説明したが、4つ以上の円弧をタイヤ径方向に並べて配置し、隣接する円弧が共通の接線を持つ接点において接続された曲線形状であってもよい。 また、上記した第3実施形態では、えぐり部の底面の断面形状が、曲率半径の異なる2つの円弧が共通の接線を持つ接点を結ぶ直線によって接続された形状からなる場合について説明したが、3つ以上の円弧を有し、隣接する円弧同士が共通の接線を持つ接点を結ぶ直線によって接続された形状であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…タイヤ、12…ビード部、14…サイドウォール部、16…トレッド部、18…バットレス部、20…カーカスプライ、22…ビードコア、24…インナーライナー、26…ベルト、32…サイドウォールゴム、34…ビードフィラー、36…主溝、36A…センター主溝、36B…ショルダー主溝、38…中央陸部、40…中間陸部、42…ショルダー陸部、48…傾斜部、49…屈曲部、50…えぐり部、50a…えぐり部の上端、51a…上側円弧部、51b…下側円弧部
図1
図2
図3
図4