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特許7347760高効力かつ安定な膣ラクトバチルス調製物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】高効力かつ安定な膣ラクトバチルス調製物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20230912BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230912BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 31/7008 20060101ALI20230912BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K9/10
A61K9/19
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/36
A61P15/02
A61K45/00
A61K31/7008
A61K31/4164
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020521496
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018040884
(87)【国際公開番号】W WO2019010282
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/529,756
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520004203
【氏名又は名称】オセル、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】パークス、トーマス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マルコバル、アンジェラ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0151026(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104178437(CN,A)
【文献】特表2001-523231(JP,A)
【文献】国際公開第2014/106541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 36/06-36/068
A61P 15/02
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/06-38/58
A61K 41/00-45/08
A61K 48/00
A61K 51/00-51/12
A61K 31/33-33/44
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
REGISTRY/CASREACCT/MARPAT/KOSMET/GSTA/RDISCLOSURE/ReaxysFile/CHEMCATS/AGRICOLA/BIOTEHNO/CABA/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物由来の添加剤を含まない、膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液であって、前記水性細菌懸濁液が、膣ラクトバチルス属菌種の細胞ペレットと、
(i)5~20%(w/v)のトレハロース、
(ii)2~9%(w/v)のキシリトール、
(iii)0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(iv)10~50mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る水性保存媒体と、の組み合わせにより得られるものであり、
前記膣ラクトバチルス属菌種が、有効培養条件下で0.5ppm超の過酸化水素を生産する能力を有する、水性細菌懸濁液。
【請求項2】
前記水性保存媒体が、
(i)5~15%(w/v)のトレハロース、
(ii)2~7%(w/v)のキシリトール、
(iii)0.5~1.0%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(iv)10~30mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る、請求項1に記載の水性細菌懸濁液。
【請求項3】
前記水性保存媒体が、0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含む、請求項1又は請求項2に記載の水性細菌懸濁液。
【請求項4】
前記膣ラクトバチルス属菌種が、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からなるより選択される、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の水性細菌懸濁液。
【請求項5】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の水性細菌懸濁液の凍結乾燥粉末である乾燥粉末。
【請求項6】
0.220未満の水分活性値を有する、請求項に記載の乾燥粉末。
【請求項7】
請求項又は請求項に記載の乾燥粉末と、不活性添加剤と、を含み、前記乾燥粉末:前記不活性添加剤比が1:1~1:10w/wである、混合物。
【請求項8】
前記不活性添加剤がマルトデキストリンである、請求項に記載の混合物。
【請求項9】
前記乾燥粉末:不活性添加剤比が1:1~1:5w/wである、請求項又は請求項に記載の混合物。
【請求項10】
膣内投与のために設計されたプラスチックハウジングに収容されている、請求項若しくは請求項に記載の乾燥粉末又は請求項~請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項11】
(i)異常膣微生物叢と診断された女性を選択する工程、
(ii)異常膣微生物叢のレベルを低下させるために有効な量の抗生物質を投与する工程、
(iii)工程(ii)の後、請求項若しくは請求項に記載の乾燥粉末又は請求項~請求項のいずれか1項に記載の混合物を含む薬剤を投与する工程、
を含む、女性における異常膣微生物叢を治療する方法のために用いられる、請求項若しくは請求項に記載の乾燥粉末又は請求項~請求項のいずれか1項に記載の混合物を含む、薬剤。
【請求項12】
工程(ii)が、抗生物質を2~7日間毎日投与することを含み、工程(iii)が、抗生物質の投与完了2日前から工程(ii)の抗生物質の投与終了後2日までの任意の時点で開始される、請求項11に記載の薬剤。
【請求項13】
前記抗生物質が、クリンダマイシン、メトロニダゾール、又はチニダゾールである、請求項11又は請求項12に記載の薬剤。
【請求項14】
(i)細胞濃度が1mL当たり10~1013である膣ラクトバチルス属菌種の水性懸濁液を得ることであって、ここで、前記膣ラクトバチルス属菌種が、有効培養条件下で0.5ppm超の過酸化水素を生産する能力を有する、前記水性懸濁液を得ること、
(ii)前記水性懸濁液を遠心分離して細菌細胞ペレットを形成すること、及び
(iii)
(a)5~20%(w/v)のトレハロース、
(b)2~9%(w/v)のキシリトール、
(c)0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(d)10~50mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る水性保存媒体中に前記細菌細胞ペレットを再懸濁して、水性細菌懸濁液を得ること、
を含み、
前記水性細菌懸濁液を得るための、前記水性保存媒体(mL)に対する前記細菌細胞ペレット湿重量(g)の重量割合は、1:1~1:5(細胞ペレットのグラム数:水性保存媒体のミリリットル数)である、動物由来の添加剤を含まない乾燥条件下でラクトバチルス属菌種を保存する方法。
【請求項15】
前記水性保存媒体が、
(a)5~15%(w/v)のトレハロース、
(b)2~7%(w/v)のキシリトール、
(c)0.5~1.0%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(d)10~30mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水性保存媒体が、0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含む、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記膣ラクトバチルス属菌種が、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からなるより選択される、請求項14~請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
さらに、前記水性細菌懸濁液を凍結乾燥して乾燥粉末を得ることを含む、請求項14~請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥粉末が、0.220未満の水分活性値を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥粉末を、乾燥粉末:不活性添加剤比1:1~1:10w/wで不活性添加剤と組み合わせることをさらに含む、請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記不活性添加剤がマルトデキストリンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥粉末:前記不活性添加剤比が1:1~1:5w/wである、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月7日に出願された米国仮特許出願第62/529,756号の優先権を主張するものであり、該仮特許出願は、その全体の内容が全ての目的のために全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
全てのヒトの粘膜には、細菌叢が自然にコロニーを作っている。最近の研究によって、ヒトの消化管、口腔及び膣内で認められる微生物叢が、身体の細胞及び組織と密接に相互作用して、非特異的宿主防御等の自然の生物学的プロセスを調節することが示されている。例えば、Redondo-Lopez et al., (1990)Rev.Infect.Dis.12:856-872;Gilbert,J.A. et al., Nature 2016 Jul 7,535(7610):94-103;McDermott,A. J. et al., Immunology 2014 May,142(1):24-31;Nelson,D.B. et al., Anaerobe 2016 Dec,42:67-73を参照のこと。概して、健康な膣の微生物叢は、乳酸の生成及び膣の酸性化を介して、又は過酸化水素(H)等の他の抗菌生成物の生産によって、感染に抵抗する際に重要な役割を果たすグラム陽性桿菌であるラクトバチルス属菌種が優位を占めている。世界的に最も一般的に健康な女性の生殖器系から単離されるラクトバチルスの種としては、L.クリスパタス(L.crispatus)、L.ジェンセニイ(L.jensenii)、L.ガセリ(L.gasseri)及びL.イネルス(L.iners)が挙げられる。例えば、Antonio et al, (1999) J. Infect. Dis. 180: 1950-1956; Vasquez et al., (2002) J. Clin. Microbiol. 40:2746-2749; Vallor, A. C, et al. J Infect Dis. 2001 Dec 1, 184(11): 1431-6; Ravel, L, et al. P roc Natl Acad Sci, USA. 2011 Mar 15, 108 Suppl 1 :4680-7を参照のこと。L.クリスパタス、L.ジェンセニイ、及びL.ガセリは、Hを生産する能力があるが、L.イネルス株は、概してHを生産しない。これらの種は、食物中及び/又は環境中のラクトバチルス属菌種とは系統学的かつ機能的に異なる。これらの通性嫌気性菌は、グルコースを乳酸に代謝し、これは膣の非特異的宿主防御の主要部分を担う、膣の低pH(4.0~4.5)の維持に寄与する。酸性のpHは日和見性の共生生物及び病原生物の増殖に対する顕著な拮抗作用を有し、乳酸はHIV及びHSV-2に対する抗ウィルス活性を有する。
【0003】
生産株(例えば、L.クリスパタス及びL.ジェンセニイ)は、Hを生産しないもの(L.イネルス)よりも保護力が強い。充分な量の保護的ラクトバチルス属菌種がコロニーを形成した膣粘膜を有する女性は、淋病、クラミジア感染、トリコモナス症及び細菌性腟症の頻度が50%低いことが示されている。膣内のHを生産するラクトバチルスの存在は、細菌性腟症、症候性酵母菌性腟炎、並びにナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhea)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)等の性感染性病原体の頻度の低下と関連している。インビトロにおける研究において、Hを生産するラクトバチルスは、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)等の膣病原体に対して強力な殺菌性及び殺ウィルス性を有することが示されている。したがって、膣粘膜に関連する有益なラクトバチルスは、保護的な「バイオフィルム」を提供すると考えることができる。例えば、Falagas et al.,(2006)Drugs,66:1253-1261を参照のこと。
【0004】
多くの膣用薬物及び全身性薬物は、膣ラクトバチルスを死滅させる可能性があり、優位を占めている膣ラクトバチルス属菌種が欠乏すると、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)及びアトポビウム・バギナ(Atopobium vaginae)等の通性嫌気性菌及び偏性嫌気性菌が生息する異常微生物叢の多様性が増大したり、膣のpHが上昇したり、炎症誘発性サイトカインのレベルが増大したりする。これらは、細菌性腟症(BV)等の臨床症候群の進展、日和見感染の確立、女性におけるHIV-1及び単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)のリスクの増加に関連しうる。例えば、Sha et al. (2005) J. Infect. Dis. 191 :25-32; Taha et al. (1998) AIDS 12: 1699-1706; Bolton, M., et al. Sex Trans Dis 2008 Mar 35(3):214-215を参照のこと。ゆえに、性感染症を抗生物質で治療すると、女性が繰り返し当該疾患にかかるリスクが増大する可能性がある。これらの知見は、ラクトバチルスが概して膣の健康を促進するというよく知られた見解とともに、女性は、尿生殖路感染を予防又は治療するために、ラクトバチルスのコロニーを膣に再形成するべきであるということを臨床医に示唆してきた。
【0005】
健康な膣の微生物叢を補充し、尿生殖路感染を予防するための、抗生物質を用いない生態学的に適切なアプローチ、例えばラクトバチルス置換治療(LRT)の開発には、相当な関心がおかれてきた。LRTの成功は、生態学的に適切なラクトバチルス属菌株の選択、細胞保存、再度水分を与えられた後の乾燥ラクトバチルス調製物の回収、並びに膣のコロニー形成の程度及び継続時間に一部依存する。有益な細菌及びその他の物質を膣粘膜に投与するための各種方法が知られている。実際、腟内用又は経口用のラクトバチルス製品は、健康食品店で入手可能な「アシドフィルス」調製物、及び食料品店で購入されるアシドフィルスミルク又はアシドフィルスヨーグルトの形で、100年を超えて入手可能であった(例えば、これらの製品は、通常、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の株を含むことを謳っている)。これらの製品は、ヒト由来の凍結乾燥ラクトバチルス・アシドフィルスを含有する膣錠、カプセル及び膣坐剤、並びに各種栄養補助食品を含むものであった。
【0006】
これらの製品では、膣に外因性ラクトバチルスのコロニーを形成させることができず、たいがい有効ではない。これらの失敗は、多くの場合、商業的に入手可能な製品の品質が低く、またプロバイオティクスに含まれるラクトバチルス属菌種が膣由来ではないため膣に適切でないことに起因する。食物又はラクトバチルス補助食品として販売されるラクトバチルス製品には、多くの場合、他の潜在的病原体が混入していることが報告されている。さらに、ヨーグルトから得られるラクトバチルスは、膣上皮細胞に固着することができない。ラクトバチルスが前記上皮細胞に固着することは、宿主生物のコロニー形成を確立するために必要な工程である。さらに、模擬的な膣液中における回収率の低さに示される、生理学的に生存能力のある細胞の割合の低さは、実際の細菌の用量に著しい影響を及ぼす。
【0007】
ゆえに、厳しい条件下でも製造することが可能であり、かつ、インビボにおける殺菌性を有し、膣上皮細胞に付着し、生菌叢の有効な効力を有する適切なヒトラクトバチルス属菌株を用いた、膣感染症の治療のための製品が必要とされる。本発明は、これらの必要性及びその他の必要性に応えるものである。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、本発明は、動物由来の添加剤を含まない膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液を提供する。前記懸濁液は、膣ラクトバチルス属菌種の細胞ペレットと水性保存媒体との組み合わせにより得ることができる。前記水性保存媒体は、5~20%(w/v)のトレハロース、2~9%(w/v)のキシリトール、0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、10~50mMのリン酸ナトリウム、所望により0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含んでいてもよい。
【0009】
別の態様において、本発明は、動物由来の添加剤の非存在下で、乾燥条件下でラクトバチルス属菌種を保存する方法を提供する。前記方法は、細胞濃度が1mL当たり約10~約1010である膣ラクトバチルス属菌種の水性懸濁液を得ること、前記溶液を遠心分離して細胞ペレットを形成すること、及び水性保存媒体中に前記細胞ペレットを再懸濁することを含む。前記水性保存媒体は、5~20%(w/v)のトレハロース、2~9%(w/v)のキシリトール、0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、10~50mMのリン酸ナトリウム、及び所望により0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含んでいてもよい。得られた前記細菌懸濁液は、保存媒体(mL)に対する細胞ペレット湿重量(すなわち、遠心分離を行い、上清をデカントした後の細胞ペレットのグラム数)の重量割合が1:1~1:5(ペレットのグラム数:保存媒体のミリリットル数)であってもよい。
【0010】
本発明の別の態様は、女性における異常膣微生物叢を治療する方法を提供するものである。前記方法は、異常膣微生物叢と診断された女性を選択すること、異常膣微生物叢のレベルを低下させるために有効な量の抗生物質を投与すること、その後、動物由来の添加剤を含まない、膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液に由来する乾燥粉末を投与することを含む。前記水性懸濁液は、膣ラクトバチルス属菌種の細胞ペレットと、5~20%(w/v)のトレハロース、2~9%(w/v)のキシリトール、0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、10~50mMのリン酸ナトリウム、及び所望により0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含むことができる水性保存媒体と、の組み合わせにより得られるものである。
【0011】
いくつかの実施形態において、女性における異常膣微生物叢を治療する前記方法は、抗生物質を2~7日間毎日投与することを含み、前記乾燥粉末の前記投与は、抗生物質の投与の中止2日前から抗生物質の投与2日後までの任意の時点で開始することができる。いくつかの場合において、前記抗生物質は、クリンダマイシン、メトロニダゾール、又はチニダゾールであってもよい。
【0012】
以下の実施形態は、本発明の上記態様のいずれとも組み合わせることができる。例えば、いくつかの実施形態において、前記水性細菌懸濁液の前記膣ラクトバチルス属菌種は、有効培養条件の下で0.5ppm超の過酸化水素を生産することができる。他の実施形態において、前記膣ラクトバチルス属菌種は、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からなる群より選択され得る。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、前記水性保存媒体は、5~15%(w/v)のトレハロース、2~7%(w/v)のキシリトール、0.5~1.0%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、10~30mMのリン酸ナトリウム、及び所望により0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含むことができる。
【0014】
別の実施形態において、前記細菌懸濁液を凍結乾燥して乾燥粉末を得てもよい。前記乾燥粉末は、水分活性値が0.220未満のものであってもよい。いくつかの実施形態において、コロニー形成単位の濃度を調整するために、前記粉末を、粉末:添加剤比1:1~1:10w/wで不活性添加剤と組み合わせてもよい。あるいは、最終生産物の効力を調整するために、前記乾燥粉末を添加剤調製物と組み合わせてもよい。便宜上、前記乾燥粉末は、膣内投与のために設計されたプラスチックハウジングに収容されていてもよい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、前記細菌懸濁液の前記水性保存媒体は、スキムミルクを含まない。別の実施形態において、前記細菌懸濁液の前記水性保存媒体は、α-トコフェロールを含まない。本発明のいくつかの実施形態において、前記細菌懸濁液の前記水性保存媒体は、スキムミルクもα-トコフェロールも含まない。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、前記水性保存媒体は、5~20%(w/v)のトレハロース、2~9%(w/v)のキシリトール、0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、10~50mMのリン酸ナトリウム、及び所望により0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含み、スキムミルクを含まないものであってもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記水性保存媒体は、5~20%(w/v)のトレハロース、2~9%(w/v)のキシリトール、0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、10~50mMのリン酸ナトリウム、及び所望により0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含み、α-トコフェロールを含まないものであってもよい。本発明のいくつかの実施形態において、前記水性保存媒体は、5~20%(w/v)のトレハロース、2~9%(w/v)のキシリトール、0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、10~50mMのリン酸ナトリウム、及び所望により0~5%(w/v)のグルタミン酸ナトリウムを含み、スキムミルクもα-トコフェロールも含まないものであってもよい。
【0017】
一態様において、本発明は、異常膣微生物叢と診断された女性の治療に用いるための、動物由来の添加剤を含まない、膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液に由来する乾燥粉末を含む組成物であって、前記女性は、異常膣微生物叢のレベルを低下させるために有効な量の抗生物質で予め治療されており、前記水性細菌懸濁液は、膣ラクトバチルス属菌種の細胞ペレットと、(a)5~20%(w/v)のトレハロース、(b)2~9%(w/v)のキシリトール、(c)0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び(d)10~50mMのリン酸ナトリウムから実質的に成る水性保存媒体と、の組み合わせにより得られる、組成物に関する。いくつかの実施形態において、前記水性保存媒体は、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む。
【0018】
本発明の別の態様は、
異常膣微生物叢のレベルを低下させるために有効な量の1又は複数の抗生物質を含む第1容器と、
動物由来の添加剤を含まない、膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液に由来する乾燥粉末を含むある量の組成物を含む第2容器であって、前記懸濁液が、膣ラクトバチルス属菌種の細胞ペレットと、(a)5~20%(w/v)のトレハロース、(b)2~9%(w/v)のキシリトール、(c)0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び(d)10~50mMのリン酸ナトリウムから実質的に成る水性保存媒体と、の組み合わせにより得られる、第2容器と、
所望により、異常膣微生物叢と診断された女性の治療におけるキットの使用のための説明書と、
を含む、異常膣微生物叢と診断された女性の治療に用いるための複数のパーツを有するキットに関する。いくつかの実施形態において、前記水性保存媒体は、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む。
【0019】
一実施形態において、前記1又は複数の抗生物質は、例えば、前記女性に2~7日間投与するためのものであり、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与完了2日前から抗生物質の投与終了後2日後までの任意の時点で投与するためのものである。
【0020】
したがって、前記複数のパーツを有するキットは、好ましくは、異常膣微生物叢と診断された女性の治療に用いるための、i)前記1又は複数の抗生物質と、引き続くii)動物由来の添加剤を含まない、膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液に由来する乾燥粉末を含む組成物と、の連続投与を意図するものである。
【0021】
一実施形態において、前記膣ラクトバチルス属菌種は、有効培養条件下で0.5ppm超の過酸化水素を生産する能力を有し、前記ラクトバチルス属菌種は、例えば、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ジェンセニイ、及びラクトバチルス・ガセリからなる種の群より選択される。
【0022】
本発明の態様のうちの1つの文脈に記載される実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも適用可能である点に留意する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】スキムミルクを配合した(下側の線、丸)、又はスキムミルクを配合していない(上側の線、逆三角形)LACTIN-Vの安定性。粉末試料を1年間25℃で保存し、MRS寒天平板上で培養してコロニーを計数することによって、活性を異なる時点で決定した。
【0024】
図2】グルタミン酸一ナトリウムを含むラクトバチルス粉末調製物、又はグルタミン酸一ナトリウムを含まないラクトバチルス粉末調製物。経時的に生存率を測定することによって、37℃におけるグルタミン酸一ナトリウムを含まない(丸、三角形)、又はグルタミン酸一ナトリウムを含む(正方形、逆三角形)、4つのLACTIN-V調製物の加速安定性を決定した。粉末試料を90日間37℃で保存し、MRS寒天平板上で培養し、コロニーを計数することによって、生存率を異なる時点で決定した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
I.序論
本発明は、治療として人々に投与するために適切なラクトバチルスの高効力かつ安定な乾燥保存調製物であって、高いコロニー形成力を有し、動物由来の添加剤を含まない、乾燥保存調製物を提供する。具体的には、本明細書に開示されるように、本発明は、ディスバイオーシスを修正し、膣の健康を維持する手段として、膣粘膜に保護的ラクトバチルス微生物叢を再定着させるためのラクトバチルス置換治療(LRT)のための方法及び組成物を提供する。以下により詳細に記載されるように、本発明は、一時的に緩衝された乾燥ラクトバチルス調製物の調製及び使用のための、方法、組成物及び試薬を示すものである。
【0026】
II.定義
本明細書において、「膣微生物叢(vaginal microbiota)」又は「膣マイクロバイオーム(vaginal microbiome)」という用語は、交換可能に用いられ、膣にコロニーを形成する微生物を指すが、「微生物叢」及び「マイクロバイオーム」が好ましい用語である。「異常膣微生物叢」又は「異常膣マイクロバイオーム」又は「膣ディスバイオーシス」という用語は、膣粘膜に保護的ラクトバチルス属菌種が不足しており、著しい数の多様な非ラクトバチルス属菌種のコロニーが形成されている状態を指す。その状態は、症候性であることも無症候性であることもある。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「水性保存媒体」又は「保存調製物」又は「保存媒体」という用語は、交換可能に用いられ、保存プロセス中に起こる有害な影響を最小限に抑えつつ、代謝的不活性状態で細胞培養物を保存及び維持することができる組成物を指す。概して、ラクトバチルス属菌株は、当該保存媒体への添加、凍結及び凍結乾燥の際、活性的に増殖する代謝状態から代謝的不活性状態に転化する。したがって、保存媒体は、細胞が再度水分を与えられて粘膜面に付着し、完全な代謝活性を回復することが可能となるように、細胞回復力を最適化する調合としてもよい。本明細書で用いられる前記水性保存媒体は、通常、炭水化物、ポリオール(糖アルコール)、抗酸化剤、緩衝剤、及び所望によりアミノ酸を含む水溶液である。前記水性保存媒体は、細菌の細胞ペレットを約10CFU/mLの濃度に再懸濁するために用いられ、この懸濁液を乾燥し、2~8℃で少なくとも2年間保存し、最懸濁して、CFUの損失を15%未満とすることが可能である。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「動物由来の添加剤」という用語は、活性成分とみなされる物質を含む組成物に含まれていることがある、動物に由来する不活性物質を指す。非限定的な例としては、ミルク、ヨーグルト、バターオイル、鶏脂、ラード、ゼラチン及び獣脂が挙げられる。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「添加剤」及び「不活性添加剤」という用語は、交換可能に用いられ、長期の安定化の目的のため、前記粉末調製物を増量するため(したがって、多くの場合、「増量剤」、「充填剤」又は「希釈剤」と称される)、又は薬物吸収を容易にすること、粘度を減少させること、若しくは溶解度を高めることなど、最終的投与形態における前記活性成分に対する治療上の増進を付与するために含まれる、薬物の活性成分と共に配合される不活性物質を指す。添加剤の例としては、限定されるものではないが、マルトデキストリン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、コロイド状SiO、Pharmasperse(登録商標)、マンニトール、キシリトール、トレハロース、ラクトース、スクロース、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、グリシン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、シクロデキストリン並びにそれらの誘導体及び混合物が挙げられる。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「から実質的に成る」という用語は、開示された成分又は工程、及び、前記組成物又は方法の基本的かつ新しい特性に重要な影響を及ぼさない他の任意の成分又は工程を含む組成物又は方法を指す。列挙された成分から実質的に成る組成物は、それらの組成物の必須特性に影響を及ぼす追加的な成分を含まない。例えば、本発明のラクトバチルス粉末調製物は、乾燥ラクトバチルス粉末の生存率特性に影響を与えることなく、医薬的に許容し得る添加剤、例えば着色剤及び/又は充填剤、抗ウィルス剤若しくは抗菌剤、及び/又は酵素を含んでいてもよい。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「ラクトバチルス」という用語は、グルコース等の炭水化物原料からラクテート(乳酸)を生産する能力を特徴とする、グラム陽性通性嫌気性細菌である細菌を指す。これらの細菌は、食品内に存在していることもあり、膣粘膜又は胃腸粘膜にコロニーを形成する共生生物であることもある。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「ラクトバチルス・クリスパタス」又は「L.クリスパタス」という用語は、ラクトバチルス属の種を指す。前記種は、概して、リボソーム16SリボソームRNA遺伝子のポリヌクレオチド配列に基づいて他のラクトバチルスから区別される。「ラクトバチルス・ガセリ」又は「L.ガセリ」、及び「ラクトバチルス・ジェンセニイ」又は「L.ジェンセニイ」は、ラクトバチルスの他の種を指す。L.クリスパタス、L.ガセリ、L.ジェンセニイは、過酸化水素を生産することができる膣内種である。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「乾燥組成物」という用語は、水分が除去された組成物を指す。乾燥手法又は脱水手法としては、例えば、加熱(例えば、昇華)、低圧又は真空の印加、凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)及びそれらの組み合わせが挙げられる。組成物は、一般に、簡単な貯蔵及び輸送のために脱水される。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「有効培養条件」という用語は、ラクトバチルス細胞が、当該細胞の増殖を促進するために置かれる又はさらされる環境を指す。したがって、前記用語は、細胞の増殖に影響を及ぼし、約0.5~2.5時間の世代時間(細胞集団の倍加速度)を可能にし得る、媒体、温度、雰囲気条件、基質、撹拌条件等を指す。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「効力」という用語は、薬剤単位(すなわち、医療用粉末)当たりの送達される生存微生物細胞の数を指す。本発明によれば、生存細胞は、増殖及び繁殖することが可能である。ラクトバチルス乾燥粉末がインビボで有効であるというためには、前記微生物細胞が膣上皮細胞に、薬剤単位当たり少なくとも約10CFUの効力でコロニーを形成し、かつ、(例えば、細菌性腟症等の感染状態がないことにより示される)生物学的効果を有することが必要である。「高効力」は、薬剤単位当たり少なくとも10個の生存微生物細胞(CFU)を含む膣薬剤を指す。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「凍結乾燥」という用語は、物質を凍結させ、次いで昇華及び/又は蒸発によって水の濃度を生物学的反応又は化学的反応を補助しないレベルに低下させるプロセスを指す。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「水分活性」という用語及び「a」という表記は、平衡相対湿度(「ERH」)を100で割ったものと同等の値を指し、かつ当該値と定義される。ERHは、乾燥粉末が水分を吸収せず、環境中に水分を喪失することもない平衡状態である。前記ERHは、全ての成分、特に自由水又は結合水として存在し得る水分含有量が高い成分の組成によって影響を受ける。自由水の量は、乾燥粉末の貯蔵安定性及び純度に影響し、保存中の望ましくない活性の低下又は混入微生物の増殖をもたらす可能性がある。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「湿重量」という用語は、上清の遠心分離及びデカンテーションの後の細胞ペレットの重量(g)を指す。概して、細胞回収の工程の後、遠心分離ボトルを予め秤量し、細胞を遠心沈殿させ、上清をデカントし、前記ボトルを再度秤量する。重量の差が前記ペレットの湿重量である。
【0039】
III.組成物及び方法
膣の細菌の取得
本発明の薬剤(すなわち、医療用粉末)に用いるために適切なラクトバチルス属菌株は、本明細書において記載される識別的な特徴を有するいずれのラクトバチルス属菌株であってもよい。ラクトバチルス属菌株は、本技術分野で知られている適切なスクリーニング手法を用いて、天然源から検出し、分離することができる。具体的には、本発明の薬剤に用いるためのラクトバチルスの適切な株は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)又は生体防御・新興感染症研究資源レポジトリ(Biodefense and Emerging Infections Research Resources Repository(BEI)、beiresources.org)等の公的に利用可能な資源から得てもよく、ヒトの健康な膣から分離してもよい。本発明に用いるために適切なラクトバチルス属菌株の識別的な特徴、及びこれらの特徴のためのスクリーニング方法は、以下で詳細に考察される。
【0040】
本発明に用いるために適切なラクトバチルスの1つの識別的な特徴は、ラクトバチルス属菌株のパーセント膣上皮細胞(VEC)結合価が少なくとも約50%であるということである。「パーセントVEC結合価(percent VEC cohesion value)」は、ある特定された群のVECの総数における、少なくとも1つのラクトバチルス細胞が付着(adhere)するVECの割合として定義される。本発明によれば、「結合(cohesion)」及び「付着(adherence)」という用語は、交換可能に使用され得る。膣上皮細胞への微生物細胞の付着は、コロニー形成及び生物学的効果のために重要である。膣上皮細胞への医療用粉末のラクトバチルス細胞の付着が成功することによって、膣上皮細胞のコロニー形成が成功する。長期のインビボにおけるコロニー形成は、本発明の生産物及び方法の目標であり、「パーセントVEC結合価」は、インビトロ及びインビボにおいて、顕著な数のVECが微生物細胞を受け入れるかどうかの良好な予測因子である。許容し得るVEC結合価を決定するために用いられる方法は、本技術分野でよく知られており、米国特許第6,468,526号及び米国特許第6,093,394号に見出される。また、Kwok et al., J.Urol.2006,176:2050-2054も参照のこと。
【0041】
本発明の薬剤に用いるために適切なラクトバチルスの別の識別的な特徴は、過酸化水素(H)を生産する能力である。H陽性表現型も持続性膣コロニー形成に関連する。例えば、Vallor,A.C. et al., J Infect Dis.2001 Dec 1;184(11):1431-6を参照のこと。上述のように、過酸化水素は、ラクトバチルスによる他の微生物の死滅の原因となることが示されている。好ましくは、ラクトバチルスは、標準増殖条件下で約0.5ppm超のHを生産することができる。より好ましくは、ラクトバチルスは、少なくとも約10ppmのHを生産することが可能であり、さらに好ましくは、ラクトバチルスは、有効増殖条件下で少なくとも約20ppmのHを生産することが可能である。有効増殖条件とは、本明細書において、Hの生産を促進し得る任意の媒体及び条件と定義される。有効増殖条件としては、インビトロ増殖条件(例えば、有効な培地及び培養条件)及びインビボ増殖条件(例えば、良好な膣のコロニー形成)の両方が挙げられる。過酸化水素を生産する膣ラクトバチルスとしては、Antonio et al., The Journal of Infectious Diseases 1999,180:1950-6に記載されているように、ほとんどのL.クリスパタス株及びL.ジェンセニイ株、及びL.ガセリ株の約半分が挙げられる。
【0042】
本発明のラクトバチルスによるH生産は、H生産を測定するためのいずれの手段によって定量してもよい。H生産を測定するために用いられる方法は、本技術分野でよく知られており、培養方法又は直接検出方法を挙げることができる。前記培養方法は、ラクトバチルスをテトラメチルベンジジン培地(TMB)上に接種し、嫌気的条件下でインキュベートした場合に形成される青色顔料の強度を定量することによってH生産を測定することを含み得る。例えば、37℃の嫌気的条件下で、約48時間、TMB寒天平板上でラクトバチルスをインキュベートする。次いで、前記寒天平板を大気中の空気に曝露させる。前記大気中の空気への曝露によって、ラクトバチルスによって生産されたHが寒天内の西洋わさびペルオキシダーゼと反応し、前記TMBが酸化されることによって、ラクトバチルスのコロニーは青色に変化する。例えば、Antonio et al., The Journal of Infectious Diseases 1999;180:1950-6を参照のこと。前記直接検出方法を用いて、商業的に入手可能なH検出試験紙(例えば、EM Sciences又はMerckから入手可能)を使用して0~100mg/Lの検出スケールでHの量を測定してもよい。例えば、Strus,M. et al., The in vitro activity of vaginal Lactobacillus with probiotic properties against Candida. Infect Dis Obstet Gynecol.2005 Jun;13(2):69-75を参照のこと。
【0043】
本発明の薬剤に用いるために適切なラクトバチルスの別の識別的な特徴は、インビボ及びインビトロの両方における経時的なラクトバチルス属菌株の遺伝的同一性及び遺伝的安定性である。本発明によれば、遺伝的安定性とは、ラクトバチルス属菌株の継続的世代が母株の同一の遺伝的プロファイルを実質的に維持する能力を指す。すなわち、遺伝的に安定した株の継続的世代は、一定期間にわたって、そのゲノムDNAの実質的な変異を獲得しない。インビトロでの貯蔵又はインビボでの膣上皮細胞のコロニー形成の後の経時的なラクトバチルス属菌株の遺伝的同一性及び遺伝的安定性は、反復配列ポリメラーゼ連鎖反応(Rep PCR)を用いて確認することができる。遺伝的同一性及び遺伝的安定性ラクトバチルス属菌株を確認するために用いられるRep PCR方法は、本技術分野でよく知られており、米国特許第6,093,394号に見出すことができる。また、Antonio&Hillier,J.Clin.Microbiol.2003,41:1881-1887も参照のこと。
【0044】
本発明の薬剤に用いるために適切なラクトバチルスの別の識別的な特徴は、乳酸を生産する能力である。乳酸は、インビトロにおいて病原体の増殖を阻害することが示されている。好ましくは、ラクトバチルスは、有効増殖条件下で、少なくとも約0.75mg/100mLの乳酸を生産し、より好ましくは少なくとも約4mg/100mLの乳酸、さらに好ましくは少なくとも約8.8mg/100mLの乳酸を生産する。
【0045】
適切なラクトバチルス属菌株は、細胞の大きさが比較的大きくてもよい。Bergey’s Manual of Determinative Bacteriologyにおいて提供されるように、典型的なラクトバチルスは、幅が0.8~1.6μm、長さが2.3~11μmである。本発明に用いるための好ましいラクトバチルス属菌株は、幅約1μm~約2μm、長さ約2μm~約4μmの細胞サイズを有する。理論に束縛されることなく、本発明者らは、本発明のラクトバチルス属菌株の細胞が大きなサイズを有すると、当該ラクトバチルス属菌株が、生物競争的排除における保護剤の役割をより良好に果たすようになる可能性があると考える。生物競争的排除とは、本発明の1又は複数の医療用粉末株が、望ましくない菌株の増殖を競争的に阻害する能力を指す。そのような排除は、有益なラクトバチルス細胞(例えば、医療用粉末株)が膣上皮細胞上の利用可能な空間を占有することによって、病原性の、又は望ましくない微生物細胞の付着が防止されることに起因する。
【0046】
本発明の薬剤には、ラクトバチルスの公知の種及び株に加えて、天然由来の新たに同定された種及び株、並びに公知の又は新たに同定された株に由来する変異株を用いることができる。本発明の薬剤に用いるために適切なラクトバチルスの識別的な特徴を有するラクトバチルスの親株の変異体は、例えば、親株に1回以上の化学的変異生成及び/又は放射線変異生成を行って変異生成の速度を上げることにより、所望の特性が改善した微生物を得る確率を上昇させることによって得てもよい。本発明の変異微生物が、微生物を遺伝子操作して、例えばパーセントVEC結合価を増加させることによって得られ得る微生物も含むことは、当業者にとって明らかであろう。本明細書で用いられる場合、「変異微生物」は、そのような微生物のヌクレオチド組成が、自然に発生した、又は変異原への曝露による、又は遺伝子操作による、(1又は複数の)変異によって改変された、親微生物の変異体である。
【0047】
ラクトバチルスの好ましい種としては、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ及びラクトバチルス・ジェンセニイ、又はこれらの同定された種のうちのいずれかの16SrRNA遺伝子配列に対して95%の配列相同性を有するラクトバチルスの種が挙げられる。ラクトバチルスの特に好ましい株は、ラクトバチルス・クリスパタスCTV-05株、ラクトバチルス・クリスパタスSJ-3C株の全ての識別的な特徴を有する株である。ラクトバチルス・クリスパタスCTV-05は好ましい株である。ラクトバチルス属菌株を区別するために用いられる方法としては、Antonio&Hillier,J.Clin.Microbiol.2003,41:1881-1887に記載されているようなRep-PCR、元来は病原体の株を同定するために開発された多遺伝子座配列タイピング(MLST)(例えば、Maiden,M.C. et al., 1998,Multilocus sequence typing:a portable approach to the identification of clones within populations of pathogenic microorganisms.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,95:3140-2145参照)、及び全ゲノム配列決定が挙げられる。
【0048】
膣の細菌の培養
本発明に有用なラクトバチルス属菌株は、液体媒体又は固体媒体(例えば、寒天)内で増殖させることができる。本発明に有用なラクトバチルス属菌株を増殖させるための細菌培地は公知かつ商業的に入手可能であり(例えば、BD Difcoから)、例えば、de Man,Rogosa,and Sharpe(MRS)培地、及びRogosa培地が挙げられる。前記ラクトバチルスは、好ましくは、嫌気的に又は微好気的に培養され、培地の温度は、ラクトバチルスの増殖に適切ないずれの温度でもあってもよい。本発明のためのラクトバチルス属菌株は嫌気的条件で培養することが可能であり、概して約37℃で増殖させる。本発明に有用な膣ラクトバチルス属菌株の有効培養条件は、本技術分野でよく知られている。ラクトバチルス属菌株、特にL.クリスパタス及びL.ガセリを培養するための具体的な培養条件、培地、及び方法は、例えば、米国特許第8,329,447号、米国特許第6,093,394号、及びDavis,C.Enumeration of probiotic strains:Review of culture-dependent and alternative techniques to quantify viable bacteria.J Microbiol Methods.2014;103:9-17に見出すことができる。
【0049】
前記培地には、活発に増殖しているラクトバチルス属菌株の培養物を、適当な増殖期間後に前記保存媒体へ移すために適切な細胞密度(又は効力)とするのに充分な量播種する。本明細書において用いられるラクトバチルスの適当な増殖期間の非限定的な例は、1~2.5時間の世代時間である。約10CFU/mL~約1010CFU/mLの範囲内の好ましい細胞密度に前記細胞を増殖させる。培養ベースの方法を用いて細胞密度を決定する。この方法では、ラクトバチルス培養物の系列希釈物をMRS寒天平板上に平板培養し、37℃で嫌気的に48時間インキュベートする。前記平板上のコロニーを計数し、試料中のCFU(コロニー形成単位)数をCFU/mL又はCFU/gとして算出する。前記CFUを決定する方法は、以下で詳細に記載される。
【0050】
前記細胞が好ましい細胞密度まで増殖したら、任意の適切な方法を用いて前記細胞を回収して、前記培地から前記細胞を取り除くことができる。前記培養細胞を回収するための非限定的な例示的方法としては、濾過、遠心分離、及び沈降が挙げられる。いくつかの例において、培養細胞の回収は、中空繊維濾過、及び透析濾過による洗浄を含むことができる。培養されたラクトバチルス細胞を回収する方法は、本技術分野でよく知られており、実施例のセクションで詳細に記載される。前記細胞を前記培地から分離した後、及び/又はバイオマスを洗浄した後、前記細胞を遠心分離して、保存媒体中における懸濁用の細胞ペレットを形成させる。
【0051】
水性保存媒体の調製
上述の方法により形成される細胞ペレットを、適切な水性保存媒体に再懸濁させる。このとき、保存媒体(mL)に対する細胞ペレット湿重量(g)の重量割合を1:1~1:8(細胞ペレットのグラム数:保存媒体のミリリットル数)とすることができる。いくつかの実施形態において、前記細菌細胞ペレットを適切な水性保存媒体に再懸濁させ、このとき、保存媒体(mL)に対する細胞ペレット湿重量(g)の重量割合を1:1~1:7、1:1~1:6、1:1~1:5、1:1~1:4、1:1~1:3、1:1~1:2、1:2~1:6、又は1:3~1:5(細胞ペレットのグラム数:保存媒体のミリリットル数)とすることができる。いくつかの実施形態において、前記細菌細胞ペレットを適切な水性保存媒体に再懸濁させ、このとき、保存媒体(mL)に対する細胞ペレット湿重量(g)の重量割合を1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、又は1:8(細胞ペレットのグラム数:保存媒体のミリリットル数)とすることができる。いくつかの実施形態において、前記細菌細胞ペレットを適切な水性保存媒体に再懸濁させ、このとき、保存媒体(mL)に対する細胞ペレット湿重量(g)の重量割合を1:1~1:5(細胞ペレットのグラム数:保存媒体のミリリットル数)とすることができる。いくつかの実施形態において、前記細菌細胞ペレットを適切な水性保存媒体に再懸濁させ、このとき、保存媒体(mL)に対する細胞ペレット湿重量(g)の重量割合を1:1~1:3(細胞ペレットのグラム数:保存媒体のミリリットル数)とすることができる。
【0052】
前記水性保存媒体は、保存プロセス中において起こる有害な影響を最小限に抑える成分を含む。本発明の前記保存媒体は、炭水化物、ポリオール、抗酸化剤、緩衝剤及び所望によりアミノ酸を含む。前記保存媒体中で用いられる前記炭水化物は、凍結乾燥保護剤として機能し、凍結乾燥中、及びその後の貯蔵中、前記細胞を保護し、安定化させる。本発明による使用のために適切な非限定的で例示的な炭水化物としては、トレハロース、デキストロース、ラクトース、マルトース、スクロース及び/又は他の任意の二糖若しくは多糖が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0.5%~約30%の炭水化物、又は前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約1%~約25%、約5%~約20%、若しくは約10%~約15%の炭水化物を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0.5%以上の炭水化物を含むか、又は前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約1%以上、約2%以上、約5%以上、約7%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上若しくは約30%以上の炭水化物を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約5%~約20%のトレハロースを含む。本発明のいくつかの他の実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約5%~約15%のトレハロースを含む。
【0053】
前記保存媒体の前記ポリオール(すなわち、多価アルコール)は、凍結乾燥中の脱水のストレスから細胞を保護するのに役立つ凍結乾燥保護剤である。本発明による使用のために適切な非限定的で例示的なポリオールとしては、キシリトール、アドニトール、グリセロール、ズルシトール、イノシトール、マンニトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトール、エリスリトール、ソルビトール及び/又はアラビトールが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0.1%~約12%のポリオール、又は前記保存媒体のw/vとして約1%~約10%、約2%~約9%、若しくは約3%~約7%のポリオールを含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0.1%以上のポリオール、又は前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0.5%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上若しくは約12%以上のポリオールを含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約2%~約9%のキシリトールを含む。本発明のいくつかの他の実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約2%~約7%のキシリトールを含む。
【0054】
前記保存媒体の前記抗酸化剤は、前記保存及び貯蔵プロセスの間、前記微生物細胞の酸化性損傷を抑制する。本発明による使用のために適切な非限定的で例示的な抗酸化剤としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、パルミチルアスコルベート、没食子酸プロピル及びビタミンE(α-トコフェロール)が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0.1%~約5%の抗酸化剤、又は前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0.5%~約3.0%、若しくは約1.0%~約2.0%の抗酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0.1%以上の抗酸化剤、又は前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0.3%以上、約0.5%以上、約1.0%以上、約1.5%以上、約2.0%以上、約2.5%以上、約3.0%以上、約3.5%以上、約4.0%以上、約4.5%以上若しくは約5.0%以上の抗酸化剤を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0.5%~約1.5%のアスコルビン酸ナトリウムを含む。本発明のいくつかの他の実施形態において、前記保存媒体は、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0.5%~約1.5%のアスコルビン酸ナトリウムを含む。
【0055】
前記保存媒体に用いるために適切な緩衝剤は、前記細菌細胞の安定性及び回収率を高める。前記保存媒体に用いるために適切な緩衝剤は、細菌、膣上皮細胞、又は医薬組成物を用いている女性の患者に対していかなる毒性作用も発現しない生理学的物質である。本発明による使用のために適切な非限定的で例示的な緩衝剤としては、リン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、ヒスチジン、アルギニン及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記緩衝剤は、pKaが約4.3~約8.0、又は約4.6~約7.7、又は約5.0~約7.3、又は約5.4~約7.0、又は約6.0~約6.7であってもよい。いくつかの他の実施形態において、前記保存媒体は、pKaが少なくとも4.3以上、4.4以上、4.5以上、4.6以上、4.7以上、4.8以上、4.9以上、5.0以上、5.5以上、6.0以上、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上の緩衝溶液を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、生理学的範囲内のpKaを有する緩衝溶液を含む。他の実施形態において、前記保存媒体は、約6.7~約7.8のpKaを有する緩衝溶液を含む。
【0056】
さらなる実施形態において、前記保存媒体は、約5mM~約70mMの緩衝剤を含み、又は約10mM~約65mM、若しくは約15mM~約60mM、若しくは約20mM~約55mM、若しくは約25mM~約50mM、若しくは約30mM~約45mM、若しくは約35mM~約40mMの緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、約5mM以上の緩衝剤を含むか、又は約10mM以上、約15mM以上、約20mM以上、約25mM以上、約30mM以上、約35mM以上、約40mM以上、約45mM以上、約50mM以上、約55mM以上、約60mM以上、約65mM以上若しくは約70mM以上の緩衝剤を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、約10mM~約50mMのリン酸ナトリウムを含む。本発明のいくつかの他の実施形態において、前記保存媒体は、約10mM~約30mMのリン酸ナトリウムを含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、凍結乾燥プロセスの間の凍結保存に著しい影響を及ぼすことなく高温においてラクトバチルス細胞の安定性を高めるのに役立つアミノ酸を所望により含むことができる。いくつかの実施形態において、所望により存在する前記アミノ酸は、適切なアミノ酸の塩の形態であってもよい。本発明による使用のために適切な非限定的で例示的なアミノ酸及び/又はそれらの塩としては、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン、グリシン、アルギニン、ヒスチジン及びリジンが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、所望により、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0%~約5%のアミノ酸を含むか、又は前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0.5%~約3.0%、若しくは約1.0%~約2.0%のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、所望により、前記保存媒体の体積当たりの重量(w/v)として約0.1%以上のアミノ酸、又は前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0.3%以上、約0.5%以上、約1.0%以上、約1.5%以上、約2.0%以上、約2.5%以上、約3.0%以上、約3.5%以上、約4.0%以上、約4.5%以上若しくは約5.0%以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、所望により前記保存媒体に含まれる前記アミノ酸は、アミノ酸塩であるグルタミン酸ナトリウムであり、好ましくはグルタミン酸一ナトリウムである。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、所望により、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約0%~約5%のグルタミン酸ナトリウムを含む。本発明のいくつかの他の実施形態において、前記保存媒体は、所望により、保存媒体の体積当たりのw/vとして約0%~約5%のグルタミン酸一ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、前記保存媒体は、所望により、保存媒体の体積当たりのw/vとして約1%~約4%のグルタミン酸ナトリウムを含む。本発明のいくつかの他の実施形態において、前記保存媒体は、所望により、前記保存媒体の体積当たりのw/vとして約1%~約4%のグルタミン酸一ナトリウムを含む。
【0058】
本発明の前記保存媒体は、前記保存媒体の約5%~20% w/vである炭水化物、前記保存媒体の約2%~9% w/vであるポリオール、前記保存媒体の約0.5%~1.5% w/vである抗酸化剤、及び10mM~50mMである緩衝剤を含む。他の実施形態において、本発明による使用のために適切な保存媒体は、前記保存媒体の約5%~15% w/vである炭水化物、前記保存媒体の約2%~7% w/vであるポリオール、前記保存媒体の約0.5%~1.0% w/vである抗酸化剤、及び10mM~30mMである緩衝剤を含むことができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の前記保存媒体は、前記保存媒体の約5%~20% w/vである炭水化物、前記保存媒体の約2%~9% w/vであるポリオール、前記保存媒体の約0.5%~1.5% w/vである抗酸化剤、10mM~50mMである緩衝剤、及び、所望により、前記保存媒体の約0%~5% w/vであるアミノ酸を含む。他の実施形態において、本発明による使用のために適切な保存媒体は、前記保存媒体の約5%~15% w/vである炭水化物、前記保存媒体の約2%~7% w/vであるポリオール、前記保存媒体の約0.5%~1.0% w/vである抗酸化剤、10mM~30mMである緩衝剤、及び、所望により、前記保存媒体の約0%~5%であるアミノ酸を含むことができる。
【0060】
本発明の特に有用な保存媒体の例は、前記保存媒体の約5%~20% w/vである前記炭水化物としてのトレハロース、前記保存媒体の約2%~9% w/vである前記ポリオールとしてのキシリトール、前記保存媒体の約0.5%~1.5% w/vである前記抗酸化剤としてのアスコルビン酸ナトリウム、及び10mM~50mMである前記緩衝剤としてのリン酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、本発明の特に有用な保存媒体は、前記保存媒体の約5%~20% w/vである前記炭水化物としてのトレハロース、前記保存媒体の約2%~9% w/vである前記ポリオールとしてのキシリトール、前記保存媒体の約0.5%~1.5% w/vである前記抗酸化剤としてのアスコルビン酸ナトリウム、10mM~50mMである前記緩衝剤としてのリン酸ナトリウム、及び、所望により、前記保存媒体の約0%~5% w/vである前記アミノ酸としてのグルタミン酸ナトリウムを含む。他の実施形態において、本発明による使用のために適切な保存媒体は、前記保存媒体の約5%~15% w/vであるトレハロース、前記保存媒体の約2%~7% w/vであるキシリトール、前記保存媒体の約0.5%~1.0% w/vであるアスコルビン酸ナトリウム、及び10mM~30mMであるリン酸ナトリウムを含む。いくつかの他の実施形態において、本発明による使用のために適切な保存媒体は、前記保存媒体の約5%~15% w/vであるトレハロース、前記保存媒体の約2%~7% w/vであるキシリトール、前記保存媒体の約0.5%~1.0% w/vであるアスコルビン酸ナトリウム、10mM~30mMであるリン酸ナトリウム、及び、所望により、前記保存媒体の約0%~5% w/vであるグルタミン酸ナトリウムを含む。なんら限定的であることを意味するものではないが、以下の表1に代表的な保存媒体組成物を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
上述した、回収されたラクトバチルス細胞を前記媒体に加える前に、前記細胞を緩衝生理食塩液中で洗浄してもよい。回収された前記ラクトバチルス細胞を本明細書に記載される前記保存媒体に導入するとき、得られた混合物を細胞-保存媒体スラリーと称する。いくつかの実施形態において、細胞-保存媒体スラリーは、10CFU/mL~1011CFU/mLの活性を有することができる。より好ましい細胞-保存媒体スラリーは、少なくとも約1010CFU/mLの活性を有することができる。当業者は本明細書に開示される基本的な培養工程、回収工程及び懸濁工程にはバリエーションがあることを理解するため、本発明にはそのようなバリエーションが組み込まれていることは理解されるべきである。
【0063】
細胞-保存媒体スラリーの乾燥
本技術分野で知られている任意の適切な乾燥方法を用いて、前記細胞-保存媒体スラリーを乾燥させて、バルク薬剤粉末を生産してもよい。典型的に、乾燥による効果は、細菌を休止状態にして、細菌の生存率にマイナスの影響を及ぼす環境的要素から細菌を保護することである。休止状態をもたらす標準的な方法は水の除去によるものである。通常、標準的細胞プロセス(例えば、酵素活性)が停止するか、又は少なくとも大きく低下するように、充分な水を除去する。
【0064】
長期保存のための安定性を向上させるために、細菌調製物を乾燥させるための本技術分野で知られている数々の方法のいずれかを用いて、前記細胞-保存媒体スラリーを乾燥させることができる。乾燥方法及び保護剤は、Morgan et al., (2006)J.Microbiol.Meth.66:183-193のレビューに開示されている。適切な乾燥方法としては、空気乾燥、減圧乾燥、オーブン乾燥、噴霧乾燥、フラッシュ乾燥、流体床乾燥、制御雰囲気乾燥及び凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)が挙げられる。いくつかの実施形態において、前記乾燥プロセスにおける補助のために、及び/又は乾燥調製物中への水分の再吸収を防止するために、乾燥剤が用いられる。いくつかの実施形態において、前記乾燥は、凍結乾燥器(すなわち、Virtis、SP Scientific)を用いて行われる。当業者に知られている詳細な凍結乾燥方法は、米国特許第6,093,394号、米国特許第8,329,447号及び米国特許第8,642,029号に開示されている。得られる前記乾燥調製物(バルク粉末と称される)の効力について、以下に記載される方法を用いて試験する。前記乾燥バルク薬剤粉末の効力は、10CFU/g~1012CFU/gであり得る。より好ましいバルク粉末は、少なくとも約1010CFU/gの活性を有し得る。
【0065】
残留水分の測定
本技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて、乾燥調製物の残留水分の存在を試験することができる。前記乾燥調製物中の残留水分は、米国特許第8,329,447号及び米国特許第8,642,029号に記載されているように重量測定的に測定することもできる。または、粉末中の水分含有量を測定するための器具(例えば、IR-120 Moisture Analyzer(Denver Instruments、コロラド州デンバー))を使用して、乾燥中に前記調製物の水分含有量をモニターしてもよい。よく知られた電量滴定法又は容量滴定法、例えばカールフィッシャー滴定を行うことによって、残留水分を決定することもできる。
【0066】
ラクトバチルス粉末中の水分含有量は、水分活性メータ、例えば、AquaLab CX-2 Modelシリーズ(Decagon Instruments、ワシントン州プルマン)又はRotronic Modelシリーズ(Rotronic Instrument Corp.、ニューヨーク州ハンティントン)を用いて、自由水又は水分活性(a)として測定することもできる。前記水分活性メータ(AquaLab CX-2、Decagon Instruments)は、鏡面冷却式露点法を用いて生成物のaを測定する。試料をAquaLab内に配置すると、前記チャンバの中のステンレス鋼ミラーが繰り返し加熱及び冷却され、その間結露が形成されたり除去されたりする。この機器のファンによって、前記検知チャンバ内の空気が循環され、平衡プロセスの速度が上昇する。前記ミラーが結露する度に、AquaLabは温度を測定し、前記試料のaを算出して、これらの値を保存して、前の値と比較する。連続的な読取値のa値の差が0.001未満になると、測定プロセスは完了する。
【0067】
水エネルギーレベル、すなわち水分活性(a)は、得られた乾燥ラクトバチルスバルク薬剤粉末の全体的安定性を決定する。当業者は、本発明の前記薬物粉末のa等、医薬の水分活性の重要性を理解するであろう。医薬生産物の水分活性を低く維持することによって、前記活性医薬成分(すなわち、前記ラクトバチルス薬物粉末)の劣化を回避することができる。さらに、水分活性が低い、本発明の前記ラクトバチルス薬物粉末等の医薬生産物は、薬物の劣化や薬物が効力を失う原因となる結晶化、ケーキング、及び凝集(clumping)の影響を受けにくい。これらは時間依存的反応であり、その速度は水分活性に影響を受ける。生産調製物に対するaの影響に関する詳細は、米国薬局方 方法<1112> 「非滅菌医薬品の微生物学的特徴-水分活性決定の適用」に見出すことができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記乾燥ラクトバチルスバルク薬剤原料は、測定されたaが約0.001~約0.220、又は約0.005~約0.200、又は約0.010~約0.150、又は約0.025~約0.100、又は約0.050~約0.075であってもよい。他の実施形態において、前記乾燥ラクトバチルスバルク薬剤原料は、測定されたaが、約0.001以上、約0.003以上、約0.005以上、約0.007以上、約0.010以上、約0.030以上、約0.050以上、約0.070以上、約0.100以上、約0.150以上、約0.170以上、約0.200以上、約0.220以上であってもよい。特定の実施形態において、前記乾燥ラクトバチルスバルク薬剤原料は、測定されたaが0.220未満であってもよい。
【0069】
効力の測定
本発明の前記ラクトバチルス調製物(湿潤及び/又は乾燥)は、本技術分野で知られている任意の適切な方法を用いて、前記調製プロセス中の異なる時点の効力について試験される。ラクトバチルス調製物の効力を決定するために用いられるそのような方法としては、培養ベースの方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。ラクトバチルスの細胞密度を決定するための光散乱法は、発酵プロセスをモニターするために用いられ、細菌の試料の600nmにおける光学密度を測定することを含む。
【0070】
前記ラクトバチルス調製物の効力を測定するために用いられる好ましい方法は、系列希釈物を含む培養ベースの方法である。試験対象の前記ラクトバチルス調製物の試料を得て、系列希釈物を作製する。少量のアリコート(すなわち、100μL)の系列希釈物をMRS寒天平板上で平板培養する。前記試料を、37℃で48時間、嫌気的にインキュベートする。適切な時間が経過した後、透過光中にペトリ皿を配置することによって前記平板に光を当てる。独立したコロニーを、手作業で、又は商業的に入手可能な細菌計数ソフトウェアを用いながらカメラ及びコンピュータで計数し、前記試料中のCFUの数をCFU/mL又はCFU/gとして算出する。培養ベースの方法についてのさらなる詳細は、Brugger,S.D. et al., Automated Counting of Bacterial Colony Forming Units on Agar Plates.PLOS ONE 2012;7(3):e33695に開示されている。
【0071】
純度及び同一性
前記効力及び前記水分活性の測定に加えて、上記乾燥方法により生産される前記バルク薬剤粉末は、純度及び同一性について試験してもよい。前記バルク薬剤粉末の純度は、米国薬局方 方法<61>「微生物計数試験」、及び米国薬局方 方法<62>「特定微生物の試験」に記載されているように、本技術分野でよく知られている方法を用いて決定される。前記バルク粉末及び最終医薬生産物中の前記ラクトバチルス属菌種の遺伝的同定は、商業的に入手可能なキット(例えば、Power Soil DNA Isolation Kit,Mo Bio)を用いてゲノムDNAを分離し、PCRによって特異的プライマーを用いて16S rRNA遺伝子を増幅し、市販のDNA配列決定サービス(MCLAB)を用いて遺伝子を配列決定し、前記配列を参照標準と比較することによって行われる。前記バルク薬剤粉末中の前記ラクトバチルス属菌株の同定は、本技術分野でよく知られている方法、例えば、反復配列ポリメラーゼ連鎖反応(Rep PCR)並びに米国特許第6,093,394l号、米国特許第8,329,447号及び米国特許第8,642,029号に記載されている方法を用いて決定される。
【0072】
不活性添加剤による細菌粉末の希釈
米国食品医薬品局(FDA)によって承認され開発された効力及び用量ガイドラインを遵守するため、医薬的に許容し得る添加剤を用いて前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末の活性を希釈する。前記ラクトバチルス薬物粉末の効力を希釈するためには、本技術分野で知られているいずれの適切で不活性な医薬的に許容し得る添加剤(すなわち、希釈剤)も用いることができる。いくつかの実施形態において、希釈剤は、マルトデキストリン、アルファ化デンプン、ラクトース、Pharmasperse(登録商標)、マンニトール、キシリトール、微結晶性セルロース、糖又はそれらの組み合わせであり得る。他の実施形態において、不活性増量剤を他の希釈剤と組み合わせて用いることができる。他の実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末を希釈するためにマルトデキストリン又はアルファ化デンプンを用いることができる。いくつかの実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末を希釈するためにマルトデキストリンが用られる。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、不活性添加剤で3倍から10倍希釈される。他の実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、不活性添加剤と、1:1~1:12w/w(粉末:不活性添加剤)の割合で組み合わされ得る。いくつかの実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、不活性添加剤と、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、又は1:12w/w(粉末:不活性添加剤)の割合で組み合わされ得る。特定の実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、不活性添加剤と、1:1~1:10w/w(粉末:不活性添加剤)の割合で組み合わされ得る。特定の実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、不活性添加剤と、1:1~1:5w/w(粉末:不活性添加剤)の割合で組み合わされ得る。いくつかの実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、不活性添加剤と、1:1~1:3w/w(粉末:不活性添加剤)の割合で組み合わされ得る。
【0074】
特定の実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、マルトデキストリンと、1:1~1:10w/w(粉末:マルトデキストリン)の割合で組み合わされ得る。特定の実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、マルトデキストリンと、1:1~1:5w/w(粉末:マルトデキストリン)の割合で組み合わされ得る。いくつかの実施形態において、前記ラクトバチルスバルク薬剤粉末は、マルトデキストリンと、1:1~1:3w/w(粉末:マルトデキストリン)の割合で組み合わされ得る。希釈された前記乾燥ラクトバチルスバルク薬剤粉末(医薬生産物と称する)の効力は、10CFU/g~1011CFU/gであってもよく、10CFU/g~1010CFU/gであってもよい。より好ましい医薬生産物は、10CFU/gを超える活性を有してもよい。
【0075】
前記医薬生産物は、約100mg~600mgの用量(dose)で包装され得る。いくつかの実施形態において、前記医薬生産物の用量は、約100mgの用量で、又は約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg若しくは約600mgの用量で包装され得る。他の実施形態において、前記医薬生産物は、約150mg~450mg、又は約150mg~約400mg、又は約150mg~約350mgの用量で包装され得る。いくつかの実施形態において、前記医薬生産物は、約150mg~250mgの用量で包装され得る。特定の実施形態において、前記医薬生産物は、約200mgの用量で包装され得る。
【0076】
前記医薬生産物は、医療用粉末アプリケータ内に配置してもよく(最終医薬生産物と称する)、輸送及び貯蔵の間において水分及び酸素に対して保護するために包装してもよい。前記包装は、マイラー(Mylar)又は金属フィルムパウチ等、上記保護のための任意の適切な材料からなるものであってよい。いくつかの実施形態において、前記最終医薬生産物は、例えば個別の投与(dosage)用に、個包装される。
【0077】
前記乾燥保存ラクトバチルス最終医薬生産物の使用
本明細書に記載される任意の適切なラクトバチルス属菌種及びラクトバチルス属菌株の前記最終医薬生産物(すなわち、乾燥粉末)は、膣感染症(すなわち、異常膣微生物叢)を予防及び/又は治療するために使用することができる。そのような膣感染症としては、細菌性腟症、酵母菌性腟炎、淋病、クラミジア、トリコモナス症、ヒト免疫不全症ウィルス感染、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、尿路感染症及び骨盤炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、前記最終医薬生産物は、細菌性腟症、酵母菌性腟炎又は尿路感染症を予防及び/又は治療するために使用することができる。特定の実施形態において、前記乾燥粉末は、細菌性腟症(BV)を予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0078】
異常膣微生物叢は、本技術分野で知られている任意の適切な手段を用いて検出し、診断することができる。膣感染症は、症候性でも無症候性でもありうる。症状としては、一般的に、異臭及び/又は異常分泌物、並びにそう痒及び/又は疼痛による不快感が挙げられる。膣感染症によっては、異常膣微生物叢は、医療相談を行っていない女性に検出されたり、診断装置や診断キットにより検出されたりすることもある。例えば、酵母菌性腟炎を検出するためのいくつかの安価で処方箋の不要なキットが入手可能である(例えば、Vagisil(商標))。
【0079】
場合によっては、医師が前記膣感染症を検出し、診断する。臨床的基準では、上述の症状、4.5超の膣液pH、及び顕微鏡検査におけるクルー細胞(例えば、付着性球桿菌が点在する膣上皮細胞)の存在、を含む少なくとも3つの症候の存在を必要とする。例えば、細菌性腟症は、例えば、Amsel臨床基準又はグラム染色膣垢塗抹標本(Nugentスコアリングシステム)によって検出することができる。前記グラム染色膣垢塗抹標本は、ラクトバチルス(グラム陽性菌)、グラム陰性桿菌、グラム不定桿菌、グラム陰性球菌及びグラム不定球菌(すなわち、G.バギナリス(G.vaginalis)、プレボテラ(Prevotella)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)及びペプトストレプトコッカス(peptostreptococci))の相対濃度、並びにBVに特徴的な湾曲したグラム陰性桿菌(curved Gram-negative rods)(すなわち、モビルンカス(Mobiluncus))の相対的濃度を決定するために用いられる。各種膣感染症のための検出方法及び診断方法は、本技術分野でよく知られており、米国特許第8,329,447号に記載されている。また、https://www.cdc.gov/std/tg2015/bv.htmも参照のこと。
【0080】
本発明の前記乾燥粉末は単独で投与してもよく、膣感染症の予防及び/又は治療のための他の任意の治療と併用して(例えば、他の任意の治療と同時に、他の任意の治療の前に、及び/又は他の任意の治療の後で)投与してもよい。膣感染症の予防及び/又は治療のための他の任意の治療の投与は、異常膣微生物叢のレベルを減少させるために有効な量で行うことができる。膣感染症の予防及び/又は治療のための他の治療としては、本技術分野でよく知られている抗生物質又は抗ウィルス剤を挙げることができる。いくつかの実施形態において、膣感染症の予防及び/又は治療のための他の治療は抗生物質であってもよい。異常膣微生物叢の予防及び/又は治療のための適切な抗生物質は、本技術分野で公知である。そのような抗生物質としては、クリンダマイシン、メトロニダゾール及びチニダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の乾燥粉末と併用して使用するための抗生物質は、任意の適切な投与形態であってよい。例えば、抗生物質は、(ゲル剤又はクリーム剤として)局所的に送達されてもよく、経口錠、膣錠、カプセル剤又は坐剤として送達されてもよい。特定の実施形態において、前記抗生物質は、局所ゲル剤として投与される。
【0081】
前記抗生物質治療は、1日1~2回投与され得る。特定の実施形態において、前記抗生物質処置は、1日1回投与され得る。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態において、前記抗生物質は、2~7日間投与され得る。他の実施形態において、前記抗生物質は、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間及び7日間投与され得る。いくつかの他の実施形態において、前記抗生物質は、2~7日間、又は3~6日間、又は4~5日間、又は4~7日間投与され得る。特定の実施形態において、前記抗生物質は、2~7日間投与され得る。別の実施形態において、前記抗生物質は、7日間投与され得る。別の実施形態において、前記抗生物質は、5日間投与され得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記乾燥粉末の投与は、抗生物質の投与計画の最後の数日間で行う(すなわち、抗生物質の投与計画の完了前の2~4日間)。他の実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後に投与される。前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後に1日1回又は2回投与され得る。いくつかの実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後1日2回投与され得る。特定の実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後1日1回投与され得る。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後1~14日間投与され得る。他の実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、10日間、12日間又は14日間投与され得る。いくつかの他の実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後、2~12日間、又は3~10日間、又は4~7日間、又は5~6日間投与され得る。特定の実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後5~7日間投与され得る。別の実施形態において、前記乾燥粉末は、抗生物質の投与計画の完了後5日間投与され得る。
【0085】
抗生物質投与計画及び初期の乾燥粉末投与計画の完了後、追加の期間、本発明の前記乾燥粉末を投与することができる。例えば、前記乾燥粉末を用いた初期治療の完了後(すなわち、1日1回投与を7日間)、前記乾燥粉末を1週間につき1~5回投与してもよい。いくつかの実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後、1週間につき1回、2回、3回、4回又は5回投与され得る。他の実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後、1週間につき1~4回、又は1週間につき2~5回、又は1週間につき1~3回、又は1週間につき1~2回投与され得る。特定の実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後、1週間につき1回投与され得る。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後1~26週間投与され得る。他の実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間又は26週間投与され得る。いくつかの他の実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後、2~26週間、又は3~24週間、又は4~22週間、又は5~20週間、又は6~18週間、又は7~16週間、又は8~14週間、又は10~12週間投与され得る。特定の実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後5~10週間投与され得る。別の実施形態において、前記乾燥粉末は、初期乾燥粉末治療計画の完了後10週間投与され得る。
【0087】
本明細書に引用される全ての公報及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願書が具体的かつ個別に示され参照により組み込まれているかのように、本明細書に参照により組み込まれる。
【0088】
上述の本発明は、理解の明暸性のために説明及び例によって多少詳細に記載されたが、本発明の教示を考慮して、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲を逸脱することなく、一定の変更及び改変が為されてもよいことは、当業者にとって直ちに明らかであろう。
【実施例
【0089】
IV.実施例
以下の例は、説明の目的でのみ提供されるものであって、限定のために提供されるものではない。本質的に同様の結果を生じるために変更又は改変され得る種々の非決定的パラメータを、当業者は容易に認識するであろう。
【0090】
実施例1. ラクトバチルスの乾燥組成物の調製
本実施例には、細菌培養、保存媒体中における懸濁、乾燥、希釈及び包装を含む、粉末形態のラクトバチルスの乾燥組成物を医薬品として調製するための概略の戦略が詳細に記載される。ラクトバチルス・クリスパタスSJ-3Cの培養及び処理のための、ここで記載される手順は、本発明による使用のために適切ないずれの微生物に対しても適用可能である。
【0091】
最初のラクトバチルス・クリスパタスSJ-3C(SJ-3C)細胞は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)の寄託より、PTA-10138のATCC番号で得ることができる。これらの細胞のマスターセルバンク及びワーキングセルバンクを作製し、引き続き乾燥ラクトバチルス組成物の調製に用いることができる。
【0092】
最初に、前記SJ-3C細胞を、改変de Man,Rogosa and Sharpe(MRS)寒天平板上で平板培養し、37℃で72時間、嫌気的条件下で増殖させる。前記平板から得られた細胞を10mLの改変MRSに接種し、37℃で24時間、嫌気的にインキュベートする。次いで、この培養物を490mLの増殖培地に移し、37℃で24時間インキュベートした後、5LのBellcoバイオリアクター中の4.5Lの培地に移す。5リットルの培養物を追加的に24時間、37℃で、嫌気的にインキュベートして発酵槽接種物とする。
【0093】
窒素ガスを拡散(sparge)させた改変MRS培地の存在下で、pH6.0で、発酵槽(100Lの発酵槽)内で発酵を行う。前記接種物の添加によって発酵を開始し、細胞が初期定常期に達し、成長が停止する約15時間後に完了させる。この時点で、グルコースは枯渇し、乳酸生成は停止し、600nm(OD600)における前記培養物の光学密度は一定のままであり、前記細胞を回収する。
【0094】
細胞を回収し、濃縮し、接線流膜を用いた閉鎖滅菌中空糸システム内で、リン酸緩衝生理食塩水へ緩衝液を交換(透析濾過)することにより洗浄する。残留乳酸濃度が回収時における初期値の10%に達し、透過液のpHが一定のままとなった場合、前記細胞を前記回収システムから無菌的に取り除き、20分間、2~8℃、1500×gで、遠心分離によって回収する。
【0095】
細胞ペースト1gにつき2.5mLの保存溶液を用いて、細胞ペレットを保存媒体溶液中で再懸濁させる。前記保存媒体溶液は、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中に15%のトレハロース、6%のキシリトール、及び1%のアスコルビン酸ナトリウムを含有し、これを用いて、回収されたSJ-3Cスラリーのバッチを調製する。得られた前記保存媒体細胞スラリーのバッチの算出される活性を1×1010CFU/mL~5×1010CFU/mLとする。前記スラリーを、滅菌Lyoguard(商標)トレイに移し、Virtis Genesis凍結乾燥機内で凍結乾燥する。凍結乾燥前に、前記細胞スラリーの生存率を平板計数によって決定する。前記細胞塊を含む前記Lyoguard(商標)トレイを、乾燥剤を有するヒートシールしたバッグ内に配置し、窒素ガスでパージし、粉砕まで2~8℃で保持する。
【0096】
固化防止剤として0.5%コロイド状二酸化ケイ素と合わせた前記凍結乾燥細胞塊をコーンミルにより粉砕することによって、SJ-3Cバルク薬剤原料を生産する。前記バルク粉末を窒素(N)ガスでパージし、ヒートシールされたバッグ内で2~8℃で乾燥剤と共に医薬生産物の製造に用いるまで保存する。上述した方法及び当業者に公知の方法により、前記SJ-3Cバルク薬剤原料を、純度、効力(CFU)、同一性、及び残留水分について試験する。得られた前記乾燥SJ-3Cバルク薬剤原料のバッチの理想的活性は、5×1010CFU/g~1.0×1011CFU/gであるべきである。前記乾燥SJ-3Cバルク薬剤原料の理想的水分活性は、0.220未満であるべきである。純度について試験する場合、得られた前記SJ-3Cバルク薬剤原料は、総好気性菌数が200CFU/g未満であり、総酵母数及び総カビ数が20CFU/g未満であり、好ましくない生物が存在しない。得られた前記SJ-3Cバルク薬剤原料の同一性を16S rRNA遺伝子配列によって確認する。
【0097】
マルトデキストリンで前記バルク薬剤原料を3~10倍希釈して、最終用量を2×10CFU/用量~5×10CFU/用量とする。前記用量は200mgである。1用量の前記希釈薬物物質を医療用粉末アプリケータ内に配置し、最終医薬生産物として包装する。
【0098】
実施例2. 動物由来の添加剤を含む、及び動物由来の添加剤を含まない保存媒体の調製物の試験
以下の実施例は、乾燥粉末ラクトバチルス・クリスパタスのための、室温での良好な安定性を示す、スキムミルクを含まない保存媒体の調製物の開発及び特定を示す。本実施例は、保存媒体から動物由来の添加剤を排除した場合に、乾燥ラクトバチルス粉末の安定性が高まることを示す。ラクトバチルス・クリスパタスCTV-05を用いた前記保存媒体培養物の配合及び開発について説明されている以下の手法は、本発明による使用のために適切ないずれの微生物にも適用可能である。
【0099】
保存調製物開発の試験のために、ラクトバチルス・クリスパタスCTV-05を、撹拌バイオリアクターBioFlo 110 Fermentor and Bioreactor(New Brunswick Scientific、ニュージャージー州エジソン)内で、1Lのスケールで、改変MRS培地中、pH6.0で増殖させた。バッチ発酵プロセスを用い、グルコース消費及び乳酸生成が完了した初期定常期に細胞を回収した。前記発酵プロセスによって、概して、1.0×10~1.5×10CFU/mLが得られ、細胞生存率は90%を超えた。前記細胞を遠心分離によって回収し、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、1又は複数の保存基質と混合した。次いで、前記混合物をVirtis Advantage凍結乾燥器内で凍結乾燥させた。
【0100】
最初に、スキムミルク、トレハロース、キシリトール、アスコルビン酸、α-トコフェロール及びリン酸緩衝液を含む、ラクトバチルスを保存するための異なる濃度の添加剤を含む16の保存基質において、CTV-05の凍結保存安定性及び加速安定性を評価した(表2)。
【0101】
【表2】
【0102】
前記試料を血清バイアル内に配置して、-40℃で5時間凍結し、次いで真空下で30時間、-40℃で一次乾燥に供し、25℃で20時間二次乾燥に供した。前記試料を乾燥剤と共にホイルパウチ内に包装し、37℃で貯蔵した。一定の間隔をおいて粉末試料を取り除き、0日目、10日目及び30日目に、MRS寒天上における平板培養及びコロニーの計数を行うことによって生存率(すなわち、活性)を測定した。表3に示されるように、37℃において、調製物6及び調製物16は最も優れた貯蔵安定性を示した(初期の生存率の70%~75%を維持)。
【0103】
【表3】
【0104】
上記と同じ16種の調製物からスキムミルク成分を除去したものを用いて、同様の実験を行った(表4)。
【0105】
【表4】
【0106】
表5において以下で示されるように、37℃において、スキムミルクを含まない調製物6及び調製物16は同様の初期効力を有し、最も高い貯蔵安定性を示した(初期の生存率の約25%)。
【0107】
【表5】
【0108】
調製物6及び調製物16中にスキムミルクを配合することによって貯蔵安定性が向上するようであったが、アスコルビン酸ナトリウム及びキシリトールの濃度を高めることによっても貯蔵安定性が向上すると考えられた。一方、α-トコフェロールの濃度を高めてもCTV-05の貯蔵安定性は向上しないようであった。その後の実験において、α-トコフェロール(及びその媒体であるTween20)を除去するとCTV-05の安定性が向上したことが示された。
【0109】
上記表2の調製物6の保存基質からα-トコフェロール(及びTween20)を除去した後、凍結乾燥中の凍結保護又は25℃における長期保存安定性に悪影響を及ぼすことなく、スキムミルクも除去することができることがわかった(図1)。したがって、15%のトレハロース、6%のキシリトール、1%のアスコルビン酸ナトリウム及び10mMのリン酸ナトリウムを含むpH7.4の保存溶液を用いて、凍結保護及び室温安定性の最良の組み合わせを達成することができた(図1、上の線)。この調製物は、5%のスキムミルクを含む同じ調製物(図1、下の線)よりも良好な安定性を提供した。
【0110】
実施例3. 安定性を向上させるためのグルタミン酸一ナトリウムの使用
実施例2の手順の後、培養されたL.クリスパタスCTV-05(LACTIN-V)細胞を、以下の4つの異なる保存媒体中に配合した。
1)15%のトレハロース、6%のキシリトール、1%のアスコルビン酸ナトリウム及び10mMのリン酸ナトリウム、pH7.4(三角形);
2)1)と同じ保存媒体に5%のグルタミン酸一ナトリウムを追加したもの(逆三角形);
3)12%のトレハロース、8%のキシリトール、1%のアスコルビン酸ナトリウム及び10mMのリン酸ナトリウム、pH7.4(丸);及び
4)3)と同じ保存媒体に5%のグルタミン酸一ナトリウムを追加したもの(正方形)。
図2に示されるように、グルタミン酸一ナトリウムは、初期凍結保存に影響を及ぼすことなく、高温(37℃)において両方の粉末調製物の安定性を向上させた。
【0111】
実施例4. 異常膣微生物叢を治療するための乾燥組成物の使用
本実施例には、本発明のラクトバチルス属菌をインビボで使用し、粉末として患者に送達させて、再発性細菌性腟症の女性の膣に再びコロニーを形成させることが可能であることを示す、インビボの試験が詳細に記載される。
【0112】
再発性細菌性腟症(BV)の25歳の女性患者は、膣異臭及び異常分泌物、並びにそう痒及び疼痛からの不快感等のBV感染の症状を有している。この女性患者において、BVはAmsel臨床基準(3つ以上の基準を満たす場合)により検出され、Nugentスコアリングシステムにより微生物学的に確認される(Nugentスコアが7~10の場合)。
【0113】
前記患者は、0.75%の局所メトロニダゾール(MetroGel(登録商標))による最初の標準抗生物質治療を、1日1回、5日間受ける。前記メトロニダゾール治療の完了後、前記女性患者は、本発明のラクトバチルスSJ-3C医薬生産物を用いた治療を開始する。包装された医療用粉末アプリケータを用いて、1用量当たり2×10CFUの活性を有する200mg用量のSJ-3C医薬生産物を前記患者の膣内に投与する。前記患者は、5日間連続で睡眠前に1日1回、前記SJ-3C医薬生産物の1用量の投与を受け、その後1週間に2回の治療を10週間受ける。
(付記)
本開示は以下の態様も含む。
<1> 動物由来の添加剤を含まない、膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液であって、前記懸濁液が、膣ラクトバチルス属菌種の細胞ペレットと、
(i)5~20%(w/v)のトレハロース、
(ii)2~9%(w/v)のキシリトール、
(iii)0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(iv)10~50mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る水性保存媒体と、の組み合わせにより得られるものである、水性細菌懸濁液。
<2> 前記水性保存媒体が、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む、<1>に記載の細菌懸濁液。
<3> 前記膣ラクトバチルス属菌種が、有効培養条件下で0.5ppm超の過酸化水素を生産する能力を有する、<1に記載の細菌懸濁液。
<4> 前記膣ラクトバチルス属菌種が、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からなる群より選択される、<1>に記載の細菌懸濁液。
<5> 前記水性保存媒体が、
(i)5~15%(w/v)のトレハロース、
(ii)2~7%(w/v)のキシリトール、
(iii)0.5~1.0%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(iv)10~30mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る、<1>に記載の細菌懸濁液。
<6> 前記水性保存媒体が、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む、<5>に記載の細菌懸濁液。
<7> 凍結乾燥されて乾燥粉末を形成している、<1>に記載の細菌懸濁液。
<8> 0.220未満の水分活性値を有する、<7>に記載の乾燥粉末。
<9> 前記粉末が、粉末:添加剤比1:1~1:10w/wで不活性添加剤と組み合わされる、<8>に記載の乾燥粉末。
<10> 前記添加剤がマルトデキストリンである、<9>に記載の乾燥粉末。
<11> 前記粉末:添加剤比が1:1~1:5w/wである、<9>に記載の乾燥粉末。
<12> 膣内投与のために設計されたプラスチックハウジングに収容されている、<7>に記載の乾燥粉末。
<13> (i)細胞濃度が1mL当たり10 ~10 13 である膣ラクトバチルス属菌種の水性懸濁液を得ること、
(ii)前記溶液を遠心分離して細菌細胞ペレットを形成すること、及び
(iii)
(a)5~20%(w/v)のトレハロース、
(b)2~9%(w/v)のキシリトール、
(c)0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(d)10~50mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る水性保存媒体中に前記細菌細胞ペレットを再懸濁すること、
を含み、
細菌懸濁液を得るための、保存媒体(mL)に対する細胞ペレット湿重量(g)の重量割合は、1:1~1:5(細胞ペレットのグラム数:保存媒体のミリリットル数)である、動物由来の添加剤を含まない乾燥条件下でラクトバチルス属菌種を保存する方法。
<14> 前記水性保存媒体が、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む、<13>に記載の方法。
<15> 前記膣ラクトバチルス属菌種が、有効培養条件下で0.5ppm超の過酸化水素を生産する能力を有する、<13>に記載の方法。
<16> 前記膣ラクトバチルス属菌種が、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からなる群より選択される、<13>に記載の方法。
<17> 前記水性保存媒体が、
(a)5~15%(w/v)のトレハロース、
(b)2~7%(w/v)のキシリトール、
(c)0.5~1.0%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(d)10~30mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る、<13>に記載の方法。
<18> 前記水性保存媒体が、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む、<17>に記載の方法。
<19> 乾燥粉末を得るために凍結乾燥される、<13>に記載の細菌懸濁液。
<20> 0.220未満の水分活性値を有する、<13>に記載の乾燥粉末。
<21> 前記乾燥粉末が、粉末:添加剤比1:1~1:10w/wで不活性添加剤と組み合わされる、<20>に記載の乾燥粉末。
<22> 前記添加剤がマルトデキストリンである、<21>に記載の乾燥粉末。
<23> 前記粉末:添加剤比が1:1~1:5w/wである、<21>に記載の乾燥粉末。
<24> (i)異常膣微生物叢と診断された女性を選択する工程、
(ii)異常膣微生物叢のレベルを低下させるために有効な量の抗生物質を投与する工程、
(iii)工程(ii)の後、動物由来の添加剤を含まない、膣ラクトバチルス属菌種の水性細菌懸濁液に由来する乾燥粉末を投与する工程であって、前記懸濁液が、膣ラクトバチルス属菌種の細胞ペレットと、
(a)5~20%(w/v)のトレハロース、
(b)2~9%(w/v)のキシリトール、
(c)0.5~1.5%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(d)10~50mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る水性保存媒体と、の組み合わせにより得られる、工程、
を含む、女性における異常膣微生物叢を治療する方法。
<25> 前記水性保存媒体が、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む、<24>に記載の方法。
<26> 工程(ii)が、抗生物質を2~7日間毎日投与することを含み、工程(iii)が、抗生物質の投与完了2日前から工程(ii)の抗生物質の投与終了後2日までの任意の時点で開始される、<24>に記載の方法。
<27> 前記膣ラクトバチルス属菌種が、有効培養条件下で0.5ppm超の過酸化水素を生産する能力を有する、<24>に記載の方法。
<28> 前記膣ラクトバチルス属菌種が、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、及びラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)からなる群より選択される、<24>に記載の方法。
<29> 0.220未満の水分活性値を有する、<24>に記載の乾燥粉末。
<30> 粉末:添加剤比1:1~1:10w/wで不活性添加剤と組み合わされる、<29>に記載の乾燥粉末。
<31> 前記添加剤がマルトデキストリンである、<30>に記載の乾燥粉末。
<32> 前記粉末:添加剤比が1:1~1:5w/wである、<30>に記載の乾燥粉末。
<33> 前記細胞ペレットが、
(a)5~15%(w/v)のトレハロース、
(b)2~7%(w/v)のキシリトール、
(c)0.5~1.0%(w/v)のアスコルビン酸ナトリウム、及び
(d)10~30mMのリン酸ナトリウム、
から実質的に成る水性保存媒体と組み合わされる、<24>に記載の方法。
<34> 前記水性保存媒体が、所望により0~5%のグルタミン酸ナトリウムを含む、<33>に記載の方法。
<35> 前記抗生物質が、クリンダマイシン、メトロニダゾール、又はチニダゾールである、<24>に記載の方法。
図1
図2