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特許7347761手術部位内で導管を方向付けるためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】手術部位内で導管を方向付けるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A61F9/007 200B
A61F9/007 130C
A61F9/007 180
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020525939
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 NL2018050698
(87)【国際公開番号】W WO2019093879
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】2019868
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】518007625
【氏名又は名称】クレア・アイピー・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】CREA IP B.V.
【住所又は居所原語表記】Seggelant-Noord2, 3237 MG Vierpolders,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ダム-ユイスマン、アドリアーンチェ・コリーネ
(72)【発明者】
【氏名】エカルト、クラウス
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533810(JP,A)
【文献】特表2017-504458(JP,A)
【文献】特表2005-501666(JP,A)
【文献】米国特許第05681264(US,A)
【文献】国際公開第93/16668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 3/00-3/18
A61B 17/00-17/94
A61B 90/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術部位内に導管を位置付けるためのシステムであって、
導管(12)と、
第1の固定点(14)と、
前記第1の固定点(14)から予め定められた距離だけ離れて位置付けられている第2の固定点(15)とを備え、
前記第1の固定点(14)は、
固定ロケーションで固着するように配置されているベース構造(16)と、
前記導管(12)を保持するように構成されているグリップ装置(18)とを備え、前記グリップ装置(18)は、ボールジョイント構造(20;22)を通して前記ベース構造(16)上に据え付けられ、前記ボールジョイント構造は、前記ベース構造(16)に関して前記グリップ装置(18)の枢動及び回転運動を可能にするように配置され
前記導管(12)は、前記ベース構造(16)に関して前記グリップ装置(18)の枢動及び回転運動時に、前記眼科手術部位内の前記第2の固定点(15)について屈曲および/または枢動する、システム。
【請求項2】
前記第2の固定点(15)は、カニューレ(24)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記導管(12)は、光導管として構成され、少なくとも1つの光ファイバを備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記導管(12)は、前記手術部位(例えば、注入又は吸引ライン)に、又は前記手術部位から流体を送り出するように構成されている少なくとも1つの内部管腔を備える、請求項1-3のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記導管(12)をその長さに沿って少なくとも部分的に取り囲むシース(26)をさらに備える、請求項1-4のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記シース(26)は、前記第1の固定点(14)の領域において前記導管(12)を取り囲む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記シース(26)と前記導管(12)との組み合わせは、前記導管(12)の露出部分よりも高い剛性を有する、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記導管(12)は、前記シース(26)の近位端から(例えば、約5mmから50mmの間の長さだけ、例えば、約30mmだけ)伸長する、請求項5-7のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記ボールジョイント構造は、ボール要素(20)及び収容要素(22)を備え、前記収容要素(22)は、前記収容要素(22)に対する前記ボール要素(20)の並進運動を防止するように、前記ボール要素(20)を少なくとも部分的にその中に閉じ込めるように構成されている、請求項1-8のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ボール要素(20)は、前記ベース構造(16)上に据え付けられ、前記グリップ装置(18)は、前記収容要素(22)を備える、請求項1-9のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記ベース構造(16)は、収容要素(22)を備え、前記ボール要素(20)は、前記グリップ装置(18)上に据え付けられる、請求項1-9のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ベース構造(16)に対して前記グリップ装置(18)を移動させるために予め定められた再位置決め力が加えられるまで、前記ボールジョイント構造(20、22)は、前記グリップ装置(18)を前記ベース構造(16)に対して安定したポジションで支持するように構成されている、請求項1-11のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記グリップ装置(18)に対して前記導管(12)を移動させるために予め定められた再位置決め力が加えられるまで、前記グリップ装置(18)は、前記グリップ装置(18)に対して安定したポジションで前記導管(12)を支持するように構成されている、請求項1-12のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ベース構造(16)は、前記ベース構造(16)を表面に固着するように適合された少なくとも1つの固着要素(28)を備える、請求項1-13のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の固定点(15)は、前記導管(12)を係合し、前記第2の固定点(15)に対する前記導管(12)の軸方向移動を制限するように適合される、少なくとも1つの固定機構(32)(例えば、スリット弁、弾性円周隆起等)を備える、請求項1-14のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記導管(12)は、前記カニューレ(24)上の前記固定機構(32)を係合するように適合された係合機構(34)を備える、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術部位内で導管を方向付けるためのシステム及び方法に関し、より詳細には、眼内で光ファイバ又は流体導管の先端を操るためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科手術で使用するためのシステムは、光又は流体を眼に送り出すための導管を含むことが多い。例えば、手術部位を照明するための装置は、光源に結合された光ファイバが伸長する管腔を備えているかもしれない。外科医の視野を照明するための光に加えて、光ファイバはまた、治療のための放射線を眼内の部位に送り出すことができる。いくつかの用途では、流体(例えば、潅流及び/又は吸引流体)を眼に送り出す流体輸送管腔も提供されてもよい。例えば、流体導管は、流体源(例えば、注入ボトル)に接続され、潅流流体を手術部位に送り出すように構成されてもよい。代替的に、流体導管は、真空源に接続され、眼から流体及び外科的破片を吸引するように構成されてもよい。多くの用途において、照明及び/又は流体の流れを眼の中の正確なロケーションに向けるために、眼の中の導管の先端を操ることができることが有用であることがある。
【0003】
米国特許出願公開US5,681,264Aは、眼科手術のための照明デバイスを説明している。デバイスは、近位端及び遠位端を有する光ファイバと、光ファイバの近位端に配置されたコネクタと、概して光ファイバの遠位端に配置されたハンドピースとを備えている。照明を眼内の所望のロケーションに方向付けるために、ユーザは、ハンドピースを操作して、眼内の照明の視野を移動させる。
【0004】
PCT公開番号WO93/16668A1は顕微鏡手術の間に使用するための可撓性があり操ることが可能な吸引先端部を説明している。吸引先端部は、ばね素材を含む可撓性部分を含み、ばね素材は、弛緩した予め湾曲した状態で、又は、代替的に、圧力を加えられた真っ直ぐな構成で構成されてもよい。吸引先端部は、吸引先端部の構成を遠隔的に変更する手段を含む、ハンドピースアセンブリと組み合わされてもよい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、眼科手術の間、手術部位内で導管の先端を方向付けるための改善されたシステム及び方法を提供しようとする。
【0006】
本発明にしたがうと、眼科手術部位又は手術野内に導管を位置付けるためのシステムが提供され、システムは、導管と、第1の固定点と、第1の固定点から予め定められた距離だけ離れて位置付けられている第2の固定点とを備え、第1の固定点は、固定ロケーションで固着するように配置されているベース構造と、導管を保持するように構成されているグリップ装置とを備え、グリップ装置は、ボールジョイント構造を通してベース構造上に据え付けられ、ボールジョイント構造は、ベース構造に関してグリップ装置の枢動及び回転運動を可能にするように配置されている。
【0007】
本発明の第2の態様にしたがうと、眼科手術部位又は手術野内に導管を手術部位内に位置付けるための方法が提供され、方法は、導管を第1の固定点に固着することと、手術野の入口点において第2の固定点で導管を固着することと、第1の固定点においてベース構造に対してグリップ装置の向きを変え、導管の先端を第2の固定点について枢動させることとを含み、第1の固定点は、表面に固着されるように構成されているベース構造と、導管を保持するように構成されているグリップ装置とを備え、グリップ装置は、ベース構造に対するグリップ装置の枢動及び回転運動を可能にするように配置されているボールジョイント構造を通してベース構造上に据え付けられ、第2の固定点は、第1の固定点から離れて、そこから予め定められた距離に位置付けられ、第2の固定点は、導管が通過する開口を備える。
【0008】
さらなる実施形態は、従属請求項に説明されている。
【0009】
本発明にしたがうシステム及び方法は、有利なことに、外科医が、処置全体を通して、光又は流体導管を手術野内に再配置し、それを所望のロケーションに固定することを可能にする。さらに、第1の固定点を直近の手術野から離れた表面上に設けることによって、眼の周囲に配置されるかさばる器具の数が低減される。最後に、本発明の機械的に単純な装置は、システムコンポーネントの洗浄を促進し、1回以上の使用後のコンポーネント部品の交換を経済的に可能にする。
【0010】
本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態にしたがう導管を操るシステムを示す。
図2A図2Aは、眼科手術設定の体内における図1のシステムを示す。
図2B図2Bは、眼科手術設定の体内における図1のシステムを示す。
図3A図3Aは、使用する際の図1及び2のシステムの可能な方向を示す。
図3B図3Bは、使用する際の図1及び2のシステムの可能な方向を示す。
図3C図3Cは、使用する際の図1及び2のシステムの可能な方向を示す。
図3D図3Dは、使用する際の図1及び2のシステムの可能な方向を示す。
図3E図3Eは、使用する際の図1及び2のシステムの可能な方向を示す。
図3F図3Fは、使用する際の図1及び2のシステムの可能な方向を示す。
【実施形態の説明】
【0012】
図1は、本発明の1つの例示的な実施形態にしたがう眼科手術野内に導管を位置決めするためのシステムを示す。図1に示されるように、システム10は、眼1に光又は流体を送り出すための導管12を備える。第1の固定点14は、固定ロケーションに固着されるように配置されているベース構造16と、導管12を保持するように構成されているグリップ装置又はグリップコンポーネント18とを備える。グリップ装置18は、ボールジョイント構造20、22を通してベース構造16に据え付けられている。ボールジョイント構造は、(例えば、グリップ装置18及びベース構造16の互いに対する並進運動を防止しながら)ベース構造16に対するグリップ装置18の枢動及び回転運動を可能にするように配置される。第2の固定点15は、第1の固定点14から予め定められた距離だけ離れて位置付けられている。
【0013】
第1の固定点14は、導管12の近位端12aから約50-200mmで導管12にクリップ留めすることができる。これは、第1の固定点14が眼から離れて位置付けられることを可能にし、眼の表面の周りの貴重な空間を解放する。
【0014】
有利には、第2の固定点15は、手術部位への入口に、すなわち、眼1の表面又はその近くに位置付けられる。第2の固定点15は、眼1の内部へのアクセスを提供する任意の構造を備えることができる。例えば、第2の固定点15は、カニューレ24を備えることができる。カニューレ24は、挿入デバイス(図示せず)を用いて眼1に挿入される単純なチューブを備えることができ、このチューブを通して、眼1の内部に到達するように導管12を通過させることができる。代替的に、カニューレ24は、眼1への挿入を促進するために鋭い先端を備えてもよい。ポート(例えば、カニューレ)を備えるトロカール構成を第2の固定点15が備えることができ、これは導管12を係合するための密封又は固定機構を組み込むことも当業者は理解するであろう。この性質の1つの例示的な実施形態を、図2Bを参照して以下で議論する。
【0015】
図1に示すように、導管12は、少なくとも1つの光ファイバを含む光導管として構成することができる。この実施形態では、導管12の遠位端は、光源Lに結合される。光ファイバは、光源から眼1に光を送り出す。代替的に(又は追加的に)、導管12は、手術部位へ又は手術部位から流体を送り出すための少なくとも1つの内部管腔(例えば、注入ライン又は吸引ライン)を備える流体導管として構成されることができる。流体導管は、潅流流体源(例えば、注入ボトル)に結合され、潅流流体を眼1に送り出すように構成されることができる。代替的に、流体導管は、真空源に結合され、手術部位から外科用流体及び/又は外科的破片を排出するように構成されることができる。単一の導管12に複数の管腔を設けることができる。
【0016】
図1に示すように、システム10は、少なくとも部分的にその長さに沿って導管12を取り囲むシース26をさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、シース26は、第1の固定点14の領域において導管12を取り囲むことができる。これは、グリップ装置18の領域において導管12(例えば、光ファイバ)に追加の保護を提供することができる。
【0017】
導管12に対する保護を提供することに加えて、シース26を使用して、必要に応じて導管12の剛性を高めることができる。例えば、シース26と導管12との組み合わせは、導管12の露出部分よりも高い剛性を有することができる。これは、導管12よりも大きな曲げ弾性率を有する素材からシースを形成することによって達成することができる。代替的に、シース12は、導管と同様の曲げ弾性率を有する素材から形成されてもよく、それにより、導管12及びシース26の総直径の増加によって剛性の増加がもたらされる。導管12の近位先端12aを露出させたままにすることによって、導管12の剛性をその長さに沿って変化させることができ、シース26によって囲まれた部分は、先端12aにおける露出部分よりも剛性が高い。先端12aにおいて導管のより可撓性のある部分を提供することによって、手術野内で導管12の操作性を改善できる。シース26は、グリップ装置18と導管12との間の摩擦係合を増大させるように構成することもでき、それにより、導管12とグリップ装置18との間の結合の剛性を増大させることを当業者は理解するであろう。例えば、シース26は、グリップ装置18との係合を促進するために、その長さの一部に沿った表面機構を備えてもよい。
【0018】
1つの例示的な実施形態では、導管12は、シース26の近位端から約5-50mm(例えば、約30mm)だけ伸長する。この伸長した長さは、眼の中での導管先端12aの十分な操作性を提供する一方で、手術野から離れて位置付けられる導管12の部分を保護することが見出されている。
【0019】
依然として図1を参照すると、ボールジョイント構造20、22は、ボール要素20及び収容要素22を備えることができる。収容要素22は、収容要素22に対するボール要素20の並進運動を防止するために、ボール要素20を少なくとも部分的にその中に閉じ込めるように構成されている。
【0020】
当業者は、このようなボールジョイント構造20、22が異なる方法で構成されてもよいことを理解するであろう。例えば、図1に示されるように、1つの構成では、ボール要素20は、ベース構造16上に据え付けられることができ、グリップ装置18は、収容要素22を備えることができる。ボール要素20は、収容要素22中に収容され、そこに締め付けられ、ボール20と収容要素22との間の相対回転運動が少なくともある程度全方向に許容される一方で、ボールと収容要素22との間の任意の方向への相対並進を防止する。図1に示される構成の代替として、ベース構造16は、収容要素22を備えることができ、ボール要素20は、グリップ装置18上に据え付けられることができる。
【0021】
いずれのケースも、収容要素22は、ボール要素20の上部を完全に包む部分的な球形シェルを備えることができる。代替的に、図2に示すように、収容要素22は、ボール要素20を係合する2つ以上の対向する爪を備えることができる。爪は、弾性的で可撓性があることができ、その結果、爪をボール要素20上にクリップ留めすることができる。他の構成は、本開示に照らして当業者に明らかであろう。
【0022】
ボール要素20と収容要素22との間の結合は、グリップ装置18をベース構造16に対して安定したポジションに保持するが、ユーザによるベース構造16に対するグリップ装置18の再位置付を可能にする剛性を有するように構成することができる。言い換えると、グリップ装置18をベース構造16に対して移動させるように予め定められた再位置付け力が加えられるまで、ボールジョイント構造20、22は、グリップ装置18をベース構造16に対して安定したポジションで支持するように構成することができる。再位置付け力は、システムのパラメータ、例えば、導管の剛性及び重量、ボールジョイント構造のサイズ、手術野への近接度等に基づいて選ぶことができる。1つの例では、適切な再位置付け力は、少なくとも1N(例えば、少なくとも1.8N)であることがある。この再位置決め力は、ユーザがベース16に対してグリップ18を容易に再位置付けすることを可能にするが、外科的処置の間の導管12の偶発的な移動を防止するのに十分に高い。当業者は、この値がインプリメンテーションに応じて調整されてもよいことを理解するであろう。
【0023】
同様に、導管12とグリップ装置18との間の結合の剛性は、グリップ装置18が、グリップポジションに対して安定したポジションで導管12を保持するが、ユーザによるベース構造16に対するグリップ装置に対して導管12の再位置付けを可能にする剛性で導管12を係合するように選択されるべきである。言い換えると、グリップ装置18に対して導管12を移動させるために予め定められた再位置付け力が加えられるまで、グリップ装置18は、グリップポジションに対して安定したポジションで導管12を支持するように構成されている。グリップ18に対して軸方向に導管12を移動させるための再位置付け力はまた、システムのパラメータ、例えば、導管の剛性及び重量、手術野への近接度等に基づいて選ぶことができる。1つの例では、適切な再位置付け力は、少なくとも0.4N(例えば、少なくとも0.8N)であることがある。この再位置決め力は、ユーザがグリップ18に対して導管12を容易に再位置付けすることを可能にするが、外科的処置の間の導管12の偶発的な移動を防止するのに十分に堅い。当業者は、この値がインプリメンテーションに応じて調整されてもよいことを理解するであろう。少なくともいくつかの実施形態では、グリップ18は、シース26を変形させる力を導管12に及ぼすように構成することができる。シース26の変形は、次に、導管12を把持し、グリップ18に対する導管12の軸方向の移動を防止する。シース26と導管12との間の摩擦係合は、シース26に高摩擦素材を使用することによって変更することができる。例えば、シース26は、導管12とグリップ18との間の摩擦係合を増加させるために、少なくともシリコン又はゴム管の領域を備えることができる。加えて、又は代替的に、シース26は、(i)導管12とシース26との間の、及び/又は、(ii)シース26とグリップ18との間の摩擦係合を増加させるために、表面機構(例えば、内部又は外部リブ)を備えることができる。
【0024】
当業者は、ボールジョイント構造20、22の剛性及びグリップ装置18によって導管12に及ぼされる力もまた、用途に応じて選ぶことができることを認識するであろう。いずれにしても、グリップ装置18と導管12又はシース26との間の摩擦係合は、グリップ装置18がグリップ装置18に対して滑ることなく導管12の自体の重量を支持し、処置の過程で外科医との偶発的な接触によるグリップ装置18に対する導管12の不注意な再配置を防止することができるのに十分であるべきである。代わりに、グリップ装置18とシース26又は導管12との間の摩擦係合は、グリップ装置18が医療従事者によって能動的に再位置付けされない限り、グリップ装置18に対する導管12の移動を防止するのに十分であるべきである。この摩擦係合は、有利には、外科医が、処置の期間の間(又は意図的に再位置付けされるまで)、導管12を定位置に締め付け、処置の間、両手を自由にして、他の手動作業を継続することを可能にする。オプション的に、この能力を促進するために、グリップ装置は、グリップ18の導管12との係合を解放し、グリップ装置18に対する導管12の再位置付けを可能にする(つまみ可能セクションのような)解放機構を備えることができる。
【0025】
ここで図2を参照すると、第1の固定点14のベース構造16は、ベース構造16を表面30に固着するように適合された少なくとも1つの固着要素28を備えることができる。固着要素28は、外科処置の間にベース構造16を外科用ドレープ30又は他の安定した表面に取り付けるように構成されている接着エリア28又はクリップ(図示せず)を含むことができる。当業者は、他の固着ソリューションが可能であることを理解するであろう。
【0026】
図2Aに示されるように、第2の固定点15は、眼1の表面又はその近くに位置付けられる。いくつかの実施形態では、第2の固定点15は、眼1の表面(例えば、強膜)の切り目に位置付けられる。図2に示す実施形態では、第2の固定点15は、眼1の表面の切開部に設けられた中空管又はカニューレ24によって提供される。導管12は、その先端12aが眼1内に配置されるように、第2の固定点15を通って伸長する。図2に示される実施形態は、第2の固定点15を提供するためにカニューレ24を用いるが、本発明のいくつかの実施形態では、カニューレ24を省略でき、第2の固定点15は、単に、眼1内の切開を囲む組織によって提供されることができる。
【0027】
ここで図2Bを参照すると、第2の固定点15は、導管12を係合し、第2の固定点15に対する導管12の軸方向移動を制限するように適合される、少なくとも1つの固定機構32を備えることができる。言い換えると、固定機構は、導管が手術部位の開口を通って摺動することを防止することができる。固定機構32は、導管12の外面を係合するスリット弁、弾性円周隆起、又は他の内面機構を備えることができる。固定機構32の目的は、予め定められた力しきい値を超えない限り、カニューレ24内の導管12の軸方向の移動(すなわち、カニューレ24の中空体内の導管12の摺動)を制限することである。例えば、カニューレ24と導管12との間の係合は、医療従事者によって意図的に再位置付けされない限り、導管12がカニューレ24との係合によって定位置に保持されるのに十分であるべきである。
【0028】
カニューレ24と導管12との間の係合を促進するために、カニューレ24はまた、カニューレ24上の対応する固定機構32を係合するように構成されている係合機構34を備えてもよい。図2Bに示されるように、係合機構34は、導管12の外面の周りに提供される周方向隆起の形態をとることができる。いくつかの実施形態では、この特徴は、固定機構32に加えて、又はその代わりに用いることができる。またさらなる実施形態では、カニューレ24及び導管12は、互いに恒久的に係合されてもよい(例えば、固定して取り付けられる)。
【0029】
次に、図3A-Fを参照してシステムの使用を説明する。図3A-Fに示すように、2つの予め定められた空間をあけた固定点における可撓性導管12の固定は、導管12が移動することができる2つの枢動点を提供する。外科医が第1の固定点14においてベース構造16に対してグリップ装置18を移動させると、導管12は曲がり、第2の固定点15について枢動する。したがって、一般的に言えば、手術野内に導管12を位置付ける方法は、(i)導管12を第1の固定点14に据え付けるステップ(第1の固定点14は、表面に固着されるように構成されているベース構造16と、導管12を保持するように構成され、ベース構造16に対するグリップ装置の枢動及び回転運動を可能にするように配置されているボールジョイント構造20、22を通してベース構造16上に据え付けられているグリップ装置18とを含む)と;(ii)導管12を第2の固定点15に固着するステップ(第2の固定点15は、導管12が通過する開口を含み、第1の固定点14から離れた手術野の入口点に位置付けられている)と;(iii)第1の固定点14においてベース構造16に対してグリップ装置18の向きを変え、導管12の先端12a第2の固定点12について枢動させるステップとを含む。
【0030】
処置に備えて、又は処置の間に、医療従事者は、眼に切開を生成して、導管12の手術野へのアクセスを提供することができる。上述のように、切開は第2の固定点15を形成することができ、又は第2の固定点15はカニューレ24によって提供することができる。このケースでは、方法は、導管12をカニューレ24に通すことをさらに含む。当業者は、カニューレを眼1に挿入するための多数の適切なデバイスを知っているであろう。例えば、眼に切開を形成し、カニューレ24を配置する専用のエントリツールを使用することができる。次に、カニューレ24を定位置に残し、眼1の表面を通って伸長するように、エントリツールを取り外す。
【0031】
図3Aに示されるように、グリップ装置18が手術部位から離れるように傾けられる場合、導管12の近位先端12aは、第2の固定点15について枢動して、眼1の後部を照明する。図3Bに図示されるように、グリップ装置18が眼に向けて傾けられる場合、先端12aは、(図3Bに示されるように)第2の固定点15について枢動して、眼1の左下の部分を照明する。
【0032】
図3C及び図3Dは、グリップ装置18をベース構造16に対して左右にねじることによって、(図3C及び図3Dに示す見方から)グリップ装置18をどのように操って眼1の左及び右手側を照明することができるかを示す。
【0033】
最後に、図3E及び3Fは、グリップ装置18に対して軸方向に導管12を摺動させることを、眼の中で導管12の先端を操るためにどのように使用できるかを示す。図3Eから3Fに示されるように、2つの安定した固定点14、15の間の導管12の長さを変化させることは、眼1内の照明の視野を変更できる。図3Eに示されるように、第1の固定点14と第2の固定点15との間の導管12の長さが短いほど、導管12の経路はより直線的であり、結果として、第1の固定点14と第2の固定点15との間の導管12の軸にほぼ沿って伸長する照明野となる。第1の固定点14が右手側から眼に向けて伸長する図3Eに示す構成では、これは、結果として、眼1の左側の照明野となる。逆に、第1の固定点14と第2の固定点15との間の導管12の長さが、第1の固定点14と第2の固定点15との間のこの距離を著しく超えるように、導管12がグリップ装置18に対して軸方向に摺動する場合、導管12は、第2の固定点15について曲がり又はゆがみ、眼1の後側を照明する。
【0034】
したがって、グリップ装置18を第1の固定点14に対して再位置付けすることによって、導管12の近位先端12aは、第2の固定点15について枢動し、手術野の予め定められた領域を照明又は潅流及び/又は吸引するように光ファイバ又は流体導管を操ることができる。
【0035】
図面に示されるような多数の非限定的な例示的実施形態を参照して、本発明をここに説明している。本開示を知ると、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に変更がなされてもよいことを理解するであろう。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 眼科手術部位内に導管を位置付けるためのシステムであって、
導管(12)と、
第1の固定点(14)と、
前記第1の固定点(14)から予め定められた距離だけ離れて位置付けられている第2の固定点(15)とを備え、
前記第1の固定点(14)は、
固定ロケーションで固着するように配置されているベース構造(16)と、
前記導管(12)を保持するように構成されているグリップ装置(18)とを備え、前記グリップ装置(18)は、ボールジョイント構造(20;22)を通して前記ベース構造(16)上に据え付けられ、前記ボールジョイント構造は、前記ベース構造(16)に関して前記グリップ装置(18)の枢動及び回転運動を可能にするように配置されている、システム。
[2] 前記第2の固定点(15)は、カニューレ(24)を備える、[1]に記載のシステム。
[3] 前記導管(12)は、光導管として構成され、少なくとも1つの光ファイバを備える、[1]又は[2]に記載のシステム。
[4] 前記導管(12)は、前記手術部位(例えば、注入又は吸引ライン)に、又は前記手術部位から流体を送り出するように構成されている少なくとも1つの内部管腔を備える、[1]-3のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[5] 前記導管(12)をその長さに沿って少なくとも部分的に取り囲むシース(26)をさらに備える、[1]-4のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[6] 前記シース(26)は、前記第1の固定点(14)の領域において前記導管(12)を取り囲む、[5]に記載のシステム。
[7] 前記シース(26)と前記導管(12)との組み合わせは、前記導管(12)の露出部分よりも高い剛性を有する、[5]又は[6]に記載のシステム。
[8] 前記導管(12)は、前記シース(26)の近位端から(例えば、約5mmから50mmの間の長さだけ、例えば、約30mmだけ)伸長する、[5]-7のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[9] 前記ボールジョイント構造は、ボール要素(20)及び収容要素(22)を備え、前記収容要素(22)は、前記収容要素(22)に対する前記ボール要素(20)の並進運動を防止するように、前記ボール要素(20)を少なくとも部分的にその中に閉じ込めるように構成されている、[1]-8のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[10] 前記ボール要素(20)は、前記ベース構造(16)上に据え付けられ、前記グリップ装置(18)は、前記収容要素(22)を備える、[1]-9のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[11] 前記ベース構造(16)は、収容要素(22)を備え、前記ボール要素(20)は、前記グリップ装置(18)上に据え付けられる、[1]-9のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[12] 前記ベース構造(16)に対して前記グリップ装置(18)を移動させるために予め定められた再位置決め力が加えられるまで、前記ボールジョイント構造(20、22)は、前記グリップ装置(18)を前記ベース構造(16)に対して安定したポジションで支持するように構成されている、[1]-11のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[13] 前記グリップ装置(18)に対して前記導管(12)を移動させるために予め定められた再位置決め力が加えられるまで、前記グリップ装置(18)は、前記グリップ装置(18)に対して安定したポジションで前記導管(12)を支持するように構成されている、[1]-12のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[14] 前記ベース構造(16)は、前記ベース構造(16)を表面に固着するように適合された少なくとも1つの固着要素(28)を備える、[1]-13のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[15] 前記第2の固定点(15)は、前記導管(12)を係合し、前記第2の固定点(15)に対する前記導管(12)の軸方向移動を制限するように適合される、少なくとも1つの固定機構(32)(例えば、スリット弁、弾性円周隆起等)を備える、[1]-14のうちのいずれか1項に記載のシステム。
[16] 前記導管(12)は、前記カニューレ(24)上の前記固定機構(32)を係合するように適合された係合機構(34)を備える、[15]に記載のシステム。
[17] 導管を手術部位内に位置付けるための方法であって、
前記導管(12)を第1の固定点(14)に固着することと、ここで、前記第1の固定点(14)は、表面(30)に固着されるように構成されているベース構造(16)と、前記導管(12)を保持するように構成されているグリップ装置(18)とを備え、前記グリップ装置(18)は、前記ベース構造(16)に対する前記グリップ装置(18)の枢動及び回転運動を可能にするように配置されているボールジョイント構造(20、22)を通して前記ベース構造(16)上に据え付けられ、
前記手術部位の入口点において第2の固定点(15)で前記導管(12)を固着することと、ここにおいて、前記第2の固定点(15)は、前記第1の固定点(14)から離れて、そこから予め定められた距離に位置付けられ、前記第2の固定点(15)は、前記導管(12)が通過する開口を備え、
前記第1の固定点(14)においてベース構造(16)に対してグリップ装置(18)の向きを変え、前記導管(12)の先端(12a)を前記第2の固定点(15)について枢動させること、
を含む、方法。
[18] 前記第2の固定点(15)は、カニューレ(24)を備え、前記方法は、前記導管(12)を前記カニューレ(24)に通すステップを含む、[17]に記載の方法。
[19] 前記導管(12)を前記グリップ装置(18)に対して軸方向に摺動させるステップをさらに含む、[17]又は[18]に記載の方法。
[20] 前記導管(12)は、光ファイバを備え、前記ベース構造(16)に対して前記グリップ装置(18)の方向を変えるステップは、前記光ファイバを操って、前記手術部位の予め定められた領域に照明を提供することを含む、[17]-19のうちのいずれか1項に記載の方法。
[21] 前記導管(12)は、流体導管(例えば、吸引又は潅流ライン)を備え、前記ベース構造(16)に対して前記グリップ装置(18)の向きを変えるステップは、前記流体導管を操って、手術野の予め定められた領域に潅流及び/又は吸引を提供することを含む、[17]-20のうちのいずれか1項に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F