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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】光ファイバの融着接続方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
G02B6/255
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020571025
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2019049007
(87)【国際公開番号】W WO2020162044
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019019542
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】秋山 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】宮森 誠
(72)【発明者】
【氏名】大木 一芳
(72)【発明者】
【氏名】明尾 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】高柳 寛
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-070704(JP,A)
【文献】特開2013-015623(JP,A)
【文献】特開平10-239553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0274423(US,A1)
【文献】特開平01-224707(JP,A)
【文献】特開昭63-184712(JP,A)
【文献】特開平06-347660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象の光ファイバをV溝に位置決めして融着接続を行なう光ファイバの融着接続方法であって、
前記V溝に載置された前記光ファイバをクランプによって相対的に前記V溝に向けて押圧する工程と、
前記光ファイバを押圧する前記クランプのクランプ圧を変化させる工程と、
前記V溝に載置された前記光ファイバを軸芯方向に沿って前記V溝に対して相対的に移動させる工程と、を含み、
前記クランプ圧を変化させる工程と前記光ファイバを軸芯方向に沿って移動させる工程とは、同時に行われる、光ファイバの融着接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバの融着接続方法及び融着接続装置に関する。本出願は、2019年2月6日出願の日本出願第2019-19542号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接続対象の光ファイバをV溝に位置決めして融着接続を行なう光ファイバの融着接続方法が開示されている。この方法では、V溝に載置された光ファイバを後退させ、ついで、光ファイバを前進させて、再びV溝に光ファイバを載置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-239553号公報
【発明の概要】
【0004】
一形態に係る光ファイバの融着接続方法は、接続対象の光ファイバをV溝に位置決めして融着接続を行なう光ファイバの融着接続方法であって、V溝に載置された光ファイバをクランプによって相対的にV溝に向けて押圧する工程と、光ファイバを押圧するクランプのクランプ圧を変化させる工程と、V溝に載置された光ファイバを軸芯方向に沿ってV溝に対して相対的に移動させる工程と、を含む。
【0005】
一形態に係る光ファイバの融着接続装置は、光ファイバが載置されるV溝と、V溝に載置された光ファイバを相対的にV溝に押圧するクランプと、光ファイバを押圧するクランプのクランプ圧を変化させるクランプ圧変化機構と、V溝に載置された光ファイバを軸芯方向に沿ってV溝に対して相対的に移動させる移動機構と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、一例に係る融着接続装置の一部を示す斜視図である。
図2図2は、融着接続装置の一部を示す断面図である。
図3図3は、融着接続装置の制御系統を示すブロック図である。
図4図4は、融着接続装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、融着接続装置のV溝に異物が存在する状態を示す図である。
図6図6は、融着接続装置の撮像装置によって取得された画像の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、融着接続装置の撮像装置によって取得された画像の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、融着接続装置による除去動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、融着接続装置による除去動作の他の例を示すフローチャートである。
図10図10は、他の例に係る融着接続装置の制御系統を示すブロック図である。
図11図11は、融着接続装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、融着接続装置による除去動作の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、融着接続装置による除去動作の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
【0008】
融着接続装置では、融着を実行する前に、光ファイバ及びV溝を清掃することによって、精度の高い接続が実施され得る。しかしながら、光ファイバ等を清掃する工程で残ってしまったゴミ等がV溝に付着した場合、一対のファイバの端面を垂直に合わせることができず、精度の高い接続が実施できないことがある。そこで、特許文献1に記載されるように、V溝に載置された光ファイバを後退及び前進させることにより、V溝のゴミ等を除去する方法が考案されている。当該分野においては、より確実にV溝のゴミ等を除去することが求められている。
【0009】
本開示によれば、V溝内の異物を除去する光ファイバの融着接続方法及び融着接続装置が提供される。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。一実施形態に係る光ファイバの融着接続方法は、接続対象の光ファイバをV溝に位置決めして融着接続を行なう光ファイバの融着接続方法であって、V溝に載置された光ファイバをクランプによって相対的にV溝に向けて押圧する工程と、光ファイバを押圧するクランプのクランプ圧を変化させる工程と、V溝に載置された光ファイバを軸芯方向に沿ってV溝に対して相対的に移動させる工程と、を含む。
【0010】
また、一実施形態に係る光ファイバの融着接続装置は、光ファイバが載置されるV溝と、V溝に載置された光ファイバを相対的にV溝に押圧するクランプと、光ファイバを押圧するクランプのクランプ圧を変化させるクランプ圧変化機構と、V溝に載置された光ファイバを軸芯方向に沿ってV溝に対して相対的に移動させる移動機構と、を含む。
【0011】
上記の光ファイバの融着接続方法及び融着接続装置では、V溝に載置された光ファイバがクランプによって相対的にV溝に押圧されることで、V溝に光ファイバが位置決めされる。V溝にゴミ等の異物がある場合、V溝内の光ファイバの位置決めが適切に行えないことが考えられる。この場合、クランプ圧の変化、及び、光ファイバの軸方向における移動によって、異物が移動し得る。クランプ圧の変化と、光ファイバの移動とでは、異物に作用する力の方向が互いに異なっているため、異物を効果的に移動(除去)させ得る。
【0012】
また、クランプ圧を変化させる工程と光ファイバを軸芯方向に沿って移動させる工程とは、同時に行われてもよい。この構成では、互いに作用する方向が異なる2つの力を同時又は連続して異物に作用させることができる。
【0013】
また、クランプ圧変化機構は、V溝の位置が固定された状態でV溝に対するクランプの位置を変化させる機構であってよい。この構成では、V溝の位置を変化させる機構を必要としないため、装置構成が煩雑になることが抑制される。
【0014】
また、クランプ圧変化機構は、クランプの位置が固定された状態でクランプに対するV溝の位置を変化させる機構であってよい。この構成では、V溝の位置を変化させる機構を含むため、V溝内に位置決めされた光ファイバの位置の調整を行うことができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係る光ファイバの融着接続方法及び融着接続装置の具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、これら例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、また、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図されている。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。説明に際しては、図面に示されたXYZ直交座標系を参照する場合がある。
【0016】
図1は、光ファイバの融着接続装置の一部1を示す斜視図である。図2は、融着接続装置の一部1を拡大して示す断面図である。図3は、融着接続装置を制御する制御系統を示すブロック図である。融着接続装置は、端面同士を突き合わせて配列される複数対の光ファイバ(ガラスファイバ)3同士をアーク放電によって互いに融着接続する装置である。融着接続装置は、一対の電極棒5,6と、一対のベース11,12と、一対のクランプ21,22と、一対のホルダ31,32とを含む。
【0017】
一対の電極棒5,6は、X方向に互いに離間して配置されている。電極棒5と電極棒6とは、先端5aと先端6aとが互いに対向するように配置されている。図示例では、電極棒5,6は、先端5a,6aに向かうにつれて径が小さくなる略円錐状の部分を含む。複数対の光ファイバ3は、アーク放電を発生させるための一対の電極棒5,6間に配列され得る。
【0018】
一対のベース11,12は、一対の電極棒5,6を挟む位置に配置されている。すなわち、一対の電極棒5,6はY方向において互いに離間したベース11とベース12との間に配置されている。図示例のベース11は、光ファイバ配置部16を有しており、ベース12は光ファイバ配置部17を有している。光ファイバ配置部16は、複数本の光ファイバ3aをそれぞれ配置するための複数のV溝16aを有している。V溝16aは、X方向に等間隔で配置されており、Y方向に沿って直線状に形成されている。同様に、光ファイバ配置部17は、複数本の光ファイバ3bをそれぞれ配置するための複数のV溝17aを有している。V溝17aは、X方向に等間隔で配置されており、Y方向に沿って直線状に形成されている。光ファイバ配置部16のV溝16aと光ファイバ配置部17のV溝17aとは、複数対の光ファイバ3の位置決めを行う。図示例では、光ファイバ配置部16の複数のV溝16aのそれぞれと光ファイバ配置部17の複数のV溝17aのそれぞれとは、互いに対向している。これにより、光ファイバ配置部16のV溝16aによって位置決めされた光ファイバ3aと、光ファイバ配置部17のV溝17aによって位置決めされた光ファイバ3bとは、光ファイバ配置部16と光ファイバ配置部17との間の領域において、互いに突き合わされ得る。
【0019】
一対のクランプ21,22は、V溝16a,17aに載置された光ファイバ3を相対的にV溝16a,17aに押圧する。図示例のクランプ21,22は、アーム部21a,22aと押圧部21b,22bとを含む。アーム部21aは、光ファイバ配置部16の上方に配置されており、アーム部22aは、光ファイバ配置部17の上方に配置されている。また、一対のアーム部21a,22aは、上下方向に移動可能に設けられている。例えば、アーム部21a,22aは、略矩形柱状をなしていてよい。押圧部21bはアーム部21aの下端に取り付けられており、押圧部22bはアーム部22aの下端に取り付けられている。本実施形態では、押圧部21bはアーム部21aの下端において上下方向(Z方向)に移動可能となっており、押圧部22bはアーム部22aの下端において上下方向(Z方向)に移動可能となっている。図2の状態では、押圧部21b,22bがV溝16a,17aに配置された光ファイバ3a,3bから離間しているが、アーム部21a,22aが下方に移動することによって、押圧部21b,22bは光ファイバ3a,3bをV溝16a,17aに向けて押圧し得る。本実施形態では、クランプ21,22のクランプ圧を変化させることができる。クランプ圧とは、V溝16a,17aに配置された光ファイバ3a,3bがクランプ21,22の押圧部21b,22bから押圧される際に受ける圧力であってよい。一例として、アーム部21a,22aと押圧部21b,22bとの間に押圧部21b,22bを下向きに付勢するバネ等の弾性体が配置されていてもよい。この場合、上下方向におけるアーム部21a,22aの位置を制御することによって、クランプ圧を制御することができる。
【0020】
ホルダ31,32は、光ファイバ3を保持する。図示例では、複数の光ファイバ3を含むテープ心線4がホルダ31,32によって保持されている。例えば、ホルダ31,32は、テープ心線4を収容するための凹部を有するホルダ本体31a,32aと、ホルダ本体31a,32aに取り付けられた蓋体31b,32bとを有する。ホルダ本体31a,32aにテープ心線4が収容された状態で蓋体31b,32bが閉じられることによって、テープ心線4はホルダ31,32に保持される。ホルダ31,32は、保持した光ファイバ3の軸芯方向に沿った方向に移動可能となっている。すなわち、ホルダ31,32はV溝16a,17aの延在方向(すなわちY方向)に沿って移動可能である。光ファイバ3を保持したホルダ31,32が移動した場合、保持されている光ファイバ3は、V溝16a,17aに沿って前進移動及び後退移動し得る。なお、前進移動とは、保持された光ファイバ3a,3b同士が互いに近づく方向に移動することをいう。また、後退移動とは、保持された光ファイバ3a,3b同士が互いに離れる方向に移動することをいう。
【0021】
図3に示すように、融着接続装置は、撮像装置51、融着接続機構52、クランプ駆動機構53、ホルダ駆動機構54及び表示装置55を含んでいる。撮像装置51、融着接続機構52、クランプ駆動機構53、ホルダ駆動機構54及び表示装置55は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、通信モジュール、ハードディスク等を備えるコンピュータとであってよい。
【0022】
撮像装置51は、例えば一対のカメラを含んで構成されている。一対のカメラは、V溝16a,17aに載置された一対の光ファイバ3a,3bの端部を撮像する。例えば、一対のカメラの撮像方向は、V溝16a,17aに載置された光ファイバ3a,3bの軸芯方向に交差する方向であってよい。また、一対のカメラの撮像方向は、互いに交差していてよい。一例として、一対のカメラの撮像方向は、V溝16a,17aに載置された光ファイバ3a,3bの軸芯方向に直交する方向である。また、一対のカメラの撮像方向は、互いに直交している。一対のカメラを用いて、互いに異なる2方向から光ファイバを撮像することにより、光ファイバの位置を特定することができる。
【0023】
融着接続機構52は、一対の光ファイバ3a,3bの端部同士を融着接続する機構であり、一対の電極棒5,6を含んでいる。クランプ駆動機構53は、クランプ21,22を構成するアーム部21a,22aを上下方向に移動させるアクチュエータを含む。ホルダ駆動機構54は、光ファイバ3a,3bの軸芯方向に沿った方向にホルダ31,32を移動させるアクチュエータを含む。表示装置55は、撮像装置51によって撮像された画像を表示することができる。
【0024】
制御部60は、撮像装置51を制御することにより、撮像装置51によって撮像された画像を取得する。取得された画像は、例えば表示装置55に表示され得る。制御部60は、取得された画像を画像処理することによって、一対の光ファイバ3a,3bの状態を判定する。また、制御部60は、融着接続機構52を制御することにより、一対の電極棒5,6間にアーク放電を発生させる。さらに、制御部60は、クランプ駆動機構(クランプ圧制御機構)53を制御することによって、クランプ21,22のアーム部21a,22aを上下方向に移動させる。制御部60の制御によって、クランプ21,22はV溝16a,17aに配置された光ファイバ3a,3bの押圧状態を変化させることができる。また、制御部60は、ホルダ駆動機構54を制御することによって、Y方向におけるホルダ31,32の位置を制御する。制御部60の制御によって、ホルダ31,32は前進移動及び後退移動し、ホルダ31,32に保持された光ファイバ3a,3bを前進移動及び後退移動させる。
【0025】
続いて、融着接続装置の動作について説明する。図4は、融着接続装置の動作の一例を示すフローチャートである。融着接続装置を使用して光ファイバ3a,3bの融着接続を行う場合、まず、使用者によって光ファイバ3a,3bがホルダ31,32にセットされる。光ファイバ3a,3bがホルダ31,32にセットされた状態では、光ファイバ3a,3bはV溝16a,17aに載置された状態でクランプ21,22の押圧部21b,22bに押圧されている。ホルダ31,32に光ファイバ3a,3bがセットされると、制御部60によってホルダ駆動機構54が駆動され、ホルダ31,32が光ファイバ3a,3bの軸芯方向に沿って移動する。この場合、ホルダ31,32にセットされた光ファイバ3a,3bの先端が撮像装置51による撮像範囲の内側に移動して、端面突き合わせが実行される(ステップS1)。このステップでは、光ファイバ3a,3bの融着接続に適した所定の間隔となるように、光ファイバ3a,3bの端面同士の間隔が調整される。すなわち、光ファイバ3a,3bの端面同士が互いに近付くように、ホルダ31,32が移動する。
【0026】
次いで、軸ずれ検査が実行される(ステップS2)。このステップでは、撮像装置51によって撮像された画像に基づいて、一対の光ファイバ3a,3bの軸心同士の位置のずれ量が所定量以下であるか否かが判定される。図5は、一方のV溝17aにゴミ等の異物Gが存在する場合の光ファイバ3a,3bの一例を示す図である。図6は、図5の状態のときに撮像装置51によって撮像された画像を模式的に示す。図7は、一対の光ファイバ3a,3b同士の軸心が一致している場合に撮像装置51によって撮像された画像を模式的に示す。なお、図5では、フランジが省略されている。また、図6,7では、光ファイバのうちコアの周囲を覆うクラッドの部分にハッチングを付している。
【0027】
図5に示すように、V溝17a内に異物Gが存在する場合、V溝17aに光ファイバ3bが位置決めされず、光ファイバ3bの先端側が上方に向かって傾いてしまうことがある。この場合、図6に示すように、撮像装置51によって撮像された画像では、一方の光ファイバ3aの軸心の方向と他方の光ファイバ3bの軸心の方向とにずれが生じる。一例として、ずれ量は、図6の紙面上下方向における光ファイバのコアの位置のずれ量であってよい。コアの位置は、例えば画像の輝度値に基づいて特定され得る。ステップS2の軸ずれ検査において、ずれ量が所定量よりも大きいと判定された場合、すなわち、ずれ量が所定量以下でないと判定された場合、ステップS3の除去動作に進む。
【0028】
一方、図7に示すように一対の光ファイバ3a,3b同士のずれ量が所定量以下である場合、一対の電極棒5,6間で放電が行われ、光ファイバ3a,3b同士が加熱、溶融接続される(ステップS4)。そして、溶融接続された光ファイバ3a,3bを撮像した画像に基づいて、融着後検査が行われる(ステップS5)。
【0029】
図8は、除去動作の一例を示すフローチャートである。図8に示す除去動作では、まず、クランプ圧を変化させる(ステップS11)。このステップでは、一例として、クランプ21,22のクランプ圧が一時的に変化するように、制御部60がクランプ駆動機構53を制御する。例えば、V溝16a,17aに向けて押圧されている光ファイバ3a,3bを解放するようにクランプ21,22を上昇させ、その後、クランプ21,22を下降させてクランプ圧を元に戻してもよい。また、V溝16a,17aに配置されている光ファイバ3a,3bをV溝16a,17aに向けてより大きな力で押圧するように、クランプ21,22のクランプ圧を変化させ、その後、クランプ21,22のクランプ圧を元に戻してもよい。
【0030】
次いで、再び軸ずれ検査が実行される(ステップS12)。この軸ずれ検査は、ステップS2の軸ずれ検査と同様である。この軸ずれ検査で問題がなければ、すなわち、ずれ量が所定量以下であると判定された場合、除去動作が終了され、ステップS4に進む。一方、ステップS12の軸ずれ検査において、ずれ量が所定量より大きいと判定された場合、すなわち、ずれ量が所定量以下でないと判定された場合、ステップS13に進む。
【0031】
ステップS13では、制御部60がホルダ駆動機構54を制御することによって、V溝16a,17aに載置された光ファイバ3a,3bを軸芯方向(図示例ではY方向)に沿って移動させる。例えば、光ファイバ3a,3bを後退移動させ、その後、光ファイバ3a,3bを前進移動させて、光ファイバを元の位置に戻す。
【0032】
次いで、再び軸ずれ検査が実行される(ステップS14)。この軸ずれ検査は、ステップS2の軸ずれ検査と同様である。そのため、この軸ずれ検査で問題がなければ、すなわち、ずれ量が所定量以下であると判定された場合、除去動作が終了され、ステップS4に進む。一方、ステップS14の軸ずれ検査において、ずれ量が所定量より大きいと判定された場合、すなわち、ずれ量が所定量以下でないと判定された場合、ステップS11に戻る。なお、ステップS3の除去動作が複数回(例えば2回)実行されても軸ずれ検査で問題が生じる場合には、表示装置55にエラーメッセージを表示し、処理を終了してもよい。
【0033】
図9は、除去動作の他の例を示すフローチャートである。本実施形態では、ステップS3の除去動作として図9に示す除去動作が実行されてもよい。図9に示す除去動作では、クランプ圧の変化と、光ファイバ3a,3bの移動とが並行して実行される(ステップS21)。例えば、除去動作では、クランプ圧を大きくした状態で光ファイバ3a,3bを後退移動させ、その後、クランプ圧が大きい状態を維持したまま光ファイバ3a,3bを前進移動させて、光ファイバを元の位置に戻してもよい。一例として、光ファイバ3a,3bの後退移動及び前進移動では、光ファイバ3a,3bが前後方向に0.5mm程度移動してもよい。
【0034】
また、他の例として、除去動作では、クランプ圧を変化させることなく光ファイバ3a,3bを後退移動させ、その後、クランプ圧を大きくした状態にして光ファイバ3a,3bを前進移動させてもよい。このように、ステップS21における除去動作では、クランプ圧を大きくした状態、クランプ圧を変化させない状態、及び光ファイバを解放した状態(クランプ圧を小さくした状態、クランプ圧はゼロ)と、光ファイバ3a,3bの後退移動及び前進移動と、を適宜組み合わせることができる。さらに、光ファイバ3a,3bの後退移動(又は前進移動)の間にクランプ圧の大きさを変化させてもよい。一例として、光ファイバ3a,3bの後退移動(又は前進移動)の間に、クランプ圧が大きい状態とクランプ圧が小さい状態とを繰り返してもよい。
【0035】
次いで、再び軸ずれ検査が実行される(ステップS22)。この軸ずれ検査は、ステップS2の軸ずれ検査と同様である。そのため、この軸ずれ検査で問題がなければ、すなわち、ずれ量が所定量以下であると判定された場合、除去動作が終了され、ステップS4に進む。一方、ステップS22の軸ずれ検査において、ずれ量が所定量より大きいと判定された場合、すなわち、ずれ量が所定量以下でないと判定された場合、ステップS21に戻る。
【0036】
以上説明した融着接続装置では、V溝16a,17aに載置された光ファイバ3がクランプ21,22によって相対的にV溝16a,17aに押圧されることで、V溝16a,17aに光ファイバ3が位置決めされる。V溝16a,17aにゴミ等の異物Gがある場合、V溝16a,17a内の光ファイバ3の位置決めが適切に行えないことが考えられる。この場合、異物Gと光ファイバ3とは互いに接触していると考えられるので、クランプ圧の変化、及び、光ファイバ3の軸方向における移動によって、異物Gが移動し得る。クランプ圧を変化させた場合、V溝16a,17a内の異物Gに対して上下方向に作用する力の大きさが変化し得る。また、光ファイバ3を軸方向に移動させた場合、V溝16a,17a内の異物Gに対して前後方向に作用する力の大きさが変化し得る。このように、クランプ圧の変化と、光ファイバ3の移動とでは、異物Gに作用する力の方向が互いに異なっているため、異物を効果的に移動(除去)させ得る。
【0037】
また、図9に示すように、クランプ圧を変化させる工程と光ファイバ3を軸芯方向に沿って移動させる工程とは、同時に行われてもよい。この構成では、互いに作用する方向が異なる2つの力を同時又は連続して異物Gに作用させることができる。実施形態のように、上下方向に作用する力と前後方向に作用する力とが合成されることによって、異物Gに対して斜め上方、又は、斜め下方に力が作用し得る。
【0038】
また、本実施形態では、クランプ21,22のアーム部21a,22aが上下方向に移動することによって、クランプ圧を変化させている。この構成では、上下方向におけるV溝の位置を変化させる機構を必要としないため、装置構成が煩雑になることが抑制される。
【0039】
[第2実施形態]
図10に示すように、第2実施形態の融着接続装置は、撮像装置51、融着接続機構52、クランプ駆動機構53、ホルダ駆動機構54及び表示装置55に加えて、さらにベース駆動機構56を含んでいる。撮像装置51、融着接続機構52、クランプ駆動機構53、ホルダ駆動機構54及び表示装置55については、第1実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。なお、第2実施形態において、クランプ駆動機構53は、クランプ圧の変化を実行できなくてもよい。また、融着接続装置の基本的な構成は第1実施形態と第2実施形態とで共通しているため、第2実施形態の説明においても図1を参照する。
【0040】
本実施形態では、一対のベース11,12がそれぞれ上下方向に移動可能に構成されている。ベース駆動機構56は、上下方向にベース11,12をそれぞれ移動させるアクチュエータを含む。制御部60は、ベース駆動機構56を制御することによって、上下方向におけるベース11,12の位置を制御することができる。この場合、上下方向におけるベース11,12の位置を制御することによって、一対の光ファイバ3a,3b同士の調心を行うことができる。また、上下方向におけるベース11,12の位置を制御することによって、クランプ圧を制御(変化)することができる。すなわち、上下方向においてベース11,12が基準位置にあるときに所定のクランプ圧となっている場合、ベース11,12を上方に移動させることによってクランプ圧を大きくすることができる。また、上下方向においてベース11,12が基準位置にあるときに所定のクランプ圧となっている場合、ベース11,12を下方に移動させることによってクランプ圧を小さくすることができる。
【0041】
続いて、本実施形態における融着接続装置の動作について説明する。図11は第2実施形態の融着接続装置の動作の一例を示すフローチャートである。融着接続装置を使用して光ファイバ3a,3bの融着接続を行う場合、まず、使用者によって光ファイバ3a,3bがホルダ31,32にセットされる。光ファイバ3a,3bがホルダ31,32にセットされた状態では、光ファイバ3a,3bはV溝16a,17aに載置された状態でクランプ21,22の押圧部21b,22bに押圧されている。ホルダ31,32に光ファイバ3a,3bがセットされると、制御部60によってホルダ駆動機構54が駆動され、ホルダ31,32が光ファイバ3a,3bの軸芯方向に沿って移動する。この場合、ホルダ31,32にセットされた光ファイバ3a,3bの先端が撮像装置51による撮像範囲の内側に移動するように、ホルダ31,32が移動される(ステップS31)。
【0042】
次いで、位置検査が実行される(ステップS32)。位置検査の方法は、第1実施形態のステップS2の軸ずれ検査と同様である。この位置検査において、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置していないと判定された場合、ステップS33の除去動作に進む。
【0043】
一方、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置している判定された場合には、続いて、端面突き合わせが実行される(ステップS34)。このステップでは、光ファイバ3a,3bの融着接続に適した所定の距離となるように、光ファイバ3a,3bの端面同士の間隔が調整される。すなわち、光ファイバ3a,3bの端面同士が互いに近付くように、ホルダ31,32が移動する。
【0044】
次いで、調心が実行される(ステップS35)。調心では、制御部60がベース駆動機構56を制御することによって、ベース11,12の少なくとも一方を上下方向に移動させて、一対の光ファイバ3a,3bのコア同士の位置を所定の精度で互いに一致させる。例えば、調心では、撮像装置51によって撮像される画像に基づいて、一対の光ファイバ3a,3bのコアの位置が決定される。次いで、一対の電極棒5,6間で放電が行われ、光ファイバ同士が加熱、溶融接続される(ステップS36)。そして、溶融接続された光ファイバ3a,3bを撮像した画像に基づいて、融着後検査が行われる(ステップS37)。
【0045】
図12は、ステップS33における除去動作の一例を示すフローチャートである。図12に示す除去動作では、まず、クランプ圧を変化させる(ステップS41)。このステップでは、一例として、一時的にクランプ圧が変化するように、制御部60がベース駆動機構56を制御する。例えば、制御部60がベース駆動機構56を制御することによって、ベース11,12を下方に移動させ、V溝16a,17aに向けて相対的に押圧されている光ファイバ3a,3bを解放する。その後、ベース11,12を上方に移動してクランプ圧を元に戻してもよい。また、V溝16a,17aに配置されている光ファイバ3a,3bをV溝16a,17aに向けてより大きな力で押圧するように、ベース11,12を上方に移動してクランプ圧を変化させ、その後、ベース11,12を下方に移動してクランプ圧を元に戻してもよい。
【0046】
次いで、再び位置検査が実行される(ステップS42)。この位置検査は、ステップS32の位置検査と同様である。この位置検査で問題がなければ、すなわち、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置していると判定された場合、除去動作が終了され、ステップS34に進む。一方、ステップS42の位置検査において、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置していないと判定された場合、ステップS43に進む。ステップS43では、制御部60がホルダ駆動機構54を制御することによって、V溝16a,17aに載置された光ファイバ3a,3bを軸芯方向に沿って移動させる。例えば、光ファイバ3a,3bを後退移動させ、その後、光ファイバ3a,3bを前進移動させて、光ファイバを元の位置に戻す。
【0047】
次いで、再び位置検査が実行される(ステップS44)。この位置検査は、ステップS32の位置検査と同様である。この位置検査で問題がなければ、すなわち、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置していると判定された場合、除去動作が終了され、ステップS34に進む。一方、ステップS44の位置検査において、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置していないと判定された場合、ステップS41に戻る。なお、ステップS33の除去動作が複数回(例えば2回)実行されても位置検査で問題が生じる場合には、表示装置55にエラーメッセージを表示し、処理を終了してもよい。
【0048】
図13は、除去動作の他の例を示すフローチャートである。本実施形態では、ステップS33の除去動作として図13に示す除去動作が実行されてもよい。図13に示す除去動作では、クランプ圧の変化と、光ファイバ3a,3bの移動とが並行して実行される(ステップS51)。例えば、除去動作では、ベース11,12の位置を上昇させることによりクランプ圧を大きくする。そして、クランプ圧が大きい状態で光ファイバ3a,3bが後退移動し、その後、クランプ圧が大きい状態を維持したまま光ファイバ3a,3bを前進移動させて、光ファイバを元の位置に戻してもよい。一例として、光ファイバ3a,3bの後退移動及び前進移動では、光ファイバ3a,3bが前後方向に0.5mm程度移動してもよい。
【0049】
また、他の例として、除去動作では、クランプ圧を変化させることなく光ファイバ3a,3bを後退移動させ、その後、ベース11,12の位置を上昇させることによりクランプ圧を大きくした状態にして光ファイバ3a,3bを前進移動させてもよい。このように、ステップS51における除去動作では、クランプ圧を大きくした状態、クランプ圧を変化させない状態、及び光ファイバを解放した状態と、光ファイバ3a,3bの後退移動及び前進移動とを適宜組み合わせることができる。さらに、光ファイバ3a,3bの後退移動(又は前進移動)の間にクランプ圧の大きさを変化させてもよい。一例として、光ファイバ3a,3bの後退移動(又は前進移動)の間に、クランプ圧が大きい状態とクランプ圧が小さい状態とを繰り返してもよい。
【0050】
次いで、再び位置検査が実行される(ステップS52)。この位置検査は、ステップS32の位置検査と同様である。この位置検査で問題がなければ、すなわち、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置していると判定された場合、除去動作が終了され、ステップS34に進む。一方、ステップS52の位置検査において、光ファイバ3a,3bの先端が所定の範囲に位置していないと判定された場合、ステップS51に戻る。
【0051】
本実施形態では、ベース駆動機構56を用いてV溝の位置を変化させることによって、クランプ圧を変化させている。ベース駆動機構56は、光ファイバの調心に利用される機構であり、V溝内に位置決めされた光ファイバの位置の調整を行うことができる。この構成では、調心のための機構とクランプ圧変化のための機構とを別々に備える必要がなく、装置構成が煩雑になることが抑制される。
【0052】
以上、一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、複数本の光ファイバを有する多芯ファイバ同士の融着接続を行う融着接続装置が示されているが、融着接続装置は、1本の光ファイバによって形成される単芯の光ファイバ同士を融着接続する装置であってもよい。
【0054】
また、除去動作の一例として、V溝の位置が固定された状態で光ファイバがV溝に沿って移動する例を示したが、例えば、光ファイバの位置が固定された状態でV溝(すなわちベース)が移動することで、光ファイバを軸心方向に沿ってV溝に対して相対的に移動させてもよい。この場合、融着接続装置は、ベース11,12をV溝の延在方向(Y方向)に沿って移動させる移動機構を有してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…融着接続装置の一部、3,3a,3b…光ファイバ、4…テープ心線、5,6…電極棒、5a,6a…先端、11,12…ベース、16,17…光ファイバ配置部、16a,17a…V溝、21,22…クランプ、21a,22a…アーム部、21b,22b…押圧部、31,32…ホルダ、31a,32a…ホルダ本体、31b,32b…蓋体、51…撮像装置、52…融着接続機構、53…クランプ駆動機構(クランプ圧変化機構)、54…ホルダ駆動機構(移動機構)、56…ベース駆動機構(クランプ圧変化機構)、55…表示装置、60…制御部、G…異物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13