IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リテルフューズ、インコーポレイテッドの特許一覧

特許7347771PTCデバイスとバックアップヒューズとを有する回路保護装置
<>
  • 特許-PTCデバイスとバックアップヒューズとを有する回路保護装置 図1
  • 特許-PTCデバイスとバックアップヒューズとを有する回路保護装置 図2
  • 特許-PTCデバイスとバックアップヒューズとを有する回路保護装置 図3
  • 特許-PTCデバイスとバックアップヒューズとを有する回路保護装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】PTCデバイスとバックアップヒューズとを有する回路保護装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 37/76 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
H01H37/76 E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022523647
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 US2020060381
(87)【国際公開番号】W WO2021101800
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】62/938,762
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519226506
【氏名又は名称】リテルフューズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マトゥス、ユリー、ボリソヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ピネダ、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フエンテス、セルジオ
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-150918(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109364(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/015418(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に直列に接続されている正温度係数(PTC)デバイスとバックアップヒューズとを備える回路保護装置であって、前記バックアップヒューズが、絶縁体チップに配置されており且つ前記PTCデバイスのトリップ温度より高い融点を有する一定量のハンダを含み、前記絶縁体チップの表面が前記ハンダに対してディウェッティング特性を示し、前記ハンダが溶解すると、前記ハンダが前記表面から引き離されて前記バックアップヒューズにガルバニックオープンを形成するようにな
前記絶縁体チップが前記PTCデバイスに固定されており、
前記絶縁体チップが前記PTCデバイスの電極に熱伝導性媒体によって固定されている、回路保護装置。
【請求項2】
前記熱伝導性媒体が熱伝導性ペーストである、請求項に記載の回路保護装置。
【請求項3】
前記ハンダがSAC305ハンダであり、前記絶縁体チップの表面がペルフルオロアルコキシから形成されている、請求項1または2に記載の回路保護装置。
【請求項4】
前記ハンダが共晶ハンダであり、前記絶縁体チップの表面がエチレンテトラフルオロエチレンから形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項5】
前記ハンダが高温溶融ハンダであり、前記絶縁体チップの表面がフッ化ポリビニリデンから形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項6】
前記バックアップヒューズが前記PTCデバイスの第1電極に導線で接続されており、前記回路保護装置がさらに、前記バックアップヒューズに電気的に接続されている第1リード線と、前記PTCデバイスの第2電極に電気的に接続されている第2リード線とを備え、前記第1リード線および前記第2リード線が前記回路保護装置の回路内の電気的接続を容易にする、請求項1からのいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項7】
前記第1リード線と前記バックアップヒューズとの接合点および前記第2リード線と前記バックアップヒューズとの接合点にそれぞれ、第1メッシュコンタクトおよび第2メッシュコンタクトをさらに備える、請求項に記載の回路保護装置。
【請求項8】
前記バックアップヒューズが、前記PTCデバイスの通常のトリップ温度範囲よりも摂氏1度~摂氏200度高い範囲の融点を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項9】
前記バックアップヒューズが前記PTCデバイスの通常のトリップ温度範囲を超える融点を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項10】
前記バックアップヒューズを覆う絶縁体保護層をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項11】
前記絶縁体保護層が前記ハンダに対してディウェッティング特性を示し、前記ハンダが溶解すると、前記ハンダが前記絶縁体保護層から引き離されて前記バックアップヒューズにガルバニックオープンを形成するようになる、請求項10に記載の回路保護装置。
【請求項12】
互いに電気的に直列に接続されている正温度係数(PTC)デバイスとバックアップヒューズとを備える回路保護装置であって、前記バックアップヒューズが、前記PTCデバイスのトリップ温度より高い融点を持つ可溶エレメントを有するカートリッジヒューズを有し、前記カートリッジヒューズのヒューズボディが前記可溶エレメントに対してディウェッティング特性を示し、前記可溶エレメントが溶解すると、前記可溶エレメントが前記ヒューズボディの表面から引き離されて前記可溶エレメントにガルバニックオープンを形成するようになる、回路保護装置。
【請求項13】
前記カートリッジヒューズが前記PTCデバイスに固定されている、請求項12に記載の回路保護装置。
【請求項14】
前記カートリッジヒューズが前記PTCデバイスの電極に熱伝導性媒体によって固定されている、請求項13に記載の回路保護装置。
【請求項15】
前記熱伝導性媒体が熱伝導性ペーストである、請求項14に記載の回路保護装置。
【請求項16】
前記バックアップヒューズが前記PTCデバイスの第1電極に導線で接続されており、前記回路保護装置がさらに、前記カートリッジヒューズに電気的に接続されている第1リード線と、前記PTCデバイスの第2電極に電気的に接続されている第2リード線とを備え、前記第1リード線および前記第2リード線が前記回路保護装置の回路内の電気的接続を容易にする、請求項12から15のいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項17】
前記可溶エレメントが、前記PTCデバイスの通常のトリップ温度範囲よりも摂氏1度~摂氏200度高い範囲の融点を有する、請求項12から16のいずれか一項に記載の回路保護装置。
【請求項18】
前記可溶エレメントが前記PTCデバイスの通常のトリップ温度範囲を超える融点を有する、請求項12から17のいずれか一項に記載の回路保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景技術]
本開示は概して回路保護装置の分野に関する。より具体的には、本開示は、極度の異常状態の際にガルバニックオープンを促進するための、正温度係数デバイスとバックアップヒューズとを含む回路保護装置に関する。
[関連技術の記載]
【0002】
ヒューズは、回路保護装置として一般に用いられており、通常は電源と保護すべき電気回路の部品との間に設置されている。従来のヒューズは、中空の電気絶縁性のヒューズボディの中に配置された可溶エレメントを含んでいる。過電流状態などの異常状態が発生すると、可溶エレメントが溶解するか、または別の方法で分離して、ヒューズを通る電流の流れを遮断する。
【0003】
過電流状態の結果としてヒューズの可溶エレメントが分離すると、場合によっては、可溶エレメントの分離した部分の間に空気を介して(例えば、溶解した可溶エレメントの蒸発粒子を介して)電気アークが伝搬する可能性がある。この電気アークは、消滅させないと、電源から回路内の保護対象部品に著しい続流が流れることが可能になり、可溶エレメントが物理的にオープンになっていても保護対象部品の損傷につながり得る。
【0004】
ヒューズでの電気アークを消滅させるために実施されてきた1つの解決方法は、ヒューズの可溶エレメントを正温度係数(PTC)エレメントに置き換えることである。PTCエレメントは、非導電性媒体(例えば、ポリマー)に懸濁した導電性粒子で構成されているPTC材料から形成される。PTC材料は、通常の動作温度範囲内で比較的低い電気抵抗を示す。しかしながら、PTC材料の温度が通常の動作温度範囲を超えて、PTC材料に流れる過剰電流に起因し得るなどの「トリップ温度」に達すると、PTC材料の抵抗が急激に増加する。この抵抗の増加によって、PTCエレメントを通る電流の流れが抑制される、または阻止される。その後、PTC材料が冷えると(例えば、過電流状態がおさまると)、PTC材料の抵抗が減少して、PTCエレメントは再び導電性になる。こうしてPTCエレメントは、リセット可能ヒューズとして作用する。PTCエレメントは可溶エレメントの方式で物理的にオープンになることはないので、電気アークが形成されるまたは伝搬する可能性はない。
【0005】
PTCエレメントは、電気アークを抑制しながら回路に過電流保護を提供するのに効果があることが分かっているが、極度の異常状態になると、予測できない形で機能不全に陥る傾向もある。例えば、PTCエレメントがその定格能力よりもはるかに高い電流量になると、場合によっては、PTCエレメントが高導電性になり、接続されたデバイスに過電流が流れることが可能になる形で、PTCエレメントが機能不全に陥る(すなわち、閉じた状態で機能不全に陥る、または「故障時に閉の状態にある」)ことがある。極度の過電流状態が、PTCエレメントの燃焼につながることもあり、場合によっては、周囲の部品の損傷を引き起こす可能性がある。したがって、極度の異常状態によってPTCエレメントが危険または壊滅的な形で機能不全に陥ることにならないように保証するとともに、PTCエレメントのアーク抑制効果を活用する回路保護装置を提供することが望ましい。これらの事柄および他の事柄に関しては、本改善が役立つであろう。
【発明の概要】
【0006】
本概要は、詳細な説明の項でさらに後述する多様な概念を簡略化した形で紹介するために設けられている。本概要は、クレームされる主題の重要な特徴または不可欠な特徴を特定することを意図するものでもなく、クレームされる主題の範囲を決定する際の補助になることを意図するものでもない。
【0007】
本開示の非限定的な一実施形態による回路保護装置が、互いに電気的に直列に接続された正温度係数(PTC)デバイスとバックアップヒューズとを含んでよく、バックアップヒューズは、絶縁体チップに配置されており且つPTCデバイスのトリップ温度より高い融点を有する一定量のハンダを含む。絶縁体チップの表面がハンダに対してディウェッティング特性を示し、ハンダが溶解すると、ハンダが表面から引き離されてバックアップヒューズにガルバニックオープンを形成するようになる。
【0008】
本開示の非限定的な一実施形態による別の回路保護装置が、互いに電気的に直列に接続された正温度係数(PTC)デバイスとバックアップヒューズとを含んでよく、バックアップヒューズは、PTCデバイスのトリップ温度より高い融点の可溶エレメントを有するカートリッジヒューズを含む。カートリッジヒューズのヒューズボディが可溶エレメントに対してディウェッティング特性を示し、可溶エレメントが溶解すると、可溶エレメントがヒューズボディの表面から引き離されて可溶エレメントにガルバニックオープンを形成するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の例示的な一実施形態による回路保護装置を示す側面図である。
【0010】
図2】回路保護装置のバックアップヒューズがオープン状態になった、図1に示す回路保護装置を示す側面図である。
【0011】
図3】本開示の別の例示的な実施形態による回路保護装置を示す側面図である。
【0012】
図4】本開示の別の例示的な実施形態による回路保護装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、本開示による回路保護装置の例示的な一実施形態を、添付図面を参照して以下により詳しく説明する。しかしながら、この回路保護装置は多くの異なる形式で具現化されてよく、本明細書に記載されている実施形態に限定されるものと解釈するべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示によって回路保護装置の特定の例示的な態様が当業者に伝わるように提供されている。
【0014】
図1を参照すると、本開示の例示的な一実施形態による回路保護装置10(以下、「装置10」)を示す側面図が示されている。装置10は概して、正温度係数(PTC)デバイス12と、絶縁体チップ14と、バックアップヒューズ16とを含んでよい。本明細書では、便宜のために、また明確さのために、「前部」、「後部」、「上部」、「下部」、「上に」、「下に」、「上方に」、「下方に」などといった用語を用いて、装置10の様々な部品の相対的な位置および向きを、それぞれが装置10の幾何学的配置および向きに対して図1に現れているように説明することがある。前述の専門用語には、具体的に言及されている単語、その派生形、および同様の意味を持つ単語が含まれることになる。
【0015】
PTCデバイス12は、概してPTCエレメント18を含み、その上面および下面に導電性の上部電極20および下部電極22が配置されている積層構造体であってよい。上部電極20および下部電極22は、限定しないが、銅、金、銀、ニッケル、スズなどを含む任意の適切な導電性材料から形成されてよい。PTCエレメント18は、PTCエレメント18の温度が上がると電気抵抗が増加するように作られた任意の種類のPTC材料(例えば、ポリマーによるPTC材料、セラミックによるPTC材料など)から形成されてよい。具体的には、PTCエレメント18は所定の「トリップ温度」を有してよく、その温度を超えると、PTCエレメントを通る電流を実質的に阻止するために、PTCエレメント18の電気抵抗が急激に且つ大幅に(例えば、非線形的に)増加する。装置10の非限定的で例示的な一実施形態において、PTCエレメント18は、摂氏80度~摂氏130度の範囲にトリップ温度があってよい。
【0016】
絶縁体チップ14は、上部電極20の上に配置されており且つそこに熱伝導性ペーストまたは他の熱伝導性媒体の層23によって固定された実質的に平坦な部材であってよい。絶縁体チップ14は、表面エネルギーが低く電気絶縁性の耐熱材料から形成されてよい。そのような材料の例には、限定しないが、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、またはフッ化ポリビニリデン(PVDF)が含まれる。
【0017】
バックアップヒューズ16は、絶縁体チップ14の上面に配置されている一定量のハンダから形成されてよい。導電性の配線または導線25が、バックアップヒューズ16から絶縁体チップ14の側面の周りに延伸して、PTCデバイス12の上部電極20と(例えば、ハンダ接続によって)電気的接続を形成してよい。導電性の第1リード線26および第2リード線28が、装置10の回路内での電気的接続を容易にするために、バックアップヒューズ16およびPTCデバイス12の下部電極22からそれぞれ延伸してよい。したがって、バックアップヒューズ16、導線25、およびPTCデバイス12は電気的に直列に接続され得るので、第1リード線26と第2リード線28との間に電流経路が提供され得る。様々な実施形態において、バックアップヒューズ16は、バックアップヒューズ16を外からの汚染物質および外部部品との短絡から保護するために絶縁体保護層29で覆われてよい。保護層29は、さらに後述されるように、バックアップヒューズ16に関して「ディウェッティング」特性を示し得るエポキシ、ポリイミドなどの材料から形成されてよい。
【0018】
バックアップヒューズ16を形成するハンダは、PTCエレメント18のトリップ温度より著しく高い融点を持つように選択されてよい。具体的には、ハンダは、PTCデバイス12が信頼できる形で機能することが知られている温度範囲(以下、PTCデバイス12の「通常のトリップ温度範囲」と呼ばれる)を超えるトリップ温度を有してよい。様々な実施形態において、ハンダは、PTCエレメント18の通常のトリップ温度範囲よりも摂氏1度~摂氏100度高い範囲に融点を有してよい。したがって、過剰電流がバックアップヒューズ16およびPTCデバイス12を通って流れた場合、(以下により詳細に説明されるように)バックアップヒューズ16が十分に加熱されて溶解するよりずっと前に、PTCエレメント18が加熱されてそのトリップ温度に達し、PTCエレメントに電流が流れるのを阻止し得る。しかしながら、極度の異常状態(例えば、極度の過電流状態)の場合には、PTCエレメント18はそのトリップ温度を超える温度(例えば、そのトリップ温度を超えて摂氏数百度以上)にまで加熱されることがあり、極度の異常状態によって生成された熱(PTCエレメント18により放射される熱を含む)は、さらに後述されるように、pPTCのポリマーが発火する前にバックアップヒューズ16を溶解するのに十分になり得る。
【0019】
バックアップヒューズ16を形成するハンダ、および絶縁体チップ14を形成する材料は、ハンダが溶解状態または半溶解状態になると、ハンダが絶縁体チップ14の表面を嫌う、または表面から引き離されるか表面で玉状になる傾向を有し得るように選択されてよい。すなわち、絶縁体チップ14の材料は、バックアップヒューズ16を形成するハンダに対して、著しい「ディウェッティング特性」を示し得る。1つの例において、絶縁体チップ14はPFAから形成されてよく、ハンダはSAC305ハンダであってよい。別の例において、絶縁体チップ14はETFEから形成されてよく、ハンダは共晶ハンダであってよい。別の例において、絶縁体チップ14はFr-4、PI(ポリイミド)から形成されてよく、ハンダは高温溶融ハンダ(すなわち、摂氏260度を超える融点を有するハンダ)であってよい。本開示は、この点に関して限定されることはない。
【0020】
通常動作において、装置10はリード線26、28によって回路に(例えば、電源と負荷との間に)接続されてよく、電流がバックアップヒューズ16、導線25、およびPTCデバイス12を含む経路を通ってリード線26と28との間に流れてよい。過電流状態が発生すると、装置10に流れる電流が原因でPTCエレメント18がその通常のトリップ温度範囲内の温度に達し、PTCエレメント18の抵抗が急激に増加して、PTCエレメントを流れる電流を実質的に阻止し得るので、接続されている回路部品を、PTCエレメントがなければ過電流状態によって生じる可能性がある損傷から保護することができる。過電流状態がおさまり、PTCエレメント18がその通常のトリップ温度範囲より低い温度まで冷えると、PTCエレメント18は再び導電性になることができ、装置10は通常動作を再開することができる。しかしながら、装置10に流れる電流が原因でPTCエレメント18がその通常のトリップ温度範囲を超える温度に達する極度の過電流状態が発生すると、予測できない形でPTCエレメント18の燃焼または機能不全を引き起こす可能性があり、バックアップヒューズ16は図2に示すように溶解するか、別の方法で分離し得る。したがって、バックアップヒューズ16は、PTCエレメント18が閉じた状態で機能不全に陥る(「故障時に閉の状態にある」)としても、極度の過電流状態の際に装置10に流れる電流を確実に阻止することにより、PTCエレメント18の燃焼ならびに/または接続されている回路部品および周囲の回路部品への損傷を防止または抑制する。
【0021】
さらに、(上述した)絶縁体チップ14の低い表面エネルギーと、バックアップヒューズ16の溶解または半溶解したハンダに対する絶縁体チップ14および保護層29の回避的な「ディウェッティング」特性とによって、バックアップヒューズ16の分離した部分16a、16bは互いから引き離され、保護層29および絶縁体チップ14の表面から離れてよく、それぞれ導線25およびリード線26に集まり得ることにより、装置10にガルバニックオープン(すなわち、永続的でリセット不可能なオープン)がもたらされる。したがって、過電流状態がおさまり、PTCエレメント18がそのトリップ温度未満に冷えて再び導電性になった後でも、バックアップヒューズ16の分離した部分16a、16bは、電流が装置10を通って流れないように、装置10にガルバニックオープンをもたらして、それを維持する。
【0022】
図3を参照すると、装置10の代替的な一実施形態が提供されており、導線25およびリード線26がそれぞれ、メッシュコンタクト30,32で終端しており、バックアップヒューズ16がメッシュコンタクト30と32との間に延伸している。様々な実施形態において、メッシュコンタクト30、32は、銅メッシュ、銀メッシュ、金メッシュなどから形成されてよい。本開示は、この点に関して限定されることはない。メッシュコンタクト30、32は、ハンダが溶解した後に、(従来の単線または導線に対して)バックアップヒューズ16のハンダを吸収または収集するための表面積の増加をもたらすことができるので、バックアップヒューズ16のガルバニック分離が強化される。
【0023】
図4を参照すると、装置10の別の代替的な実施形態が提供されており、カートリッジヒューズ40が、図1および図2に示す絶縁体チップ14、バックアップヒューズ16、および保護層29の代わりに使われている。カートリッジヒューズ40は、導線25およびリード線26に接続された反対の端部にそれぞれ導電性端子44、46を有する絶縁体ヒューズボディ42を含んでよい。カートリッジヒューズ40はさらに、ヒューズボディ42を通って端子44と46との間に延伸する可溶エレメント48を含んでよい。上述したバックアップヒューズ16のように、可溶エレメント48は、PTCエレメント18の通常のトリップ温度範囲を超える融点を有してよい。さらに、可溶エレメント48を形成する材料、およびヒューズボディ42を形成する材料は、可溶エレメント48が溶解状態または半溶解状態にあるときに、可溶エレメント48がヒューズボディ42の表面を嫌う、または表面から引き離されるか表面で玉状になる傾向を有し得るように選択されてよい。すなわち、ヒューズボディ42の材料は、可溶エレメント48を形成する材料に対して、著しい「ディウェッティング」特性を示し得る。したがって、可溶エレメント48がオープンになったときに、可溶エレメント48の溶解した部分がヒューズボディ42の内部表面に堆積しているという場合、そのような溶解した部分が、ヒューズボディ42の内部表面から引き離されて端子44、46に移動し、カートリッジヒューズ40のガルバニックオープンが促進され得る。
【0024】
上述したことを考慮すると、本開示の装置10は、リセット可能な過電流保護を促進して、最大の過電流状態になったときに電気アークを効果的に防止または抑制し、極度の過電流状態が発生しても、ガルバニックオープンをもたらして、PTCエレメント18の危険または壊滅的な異常を防止または抑制するという点で利点をもたらすことが、当業者により理解されるであろう。
【0025】
本明細書で用いられる場合、単数で記載されて、単語「a」または「an」で始まる要素または段階が、複数の要素または段階を除外しないものと理解されるべきである。ただし、そのような除外が明確に記載されている場合を除く。さらに、本開示の「一実施形態」への言及は、記載された特徴も含むさらなる実施形態の存在を除外するものと解釈されることを意図してはいない。
【0026】
本開示は特定の実施形態に言及するが、添付したクレームに定められているように、本開示の分野および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に対する多くの修正、改変、および変更が可能である。したがって、本開示は説明した実施形態に限定されることはなく、また本開示ではその全範囲が以下の特許請求の範囲の文言およびその均等な文言によって定められることが意図されている。
図1
図2
図3
図4