(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ゴム芯入り紐の接合構造及びゴム芯入り紐の接合方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20230912BHJP
A45D 8/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B29C65/48
A45D8/00 502B
A45D8/00 502C
(21)【出願番号】P 2023074147
(22)【出願日】2023-04-28
【審査請求日】2023-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501193621
【氏名又は名称】栄光通商株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596152327
【氏名又は名称】大谷 武三郎
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 武三郎
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-096424(JP,A)
【文献】特開2005-040173(JP,A)
【文献】特開2010-030274(JP,A)
【文献】特開昭55-135645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C65/00-82
A45D8/00-40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム芯を繊維カバーで被覆してなるゴム芯入り紐の接合方法であって、
前記ゴム芯入り紐を切断する切断ステップ、
切断された前記ゴム芯の接合される一対の端面間に溶けたゴム材料を挟んで突き合わせたまま、加熱を行なうことで、前記端面を溶かして前記ゴム材料と融合させた後、前記端面及び前記ゴム材料をゴム弾性を具備したまま硬化させて、前記端面どうしを前記ゴム材料により接合し、接合部を形成する接合ステップ、
を含む、
ゴム芯入り紐の接合方法であって、
前記切断ステップと前記接合ステップの間に、前記切断されたゴム芯入り紐の接合される一対の端面近傍の繊維カバーを捲り上げる捲上げステップを含み、
前記接合ステップの後に、前記接合部に捲り上げた前記繊維カバーを戻す戻しステップと、前記接合部上で戻された前記繊維カバーの端どうしの継ぎ目を接着剤で接着する繊維カバー接着ステップと、を含む、
ゴム芯入り紐の接合方法。
【請求項2】
前記切断ステップは、前記ゴム芯入り紐を斜めに切断することで、前記接合される一対の端面を形成する、
請求項
1に記載のゴム芯入り紐の接合方法。
【請求項3】
前記切断ステップの後、前記捲上げステップの前に、前記繊維カバーの捲上げ部分に固化剤を付着させる捲上げ前固化ステップを含む、
請求項
1に記載のゴム芯入り紐の接合方法。
【請求項4】
前記切断ステップの後、前記捲上げステップの前に、前記繊維カバーの捲上げ部分を加熱して固化させる捲上げ前固化ステップを含む、
請求項
1に記載のゴム芯入り紐の接合方法。
【請求項5】
前記戻しステップの後、前記繊維カバー接着ステップの前に、戻された前記繊維カバーに固化剤を付着させる捲上げ後固化ステップを含む、
請求項
1に記載のゴム芯入り紐の接合方法。
【請求項6】
前記接合ステップは、前記一対の端面の夫々に穴を形成し、前記穴に前記溶けたゴム材料が入るように、前記端面間に前記溶けたゴム材料を挟んで突き合せて加熱し、前記端面及び前記穴の内面を溶かして前記ゴム材料と融合させた後、前記端面、前記穴の内面及びゴム材料をゴム弾性を具備したまま硬化させて、前記端面どうしが前記ゴム材料により接合され、前記穴がゴム材料と接合された接合部を形成するステップである、
請求項
1に記載のゴム芯入り紐の接合方法。
【請求項7】
前記溶けたゴム材料は、前記ゴム芯の前記端面に被さる程度の大きさに切断し、加硫剤を使用して溶かした後、前記ゴム材料をトルエンでさらに溶かしたものである、
請求項
1乃至請求項
6の何れか
1項に記載のゴム芯入り紐の接合方法。
【請求項8】
前記溶けたゴム材料に、遅乾性接着剤を混ぜる、
請求項
7に記載のゴム芯入り紐の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髪留めや、種々の束ね、留めに用いられるゴム芯入り紐の接合構造及び接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム芯入り紐(ゴム芯入り組紐やゴム芯入りバンドなどとも呼ばれる)を環状にしたゴムリングは、髪留めの他、種々の束ねや留めに用いられる。
【0003】
ゴム芯入り紐は、ゴム芯の外周を、伸縮性を有する繊維カバーで覆って構成される。ゴム芯は、たとえばゴムシートを所定幅に切断して形成され、繊維カバーは、繊維を筒状に編んで形成される。ゴム芯入り紐は、ゴム芯を伸ばした状態で繊維カバーを被せることで作製される。
【0004】
作製されたゴム芯入り紐は、所定長さに切断して、端面どうしを接着剤で接合することでゴムリングとなる。たとえば、特許文献1や特許文献2では、ゴム芯入り紐の端部に固化剤(硬化剤ともいう)を付着させて固くし、或いは、切断部分に予め固化剤を付着して固くした後に切断して、端面どうしを突き合わせて接着剤で接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3560602号公報
【文献】特開2016-34317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記により得られたゴムリングを強い力で引っ張ったときに、ゴム芯の端面どうしの接着が剥がれ、繊維カバーを残して、ゴム芯だけが切れてしまうことがあった。これは、発明者の鋭意研究により、伸縮性を有するゴム芯に対し、接着剤は硬化して伸びがないため、接合部が引っ張られたときに、接合部に剥離が生じることが原因であることが見いだされた。
【0007】
本発明の目的は、接合部でゴム芯が切れてしまうことを抑え、また、接合部における繊維カバーが膨らみを抑えることのできるゴム芯入り紐の接合構造及び接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴム芯入り紐の接合構造は、
ゴム芯を繊維カバーで被覆してなるゴム芯入り紐の接合構造であって、
前記ゴム芯の端面どうしは、ゴム材料を介して接合された接合部を有する。
【0009】
前記端面は、斜めに切断された面とすることができる。
【0010】
前記端面には夫々対向する位置に穴が形成されており、前記ゴム材料は、前記穴に注入されて、前記端面どうしを接合したものである。
【0011】
また、本発明のゴム芯入り紐の接合方法は、
ゴム芯を繊維カバーで被覆してなるゴム芯入り紐の接合方法であって、
前記ゴム芯入り紐を切断する切断ステップ、
切断された前記ゴム芯の接合される一対の端面間に溶けたゴム材料を挟んで突き合わせたまま、加熱を行なうことで、前記端面を溶かして前記ゴム材料と融合させた後、前記端面及び前記ゴム材料をゴム弾性を具備したまま硬化させて、前記端面どうしを前記ゴム材料により接合し、接合部を形成する接合ステップ、
を含む。
【0012】
前記切断ステップと前記接合ステップの間に、前記切断されたゴム芯入り紐の接合される一対の端面近傍の繊維カバーを捲り上げる捲上げステップを含み、
前記接合ステップの後に、前記接合部に捲り上げた前記繊維カバーを戻す戻しステップと、前記接合部上で戻された前記繊維カバーの端どうしの継ぎ目を接着剤で接着する繊維カバー接着ステップと、を含むことができる。
【0013】
前記切断ステップは、前記ゴム芯入り紐を斜めに切断することで、前記接合される一対の端面を形成するものである。
【0014】
前記切断ステップの後、前記捲上げステップの前に、前記繊維カバーの捲上げ部分に固化剤を付着させる捲上げ前固化ステップを含むことができる。
【0015】
前記切断ステップの後、前記捲上げステップの前に、前記繊維カバーの捲上げ部分を加熱して固化させる捲上げ前固化ステップを含むことができる。
【0016】
前記戻しステップの後、前記繊維カバー接着ステップの前に、戻された前記繊維カバーに固化剤を付着させる捲上げ後固化ステップを含むことができる。
【0017】
前記接合ステップは、前記一対の端面の夫々に穴を形成し、前記穴に前記溶けたゴム材料が入るように、前記端面間に前記溶けたゴム材料を挟んで突き合せて加熱し、前記端面及び前記穴の内面を溶かして前記ゴム材料と融合させた後、前記端面、前記穴の内面及びゴム材料をゴム弾性を具備したまま硬化させて、前記端面どうしが前記ゴム材料により接合され、前記穴がゴム材料と接合された接合部を形成するステップである。
【0018】
前記溶けたゴム材料は、前記ゴム芯の前記端面に被さる程度の大きさに切断し、加硫剤を使用して溶かした後、前記ゴム材料をトルエンでさらに溶かしたものである。
【0019】
前記溶けたゴム材料に、遅乾性接着剤を混ぜることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴム芯入り紐の接合構造及び接合方法によれば、ゴム芯どうしをゴム材料により接合している。ゴム芯とゴム材料は同じ又はほぼ同等の伸縮性を有するから、接合されたゴム芯入り紐を強い力で引っ張って、接合部が引っ張られても、ゴム芯とゴム材料はほぼ同等に伸び、ゴム芯の切れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明のゴムリングの平面図である。
【
図2】
図2は、ゴム芯入り紐を一部断面した図である。
【
図3】
図3は、ゴム芯入り紐の切断状態を示す断面図であって、(a)長手方向に対して直交する向きに切断した図、(b)長手方向に対して斜めに切断した図である。
【
図4】
図4は、切断されたゴム芯入り紐の先端近傍に固化剤を塗布した断面図である。
【
図5】
図5は、繊維カバーを捲り上げた状態を示すゴム芯入り紐の断面図である。
【
図6】
図6は、ゴム芯の端面に溶けたゴム材料を付着させて突き合わせる工程を示す断面図であって、(a)一方の端面にゴム材料を塗布し、(b)端面どうしをゴム材料を介して突き合わせた状態を示している。
【
図7】
図7は、ゴム芯の端面どうしをゴム材料と融合させた状態を示す接合部の断面図である。
【
図8】
図8は、捲り上げられ繊維カバーを戻した接合部の断面図である。
【
図9】
図9は、ゴムリングの接合部の断面図であって、接合部の外周の繊維カバーに固化剤を塗布した状態を示している。
【
図10】
図10は、ゴムリングの接合部の断面図であって、接合部の外周の繊維カバーの継ぎ目に接着剤を塗布した状態を示している。
【
図11】
図11は、変形例のゴム芯入り紐を切断し、穴を開設した状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、変形例のゴム芯入り紐をゴム材料で接合した接合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明のゴム芯入り紐の接合構造及び接合方法について説明を行なう。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴムリング11の平面図である。ゴムリング11は、所定長さに切断されたゴム芯20の端面21,21(
図3参照)を接合して環状に形成したものである。なお、本発明の接合構造及び接合方法は、環状のゴムリング11の作製のため以外に、ゴム芯入り紐10どうしを接合し、長さを長くする等にも適用できる。
【0024】
ゴム芯入り紐10は、
図2に長手方向に沿う断面図を示すように、ゴム芯20と、ゴム芯20の外周を覆う伸縮性の繊維カバー30から構成される。ゴム芯20の断面は、矩形や円形が一般的であるが、これに限定されるものではない。また、ゴム芯20と紐状の繊維を編んだ組紐にも本発明は適用できる。以下の実施形態では、断面略正方形のゴム芯20に繊維カバー30を被せたゴム芯入り紐10で説明を行なう。
【0025】
ゴム芯20は、天然ゴムや合成ゴムから作製される。ゴム芯20の素材は、加硫剤、トルエンに可溶な材質を選択する。ゴム芯20の外径は用途によって異なるが、たとえば髪留めの場合、1mm~5mm程度である。
【0026】
繊維カバー30は、繊維糸を筒状に編んで伸縮可能としたものである。繊維糸は、ウーリーナイロン糸、ナイロン糸、綿糸、ポリエステル糸、レーヨン糸やポリウレタン糸を例示できる。繊維カバー30の色に指定はないが、髪留めには、黒色が多く採用されている。
【0027】
繊維カバー30は、ゴム芯20を引き延ばした状態でゴム芯20の外周に嵌められ、ゴム芯20と一体化されて、ゴム芯入り紐10が作製される。
【0028】
上記ゴム芯入り紐10から、下記要領によりゴムリング11が作製される。なお、以下のステップ中、省略可能なステップについては適宜その旨を記載する。
【0029】
<切断ステップ>
ゴム芯入り紐10を、所望の長さに切断する。切断には鋏やカッターナイフ、ギロチンカッターなどを用いることができる。たとえば、ゴム芯入り紐10は、
図3(a)に示すようにゴム芯入り紐10の長手方向に対して直交する向きに切断することができる。また、
図3(b)に示すように長手方向に対して斜めに切断してもよい。この場合、切断角度は約30°~45°が好適である。ゴム芯入り紐10を斜めに切断することで、接合されるゴム芯20の端面21の面積を大きく採ることができ、接合強度を高めることができる。以下では、斜めに切断したゴム芯入り紐10を用いて説明を行なう。
【0030】
<捲上げ前固化ステップ>
本実施形態では、次の捲上げステップにおいて、接合される2つの端面21,21の近傍の繊維カバー30を捲り上げ、ゴム芯20の先端を露出させる。たとえば、ゴムリング11を製造する場合、1本のゴム芯入り紐10の両端が接合すべき一対の端面21,21となる。この捲上げステップの際に繊維カバー30が毛羽立たないように、予め捲り上げられる先端近傍の繊維カバー30に固化処理を施すことが望ましい。なお、本捲上げ前固化ステップは省略可能なステップである。
【0031】
固化処理は、2通りの方法が挙げられる。1つめは、ゴム芯入り紐10の先端に固化剤51を付着させる方法である。固化剤51を付着させる方法としては、ゴム芯入り紐10の先端を固化剤51に浸す、或いは、筆などで固化剤を塗りつける方法が挙げられる。
図4は固化剤51により固化されたゴム芯入り紐10の先端の断面図である。
【0032】
固化剤51は、固化作用成分を含有する溶媒単体、或いは、当該溶媒に多孔質粒子を含んだ構成とすることができる。固化作用成分としては、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース誘導体、多糖類、糖類、グリセリン誘導体、ポリリジン、ポリアリルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミンなどが使用されてよい。溶媒としては、水が使用される。
【0033】
また、有機溶剤系洗浄剤を固化剤51に含めてもよい。洗浄剤自体は気化して、固化剤51により形成された繊維カバー30の固化部分に細孔をもたらす働きがある。有機溶剤系洗浄剤としては、アノン、メタノール、メチルエチルケトン、プロピレンジクロライド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、n-ヘプタン、アセトン等が使用される。
【0034】
固化剤51に含めることのできる多孔質粒子は、多孔質ポリマー粒子、多孔質無機粒子、炭粒子、砂礫粒子、これら粒子の混合物などが挙げられるが、本発明の作用効果が得られる限りにおいて、任意の多孔質粒子を使用することができる。多孔質粒子の形状は限定されるものではないが、例えば、球状や糸状、繊維粉末状であってもよい。本発明において、多孔質粒子は微粒子であるのが好ましい。粒子の平均粒径は、例えば50μm以下とされるが、本発明の作用効果が得られる限りにおいて、任意の大きさの多孔質粒子が使用されてよい。
【0035】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な多孔質ポリマー粒子としては、例えば、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(フェニレンオキシド)、又は、ポリ(エーテルスルホン)で形成された多孔質粒子、及び、それらの混合物が挙げられる。
【0036】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な多孔質無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、又はジルコニアで形成された多孔質粒子、及び、それらの混合物が挙げられる。
【0037】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な炭粒子としては、黒炭、白炭、竹炭、備長炭で形成された炭粒子、及び、それらの混合物が挙げられる。
【0038】
本発明に係る多孔質粒子として使用可能な砂礫粒子としては、トルマリン、ゼオライト、花崗岩、貝化石、日光石、珊瑚化石、緑泥石、大谷石、麦飯石などの多孔質の自然石、火山岩や凝灰岩の塊を粉砕し、ふるい分け等して得られた砂礫粒子、及び、それらの混合物が挙げられる。
【0039】
ゴム芯入り紐10の先端の繊維カバー30に固化剤51を付着させた後、
図4に示すように固化剤が固化するのを待ち、続く捲上げステップに進む。繊維カバー30が固化剤51で固化されることで、繊維カバー30の毛羽立ちが抑えられる。
【0040】
また、固化処理の2つめの方法として、ゴム芯入り紐10の先端近傍を加熱して繊維カバー30を固化する方法が挙げられる。この方法は、繊維カバー30を熱により固化するウーリーナイロン糸、ナイロン糸、ポリエステル糸、レーヨン糸やポリウレタン糸などにより作製している場合に適用可能である。加熱は、ゴム芯入り紐10の先端近傍にアイロンを当てる、或いは、軽く火で炙ることで実行できる(図示せず)。ゴム芯入り紐10の先端を加熱により固化させた後、続く捲上げステップに進む。繊維カバー30が固化されることで、繊維カバー30の毛羽立ちを抑えることができる。
【0041】
<捲上げステップ>
本ステップは、切断されたゴム芯入り紐10の先端の繊維カバー30を捲り上げるステップである。捲上げステップでは、
図5に示すように、ゴム芯20から先端の繊維カバー30を捲ってゴム芯20の先端を露出させる。繊維カバー30の捲上げは、作業者が手で行なうことができるし、適宜治具を用いてもよい。繊維カバー30の捲上げは、0.5mm~3mm程度でよい。
図5に示すように、ゴム芯入り紐10を斜めに切断した場合には、側方から見て端面21がすべて露出するように繊維カバー30を捲り上げる。なお、捲上げステップの前に、上記した捲上げ前固化ステップによって繊維カバー30の先端を固化させておくことで、捲り上げる際に、毛羽立ちが抑えられて捲上げを容易に行なうことができる。なお、変形例に示すように、本捲上げステップも省略可能なステップである。
【0042】
<接合ステップ>
捲上げステップにて、繊維カバー30が捲り上げられたゴム芯入り紐10の端面21,21をゴム材料40で接合する。ゴム材料40は、ゴム芯20の素材と同系、すなわち、天然ゴムの場合には天然ゴムを採用することが望ましいが、ゴム芯20の素材と異種のゴム材料、すなわち、ゴム芯20が天然ゴムの場合にゴム材料40を合成ゴムであってもよい。ゴム材料40は、加硫剤、トルエンに可溶な材質を選択する。
【0043】
接合材となるゴム材料40は、端面21に被さる程度の大きさに切断し、加硫剤を使用して溶かす。そして、少し溶けたゴム材料40をトルエンで溶かして、ゴム糊の如き形態とする。なお、ゴム材料40は表面が少なくとも溶けた状態であれば、完全に溶けた状態である必要はない。接合強度を高めるために、溶けたゴム材料40に遅乾性接着剤を混ぜることが好適であり、高粘度遅乾性接着剤を混ぜることがより望ましい。その種の遅乾性接着剤としてジェル状のシアノアクリレート系の接着剤やクロロプレン合成ゴムを主成分とする接着剤を例示できる。
【0044】
次に、たとえば、
図6(a)に示すように、接合すべきゴム芯20の一方の端面21に溶けたゴム材料40を塗布し、或いは、載せて、他方の端面21を当該ゴム材料40に押し付ける。続いて、
図6(b)に示すように、ゴム材料40を挟むように他方の端面21を突き合わせる。
【0045】
そして、端面21,21どうしの突き合わせ状態を維持するように保持し、端面21,21近傍及びゴム材料40を加熱して、端面21,21を溶かし、端面21とゴム材料40を融合させる。突合せ部分の保持は、金型による加圧を例示できる。加熱は、約80℃~170℃とすることができる。その後、加熱を止めて、ゴム材料40と、融合した端面21,21をゴム弾性を具備したまま硬化させる。これにより、
図7に示すように、ゴム芯20は、端面21,21どうしがゴム材料40により接合された接合部22を構成する。
【0046】
ゴム芯20は、斜めに切断されることで接合面となる端面21,21の面積を、長手方向に対して直交する方向で切断した場合に比べて大きくすることができる。これにより、接合強度を高めることができる。
【0047】
<戻しステップ>
端面21,21どうしをゴム材料40により接合した後、捲り上げられた繊維カバー30を戻す。繊維カバー30は、手で或いは治具を用いて戻せばよい。繊維カバー30は伸縮性を有するから、捲り上げられた繊維カバー30をゴム芯20側に戻すと、繊維カバー30が若干伸びて、
図8に示すようにゴム芯20だけでなく、ゴム芯20の端面21,21どうしの接合部22も繊維カバー30で覆われる。なお、捲上げステップを省略した場合、本戻しステップは不要である。
【0048】
<捲上げ後固化ステップ>
戻しステップにて、ゴム芯20を再び覆うように戻された繊維カバー30には、毛羽立ちが生ずることがある。この場合、
図9に示すように、戻された繊維カバー30に上記した固化剤52を付着(たとえば、浸す、塗布する)させて、固化させることにより、戻したときに生じた繊維カバー30の毛羽立ちを抑えることができる。なお、捲上げ後固化ステップは、適宜省略可能なステップである。
【0049】
<繊維カバー接着ステップ>
戻しステップにて、ゴム芯20を再び覆うように戻された繊維カバー30(捲上げ後固化ステップにより固化された繊維カバー30を含む)の端どうしの継ぎ目31を、
図10に示すように接着剤53で接着して繋ぐ。接着剤53は、アクリル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール系樹脂接着剤、ポリビニルピロリンドン樹脂系接着剤などを例示できるが、これに限定されるものではない。
【0050】
上記繊維カバー接着ステップにより、繊維カバー30の継ぎ目31が接合されることで、ゴム芯入り紐10は、ゴム芯20の端面21,21どうしが接合され、繊維カバー30が継ぎ目31で接合された接合構造となる。本実施形態では、1本のゴム芯入り紐10の両端を接合しているから、ゴム芯入り紐10は、環状の形態となり、ゴムリング11を得ることができる。
【0051】
本実施形態のゴムリング11は、ゴム芯20の端面21,21どうしの接合にゴム材料40を使用している。ゴム材料40は接合後にゴム弾性を具備したまま硬化するから、ゴムリング11を引っ張ったときに、ゴム材料40はゴム芯20と同様に伸びる。このため、ゴム芯の切れを防止できる。また、接合部22が接着剤のように硬化していないから、触ったときにも硬い部分はなく、接合部22がどこにあるか分からない。
【0052】
<変形例>
本実施形態は、上記した接合ステップにおいて、ゴム芯20の端面21,21どうしの接合強度をさらに高めることができる接合構造及び接合方法の変形例である。
【0053】
図11に示すように、切断されたゴム芯入り紐10のゴム芯20の端面21,21に、接合時に対向する位置に穴23,23を形成する。穴23は、直径0.5mm~1.5mm、深さ1mm~3mm程度とすることができ、ドリルなどにより開設することができる。具体的実施形態として、直径2mmのゴム芯20に、直径1mmの穴23を開ける。
【0054】
また、上記実施形態と同様、接合材となるゴム材料40を準備する。ゴム材料40は、端面21に被さる程度の大きさに切断し、加硫剤を使用して溶かす。続いて、少し溶けたゴム材料40をトルエンで溶かして、ゴム糊の如き形態とする。接合強度を高めるために、溶けたゴム材料40に遅乾性接着剤を混ぜることが好適であり、高粘度遅乾性接着剤を混ぜることがより望ましい。
【0055】
そして、接合すべきゴム芯20の一方の端面21に溶けたゴム材料40すると共に、穴23にゴム材料40を注入する。この状態から、他方の端面21をゴム材料40に押し付けて、当該端面21にゴム材料40を付着させると共に、穴23にゴム材料40を入れる。
【0056】
その後、端面21,21どうしの突き合わせ状態を維持するように保持し、端面21,21近傍及びゴム材料40を加熱して、端面21,21及び穴23,23を溶かし、端面21とゴム材料40、穴23とゴム材料40を融合させる。加熱は、約80℃~170℃とすることができる。その後、加熱を止めて、ゴム材料40と、融合した端面21,21、穴23,23をゴム弾性を具備したまま硬化させる。これにより、
図12に示すように、ゴム芯20は、端面21,21どうしがゴム材料40により接合され、また、端面21に形成された穴23がゴム材料40と接合された接合部22を構成する。
【0057】
本実施形態によれば、端面21,21とゴム材料40が融合するだけでなく、穴23に注入されたゴム材料40が、穴23と融合して硬化することで、接合部22の接合強度を高めることができる。
【0058】
上記した変形例では、捲上げ前固化ステップ、捲上げ後固化ステップを省略できる。また、捲上げステップと戻しステップも省略できる。
図11、
図12では、捲上げ前固化ステップ、捲上げ後固化ステップ、捲上げステップ及び戻しステップを省略している。すなわち、変形例は、ゴム芯入り紐10の切断ステップの後、接合ステップにて端面21に穴23を開設し、ゴム材料40と端面21(穴23を含む)を融合した後、繊維カバー接着ステップ(継ぎ目31に接着剤53を塗布)を行なった実施形態である。
【0059】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
10 ゴム芯入り紐
11 ゴムリング
20 ゴム芯
21 端面
22 接合部
23 穴
30 繊維カバー
31 継ぎ目
40 ゴム材料
51 固化剤
52 固化剤
53 接着剤
【要約】
【課題】本発明は、接合部でゴム芯が切れてしまうことを抑え、また、接合部における繊維カバーが膨らみを抑えることのできるゴム芯入り紐の接合構造及び接合方法を提供する。
【解決手段】本発明のゴム芯入り紐10の接合構造は、ゴム芯20を繊維カバー30で被覆してなるゴム芯入り紐の接合構造であって、前記ゴム芯の端面21,21どうしは、ゴム材料40を介して接合されている。また、本発明のゴム芯入り紐の接合方法は、ゴム芯を繊維カバーで被覆してなるゴム芯入り紐の接合方法であって、前記ゴム芯入り紐を切断する切断ステップ、切断された前記ゴム芯の接合される一対の端面間に溶けたゴム材料を挟んで突き合わせたまま、加熱を行なうことで、前記端面を溶かして前記ゴム材料と融合させた後、前記端面及び前記ゴム材料をゴム弾性を具備したまま硬化させて、前記端面どうしを前記ゴム材料により接合し、接合部12を形成する接合ステップを含む。
【選択図】
図10