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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】アルカリ洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/06 20060101AFI20230912BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20230912BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20230912BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C11D7/06
C11D7/22
C11D7/50
B08B3/08 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019088950
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020183497
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000190736
【氏名又は名称】株式会社ニイタカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】平石 依里
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/176481(WO,A1)
【文献】特表2013-525564(JP,A)
【文献】特表2014-521770(JP,A)
【文献】特開平10-088196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属水酸化物0.1~30質量%と、増粘剤0.01~5質量%と、SP値が10.6以上の溶剤0.1~50質量%とを含有し、
20℃における粘度が100mPa・s以上であり、
pHが12以上であることを特徴とするアルカリ洗浄剤組成物(ただし、多相液体洗剤組成物を除く)
【請求項2】
前記溶剤は、グリコール系溶剤及び/又はアルコール系溶剤である請求項に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記増粘剤は、多糖類増粘剤である請求項1又は2に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記多糖類増粘剤は、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ペクチン及びグルコマンナンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭で使用する鍋やグリル等の調理器具や五徳、台所の特に換気扇やコンロまわりの壁、飲食店、ホテル等の厨房、スーパーマーケット、食品工場における壁や床、食品製造・加工・調理装置等の洗浄には、洗浄剤組成物が使用される。油汚れの洗浄に適した洗浄剤組成物として、アルカリ洗浄剤組成物が使用される。
【0003】
洗浄対象面に対して油汚れ等の汚れが強固に付着している場合、洗浄剤組成物を汚れに対して長時間充分に接触させることで洗浄対象面から汚れを剥離させやすくなる。
ここで、洗浄対象面が垂直面や傾斜面のような液体が流れ落ちやすい面である場合、液体の洗浄剤組成物を洗浄対象面に付着させても流れ落ちてしまうため、洗浄剤組成物と汚れとが充分に接触しなくなってしまう。
【0004】
従来のアルカリ洗浄剤組成物として、例えば、特許文献1には、アルカリ成分を有効成分として含有し、さらにアミンオキサイド及びアルキルポリグルコシドを含有する液体洗浄剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-170192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、アルカリ洗浄剤組成物において、液体が流れ落ちやすい面の汚れに対する洗浄力をより高めるために、洗浄剤組成物を高粘度として洗浄剤組成物が当該面から流れ落ちにくいようにし、洗浄剤組成物と汚れとを充分に接触させることについて検討し、洗浄剤組成物の粘度を向上させるために増粘剤を使用することを試みた。
【0007】
アルカリ洗浄剤組成物には、洗浄力を向上させるために、疎水性の溶剤を配合する場合が多い。しかし、疎水性の溶剤には増粘剤を均一に溶かすことが難しく、アルカリ洗浄剤組成物の粘度を充分に高めるための工夫の余地があったことを本発明者は見出した。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためにされたものであり、洗浄対象面への付着性に優れ、洗浄力が高いアルカリ洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、アルカリ洗浄剤組成物において特定の溶剤と増粘剤と特定のアルカリ剤とをそれぞれ所定の質量割合で組み合わせることで、溶剤に増粘剤及びアルカリ剤が好適に溶解し、増粘剤が、アルカリ洗浄剤組成物中で好適な増粘作用を示すことを見出した。そして、このようなアルカリ洗浄剤組成物は、垂直面や傾斜面のような液体が流れ落ちやすい洗浄対象面への付着性に優れるとともに、汚れを剥離させる作用も充分なものであり、その結果、洗浄力が非常に優れたものになることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、アルカリ金属水酸化物0.1~30質量%と、増粘剤0.01~5質量%と、SP値が10.6以上の溶剤0.1~50質量%とを含有する。なお、アルカリ金属水酸化物の含有割合は、アルカリ金属水酸化物を2種以上含む場合は、これらの合計の含有割合である。増粘剤の含有割合、SP値が10.6以上の溶剤の含有割合についても同様である。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物では、SP値が10.6以上の溶剤に増粘剤とアルカリ金属水酸化物とが好適に溶解し、増粘剤が、アルカリ洗浄剤組成物中で好適な増粘作用を示す。その結果、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、垂直面や傾斜面のような液体が流れ落ちやすい洗浄対象面への付着性が優れたものとなるとともに、汚れを剥離させる作用も充分なものであり、任意の洗浄対象面において洗浄力が際立って優れたものになる。
【0011】
なお、上述した特許文献1に記載の洗浄剤組成物は、アルキルポリグリコシドが配合されたものであるが、実施例で具体的に開示されるアルキルポリグリコシドは、鎖長が短いため増粘作用を示すものではなく界面活性剤として作用するものである。そのため、特許文献1に具体的に開示される洗浄剤組成物は、垂直面や傾斜面のような液体が流れ落ちやすい洗浄対象面への付着性が充分なものではなかったものと考えられる。
【0012】
SP値(溶解度パラメーター)は、溶剤の親水性の指標であり、分子凝集エネルギーの平方根で表される値である。単位は(cal/cm)1/2であり、25℃における値を指す。SP値は、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147(1967)に記載の方法にしたがって算出する。
なお、水のSP値は23.4である。SP値が23.4に近いほど親水性の高い溶剤であり、SP値が23.4より低いほど疎水性の高い溶剤であることを示す。
【0013】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、20℃における粘度が100mPa・s以上であることが好ましい。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物の粘度がこのように高いと、洗浄対象面に付着させた場合に流れ落ちにくく、汚れに対する接触時間をより長くすることができ、本発明のアルカリ洗浄剤組成物の洗浄力を更に高めることができる。
なお、アルカリ洗浄剤組成物の粘度の測定は、JIS Z 8803 に準拠し、E型粘度計を用いて行うことができる。
測定時の液温は20℃、粘度計の回転数は1rpmとする。
【0014】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、pHが12以上であることが好ましい。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物のpHがこのように高いと、油汚れ等の汚れに対する洗浄力を更に高めることができる。
【0015】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物において、上記溶剤は、グリコール系溶剤及び/又はアルコール系溶剤であることが好ましい。
これにより、溶剤に増粘剤とアルカリ金属水酸化物をより好適に溶解することができる。
【0016】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物において、上記増粘剤は、多糖類増粘剤であることが好ましい。
これにより、溶剤に多糖類増粘剤を好適に溶解でき、本発明のアルカリ洗浄剤組成物中での増粘作用がより優れたものとなる。
【0017】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物において、上記多糖類増粘剤は、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ペクチン及びグルコマンナンからなる群より選択された少なくとも1種であることが好ましい。
これにより、本発明のアルカリ洗浄剤組成物における多糖類増粘剤の増粘作用が更に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、洗浄対象面への付着性に優れ、洗浄力が高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、アルカリ金属水酸化物0.1~30質量%と、増粘剤 0.01~5質量%と、SP値が10.6以上の溶剤0.1~50質量%とを含有することを特徴とする。
【0020】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物を構成する、アルカリ金属水酸化物、増粘剤、及び、SP値が10.6以上の溶剤について、それぞれ説明する。
【0021】
アルカリ金属水酸化物としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
アルカリ金属水酸化物を使用することによって強アルカリ性の洗浄剤組成物としやすくなり、油汚れ等の汚れに対する洗浄力がより高いものとなる。
これらのアルカリ金属水酸化物は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0022】
アルカリ金属水酸化物の含有量は0.1~30質量%であり、0.3~17質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
アルカリ金属水酸化物の含有量が30質量%を超えると、外観が均一透明を保ちにくくなる。0.1質量%未満であると、汚れを充分に除去しにくい。
なお、上述したように、アルカリ金属水酸化物を複数種類含むときのアルカリ金属水酸化物の含有量は、その合計量として定める。
【0023】
増粘剤としては、増粘作用を有する限り特に限定されないが、多糖類増粘剤が好ましい。
多糖類増粘剤としては、食品添加物が好ましく、例えば、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ペクチン、ダイユータンガム、ウェランガム、及びグルコマンナンからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中ではキサンタンガムを使用することがより好ましい。
【0024】
増粘剤の含有量は0.01~5質量%であり、0.05~3質量%であることが好ましく、0.25~2質量%であることがより好ましい。
増粘剤の含有量が上記範囲内であると、洗浄剤組成物の粘度が適度な範囲に調整される。
なお、上述したように、増粘剤を複数種類含むときの増粘剤の含有量は、その合計量として定める。
【0025】
SP値が10.6以上の溶剤とは、SP値が10.6以上の有機溶剤である限り特に限定されないが、中でも、そのSP値が11.0以上であることが好ましい。また、該溶剤は、そのSP値が、23.0以下であることが好ましく、21.0以下であることがより好ましい。
またSP値が10.6以上の溶剤としては、例えばグリコールエーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アルコール系溶剤が挙げられ、中でもグリコール系溶剤及び/又はアルコール系溶剤であることが好ましい。
グリコール系溶剤としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、ヘキサンジオールが好ましい。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノールが好ましい。
これらの溶剤は、組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記SP値が10.6以上の溶剤の含有量は、0.1~50質量%であり、0.5~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。
SP値が10.6以上の溶剤の含有量が上記範囲内であると、洗浄剤組成物の各成分を充分に溶解でき、本発明の効果を充分に発揮できる。
なお、上述したように、SP値が10.6以上の溶剤を複数種類含むときの該溶剤の含有量は、その合計量として定める。
【0027】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、SP値が10.6以上の溶剤を所定量含む限り、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の、SP値が10.6未満の溶剤を更に含有していてもよい。
SP値が10.6未満の溶剤は、組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物が、SP値が10.6未満の溶剤を更に含有する場合、SP値が10.6未満の溶剤の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
SP値が10.6未満の溶剤の含有量が上記範囲内であると、洗浄剤組成物の洗浄力がより優れたものとなる。
SP値が10.6未満の溶剤を複数種類含むときの該溶剤の含有量は、その合計量として定める。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物が、SP値が10.6未満の溶剤を更に含有する場合、SP値が10.6以上の溶剤と、SP値が10.6未満の溶剤との質量比は、垂直面や傾斜面に対する洗浄力をより優れたものとする観点からは、40~99/1~60であることが好ましく、50~95/5~50であることがより好ましく、55~90/10~45であることが更に好ましく、60~80/20~40であることが特に好ましい。
SP値が10.6以上の溶剤の含有量が上記質量比の範囲内となるものである場合、溶剤に増粘剤及びアルカリ剤が好適に溶解する。一方で、SP値が10.6未満の溶剤の含有量が上記質量比の範囲内となるものよりも多い場合、洗浄剤組成物の配合安定性が悪くなるおそれがある。
【0029】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、更に、界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤の種類は特に限定されないが、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩(AES)、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホメチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキルコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルアミノベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアミノスルホベタイン等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンメチルエーテル脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
界面活性剤が塩の場合、塩としては特に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が好適なものとして挙げられる。
これらの各種界面活性剤は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0030】
上記界面活性剤の含有量は好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.5~2質量%である。
界面活性剤の含有量が5質量%を超えると、外観が均一透明を保ちにくくなり、0.1質量%未満であると、汚れを充分に除去しにくい。
界面活性剤を複数種類含むときの界面活性剤の含有量は、その合計量として定める。
【0031】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、更に、キレート剤を含有していてもよい。
キレート剤は、特に限定されないが、ヒドロキシカルボン酸系、アミノカルボン酸系、ホスホン酸系、リン酸系、エーテルカルボン酸塩系等が挙げられ、これらを併用してもよい。これらの中では、ヒドロキシカルボン酸系のキレート剤、及び、アミノカルボン酸系のキレート剤が好ましい。
【0032】
ヒドロキシカルボン酸系のキレート剤としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸又はこれらの塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0033】
アミノカルボン酸系のキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン六酢酸(DPTA-OH)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、エチレンジアミンコハク酸(EDDS)又はこれらの塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0034】
ホスホン酸系のキレート剤としては、ヒドロキシエチリデンホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
上記キレート剤はホスホン酸部分の少なくとも一部が塩になっていてもよい。
【0035】
リン酸系のキレート剤としては、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸又はこれらの塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0036】
上記キレート剤における塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩を挙げることができる。中でも、アルカリ金属の塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。
また、キレート剤とキレート剤の塩がアルカリ洗浄剤組成物の中で混在していてもよく、キレート剤がアルカリ洗浄剤組成物に含まれている場合にその後にナトリウムイオン等が加えられることによって塩となっていてもよい。
【0037】
キレート剤の含有量は特に限定されないが、0.01~2質量%であることが好ましい。キレート剤を複数種類含むときのキレート剤の含有量は、その合計量として定める。
【0038】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、更に、金属腐食防止剤を含有していてもよい。
金属腐食防止剤としては、亜硝酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等の含硫黄化合物、含窒素化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0039】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物が金属腐食防止剤を更に含む場合、金属腐食防止剤の含有量は、0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~1質量%であることがより好ましい。
金属腐食防止剤を複数種類含むときの金属腐食防止剤の含有量は、その合計量として定める。
【0040】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、更に、アルカリ金属水酸化物以外のアルカリ剤を含有していてもよい。
アルカリ金属水酸化物以外のアルカリ剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0041】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、通常、更に水を含有する。
水は、他の成分以外の残部として配合され、その含有量は特に限定されるものではない。水としては、特に限定されるものではないが、水道水、蒸留水、純水及びイオン交換水等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0042】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、その他の成分として、上述したものの他、可溶化剤、酸化防止剤、色素、香料、防腐剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、20℃における粘度が100mPa・s以上であることが好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましく、1000mPa・s以上であることが更に好ましい。また、該粘度は、50000mPa・s以下であることが好ましく、25000mPa・s以下であることがより好ましく、4000mPa・s以下であることが更に好ましい。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物の20℃における粘度が100mPa・s以上であると、洗浄対象面に付着させた場合に流れ落ちにくく、汚れに対する接触時間をより長くすることができ、本発明のアルカリ洗浄剤組成物の洗浄力を更に高めることができる。また、該粘度が50000mPa・s以下であると、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は調製が容易なものとなる。
なお、上述したように、アルカリ洗浄剤組成物の粘度の測定は、JIS Z 8803 に準拠し、E型粘度計を用いて行うことができる。
測定時の液温は20℃、粘度計の回転数は1rpmとする。
【0044】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、言い換えれば、液体洗浄剤組成物である。なお、上述したように、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は高粘度のものを含む。すなわち、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、ジェル状の高粘度品を含む。
【0045】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、pHが12以上であることが好ましく、12.5以上であることがより好ましく、13以上であることが更に好ましい。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物をpHが高い強アルカリ性の洗浄剤組成物とすることによって、油汚れに対する洗浄力の高いアルカリ洗浄剤組成物とすることができる。
pHの測定は、市販のpHメーター等を用いて行えばよいが、例えば、堀場製作所製、D-21型を用いて測定することができる。
【0046】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、任意の方法で製造することができる。
例えば、アルカリ金属水酸化物と、増粘剤と、SP値が10.6以上の溶剤と、必要に応じてその他の成分とを容器に添加し、攪拌混合すればよい。通常は水をともに混合して、アルカリ洗浄剤組成物のpH及び粘度を調整する。
【0047】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、家庭で使用する鍋やグリル等の調理器具や五徳、台所の特に換気扇やコンロまわりの壁、飲食店、ホテル等の厨房、スーパーマーケット、食品工場における壁や床、食品製造・加工・調理装置等の洗浄に使用することができ、中でも、洗浄対象面への付着性に優れることから、特に台所、厨房の壁や、調理器具や五徳、食品製造・加工・調理装置等の側面部等に対する洗浄力が高いものである。
すなわち、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、垂直面や傾斜面のような液体が流れ落ちやすい洗浄対象面に対して好適に用いられるものである。
また、洗浄対象物の材質としては、ステンレス、鋳鉄、鉄鋼、ステンレス、メッキ鋼板、アルミニウム、陶器、プラスチック等が挙げられる。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物で洗浄する汚れとしては、家庭の台所や飲食店、ホテル等の厨房等で使用する鍋、コンロ、五徳等に付着した油汚れを中心とした汚れが挙げられる。油汚れに加えて、タンパク質汚れやデンプン汚れが混在した汚れであってもよい。
【0048】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、洗浄対象物に塗布して使用してもよく、スプレーガン等を用いて洗浄対象物にスプレーして使用してもよい。なお、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、通常希釈することなくそのまま用いられる。
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は適度な粘度を有しており、汚れとの接触が良好に維持されるので、アルカリ洗浄剤組成物を汚れに対してスプレーし、しばらくの間放置してからふき取るようにすると、汚れ落ちを促進させることができる。
また、本発明のアルカリ洗浄剤組成物をスポンジやウェス等に塗布し、スポンジやウェスで洗浄対象物を拭くようにして使用してもよい。
【実施例
【0049】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例において、特に断らない限り「部」は「質量部」を「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。
【0050】
<実施例1~14、比較例1~3>
(アルカリ洗浄剤組成物の調製)
表1に示す処方に従い、各成分を混合して、各実施例及び比較例に係るアルカリ洗浄剤組成物を得た。
なお、表中に示す成分は全て純分換算した重量であり、各成分としては以下のものを用いた。
水酸化ナトリウム:(株)大阪ソーダ製 液体苛性ソーダ
水酸化カリウム:三京化成(株)製 液体苛性カリ
キサンタンガム:(株)カーギルジャパン製 SATIAXANE CX930
ダイユータンガム:三晶(株)製 KELCO-VIS DG
ウェランガム:三晶(株)製 Welan Gum BG3810
グアーガム:三晶(株)製 SUPERGEL 200
ポリエチレングリコール(SP値:10.70):東京化成(株)製 トリエチレングリコール
1-プロパノール(SP値:11.84):東京化成(株)製 1-プロパノール
エタノール(SP値:12.58):米山薬品工業(株) エタノール(99.5v/v%)
プロピレングリコール(SP値:15.91):東京化成(株)製 1,2-プロパンジオール
グリセリン(SP値:20.02):東京化成(株)製 グリセリン
ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:10.00):日本乳化剤(株)製 プロピルプロピレンジグリコールSS
3-メトキシ-3-メチルブタノール(SP値:10.49):東京化成(株)製 3-メトキシ-3-メチルブタノール
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値:10.51):東京化成(株)製 ジエチレングリコールモノブチルエーテル
ポリオキシエチレンアルキルエーテル:青木油脂工業(株)製 ファインサーフTD-100
エチレンジアミン四酢酸・4ナトリウム:東京化成(株)製 エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物
グルコン酸ナトリウム:扶桑化学工業(株)製 グルコン酸ナトリウム
メタケイ酸ナトリウム:日本化学(株)製 メタケイ酸ナトリウム
水:イオン交換水
【0051】
(pHの測定)
各実施例及び比較例の調合直後の各アルカリ洗浄剤組成物に対し、pHメーター(堀場製作所製、D-21型)を用いてpHを測定した。結果を表1に示した。
【0052】
(洗浄力評価)
各実施例及び比較例の調合直後の各アルカリ洗浄剤組成物を、家庭で1年間使用後、焦げ汚れが付着した五徳の表面全体に、表面積5cmに対して1mL塗布し、4時間接触させた後、流水ですすぎ、汚れの落ち具合を目視で評価した。なお、五徳は複雑な形状をしており、その表面としては水平面、傾斜面、及び、垂直面がある。
【0053】
<評価基準>
◎:4時間接触後、焦げ汚れが75%以上除去できる
○:4時間接触後、焦げ汚れが50%以上、75%未満除去できる
×:4時間接触後、焦げ汚れの除去率が50%未満である
【0054】
(粘度評価)
各実施例及び比較例の調合直後の各アルカリ洗浄剤組成物に対し、JIS Z 8803 に準拠し、E型粘度計を用いて粘度測定を行った。測定時の液温は20℃、粘度計の回転数は1rpmとした。
なお、比較例3のアルカリ洗浄剤組成物は、濁度が高く、粘度を適切に評価できるものではなかった。
【0055】
(垂れ落ち性評価)
各実施例及び比較例の調合直後の各アルカリ洗浄剤組成物を、垂直に立てたステンレス板に0.5mL滴下し、10cm垂れ落ちるまでの時間を測定し、落ち速度を算出した。
【0056】
<評価基準>
◎:垂れ落ち速度が10cm/分未満
○:垂れ落ち速度が10cm/分以上、20cm/分未満
×:垂れ落ち速度が20cm/分以上
【0057】
(外観評価)
各実施例及び比較例の調合直後の各アルカリ洗浄剤組成物に対し、濁度測定を行った。濁度の数値により外観の評価を行う。結果を表1に示す。
各試験溶液の濁度を、紫外可視近赤外分光光度計(型番:V-670DS、日本分光株式会社製)及び分光光度計用セル10mmを用いて測定した。
【0058】
<評価基準>
〇:濁度が150度(ホルマジン)未満である。
×:濁度が150度(ホルマジン)以上である。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果より、各実施例のアルカリ洗浄剤組成物は、アルカリ金属水酸化物と、増粘剤と、SP値が10.6以上の溶剤とそれぞれ所定の質量割合含み、洗浄対象面への付着性に優れ、洗浄力が高いことが分かる。一方、比較例1の洗浄剤組成物は、アルカリ金属水酸化物を含まないことから、洗浄力が充分なものではなかった。また、比較例2のアルカリ洗浄剤組成物は、増粘剤を含まないことから、洗浄対象面への付着性が充分なものではなく、一定の洗浄力は認められたものの、五徳の傾斜面及び垂直面に汚れが残りがちであり、洗浄結果にムラが生じていた。更に、比較例3のアルカリ洗浄剤組成物は、アルカリ金属水酸化物と増粘剤とを含むものの、SP値が10.6以上の溶剤を含まないことから、アルカリ金属水酸化物と増粘剤とを充分に溶解することができず、外観に劣るとともに、洗浄対象面への付着性が充分なものではなく、また、洗浄力も充分なものではなかった。