(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】変位センサ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20230912BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20230912BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20230912BHJP
G01D 5/14 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
G01B7/00 101H
G01D5/12 A
G01B5/00 A
G01D5/14 H
(21)【出願番号】P 2019093143
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英治
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-372403(JP,A)
【文献】特開2002-310609(JP,A)
【文献】特開2017-178497(JP,A)
【文献】特開2002-310646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00
G01D 5/12
G01B 5/00
G01D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物が測定子に接触して前記測定子が回動することによって前記検知対象物の変位を検知する変位センサであって、
ベースと、
前記測定子に設けられて、前記測定子の回動とともに回動可能に構成される磁石と、
前記磁石の磁界を検知する磁気センサと、を備え、
前記測定子は、弧状部と回動軸を有し、前記ベースに対して前記回動軸を中心に回動可能に構成され、
前記磁石は、弧状に湾曲して形成され、前記測定子の前記弧状部に設けられ、
前記磁気センサは、前記測定子の前記弧状部と対向するように配置され、
前記磁石の外径部の曲率半径と前記磁石の外径部から前記磁気センサまでの最短距離との関係が、一次関数の関係でほぼ表される、変位センサ。
【請求項2】
前記磁気センサは、前記回動軸の軸線方向から見て前記回動軸の軸線と直交する仮想の直線に対して前記磁気センサのセンサ中心と交わるように配置され、
前記磁気センサの感磁方向は、前記仮想の直線と平行方向とされ、
前記測定子は上流側から下流側に搬送される前記検知対象物に接触するものであり、
前記仮想の直線は、前記検知対象物の搬送方向と平行方向とされる、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記変位センサの回動範囲内における前記測定子の回動角度と前記磁石から前記磁気センサまでの最短距離との関係が、ほぼ一次関数の関係で表される、
請求項1
または請求項2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記磁石は、前記測定子が回動していない状態において、前記磁石の一端部が前記磁気センサに近接した位置に配置され、前記磁石の他端部が前記磁気センサから離間した位置に配置され、
前記磁石の一端部は、前記測定子が回動していない状態において、前記測定子の前記回動軸の軸線と前記磁気センサのセンサ中心とを結ぶ直線よりも前記測定子の一端部側に回動する方向に延出する、
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記検知対象物は厚さ方向が薄いシート状物であり、
前記検知対象物の重送状態を検知する重送検知装置として構成される、
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の変位センサ。
【請求項6】
検知対象物が測定子に接触して前記測定子が回動することによって前記検知対象物の変位を検知する変位センサであって、
ベースと、
前記測定子に設けられて、前記測定子の回動とともに回動可能に構成される磁石と、
前記磁石の磁界を検知する磁気センサと、を備え、
前記測定子は、弧状部と回動軸を有し、前記ベースに対して前記回動軸を中心に回動可能に構成され、
前記磁石は、弧状に湾曲して形成され、前記測定子の前記弧状部に設けられ、
前記磁気センサは、前記測定子の前記弧状部と対向するように配置され、
前記変位センサの回動範囲内における前記測定子の回動角度と前記磁石から前記磁気センサまでの最短距離との関係が、ほぼ一次関数の関係で表される、変位センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位センサの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検知対象物が測定子に接触して測定子が回動することによって検知対象物の変位を検知する変位センサは公知となっている(特許文献1参照)。
変位センサは、回動軸の軸線を中心に回動可能に構成される測定子と、測定子に設けられて測定子の回動とともに回動可能に構成される磁石と、磁石の磁界を検知する磁気センサと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記変位センサの分野では、検知誤差が生じることを防止する観点から、磁気センサによる出力のリニアリティをより向上させることが求められている。ここで、リニアリティとは、最小二乗法で線形近似した直線と実測値との差を割合(%)で示した値であり、当該値が小さいほど線形性が高いことを示す(
図8参照)。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、磁気センサの出力のリニアリティを最適化することができ、変位センサによる検知誤差が生じることを防止することができる変位センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、検知対象物が測定子に接触して前記測定子が回動することによって前記検知対象物の変位を検知する変位センサであって、ベースと、前記測定子に設けられて、前記測定子の回動とともに回動可能に構成される磁石と、前記磁石の磁界を検知する磁気センサと、を備え、前記測定子は、弧状部と回動軸を有し、前記ベースに対して前記回動軸を中心に回動可能に構成され、前記磁石は、弧状に湾曲して形成され、前記測定子の前記弧状部に設けられ、前記磁気センサは、前記測定子の前記弧状部と対向するように配置され、前記磁石の外径部の曲率半径と前記磁石の外径部から前記磁気センサまでの最短距離との関係が、一次関数の関係でほぼ表されるものである。
請求項2においては、前記磁気センサは、前記回動軸の軸線方向から見て前記回動軸の軸線と直交する仮想の直線に対して前記磁気センサのセンサ中心と交わるように配置され、前記磁気センサの感磁方向は、前記仮想の直線と平行方向とされ、前記測定子は上流側から下流側に搬送される前記検知対象物に接触するものであり、前記仮想の直線は、前記検知対象物の搬送方向と平行方向とされるものである。
【0008】
請求項3においては、前記変位センサの回動範囲内における前記測定子の回動角度と前記磁石から前記磁気センサまでの最短距離との関係が、ほぼ一次関数の関係で表されるものである。
【0009】
請求項4においては、前記磁石は、前記測定子が回動していない状態において、前記磁石の一端部が前記磁気センサに近接した位置に配置され、前記磁石の他端部が前記磁気センサから離間した位置に配置され、前記磁石の一端部は、前記測定子が回動していない状態において、前記測定子の前記回動軸の軸線と前記磁気センサのセンサ中心とを結ぶ直線よりも前記測定子の一端部側に回動する方向に延出するものである。
【0010】
請求項5においては、前記検知対象物は厚さ方向が薄いシート状物であり、前記検知対象物の重送状態を検知する重送検知装置として構成されるものである。
【0011】
請求項6においては、検知対象物が測定子に接触して前記測定子が回動することによって前記検知対象物の変位を検知する変位センサであって、ベースと、前記測定子に設けられて、前記測定子の回動とともに回動可能に構成される磁石と、前記磁石の磁界を検知する磁気センサと、を備え、前記測定子は、弧状部と回動軸を有し、前記ベースに対して前記回動軸を中心に回動可能に構成され、前記磁石は、弧状に湾曲して形成され、前記測定子の前記弧状部に設けられ、前記磁気センサは、前記測定子の前記弧状部と対向するように配置され、前記変位センサの回動範囲内における前記測定子の回動角度と前記磁石から前記磁気センサまでの最短距離との関係が、ほぼ一次関数の関係で表されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、磁気センサの出力のリニアリティを最適化することができ、変位センサによる検知誤差が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る変位センサの全体的な構成を示す平面断面図。
【
図3】同じく変位センサの測定子と磁石と磁気センサとを示す平面図。
【
図4】同じく変位センサの測定子と磁石と磁気センサとを示す側面図。
【
図6】同じく変位センサの磁石の外径部の曲率半径と磁石の外径部から磁気センサまでの最短距離との関係を示す図。
【
図7】同じく変位センサの磁石の測定子の回動角度と磁石から磁気センサまでの最短距離との関係を示す図。
【
図8】リニアリティについて説明する図であり、例示として最小二乗法で線形近似した直線と実測値との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態に係る変位センサ1、および、変位センサ1を備える複合機について
図1から
図7を用いて説明する。複合機は変位センサ1を備えるシート状物取り扱い装置の一実施形態である。
【0015】
変位センサ1は、検知対象物が物理的に接触することによって、検知対象物の変位(厚み、高さ、または動き等)を検知するリニア出力タイプの接触式のセンサである。
なお以下において、変位センサ1は、複合機に備えられて複合機内において搬送されるシート状物(検知対象物)の重なり状態を検知する重送検知装装置であるものとして説明するが、このような構成に限定されず、例えばワークや人体等の移動する各種のものを検知対象物として構成することもできる。
【0016】
「シート状物」は長さ方向及び幅方向に比べて厚さ方向が薄い形状の物品を指す。シート状物を構成する材料は、金属材料、樹脂材料、繊維(天然繊維及び合成繊維)その他の材料、あるいはこれらを組み合わせたものでもよい。シート状物の具体例としては紙、布、樹脂製のフィルム、金属箔、金属板、木板、樹脂板等が挙げられる。シート状物は一対のシート面を有する。「一対のシート面」はシート状物の外表面のうち、厚さ方向に垂直な一対の面を指す。シート状物が印刷用紙である場合、印刷用紙の印刷面を成す一対の面(表面及び裏面)が一対のシート面に相当する。
【0017】
「シート状物取り扱い装置」は本実施形態の複合機に限定されず、シート状物を搬送する機能を備える装置を広く含む。「シート状物取り扱い装置」の例としては、原稿及び「原稿の複製物を印刷するための印刷用紙」のうち少なくとも一方を搬送する機能を有する事務機器、紙幣を搬送する機能を有する現金自動預け払い装置(Automated Teller Machine;ATM)等が挙げられる。
【0018】
上記事務機器の具体例としては、以下の(a)~(d)等が挙げられる。
(a)原稿自動送り装置(Auto Document Feeder;ADF)を備えるとともに原稿を読み取る機能及び読み取った原稿に係る情報(以下、画像情報という)を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を有するスキャナー。
(b)原稿を読み取る機能、画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能及び他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を有するファクス。
(c)原稿を読み取る機能及び読み取った原稿に係る情報をプリントアウトする機能を備えるコピー機。
(d)上記スキャナー、ファクス及びコピー機としての機能を兼ねる複合機。
【0019】
複合機は、複合機本体、原稿圧着板、及び、変位センサ1を備える。変位センサ1は、搬送経路の中途部に配設されて、搬送経路上を搬送されるシート状物(検知対象物)の厚さを検出する。
複合機本体には、制御装置が配設され、変位センサ1で検出した検出値に基づいて搬送物の重送状態、すなわち、「搬送経路に沿って予め設定された搬送方向に搬送される搬送物」が「一枚のシート状物(本実施形態においては紙7)」であるか、それとも「複数枚(二枚以上)のシート状物が重なったもの」であるか、を判定する。「重送」とは、複数枚のシート状物が重なった状態で搬送されることを指す。
【0020】
複合機の複合機本体は、本体ケース、原稿読み取り装置、印刷装置、紙供給装置、トレイ、搬送経路、表示装置及び入力装置等を備える。
複合機の原稿圧着板は、複合機本体の上面に配置された原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動くことを防止する。原稿圧着板は複合機本体の上方に配置され、ヒンジにより複合機本体に回動可能に連結される。
【0021】
次に、変位センサ1にいて説明する。なお以下の説明及び
図1を除く図面においては便宜上、紙7が搬送される方向(搬送方向)を「後方」と定義することにより「前後方向」を定義し、搬送経路の搬送面(搬送経路に沿って搬送される紙7の一対のシート面に平行となる面)に対して垂直となる方向を「上下方向」と定義し、当該前後方向に対して垂直かつ搬送経路の搬送面に対して平行となる方向(当該前後方向及び当該上下方向に対して垂直となる方向)を「左右方向」と定義し、これら定義された方向を用いて変位センサ1の詳細について説明する。
なお、ここで定義された方向(前後方向、上下方向及び左右方向)は変位センサ1の使用時の姿勢を限定するものではない。すなわち、変位センサ1の使用時の姿勢がここで定義された方向と異なる態様であってもよい。
【0022】
図1から
図5に示すように、変位センサ1は、主な構成要素として、ベース10、測定子20、磁石32、バネ33、及び、磁気センサ60を備える。
【0023】
ベース10は、変位センサ1の主たる構造体を成す部材である。ベース10はベース本体11及びベースカバー12で構成される。ベース本体11は平面視で概ね正方形状に形成され、上面が開口された概ね直方体形状の箱型部材である。ベース本体11は樹脂材料を成形することにより製造される。ベース本体11には収容室11aが形成される。収容室11aはベース本体11の内部に形成される空間である。収容室11aには、測定子20、磁石32、バネ33、及び、磁気センサ60が収容される。
【0024】
ベース本体11の底面には、測定子20を下方に延出させるための開口溝11bが形成される。開口溝11bはベース本体11の底面における左右方向中途部において前後方向に長い長孔として形成され、収容室11aとベース本体11の外部とを連通する。ベース本体11の底面における前側には、上方に突出する二個の支持部11c・11cが左右に並んで形成される。支持部11c・11cはそれぞれ測定子20における左右の回動軸23・23を支持することにより、ベース10に対して測定子20を回動可能としている。
【0025】
ベース本体11の底面後側における開口溝11bの左側方には、上方に突出するストッパ(不図示)が形成される。ストッパは測定子20に形成される回動規制部25と当接することにより、測定子20の回動範囲(具体的には、測定子20の回動範囲における下限位置)を規制している。
【0026】
ベースカバー12は平面視で概ね正方形状に形成される板状部材であり、ベース本体11の上面の開口部を覆う部材である。ベースカバー12は樹脂材料を成形することにより製造される。ベースカバー12は図示しない固定部材(例えば螺子など)により、ベース本体11に固定される。
【0027】
測定子20は、当接部21、本体部22、回動軸23、上部20a、下部20b、及び、弧状部20cを備える。測定子20は、側面視で略扇型に屈曲した環状の部分を有する。測定子20は、後方に延びた棒状の上部20aと、上部20aの前端で一体となり後下方に延びた棒状の下部20bと、上部20a及び下部20bのそれぞれの後端を繋ぐ弧状部20cとで環状に形成されている。測定子20において、下部20bと弧状部20cとの接続部分の下側に形成される曲面部は当接部21を成す。
【0028】
測定子20における上部20aと下部20bとの接続部分は、本体部22と一体的に連結される。本体部22はその中心軸を左右方向に向けて配置された略円筒状の部材である。換言すれば、上部20aと下部20bとの前端部が測定子20の基端部として本体部22に連結され、弧状部20cが測定子20の先端部として後方に延出されている。また、下部20bと弧状部20cとは、その中途部より下側は開口溝11bから延出される。つまり、測定子20の下部はベース本体11の外部に表出しており、当接部21はベース10の下面よりも下側に突出して形成されている。
【0029】
本体部22の左右両側の底面からは、円柱状の回動軸23・23が延出されている。回動軸23・23はベース10に対する測定子20の回動軸を成す部材である。そして、回動軸23・23は前述のように、ベース本体11の底面に配置された支持部11c・11cに支持されている。つまり、測定子20及び本体部22は、回動軸23・23が支持部11c・11cに支持されることにより、
図2中の矢印Sに示すようにベース本体11に対して回動可能に配置される。本実施形態の場合、測定子20がベース本体11に対し回動軸23・23を中心として回動可能に支持されたとき、回動軸23・23の軸線方向(長手方向)は左右方向に平行である。
【0030】
右側の回動軸23の周囲には金属材料からなる巻きバネであるバネ33が介挿される。バネ33の一端部(前端部)はベース本体11の内面に当接する。そして、圧縮されたバネ33によって本体部22は右側面視で時計回りの方向に付勢される。つまり、バネ33の付勢力によって、測定子20は下方に回動する力(右側面視で時計回りに回動する力)を受けている。
【0031】
測定子20における上部20aの後端部には、左側方に突出する回動規制部25が形成されている。回動規制部25は、ベース本体11の底面に配置されたストッパと当接することにより、測定子20の回動範囲が規制される。つまり、測定子20はバネ33の付勢力によって下方に回動する力を受けつつ、回動規制部25がストッパに当接することにより、
図2に示す位置よりも下方には回動しないように構成されている。そして、測定子20が上向きの力を受けた場合は、測定子20はバネ33の付勢力に反して上方に(右側面視で反時計回りに)回動する。また、測定子20に対する上向きの力がなくなると、測定子20はバネ33の付勢力によって下方に(右側面視で時計回りに)回動し、回動規制部25とストッパとが当接する位置(
図1から
図4に示す測定子20の位置)に戻る。
【0032】
磁石32は、永久磁石であり、四角柱状のものを弧状に湾曲して形成される。磁石32は、測定子20の弧状部20c内に配置され、測定子20が回動したときに測定子20の回動とともに回動可能に構成される。磁石32の外径部(後方端面)は、測定子20の弧状部20cの外径部(後方端面)と同様の曲率で湾曲されて構成される。
なお、磁石32は、断面形状が四角形以外の形状(例えば、円形)であっても良いものとする。
【0033】
「永久磁石」は、自発的に(外部から磁場あるいは電流が供給されない状態で)磁化し、周囲に磁場を発生させる(ひいては、磁力を発生させる)性質を有する物体であり、通常は強磁性体からなる。永久磁石の具体例としては、アルニコ磁石、KS鋼、MK鋼、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等、既知の種々の磁石が挙げられる。磁石32はネオジム磁石からなる。磁石32の磁極は、N極であっても良く、またS極であっても良いものとする。磁石32は、異方性のものを用いているが、等方性のものであっても良いものとする。
【0034】
磁気センサ60は、リニアホールICであり、磁石32の磁界(磁界の大きさ・方向)を検知し、磁場の強さに応じた電気信号を出力する。磁気センサ60は、ベース本体11の収容室11a内に配置される。磁気センサ60は、基板61に設けられ、ベース本体11の後面近傍に配置される。磁気センサ60は、測定子20の弧状部20cと対向するように配置される。
磁気センサ60は、直線Aに対しセンサ中心60aを合わせて(交わるように)配置される。直線Aは、平面視で回動軸23の軸線と直交する直線であって磁石32の左右方向中央を通る仮想の線である。
磁気センサ60は、直線Bに対しセンサ中心60aを合わせて(交わるように)配置される。直線Bは、側面視で回動軸23の軸線と直交する仮想の直線である。
磁気センサ60の感磁方向は、直線A及び直線Bと平行方向とされる。
【0035】
次に、重送検知装置100が搬送経路に沿って搬送される紙7を検知するときの動作について説明する。
図1から
図5中の矢印Fに示すように、紙7は搬送経路で前方から後方に向かって搬送される。変位センサ1は、複合機本体において、後方に紙7を搬送する搬送経路の中途部かつ搬送経路に対向する位置(本実施形態における「検知位置」)に配置される。
【0036】
変位センサ1が検知位置に配置された状態では、回動軸23・23の軸線方向(左右方向)は搬送方向(前後方向)に対して垂直である。
変位センサ1が検知位置に配置された状態では、回動軸23・23の軸線方向(左右方向)は搬送経路の搬送面(紙7が搬送経路に沿って搬送されるときに、紙7の一対のシート面のうち下側のシート面が当接する面であり、上下方向に対して垂直な面)に対して平行である。つまり、変位センサ1が検知位置に配置された状態では、回動軸23・23の軸線方向は搬送経路に沿って搬送される紙7の一対のシート面に対して平行である。
【0037】
検知位置に配置された変位センサ1の測定子20は、バネ33により当接部21が搬送経路に接近する方向(右側面視で時計回り)に回動するように付勢される。
変位センサ1が検知位置に配置されて測定子20が回動していない状態における測定子の回動角度(仰角)θ=0°とする。本実施形態では、測定子20の測定最大回転角度θ(右側面視で反時計回り方向への回転角度(上方への最大回転角度))は40°に設定される。測定子20が回動していない状態における測定子20の回動角度から測定最大回転角度まで範囲は、変位センサ1の回動範囲とされ、磁石32の基準角RF1とされる。
磁石32は、測定子20が回動していない状態において、磁石32の一端部(上端部)が磁気センサ60に近接した位置に配置され、磁石32の他端部(下端部)が磁気センサ60から離間した位置に配置される。
【0038】
そして、紙7が後方(矢印Fの方向)に搬送されて、その始端部が測定子20の当接部21の下方に到達する。このとき、当接部21は紙7の上側のシート面に当接し、測定子20はバネ33の付勢力に抗して右側面視で反時計回りに回動する。その結果、測定子20に設けられた磁石32は測定子20とともに上方に回動する。
【0039】
測定子20に設けられた磁石32が上方に移動したとき、磁気センサ60が、磁石32から発生する磁場の変化を検知し、当該検知した磁場に関する情報(電気信号)を制御装置に出力する。
【0040】
その後、紙7がさらに後方に搬送されて、その後端部が測定子20の当接部21の下方から離脱する。このとき、当接部21は紙7の上側のシート面から離れ、測定子20はバネ33の付勢力に順じて右側面視で時計回りに回動する。
【0041】
測定子20に設けられた磁石32が下方に移動したとき、磁気センサ60が、磁石32から発生する磁場の変化を検知し、当該検知した磁場に関する情報(電気信号)を制御装置に出力する。
【0042】
紙7が重送された場合、例えば二枚の紙7・7が重なった状態で搬送された場合も、当接部21は紙7・7の上側のシート面に当接して測定子20が回動する。このとき、測定子20に設けられた磁石32が回動する量は、一枚の紙7が搬送される場合に比べて、紙7・7の重なり分だけ大きくなる。このように、紙7が重送された場合には測定子20に設けられた磁石32が紙7の重なり分だけ大きく上方に移動し、磁気センサ60が、磁石32から発生する磁場の変化を検知し、当該検知した磁場に関する情報(電気信号)を制御装置に出力する。
【0043】
そして、制御装置は、磁気センサ60から出力された磁場に関する情報に基づいて、搬送物が一枚のシート状物であるか、複数枚のシート状物が重なったものであるかを判定する。
また、制御装置は、複数枚のシート状物が重なったものであるか否かの判定結果に基づいて複合機の各部の動作を制御する。例えば、「重送である」と判定した場合、原稿読み取り装置、印刷装置、紙供給装置及び搬送経路の動作を中止し、表示装置に警告を表示する。
【0044】
変位センサ1では、磁石32の外径部の曲率半径と磁石32の外径部から磁気センサ60(センサ中心60a)までの最短距離(ギャップG)との関係が、ほぼ一次関数の関係(少なくとも相関係数0.7以上)で表される。
このように構成することによって、磁気センサ60の出力のリニアリティを最適化することができる(
図6参照)。したがって、変位センサ1による検知誤差が生じることを防止することができる。
【0045】
変位センサ1では、変位センサ1の回動範囲内における測定子20の回動角度(仰角)と磁石32外径部から磁気センサ60(センサ中心60a)までの最短距離(ギャップG)との関係が、ほぼ一次関数の関係(少なくとも相関係数0.7以上)で表される。
このように構成することによって、磁気センサ60の出力のリニアリティを最適化することができる(
図7参照)。したがって、変位センサ1による検知誤差が生じることを防止することができる。
【0046】
変位センサ1では、磁石32の一端部(上端部)は、測定子20が回動していない状態(仰角0°)において、直線B(測定子20の回動軸23の軸線と磁気センサ60のセンサ中心60aとを結ぶ直線)よりも測定子20の一端部側に回動する方向(上方)に延出する。前記磁石32の一端部(上端部)の延出する部分は、例えば、測定子20が回動していない状態における測定子20の回動角度θ=0°に対して磁石32の仰角が5°(RF2)分延出する。
このように構成することによって、測定子20の回動開始角度付近においても磁気センサ60の出力のリニアリティを最適化することができる。
リニアリティとは、最小二乗法で線形近似した直線と実測値との差を割合(%)で示した値であり、当該値が小さいほど線形性が高いことを示す(
図8参照)。
【0047】
変位センサ1では、磁石32の他端部(下端部)は、測定子20の測定最大回転角度θ=40°(基準角RF)において、直線B(測定子20の回動軸23の軸線と磁気センサ60のセンサ中心60aとを結ぶ直線)よりも測定子20の他端部側に回動する方向(下方)に延出する。前記磁石32の他端部(下端部)の延出する部分は、例えば、測定子20の測定最大回転角度θ=40°において磁石32の仰角が5°(RF2)分延出する。
このように構成することによって、測定子20の測定最大回転角度付近においても磁気センサ60の出力のリニアリティを最適化することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 変位センサ
7 紙(シート状物)
10 ベース
11 ベース本体
11a 収容室
11b 開口溝
11c 支持部
12 ベースカバー
20 測定子
20a 上部
20b 下部
20c 弧状部
21 当接部
22 本体部
23 回動軸
25 回動規制部
32 磁石
33 バネ
60 磁気センサ
60a センサ中心
61 基板