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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ペリクル枠体及びペリクル
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/64 20120101AFI20230912BHJP
【FI】
G03F1/64
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019127750
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021012336
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩平
(72)【発明者】
【氏名】柿原 恵一
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-095593(JP,A)
【文献】特開2018-105910(JP,A)
【文献】特開2016-177056(JP,A)
【文献】特開2016-090784(JP,A)
【文献】特開2016-062055(JP,A)
【文献】特開2015-036791(JP,A)
【文献】特開2011-197125(JP,A)
【文献】特開2011-007933(JP,A)
【文献】特開2010-102357(JP,A)
【文献】特開2007-304491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜を張設するためのペリクル枠体であって、
前記ペリクル枠体の少なくとも一部に凹部を有し、
前記凹部は、本体部と、前記本体部から前記ペリクル枠体の幅方向に沿って延在する複数の張り出し部とを有し、
前記ペリクル枠体と前記凹部が、次の関係式:
0.4≦a/H≦0.99
0.35≦b/W<0.5
{式中、Hは、前記ペリクル枠体の高さを表し、Wは、前記ペリクル枠体の最長幅を表し、aは、前記ペリクル枠体の外周面又は内周面における前記凹部の高さ方向の開口長さを表し、かつbは、前記凹部の本体部の幅を表す。}
を満たすペリクル枠体。
【請求項2】
外周側に開口するように凹部が形成されている、請求項1に記載のペリクル枠体。
【請求項3】
前記ペリクル枠体が正面視で方形状であり、かつ
前記ペリクル枠体の少なくとも一辺の外周面において、前記ペリクル枠体の頂点から長さ方向の距離の30%以内の部分に前記凹部が形成されている、請求項1に記載のペリクル枠体。
【請求項4】
前記少なくとも一辺の長さ方向の外周面中間部に、前記凹部が形成されていない部分を有する、請求項3に記載のペリクル枠体。
【請求項5】
前記ペリクル枠体が、正面視で一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であり、かつ
前記一対の長辺の少なくとも一つの外周面において、前記ペリクル枠体の頂点から長さ方向の距離の30%以内の部分に、前記凹部が前記少なくとも一つの外周面の長さ方向の長さの少なくとも5%に亘って形成されている、請求項1に記載のペリクル枠体。
【請求項6】
前記一対の長辺の少なくとも一つの長さ方向の外周面中間部に、前記凹部が形成されていない部分を有する、請求項5に記載のペリクル枠体。
【請求項7】
前記ペリクル枠体が、正面視で一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であり、かつ
長辺長が110mm~180mm、短辺長が100mm~150mm、長辺と短辺の幅が、それぞれ1.8mm~3.0mm、前記ペリクル枠体の高さHが2.0mm~7.0mmである、請求項1~6のいずれか1項に記載のペリクル枠体。
【請求項8】
前記ペリクル枠体の前記内周面が平坦であり、かつ当該内周面には高分子ポリマーが塗布されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のペリクル枠体。
【請求項9】
前記a/Hが0.5以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載のペリクル枠体。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のペリクル枠体と、当該ペリクル枠体に張設されたペリクル膜とを有するペリクル。
【請求項11】
前記ペリクル膜が、フッ素原子を含む樹脂を含む、請求項10に記載のペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル枠体、及びそれとペリクル膜とを備えるペリクルなどに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)、フラットパネルディスプレイを構成する薄膜トランジスタ、カラーフィルタ等の製造工程では、フォトマスク又はレティクル(以下、「フォトマスク等」という)の防塵が必要となる。防塵手段として、ペリクルと称される構造体が広く用いられている。ペリクルを使用する場合には、塵などの異物が、フォトマスクの表面には直接付着せず、ペリクル上に付着するため、リソグラフィー時に焦点をフォトマスク等のパターン上に合わせることによって、ペリクル上の異物は転写に無関係となる。
【0003】
ペリクル構造体は、一般的にはペリクル枠体と高分子膜(以下、「ペリクル膜」という)とによって構成される。ペリクル膜は、例えば、ニトロセルロース、セルロース誘導体、フッ素ポリマー等によって形成された透明な薄膜である。ペリクル構造体は、枠体の一端面にペリクル膜を貼着するとともに、当該ペリクル膜によって枠体の内部を覆うようにして構成される。枠体の他端面には、ペリクル構造体をフォトマスク等に粘着させるための粘着層が設けられる。
【0004】
このようなペリクル構造体は、一般的には、当該ペリクル構造体の製造者から、フォトマスク等の製造者に供給される。フォトマスク等の製造者は、粘着層をフォトマスク等に粘着させることにより、ペリクル構造体をフォトマスク等に対して固定する。
【0005】
近年、露光パターンの微細化に伴って、ペリクルを貼り付けることによるフォトマスクの歪み(PID: Pellicle Induced Distortion)が問題視されるようになってきている。フォトマスクとペリクルフレームがマスク粘着材を介して締結されることで、ペリクルフレームの形状がフォトマスクの形状に影響を与えるため、フォトマスク表面に描画されていたパターンが本来のものから変形してしまうからである。
【0006】
PIDを抑制するために、ペリクル枠体の形状が検討されている(特許文献1,2)。例えば、特許文献1には、ペリクル枠体の端面のうち、一方側にはペリクル膜を設け、他方側には基板との対向領域を設け、一方側の変形と他方側の対向領域の形状とが互いに影響し合うのを防止するようにペリクル枠体を構成することが記述されている。また、特許文献2には、ペリクル枠体の外側に溝を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2008/105531号
【文献】特開2016-62055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、ペリクルを用いるリソグラフィーにおいて、ペリクルをフォトマスク等に粘着させると、PIDがペリクル枠体のコーナー部から発生し易いことが分かった。また、フォトマスク等を介して基板にパターンを形成した後に、フォトマスク等からペリクルを剥離することがある。しかしながら、フォトマスク等からペリクルを剥離する際に、ペリクル枠体が変形し、剥離作業が困難になることがあり、このような現象は、ペリクルとフォトマスク等とを粘着剤を介して合わせたときの粘着剤にも関連するため、ペリクルの高糊残り性とも呼ばれる。したがって、ペリクルの貼り付けによるPIDの抑制と、パターン形成後のペリクルの剥離性とを両立することが求められている。
【0009】
特許文献1及び2に記載のペリクル枠体などの従来のペリクル枠体は、PIDの抑制に着目するものであるため、PIDの抑制とペリクルの剥離性との両立については未だに検討の余地がある。
【0010】
上記のような従来のリソグラフィーの問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、PIDの抑制とペリクルの剥離性とを両立することができるペリクル枠体、及びそれとペリクル膜とを備えるペリクルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、次に例示される本発明の構成によって解決されることができる。
[1]
ペリクル膜を張設するためのペリクル枠体であって、
前記ペリクル枠体の少なくとも一部に凹部を有し、
前記凹部は、本体部と、前記本体部から前記ペリクル枠体の幅方向に沿って延在する複数の張り出し部とを有し、
前記ペリクル枠体と前記凹部が、次の関係式:
0.4≦a/H≦0.99
0.35≦b/W≦0.6
{式中、Hは、前記ペリクル枠体の高さを表し、Wは、前記ペリクル枠体の最長幅を表し、aは、前記ペリクル枠体の外周面又は内周面における前記凹部の高さ方向の開口長さを表し、かつbは、前記凹部の本体部の幅を表す。}
を満たすペリクル枠体。
[2]
外周側に開口するように前記凹部が形成されている、項目1に記載のペリクル枠体。
[3]
前記ペリクル枠体が正面視で方形状であり、かつ
前記ペリクル枠体の少なくとも一辺の外周面において、前記ペリクル枠体の頂点から長さ方向の距離の30%以内の部分に前記凹部が形成されている、項目1に記載のペリクル枠体。
[4]
前記少なくとも一辺の長さ方向の外周面中間部に、前記凹部が形成されていない部分を有する、項目3に記載のペリクル枠体。
[5]
前記ペリクル枠体が、正面視で一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であり、かつ
前記一対の長辺の少なくとも一つの外周面において、前記ペリクル枠体の頂点から長さ方向の距離の30%以内の部分に、前記凹部が前記少なくとも一つの外周面の長さ方向の長さの少なくとも5%に亘って形成されている、項目1に記載のペリクル枠体。
[6]
前記一対の長辺の少なくとも一つの長さ方向の外周面中間部に、前記凹部が形成されていない部分を有する、項目5に記載のペリクル枠体。
[7]
前記ペリクル枠体が、正面視で一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であり、かつ
長辺長が110mm~180mm、短辺長が100mm~150mm、長辺と短辺の幅が、それぞれ1.8mm~3.0mm、前記ペリクル枠体の高さHが2.0mm~7.0mmである、項目1~6のいずれか1項に記載のペリクル枠体。
[8]
前記ペリクル枠体の前記内周面が平坦であり、かつ当該内周面には高分子ポリマーが塗布されている、項目1~7のいずれか1項に記載のペリクル枠体。
[9]
項目1~8のいずれか1項に記載のペリクル枠体と、当該ペリクル枠体に張設されたペリクル膜とを有するペリクル。
[10]
前記ペリクル膜が、フッ素原子を含む樹脂を含む、項目9に記載のペリクル。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リソグラフィーにおいて、PIDの抑制と、ペリクルの剥離性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るペリクル枠体を示す正面図である。
図2図1のA-A断面を示す拡大断面図であり、ペリクル枠体の外周面(a)又は内周面(b)に形成された凹部を示す。
図3図1のA-A断面と対応する凹部の拡大斜視図である。
図4】第2実施形態に係るペリクル枠体を示す正面図である。
図5図4のA-A断面を示す拡大断面図である。
図6図4のB-B断面を示す拡大断面図である。
図7】第3実施形態に係るペリクル枠体を示す正面図である。
図8図7のA-A断面を示す拡大断面図である。
図9図7のB-B断面を示す拡大断面図である。
図10】第4実施形態に係るペリクル枠体を示す正面図である。
図11図10のA-A断面を示す拡大断面図である。
図12図10のB-B断面を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
<第1実施形態>
図1~3を参照しながら、第1実施形態に係るペリクル枠体1の概要について説明する。図1は、ペリクル枠体1を示す正面図である。図2は、図1のA-A断面を示す断面図である。図3は、図1のA-A断面と対応する凹部5の拡大斜視図である。
【0016】
ペリクル枠体1は、枠体内にペリクル膜(図示せず)が張設されることによって、フォトリソグラフィ等においてフォトマスク等の防塵を行うための構造体(以下、ペリクルという)を形成することができる。
【0017】
ペリクル枠体1は、ペリクル膜をペリクル枠体1に張設することができる限り、任意の形態でよく、例えば、枠体の正面視では、方形、多角形、円形、楕円形などの外形を有することができる。方形は、例えば、正方形、長方形などであり、角が直角の場合と角が丸みを帯びている略方形(図1)の場合の両方を含むことができる。多角形は、例えば、三角形、台形、平行四辺形、五角形、六角形などである。
【0018】
ペリクル枠体1及びその開口部のサイズは、フォトマスク等のサイズに応じて定められることができる。ペリクル枠体1が、正面視において一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状である場合には、長辺長が110mm~180mmであり、短辺長が100mm~150mmであり、長辺と短辺の幅が、それぞれ1.8mm~3.0mmであり、かつ/又は枠体の高さ(Z方向の長さ)が2.0mm~7.0mmであることができる。
【0019】
図1に示されるように、ペリクル枠体1は、周辺部を有し、そして周辺部は、単一の辺部材から加工されるか、又は複数の辺部材から構成されてよく、例えば、4つの辺部材から形成されることができる。辺部材は、直線状に延びる棒状の部材であることができる。一対の辺部材は、互いに間隔を空けて平行に配置されることができ、同様に、他の一対の辺部材も互いに間隔を空けて平行に配置されることができる。接触している2つの辺部材は、互いに略直角を成すように端部が接続されており、それにより枠体の外形は正面視で方形を呈する。
【0020】
ペリクル枠体1及びその辺部材は、例えば、アルミニウム;アルミニウム合金(例えば5000系、6000系、7000系等);鉄鋼;ステンレス鋼;マグネシウム合金;セラミックス(例えばSiC、AlN、Al等);セラミックスと金属との複合材料(例えば、Al-SiC、Al-AlN、Al-Al等);PE、PA、PC、PEEK等のエンジニアリングプラスチック;GFRP、CFRP等の繊維複合材料;又はこれらの組み合わせ等の既知の材料で形成されることができる。ペリクル枠体1の被加工部には、ポリマー等の比較的低い剛性の材料を使用することもできる。また、1つの枠体において、異なる材料を部分的に使用してよい。
【0021】
理解を容易にするため、図1に示されるように、ペリクル枠体1の一辺部材が延びる方向をX方向とし、X方向に沿った一辺と直交する別の辺部材が延びる方向をY方向とし、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする座標を用いる。図2以降においても、当該直交座標と対応する座標が示される。
【0022】
図1及び2に示されるように、ペリクル枠体1の外周面O(図2a)又は内周面I(図2b)の少なくとも一部には、凹部5が形成される。図2及び3に示されるように、凹部5は、本体部5aと、本体部5aからペリクル枠体1の幅方向(X又はY方向)に沿って延在する複数の張り出し部5bとを備える。複数の張り出し部5bは、互いに離間しているため、図面上の複数の張り出し部5bの接点は、本体部5aに含まれる。
【0023】
ペリクル枠体1は、凹部5を有することによって、ペリクル膜と共にフォトマスク等に適用されるときにフォトマスク等に与える歪みを低減して、PIDの抑制に寄与することができる。凹部5は、枠体の周辺部に連続的に形成されると、図3に示されるように、外周面Oと内周面Iのいずれに形成される場合にもスリットを構成することができる。図示していないが、スリットは枠体の一辺中で変形してよい。また、枠体の周辺部に複数のスリットが形成されるときには、それらの形状は、同一、又は互いに異なることができる。
【0024】
凹部5は、ペリクル枠体1の全周(図1)に、又はペリクル枠体1の周辺部に部分的に、形成されることができる。凹部5は、PIDの抑制の観点からは外周面Oの全周に亘って形成されることが好ましく、枠体の周辺部に通気口、マウンティング穴等の加工を施す場合には外周面Oに部分的に形成されることが好ましい。また、ペリクルを工程でハンドリングする際に、レーザーなどのセンサーで位置をセンシングする場合などは、内周面に凹みを形成するほうが好ましい。凹部5は、図2及び3に示されるように、本体部5aと、本体部5aからX又はY方向に延在する複数の張り出し部5bとを備え、張り出し部5bの数は2つ以上であることが好ましい。
【0025】
ペリクル枠体1と凹部5は、次の関係式:
0.4≦a/H≦0.99
0.35≦b/W≦0.6
{式中、Hは、ペリクル枠体の高さを表し、Wは、ペリクル枠体の最長幅を表し、aは、ペリクル枠体の外周面又は内周面における凹部の高さ方向の開口長さを表し、かつbは、凹部の本体部の幅を表す。}
を満たす。
【0026】
図1~3を参照すると、Hは、ペリクル枠体1の高さを表し、具体的には、Z方向の枠体の最長の高さであることができる。枠体の正面視において方形状である場合には、Hは、例えば、2.0mm~7.0mm、又は3mm~6mmの範囲内にあることができる。
【0027】
図1~3を参照すると、Wは、ペリクル枠体1の最長幅を表し、具体的には、X又はY方向の枠体の最長幅であることができる。枠体の正面視において方形状である場合には、Wは、例えば、1.8mm~3.0mm、又は1mm~3mmであることができる。
【0028】
図1~3を参照すると、aは、ペリクル枠体1の外周面O又は内周面Iにおける凹部5の高さ方向(Z方向)の開口長さを表し、開口長さが変動する場合には最長の高さとして選択される。開口長さは、例えば、Z方向において、一対の張り出し部5bの間の最長距離として、設定、測定又は算出されることができる。
【0029】
図1~3を参照すると、bは、凹部5の本体部5aの幅を表し、具体的には、X又はY方向における凹部5の本体部5aの幅であり、ペリクル枠体1の最長幅Wから凹部5の張り出し部5bの幅方向(X又はY方向)の長さを除くことにより得られる。bは、凹部5が枠体の外周にある場合(図2a)には、枠体の内周面Iから凹部5の最底部までの幅方向(X又はY方向)の長さであり、凹部5が枠体の内周にある場合(図2b)には、枠体の外周面Oから凹部5の最底部までの幅方向(X又はY方向)の長さである。
【0030】
a/Hは、ペリクル枠体1のZ方向における開口の割合と関連し、PID抑制の観点からは、0.4以上であり、0.5以上又は0.50以上であることが好ましく、枠体の強度とスリット形成性の両立という観点からは、0.99以下であり、0.98以下、0.97以下、0.96以下又は0.9以下であることが好ましい。
【0031】
b/Wは、ペリクル枠体1の最長幅Wに対する凹部5の本体部5aの割合と関連し、フォトマスク等からペリクルを剥離し易くするという観点、ひいては糊残り性を低下させるという観点から、0.35以上であり、0.36以上、0.37以上、0.38以上、0.39以上又は0.4以上であることが好ましく、PID抑制の観点からは、0.6以下であり、0.59以下、0.58以下、0.57以下、0.56以下、0.55以下又は0.5以下であることが好ましい。
【0032】
本発明は、理論に拘束されることを望まないが、a/Hとb/Wの両方を上記で説明された数値範囲内に制御することによって、PIDを抑制可能な枠体及び凹部の形態と、フォトマスク等に適用された後のペリクル剥離性と、糊残り性を低減可能な枠体の粘着剤被塗工部とのバランスを取れる傾向にあることが考えられる。枠体断面が四角形の時に比べ凹部状にすることで、フレームの剛性が低下することで、フォトマスクを歪ませる応力を小さくすることができる。一方でb/Wを小さくしすぎると、フレームの剛性が小さくなりすぎることで、ペリクルを剥離する際にフレームの変形が大きく作業が困難となる。
【0033】
ペリクル枠体1の内周面I又は全面には、必要に応じて、異物を捕捉するための粘着剤(例えば、アクリル系、酢酸ビニル系、シリコーン系、ゴム系粘着剤等)、又はグリース(例えば、シリコーン系、フッ素系グリース等)を塗布してよい。
【0034】
ペリクル枠体の内周面に凹部を形成しない場合には、内周面は平坦であることが好ましく、内周面に粘着剤が塗布されていることがより好ましい。平坦な内周面への粘着剤の塗布は、ペリクルのフォトマスク等への追従性を担保し、PIDを抑制するだけでなく、糊残り性を低減してペリクルの剥離にも寄与する。
【0035】
また、必要に応じて、ペリクル枠体の内部と外部を貫通する微細な穴を開けて、ペリクルとフォトマスク等から形成される空間の内外の気圧差をなくすようにすると、ペリクル膜の膨らみ又は凹みを抑制することができる。この場合、微細な穴の外側に異物除去フィルターを取り付けることが好ましい。異物除去フィルターを取り付けることによって、気圧調整が可能になるだけでなく、ペリクルとフォトマスク等から形成される空間の中への異物の侵入を防ぐことができる。微細な貫通穴と異物除去フィルターの数は、ペリクルとフォトマスク等から形成される空間の容積に応じて増減してよい。
【0036】
さらに、必要に応じて、ペリクル枠体の外周面には、ハンドリングのためにマウンティング穴を設けてよい。マウンティング穴は、冶具穴とも呼ばれ、ペリクル枠体の内部と外部を貫通するものではない。マウンティング穴の数と位置は、ペリクルの用途に応じて決定されることができる。特に大規模集積回路(LSI)の製造プロセスの標準規格に適合するためには、合計4つのマウンティング穴が、枠体を構成する一対の辺部材の外周面に2つずつ形成されることが好ましい。
【0037】
<第2実施形態>
図4~6を参照しながら、第2実施形態に係るペリクル枠体2について説明する。図4は、ペリクル枠体2の正面図である。図5は、図4のA-A断面を示す拡大断面図である。図6は、図4のB-B断面を示す拡大断面図であり、図1のA-A断面に相当する部分を図示する。
【0038】
第2実施形態に係るペリクル枠体2は、第1実施形態と同様に、フォトマスク等の防塵に用いられる。ペリクル枠体2の外形は、枠体の正面視では、方形状であり、例えば、正方形状、長方形状などである。ペリクル枠体2は、枠体の少なくとも一辺中で凹部5の形状が変化する点において第1実施形態とは異なる。ペリクル枠体2の構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものについては同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0039】
図4に示されるように、ペリクル枠体2の同一辺において、長さ又は幅方向(X又はY方向)の少なくとも2つの場所において、形成される複数の凹部5の形状が互いに異なり、それにより、枠体の外周面O又は内周面Iにおいてスリットの形状及び/又は深さを変化させることが可能になる。図4のA-A断面では、凹部5の開口は丸みを帯びている(図5)。これに対して、図4のB-B断面(図6)では、凹部5の形状は第1実施形態と同様である。
【0040】
より詳細には、第2実施形態では、ペリクル枠体2の同一辺において、凹部5の開口長さa及び/又は本体部5aの幅bを変動させることができる。例えば、ペリクル枠体2の一辺において、A-A断面に形成された凹部5(図5)に対して、B-B断面で形成された凹部5(図6)のZ方向の開口長さaが大きく、本体部5aの幅bが小さい。また、図4に示される一辺において、図5の凹部5と図6の凹部5の位置を入れ替えることもできる。また、ペリクル枠体2の正面視での外形が長方形状である場合には、一対の長辺に、計4つのマウンティング穴6を2つずつ形成することができる。
【0041】
<第3実施形態>
図7~9を参照しながら、第3実施形態に係るペリクル枠体3について説明する。図7は、ペリクル枠体3の正面図である。図8は、図7のA-A断面を示す拡大断面図であり、図1のA-A断面に相当する部分を図示する。図9は、図7のB-B断面を示す拡大断面図である。
【0042】
第3実施形態に係るペリクル枠体3は、第1実施形態と同様に、フォトマスク等の防塵に用いられる。ペリクル枠体3の外形は、枠体の正面視では、方形状であることができ、一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であることが好ましい。ペリクル枠体3は、方形状の枠体を構成する複数の辺部材の外周面Oに凹部5が形成されており、かつ少なくとも1つの辺部材については、全外周面に凹部5が形成されているわけではない点において、第1実施形態とは異なる。ペリクル枠体3の構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものについては同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0043】
図7に示されるように、ペリクル枠体3は、その正面視では、一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であり、一対の長辺には、計4つのマウンティング穴6が、2つずつ形成されており、そして枠体の外周面Oに形成される凹部5の形状(すなわちスリットの形状)は、同じでよい(図8及び9)。
【0044】
第3実施形態では、図7に示されるように、長方形状の枠体の正面視において、一対の長辺の外周面Oに沿って、部分的に凹部5を形成したり、凹部5をパターン化したり、マウンティング穴6を避けて凹部5を配置したりすることが可能になり、それによりPID抑制及びペリクル剥離性を両立させ、ひいてはペリクル生産性に寄与することができる。
【0045】
より詳細には、長方形状のペリクル枠体3の正面視において、一対の短辺の外周面O及び枠体の4つのコーナー部近傍の外周面Oに、凹部5から成るスリットが形成される。第3実施形態では、ペリクル剥離性及びそれに伴うペリクルの低糊残り性の観点から、ペリクル枠体3のコーナー部近傍に凹部が形成される。
【0046】
ペリクル枠体3のコーナー部は、ペリクル枠体3の頂点を含んでよく、コーナー部近傍は、ペリクル剥離性及び生産性の観点から、ペリクル枠体3の少なくとも一辺の外周面において、枠体の頂点から一片の長さ方向(X又はY方向)の距離の30%以内の部分であることが好ましい。なお、コーナー部近傍が丸みを帯びている場合には、頂点は、枠体の正面視においてコーナー部外形が接線と交わる点であることができる。
【0047】
ペリクル枠体3の凹部5は、ペリクル剥離性及び生産性の観点から、ペリクル枠体3の少なくとも一辺の外周面Oにおいて、枠体の頂点から一片の長さ方向(X又はY方向)の距離の30%以内の部分に形成されることが好ましい。
【0048】
凹部5から成るスリットの領域と関連して、凹部5は、ペリクル剥離性及び生産性の観点から、枠体の少なくとも一つの外周面Oの長さ方向(X又はY方向)の長さの少なくとも5%に亘って形成されていることが好ましい。
【0049】
ペリクル枠体3の凹部5は、PID抑制とペリクル剥離性と生産性のバランスを取る観点から、枠体の一対の長辺の少なくとも一つの外周面Oにおいて、枠体の頂点から長さ方向の距離の30%以内の部分に、少なくとも一つの外周面Oの長さ方向の長さの少なくとも5%に亘って、形成されていることがより好ましい。
【0050】
ペリクル剥離性及び生産性の観点から、ペリクル枠体3の少なくとも一辺の長さ方向の外周面Oの中間部には、凹部5が形成されていない部分を有することが好ましく、一対の長辺の長さ方向の外周面Oの中間部には凹部5が形成されないことがより好ましい。換言すれば、マウンティング穴6を形成する位置は、ペリクル枠体3の少なくとも一辺の外周面Oにおいて、枠体の頂点から一片の長さ方向(X又はY方向)の距離の30%を超えることが好ましい。このようなペリクル枠体3の構成によって、複数のマウンティング穴6を同一辺中に形成する場合には、その辺において複数のマウンティング穴6の間には凹部5の形成を避けて、枠体剛性の確保、コーナー部への応力集中に対する耐性の確保、PID抑制などが可能になる。
【0051】
<第4実施形態>
図10~12を参照しながら、第4実施形態に係るペリクル枠体4について説明する。図10は、ペリクル枠体4の正面図である。図11は、図10のA-A断面を示す拡大断面図であり、図1のA-A断面に相当する部分を図示する。図12は、図10のB-B断面を示す拡大断面図である。
【0052】
第4実施形態に係るペリクル枠体4は、第1実施形態と同様に、フォトマスク等の防塵に用いられる。ペリクル枠体4の外形は、枠体の正面視では、方形状であることができ、一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であることが好ましい。ペリクル枠体4は、枠体のコーナー部近傍のみに凹部5が形成されている点において、第1実施形態とは異なる。ペリクル枠体4の構成のうち、第1実施形態の構成と同一のものについては同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0053】
図10に示されるように、ペリクル枠体4は、その正面視では、一対の長辺と一対の短辺から成る長方形状であり、一対の長辺には、計4つのマウンティング穴6が、2つずつ形成されており、そして隣接する二辺の外周面に形成される凹部の形状(及びスリットの形状)は、同じでよい(図9及び10)。
【0054】
第4実施形態では、枠体のコーナー部近傍のみに凹部5を形成することによって、ペリクル剥離性及びそれに伴うペリクルの低糊残り性に寄与することが可能になる。また、第4実施形態では、ペリクル枠体4の各辺において、マウンティング穴6の形成予定領域及び複数のマウンティング穴6に挟まれた領域に、凹部5とスリットを形成することを避けて、応力分散及び枠体剛性の確保とPID抑制も可能になる。
【0055】
ペリクル枠体4のコーナー部は、枠体の外形の少なくとも1つの頂点(図示せず)を含むか、又は全ての頂点(図10)を含んでよい。凹部5が形成されるコーナー部近傍は、ペリクル剥離性及び生産性の観点から、ペリクル枠体4の少なくとも一辺の外周面Oにおいて、枠体の頂点から一片の長さ方向(X又はY方向)の距離の30%以内の部分であることが好ましく、ペリクル枠体4の隣接する二辺の外周面Oにおいて、枠体の頂点から各片の長さ方向(X又はY方向)の距離の30%以内の部分であることが好ましい。
【0056】
上記で説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈する意図ではない。各実施形態が備える要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し、又は組み合わせることが可能である。
【0057】
<ペリクル>
ペリクルは、上記で説明された実施形態のいずれかに係るペリクル枠体と、ペリクル膜とを備え、ペリクル枠体にペリクル膜を張設することにより得られる。ペリクルは、フォトマスク等の防塵のために使用されることができる。
【0058】
ペリクルの調製において、ペリクル膜をペリクル枠体の少なくとも一辺に高分子ポリマー、例えば、接着剤により貼着し、ペリクル膜に張力を掛けて、ペリクル膜が枠体の開口部を覆うように展張指示することができる。ペリクル膜とペリクル枠体を接着するための膜接着剤は、ペリクル膜の材質とペリクル枠体の材質によって適宜選択すればよく、例えば、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、フッ素系等の接着剤が使用される。接着剤の硬化方法としては、接着剤の種類に適した方法、例えば、熱硬化、光硬化、嫌気性硬化等が採用される。発塵性、コスト、作業性の観点から、アクリル系の紫外線硬化型接着剤が好ましい。
【0059】
ペリクル枠体のフォトマスク等への適用、貼付には、例えば、ホットメルト系(ゴム系、アクリル系)粘着剤、基材の両面に粘着剤を塗布したテープ系接着部材等を使用してよい。テープ系接着部材は、基材と粘着剤を備え、基材として、例えば、アクリル系、PVC系等のシート、又はゴム系、ポリオレフィン系、ウレタン系等のフォーム等が使用されることができ、粘着剤として、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系等の粘着剤が使用されることができる。
【0060】
粘着剤は、ペリクルの所定の部位に予め配置されることができ、例えば、ペリクル膜で覆われていない枠体露出部分、枠体のうちペリクル膜が接着された面とは反対側の面などに塗布されることができる。また、粘着剤の粘着面をフォトマスク等に貼り付けるまでの間保護するという観点から、シリコーン又はフッ素で離型処理されたポリエステルフィルムで粘着面をカバーしてよい。
【0061】
<ペリクル膜>
ペリクル膜の構成成分としては、特に制限されないが、例えば、次の材料等が挙げられる:
・セルロース誘導体、例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等、又はこれら2種以上の混合物;
・フッ素原子含有樹脂、例えば、テトラフルオロエチレン-ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンの3元コポリマー、主鎖に環状構造を持つポリマーであるデュ・ポン社製のテフロン(登録商標)AF(商品名)、AGC社から入手可能なサイトップ(商品名)、アウジモント社製のアルゴフロン(商品名)等。
【0062】
一般的に使用されている等倍投影露光液晶露光機の光源である超高圧水銀ランプに対する耐光性又はコストの観点から、ペリクル膜の上記構成成分の中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及び、サイトップ又はテフロン(登録商標)AF等のフッ素原子含有樹脂が好ましく、フッ素原子含有樹脂がより好ましい。
【0063】
上記の構成成分は、それぞれに適した溶媒に、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、フッ素系溶媒等に溶解させて、ポリマー溶液として用いることができる。特に、上記のセルロースアセテートプロピオネート又はセルロースアセテートブチレートに対しては、乳酸エチル等のエステル系溶媒が好ましい。また、フッ素系ポリマーに対しては、トリス(パーフルオロブチル)アミン等のフッ素系溶媒が好ましい。ポリマー溶液は、所望により、デプスフィルター、メンブレンフィルター等により濾過される。
【0064】
調製されたポリマー溶液を成膜用基板に塗工し、ペリクル膜主膜を成膜することができる。主膜は、基板から剥離させたり、別の仮枠に移して貼付させたり、基板又は仮枠上に保持したまま加工工程に供したりすることができる。塗工方法としては、例えば、スピンコート、スプレーコート、各種の印刷方法などが挙げられる。所望により、ペリクル膜主膜の片面又は両面に、機能層、例えば反射防止層等を形成してよい。
【0065】
上記で説明されたペリクル枠体とペリクル膜とを備えるペリクルは、ペリクル被貼付体の歪の解消及び事後的なペリクルの剥離が望まれる分野で使用されることができ、中でも、半導体、LSI、フラットパネルディスプレイを構成する薄膜トランジスタ、カラーフィルタ等の製造プロセスにおいてフォトマスク等の防塵のために好適に使用される。
【実施例
【0066】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
[実施例1~6、比較例7~11]
ペリクル枠体の寸法、スリットの有無、及びスリットと対応する凹部の寸法を表1に示されるとおりに調整することによって、実施例1~6及び比較例7~11のそれぞれについてペリクル枠体を形成した。比較例11では、ペリクル枠体の周囲にスリットを設けなかった。
【0068】
表1中の略語の意味は以下のとおりである。
スリット領域Aは、ペリクル枠体の少なくとも一辺の外周面において、ペリクル枠体の頂点から長さ方向の距離の30%を超える部分(いわゆる非コーナー部)を意味する。
スリット領域Bは、ペリクル枠体の少なくとも一辺の外周面において、ペリクル枠体の頂点から長さ方向の距離の30%以内の部分(いわゆるコーナー部)を意味する。
【0069】
なお、実施例1~6及び比較例7~11で形成されたペリクル枠体は、以下の点について共通する。
・ペリクル枠体は、ヤング率70[GPa]のアルミニウム合金(7075)製である。
・ペリクル枠体は、外寸115mm×149mm、外側コーナーR5mm、内側コーナーR3mm、フレーム幅が2mm高さ3mmである。
・ペリクル枠体の1辺の長辺中央部に口径0.5mmの貫通穴(通気口)を開け、各長辺端部にアルマイト処理時の把持および電極用として口径1.6mm、深さ1.3mmの穴を2箇所ずつ計4箇所開けた。
・ペリクル枠体表面をショットブラスト処理した後、黒色アルマイト及び封孔処理した。
【0070】
形成されたペリクル枠体と、ペリクル膜とを使用して、ペリクルを形成した。形成されたペリクルについて、フォトマスクの変形とペリクル剥離性の評価を行なった。
【0071】
<ペリクルの調製>
パーフルオロアルキルエーテル環構造を有するアモルファスフッ素樹脂を膜材として含む溶液であるサイトップ CTX-809SP2(旭硝子(株)製商品名、降伏歪み約5%、引張伸度約175%)をパーフルオロトリブチルアミン(フロリナートFC-43 住友スリーエム(株)製商品名)で希釈調整した。この時、ポリマー溶液中に含まれるパーフルオロアルキルエーテル環構造を有するアモルファスフッ素樹脂の濃度は3質量%であった。作製したポリマー溶液を30cc成膜基板上に滴下した後、スピンコーター上で回転数300rpm、回転時間50秒の条件で回転塗布した。
次いで、成膜基板ごと80℃、180℃のホットプレートで各5分間乾燥し、成膜基板から乾燥された膜を引き剥がすことで、ペリクル膜を得た。
外形が115mm×149mm、幅が2mm、厚さが3mmのアルミニウム合金(7075)を黒色アルマイトおよび封孔処理したペリクルフレームを用意した。このペリクルフレームの一端面に上記ペリクル膜を接着剤を介して接着し、さらに他端面には厚さ0.3mmのアクリル粘着剤を形成し、さらに粘着剤層にシリコーン離型処理した厚さ100μmのポリエステル製保護フィルムを貼りつけることで、ペリクルを作製した。
【0072】
<フォトマスクの変形の評価>
フォトマスクの変形の評価は、Tropel社製のFlatMaster200を用いて測定した。フォトマスク(6025石英)について、ペリクルを貼りつける前の平坦度を測定し、その後にペリクルを貼り付け、ペリクル貼り付け後の平坦度を測定した(測定範囲:135mm×110mm)。貼り付け前後の平坦度の差し引きを行い、ペリクルを貼り付けたことでどれだけ6025石英が変形したかを算出した。
ペリクルの石英への貼り付けは簡易型マウンターで行った(加重:15Kgf、60sec)。
○(可):ペリクルを貼り付けたことによるフォトマスクの変形量が30nmより小さい。
×(不可):ペリクルを貼り付けたことによるフォトマスクの変形量が30nm以上である。
【0073】
<ペリクル剥離性の評価>
6025石英にペリクルを貼り付け、70℃5日間加熱させた。その後ペリクルの長辺に備えている把持穴を把持して、ペリクルの剥離を実施した。
◎(良好):ペリクルフレームの変形が非常に小さく、剥離がスムーズにできる。
〇(可):ペリクルフレームの変形が小さく、比較的剥離がスムーズにできる。
×(不可):ペリクルフレームの変形が大きく、剥離が困難である。
【0074】
実施例1~6及び比較例7~11の結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【符号の説明】
【0076】
1,2,3,4 ペリクル枠体
5 凹部
5a 凹部の本体部
5b 凹部の張り出し部
6 マウンティング穴
O 外周面
I 内周面
H ペリクル枠体の高さ
W ペリクル枠体の最長幅
a 凹部の高さ方向の開口長さ
b 凹部の本体部の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12