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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】遺伝子療法ベクターをテストする方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230912BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230912BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20230912BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230912BHJP
   C12N 15/867 20060101ALN20230912BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/02
C12Q1/686 Z
C12Q1/6837 Z
C12N15/09 Z
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020500656
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 GB2018051937
(87)【国際公開番号】W WO2019012259
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】1711065.1
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502104011
【氏名又は名称】ブルーネル ユニバーシティ ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テーミス,マイケル
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】Nat Biotechnol, 2011 Jan, vol. 29(1), pp. 73-78 (online methods pp. 1-3) (Epub 2010 Dec 12)
【文献】Mol Ther, 2013 Feb, vol. 21, no. 2, pp. 324-337
【文献】ウイルス, 2003, vol. 53, no. 2, pp. 177-183
【文献】Stem Cell Res Ther, 2012, vol. 3(2), article no. 8 (pp. 1-10)
【文献】Gene Ther, 2017, vol. 24(5), pp. 298-307 (Epub 2017 Apr 20)
【文献】Oncotarget, 2017, vol. 8(25), pp. 40791-40803 (Epub 2017 Mar 28)
【文献】Transfus Med Hemother, 2017, vol. 44(3), pp. 135-142 (Epub 2017 May 16)
【文献】ウイルス, 2015, vol. 65, no. 1, pp. 27-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み込み遺伝子療法ベクターの安全性をin vitroで明確にする方法であって、
人工多能性幹細胞の培養物を組み込み遺伝子療法ベクターに複数回感染させることと、
培養開始時において、並びに分化期間中においては少なくとも1回、前記組み込み遺伝子療法ベクターによる感染を受ける人工多能性幹細胞が、分化可能な状態に置かれることと、
各感染後に感染細胞から核酸を抽出することと、
前記ベクターに由来する核酸の組み込みの有害効果を測定及び/又は決定するために前記抽出した核酸を分析することと、
前記核酸を分析することが、遺伝子療法の副次効果に寄与する可能性がある、前記ベクターに担持される因子、又はその組み込みに起因する因子を決定することを含み、
前記決定することが、宿主ゲノム内の前記ベクター挿入部位を決定すること、遺伝子発現の変化を決定すること、新たなRNA転写物若しくはトランケートされたRNA転写物、前記組み込み部位若しくはその近傍における遺伝子に生じたメチル化変化を決定すること、及び/又は遺伝子の不活性化を決定すること
を含む方法。
【請求項2】
前記細胞が、最終的に分化した形態で、前記組み込み遺伝子療法ベクターによる感染を受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養物が、分化期間中のいくつか異なる時点において、前記組み込み遺伝子療法ベクターによる感染を受ける、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
異なる量の前記ベクターが、各感染で使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記感染させるステップが、少なくとも30分間、前記細胞を前記ベクターに曝露することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記感染させるステップが、少なくとも3時間、前記細胞を前記ベクターに曝露することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記感染させるステップが、オーバーナイトで前記細胞を前記ベクターに曝露することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ベクターが、ウイルス又はプラスミドである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ベクターが、レトロウイルスである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ベクターが、レンチウイルスである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ベクターが、アデノ関連ウイルスである、請求項記載の方法。
【請求項12】
前記人工多能性幹細胞が、ヒト又はマウスに由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記人工多能性幹細胞が、遺伝子療法を必要とする個人の細胞に由来する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ベクターが、個人が必要とする修正遺伝子を担持する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ベクターが、前記修正遺伝子の発現に必要とされる核酸要素を担持する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ベクター挿入部位を決定するために、ライゲーションアダプター媒介式のPCR、ターゲットエンリッチメント配列決定、及び/又は逆転写PCRを含む組み込み部位アッセイを実行すること
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記遺伝子発現の変化を決定するために、RNASeqによる遺伝子発現アッセイを実行すること
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記遺伝子発現の変化を決定するために、q-RTPCRによるRNA転写アッセイを実行すること
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記メチル化変化を決定するために、ELISAを用いたCpGメチル化アッセイを実行すること
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか一項に記載の前記アッセイの少なくとも2つが実行される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子療法ベクターの安全性及び/又は有効性を明確にする方法に関する。本発明は、特に、遺伝子療法の安全性、その副次効果、及び長期奏功性の遺伝子発現を特に明確にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子療法は、遺伝子を担持するベクター物質を、修正遺伝子の増強を必要とする細胞の宿主ゲノム内に恒久的に組み込むことにより、治療用遺伝子を送達する有望なアプローチである。このプロセスでは、罹患した宿主内の既存遺伝子が突然変異しており、したがって機能的タンパク質を生成しない遺伝的障害を処置又は修正するために、完全に機能的な遺伝子が使用可能である。遺伝子療法は、細胞を正常に機能させるための、ワクチン接種するための、又は標的腫瘍細胞(複数可)の死を引き起こすことにより、がんを処置するためのタンパク質を提供する遺伝子を送達することができる。核酸を標的宿主ゲノムに組み込む遺伝子療法ベクターとして、アデノ関連(AAV)ウイルス、レトロウイルス(RV)等のウイルス、及びそのサブグループが挙げられる。これらのベクターは、それら自体をオープンクロマチンに挿入することを好む。オープンクロマチンは、遺伝子が転写に必要とされる、開いた又はほどかれたコンフィギュレーション状態にある。発現される遺伝子を代表するこのコンフィギュレーションは、挿入を目的とした遺伝子療法ベクターの進入を可能にする。高度に発現している遺伝子がベクター挿入にとって好ましい標的であることが明らかにされている(Kustikovaら(2009)、Wuら(2003)、Nowrouziら(2013))。組み込みのプロセスは、ウイルスベクターにより担持されている核酸が挿入可能なように、宿主DNAが切断されることを必要とし、次にウイルス核酸が宿主に結合した後に、このプロセスの修復が宿主DNA修復遺伝子により実施される。
【0003】
これまでに、遺伝子療法は、重度の複合型免疫不全症について処置された小児が白血病を発症したという挫折を経験した。これは、がん遺伝子に挿入されるレトロウイルスにより担持される治療用遺伝子と関連し、その発現変化の原因となり、そして組み込まれた遺伝子を担持するがん性細胞のクローン増殖を引き起こすことが判明した。この後、ベクターと関連した寄与因子、並びに細胞のクローン増殖及び発癌を引き起こす、宿主とベクターとの相互作用を識別するために、いくつかのin vitro及びin vivoモデルが設計された。これらの公知の寄与因子として、ベクタープロモーター又はエンハンサーにより媒介された宿主のローカル遺伝子の活性化(挿入部位から約100kbに限定されると考えられている)、ベクター及び宿主遺伝子の間のスプライシングとこれによるその発現においてコントロールされていない可能性があるトランケートされた遺伝子の生成、ベクター内のプロモーターが、ベクター挿入近傍における宿主の遺伝子発現を継続的に駆動するベクターリードスルー、並びに宿主の自然免疫系によるベクターのメチル化及び宿主遺伝子のメチル化が挙げられる。DNAをメチル化することにより、宿主の自然免疫応答は、感染後の侵入外来ベクターの発現をコントロールしてその発現を停止しようとするが、しかしそれそのものの遺伝子のメチル化も引き起こし、これにより細胞恒常性をコントロールする多くの重要な遺伝子について、その宿主内遺伝子発現変化を引き起こす。
【0004】
出願者は、レトロウイルスサブグループ、レンチウイルス(LV)を発現される宿主遺伝子に挿入し、これを用いて胎児マウスが処置されるin vivoモデルをこれまでに開発した。この動物の出生は叶えられたが、これにより発達期間中に発現された遺伝子は、遺伝子療法ベクターの組み込みに曝露される。高度に発現している遺伝子が組み込み用として多くの場合選択され、そしてこのようなマウスは肝臓腫瘍を続いて発症することが判明した。また、出願者は、このLVの挿入は、発達期間中に、また出生後でさえも生じたことも見出した(感染症後の最長5日間測定された)(Nowrouziら(2013))。胎児マウスでは、発達遺伝子は、増殖、成長、及び分化に関与する遺伝子を含み、そしてこれらは高度に発現している。この種の遺伝子はがん遺伝子又はプロトオンコジーンであることも公知であるが、出生後には通常スイッチオフされる。したがって、このような遺伝子へのウイルス遺伝物質の組み込み及びこのような遺伝子の突然変異原性が、この動物におけるがん発症の原因であったのではないかと疑われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遺伝子療法ベクターの安全性及び/又は有効性を明確にする改善した方法の提供について探索する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、遺伝子療法ベクターの安全性及び/又は有効性を明確にする方法であって、人工多能性幹細胞の培養物を遺伝子療法ベクターに感染させることと、感染させた人工多能性幹細胞から核酸を抽出することと、ベクター組み込みの有害効果及び/又はベクターによる遺伝子の発現効率を測定及び/又は決定するために核酸を分析することとを含む、方法が提供される。
【0007】
このモデルは、発現された遺伝子が、増殖、発達、及び分化に関与する発達プロセス期間中の状況を模倣する。この方法は、したがって、がんコントロール遺伝子に関してベクターをテストすることを可能にする。方法は、in vitroで実施され、そして遺伝子療法ベクターをテストする方法における動物の使用に対する代替法を提供する。
【0008】
人工多能性幹細胞は、好ましくは遺伝子療法を必要とする個人の細胞に由来する(Kaneら(2010))。一実施形態では、細胞は、ベクターの副次効果をテストするために、別の個人から提供され得る。ベクターは、個人が必要とする可能性がある、又は可能性のない修正遺伝子を、その発現に必要とされるあらゆる核酸要素と共に担持するのが好ましい。いくつかの実施形態では、ベクターはレポーター遺伝子を、その発現に必要とされるあらゆる核酸要素と共に担持する。
【0009】
好ましい実施形態では、人工多能性幹細胞は、分化可能な状態に置かれ、並びに細胞は、培養開始時において、並びに分化期間中、及び/又は分化後においては少なくとも1回、遺伝子療法ベクターによる感染を受ける。
【0010】
これは、発達又は分化の1つの段階においてのみ発現される遺伝子に限定されることなく、発達期間全体にわたり、多くの発現遺伝子、特に遺伝子療法の安全性にとって重要であるがんと関連する遺伝子にアプローチすることにより、ベクターのテストを可能にする。
【0011】
好ましくは、培養物は、分化期間中のいくつか異なる時点において、遺伝子療法ベクターによる感染を受ける。
【0012】
培養物は、開始時及び最終分化細胞に至る分化期間中のいくつかの異なる時点において、遺伝子療法ベクターによる感染を受け、ベクターの安全性及び/又は有効性をテストするための広範囲の遺伝子標的を提供し得る。これは、ベクターの安全性が多くの遺伝子においてテストされるのを可能にする。たった1つの時点での感染では、その時に発現された数個の遺伝子についてテストできるに過ぎない。
【0013】
いくつかの実施形態では、異なる量のベクターが各感染で使用される。
【0014】
感染させるステップは、少なくとも30分間、細胞をベクターに曝露することを含み得る。例えば、感染させるステップは、少なくとも30分間(例えば、30分間~1時間)、少なくとも3時間(例えば、3~6時間)、又はオーバーナイトで細胞をベクターに曝露することを含み得る。
【0015】
複数の実施形態では、感染させるステップのそれぞれは、サンプルが各時点において安全性について分析可能であるように、分化期間中、分離した複数の時点において、細胞をベクターに曝露することを含む。感染させるステップは、分化プロセス期間中のいくつかの後続する機会において、同一の感染細胞上で感染が繰り返されることを可能にし得る。
【0016】
核酸を分析するステップは、遺伝子療法の副次効果に寄与する可能性がある、ベクターに担持される因子、又はその組み込みに起因する因子を決定することを含み得る。
【0017】
決定することは、宿主ゲノム内のベクター挿入部位を決定すること、挿入されたベクターに由来する核酸を用いて遺伝子の遺伝子発現変化を決定すること、ベクター/宿主遺伝子のスプライシング、又はベクターのプロモーターリードスルーを代表する新たなRNA転写物又はトランケートされたRNA転写物、ベクター由来の核酸の組み込み部位若しくはその近傍における、又は組み込み部位の近傍にない遺伝子に生じたメチル化変化であって、発現の変化を引き起こすメチル化変化を決定すること、及び/或いは遺伝子の不活性化を決定することからなる分析を含み得る。
【0018】
ベクターは、ウイルス又はプラスミドであり得る。例えば、ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス、及び/又は任意の組み込みウイルス(integrating virus)であり得る。ベクターは、非ウイルスであり得る。
【0019】
複数の実施形態では、人工多能性幹細胞は、ヒトに由来し得る。
【0020】
人工多能性幹細胞は、遺伝子療法を必要とする個人の細胞に由来し得る。
【0021】
ベクターは、個人が必要とする修正遺伝子を、任意選択的に修正遺伝子の発現に必要とされる核酸要素と共に担持し得る。
【0022】
方法の好ましい実施形態は、幹細胞の最終分化細胞への分化が生じ、その期間中に発達段階において発現された遺伝子がベクターの組み込み及び突然変異誘発に利用可能であるとき、発達期間中に標的細胞を遺伝子療法ベクターに曝露することと関係する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態が、添付図面を参照しながら、及びそこで例証されるように、以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】成体細胞からiPScへのリプログラミング、及び次の最終分化細胞について、一般的に例証する図である。
図2】iPScから肝臓への分化期間中の複数の遺伝子発現、ベクターの組み込み、及び突然変異誘発の概略図を示す図である。
図3】肝細胞と比較して、iPScにおいて発現が増加している重要な経路に関与する遺伝子を示す図である。
図4】発現に富んだ肝細胞と対比したiPScの遺伝子オントロジーを示す図である。
図5】緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子をそれぞれ担持するLVベクターpHV及びpdEWによる挿入遺伝子のIngenuity経路分析(Ingenuity Pathway Analysis:IPA)を示す図である。
図6】LV及びAAVベクター「標準品」の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本出願者は、iPScを使用して、そのこれまでのin vivoモデルを模倣するin vitro方法を開発した。方法は、幹細胞、分化の過程にある細胞、及びその最終的に分化した形態の細胞を感染用として使用する。これらの各段階において、この期間中に活性であり、遺伝子療法ベクターによる組み込みに利用可能である遺伝子が提供される。ヒト細胞を使用して、この方法は、異なるコンフィギュレーションの多くの遺伝子において、及びヒトにおいてがん易罹患性遺伝子と考えられる遺伝子においても、遺伝子療法ベクターの副次効果の測定を可能にする。方法の好ましい実施形態は、組み込みと関連した遺伝子発現の変化を露見させる一連の分子アッセイを使用する。方法は、遺伝毒性に対して高感度であり、また臨床的検討に入る前に、分化期間においてベクターにより担持される遺伝子の発現に関して、遺伝子療法ベクターの有効性と共に、このようなベクターの安全性をテストするのに有用であると考えられ得る。
【0026】
方法は、ヒトを対象とした遺伝子療法を、但し検査室において模倣する安全性テストを提供し、すなわち、テストは個人に対して非侵襲的である。方法は、ベクターの組み込みによる遺伝子移入の有害な副次効果を識別するために、発達段階において発現される遺伝子をベクター挿入に利用可能となるようにすることができる。
【0027】
方法は、細胞が当初取得された宿主内の有害効果を明確にするために、個人に特化されたアプローチも提供する。このプロセスでは、正常細胞、例えば宿主由来の線維芽細胞等は、iPScに変換され、次に最終分化細胞に分化される。ここに記載される方法により、このプロセス期間中の安全性についてベクターをテストすれば、ベクターコンフィギュレーションテストと宿主の遺伝的背景とが整合し、個人に特化したテストとして、突然変異原性及びおそらくは発癌について、宿主に対して特異的にテストする。一実施形態では、方法は、ベクターの安全性についてテストするために、遺伝子療法が意図された個人以外の個人に由来する細胞から得られたiPSc及びその分化後のカウンターパート上で実施可能である。
【0028】
この方法は、遺伝的障害を有する患者がそれを処置するために来院する前に、ベクターが安全かどうか検査されることを可能にする。方法は、細胞の増殖及びがんを引き起こす遺伝子を見つけるのにも使用され得る。
【0029】
ここに記載される方法は、高度に発現している遺伝子が、遺伝子療法ベクターによる挿入用として、その標的とされるという事実を使用する。方法は、iPScがいくつかの細胞型、例えば肝臓、心臓、神経系、及び血液等に分化するin vitroアプローチを使用する。この期間中、及び選択された分化経路に応じて、各細胞型に発達するのに重要である遺伝子(それはがん遺伝子(ベクターにより担持される核酸の挿入によるその発現について、コントロールされない状態にされた場合)であり得る)は、高度に発現され、遺伝子療法ベクターによる組み込みに用いられる。発達プロセスのあらゆる段階にある細胞集団が存在するので、これはex vivo又はin vivoでの遺伝子療法を模倣し、したがってこのin vitro方法は、各発達段階にある細胞、すなわちその発達の初期段階にある細胞、最終分化の途中にある細胞、又は遺伝子療法ベクターによる組み込みが容易な遺伝子を発現する最終的に分化した細胞を代表する。
【0030】
この方法は、宿主ゲノムへの挿入部位が、毎回異なる可能性があり、またベクター上に担持される遺伝子の遺伝子発現の奏功に対して影響を有し得る場合に、ベクター性能についてその検査を可能にする。
【0031】
ここに記載される方法は、iPSc、及び最終分化細胞に至る分化ステップ、及びこのプロセス期間中のいくつかの段階において感染を受けることとなる、最終分化後に増殖させたこれらの細胞を使用する。一般的に、異なる量のベクターが各感染期間中に使用され得る。ベクターにより担持される核酸は、発現される又は発現されない遺伝子又はゲノムDNAの領域と一体化する。DNAが、遺伝子又はゲノムDNAの領域が転写されるときに一般的であるオープンクロマチン構造を採るときに、DNAが高度に発現している場合には、ベクターはより多くの遺伝子又はゲノムDNAの領域を標的とする。感染手順は、より多くの感染細胞又はより多くの数のベクター組み込み体を含む細胞を提供するために、感染効率を高める又は改善する薬剤を使用する場合もあれば、使用しない場合もある。感染は、短期間、一般的に30分~1時間、又は1日若しくはそれ超のより長期間、ベクターに曝露することと関係し得る。選択された曝露期間の後、ベクターは洗い流され、そして細胞には増殖させるための培地が提供される、又は細胞は標準プロトコール若しくは市販キットを使用してそのDNA若しくはRNAを単離するために採取される。
【0032】
本方法は、ベクターを挿入する際に、すべての段階において感染を行うために、iPSc及び最終分化細胞に至る途中のその派生物(ここでは、例として肝細胞が使用される)を使用する。これはベクターに曝露されるすべての遺伝子の固有の長所をもたらし、そうすることで、ベクターにより影響を受ける遺伝子の遺伝子発現変化、したがってベクターによって引き起こされた、遺伝子療法の副次効果に寄与する可能性のある変化を測定するのに、これらの細胞のサンプルが使用可能となる。これら因子に対するアッセイは、以下のうちの1つ又は複数等のように、容易に利用可能である。
(I)ライゲーションアダプター媒介式のPCRによる組み込み部位分析、ターゲットエンリッチメント配列決定、及び感染細胞又はクローン化された感染細胞のプール上での逆PCR。
(II)遺伝子上のベクタープロモーター又はエンハンサー活性の影響を明らかにするために、感染細胞と非感染細胞におけるRNA転写物のレベル、したがって感染後に生じた遺伝子発現変化を測定する、感染細胞又はクローン化された感染細胞のプール上でのRNASeq。RNASeqは、ベクターと宿主遺伝子の間の新規RNAスプライシング転写物、並びにベクター内のベクタープロモーターから外側に向かって宿主遺伝子に至るリードスルーに起因する転写物の存在に関する情報も提供する。
(III)ベクター組み込み部位が既知である遺伝子用として、当該遺伝子の発現の変化を特異的に測定するために設計されたプライマーを用いたq-RTPCR。この方法は、この細胞のクローン細胞集団/ISの単離を必要とする。
(IV)これまでに公表された研究に基づき、メチル化された遺伝子が発現変化し得るというエビデンスを提供する、ベクター及び宿主DNAのCpGメチル化を測定するためのELISA又はその他の手段によるDNAのメチル化。
【0033】
これらのルーチンアッセイの場合、サンプル細胞集団は、アッセイ用として、感染後の任意の時期、例えば分化プロセスの開始及び終了の間に採取可能である。
【0034】
この分化モデルは、ヒトにおける発達プロセスと良く一致し、そしてこのプロセスをコントロールする遺伝子、又は組み込み用として容易に入手可能なその他の遺伝子を提供する。この方法は、疾患を処置するために、クリニックにおいてベクターの使用について検討する前に、ベクターが宿主に対して効果を有さないこと又は有害効果を有すること、及び有用であることについて検査可能にすることにより、ベクター組み込みの安全性についてテストするプラットフォームを提供する。システムは分化に至るいくつかの細胞経路においてテスト可能であり、また有害な副次効果を引き起こすことが可能、又は不可能としてベクターを特徴づける、これらの細胞型を対象としたバイオインフォマティクスを使用するシステムアプローチを提供する。
【0035】
図1は、成体細胞からiPScへのリプログラミング、次の最終分化細胞について、一般的に例証する。成体細胞、例えば線維芽細胞14等は、生検12により、個人ドナー/患者10から取得可能であり、そして転写因子プログラミング遺伝子16、例えばOct4、Sox2、c-Myc、及びKlf4等、並びに多能性の誘発18を使用してiPScに変換される。得られたiPSc20は胚性幹細胞に類似しており、次に最終分化細胞24、例えば肝細胞等に分化22することができる。このプロセス期間中に、細胞は、遺伝子療法ベクターによる感染26を受け得る。これらの細胞では、このプロセスをコントロールするいくつかの遺伝子が活発に転写され、そしてオープンクロマチン構造を採るので、これらの遺伝子は、組み込み用のウイルス侵入にとってきわめて好ましい。これは、ベクターが複数の遺伝子にアクセスすることを可能にし、そして突然変異誘発に利用することを可能にする。多くの遺伝子標的が利用可能であるので、これは、例えば、ベクター挿入部位、及びこのような挿入部位を有する、又は有さない遺伝子の発現変化を識別する上記分子的方法のうちの1つ又は複数を使用して、遺伝子療法ベクターコンフィギュレーションの効果、したがってベクターの安全性をテストするための高感度モデルを提供する。これは、分化プロセス全体を通じて、遺伝子移入の有効性、及びベクターによる遺伝子発現の寿命についてもテストする。
【0036】
遺伝子療法の方法では、修正された細胞は、次に個人10に移植28して戻される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、個人に移植して戻される代わりに、修正された細胞が、ベクターの安全性を明確にするために分析される。特に、細胞由来の核酸が、ベクターに由来する核酸の組み込みの有害効果、及び/又はベクターに由来する核酸の発現効率を測定及び/又は決定するために分析される。
【0038】
図2は、iPScから肝臓への分化期間中の複数の遺伝子発現、ベクターの組み込み、及び突然変異誘発の概略図である。同図は、細胞がiPScから肝細胞に分化可能であることを示す。同図は、iPScから肝細胞への分化期間中に、宿主遺伝子中又はその近傍で実施されたベクターの組み込みを示す。この期間中、多くの遺伝子が活発に発現され、そしてこの状態では、遺伝子療法ベクターの組み込みが容易となる。がんと関連する遺伝子は、発達期間中にスイッチのオン/オフが生じ、そして異なるレベルで発現される。高度に発現している遺伝子は、ベクターによる挿入がより容易となる。これは、突然変異誘発を引き起こす可能性がある。このシナリオは、in vivo遺伝子療法を模倣する。発達期間中、この広範囲にわたる遺伝子が、がんと関連することが公知である。そのような遺伝子は高度に発現しているので、それを組み込みに利用することができる。これは、ベクターの挿入後、これらの遺伝子は、挿入部位の遺伝子の発現に対するベクターの効果についてテスト可能であることを意味し、したがってこの方法は、いくつかの異なる遺伝子型内のベクターの安全性を、その固有のコンフィギュレーションにおいてより徹底してテストする。
【0039】
遺伝子療法ベクターに曝露された場合に、突然変異誘発が生じやすい複数の遺伝子(がん細胞又は正常細胞の挙動をコントロールする上で重要)が一度に高度に発現している、in vitro方法(in vivoでの胎児マウスモデルにおいて実証されたような)が、これまでに存在しなかった。ここに記載されるin vitroモデルはin vivoでのヒトへの遺伝子送達を模倣するが、その場合、多くの細胞が、ベクター投与後の組み込みにより中断されるおそれのあるいくつかの発達段階にある。幹細胞が最終分化細胞に変換される間、幹細胞を感染させることにより、この期間中に発現されるすべての遺伝子が、ベクターの組み込み、したがって突然変異誘発において利用可能となる。多くの発達遺伝子が、出生後に通常スイッチオフとなるがん関連遺伝子であることが公知であるので、このことは、分化期間中の感染シナリオを、in vivoでの遺伝子療法を代表するものとし、そのシナリオでは、組み込みが初期及び後期の発達細胞型の中に生じる可能性がある。次に、記載したように、これは、突然変異誘発が生じやすい遺伝子、したがって遺伝子療法ベクターのコンフィギュレーションがベクターの有害効果及び発癌と関連することが公知である寄与効果を引き起こす可能性があるか確認するテストを提供する。
【実施例
【0040】
[実施例1]
肝細胞への分化期間中のiPScの感染
方法
下記の実施例は、多能性幹細胞の肝細胞への分化について、Szkolnickaら(2014)により記載されるプロトコールを使用する。この方法は、この分化期間中に遺伝子療法ベクターによる感染を実施するために、ここでは使用される。
【0041】
一般的に:
1.無菌の30mlユニバーサルチューブ中で、ノックアウトDMEM(KO-DMEM;Life technologies、カタログ番号10829)を用いて作製された10mlのマトリゲルBD(マトリゲル(BD Bioscience、マトリゲル、カタログ番号354230)で、細胞培養物プレートをコーティングする。6ウェルプレートの各ウェルにおいて1mlの混合物を取得するのに、1mlのマトリゲルを含む18mlのKO-DMEMを使用する。
【0042】
2.6ウェルプレートを、ヒト組み換えビトロネクチン(カタログA14700;Life technologies)でコーティングする。一定分量(60ml)のビトロネクチンを、6mlの、カルシウム及びマグネシウムを含まない無菌DPBS(カタログ14190)を含有する15mlコニカルチューブに、室温でピペット分取し、1mlの希釈したビトロネクチン溶液を各ウェルに添加し、そして使用前にプレートを室温で1時間放置する。
【0043】
3.次に、ラミニン521/111ミックス(L111)を使用して、ラミン(コーティングの説明については、Biolaminaのウェブサイトを参照)でプレートをコーティングする。ラミニン521(100μg/ml)及びラミニン111(100μg/ml)(Biolamina(スウェーデン))。濃度5μg/cm2のラミニン111ミックス(1:2又は1:3の比の521及び111からなるブレンド品)を使用する。ラミニン希釈では、カルシウム及びマグネシウムを含有するPBSを使用する。播種後、プレートを37℃において2時間インキュベートする。
【0044】
4.iPScは、1ウェル当たり2mlのEssential8培地(E8;Life technologies)内、ビトロネクチンプレート上で維持可能である。培地は、毎日アスピレートし、そして1ウェル毎に2~3mlの新鮮な培地に交換しなければならない。細胞の継代は、1:3の比で、EDTA(1:1000希釈;Life technologies)を使用して3~4日毎に行う。
【0045】
5.細胞は、様々な密度において感染可能であり、例えばベクターに応じて、感染を増強するための薬剤、例えばポリブレン等(通常5μg/ml vol)を用いて、又は用いないで、1ウェル毎に遺伝子療法ベクター(増殖培地の組成を有意に変化させないように濃縮される)1~10,000個のMOIにおいて感染可能である。感染は3~6時間生ずるのが一般的であり、その後、ベクターは除去され、そして新鮮な培地内に置き換えられる。24時間の発現時間後、細胞は、Gentle Cell Dissociation Reagent(Stem Cell Technologies、カタログ番号07174)及びスクレーパーを使用して各ウェルから除去可能であり、またDNA及びRNAは市販キットを使用して細胞から精製可能である。理想的には、DNAについて1つのウェルを使用し、そしてRNAを単離するのに別のウェルを使用する。この試料は、この方法の終了時に、記載されるような分子アッセイに付される。
【0046】
6.細胞を分化させるには、細胞がおよそ70%~80%の集密度に達したら、培地をiPScからアスピレートする。細胞をPBSで洗浄し、そして1mlのGentle Cell Dissociation Reagentを用いて、細胞が解離を開始するまで、37℃においておよそ6~8分間処理する。
【0047】
7.細胞懸濁物を、等しい容積(1ml)のDMEM/F12を含有する15ml無菌チューブに移し、1000rpm、室温で5分間遠心分離し、そして上清をアスピレートした後、ROCK阻害剤(Y-27632)を含有する1mlのE8中で細胞の再懸濁を行い、最終濃度を10μMとする。
【0048】
8.細胞は、血球計算機を用いてカウントし、そして肝細胞分化実験用として、E8中での密度が1cm2当たり105個の生存細胞となるまで希釈すべきである。細胞懸濁物を、E8含有ウェルに添加し、そして37℃においてインキュベートし、そしてROCK阻害剤(Y-27632)(ROCK阻害剤;Stem Cell Technologies、カタログ番号07171)を、約30秒間、穏やかに添加して細胞をウェル内に分布させる。細胞を37℃及び5%のCO2において24時間維持して、細胞が好適な所与のマトリックス(マトリゲル/ビトロネクチン/ラミニンミックス)に付着可能にすべきである。
【0049】
9.ヒト多能性幹細胞分化
プロトコールは、iPScを、約90%の細胞がアルブミンを発現し、及びチトクロームP450活性を示す肝細胞に効率的に分化させる方法について記載する。集密度が80%である6ウェルプレートのうちの1つのウェルは、約3×106個の生存細胞を通常含有する。
【0050】
分化の0、1、及び2日目-胚体内胚葉
細胞を単一細胞懸濁物に分離する(上記のように)。細胞をカウントし、1cm2当たり105個の生存細胞で播種する。細胞は、播種後24時間で通常分化するが、均等に分布させるべきである。初期の細胞分化における細胞密度は、20%~30%(位相差顕微鏡検査により決定される)であるべきである。
【0051】
必要とされる容積の、組み換えマウスwnt3a(50ng/ml)を含むRPMI/B27補充物を調製する(R&D Systems、カタログ番号1324-WN-500/CF;レシピーを参照)。2ml/ウェルを使用し、そして使用前に培地が室温に達していることを確実にする。使用済みのE8培地をhiPSCからアスピレートする。0日目に、RPMI/B27培地(wnt3a及びAAを含まない)を用いて穏やかに細胞を洗浄した後、wnt3a及びAAが補充された新鮮なRPMI/B27培地を添加する。注記:高頻度の細胞死に起因して、2日目及び3日目に、細胞を、RPMI/B27培地(wnt3a及びAAを含まない)で洗浄する必要があり得る。さもなければ、wnt3a及びAAが補充された新鮮なRPMI/B27培地に交換する前に、細胞を洗浄する必要はない。0、1、及び2日目に、使用済みの培地を取り除き、そして適切な容積のRPMI/B27/wnt3a/AAを添加する。この時点で、上記のように遺伝子療法ベクターを添加することができ、そして本方法のステップ5に記載するように試料を採取する。
【0052】
分化の3、4、及び6日目-肝芽細胞
4ml/ウェルのSR/DMSO培地を調製する(下記の「試薬及び溶液」を参照)。
【0053】
3、4、及び6日目にRPMI/B27培地を細胞からアスピレートし、SR/DMSO培地を添加する。4及び6日目において、除去を必要とする顕著な死細胞が認められる(この場合、細胞を、SR/DMSOを用いて穏やかに洗浄すべきである)のでなければ、培地交換前に細胞を洗浄する必要がないといえる。この時点において、上記のように、遺伝子療法ベクターが毎日添加され、そして本方法のステップ5に記載するように試料が採取され得る。
【0054】
分化の8、10、12、14、16、及び18日目-肝細胞規格
10ng/mlのHGF及び20ng/mlのOSMが補充されたHZM培地(4ml/ウェル)を調製し(下記の「試薬及び溶液」を参照)、そして使用前に培地が室温になっていることを確実にする。培地を細胞からアスピレートして取り除き、そして8日目に、補充物を含まないHZMを用いて細胞を洗浄する。HGF及びOSMが補充されたHZM培地を48時間毎に18日目まで添加する。細胞は、ルーチンアッセイにより又はキットを使用して、肝臓マーカーについて検査可能である。この時点において、上記のように、遺伝子療法ベクターが毎日添加され、そして本方法のステップ5に記載するように試料が採取され得る。
【0055】
材料
6ウェルマトリゲルコーティングプレートRPMI/B27分化培地中のヒトiPSc(hiPSc)(レシピー;「試薬及び溶液」セクションを参照)
SR/DMSO分化培地(レシピー;「試薬及び溶液」セクションを参照)
HepatoZYME(HZM)分化培地(レシピー;「試薬及び溶液」セクションを参照)
組み換えマウスwnt3a(R&D Systems、カタログ番号1324-WN-500/CF;レシピーを参照)
ヒト肝細胞増殖因子(HGF;Peprotech、カタログ番号100-39;レシピー「試薬及び溶液」セクションを参照)
ヒトオンコスタチンM(OSM;Peprotech、カタログ番号300-10(下記の「試薬及び溶液」を参照)
【0056】
試薬及び溶液
試薬及び機器の選択された供給業者
多能性幹細胞用の維持培地
E8及び補充物(Life technologies、カタログ番号A1517001)
ROCK阻害剤Y-27632(ROCK阻害剤;Stem Cell Technologies、カタログ番号07171)、Y-27632は、滅菌水中、5mMのストック濃度で調製し、一定分量化し、及び使用までフリーザー中で保管すべきである。
RPMI1640/B27分化培地、RPMI1640(Life technologies、カタログ番号21875)1°-最終濃度のB27補充物(50°-B27補充ストックから;Life technologies、カタログ番号17504)
1%-ペニシリン/ストレプトマイシン(ペン/ストレプ;Life technologies、カタログ番号15140;100°-濃縮ストックから添加する)
最終濃度50ng/mlの組み換えマウスwnt3a(R&D Systems、カタログ番号1324-WN-500/CF;0.2%のBSAを含むPBS中で10μg/mlに調製されたwnt3aストックから)
最終濃度100ng/mlのヒトアクチビンA(AA;Peprotech、カタログ番号120-14E;0.2%のBSAを含むPBS中で100μg/mlに調製されたAAストックから)
SR/DMSO分化培地
ノックアウトDMEM(KO-DMEM;Life technologies、カタログ番号10829)
ノックアウトSerum Replacement(KO-SR;Life technologies、カタログ番号10828)
ノックアウトSerum Replacementが、全培地の20%であることを確認する(KOSerum:KO-DMEMが1:5の比)
0.5%-GlutaMAX(Life technologies、カタログ番号35050;100°-濃縮ストックから添加する)、1%非必須アミノ酸(NEAA;Life technologies、カタログ番号11140;-濃縮ストックから)
最終濃度0.1mMの2-メルカプトエタノール(50mMのストックから;Life technologies、カタログ番号31350)
1%(v/v)DMSO(Sigma-Aldrich、カタログ番号D5879)
1%-ペニシリン/ストレプトマイシン(ペン/ストレプ;Life technologies、カタログ番号15140;100°-濃縮ストックから添加する)
HepatoZYME分化培地
HepatoZYME培地(HZM;Life technologies、カタログ番号17705)
1%-GlutaMAX(Life technologies、カタログ番号35050;100%-濃縮ストックから添加する)
最終濃度10μMのヒドロコルチゾン21-ヘミスクシネートナトリウム塩(HC;Sigma-Aldrich、カタログ番号H4881;PBS中で1mMに調製されたHCストックから)
1%-ペニシリン/ストレプトマイシン(ペン/ストレプ;Life technologies、カタログ番号15140;100%-濃縮ストックから添加する)
最終濃度10ng/mlのヒト肝細胞増殖因子(HGF;Peprotech、カタログ番号100-39;0.2%のBSAを含むPBS中で10μg/mlに調製されたHGFストックから)
最終濃度20ng/mlのヒトオンコスタチンM(OSM;Peprotech、カタログ番号300-10;0.2%のBSAを含むPBS中で20μg/mlに調製されたOSMストックから)
【0057】
RPMI/B27、SR/DMSO培地、及びストック因子は、使用する前に濾過されなければならない。HepatoZYME(HZM)は濾過を必要としない。増殖因子の濃縮ストック溶液は、適切な細胞培養培地中で、最終作業濃度まで希釈された。
【0058】
感染細胞は、次にベクター毒性を決定する1つ又は複数のアッセイに付すことができる。このアッセイは、ベクターが組み込まれた部位(遺伝子又は遺伝子の近傍)、遺伝子若しくはその近傍への挿入により、ベクターが遺伝子の遺伝子発現に及ぼす効果、ベクターが宿主ゲノム核酸とスプライシングして新規の遺伝子転写物を生成するか若しくはしないか、ベクターのリードスルーが近傍遺伝子の発現に変化を引き起こすか、及び/又は感染/組み込みが、DNAの損傷若しくは細胞恒常性の遺伝子発現変化を引き起こす後成的変化の原因となるか、決定することを含み得る。感染細胞は、突然変異誘発細胞又はがん性若しくは前がん性の細胞を示唆する、優勢に活動するクローンの増殖についてモニタリングされ得る。
【0059】
[実施例2]
ベクター挿入部位、融合転写物、及びリードスルーの識別
実施例2は、ベクター挿入部位がどのように識別され得るか、その方法を示す。遺伝子又はその近傍へのベクターの組み込みが、挿入部位近傍の隣接する核酸、したがって組み込まれた核酸の遺伝子座を、どのようにベクターから識別可能にするか、その方法について記載する。要するに、方法は、挿入部位に隣接するDNAを増幅するために、PCR増幅及び富化を使用する。このDNAは、次に単離、クローン化、及び配列決定される。ヒトゲノムと対比したこの配列のBLASTは、次にベクターの位置の識別を可能にする。これが、がんと関連した重要な遺伝子である場合には、この遺伝子は、遺伝子が、ベクターによる突然変異誘発、例えばこの遺伝子のスプライシング、リードスルー、又は遺伝子の不活性化等による突然変異誘発に利用可能であり得ることのいくつかのエビデンスを提供する。したがって、がんに関係する重要な遺伝子内への挿入は、潜在的遺伝毒性を示唆する。ベクターの位置はそのコンフィギュレーションによっても影響を受け、したがってベクターが異なれば、突然変異誘発の可能性も異なる(Scholzら(2017))。本方法の好ましい実施形態は、このプロセスが生ずるように非常に多くの遺伝子を曝露し、したがって遺伝子療法ベクターの有害効果をテストするのにより高感度である。
【0060】
方法
ベクター-ゲノムDNA接合部の増幅
ゲノムDNAを、感染細胞から抽出し、そしてLVベクターに対するLAM-PCR:線形増幅を、これまでの記載に従い実施した(Themisら(2005)及びSchmidtら(2002))。100ngのゲノムDNA及び2.5UのTaqポリメラーゼを使用すると共に、5’LTRに見出された配列からなる2つの下記ビオチン化プライマーを最終容積50μlで使用して、ベクターに隣接したゲノムDNAのLAM-PCRも実施した。サイクルパラメーターは、95℃で5分間の変性(単一サイクル)、その後95℃で60秒間保持、60℃で45秒間のアニーリング、及び72℃で90秒間の伸長反応について50サイクル、及び72℃で10分間保持からなる。2.5Uの追加のTaqポリメラーゼを添加し、そしてPCRを更に50サイクル稼働させた。PCR産物を、Dynabeads kilobase binder kit(Dynal、Oslo、ノルウェイ)を使用して捕捉し、そして第2のDNA鎖を、ランダムなヘキサヌクレオチド(Invitrogen、Paisley、英国)(20μlの反応混合物)と共に、Klenow(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して、37℃で1時間合成した。規則的切断酵素、例えばTsp509I等を用いて二本鎖DNAを消化し、リンカーオリゴヌクレオチドを添加し、その後Fast Link DNA Ligaseキット(Epicentre techniques、Madison、Wisconsin)を用いて、室温で15分間ライゲーションした。DNAを、0.1mol/lのNaOHを用いて変性した後、プライマーを用いた線形増幅と同一の条件を使用するPCRを2ラウンド実施した。PCR産物を3%アガロースゲル上で分離し、そしてDNA断片を、Quiex IIゲル抽出キット(Qiagen、Crawley、英国)を使用して単離し、そして製造業者の指示3に従って、TOPO TAプラスミドクローニングキット(Invitrogen)にクローン化した。第2ラウンドPCRにおいて認められた断片に対応するDNA断片を含有する細菌コロニーについて、LV特異的ネスト化プライマーを使用して配列決定した。LAM PCR及び非制限的PCR技術によりクローン化され、100~300ngのサンプルゲノムDNAを使用して取得されたEIAV及びHIV挿入部位について、ディープパラレルパイロシークエンシング(GS FLX/454:Roche、Mannheim、ドイツ)により配列決定し、次にこれまでの記載に従い、Blas2Seq及びSmith-Watermanアルゴリズムで処理した(Montiniら(2006))。配列を、UCSC BLATゲノムブラウザー(http://genome.ucsc.edu)、又はBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/seq/MmBlast.html)を使用して、マウスゲノムにアライメントした。
【0061】
RefSeq遺伝子近傍又はその中(100kbのウィンドウ内)に組み込んだときに、その組み込みそれぞれの生物学的プロセスにおける分子機能及び役割を、遺伝子オントロジーデータベース(Gene Ontology database)を使用して決定し、そして腫瘍形成に関与する候補遺伝子となり得るものとして識別した。
【0062】
ランダム化データセットの生成
挿入部位が染色体にランダムに割り振られたか評価するために、ランダム化を100回実施して、1染色体当たりのベクター挿入について100のランダム化カウントが得られた。1染色体当たりの実測カウントが1である部位と100カウントのランダム化された集団の間でt検定(95%信頼度)を実施した。同様に、CG含有量及び遺伝子密度統計学の場合、ランダム化データを、ゲノム全体を対象に生成した。遺伝子内の転写開始部位及びいくつかの領域からのベクター挿入距離の性質を決定するために、実測データとランダムな場所に割り振られた部位から生成されたデータの間において、遺伝子内で100回t検定を実施した。
【0063】
Ingenuity経路分析(IPA)による生物学的ネットワークの分析
ネットワーク分析を、差次的に発現されているものとして上記記載の、初期分析から生成された遺伝子のリスト上で実施した。IPA(Ingenuity Systems、Redwood City、CA)は、遺伝子対象物(例えば、遺伝子、mRNA、及びタンパク質)間の個別に精選された関連性のデータを包含するが、これを、有意に大きな比率を占め、重要な生物学的ネットワーク及び経路を形成している生物学的プロセスを識別するために使用した。特定の経路内の最低3つの遺伝子において、その相対的過剰出現に基づくフィッシャー直接検定のP値を使用して、遺伝子のランダムサンプルと比較しながら、生物学的過剰出現の統計的有意性を決定した(<0.05のP値カットオフ)。Benjamini Hochberg補正後の、P<10~20又はそれ未満に対応するスコアを使用して、きわめて重要な生物学的ネットワークを選択した。
【0064】
遺伝子発現分析
遺伝子発現分析は、市販されているいくつかの方法により実施可能である。調査の対象とされる細胞から細胞RNAを最初に単離することにより、これらのRNAは逆転写酵素を使用してcDNAに変換可能であり、次にこのcDNAの存在量を測定するために、cDNAに対してすでに調製済みのプローブを使用しながらマイクロアレイに付される。RNASeqは、やはり市販されている方法であり、RNA転写物を直接配列決定し、そして調査の対象とされる細胞中のその相対的存在量を測定する。この方法は、遺伝子療法ベクターに感染した細胞内の遺伝子発現レベルの変化を、未感染細胞と比較して決定するのに有用である。iPSC細胞を肝細胞様の細胞と比較し、カットオフとして両者間でp値有意の2倍の上方制御を使用したときに、これらの細胞の発達期間の間のこれら遺伝子におけるその遺伝子発現の差異に基づき、iPSC細胞において遺伝子が上方制御されている、という分析結果が図3及び図4に示されている。
【0065】
この分析データは、Affymetrix GenChip Human Genome HG-U133 plus 2.0チップを使用して取得され、及びGodoyら(2016)の表2(差次的に発現している遺伝子セットに関する情報を提供する)から取得されたマイクロアレイデータから取得した。データを図3及び図4に示す。
【0066】
下記の表1及び表2は、図3及び図4に示すデータに対する手がかりを提供する。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
図3及び図4は、iPScから肝細胞への分化期間中に、多くの遺伝子が活性であること(肝細胞期に限らず、むしろそれよりも)を示す。両図は、iPSc及び肝細胞の間に認められる遺伝子発現の差異は、組み込みに関する有用な標的とみなされ、したがってベクターの効果をテストするのに利用可能であることを示す。
【0070】
これらのデータは、iPScと肝細胞(Hhe)の比較を示す(p値有意で2倍上方制御)。細胞経路、例えば細胞の増殖、成長、及びがん等にとって重要ないくつかの遺伝子が、Hep期と比較してiPSc期においてより多く富化している。ベクターの副次効果についてテストするために、好ましくは、両期において感染を実施すべきである。
【0071】
図3は、https://toppgene.cchmc.org/enrichement.jsp(富化遺伝子リストを分析することによって、重要な経路における遺伝子の関与を明確にすることを可能にする)を使用したバイオインフォマティクスを示す。これらの遺伝子は、iPScと肝細胞を比較し、その間で発現が増加していることが判明した遺伝子であり、また感染後のベクター挿入に関する標的とみなされる。
【0072】
図4は、図3に示す遺伝子の遺伝子オントロジーを示す。細胞プロセス、例えば細胞の増殖、成長、及びがん等にとって重要ないくつかの遺伝子が、肝細胞期と比較してiPSc期において高度により多く発現している。ベクターの副次効果についてテストするために、好ましくは、両期において感染を実施すべきである。
【0073】
遺伝子、サブ経路、及びネットワークの経路分析を実施し、分子相互作用を予測し、並びに遺伝子発現データに基づき、重要な生物学的プロセスが増加又は減少することを予測するために、Ingenuity経路分析(IPA)(www.ingenuity.com/products/ipa/toxicogenomics)を使用して遺伝子を分析することも可能である。図5は、GFPレポーター遺伝子をそれぞれ担持するLVベクターpHV及びpdEWによる挿入遺伝子のIPAを示す。いくつかの毒性学的経路及びプロセスに関与する遺伝子は、複数の挿入を有する。このような遺伝子の遺伝子オントロジーは、iPSc期及び肝細胞(Hep)期の両期における感染が、ベクターをこれらの遺伝子に挿入する上で重要であること、並びに両期(iPScにより当てはまる)において感染した後に挿入を有する遺伝子が、がんプロセスにおいて重要であることを示す。図5もやはり、ベクターが異なれば、標的とされる組み込み用の遺伝子も異なることを示す。これらの結果はiPSc及び肝細胞から取得されたが、同じ方法論が任意の種類の感染細胞上で実施可能である。
【0074】
スプライシング、リードスルー、成長、及びその他の方法と関係する更なるアッセイが、当業者にとって公知であり、また代替的に/付加的に実施され得る。そのような方法は、発癌を引き起こすおそれのある、細胞ゲノムに生じたあらゆる変化を実証する。
【0075】
融合転写物及びリードスルー
NrLAM-PCRが、ベクター/宿主融合転写物、及びリードスルー転写物、並びに組み込み部位を分析するのに使用可能である。(nr)LAM-PCR、454配列決定及びバイオインフォマティクスデータ分析は、Schmidtら(2007)、Paruzynskiら(2010)、及びArensら(2012)により記載されている.
【0076】
これらのプロトコールに対する修正が、Scholzら(2017)により記載されている。このデータは、発癌を引き起こすことが一般的に認められている遺伝毒性寄与因子としての、ベクターIS、ベクター/宿主のスプライシング、及びリードスルー転写物の識別について記載する。分析では、遺伝毒性を引き起こし、また引き起こさないことが明らかにされているベクター「標準品」が使用される。このLV及びAAVベクター「標準品」の例を図6に示す。これらのLV「標準品」LVは、Scholzら(2017)により、及びBokhovenら(2009)により記載されている。
【0077】
図6に示すLV及びAAV標準品の例は、遺伝毒性の可能性に関して「安全」又は「非安全」とみなされる。PHR及びPdEWベクターは、自己非活性化(SIN)コンフィギュレーションである。これは、LTRプロモーター活性は消滅しており、したがって組み込み後、IS遺伝子はその発現において変化し得ないことを意味する。pHVベクターは、完全なLTRコンフィギュレーションを有し、そしてIS遺伝子に対して遺伝子発現増加を引き起こすことができる。「安全」AAVベクターは、「非安全」ベクターにおいて黒く示したプロモーター領域を有さない。この領域は、マウスにおいて肝細胞癌と関わっていることが判明しているプロモーターを含有する(Chandlerら(2016))。
【0078】
遺伝毒性について「標準品」として使用されることを可能にするコンフィギュレーションを有するLV及びAAVベクターが、ここに記載されるモデルにとって有用である。このようなベクターは、組み込み後のそのIS選択、宿主ゲノムとのスプライシング、及びリードスルーについて、調査の対象とされるベクターとアライメントするのに使用される。これらの因子は、遺伝毒性の可能性の指標として使用される。安全なベクターは、遺伝子発現を活性化も、また不活性化もすることなく、宿主ともスプライシングせず、そしてリードスルーを示さないことが好ましい。これらのパラメーターを測定すれば、遺伝毒性の可能性が示唆されるが、但しヒトにおける遺伝毒性をその生涯にわたり予測することができる絶対的且つ正確な保証とはならない。
【0079】
当業者は、好ましい実施形態の上記説明に対して修正を加えることができるものと認識する。
【0080】
記載されている実施形態のあらゆる任意選択的で好ましい特性、及び修正、並びに従属項は、本明細書において教示される本発明のあらゆる態様において使用可能である。更に、従属項の個々の特性、並びに記載されている実施形態のあらゆる任意選択的で好ましい特性、及び修正は、互いに組み合わせ可能、及び交換可能である。
【0081】
本出願は英国特許出願第1711065.1号に起因して優先権を主張するが、同号における開示、及び添付の要約書における開示は、本明細書において参考として組み込まれている。
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図1
図2
図3
図4
図5
図6