(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0631 20230101AFI20230912BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230912BHJP
【FI】
G06Q10/0631
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2021057956
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000232140
【氏名又は名称】NECフィールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】中島 慎介
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106923(JP,A)
【文献】特開2012-247821(JP,A)
【文献】特開2005-056194(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0073699(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、
前記作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する第1判定部と、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業スケジュールの管理者に対して前記作業スケジュールの変更が必要であることを示す情報を出力する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記スケジュール記憶部によって記憶される複数の作業者の作業スケジュールから、前記作業者の作業スケジュールを代行可能な代行作業者を検索する検索部を更に有し、
前記出力部は、前記作業スケジュールの管理者に対して、前記代行作業者に関する情報を出力する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記検索部によって前記代行作業者が検索されなかった場合に、前記管理者に対して、訪問先への遅延連絡が必要であることを示す情報を出力する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できると判定された場合に、前記作業者に対して心身異常の解消を優先すべきことを示す情報を出力する、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
訪問先で作業を行う作業者の心身を監視してバイタル情報を取得する端末と、
訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、前記端末からバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する第1判定部と、前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する第2判定部と、前記作業スケジュール、前記第1判定部による判断結果、及び、前記第2判定部による判断結果に基づいて、支援情報を出力する出力部と、を備える情報処理装置と、
を含む情報処理システム。
【請求項7】
訪問先で作業を行う作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定するステップと、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定するステップと、
前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力するステップと、
を、コンピュータに実行させる情報処理方法。
【請求項8】
訪問先で作業を行う作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する処理と、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する処理と、
前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。特に、訪問先で作業を行う作業者の心身状態に応じた支援を行う情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
精密機器は、専門の技術を有する保守作業者が設置場所に訪問して保守作業を行うことが一般的である。ここで、一人の保守作業者に一日当たり数件の作業タスクを割り当てた作業スケジュールが作成されることが多い。この作業スケジュールは、訪問先への移動中や保守作業中のトラブルを想定した時間的余裕をもったものである。しかしながら、想定以上のトラブルが発生して作業タスクが予定通りに消化できない場合もある。その場合に、保守作業者の焦りに起因して、更なるトラブルが生じる可能性がある。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、作業者の心身情報に基づいて作業量を制御するシステムが開示されている。また、特許文献2には、作業者の位置情報に基づいて遅延を報知するシステムが開示されている。また、特許文献3には、作業時間及び移動ルートに基づいて作業スケジュールを記憶するシステムが開示されている。また、特許文献4には、作業予定時間に基づいて作業者を選定する機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-140688号公報
【文献】特開2012-247821号公報
【文献】特開2013-025771号公報
【文献】特開2017-076331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は、本発明の観点からなされたものである。なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【0006】
上記特許文献1~4に開示の技術では、作業者の心身状態に応じた柔軟な支援を行うことができないという問題点がある。すなわち、特許文献1、3の技術は作業スケジュールを作成する時点では有用であるものの、訪問先への移動中や保守作業中のトラブルに起因する保守作業者の心身状態の変化には対応できない。また、特許文献2、4の技術はスケジュール管理(特に遅延管理)という点では有用であるものの、訪問先への移動中や保守作業中のトラブルに起因する保守作業者の心身状態の変化には対応できない。つまり、特許文献1~4に開示の技術は、作業者の焦りなど心身状態の変化に起因するトラブルの解決策にはならない。
【0007】
そこで、本発明では、作業者の心身状態に応じた支援を行うことに貢献する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点によれば、
訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、
前記作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する第1判定部と、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力する出力部と、
を備える情報処理装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の視点によれば、
訪問先で作業を行う作業者の心身を監視してバイタル情報を取得する端末と、
訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、前記端末からバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する第1判定部と、前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する第2判定部と、前記作業スケジュール、前記第1判定部による判断結果、及び、前記第2判定部による判断結果に基づいて、支援情報を出力する出力部と、を備える情報処理装置と、
を含む情報処理システムが提供される。
【0010】
本発明の第3の視点によれば、
訪問先で作業を行う作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定するステップと、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定するステップと、
前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力するステップと、
を、コンピュータに実行させる情報処理方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の視点によれば、
訪問先で作業を行う作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する処理と、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する処理と、
前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の各視点によれば、保守作業者の心身状態に応じた支援を行うことに貢献する情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態の概要を説明するための図である。
【
図2】第1の実施形態の情報処理システムに関連する情報処理装置100及び端末200のブロック図である。
【
図3】スケジュール記憶部110に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図4】バイタル記憶部111に記憶される情報の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態の情報処理装置100における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態の情報処理システムに関連する情報処理装置100及び端末200のブロック図である。
【
図7】第2の実施形態の情報処理装置100における全体的な処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のとり得る好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。さらに、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インターフェイスも同様である。
【0015】
先ず、本発明の一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。
【0016】
図1に示すように、情報処理装置100は、スケジュール記憶部110と、第1判定部120と、第2判定部130と、出力部140とを有する。
【0017】
スケジュール記憶部110は、訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶する。第1判定部120は、作業者のバイタルデータを取得して、作業者の心身に異常があるか否かを判定する。第2判定部130は、作業者の位置情報から作業者が訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、作業者が前記作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できるか否かを判定する。出力部140は、作業者に対して作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力する。具体的には、出力部140は、第1判定部120によって作業者の心身に異常があると判定され、かつ、第2判定部130によって作業者が作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できないと判定された場合に、上記の情報を出力する。
【0018】
すなわち、本発明の情報処理装置100は、作業スケジュールを予定通りに遂行できず、作業者に焦りなどの心身異常が生じている状況、併せてその程度を検知し、遂行不可能な作業タスクについては予定変更が行われる旨の情報を作業者に対して出力する。それによって、作業者は、現在遂行中の作業を落ち着いて完遂することができ、結果として更なるトラブルが生じる可能性が軽減される。
【0019】
[実施形態1]
以下では、本発明に関する具体的な一例として実施形態1について説明する。実施形態1では、
図2に示すように、情報処理装置100と、作業者が携帯する端末200とを含む情報処理システムについて説明する。
【0020】
情報処理装置100は、スケジュール記憶部110、バイタル記憶部111、第1判定部120と、第2判定部130と、出力部140とを有する。なお、情報処理装置100の各構成要素は内部バスなどによって接続される。
【0021】
スケジュール記憶部110は、上記概要と同様に、訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶する。一例を挙げると、スケジュール記憶部110には、
図3に示すように、作業者の識別情報(作業者ID:Identification)と、その作業者の作業タスクに関する一日(mm/dd:月/日)のタイムテーブルとを対応付けた作業スケジュールを記憶する。
【0022】
バイタル記憶部111は、作業者毎のバイタル情報を記憶する。具体的には、
図4に示すように、作業者IDに対応付けて、バイタル情報としてその作業者の脈拍数(心拍数)などを記憶する。なお、本願では、用語「バイタル」及び「心身」は互換的に用いられる場合があり、例えば、「心身異常」は、「バイタル異常」とも称され得る。また、バイタル情報は、脈拍数(心拍数)に限られず、通常のバイタルセンサを用いて取得される情報(例えば、発汗量、体温)なども含み、特に本発明では、作業者の心身異常(体調不良、焦燥感、眠気、発作)を推定可能な基礎情報が挙げられる。バイタル記憶部111に記憶される情報は、端末200から送信され、第1判定部120によって入力、更新されるが、入力、更新の主体や頻度などは、本発明を限定する要素ではない。
【0023】
なお、スケジュール記憶部110及びバイタル記憶部111は、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)、キャッシュメモリなどを含むが、スケジュール記憶部110、バイタル記憶部111の構成は本発明を限定する要素ではない。
【0024】
第1判定部120は、上記概要と同様に、作業者のバイタルデータを取得して、作業者の心身に異常があるか否かを判定する。具体的には、第1判定部120は、端末200から作業者のバイタルデータを取得してバイタル記憶部111に格納する。また、第1判定部120は、バイタル記憶部111に記憶された情報に基づいて作業者の心身に異常があるか否かを判定する。ここで、心身異常に関する判定は、一般的な判定方法を用いることができる。例えば、第1判定部120は、端末200から取得した脈拍数が閾値以上であれば作業者の心身に異常があると判定する。特に、作業者が作業スケジュールを遂行可能か否かが心身異常の判定要素(閾値など)になり得、作業者の基礎疾患などを考慮しても良い。なお、人間のストレス状態の把握や病気の診断については、国際公開第2019/186955号などを参照して適用することができる(当該文献の内容は引用によって本願に組み込まれる)。
【0025】
第2判定部130は、上記概要と同様に、作業者の位置情報から作業者が訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、作業者が作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できるか否かを判定する。
【0026】
具体的には、第2判定部130は、端末200から作業者の位置情報を取得し、作業者が訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出する。ここで、「訪問先」とは、
図3に示した作業スケジュールを用いて説明すると、例えば、ID001の作業者に関して、作業者の位置情報を取得した時刻が9:00である場合には「(最初の)訪問先=A社」である。また、ID001の作業者に関して、作業者の位置情報を取得した時刻が11:00であり、作業者がA社において作業中であったとしても、「(次の)訪問先=B社」である。また、移動時間は、作業者の移動手段(公共交通機関、自動車、徒歩)などを考慮して算出される。なお、作業者の位置情報(つまり現在の位置)と移動先の位置情報とから移動時間を算出する方法は一般的であり、本発明では任意の方法を採用することができる。
【0027】
そして、第2判定部130は、作業者が作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できるか否かを判定する。
図3に示した作業スケジュールを用いて具体的な一例を挙げると、13:30の時点でID001の作業者がA社に滞在しており、かつ、A社からB社への移動に30分を上回る時間を要する場合には、作業スケジュールどおりにB社へ到着できないと判断される。
【0028】
出力部140は、第1判定部120及び第2判定部130による判定結果に基づいて、作業者に対して支援情報を出力する。ここで、第1判定部120及び第2判定部130による判定結果は、以下のようにパターン分けされる。
【0029】
パターン1の場合に、出力部140は、作業者に対して作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力するとともに、作業スケジュールの管理者に対して作業スケジュールの変更が必要であることを示す情報を出力する。
【0030】
すなわち、パターン1は、作業者に時間的余裕が無く、如何なる努力をしても作業スケジュールの遂行が不可能であり、かつ、作業者に焦燥感が生じていることが考えられるパターンである。このパターンを放置した場合には、作業者が焦燥感によって作業中のミスを犯す可能性や作業者が移動中に事故を起こす可能性が増大する。そのため、出力部140は、作業者に対して作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力することで、時間的余裕が確保される旨を通達し、現在の作業・移動を安全かつ確実に遂行するように促す。その結果、作業者は、リラックス、安心することができ、焦燥感などの心身異常が緩和、解消された状態で作業、移動に専念することができる。同時に、出力部140は、作業スケジュールの管理者に対して作業スケジュールの変更が必要であることを示す情報を出力することで、訪問先への遅延連絡や代行作業者の確保などを促す。また、出力部140は、作業スケジュールの管理者に対して作業者に心身異常が生じていることを示す情報を出力して、作業者に対するケア(配慮)を促しても良い。
【0031】
パターン2は、作業者に時間的余裕があるものの、焦燥感が生じていることが考えられるパターンである。このパターンを放置した場合も、作業者が焦燥感によって作業中のミスを犯す可能性や作業者が移動中に事故を起こす可能性が増大する。そのため、出力部140は、作業者に対して心身異常の解消を優先すべきことを示す情報を出力する。言い換えると、出力部140は、作業者に対して、時間的余裕が有り、現在の作業・移動を遂行する上で焦る必要が無い旨を通達する。なお、パターン2において、出力部140が作業スケジュールの管理者に対して作業者に心身異常が生じていることを示す情報を出力しても良い。この情報を見た作業スケジュールの管理者は、作業者の心身異常を解消するための支援を行うことができる。例えば、作業者に焦燥感が生じていると考えられる場合には、作業スケジュールの管理者は作業者とコミュニケーションをとることでその焦燥感の原因を解消する支援を行うことができる。例えば、作業が思い通りに進行しないことが原因で作業者に焦燥感が生じていると考えられる場合には、作業に関する支援を行うことで焦燥感の原因を解消することができる。特に、作業者が作業スケジュールの管理者と作業映像を共有できる機器(例えば、スマートグラスなど)を装着している場合には、作業スケジュールの管理者との共同作業を行うことができる。
【0032】
パターン3は、作業者に時間的余裕が無く、如何なる努力をしても作業スケジュールの遂行が不可能であるが、作業者に焦燥感が生じていないと考えられるパターンである。言い換えると作業者が作業スケジュールの遂行を諦めている、作業遅延に対して居直っている、又は作業者が作業スケジュールの確認を怠っていると考えらえるパターンである。このパターンでも、出力部140が作業スケジュールの管理者に対して作業スケジュールの変更が必要であることを示す情報を出力することで、訪問先への遅延連絡や代行作業者の確保などを促す。一方で、出力部140がパターン1のように作業者に対して作業スケジュールが変更されることを示す情報をそのまま出力すると、その情報によって作業者に焦燥感が生じる可能性がある。そのため、出力部140は、婉曲的な表現で作業スケジュールの変更を作業者に対して通達する(例えば、スケジュールの再確認を依頼する)、あるいは、作業者に対して何ら通達しない。
【0033】
パターン4は、作業者に時間的余裕が有り、かつ、作業者に焦燥感が生じていないと考えられるパターンである。言い換えると、作業スケジュールが順調に遂行できているパターンである。このパターンでは、出力部140は作業者及び作業スケジュールの管理者に対して情報を出力しない。あるいは、出力部140は作業者及び作業スケジュールの管理者に対して、作業が順調である旨の情報を出力しても良い。
【0034】
端末200は、
図2に示すように、バイタル監視部210と、位置情報取得部220と、通信部230とを有する。
【0035】
バイタル監視部210は、作業者の脈拍数(心拍数)、発汗量、体温などを計測するセンサを有し、通信部230を介して情報処理装置100に対してバイタルデータの計測結果を送信する。位置情報取得部220は、作業者の位置情報を取得し、通信部230を介して情報処理装置100に対して位置情報を送信する。通信部230は無線通信機能を有し、情報処理装置100と通信を行う。なお、端末200は、スマートフォンとして構成することもできるし、専用の端末として構成することもできる。
【0036】
以下では、第1の実施形態の情報処理装置100における全体的な処理の流れについて、
図5を参照しつつ説明する。
【0037】
情報処理装置100は、端末200から作業者のバイタルデータ及び位置情報を取得する(ステップS01)。続いて、情報処理装置100は、作業者の心身に異常があるか否かを判定し(ステップS02)、作業者が作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できるか否かを判定する(ステップS03)。そして、情報処理装置100は、上記のように判定パターンに応じた情報を出力する(ステップS04)。
【0038】
以上のように、第1の実施形態の情報処理システムによれば、訪問先で作業を行う作業者の心身状態に応じた支援を行うことができる。
【0039】
特に、作業者に心身異常が生じており、かつ、作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できないと判断される場合(パターン1)には、情報処理装置100が出力する情報によって、作業者はリラックス、安心することができる。その結果、作業者は、焦燥感などの心身異常が緩和、解消された状態で作業、移動に専念することができ、更なるトラブルが生じる可能性が低減される。
【0040】
また、作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できると判断される場合(パターン2、4)には、情報処理装置100が出力する情報によって、作業者はリラックス、安心することができる。その結果、更なるトラブルが生じる可能性が低減される。
【0041】
また、作業者に心身異常が生じていないが、作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できないと判断される場合(パターン3)であっても、情報処理装置100が出力する情報に起因して作業者に心身異常(焦燥感)が生じることはない。その結果、更なるトラブルが生じる可能性が低減される。
【0042】
(変形例)
以下では、第1の実施形態の変形例について説明する。
【0043】
図3に示すスケジュール記憶部110に記憶される情報は一例に過ぎず、例えば、到着時刻、作業開始時刻、出発時刻などの予定時刻データや、顧客名、住所、連絡先などの訪問先データによって作業スケジュールを構成しても良い。
【0044】
図4に示すバイタル記憶部111に記憶される情報も一例に過ぎず、例えば、発汗量、体温などの作業者の心身異常を推定可能な情報を含んでも良い。
【0045】
第1の実施形態では、作業者の心身異常に関して焦燥感を例に挙げて説明したが、体調不良、眠気、発作などにも適応可能である。例えば、突発的な体調不良、眠気、発作が作業者に生じた場合であっても(パターン1、2)、情報処理装置100が出力する情報によって、作業者はリラックス、安心することができる。
【0046】
第1の実施形態において、心身異常に関する判定は一般的な判定方法を用いることができる。具体的な一例を挙げると、上記の特許文献1には作業者のストレスや疲労度を測定する方法が開示されており、第1の実施形態に応用することができる。
【0047】
また、心身異常にランク付けを行い、そのランクに応じて情報処理装置100が出力する情報を変更しても良い。例えば、てんかん発作やナルコレプシーなどのリスクが高い心身異常が作業者に生じた場合には、バイタル情報が安定したとしても自動車の運転などは避けるべきである。その場合に、情報処理装置100は、作業スケジュールの管理者に対して、検出された症状に関する情報とともに、作業者が作業スケジュールを遂行することは不可能である旨の情報を出力しても良い。一方で、焦燥感や眠気などは、バイタル情報の安定によって(つまり、焦り、眠気が解消されれば)、トラブルが生じる可能性が大幅に軽減される。その場合に、情報処理装置100は、作業スケジュールの管理者に対して、検出された症状に関する情報とともに、作業者が小休憩をはさめば少々の遅延で作業スケジュールを遂行できる旨の情報を出力しても良い。
【0048】
第1の実施形態では、作業者の位置情報を端末200から取得する場合について説明したが、一例に過ぎず、例えば、作業者が移動手段として使用する自動車などから作業者の位置情報を取得しても良い。言い換えると、端末200の位置情報取得部220及び通信部230は、バイタル監視部210とは別の装置として構成することもできる。
【0049】
端末200が作業者のバイタルデータを監視するタイミング、及び情報処理装置100に対してバイタルデータ及び位置情報を送信するタイミングは任意であり得る。例えば、端末200が作業者のバイタルデータを常時監視して、逐次データの変化を情報処理装置100に対して送信しても良い。また、端末200が所定のタイミングで(例えば、30分毎)監視及びデータ送信を行っても良い。なお、端末200がバイタルデータ及び位置情報を同一のタイミングで送信して互いに紐づけることが好ましいが、別タイミングで送信し、情報処理装置100によって受信時刻が近いデータを紐づけるようにしても良い。
【0050】
情報処理装置100による作業者における心身異常の判定及び訪問先への到着可否の判定は任意のタイミングで行うことができる。例えば、端末200からバイタルデータ及び位置情報を受信した際に情報処理装置100が判定を行うようにしても良い。また、訪問先への到着予定時刻から出発時刻のタイムリミットを算出し、そのタイムリミットから例えば30分前に判定を行うようにしても良い。
【0051】
情報処理装置100から作業者及び作業スケジュールの管理者に対して出力される情報の出力形態は任意でありえる。例えば、作業者に対しては、端末200のモニタに情報を表示出力するようにしても良いし、スピーカなどを介して音声出力してもよい。なお、本発明では、作業者に焦燥感などをもたらさない出力形態が好ましい。また、作業スケジュールの管理者に対しては、所定のディスプレイに出力表示しても良いし、アラートなどの音声出力を行っても良い。
【0052】
[実施形態2]
上述の実施形態1では、パターン1、3において、出力部140が作業スケジュールの管理者に対して作業スケジュールの変更が必要であることを示す情報を出力することで、訪問先への遅延連絡や代行作業者の確保などを促す場合を説明した。ここで、実施形態2の情報処理装置100は、作業者の作業スケジュールを代行可能な代行作業者を検索して出力することで、作業スケジュールの管理者による代行作業者の確保を容易にする。
【0053】
具体的には、実施形態2の情報処理装置100は、
図6に示すように検索部150を更に備える。検索部150は、スケジュール記憶部110によって記憶される複数の作業者の作業スケジュールから、作業者の作業スケジュールを代行可能な代行作業者を検索する。
【0054】
図3に示した作業スケジュールを用いて具体的な一例を挙げると、13:30の時点でID001の作業者がA社に滞在しており、かつ、A社からB社への移動に30分を上回る時間を要する場合には、作業スケジュールどおりにB社へ到着できないと判断される。ここで、検索部150は、ID001の作業者の作業スケジュールを代行可能な代行作業者をスケジュール記憶部110から検索する。
図3に示すように、ID003の作業者の作業スケジュールは14:00の時点に作業タスクが組み込まれておらず、空いている状態である。ここで、検索部150は、ID001の作業者の位置情報と同様にしてID003の作業者の位置情報を取得する。そして、検索部150は、ID003の作業者が14:00までにB社に到着可能であれば、ID003の作業者を代行作業者として検索する。
【0055】
出力部140は、作業スケジュールの管理者に対して、代行作業者に関する情報を出力する。具体的には、出力部140は、パターン1、3において、作業スケジュールの管理者に対して作業スケジュールの変更が必要であることを示す情報を出力するとともに、検索部150によって検索されたID003の作業者に関する情報を出力する。ここで、検索部150によって代行作業者が検索されなかった場合には、出力部140は、代行作業者が確保できず、訪問先への遅延連絡が必要であることを示す情報を作業スケジュールの管理者に対して出力しても良い。
【0056】
以下では、第2の実施形態の情報処理装置100における全体的な処理の流れについて、
図7を参照しつつ説明する。
【0057】
情報処理装置100は、端末200から作業者のバイタルデータ及び位置情報を取得する(ステップS101)。続いて、情報処理装置100は、作業者の心身に異常があるか否かを判定し(ステップS102)、作業者が作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できるか否かを判定する(ステップS103)。
【0058】
ここで、情報処理装置100は、作業者が作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できないと判断する場合には(ステップS103、No)、代行作業者を検索する(ステップS104)。そして、情報処理装置100は、検索した代行作業者の情報とともに上記のように判定パターン(パターン1、3)に応じた情報を出力する(ステップS105)。
【0059】
一方で、情報処理装置100は、作業者が作業スケジュールどおりに訪問先へ到着できると判断する場合には(ステップS103、Yes)、上記のように判定パターン(パターン2、4)に応じた情報を出力する(ステップS105)。
【0060】
以上のように、第2の実施形態の情報処理システムによれば、代行作業者に関する情報が出力されるため、作業スケジュールの管理者にとって代行作業者の確保が容易になる。
【0061】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0062】
(付記1)
訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、
前記作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する第1判定部と、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【0063】
(付記2)
前記出力部は、前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業スケジュールの管理者に対して前記作業スケジュールの変更が必要であることを示す情報を出力する、付記1に記載の情報処理装置。
【0064】
(付記3)
前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記スケジュール記憶部によって記憶される複数の作業者の作業スケジュールから、前記作業者の作業スケジュールを代行可能な代行作業者を検索する検索部を更に有し、
前記出力部は、前記作業スケジュールの管理者に対して、前記代行作業者に関する情報を出力する、
付記2に記載の情報処理装置。
【0065】
(付記4)
前記出力部は、前記検索部によって前記代行作業者が検索されなかった場合に、前記管理者に対して、訪問先への遅延連絡が必要であることを示す情報を出力する、付記3に記載の情報処理装置。
【0066】
(付記5)
前記出力部は、前記第1判定部によって前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記第2判定部によって前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できると判定された場合に、前記作業者に対して心身異常の解消を優先すべきことを示す情報を出力する、付記1~4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0067】
(付記6)
訪問先で作業を行う作業者の心身を監視してバイタル情報を取得する端末と、
訪問先で作業を行う作業者の作業スケジュールを記憶するスケジュール記憶部と、前記端末からバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する第1判定部と、前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が前記作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する第2判定部と、前記作業スケジュール、前記第1判定部による判断結果、及び、前記第2判定部による判断結果に基づいて、支援情報を出力する出力部と、を備える情報処理装置と、
を含む情報処理システム。
【0068】
(付記7)
訪問先で作業を行う作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定するステップと、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定するステップと、
前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力するステップと、
を含む情報処理方法。
【0069】
(付記8)
訪問先で作業を行う作業者のバイタルデータを取得して、前記作業者の心身に異常があるか否かを判定する処理と、
前記作業者の位置情報から前記作業者が前記訪問先へ到着するのに要する移動時間を算出し、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できるか否かを判定する処理と、
前記作業者の心身に異常があると判定され、かつ、前記作業者が作業スケジュールどおりに前記訪問先へ到着できないと判定された場合に、前記作業者に対して前記作業スケジュールが変更されることを示す情報を出力する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【0070】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0071】
100 :情報処理装置
110 :スケジュール記憶部
111 :バイタル記憶部
120 :第1判定部
130 :第2判定部
140 :出力部
150 :検索部
200 :端末
210 :バイタル監視部
220 :位置情報取得部
230 :通信部