(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】計測システム、計測方法、計測用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 5/20 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
G01B5/20 C
(21)【出願番号】P 2021101094
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 忍
(72)【発明者】
【氏名】荒川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】梅田 卓生
(72)【発明者】
【氏名】松下 和敏
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 文恵
(72)【発明者】
【氏名】大石 慎太郎
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-047903(JP,A)
【文献】特開昭60-210701(JP,A)
【文献】特開昭58-041303(JP,A)
【文献】実開平04-015002(JP,U)
【文献】特開平08-005357(JP,A)
【文献】米国特許第03983632(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
7/00-7/34
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
前記接触感知装置に接続された演算装置と、
を備え、
前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写した後、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで前記測定治具を
一定の速度で移動させて、
前記演算装置により、各ピンが前記接触感知装置に接触した時刻から、各ピンの変位量を算出することで、前記ワークの表面形状を計測するように構成された、計測システム。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記測定治具の前記保持機構に連結されている、請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記演算装置は、ワークの表面形状の計測結果を表示するディスプレイを備える、請求項
1又は2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記接触感知装置は、シート状のセンサである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項5】
前記接触感知装置の下方に設けられ、前記接触感知装置の表面と略平行な設置面を有するワーク設置台を備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項6】
前記測定治具は、前記接触感知装置と前記ワーク設置台との間に配置され、
前記駆動機構は、前記測定治具の各ピンの一端を、前記ワーク設置台上のワークに接触するように移動させ、その後、前記測定治具の各ピンの他端を、前記接触感知装置に接触するように移動させるように構成されている、請求項
5に記載の計測システム。
【請求項7】
前記複数のピンは、初期には、上端及び下端が揃えられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の計測システム。
【請求項8】
格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
前記接触感知装置に接続された演算装置と、
を備えた計測システムを用いた計測方法であって、
前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写し、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで前記測定治具を
一定の速度で移動させて、
前記演算装置により、各ピンが前記接触感知装置に接触した時刻から、各ピンの変位量を算出することで前記ワークの表面形状を計測する、計測方法。
【請求項9】
格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
前記接触感知装置に接続された演算装置と、
を備えた計測システムに使用される計測用プログラムであって、
前記駆動機構により、前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写する処理と、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで
前記測定治具を一定の速度で移動させて、
前記演算装置により、各ピンが前記接触感知装置に接触した時刻から、各ピンの変位量を算出することで前記ワークの表面形状を計測する処理と、をコンピュータに実行させる計測用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は計測システム、計測方法、計測用プログラムに関し、特に、複数のピンを備えた測定治具を用いた計測システム、計測方法、計測用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械でのワーク加工の立体的表面計測(例えば、凹凸形状)では、ある1点の高さを計測する計測器(例えば、タッチプローブやレーザ測長器など)が用いられている。このような計測器を用いてワークの広い面積の表面を計測するには計測器を移動しながら1点ずつ、多くの表面位置を計測する必要がある。そのため、計測する位置が多くなれば、計測にかかる時間も増大する。
【0003】
また、放電加工機での加工は、ワークを水や油などの液に浸して行うが、ワーク計測には加工液を排出して計測する必要がある。これは、加工液に浸したまま計測した場合、計測器が加工液により誤動作する可能性があるからである。タッチプローブが入り込めないようなワーク形状の場合、計測点が限られてしまう。
【0004】
形彫り放電加工機において、金型用のワーク加工は、電極形状を凹型に転写するものであるため、電極形状と対比してワークの加工形状が目視で確認しづらい(視認性が悪い)。
【0005】
これに対して、短時間で曲面の形状を得るための計測装置が開発されている。例えば、特許文献1には、コンピュータに3次元曲面の形状データを迅速に入力し、また、コンピュータ内に構築された3次元曲面を容易に変形することのできる曲面形状入出力装置が開示されている。また、特許文献2には、被測定物全体が加圧された状況下での変形状態を形状データと分布圧力データとして瞬時に測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-5357号公報
【文献】特開2012-21924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、工作機械などで使用する場合、ワークの利用環境(例えば、水や油内)に依らず、効率的にワークの表面立体的形状を計測する計測システム、方法、プログラムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様にかかる計測システムは、格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
を備え、
前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写した後、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで前記測定治具を移動させて、前記ワークの表面形状を計測するように構成されている。
【0009】
本発明の第2の態様にかかる計測方法は、格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
を備えた計測システムを用いた計測方法であって、
前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写し、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで前記測定治具を移動させて、前記ワークの表面形状を計測する。
【0010】
本発明の第3の態様にかかる計測用プログラムは、格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
を備えた計測システムに使用される計測用プログラムであって、
前記駆動機構により、前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写する処理と、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで前記測定治具を移動させて、前記ワークの表面形状を計測する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ワークの利用環境(例えば、水や油内)に依らず、効率的にワークの表面立体的形状を計測する計測システムおよび方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる測定治具の構成を示す概略上面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる測定治具の構成を示す概略側面図である。
【
図3】実施の形態1にかかるワーク計測装置の構成を示す概略図である。
【
図4】実施の形態1にかかるワーク計測方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1にかかる加工液内のワークの表面形状の計測方法を説明する図である。
【
図6】実施の形態1にかかるワークの表面形状が転写された測定治具の各ピンの座標を数値化する方法を説明する図である。
【
図7】実施の形態1にかかるすべてのピンが接触感知装置に接触した状態図である。
【
図8】実施の形態2にかかる計測システムの構成を説明する図である。
【
図9】実施の形態2にかかるワーク計測方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0014】
実施の形態1
図1~
図3を参照して、本開示の計測システムの構成を説明する。
図1及び
図2は、測定治具の構成を示す概略上面図及び概略側面図である。
図3は、ワーク計測装置の構成を示す概略図である。測定治具10は、測定対象となるワークの表面の立体的形状を複数のピンで転写することで、一括して測定するのに使用され得る。ワーク計測装置20は、測定治具10を、転写された複数のピンの変位量を数値化するために使用され得る。
【0015】
まず、
図1および
図2を参照して、ワークの立体的表面形状を測定する測定治具の構成を説明する。
図1は、測定治具10の構成を示す概略上面図である。
図2は、測定治具の構成を示す概略側面図である。
図1及び
図2に示すように、測定治具10は、格子状に配列された複数のピン1a、1b、1c・・・1nと、これらの複数のピン1a・・・1nを保持する保持機構12を備える。各ピンは、上端および下端を揃えて所定の方向(z軸)に沿って延びている。ピンの先端は、
図1に示すように、略円状であり得る。各ピンとしては、例えば、直径1mm~3mm、長さ5cm~10cmの金属製のピンを用いることができるが、これに限定されない。ピンの材質は、プラスチック製であってもよいし、スチール製であってもよい。なお、格子状に配列された複数のピンの先端の直径および各ピンの間隔は、要求される測定精度にしたがって、任意に設定することができる。各ピンは、
図2に示すように、測定前の初期においては、その上端および下端において、他のピンと揃えられている。なお、ピンは、測定ピン又はプローブピンなどと呼ばれる場合がある。
【0016】
図2に示すように、保持機構12は、対向する2つの支持台12a、12bと、支持台12a、12bを両端で互いに連結する連結部121a、121bと、複数のピン1a~1nをz軸方向に移動可能に保持するゴム製のシート11を備える。また、保持機構12は、複数のピン1a~1nの長手方向(すなわち、z方向)におけるほぼ中央部に設けられている。なお、測定治具10の一端又は両端は、加工液に浸したまま計測できるように構成されている。すなわち、先行技術とは異なり、シート状接触感知装置21と測定治具を分離した構成を採用することで、接触感知装置21が濡れないような構成をしている。さらに、より防水性を改良した構成として、後述する
図8に示す構成も考えられる。
【0017】
以上説明した測定治具10は、各ピンを測定対象となるワークの立体的表面に押し当てて、各ピンをそれぞれz軸方向に沿って変位させることで、ワークの表面の立体的形状(凹凸)を転写することができる。
【0018】
図3は、ワーク計測装置20の構成を示す概略図である。
ワーク計測装置20は、接触感知装置21と、接触感知装置21と電気的に接続された演算装置22と、を備える。接触感知装置21は、ワーク形状を転写後の測定治具10の各ピンを接触させるためのシート状のセンサであり得る。そのため、接触感知装置21は、測定治具10の各ピンが接触できるのに十分な大きさを有する。詳細は後述するが、ワーク計測装置20は、ワーク形状を転写後の測定治具10の各ピンの変位量を数値化することができる。演算装置22は、メモリ、プロセッサ、ディスプレイなどを有する汎用コンピュータ又はタブレットなどであり得る。
【0019】
本明細書において使用される場合、「ワークの測定」という用語は、前述したように、複数のピンによるワークの表面形状の転写動作を指すものとする。また、本明細書において使用される場合、「ワークの計測」という用語は、転写後の測定治具の各ピンの変位量を数値化し、転写結果を判定することを指すものとする。
【0020】
次に、
図4のフローチャートおよび
図5~
図7の概略図を参照して、ワーク形状の計測方法を説明する。
計測対象のワーク30に、測定治具10を押し当てて、ワーク形状を測定(転写)する(ステップS11)。この場合、前工程において、ワーク30は加工液(例えば、油又は水)内で表面加工が行われたものとする。ワーク30は加工液を排出することなく、そのまま加工液内の設置台31に置かれている。そのため、測定治具10の各ピンの一端の一部を、加工液内(例えば、油又は水の表面50から内部に)に侵入させて、ワークへの押し当てを行う。測定治具10の各ピン1a~1nが、ワーク30又はワーク設置台31に到達したら転写が完了し、ワークの表面形状の計測を終了する。最終的に、
図5に示すように、各ピン1a~1nは、ワーク30のz軸方向の高さに応じて変位する。
【0021】
次に、ワーク計測装置20を用いて、転写された複数のピンの変位量を数値化する(ステップS12)。
図6に示すように測定治具10をワーク計測装置20のシート状の接触感知装置21に押し当てることで、ワーク計測を行う。例えば、工作機械の駆動機構により、測定治具10を接触感知装置21に向けて移動させ、各ピンを接触感知装置21に押し当てることで、測定治具10の各ピンが接触感知装置21に接触した時点の移動量(z軸座標)を得ることができる。演算装置22は、測定治具10を移動させる駆動機構による駆動量に対応するピンの変位量を取得することができる。また、各ピンの変位量に基づき、ワークの表面形状を得ることができる。
【0022】
また、他の例では、例えば、保持機構12に連結された駆動機構により、一定の速度で、測定治具10を接触感知装置21に向けて移動させ、各ピンを、接触感知装置21に接触した時点の時刻を取得してもよい。各ピンの変位量は、速度と接触までの時間により、算出することができる。また、各ピンの変位量に基づき、ワークの表面形状を得ることができる。最初にワーク計測装置2の接触感知装置21に接触したピン1aから最後のピンが接触感知装置21に接触するまで、測定治具10を接触感知装置21に押し当てる。最終的に、全てのピン1a~1nが接触感知装置21に接触した状態を
図7に示す。
【0023】
接触感知装置21はシート状の接触感知センサであり、シート上の任意点に接触があると、演算装置22は接触位置(x座標、y座標)を取得できるため、どのピンが接触したか認識できる。工作機械の駆動機構により駆動量から、各ピンが接触感知装置21に接触した時点の移動量(z軸座標)を得ることができる。また、他の例では、演算装置22は、各ピン1aが接触した時刻と押し当て速度から、各ピン1aの高さ(z座標)を計算することができる。ワーク計測結果(x座標、y座標、z座標)は、演算装置22のディスプレイ23に表示される。
【0024】
以上説明した実施の形態によれば、測定ステップを介して、ワークの表面の立体的形状を一度に測定治具に転写することで、迅速にワーク表面の凹凸高さを取得することができる。また、ワークが加工液の中にあったとしても、測定治具を加工液に侵入させ、迅速かつ効率的にワークの表面の立体的形状を測定することができる。また、それに続く計測ステップにより、ワークの立体的形状を数値化することができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、ワークを加工液内のワーク設置台に置かれたまま、測定治具を鉛直方向に加工させて、ワーク表面を測定したが、これに限定されない。例えば、ワークが天井に吊り下げられている場合や、側壁に取り付けられている場合も、測定治具を鉛直方向又は水平方向などに自由に動かし、ワークを測定することができる。つまり、測定治具のワーク転写方向は垂直方向だけなく、どの方向でも測定を行うことができる。これにより、測定の自由度が向上している。
【0026】
実施の形態2
図8は、実施の形態2にかかる計測システムの構成を説明する図である。
この実施の形態では、ワーク加工ステップ、前述した測定ステップ、および計測ステップを同一の場所で行うことを想定している。測定治具をz軸方向に移動させる駆動機構(例えば、
図8では、15,16)を用いて上下動させることで、測定ステップと計測ステップを同一の場所で行うことが可能になる。測定治具を上下動させるために、例えば、工作機械に備えられた駆動機構を使用することができる。
【0027】
図8に示すようにワーク設置台31と、測定治具10と、演算装置22に接続された接触感知装置21は、所定の方向(
図8では鉛直方向、すなわちz軸方向)に揃って配置されている。接触感知装置21を加工液の表面50から離して配置することで、加工液により濡れるのを回避することができる。ワーク設置台31の表面と、接触感知装置21の表面は、略平行(x方向)に配置される。また、測定治具10の各ピンは、鉛直方向(z軸方向)に移動可能に配置されている。測定治具10の保持機構12は、加工液の表面50より上方で移動されるように構成され得る。測定治具10を所定の方向に沿って一の方向に(負のz軸方向)に移動させることで、ワーク設置台31のワーク30に測定治具10のピンを押し当てることができる。この際、ピンは、加工液の表面50の下(加工液内)に侵入させることができる。測定治具10を所定の方向に沿って他の方向に(正のz軸方向)に移動させることで、ワーク計測装置20の接触感知装置21に測定治具10の各ピンを押し当てることができる。複数のピンを保持する保持機構12において、シート11は、対向する2つの支持台12a、12bのうち、加工液の表面50から離れた側の支持台12aに配置されている。
【0028】
図9は、実施の形態2にかかるワーク計測方法を示すフローチャートである。
まず、ワーク設置台に置かれたワークの加工を行う(ステップS21)。例えば、形彫り放電加工機での加工は、ワークを水や油などの液に浸して行うことができる。次に、駆動機構16により、測定治具10をz軸方向に下降させることで、加工液内にある計測対象のワーク3aの測定(転写)を行う(ステップS22)。さらに、駆動機構15により、測定治具10をz軸方向に上昇させることで、測定治具10の各ピンを接触感知装置21に押し当てることで、ワーク計測を同一場所で行うことが可能となる(ステップS23)。
【0029】
本実施形態によれば、同一の場所で、加工ステップ、測定(転写)ステップおよび計測ステップを実行できるので、より一層計測時間を短縮することができる。
【0030】
以上説明した各種実施の形態によれば、計測回数の削減による計測時間の短縮が可能になり、かつ放電加工機においては、加工液を排出せず計測が可能になり、計測時間を大幅に短縮することができる。また、ワーク形状によらない計測が可能となる。すなわち、タッチプローブの入り込めない形状の計測対象でも計測可能である。凹型のワーク形状でも転写した測定治具を見ればワーク形状の把握が可能であり、視認性を向上させることができる。さらに、ワーク計測方向の自由度が向上し、測定治具のワーク転写方向は垂直方向だけなく、どの方向でも測定を行うことができる。ワーク計測結果の表示内容が高度化し、多数点の計測を行う為、計測結果の2D/3D表示や、期待形状との差分表示など、より多くの情報の確認が可能となる。
【0031】
その他の実施の形態
上述した各種実施の形態において、計測の精度を向上させる方法として、以下の2例が考えられる。第1に、ピンの直径を微細化し、グリッド間隔を狭めて測定する方法がある。ピンの直径の異なる様々な測定治具を用意し、必要に応じて、測定治具を交換してもよい。第2に、測定点をずらしながら、複数回の計測を行う方法がある。
図8の例では、測定治具をz軸方向に移動させる駆動機構を設けたが、更に、測定治具をx軸方向およびy軸方向に移動させる駆動機構を設ける(例えば、測定治具を工作機械のxy方向の駆動機構と連結する)ことで、測定点をずらして複数回の計測(例えば、第1の計測ステップおよび第2の計測ステップを含む)を行うことができる。
【0032】
上述の例において、計測用プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【0034】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って前記測定治具を移動させる駆動機構と、
を備え、
前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写した後、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで移動させて、前記ワークの表面形状を計測するように構成された、計測システム。
(付記2)
前記駆動機構は、前記測定治具の前記保持機構に連結されている、付記1に記載の計測システム。
(付記3)
前記接触感知装置に接続された演算装置を更に備える、付記1又は2に記載の計測システム。
(付記4)
前記演算装置は、前記駆動機構により、前記測定治具を一定の速度で移動させ、各ピンが接触感知装置に接触した時刻から、各ピンの変位量を算出する、付記3に記載の計測システム。
(付記5)
前記演算装置は、ワークの表面形状の計測結果を表示するディスプレイを備える、付記4に記載の計測システム。
(付記6)
前記接触感知装置は、シート状のセンサである、付記1~5のいずれか一項に記載の計測システム。
(付記7)
前記接触感知装置の下方に設けられ、前記接触感知装置の表面と略平行な設置面を有するワーク設置台を備える、付記1~6のいずれか一項に記載の計測システム。
(付記8)
前記測定治具は、前記接触感知装置と前記ワーク設置台との間に配置され、
前記駆動機構は、前記測定治具の各ピンの一端を、前記ワーク設置台上のワークに接触するように移動させ、その後、前記測定治具の各ピンの他端を、前記接触感知装置に接触するように移動させるように構成されている、付記7に記載の計測システム。
(付記9)
格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
を備えた計測システムを用いた計測方法であって、
前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写し、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで前記測定治具を移動させて、前記ワークの表面形状を計測する、計測方法。
(付記10)
格子状に配列された長手方向に変位可能な複数のピン、および前記複数のピンを保持する保持機構、を備えた測定治具と、
前記測定治具を接触感知装置に対して前記複数のピンの前記長手方向に沿って移動させる駆動機構と、
を備えた計測システムに使用される計測用プログラムであって、
前記駆動機構により、前記測定治具の前記複数のピンを、測定対象となるワークに押し当てて、前記ワークの形状を各ピンの変位として転写する処理と、
前記駆動機構により、前記測定治具の各ピンが前記接触感知装置に接触するまで前記測定治具を移動させて、前記ワークの表面形状を計測する処理と、をコンピュータに実行させる計測用プログラム。
【符号の説明】
【0035】
1a~1n ピン
10 測定治具
11 シート
12 保持機構
15,16 駆動機構
20 ワーク計測装置
21 接触感知装置
22 演算装置
23 ディスプレイ
30 ワーク
31 ワーク設置台
50 表面