(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】歯牙治療実習用歯牙模型及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G09B 23/34 20060101AFI20230912BHJP
A61C 13/34 20060101ALI20230912BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G09B23/34
A61C13/34
A61C13/00 A
(21)【出願番号】P 2021199665
(22)【出願日】2021-12-08
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0086444
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516098513
【氏名又は名称】ビーアンドエル バイオテック インコーポレイティッド
【氏名又は名称原語表記】B&L BIOTECH,INC.
【住所又は居所原語表記】No.502, 95, Gwangdeokdong-ro Danwon-gu, Ansan-si Gyeonggi-do Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 仁煥
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-057993(JP,A)
【文献】特開2018-013626(JP,A)
【文献】中国実用新案第201166937(CN,Y)
【文献】韓国公開特許第2019-0143108(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28 - 23/34
A61C 13/00 - 13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙治療の実習のための歯牙模型であって、
前記歯牙模型は、透明材質からなり、中空の神経管が内部に形成された歯根部と、
前記歯根部の上側に形成される歯冠部とを含み、
前記歯根部の内部に形成された神経管
の内部は中空となっており、前記神経管が外部に表示されるように、
前記神経管の内側面には
、水又はアルコールに溶解されない非水溶性物質又は不溶性物質からなる不透明材質の塗料が
一定の厚さでコーティングされたコーティング層が形成されたことを特徴とする、歯牙治療実習用歯牙模型。
【請求項2】
前記塗料はレジン系列の合成樹脂剤であることを特徴とする、請求項
1に記載の歯牙治療実習用歯牙模型。
【請求項3】
前記歯冠部は、軟質の材質からなる象牙質部と、前記象牙質部の上部に形成される硬質の材質からなるエナメル質部とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯牙治療実習用歯牙模型。
【請求項4】
前記象牙質部及び前記エナメル質部は、ミーリング加工、プラスチック射出金型及び3Dプリンタのいずれか1つによって作製されることを特徴とする、請求項
3に記載の歯牙治療実習用歯牙模型。
【請求項5】
前記歯牙模型が装着されるデンティフォームに形成された装着溝の内側に挿入される前記歯根部の下端外側面には、前記装着溝の内側の底部に向かって下向きに折り曲げられた陰刻の段差部がさらに形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の歯牙治療実習用歯牙模型。
【請求項6】
歯牙治療実習用歯牙模型の製造方法であって、
(a)中空の神経管が内部に形成される透明材質の歯根部を製造する第1ステップと、
(b)前記歯根部の内部に形成された前記神経管の内側に不透明材質の塗料を投入する第2ステップと、
(c)前記塗料が投入された前記神経管の内部にエアを噴射して塗料を拡散させて神経管の内側面に塗料が塗布されるようにする第3ステップと、
(d)前記神経管の内側面に塗布された塗料が一定時間硬化して神経管の内側面に一定の厚さのコーティング層が形成される第4ステップとを含む、歯牙治療実習用歯牙模型の製造方法。
【請求項7】
前記(d)ステップで前記神経管の内側面に塗布された塗料は、炎熱処理方式、高周波誘導熱処理方式、レーザー熱処理方式、紫外線(UV)硬化方式及び赤外線(IR)硬化方式のいずれか1つによって神経管の内側面に表面コートされることを特徴とする、請求項
6に記載の歯牙治療実習用歯牙模型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年07月01日付の韓国特許出願第10-2021-0086444号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、歯牙模型に関し、特に、実際の歯牙の神経管の形状及び構造と同一であるので実習用に活用できる歯牙治療実習用歯牙模型及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、歯の神経治療とは、虫歯のような病菌が歯冠の象牙質を越えて歯の歯髄腔及び歯根管の部位まで侵して痛みが感じられるときに行う。
【0004】
このような神経治療は、歯に対する神経治療の診断が確認されると、歯科治療用ドリル機構で歯に穴を開け、神経除去用機構を用いて歯神経の歯組織又は血管などを除去した後、根管の空洞を消毒し、その後、根管の空洞及び穴に代替材料を充填し埋める過程を経てなされる一種の補綴治療といえる。
【0005】
ここで、神経治療は、歯の象牙質の損傷を最小化しながら歯神経を完全に除去してこそ、痛みの再発を防止し、自然の歯を最大限保存できるため、神経治療技術の熟達のために多くの実習が行われなければならない。
【0006】
しかし、現在の歯科教育機関、歯科医院及び歯科セミナーなどでは、このような神経治療の実習のために歯の内部の神経構造まで具現された歯牙模型が十分に備えられていないため、ほとんどが神経治療を実施することを見学し、これを録画した視聴覚資料に頼ったり、一般の歯牙模型を用いて神経治療を学んでいるので、実習の効率が低下するという問題がある。
【0007】
すなわち、一般の歯牙模型の場合、歯や口腔の外形のみを模した形で作製されるため、歯の内部に形成された神経部位に対する直接的な治療の実習が不可能であるだけでなく、これを用いて実習を行っても、神経構造に対する正確な識別又は歯神経の除去のための直接的な施術を行うことができないため、神経治療の熟達に多くの困難が伴うのが現状である。
【0008】
そこで、上述した問題を解消するために、従来は、歯の歯根管の内部に形成された神経管に類似させて模写するために、内部にワックスを充填して歯牙模型を作製した。
【0009】
しかし、従来の歯牙模型は、ワックスを用いて神経管を充填するため、神経除去作業の後に、神経除去機構(エンドファイル)に粘り気のあるワックスが付着するため、きれいに神経を除去できないという問題がある。
【0010】
また、従来の歯牙模型は、歯の歯根管の内部に形成された神経管の形状が十分に表現されていないため、実習用に不適であるだけでなく、歯牙模型を外部から見るとき、神経管が明確に区分されないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許公報第10-2019-0143108号(公開日:2019年12月30日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した問題点を解決するために案出された本発明の課題は、不透明材質の塗料が、透明材質からなる歯牙模型の歯根部の内部に形成された神経管の内側面に着色されることによって、歯牙模型の歯根部の外部に神経管を表示することができる歯牙治療実習用歯牙模型及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の課題は、神経管の内部が中空状であるので神経治療の実習を容易にすることができる歯牙治療実習用歯牙模型及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の課題は、神経管の内側面に非水溶性又は不溶性であるレジン系列の塗料を表面コートすることによって、神経除去作業の後、神経が良好に除去されたか確認が容易であり、イリゲーション(irrigation)の使用後に治療状態を明確に区分することができる歯牙治療実習用歯牙模型及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために案出された本発明は、歯牙治療の実習のための歯牙模型であって、前記歯牙模型は、透明材質からなり、中空の神経管が内部に形成された歯根部と、前記歯根部の上側に形成される歯冠部とを含み、前記歯根部の内部に形成された神経管が外部に表示されるように、神経管の内側面には不透明材質の塗料がコーティングされたコーティング層が形成されたことを特徴とする。
【0016】
前記塗料は、非水溶性物質又は不溶性物質からなることを特徴とする。
【0017】
前記塗料はレジン系列の合成樹脂剤であることを特徴とする。
【0018】
前記歯冠部は、軟質の材質からなる象牙質部と、前記象牙質部の上部に形成される硬質の材質からなるエナメル質部とを含むことを特徴とする。
【0019】
前記象牙質部及び前記エナメル質部は、ミーリング加工、プラスチック射出金型及び3Dプリンタのいずれか1つによって作製されることを特徴とする。
【0020】
前記歯牙模型が装着されるデンティフォーム(dentiform)に形成された装着溝の内側に挿入される前記歯根部の下端外側面には、前記装着溝の内側の底部に向かって下向きに折り曲げられた陰刻の段差部が形成されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、歯牙治療実習用歯牙模型の製造方法であって、中空の神経管が内部に形成される透明材質の歯根部を製造するステップと、前記歯根部の内部に形成された前記神経管の内側に不透明材質の塗料を投入するステップと、前記塗料が投入された前記神経管の内部にエアを噴射して塗料を拡散させて神経管の内側面に塗料が塗布されるようにするステップと、前記神経管の内側面に塗布された塗料が一定時間硬化して神経管の内側面に一定の厚さのコーティング層が形成されるステップとを含む。
【0022】
前記神経管の内側面に一定の厚さのコーティング層が形成されるステップにおいて、神経管の内側面に塗布された塗料は、炎熱処理方式、高周波誘導熱処理方式、レーザー熱処理方式、紫外線(UV)硬化方式及び赤外線(IR)硬化方式のいずれか1つによって神経管の内側面に表面コートされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、不透明材質の塗料が、透明材質からなる歯牙模型の歯根部の内部に形成された神経管の内側面に着色されることによって、歯牙模型の歯根部の外部に神経管が表示される効果がある。
【0024】
また、本発明は、神経管の内部が中空状であるので、神経治療の実習用として容易であるという効果がある。
【0025】
また、本発明は、神経管の内側面に非水溶性又は不溶性であるレジン系列の塗料を表面コートすることによって、神経除去の実習後、神経が良好に除去されたか確認が容易であり、イリゲーション(irrigation)の使用後に治療状態を明確に区分することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型を示した断面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型を示した例示図である。
【
図3】本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型がデンティフォームに装着された状態を示した例示図である。
【
図4】本発明の他の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型を示した斜視図及び断面図である。
【
図5】本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型の製造方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る歯牙治療実習用歯牙模型の好ましい実施例について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型を示した断面図であり、
図2は、本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型を示した例示写真であり、
図3は、本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型がデンティフォームに装着された状態を示した例示写真である。
【0029】
図1乃至
図3を参照すると、本発明の好ましい実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型は、歯治療の実習のために、実際の歯の大きさ及び形状とほぼ同一に作製される歯牙模型100である。
【0030】
ここで、本発明の歯牙模型100は、歯の歯根部110と歯冠部120で構成される。
【0031】
歯根部110は、外部から内部を見ることができるように透明材質からなる。そして、歯牙模型100の歯根部110の内部には、中空状の中空の神経管111が形成される。
【0032】
このとき、歯牙模型100の歯根部110の内部に形成された神経管111が外部に表示されるように、神経管111の内側面には、不透明材質の塗料が薄くコーティングされるコーティング層111aが形成される。
【0033】
ここで、コーティング層111aを形成する塗料は、水やアルコールに容易に溶解しない非水溶性物質又は不溶性物質からなるレジン系列の合成樹脂剤であることが好ましい。
【0034】
このように、不透明材質の塗料が、透明材質からなる歯牙模型100の歯根部110の内部に形成された神経管111の内側面に着色されることによって、歯牙模型100の歯根部110の外部に神経管111が表示されるものである。
【0035】
また、神経管111の内部が中空状であるので、神経治療の実習用として容易であるという利点がある。
【0036】
歯冠部120は、歯根部110の上側に形成され、軟質の材質からなる象牙質部121と、象牙質部121の上部に形成される不透明な硬質の材質からなるエナメル質部122とを含んで構成され得る。
【0037】
ここで、象牙質部121は、レジン系列の合成樹脂剤であることが好ましく、ミーリング加工、プラスチック射出金型及び3Dプリンタのいずれか1つの作製手段によって作製されてもよく、このとき、前記の羅列した作製手段のみに限定されるものではない。
【0038】
そして、エナメル質部122は、レジン、ジルコニア及びセラミックなどの材質からなることができ、ミーリング加工、プラスチック射出金型及び3Dプリンタのいずれか1つの作製手段によって作製されてもよく、このとき、前記の羅列した作製手段のみに限定されるものではない。
【0039】
歯冠部120も透明であり得、この場合、上側が開口されていてもよい。
【0040】
図4は、本発明の他の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型を示した斜視図及び断面図である。
【0041】
図4を参照すると、歯牙治療実習用歯牙模型100の歯根部110の下端外側面には陰刻の段差部112がさらに形成され得る。
【0042】
敷衍すると、本発明の歯牙模型100が装着されるデンティフォーム10には、歯根部110が挿入される装着溝11が形成されるが、この装着溝11の下端内側面には段部が形成され得る。
【0043】
すなわち、デンティフォーム10に形成された装着溝11の内側の底部に向かって下向きに折り曲げられた陰刻の段差部112が歯根部110の下端外側面に形成されることによって、歯根部110が装着溝11の内側に挿入されるとき、歯牙模型100の装着方向を表示することができ、デンティフォーム10に装着される歯牙模型100の固定を容易にすることができる。
【0044】
ここで、上述したデンティフォーム10と歯牙模型100との間の結合方式は、一例を挙げて説明したものであり、ある一つの結合方式のみに限定されず、その他に様々な方式を通じてデンティフォーム10に歯牙模型100が結合されてもよい。
【0045】
図5は、本発明の実施例に係る歯牙治療実習用歯牙模型の製造方法を示したフローチャートである。
【0046】
図5を参照すると、本発明の好ましい実施例に係る歯牙模型の製造方法は、まず、中空の神経管111が内部に形成される透明材質の歯根部110を製造する。
【0047】
ここで、歯根部110は、ミーリング加工、プラスチック射出金型及び3Dプリンタのいずれか1つの方法を通じて製造することができる。
【0048】
その次に、歯根部110の内部に形成された神経管111の内側に不透明材質の塗料を投入する。
【0049】
その次に、塗料が投入された神経管111の内部にエアを噴射して塗料を均一に拡散させて神経管111の内側面に塗料が薄く塗布されるようにする。
【0050】
最後に、神経管111の内側面に塗布された塗料が一定時間硬化して神経管111の内側面に一定の厚さのコーティング層111aが形成されることによって歯牙模型が完成される。
【0051】
このとき、神経管111の内側面に一定の厚さのコーティング層111aが形成されるように神経管111の内側面に塗布された塗料は、例えば、炎熱処理方式、高周波誘導熱処理方式、レーザー熱処理方式、紫外線(UV)硬化方式及び赤外線(IR)硬化方式のいずれか1つによって神経管111の内側面に表面コートされてもよく、上記の羅列した方式のみに限定されるものではない。
【0052】
ここで、不透明材質の塗料が、透明材質からなる歯牙模型100の歯根部110の内部に形成された神経管111の内側面に着色されるようになる。
【0053】
このような神経管111に着色されたコーティング層111aは、水と共にドリルを用いて神経を除去するとき、水又はアルコールに容易に溶解しない非水溶性物質又は不溶性物質からなるレジン系列の合成樹脂剤からなっているため、容易に消えないので耐久性を高めることができるようになる。
【0054】
以上、本発明を好ましい実施例に基づいて説明したが、本発明の技術的思想はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲内で変形や変更実施が可能であることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明らかであり、そのような変形や変更は添付の特許請求の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0055】
10 デンティフォーム
11 装着溝
100 歯牙模型
110 歯根部
111 神経管
111a コーティング層
112 段差部
120 歯冠部
121 象牙質部
122 エナメル質部