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特許7347857静脈-静脈体外血液酸素化を受けている患者の心拍出量の計算
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】静脈-静脈体外血液酸素化を受けている患者の心拍出量の計算
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20230912BHJP
   A61M 60/113 20210101ALN20230912BHJP
   A61M 60/38 20210101ALN20230912BHJP
【FI】
A61M1/36 100
A61M60/113
A61M60/38
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021565021
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 US2020030916
(87)【国際公開番号】W WO2020223587
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】62/842,192
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507072829
【氏名又は名称】トランソニック システムズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】クリヴィツキー,ニコライ エム
(72)【発明者】
【氏名】ガリヤノフ,グレゴリー
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314059(US,A1)
【文献】特開昭60-253457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 60/113
A61M 60/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液酸素化回路に動作可能に接続された患者の心拍出量を定量化するための装置であって、前記体外血液酸素化回路が、前記患者の循環系から血液を引き出す静脈ライン、血液酸素化装置、ポンプ、および前記循環系の静脈部分に酸素化血液を戻す動脈ラインを有し、前記装置が、
(a)前記血液酸素化装置および前記ポンプのうちの1つに接続するように構成されているコントローラであって、前記コントローラが、前記体外血液酸素化回路からの酸素化血液の測定された流量、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、第1の動脈内二酸化炭素含有量および前記患者循環系に送達される前記血液の第1の二酸化炭素含有量、ならびに前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第2のガス除去率に対応する、第2の動脈内二酸化炭素含有量および前記患者循環系に送達される前記血液の第2の二酸化炭素含有量に基づいて、前記患者の心拍出量を計算するように構成されている、コントローラを備え、
前記心拍出量を、式:
【数11A】
により計算する装置であって、
前記式中、COは、前記心拍出量であり、Q は、前記体外血液酸素化回路からの前記酸素化血液の前記測定された流量であり、S ecmo CO 2(1) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の第1の二酸化炭素含有量であり、S ecmo CO 2(2) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第2のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の第2の二酸化炭素含有量であり、S CO 2(1) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、前記第1の動脈内二酸化炭素含有量であり、S CO 2(2) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第2のガス除去率に対応する、前記第2の動脈内二酸化炭素含有量である、
装置。
【請求項2】
前記静脈ライン内に指示薬注入ポートをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラが、前記患者の循環系を通過することなく、前記静脈ラインを通して引き出され、前記動脈ラインを通して戻された、前記酸素化血液の割合として、再循環を計算するようにさらに構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記血液酸素化装置における前記第1のガス除去率が、前記血液酸素化装置を通るスイープガスの第1の流量に対応する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
(i)前記第1の動脈内二酸化炭素含有量および(ii)前記第2の動脈内二酸化炭素含有量の内の1つが、代用パラメータである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
(i)前記患者循環系に送達される前記血液の前記第1の二酸化炭素含有量および(ii)前記患者循環系に送達される前記血液の前記第2の二酸化炭素含有量の内の1つが、代用パラメータである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記体外血液酸素化回路からの前記酸素化血液の前記測定された流量が、代用パラメータである、請求項1記載の装置。
【請求項8】
体外血液酸素化回路に動作可能に接続された患者の心拍出量を定量化するための装置であって、前記体外血液酸素化回路が、前記患者の循環系から血液を引き出す静脈ライン、血液酸素化装置、ポンプ、および前記循環系の静脈部分に酸素化血液を戻す動脈ラインを有し、前記装置が、
(a)前記血液酸素化装置および前記ポンプのうちの1つに接続するように構成されているコントローラであって、前記コントローラが、前記体外血液酸素化回路からの酸素化血液の測定された流量、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、第1の動脈内二酸化炭素含有量および前記患者循環系に送達される前記血液の第1の二酸化炭素含有量、ならびに前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第2のガス除去率に対応する、第2の動脈内二酸化炭素含有量および前記患者循環系に送達される前記血液の第2の二酸化炭素含有量、前記患者の循環系を通過することなく、前記静脈ラインを通して引き出され、前記動脈ラインを通して戻された、前記酸素化血液の割合、に基づいて、前記患者の心拍出量を計算するように構成されている、コントローラを備え、
前記心拍出量を、式:
【数10A】
により計算する装置であって、
前記式中、COは、前記心拍出量であり、Q は、前記体外血液酸素化回路からの前記酸素化血液の前記測定された流量であり、S ecmo CO 2(1) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の第1の二酸化炭素含有量であり、S ecmo CO 2(2) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第2のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の第2の二酸化炭素含有量であり、S CO 2(1) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、前記第1の動脈内二酸化炭素含有量であり、S CO 2(2) は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第2のガス除去率に対応する、前記第2の動脈内二酸化炭素含有量であり、R%は、前記患者の循環系を通過することなく、前記静脈ラインを通して引き出され、前記動脈ラインを通して戻された、前記酸素化血液の前記割合である、装置。
【請求項9】
前記静脈ライン内に指示薬注入ポートをさらに備える、請求項8に記載の装置
【請求項10】
前記血液酸素化装置における前記第1のガス除去率が、前記血液酸素化装置を通るスイープガスの第1の流量に対応する、請求項8に記載の装置
【請求項11】
(i)前記第1の動脈内二酸化炭素含有量および(ii)前記第2の動脈内二酸化炭素含有量の内の1つが、代用パラメータである、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
(i)前記患者循環系に送達される前記血液の前記第1の二酸化炭素含有量および(ii)前記患者循環系に送達される前記血液の前記第2の二酸化炭素含有量の内の1つが、代用パラメータである、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記体外血液酸素化回路からの前記酸素化血液の前記測定された流量が、代用パラメータである、請求項8記載の装置。
【請求項14】
体外血液酸素化回路に動作可能に接続された患者の心拍出量を定量化するための装置であって、前記体外血液酸素化回路が、前記患者の循環系から血液を引き出す静脈ライン、血液酸素化装置、ポンプ、および前記循環系の静脈部分に酸素化血液を戻す動脈ラインを有し、前記装置が、
(a)前記血液酸素化装置および前記ポンプのうちの1つに接続するように構成されているコントローラであって、前記コントローラが、前記体外血液酸素化回路からの酸素化血液の第1の流量、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、第1の動脈内二酸化炭素含有量および前記患者循環系に送達される前記血液の第1の二酸化炭素含有量、ならびに、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、心臓に入る前の静脈血管内の第1の混合静脈二酸化炭素含有量に基づいて、前記患者の心拍出量を計算するように構成されている、コントローラを備え、
前記心拍出量を、式:
【数4A】
により計算する装置であって、
前記式中、COは、前記心拍出量であり、Q は、前記体外血液酸素化回路からの前記酸素化血液の前記第1の流量であり、S CO は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、前記第1の動脈内二酸化炭素含有量であり、S ecmo CO は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の二酸化炭素含有量であり、S CO は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、心臓に入る前の静脈血管内の前記第1の混合静脈二酸化炭素含有量である、
装置。
【請求項15】
前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記第1の動脈内二酸化炭素含有量が、第1の代用パラメータを含む、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の二酸化炭素含有量が、第1の代用パラメータを含む、請求項14記載の装置。
【請求項17】
前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、心臓に入る前の静脈血管内の前記第1の混合静脈二酸化炭素含有量が、第1の代用パラメータを含む、請求項14記載の装置。
【請求項18】
体外血液酸素化回路に動作可能に接続された患者の心拍出量を定量化するための装置であって、前記体外血液酸素化回路が、前記患者の循環系から血液を引き出す静脈ライン、血液酸素化装置、ポンプ、および前記循環系の静脈部分に酸素化血液を戻す動脈ラインを有し、前記装置が、
(a)前記血液酸素化装置および前記ポンプのうちの1つに接続するように構成されているコントローラであって、前記コントローラが、前記体外血液酸素化回路からの酸素化血液の第1の流量、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、第1の動脈内二酸化炭素含有量および前記患者循環系に送達される前記血液の第1の二酸化炭素含有量、ならびに、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、心臓に入る前の静脈血管内の第1の混合静脈二酸化炭素含有量、および、前記患者の循環系を通過することなく、前記静脈ラインを通して引き出され、前記動脈ラインを通して戻された、前記酸素化血液の割合、に基づいて、前記患者の心拍出量を計算するように構成されている、コントローラを備え、
前記心拍出量を、式:
【数7A】
により計算する装置であって、
前記式中、COは、前記心拍出量であり、Q は、前記体外血液酸素化回路からの前記酸素化血液の前記第1の流量であり、S CO は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、前記第1の動脈内二酸化炭素含有量であり、S ecmo CO は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の二酸化炭素含有量であり、S CO は、前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、心臓に入る前の静脈血管内の前記第1の混合静脈二酸化炭素含有量であり、R%は、前記患者の循環系を通過することなく、前記静脈ラインを通して引き出され、前記動脈ラインを通して戻された、前記酸素化血液の割合である、
装置。
【請求項19】
前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記第1の動脈内二酸化炭素含有量が、第1の代用パラメータを含む、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の前記第1のガス除去率に対応する、前記患者循環系に送達される前記血液の二酸化炭素含有量が、第1の代用パラメータを含む、請求項18記載の装置。
【請求項21】
前記体外血液酸素化回路における前記血液酸素化装置内の第1のガス除去率に対応する、心臓に入る前の静脈血管内の前記第1の混合静脈二酸化炭素含有量が、、第1の代用パラメータを含む、請求項18記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年5月2日に出願された米国仮特許出願62/842,192の利益を主張し、この開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が後援する研究または開発に関する声明
該当せず。
【0003】
共同研究契約の当事者名
該当せず。
【0004】
配列一覧の参照
該当せず。
【0005】
発明者または共同発明者による事前の開示に関する声明
該当せず。
【技術分野】
【0006】
本開示は、静脈-静脈(VV)体外式回路、および特に静脈-静脈体外式膜型酸素化(ECMO)回路などであるが、これに限定されない静脈-静脈体外式血液酸素化回路に動作可能に接続された患者の心拍出量を評価することに関する。
【背景技術】
【0007】
VV ECMOは、生命を脅かす呼吸不全、通常は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を経験している患者に採用される医療的処置である。しかしながら、他の適応症には、ウイルス、細菌、真菌、PCPなどの感染症、嚢胞性線維症、出血性自己免疫疾患などの原発性肺疾患、特発性線維症、鎌状赤血球症、原発性肺高血圧症、胸部外傷、肺切除後、移植後、急性、慢性(閉塞性細気管支炎)、慢性呼吸不全移植への橋渡しが含まれる。
【0008】
これらの患者において、肺を通過する血液が十分に酸素化されないため、十分な酸素が組織に送達されない。この酸素送達の欠如は、組織への損傷を引き起こし、最終的には患者を死に至らしめ得る。VV ECMOなどの体外血液酸素化は、患者の肺による血液酸素化を補完または置換する。
【0009】
VV ECMOにおいて、大きなカニューレは通常、大腿静脈および/または頸静脈から挿入され、先端は上大静脈および/もしくは下大静脈または右心房にある。次に、これらのカニューレは、ポンプおよび膜酸素化装置を含む体外回路に接続される。血液は通常、1つ(または2つの場所)から回収され、右心房の近くに送達されるが、複数の変更がある。患者の血液は、患者から採取されることによって体外回路を通って継続的に循環され、次に、膜酸素化装置などの酸素化装置を通って循環され、そこで血液が酸素化される。血液は患者に戻され、そこで今酸素化された血液が、右心から肺を通って左心に送出され、酸素化された血液が、体組織に送達される。
【0010】
VV ECMO治療の重要な結果は、再循環の発生である。再循環は、患者に戻されている酸素化された血液の一部が患者の心臓に流れ込まず、体外回路に引き込まれると発生する。これは、回収カニューレおよび送達カニューレの不良な位置決めのため、ならびに/または患者が、酸素化された血液の完全な流れを受け入れるのに不十分な心拍出量を有する場合に発生し得る。再循環の存在は、患者に供給される療法の一部が、実際には患者の回復を援助していないことを意味するため、再循環は、治療中に問題になり得る。
【0011】
VV ECMO処置は通常、良好に機能している心臓を有する患者に適用される。VV ECMOの過程の間、心不全(多くの場合、右心)が発症し得る。これは、生命を脅かす状況になり得る。心臓による循環の十分性は、通常、心拍出量を測定することによって評価される。肺動脈熱希釈および経肺熱希釈などの心拍出量(CO)を測定する現在の標準的な方法は、侵襲的であるだけでなく、しばしば不正確である。VV ECMO設定において、これらの方法は、特に高い再循環レベルで、誤解を招く結果をもたらし得る。結果として、劇的な心不全が見逃され得る。COにおける特定された減少は、薬物療法によって、または患者をVA ECMOに移動することによって、医師に対処され得、(VA ECMOはより侵襲的であるが)体外回路は、肺のサポートに加えて心臓のサポートを提供する。
【発明の概要】
【0012】
概して、本開示は、静脈-静脈体外回路に、特に静脈-静脈体外式膜型酸素化(ECMO)回路などだが、これに限定されない、静脈-静脈体外血液酸素化回路に動作可能に接続された患者における心拍出量、COを測定するための非侵襲的方法および装置を提供する。
【0013】
1つの構成において、本開示は、静脈-静脈体外血液酸素化を受けている患者の心拍出量を計算するための方法であって、この方法が、体外血液酸素化回路から患者循環系の静脈部分内への血流量を識別することと、体外血液酸素化回路における酸素化装置内の血液からの二酸化炭素の第1の除去率を確立することと、血液からの二酸化炭素の第1の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、(i)第1の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および(ii)患者に送達される血液中の第1の二酸化炭素含有量または代理物を判定することと、体外血液酸素化回路における酸素化装置内の血液からの二酸化炭素の第2の除去率を確立することと、血液からの二酸化炭素の第2の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、(i)第2の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および(ii)患者に送達される血液中の第2の二酸化炭素含有量または代理物を判定することと、血流量、血液からの二酸化炭素の第1の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、第1の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、患者に送達される血液中の第1の二酸化炭素含有量または代理物、血液からの二酸化炭素の第2の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、第2の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および患者に送達される血液中の第2の二酸化炭素含有量または代理物に対応する患者の心拍出量を計算することと、を含む、方法を提供する。
【0014】
さらなる構成において、本開示は、静脈-静脈体外血液酸素化を受けている患者の心拍出量を計算するための方法であって、この方法が、体外血液酸素化回路から患者循環系の静脈部分内への血流量を判定することと、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第1の交換率を確立することと、第1の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第1の値または代理物を測定することと、第1の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第1の値または代理物を測定することと、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第2の交換率を確立することと、第2の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第2の値または代理物を測定することと、第2の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第2の値または代理物を測定することと、血流量、第1の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第1の値または代理物、前記第1の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第1の値または代理物、第2の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第2の値または代理物、および第2の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第2の値または代理物に対応する患者の心拍出量を計算することと、を含む、方法を提供する。
【0015】
本開示はまた、体外血液酸素化回路に動作可能に接続された患者の心拍出量を定量化するための装置であって、体外血液酸素化回路が、患者の循環系から血液を回収する静脈ライン、血液酸素化装置、ポンプ、および循環系の静脈部分に酸素化血液を戻す動脈ラインを有し、装置が、血液酸素化装置およびポンプのうちの1つに接続するように構成されているコントローラを含み、コントローラが、体外回路からの酸素化血液の測定された流量、体外回路における酸素化装置を通るスイープガスの第1の流量中に測定される、第1の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および患者循環系に送達される血液中の第1の二酸化炭素含有量または代理物、ならびに体外回路における酸素化装置を通るスイープガスの第2の流量中に測定される、第2の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および患者循環系に送達される血液中の第2の二酸化炭素含有量または代理物に基づいて、患者の心拍出量を計算するように構成されている、装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】代表的な静脈-静脈体外血液酸素化回路である。
図2】静脈-静脈体外血液酸素化回路における血液導入および血液回収の場所の描写である。
図3】本開示の代表的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、体外血液酸素化回路100が、患者10の循環系20に接続されて示されている。
【0018】
循環系20は、血液、血管系、および心臓を含むヒト(または動物)循環系である。この説明の目的のために、循環系20は、心肺系30と、心肺系30を体の組織に接続する体循環系とを含む。具体的には、体循環系は、体全体の血管系(動脈、静脈、毛細血管)を介して血液を通過させる。
【0019】
心肺系30は、右心、肺、および左心、ならびに右心を肺に、肺を左心に、そして大動脈の一部、そして体外回路と右心および左心との間に位置する大静脈を接続する血管構造を含む。すなわち、理論的には、心肺系30は、右心、肺、左心、および右心を肺に、肺を左心に直接接続する血管構造のみを含むであろう。しかしながら、実際には、右心の大静脈に直接隣接する体外回路100を動作可能に接続することが実行不可能な場合がある。したがって、心肺系30は、しばしば、右心に入る限られた長さの静脈を含む。例えば、体外回路100は、大腿静脈に接続することができ、それにより、心肺系30をそのような大腿静脈まで効果的に拡張することができる。
【0020】
心肺系および血管系の場合、所与の位置の「上流」という用語は、血流に逆らう方向を指し、所与の位置の「下流」という用語は、所与の位置から離れる血流の方向である。「動脈」側または部分は、酸素化された血液が心臓から毛細血管に流れる部分である。「静脈」側または部分は、血液が毛細血管から心臓および肺(心肺系30)に流れる部分である。
【0021】
従来の体外酸素化装置械のための体外回路100の基本的な構成要素は、静脈(またはアクセス)ライン110、酸素化装置120および熱交換器(図示せず)、ポンプ130、動脈ラインフィルタ(図示せず)、動脈(または戻り)ライン140、静脈ライン内のセンサ116、動脈ラインのセンサ146、およびコントローラ160を含む。
【0022】
体外回路100は、静脈-静脈(VV)体外回路100を形成するように構成される。静脈-静脈体外回路100では、循環系20から体外回路100への血液の回収部位と、体外回路から循環系への血液の導入部位の両方が、循環系の静脈部分に生じる。
【0023】
したがって、VV体外回路100は、循環系20(または心肺系30)の静脈部分から血液を回収し、血液を循環系の静脈部分に戻す。回収された血液は、循環系20の静脈部分に戻される前に、ガス交換または酸素化(ECMO)を通すなど、回収されている間に処理することができる。血液治療は、酸素化(および二酸化炭素の回収)を含むが、これらに限定されない、様々な治療のうちのいずれかであり得る。
【0024】
静脈ライン110は、循環系20の静脈部分から、かつ好ましくは心肺系30の静脈部分から延在する。図2を参照すると、静脈ライン110は、循環系20への流体接続を提供する静脈カニューレ112を含み得る。
【0025】
静脈ライン110はまた、指示薬を体外回路100に導入するための部位として、指示薬導入ポート114を含むか、または提供することができる。1つの構成では、希釈指示薬を導入するための指示薬導入ポート114は、酸素化装置120の入口の上流にある。選択された構成において、導入部位114は、酸素化装置120に統合することができる。
【0026】
体外回路100の構成要素を制御して、体外回路内の流れ内に指示薬を形成または誘導することができることも企図される。例えば、下記に示すように、酸素化装置120内のスイープガス率を変更することができ、濾過速度または治療速度またはヒーターを十分に変更して、効果的な指示薬を体外回路100内に形成することができ、これは次に心肺系30を通って移動する。
【0027】
静脈ライン110において、センサ116は、体外回路100を通る指示薬の通過を感知するための希釈センサであり得る。希釈センサ116(およびセンサ146)は、様々なセンサのうちのいずれかであり得、特定の指示薬と協働することができる。センサ116(およびセンサ146)は、温度、ドップラー周波数、電気インピーダンス、光学特性、密度、超音波速度、グルコース濃度、酸素飽和度、および他の血液物質(任意の物理的、電気的、または化学的血液特性)などであるが、これらに限定されない様々な血液特性を測定することができる。センサ116はまた、血流量を測定することができることも理解される。代替的に、センサ116に加えて、血流量を測定するためのセンサ(図示せず)があり得る。したがって、1つの構成では、本システムは、単一の血液特性センサおよび単一の流量センサを含む。さらに、流量および血液パラメータ(特性)を測定するための単一の組み合わされたセンサを使用することができることが企図されている。本明細書に記載されるように、いくつかのポンプ130では、ポンプの回転速度、RPM(毎分回転数)を測定して、血流量の測定値を提供することができる。
【0028】
動脈ライン140は、体外回路100を循環系20の静脈部分に接続し、1つの構成では、心肺系30の静脈部分に接続する。動脈ライン140は通常、上大静脈に接続するが、右心房(先端位置)または下大静脈に接続することができる。図2に見られるように、動脈ライン140は、循環系20への流体接続を提供する動脈カニューレ142を含むことができる。多腔カテーテルを使用して、VV ECMOを提供できることも理解される。
【0029】
しかしながら、センサ116、146は、体外回路の外側に配置することができることが理解される。すなわち、センサ116、146は、離れて位置し、体外回路100において、指示薬導入から血液中に生じる変化、または、拡散、電磁場、熱場によって、もしくは他の手段によってセンサの場所に送信または転送され得る、指示薬導入に関連する値を測定することができる。
【0030】
指示薬希釈によって再循環を測定するには、1つの希釈センサのみが必要であり得ることがさらに理解される。このようにして得られた再循環の測定値は、2つのセンサで測定した再循環よりも正確でない場合があるが、心拍出量の測定を行うために必要な流量センサは1つのみであってもよいことが認識されている。
【0031】
酸素化装置120は、気泡型、ならびに酸素化装置および膜型酸素化装置に大きく分類することができる。膜型酸素化装置は、ラミネート型、コイル型、および中空糸型に分類される。膜型酸素化装置は、通常、気泡型酸素化装置と比較して、溶血、タンパク質変性、および血液凝固などの血液損傷が少ないため、膜型酸素化装置は気泡型酸素化装置よりも優れている。好ましい構成は、膜型酸素化装置に関して記載されているが、任意のタイプの酸素化装置を用いることができることが理解されている。
【0032】
ポンプ130は、ローラ(またはインペラまたは遠心)ポンプを含むが、これに限定されない、様々なタイプのポンプのうちのいずれかであり得る。ポンプ130は、体外回路100を通して血流量を誘導する。特定の構成に応じて、ポンプ130は、ポンプにおいて直接制御することができ、またはコントローラ160を通して制御して、体外回路内に所与の血流量を確立することができる。ポンプ130は、体外回路100内の様々な場所のうちのいずれかに存在することができ、図に示される位置に限定されない。1つの構成では、ポンプ130は市販のポンプであり、様々な流量のうちのいずれかを提供するように設定または調整することができ、流量は、ユーザによって読み取られ、かつ/またはコントローラ160に送信され、それによって読み取られ得る。
【0033】
コントローラ160は、典型的には、酸素化装置120、ポンプ130、およびセンサ116、146に接続可能である。コントローラ160は、パーソナルコンピュータ、専用デバイスなどのスタンドアロンデバイスであるか、またはポンプ130もしくは酸素化装置120などの構成要素の1つに埋め込まれ得る。コントローラ160は、センサ116および146、ポンプ130および酸素化装置120に接続されて示されているが、コントローラは、センサのみ、センサおよびポンプ、またはセンサ、ポンプおよび酸素化装置の任意の組み合わせに接続され得ることが理解される。1つの構成では、ポンプ130およびコントローラ160のうちの少なくとも1つは、それぞれ、ポンプおよびポンプを通る血液の流量の制御を提供する。また、コントローラ160は、パルスオキシメータに接続してデータを自動的に収集することもでき、または酸素測定データをコントローラに手動で入れることができることも理解される。代替的に、オキシメータおよびコントローラ160は、単一のユニットとして統合することができる。
【0034】
コントローラ160は、本明細書に記載の方程式でプログラムされ、ユーザまたは接続された構成要素からの入力に基づいて関連する計算を実行することができる。
【0035】
体外回路100を通る正常または順方向の血流は、静脈側循環系20(および特に心肺回路30)から静脈ライン110を通して血液を回収することと、(酸素化などの処理を行うために)回収された血液を体外回路に通すことと、動脈ライン140を通して回収された(または処理された、もしくは酸素化された)血液を、動脈カニューレ142を通すなどして循環系の静脈側に導入することと、を含む。それにより、ポンプ130は、静脈ライン110から動脈ライン140への体外回路100を通る既知の(測定された)血流量において血流を誘導する。
【0036】
本説明の目的のために、以下の用語が使用される。心拍出量COは、所与の期間(通常は1分間隔)に左心室から送り出される血液の量である。心臓の容量(流量)は、通常、心拍出量COによって測定される。血流量という用語は、血液の通過速度、単位時間当たりの体積を意味する。血流量は、体積流量(「流量」)である。体積流量は、単位時間当たりに導管の断面積を通過する液体の体積の尺度であり、ミリリットル/分(ml/分)またはリットル/分(l/分)などの単位で表すことができる。
【0037】
体外回路100に血液酸素化を提供するために、体外回路は、血液酸素化装置(酸素化装置)120を包含する。空気と酸素とのスイープガス混合物は、入口200を通して酸素化装置120に送達され、出口210(空気ポンプは図示せず)を通して出る。スイープガス流量は、例えば、酸素化装置120と一体化された、またはそれに動作可能に接続されたスイープガスレギュレータによって変更され得る。酸素化装置120による血液からの二酸化炭素排除は、スイープガス流量に依存する。すなわち、膜型肺(酸素化装置120)を通るスイープガス流量は、血液脱炭酸の量を判定する。
【0038】
出口210を通って酸素化装置120から出る血液の、血液中の二酸化炭素含有量(SCO)(以下SecmoCO)は、Qによって実質的に影響を受けず、むしろ、酸素化装置内のスイープガス流量によって主に判定される。
【0039】
血液中の二酸化炭素含有量SecmoCOの値は、直接的な血液サンプリング(動脈血ガス分析)によって、または二酸化炭素分圧を測定する酸素化装置流出空気210内のセンサ220によって、代理物を用いて直接的に測定されるか、または推定することができる。実際の二酸化炭素、または代理値を測定するための市販のセンサのうちのいずれかを使用することができる。代理物は、CO含有量に関連する値または測定値であり、ガス中のCOの分圧、溶液中に溶解したCOの分圧、血液中の重炭酸塩濃度、カルバミノヘモグロビン濃度が含まれ得るが、これらに限定されない。一般的に、真の含有量(実際のパラメータ測定)ではなく代理物を使用すると正確性が低下すると仮定される。
【0040】
本システムの目的は、VV ECMO設定におけるような、VV体外血液酸素化において、COを測定するための単純な非侵襲的技術を提供することである。ECMOを含むVV体外血液酸素化中の心拍出量COを測定するための本技術を適用するために、以下の用語が使用される。
【0041】
CO-(心臓に入る前の静脈血管内の)混合静脈二酸化炭素含有量。
【0042】
CO-動脈内二酸化炭素含有量(これは、以下記載されるように、動脈血サンプル(動脈血ガス分析、ABG)、動脈化毛細血管血液ガス分析、または経皮的二酸化炭素の分圧、ならびに人工呼吸器または患者の呼気ガス中の二酸化炭素含有量を含むがこれらに限定されない、代理物を用いて測定または推定することができる。
【0043】
ecmoCO-酸素化装置120を通過した後に、患者に送達される血液中の二酸化炭素含有量であり、これは、本明細書に記載されるように、患者に流れ込む血液から直接測定されるか、または酸素化装置からのスイープガス空気の流出におけるセンサの測定値からの二酸化炭素分圧などの代理物を用いて判定もしくは計算され得る。
【0044】
-体外流量(これは、以下に記載されるように、体外回路内のポンプの流量によって測定することができるか、または市販の流量計で容易に測定することができる)。
【0045】
R%-再循環(%)
【0046】
CO-心拍出量
【0047】
再循環のない平衡方程式
最初の例では、質量平衡等式が体外回路100に適用される。この分析では、(i)再循環が存在せず、(ii)肺がCOを僅かに交換しているだけである(換言すると、肺の機能が低下している)という仮定が行われる。
血液中のCO含有量の質量平衡等式は、VV ECMOについて書くことができる:
【数1A】
【0048】
ここで、SecmoCO、SCOおよびSCOは、上記の通りである。
【0049】
この方程式およびすべての以下の方程式において、この平衡方程式の値は、二酸化炭素の抽出/交換が損なわれる(最小)、機能が低下している肺について最も正確であることに留意されたい。肺が部分的に機能している場合、肺の後に流れる血液の二酸化炭素については、この方程式は依然として正しい状態にある。そのような状況では、SCOの名称を変更する必要があるかもしれないが、平衡方程式は変わらない。
【0050】
COを求める:
【数2A】
【数3A】
【数4A】
【0051】
現在、VV ECMO治療中は、QおよびSecmoCOは代理物から測定または推定することができるが、その一方でSCOは測定が困難である。すなわち、SCOは、通常、体外(ECMO)回路100内の酸素化装置120における血液サンプリング事前酸素化装置(上流)によって測定され、これは、混合静脈値とは異なることがあり、任意の再循環の存在に依存する。
【0052】
したがって、SCO値の信頼性に応じて、方程式4Aに2つの未知数が存在し、または、方程式は現在の項に基づいてCO評価に依然として使用することができるが、精度は低くなる。
【0053】
再循環を伴う平衡方程式
本システムのさらなる構成は、任意の再循環の計算を組み込むことができる。VV ECMOなどの静脈-静脈体外血液酸素化において、再循環とは、再注入された酸素化血液が循環系20を通過することなく、ドレナージカニューレ(アクセスライン)を通して、再注入された酸素化血液を回収することである。再循環された血液は循環系20における酸素送達に寄与しないので、再循環の存在は、体外血液酸素化(ECMO)処置の効率を低下させる。
【0054】
再循環の場合、100%酸素化された血液を心臓に運ぶ実際の有効な流れQeffは次のようになる。
【数5A】
【0055】
方程式4AのQをQeffに置き換えると、次のようになる。
【数6A】
【0056】
effをQに置き換えると、次のようになる。
【数7A】
【0057】
再循環を伴う2つの平衡方程式
COの潜在的に信頼できない、または未知の値と肺の影響を排除する目的で、CO測定の精度を高めるために、スイープガスの流量を変更することができる。これにより、SecmoCOの異なる値が生じ、動脈内二酸化炭素含有量SCO、ならびに任意の潜在的呼気のCOが変化する。
【0058】
(酸素化装置120のスイープガス流量を用い、かつ出口210を通るなどの)スイープガスの流量の増加は、SecmoCOを減少させ、スイープガス流量の減少は、SecmoCOを増加させる。
【0059】
したがって、2つの方程式を、2つの異なるスイープガス流量について、方程式7Aに類似して生じさせることができる。2方程式系(スイープガス流量ごとに1つの方程式)では、添字(1)と添字(2)は、それぞれ第1および第2のスイープガス流量を表す。SCOおよびCOの変化が、2つの異なるスイープガス流量の間で無視できることを考慮すると、次のようになる。
【数8A】
【数9A】
【0060】
方程式8Aおよび9A系は、2つの未知のCOおよびSCOを有し、したがって、COについて解くことができる:
【数10A】
【0061】
方程式10Aから、心拍出量COは、(i)動脈内二酸化炭素含有量SCO(これは、動脈血サンプルによって測定、または患者の呼気の代理値を用いて推定することができる)、および(ii)酸素化装置120を通過した後に患者に送達される血液中の二酸化炭素含有量SecmoCO(これは、血液の直接測定などの測定から、または各流量における酸素化装置からのスイープガス空気の流出におけるセンサからの代理物を用いて、計算または導出することができる)の対応する測定された変化を提供する、スイープガス流量の変化と併せて、既知のまたは測定された単一の体外流量Qから測定可能であることが分かる。
【0062】
スイープガスの変化は、二酸化炭素除去の変化を提供するものとして記載されているが、体外回路100から患者に流れ込む血液の任意の他のパラメータ変化を使用して、方程式8A~10Aに類似した方法でCOを測定することができることが理解される。
【0063】
さらに、方程式8から分かるように、再循環R%がゼロまたはそれに近いと仮定される、または見なされる場合、方程式10は以下のようになる:
【数11A】
ここでは、心拍出量COを判定するために再循環の測定を必要としない。
【0064】
したがって、1つの構成では、システムは、酸素化装置120からのスイープガスの流出において二酸化炭素センサ220に動作可能に接続されたコントローラ160を含み、そこからSecmoCOは、酸素化装置から来る血液から測定されるか、または二酸化炭素分圧のような代理物を用いて推定される。コントローラ160はまた、動脈内二酸化炭素含有量SCOを判定するためのセンサまたは代理物(動脈血ガス分析、カプノメータ、呼気ガス分析、動脈化毛細血管血液ガス分析、または経皮的二酸化炭素の分圧を測定することによってなど)に接続される。
【0065】
コントローラ160は、上記のように代理測定値をそれぞれの二酸化炭素含有量に変換するための、または代理測定値を対応する二酸化炭素含有量に変換するためのルックアップテーブルを有するメモリでプログラムされているか、またはメモリにアクセスする。さらに、コントローラ160はまた、体外回路100を通る流量を得るために、ポンプ130、または流量計(図示せず)に接続される。コントローラ160は、心拍出量COの計算のために、本方程式または同等のものでプログラムされる。
【0066】
本開示は、静脈-静脈体外血液酸素化を受けている患者の心拍出量を計算するための方法であって、この方法が、体外血液酸素化回路100から患者循環系20の静脈部分内への血流量を確立するステップと、体外血液酸素化回路からの血流量を測定するステップと、体外回路100における酸素化装置120内の血液からの二酸化炭素の第1の除去率を確立するステップと、血液からの二酸化炭素の第1の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、(i)第1の動脈内二酸化炭素含有量または動脈内二酸化炭素含有量の第1の代理物、および(ii)患者に送達される血液中の第1の二酸化炭素含有量を判定する(第1の送達される二酸化炭素含有量に対する代理物を測定するなど、血液からの二酸化炭素の第1の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、患者に送達される血液中の第1の二酸化炭素含有量、または二酸化炭素含有量の第1の代理物を測定することによるなど)ステップと、体外回路における酸素化装置内の血液からの二酸化炭素の第2の除去率を確立するステップと、血液からの二酸化炭素の第2の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、(i)第2の動脈内二酸化炭素含有量または動脈内二酸化炭素含有量の第2の代理物、および(ii)患者に送達される血液中の第2の二酸化炭素含有量を判定する(第2の送達される二酸化炭素含有量に対する代理物を測定するなど、血液からの二酸化炭素の第2の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、患者に送達される血液中の第2の送達される二酸化炭素含有量または二酸化炭素の第2の代理物を測定することによるなど)ステップと、血流量、第1の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、第1の二酸化炭素含有量または代理物(第1の、または代理の送達される二酸化炭含有量)、第2の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および第2の二酸化炭含有量または代理物(第2の、または代理の送達される二酸化炭含有量)に対応する患者の心拍出量を計算するステップと、を含む方法を提供する。
【0067】
体外回路100における酸素化装置120内の血液からの二酸化炭素の第1の除去率を確立することは、酸素化装置を通る第1のスイープガス流量を確立することを含み得ることが企図される。この方法は、体外血液酸素化回路100における再循環を測定することと、測定された再循環に対応する計算された心拍出量を調整することとをさらに企図する。加えて、血流量を測定することは、体外血液酸素化回路100内のポンプによって提供され得る。また、第1の希釈センサは、体外回路100の静脈ラインに接続することができ、第2の希釈センサは、体外回路の動脈ラインに接続することができ、両方のセンサは、コントローラと動作可能に通信する。方法は、第2の希釈センサの上流、および第1の希釈センサの下流で、体外回路100に指示薬を導入することによって、再循環を測定することを含み得る。上記のように、再循環測定に必要な希釈センサは1つだけであり(しかし、2つのセンサを使用するよりも正確ではない場合がある)、したがって、選択された構成では、流量測定に使用できるのは1つの流量センサだけであることが理解される。
【0068】
図3を参照すると、静脈-静脈体外血液酸素化を受ける患者の心拍出量を計算するためのさらなる方法は、体外血液酸素化回路100から患者循環系20の静脈部分内への血流量を確立するステップ201と、体外回路を通る血流量を測定するステップ203と、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第1の交換率を確立するステップ205と、第1の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第1の値または代理物を測定するステップ207と、第1の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第1の値または代理物を測定するステップ209と、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第2の交換率を確立するステップ211と、第2の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第2の値または代理物を測定するステップ213と、第2の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第2の値または代理物を測定するステップ215と、体外回路を通る血流量、第1の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第1の値または代理物、第1の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第1の値または代理物、第2の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第2の値または代理物、および第2の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第2の値または代理物に対応する患者の心拍出量を計算するステップ217と、を含む。ステップ201および203は、体外血液酸素化回路100から患者循環系20の静脈部分内への所定の血流量を確立する単一のステップに組み合わせ可能であることが理解される。
【0069】
この方法では、測定値または代理血液パラメータは、二酸化炭素であり得る。この方法は、体外血液酸素化回路100における再循環を測定することと、測定された再循環に対応する計算された心拍出量を調整することとをさらに含み得る。加えて、体外血液酸素化回路内で血流量を測定することは、体外血液酸素化回路内のポンプによって提供され得る。1つの構成では、この方法は、第1の希釈センサを体外血液酸素化回路の静脈ラインに、かつ第2の希釈センサを体外血液酸素化回路の動脈ラインに動作可能に接続することをさらに含み得、再循環を測定することは、第2の希釈センサの上流、および第1の希釈センサの下流で体外血液酸素化回路に指示薬を導入することを含む。この方法は、さらに、血液が患者循環系に入る前に、第1の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第1の値を測定することと、血液が患者の循環系に入る前に、第2の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第2の値を測定することと、を含み得る。
【0070】
さらなる構成において、静脈-静脈体外血液酸素化を受けている患者の心拍出量を計算するための方法であって、この方法が、体外血液酸素化回路から患者循環系の静脈部分内への血流量を測定することと、体外血液酸素化回路内の血液からの二酸化炭素の第1の除去率に対応する体外血液酸素化回路を通過した後の、(i)第1の動脈内二酸化炭素含有量、および(ii)患者に送達される血液中の第1の二酸化炭素含有量を測定することと、体外血液酸素化回路内の血液からの二酸化炭素の第2の除去率に対応する体外血液酸素化回路を通過した後の、(i)第2の動脈内二酸化炭素含有量、および(ii)患者に送達される血液中の第2の二酸化炭素含有量を測定することと、測定された血液流量、体外血液酸素化回路内の血液からの二酸化炭素の第1の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、第1の動脈内二酸化炭素含有量、患者に送達される血液中の第1の二酸化炭素含有量、体外血液酸素化回路内の血液からの二酸化炭素の第2の除去率に対応する酸素化装置を通過した後の、第2の動脈内二酸化炭素含有量、および患者に送達される血液中の二酸化炭素含有量に対応する患者の心拍出量を計算することと、を含む方法が提供される。体外血液酸素化回路における酸素化装置内の血液からの二酸化炭素の第1の除去率が、酸素化装置を通る第1のスイープガス流量を確立することを含むことが企図される。
【0071】
さらに別の構成では、静脈-静脈体外血液酸素化を受けている患者の心拍出量を計算するための方法であって、この方法が、体外血液酸素化回路から患者循環系の静脈部分内への血流量を測定することと、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第1の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第1の値を測定することと、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第1の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第1の値を測定することと、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第2の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第2の値を測定することと、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第2の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第2の値を測定することと、血流量、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第1の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第1の値または代理物、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第1の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第1の値、体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第2の交換率に対応する患者循環系の動脈部分内の血液パラメータの第2の値、および体外血液酸素化回路内の血液とのガスの第2の交換率に対応する患者に送達される血液中の血液パラメータの第2の値に対応する、患者の心拍出量を計算することと、を含む方法が提供される。
【0072】
本開示はまた、体外血液酸素化回路に動作可能に接続された患者の心拍出量を定量化するための装置であって、体外血液酸素化回路が、患者の循環系から血液を回収する静脈ライン、血液酸素化装置、ポンプ、および酸素化された血液を循環系の静脈部分に戻す動脈ラインを有し、装置が、(a)血液酸素化装置およびポンプのうちの1つに接続するように構成されているコントローラを含み、コントローラが、体外回路からの酸素化血液の測定された第1の流量、体外回路における酸素化装置を通るスイープガスの第1の流量中に測定される、患者循環系に送達される第1の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および第1の二酸化炭素含有量または代理物、ならびに体外回路における酸素化装置を通るスイープガスの第2の流量中に測定される、第2の動脈内二酸化炭素含有量または代理物、および患者循環系に送達される第2の二酸化炭素含有量または代理物に基づいて、患者の心拍出量を計算するように構成されている、装置を企図している。
【0073】
本明細書で使用されているように、指示薬は、測定可能な血液特性を変更する任意の物質であると理解されている。指示薬は、血液の測定可能なパラメータを変更する場合がある。例えば、指示薬は、化学的、光学的、電気的、熱的、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。特定の指示薬は、予想される動作環境によって少なくとも部分的に決定される。利用可能な指示薬には、生理食塩水、温度の上昇または低下、ならびに染料および様々な同位体が含まれる。温度差の使用は、熱源(酸素化装置120内のヒーターなど)または周囲の流れ内のヒートシンクを局所的に形成することによって達成することができる。局所的な温度勾配の形成は、血流に追加の量を導入することなく希釈指示薬を用いることができるという利点を提供する。すなわち、温度差は、指示薬の量の導入を伴わずに形成され得る。代替的に、ある量の加熱または冷却された血液が、指示薬として、指示薬導入ポート114において導入され得る。体外回路100の構成要素を制御して、体外回路内の流れ内に指示薬を形成または誘導することができることも企図される。例えば、濾過または治療速度またはヒーターを十分に変更して、体外回路100内に効果的な指示薬を形成することができ、それが次に心肺系30を通って移動する。
【0074】
説明の目的で、計算(または計算する)という用語は、性質、量、または数量を評価または推定することを含め、数学的に何かの量または数を判定することを意味する。
【0075】
説明の目的で、測定(または測定する)という用語は、標準単位で記された機器もしくはデバイスを使用することによって、またはそれを既知のサイズの物体と比較することによってなど、(何か)のサイズ、量、または程度を確認または確立することを含む、関連するパラメータの量を意味し、測定は代表または代用値または代用パラメータの測定であり得る。例えば、患者循環系20に導入された酸素化血流量を測定するために、ポンプ130の設定を使用することができるか、別個の流量計を使用することができるか、または希釈測定を使用することができる。測定は、1つ以上のステップを含むことができることがさらに企図される。
【0076】
本明細書で使用される場合、計算または計算するという用語は、数学、数学的プロセス、または方程式を使用して数または量を発見または特定することを意味する。
【0077】
本明細書で使用される場合、代理物という用語は、1つ以上の他のパラメータのメトリックとして使用されるパラメータである。説明の目的で、特定のパラメータが測定されたものとして記載されている場合、そのような測定は、本システムから逸脱することなく、測定されたパラメータ、または代理物、または代理パラメータの代表を含むと理解される。したがって、パラメータ、流量、血流量、再循環、または二酸化炭素含有量の測定には、関連する代表的なパラメータの測定、ならびに代理物または代理パラメータの測定が含まれることが理解される。
【0078】
本開示は、特に一実施形態を参照して詳細に説明されてきたが、変更および修正は、本開示の趣旨および範囲内で実施され得ることが理解されるであろう。したがって、現在開示されている実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その同等物の意味および範囲内にあるすべての変更は、そこに含まれることが意図されている。
図1
図2
図3