(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】浴室構造
(51)【国際特許分類】
A47K 4/00 20060101AFI20230912BHJP
E03C 1/20 20060101ALI20230912BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20230912BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20230912BHJP
A47K 3/16 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A47K4/00
E03C1/20 A
E03C1/20 E
E04H1/12 301
A61H33/00 310C
A47K3/16
(21)【出願番号】P 2019135576
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】飯野 武寛
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-336250(JP,A)
【文献】登録実用新案第3163206(JP,U)
【文献】米国特許第05343575(US,A)
【文献】特開平11-190136(JP,A)
【文献】実開平3-102996(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02- 4/00
E03C 1/12- 1/33
E04H 1/12
A61H 33/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽が所定の移動方向に移動可能に配置されている浴槽支持部と、
を備え、
前記浴槽は、
湯溜凹部を有する浴槽本体と、
前記浴槽本体に接続し且つ前記移動方向における湯溜凹部の外側に設けられた車輪と、
を備え、
前記浴槽支持部には、前記車輪が離脱可能に収まる凹部が
、前記浴槽が複数の位置で固定できるよう形成されている、
浴室構造。
【請求項2】
浴槽と、
前記浴槽が所定の移動方向に移動可能に配置されている浴槽支持部と、
を備え、
前記浴槽は、
湯溜凹部を有する浴槽本体と、
前記浴槽本体に接続し且つ前記移動方向における湯溜凹部の外側に設けられた車輪と、
前記浴槽支持部を有する浴槽パン床面と、
前記浴槽パン床面に隣接する洗い場パン床面と、
を備え、
前記浴槽支持部には、前記車輪が離脱可能に収まる凹部が形成され、
前記湯溜凹部の底面の外周縁部に浴槽排水口が設けられ、
前記浴槽排水口の前記移動方向の大きさは前記浴槽排水口の高さ方向の大きさより大きく、
前記浴槽パン床面又は前記洗い場パン床面には、前記浴槽排水口に対向し且つ前記移動方向に沿って延在する第1排水溝が形成され、
前記浴槽パン床面には、前記第1排水溝と浴室の外部に通ずる浴室排水口とを連通するように延在する第2排水溝が形成されている、
浴室構造。
【請求項3】
前記浴槽パン床面と前記洗い場パン床面との高さの差異が0mm以上5mm以内である、
請求項2に記載の浴室構造。
【請求項4】
浴槽と、
前記浴槽が所定の移動方向に移動可能に配置されている浴槽支持部と、
を備え、
前記浴槽は、
湯溜凹部を有する浴槽本体と、
前記浴槽本体に接続し且つ前記移動方向における湯溜凹部の外側に設けられた車輪と、
を備え、
前記浴槽支持部には、前記車輪が離脱可能に収まる凹部が形成され、
前記浴槽は、
前記浴槽本体に接続され、前記湯溜凹部の底面より低い補助リブをさらに備え、
前記浴槽支持部には、
前記移動方向に沿って延在し、且つ前記補助リブの少なくとも一部が収まるガイド溝が形成されている、
浴室構造。
【請求項5】
前記凹部は、前記浴槽が前記浴槽の長手方向に移動可能に配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の浴室構造。
【請求項6】
前記湯溜凹部は、開口を有し、
前記浴槽本体は、前記開口の縁から、高さ方向に直交する直交面に沿って突出する浴槽框をさらに備え、
前記浴槽は、前記浴槽框に接続された支柱をさらに備え、
前記車輪は、前記支柱の端面に取り付けられている
請求項1から5のいずれか一項に記載の浴室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅や各種施設等には、身障者や高齢者等の要介助者を介助するための様々な設備が設置されている。その1つとして、バスボードや移乗台が設けられ、要介助者の身体特性や入浴動作に応じて浴槽とバスボードや移乗台との相対位置を変更可能に構成された浴室が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、浴槽配置用床の浴槽の非配置部に配置される少なくとも2つのバスボードを備えた浴室構造が開示されている。特許文献2には、浴槽配置用床に設置されたスライドレールと、スライドレールに搭載された横移動ベースと、横移動ベースに取り付けられた浴槽載置部とを有する浴室構造が開示されている。特許文献2に記載されている浴室構造では、浴槽の下端部を浴槽載置部に載置すれば、浴槽をスライドレールに沿って移動させることができる。
【0004】
また、例えば、特許文献3には、先端に低摩擦材が取り付けられた脚部が浴槽に設けられ、浴槽が浴槽配置用床の上の略中央と端部とに置き換え自在に配置されている浴室構造が開示されている。例えば、特許文献4には、浴槽の長手方向に沿って延在するように形成され、且つ浴槽の脚部が摺動可能に載置されて該浴槽を長手方向にスライド移動可能とさせる長尺なレール部を備えた浴室構造が開示されている。
【0005】
また、上述以外にも例えば、特許文献5には、湯溜凹部の下方の浴槽本体の底面に車輪が設けられた移動式浴槽システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-104197号公報
【文献】特開2003-070668号公報
【文献】特開2004-173703号公報
【文献】特開2010-268890号公報
【文献】特開2007-175241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の浴室構造や移動式の浴槽では、浴槽を移動可能とするために浴槽本体の底面に脚部や車輪等の移動機構が取り付けられ、浴槽本体の底面が浴室の基準面から離れ、浴槽本体の安定性が低下する虞があった。また、浴槽本体の底面に移動機構が取り付けられた状態で浴槽本体の底面を基準のパン床面に近づけようとすると、浴槽パン床面を基準面より低くしなければならず、浴槽パン床面に形成される排水溝の勾配が確保しにくくなり、湯水の排水効率が低下する虞があった。
【0008】
本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、浴槽を安定して移動させることができ、浴槽の湯水の排水効率を確保できる浴室構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の浴室構造は、浴槽と、前記浴槽が所定の移動方向に移動可能に配置されている浴槽支持部と、を備え、前記浴槽は、湯溜凹部を有する浴槽本体と、前記浴槽本体に接続し且つ前記移動方向における湯溜凹部の外側に設けられた車輪と、を備え、前記浴槽支持部には、前記車輪が離脱可能に収まる凹部が、前記浴槽が複数の位置で固定できるよう形成されている。
上述の浴室構造では、移動方向において湯溜凹部の外側に車輪があるので、浴槽本体の底面に移動機構がある場合に比べて浴槽本体の底面の高さを浴室の基準面の高さに近づけることができ、移動方向に沿って浴槽を安定させて容易に移動できる。また、上述の浴室構造では、浴槽本体の底面と浴槽支持部の対向面とが近いので、浴室構造内で許容される高低差の大部分を排水溝の高低差に用いることができ、排水溝の勾配を十分にとることができる。このことによって、浴槽の湯水の排水効率を確保できる。仮に、浴槽本体の底面に車輪がある場合、浴槽支持部を有する浴槽パン床面を周囲のパン床面より下げるとなると、浴室構造内で許容される高低差の大部分を、浴槽パン床面を周囲のパン床面から下げるためのオフセットとして使うことになる。そうすると、湯溜凹部から排出される湯水を浴室構造の外部の排水管に導くための排水溝の勾配を十分にとることができない。
【0010】
本発明の浴室構造では、浴槽と、前記浴槽が所定の移動方向に移動可能に配置されている浴槽支持部と、を備え、前記浴槽は、湯溜凹部を有する浴槽本体と、前記浴槽本体に接続し且つ前記移動方向における湯溜凹部の外側に設けられた車輪と、前記浴槽支持部を有する浴槽パン床面と、前記浴槽パン床面に隣接する洗い場パン床面と、を備え、前記浴槽支持部には、前記車輪が離脱可能に収まる凹部が形成され、前記湯溜凹部の底面の外周縁部に浴槽排水口が設けられ、前記浴槽排水口の前記移動方向の大きさは前記浴槽排水口の高さ方向の大きさより大きく、前記浴槽パン床面又は前記洗い場パン床面には、前記浴槽排水口に対向し且つ前記移動方向に沿って延在する第1排水溝が形成され、前記浴槽パン床面には、前記第1排水溝と浴室の外部に通ずる浴室排水口とを連通するように延在する第2排水溝が形成されていてもよい。
上述の浴室構造では、浴槽排水口の長手方向が第1排水溝の延在方向に沿っているので、浴槽排水口から排出される湯水の第1排水溝への単位時間当たりの排出量が増加すると共に、浴槽排水口から排出される湯水が第1排水溝から溢れにくくなる。また、浴槽排水口が浴槽の移動に伴って移動方向の任意の位置に移動しても、浴槽排水口から排出される湯水は、浴槽排水口に対向する第1排水溝に流入し、浴室排水口に導かれる。このことによって、浴槽排水口から排出される湯水を円滑に浴室排水口に導き、浴室の外部に排水できるので、湯水の排水効率を高めることができる。また、上述の浴室構造では、浴槽パン床面の湯水や水滴を第2排水溝に集め、浴室排水口に導き、浴室の外部に排水できる。
【0011】
本発明の浴室構造では、前記浴槽パン床面と前記洗い場パン床面との高さの差異が0mm以上5mm以内であってもよい。
上述の浴室構造では、浴槽パン床面と洗い場パン床面との高さの差異が0mm以上5mm以内であるので、従来の浴室構造のように浴槽パン床面に、洗い場パン床面との高さを揃えて移乗台等を設置可能とするためのサイドボードがなくても移乗台等を浴槽パン床面に直接設置できる。そのため、サイドボードを設ける必要がなくなり、サイドボードレスを実現できる。
【0012】
本発明の浴室構造では、浴槽と、前記浴槽が所定の移動方向に移動可能に配置されている浴槽支持部と、を備え、前記浴槽は、湯溜凹部を有する浴槽本体と、前記浴槽本体に接続し且つ前記移動方向における湯溜凹部の外側に設けられた車輪と、を備え、前記浴槽支持部には、前記車輪が離脱可能に収まる凹部が形成され、前記浴槽は、前記浴槽本体に接続され、前記湯溜凹部の底面より低い補助リブをさらに備え、前記浴槽支持部には、前記移動方向に沿って延在し、且つ前記補助リブの少なくとも一部が収まるガイド溝が形成されていてもよい。
上述の浴室構造では、補助リブの少なくとも一部がガイド溝に収まった状態で浴槽が浴槽支持部上を移動することにより、車輪及び浴槽が移動経路からずれにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の浴室構造によれば、浴槽を安定して移動させることができ、浴槽の湯水の排水効率を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の浴室構造を入口側から見た図である。
【
図3】
図1に示す浴室構造の入力空間の構造を移動方向及び高さ方向に直交する方向に沿って切断した側断面図である。
【
図4】
図1に示す浴室構造の床上の防水パンの斜視図である。
【
図5】
図1に示す浴室構造において浴槽を移動させる様子を説明するための図であり、
図1に示す浴室構造の入力空間の構造を移動方向に沿って切断した側断面図である。
【
図6】
図1に示す浴室構造において浴槽を移動させる様子を説明するための別の図であり、
図1に示す浴室構造の入力空間の構造を移動方向に沿って切断した側断面図である。
【
図7】
図1に示す浴室構造において浴槽を移動させる様子を説明するための他の図であり、
図1に示す浴室構造の入力空間の構造を移動方向に沿って切断した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の浴室構造の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態の浴室構造5は、浴室10に設けられた浴槽100と、浴槽100が長手方向(所定の移動方向)Mに移動可能に配置されている浴槽支持部200と、を備える。
【0017】
浴室10は、略矩形の床11と、床11と同形状の天井12と、床11の外周縁と天井12の外周縁とを高さ方向Tにおいて接続する4つの側壁と、を備える。天井12、床11、及び4つの側壁のそれぞれの浴室10の内側の面には、保温性を備えた防水パンが設けられる。
図1では、浴室10の全体構成及び内部をわかりやすく示すため、天井12、天井12に設けられた防水パン22、床11、床11に設けられた防水パン21-1、21-2、4つの側壁のうち3つの側壁13-1、13-2、13-3、及びこれらの側壁に設けられた防水パン23、24、25が図示され、浴室10の内部への入口が設けられた側壁は省略されている。
【0018】
浴室10の内部は、入浴エリア17と、洗い場エリア18に区画されている。入浴エリア17では、浴槽100が長手方向Mに沿って移動可能に構成され、浴室構造5の入浴者(図示略、以下では単に「入浴者」という)が浴槽100に浸かる。洗い場エリア18では、入浴者や介護者が入浴者の身体を洗うことができる。入浴エリア17の床11には、防水パン21-1が設けられる。洗い場エリア18の床11には、防水パン21-2が設けられる。
【0019】
防水パン21-1は、浴槽支持部200に対応し、浴室10の内部に面する浴槽パン床面27を有する。防水パン21-2は、浴室10の内部に面する洗い場パン床面28を有する。浴槽パン床面27と洗い場パン床面28との高さの差は、小さい程よく、例えば0mm以上5mm以内であることが好ましく、3mm以内であることがより好ましい。
【0020】
床11及び防水パン21-1、21-2の長手方向Mにおける大きさは、浴槽100の長手方向Mにおける大きさより大きい。浴室構造5は、身障者や高齢者等の要介助者の入浴を快適且つ円滑に行えるようにすることを目的として構成されている。浴槽100は、長手方向Mにおけるいずれの位置でも防水パン23に隣接する。一方、浴槽100は、長手方向Mにおいて防水パン24、25の間を移動できる。浴槽100は、防水パン24、25の一方に隣接し、他方との間に隙間を形成する配置と防水パン24、25の双方との間に隙間を形成する配置のいずれもとることができる。
【0021】
図1は、浴槽100が長手方向Mにおいて防水パン24、25のそれぞれと隙間をおいて配置された状態を示す。浴槽100と防水パン24との隙間の浴槽パン床面27に、移乗台37が配置されている。浴槽100と防水パン25との隙間の浴槽パン床面27に、移乗台38が配置されている。移乗台37、38は、入浴者の洗い場エリア18から浴槽100の湯溜凹部102の内部への移動を容易にするための台である。
【0022】
前述の目的のため、防水パン23には、入浴者や介護者が湯溜凹部102に溜められた湯水に浸かる際につかまるための手摺31-1、31-2が取り付けられている。手摺31-1、31-2は、長手方向Mに沿って防水パン23の所定の位置に取り付けられている。手摺31-1、31-2は、高さ方向Tに沿って手摺31-3、31-4によって互いに接続されている。
【0023】
入浴エリア17の防水パン24には、入浴者や介護者が移乗台37に移動する際につかまるための手摺32が取り付けられている。手摺32は、高さ方向Tに沿って防水パン24の所定の位置に取り付けられている。
【0024】
洗い場エリア18の防水パン24の所定の位置には、シャワーカウンタ41が取り付けられている。シャワーカウンタ41の取付位置より天井12に近い側の防水パン24には、緊急時スイッチ42、水栓43、鏡44が取り付けられている。水栓43には、蛇口、シャワー、蛇口やシャワーから吐水される湯水の温度調節機構及び水量調節機構が設けられる。天井12側を除いて鏡44の周囲の防水パン24には、入浴者や介護者が鏡44を使用する際につかまるための手摺33が取り付けられている。
【0025】
入浴エリア17の防水パン25には、入浴者や介護者が移乗台38に移動する際につかまるための手摺34が取り付けられている。手摺34は、高さ方向Tに沿って防水パン25の所定の位置に取り付けられている。手摺34の床11側の端部と手摺34とは離れて防水パン25に取り付けられた不図示の手摺の床11側の端部とは、互いに接続されている。
【0026】
図2に示すように、浴槽100は、湯溜凹部102を有する浴槽本体104と、浴槽本体104の浴槽框106に接続された支柱108及びカバー110と、を備える。浴槽本体104は、湯溜凹部102に湯水を溜めることができるように形成された槽である。高さ方向Tに沿って見たとき、湯溜凹部102の開口105はトラック形状を有し、浴槽框106の外周縁は開口105より大きい長方形状を有する。
【0027】
湯溜凹部102は、底面103から高さ方向Tにおいて開口105と同じ高さの頂面101まで高さ方向Tに直交する直交面に沿って僅かに拡がる。
図1及び
図3に示すように、平面視では、湯溜凹部102において防水パン23に近い側の側面119の高さ方向Tの中央部に、段133が設けられる。前述の中央部から頂面101までの前述の幅方向Dにおける湯溜凹部102の大きさは、同じく底面103から前述の中央部までの幅方向Dにおける湯溜凹部102の大きさより大きい。なお、
図3では、カバー110は、省略されている。
【0028】
湯溜凹部102において防水パン23に近い側の側面119の高さ方向Tの中央部より頂面101に近い位置に、入浴者が湯溜凹部102に入る際につかまるための手摺135が設けられる。
【0029】
図2に示すように、湯溜凹部102において防水パン24に近い側の側面119の高さ方向Tの中央部より底面103に近い位置に、浴槽給水口137が形成されている。浴槽給水口137は、長手方向Mに沿って見た状態で円形状を有する。
【0030】
図2及び
図3に示すように、浴槽本体104の底面107には、防水パン21-1に向かって突出する補助リブ120-1、120-2が設けられる。即ち、補助リブ120-1、120-2は、浴槽本体104に接続され、且つ底面103より防水パン21-1に近づくように低く設けられる。また、補助リブ120-1、120-2は、長手方向Mに沿って延在する。補助リブ120-2は、長手方向M及び高さ方向Tの双方に直交する幅方向Dにおいて補助リブ120-1より浴槽100の奥側、即ち防水パン23に近い側の位置に設けられる。
【0031】
補助リブ120-1、120-2における長手方向Mの両端部に、底面103より防水パン21-1に近づくように補助リブ120-1、120-2から突出する突起121、122が設けられる。長手方向Mにおいて突起121、122の間に、互いに間隔をあけて補助リブ120-1、120-2から突出する突起123、124、125、126、127が設けられる。幅方向Dに沿って見ると、補助リブ120-2及び補助リブ120-2に設けられた突起は、補助リブ120-1及び補助リブ120-1に設けられた突起123~127と重なる。なお、
図2等では、補助リブ120-2に設けられた突起123~127は、隠れて図示されていない。
【0032】
浴槽框106は、開口105の縁から、前述の直交面に沿って突出している。支柱108は、浴槽本体104の四隅付近のそれぞれより前述の直交面に沿って外側の浴槽框106から、高さ方向Tに沿って底面103に向かって延在する。4つの支柱108のそれぞれにおいて浴槽框106から最も遠い端面117は、底面107より浴槽框106に近い位置にある。4つの支柱108の端面117には、接続柱111、取付座112、フォーク113、シャフト114等の部品を介して、車輪115-1、115-2、115-3、115-4が取り付けられている。フォーク113は、前述の直交面において回転不能な状態で取付座112に取り付けられているため、車輪115-1、115-2、115-3、115-4は長手方向Mに沿って向くように固定されている。車輪115-1、115-2、115-3、115-4の大きさは、互いに同じである。
【0033】
以下において、車輪115-1、115-2、115-3、115-4に共通する内容の説明時には、これら4つの車輪をまとめて車輪115と記載する。車輪115は、平面視及び側面視において湯溜凹部102の外側の位置にあり、長手方向M、つまり浴槽100の移動方向において湯溜凹部102の外側の位置にある。なお、車輪115は不図示の芯金を備えてフォーク113に取り付けられてもよい。
【0034】
車輪115-1、115-2は、長手方向Mに沿って並び、長手方向M及び高さ方向Tの双方に直交する幅方向Dにおいて互いに重なる。車輪115-3、115-4は、幅方向Dにおいて車輪115-1、115-2より浴槽100の奥側、即ち防水パン23に近い側の位置に設けられ、且つ互いに重なる。幅方向Dに沿って見ると、車輪115-3、115-4は、車輪115-1、115-2と重なる。平面視では、車輪115-1及び115-2は、幅方向Dにおいて、補助リブ120-1の近傍且つ補助リブ120-1より防水パン23に近い位置に設けられる。車輪115-3及び115-4は、幅方向Dにおいて、補助リブ120-2の近傍且つ補助リブ120-2より防水パン23に近い側の位置に設けられる。
【0035】
車輪115の素材は、特定されないが、例えばエラストマー、ウレタン、ナイロン、ゴム等が挙げられる。特に、車輪115の素材がエラストマーであれば、車輪115が弾性を有し、車輪115が接する浴槽パン床面27が汚れにくくなり、且つ浴槽100及び湯溜凹部102に溜められた湯水の重力による荷重を受けても車輪115が変形しにくい。
【0036】
以下、浴槽100の説明では、高さ方向Tにおいて天井12に近い側及び天井12に近い端部を基端側、基端部といい、高さ方向Tにおいて床11に近い側及び床11に近い端部を先端側、先端部という場合がある。
【0037】
カバー110は、浴槽框106の外周縁の全周から高さ方向Tに沿って底面103に向かって延在し、浴槽本体104、支柱108、車輪115を支柱108に取り付けるための部品及び車輪115の基端部を覆っている。高さ方向Tにおいて、車輪115の少なくとも先端部116、補助リブ120-1、120-2の先端部128、及び突起123、124、125、126は、カバー110から露出している。浴槽框106の先端側に隣接するカバー110には、浴槽100の平面視中央に向かって凹む凹部118が形成されている。
【0038】
図3に示すように、湯溜凹部102の底面103において、長手方向Mの略中央部且つ幅方向Dでは洗い場パン床面28に近い側の外周縁部109に、浴槽排水口150が形成されている。浴槽排水口150は、底面103から湯溜凹部102を囲む側面119に延出するように形成されている。浴槽排水口150における長手方向Mの大きさは、浴槽排水口150の幅方向Dの大きさ及び高さ方向Tの大きさのそれぞれより大きい。
【0039】
幅方向Dにおいて、浴槽排水口150より基端側の側面119の外側の面に、カバー152が設けられる。カバー152は、浴槽排水口150より基端側の側面119の外側の面から浴槽本体104の外方へ、洗い場パン床面28に近づくように、突出しつつ、下降する。
【0040】
図4には、防水パン21-1及び防水パン21-2において防水パン21-1に近い部分を抽出して示す。浴槽パン床面27には、車輪115-1が離脱可能に収まる凹部51-1、51-2、51-3、車輪115-2が離脱可能に収まる凹部51-4、51-5、51-6が形成されている。また、浴槽パン床面27には、車輪115-3が離脱可能に収まる凹部52-1、52-2、52-3、車輪115-4が離脱可能に収まる凹部52-4、52-5、52-6が形成されている。
【0041】
凹部51-1、51-2、51-3、51-4、51-5、51-6における長手方向Mの大きさは、車輪115-1又は車輪115-2の先端がこれらの凹部の底面53に当たった状態で高さ方向Tにおいて浴槽パン床面27と同じ位置の車輪115-1、115-2の大きさより僅かに大きい。凹部51-1、51-2、51-3、51-4、51-5、51-6の幅方向Dの大きさは、凹部51-1、51-2、51-3、51-4、51-5、51-6の長手方向Mの大きさと略同じである。凹部52-1、52-2、52-3、52-4、52-5、52-6の長手方向M及び幅方向Dの大きさは、凹部51-1、51-2、51-3、51-4、51-5、51-6の長手方向M及び幅方向Dの大きさと同じである。
【0042】
長さ方向Mにおいて、凹部51-1、51-4の中央同士の間隔、凹部51-2、51-5の中央同士の間隔、及び、凹部51-3、51-6の中央同士の間隔は、車輪115-1、115-2の中央同士の間隔と等しい。同じく、長さ方向において、凹部52-1、52-4の中央同士の間隔、凹部52-2、52-5の中央同士の間隔、及び、凹部52-3、52-6の中央同士の間隔は、車輪115-3、115-4の中央同士の間隔と等しい。
【0043】
凹部51-1~51-6及び凹部52-1~52-6の高さ方向Tの大きさは、車輪115-1~115-4の高さ方向Tの大きさの2%以上5%以下であることが好ましい。具体的には、凹部51-1~51-6及び凹部52-1~52-6の高さ方向Tの大きさは、1mm以上5mm以下であることが好ましい。凹部51-1~51-6及び凹部52-1~52-6の高さ方向Tの大きさが前述の条件の下限値以上であることによって、車輪115-1~115-4が凹部51-1~51-6、52-1~52-6のいずれかに収まった状態で、長さ方向Mに沿って浴槽100に押力が加わらない限り、車輪115-1~115-4が凹部51-1~51-6、52-1~52-6のいずれかから離脱しない程度に車輪115-1~115-4の長さ方向Mの移動を規制できる。凹部51-1~51-6及び凹部52-1~52-6の高さ方向Tの大きさが前述の条件の上限値以下であることによって、車輪115-1~115-4が凹部51-1~51-6、52-1~52-6のいずれかに収まった状態から、長さ方向Mに沿って浴槽100に適度な外力が加われば、車輪115-1~115-4が各凹部から離脱し、浴槽100を操作する介護者等に過度の負荷がかからない。
【0044】
浴槽パン床面27には、補助リブ120-1の先端部(少なくとも一部)128が収まるガイド溝55が形成されている。浴槽パン床面27には、補助リブ120-2の先端部(少なくとも一部)が収まるガイド溝56が形成されている。長手方向Mにおいて、ガイド溝55は、凹部51-1~51-6における防水パン21-2に近い端部を接続するように長手方向Mに沿って延在する。同様に、ガイド溝56は、凹部52-1~52-6における防水パン21-2に近い端部を接続するように長手方向Mに沿って延在する。幅方向Dにおいて、凹部51-1、51-2、51-3、51-4、51-5、51-6とガイド溝55との位置関係は、車輪115-1、115-2と補助リブ120-1との位置関係に対応する。同じく幅方向Dにおいて、凹部52-1、52-2、52-3、52-4、52-5、52-6とガイド溝56との位置関係は、車輪115-3、115-4と補助リブ120-2との位置関係に対応する。
【0045】
浴槽パン床面27において幅方向Dで洗い場パン床面28に隣り合う端部には、第1排水溝61が形成されている。第1排水溝61は、長手方向(移動方向)Mに沿って延在し、幅方向Dにおいて所定の大きさを有する。
図3に示す第1排水溝61の底面65は、長手方向Mにおいて両端から中央に進むにしたがって僅かに下降する。底面65における長手方向Mの中央部は略平坦であり、底面65には
図4に示す浴室排水口70が形成されている。浴室排水口70は、浴室10の外部の排水構造に、
図5に示す排水管77を介して接続される。
【0046】
図4に示すように、第1排水溝61には、長手方向Mに沿って複数のカバー80が設けられる。カバー80は、樹脂製であり、幅方向Dにおいて両端部から中央部に向かって湾曲しつつ下降する。言い換えれば、カバー80は、幅方向Dに沿って見ると、両端部から中央部に進むにしたがって底面65に向かって凸曲面形状を有する。カバー80には、リブ82が複数設けられる。複数のリブ82は、長手方向Mに沿って延在する。カバー80において入浴エリア17及び洗い場エリア18に露出する表面は、化粧面であり、シボ処理され、入浴者や介護者がカバー80で滑らないように形成されている。
【0047】
浴槽パン床面27において長手方向Mの中央部には、第2排水溝62が形成されている。第2排水溝62は、幅方向Dに沿って延在する。第2排水溝62において幅方向Dの洗い場パン床面28に向かう端部は、第1排水溝61に交差する。第2排水溝62の幅方向Dの延長上に、浴室排水口70が位置する。浴槽パン床面27の所定の位置から長手方向Mにおいて第2排水溝62に近づくにしたがって、且つ幅方向Dにおいて第1排水溝61に近づくにしたがって僅かに下降する。前述の所定の位置は、防水パン24、25のそれぞれに接するように移乗台37、38を設置したときに、移乗台37、38の複数の脚が接する領域より長手方向Mの中央側の位置である。
【0048】
第2排水溝62の底面66には、突起67、68が設けられる。突起67、68は、第2排水溝62の長手方向Mの中央部に設けられる。突起67の少なくとも一部は、幅方向Dにおいてガイド溝55と互いに重なる。突起68の少なくとも一部は、幅方向Dにおいてガイド溝56と互いに重なる。高さ方向Tにおいて、突起67の先端面71の位置は、ガイド溝55の底面73の位置と略同じである。同じく高さ方向Tにおいて、突起68の先端面72の位置は、ガイド溝56の底面74の位置と略同じである。突起67、68は、高さ方向Tから見たとき、幅方向Dにおいて洗い場パン床面28に近づくにしたがって拡がる略扇形状を有する。突起67、68は、高さ方向Tにおいて一定の大きさで形成されている。
【0049】
底面66は、幅方向Dにおいて浴室排水口70に向かって進むにしたがって僅かに下降する。突起67、68が前述のように略扇形状を有することによって、幅方向Dにおいて防水パン23に近い側の任意の位置から浴室排水口70に向かって流れる水が扇の要に相当する部分に当たって長手方向Mの両側へと円滑に進む。このことによって、水切れが良くなり、突起67、68の扇の要に相当する部分、即ち突起67、68における防水パン23に近い端部に汚れ等が溜まりにくく、清潔度が高まる。
【0050】
底面66において幅方向Dの中央部には、浴室給水口75が形成されている。浴室給水口75は、高さ方向Tに沿って見た状態で円形状を有する。浴室給水口75は、浴室10の外部の給水構造に、不図示の給水管を介して接続される。浴室給水口75と浴槽給水口137とは、給水管76を介して接続される。給水管76は、浴室給水口75から第2排水溝62の内部を幅方向Dにおいて防水パン23に向かって進み、そこから段133によって形成された浴槽本体104とカバー110との隙間に入り、浴槽給水口137に回り込む。湯溜凹部102には、浴室10の外部から、浴室給水口75、不図示の給水管、浴槽給水口137を介して、湯水が供給される。
【0051】
次に、上述の浴室構造5において、浴槽100を長手方向Mに沿って移動させる様子について、
図5から
図7を参照して説明する。
【0052】
図5は、
図1と同様に、浴槽100が長手方向Mにおいて防水パン24、25のそれぞれと隙間をあけて配置された状態を示す。車輪115-1、115-2、115-3、115-4はそれぞれ、凹部51-2、51-5、52-2、52-5のそれぞれに収まる。このとき、補助リブ120-1及び突起121~126はそれぞれ、ガイド溝55に収まる。補助リブ120-2及び突起121~126はそれぞれ、ガイド溝56に収まる。突起121~126のそれぞれの先端は、底面73に接する。補助リブ120-1の突起127の先端は、先端面71に接する。補助リブ120-2の突起127の先端は、先端面72に接する。
【0053】
図5に示す状態では、高さ方向Tにおいて車輪115-1、115-2の先端が浴槽100の重力によって底面53に押し当たり、車輪115-3、115-4の先端が浴槽100の重力によって底面54に押し当たる。また、補助リブ120-1、120-2の突起121~126の先端が底面73、74に当たるため、浴槽100は、長手方向Mにおいて固定される。幅方向Dでは、補助リブ120-1、120-2及び突起121~126は、ガイド溝55、56の側壁同士の間にあるので、これらの側壁より幅方向Dにおいてガイド溝55、56の外側に移動できない。そのため、浴槽100は、ガイド溝55、56によって幅方向Dでの移動を規制される。
【0054】
続いて、移乗台37、38を浴槽パン床面27から洗い場パン床面28に移す。(
図1参照)。
図5に示す位置から、例えば介護者等がカバー110の凹部118に手をかけて浴槽100を防水パン25に近づけるように押し、押す力が所定の押力を越えると、
図6に示すように、車輪115-1、115-2、115-3、115-4はそれぞれ、凹部51-2、51-5、52-2、52-5から離脱し、浴槽パン床面27に載る。
【0055】
車輪115-1~115-4が浴槽パン床面27に載ると、突起121~126のそれぞれの先端は、底面73、74から離れ、高さ方向Tにおいて底面73、74と浴槽パン床面27との間に位置する。このような状態では、高さ方向Tにおいて車輪115-1~115-4の先端が浴槽100の重力によって浴槽パン床面27に押し当たり、車輪115-1~115-4の先端以外の浴槽100は防水パン21-1に接しないため、浴槽100は、長手方向Mにおいて移動可能になる。幅方向Dでは、少なくとも突起121~126は、ガイド溝55、56の側壁同士の間にあるので、これらの側壁よりガイド溝55、56の外側に移動できない。そのため、浴槽100は、ガイド溝55、56によって幅方向Dでの移動を規制される。なお、
図5から
図7では、突起121-126の長手方向Mにおける位置関係をわかりやすく示すため、突起121-126は、所定の位置より上方に示されている。
【0056】
浴槽100を
図6に示す状態からさらに防水パン25に近づけるように押すと、
図7に示すように、車輪115-1、115-2、115-3、115-4はそれぞれ、凹部51-3、51-6、52-3、52-6のそれぞれに収まる。このとき、補助リブ120-1及び突起122~127はそれぞれ、ガイド溝55に収まる。補助リブ120-2及び突起122~127はそれぞれ、ガイド溝56に収まる。突起122~127のそれぞれの先端は、底面73に当たる。補助リブ120-1の突起121の先端は、先端面71に接する。補助リブ120-2の突起121の先端は、先端面72に接する。
【0057】
図7に示す状態では、高さ方向Tにおいて車輪115-2の先端が浴槽100の重力によって底面53に押し当たり、車輪115-4の先端が浴槽100の重力によって底面54に押し当たる。車輪115-1、115-3は、平面視で第1排水溝61又は第2排水溝62と互いに重なり、浴槽パン床面27とは接触していない。また、補助リブ120-1、120-2の突起122~127の先端が底面73、74に当たるため、
図5に示す状態と同様に、浴槽100は、長手方向Mにおいて固定される。幅方向Dでは、補助リブ120-1、120-2及び突起121~126は、ガイド溝55、56の側壁同士の間にあるため、
図5に示す状態と同様に、浴槽100は、ガイド溝55、56によって幅方向Dでの移動を規制される。
図7に示すように浴槽100を配置すると、長手方向Mにおいて浴槽100と防水パン24との間に、移乗台37、38を並べて配置できる。
【0058】
図示していないが、
図5に示す状態から、移乗台37、38を浴槽パン床面27から洗い場パン床面28に移し、例えば介護者等がカバー110の凹部118に手をかけて浴槽100を防水パン24に近づけるように、押す、又は引くことができる。押す力又は引く力が所定の押力を越えると、車輪115-1、115-2、115-3、115-4はそれぞれ、凹部51-2、51-5、52-2、52-5から離脱し、浴槽パン床面27に載る。このとき、浴槽100は、長手方向Mにおいて移動可能になり、幅方向Dにおいてガイド溝55、56によって移動を規制される。
【0059】
さらに浴槽100を防水パン24に近づけるように、長手方向Mに沿って押す、又は引くと、車輪115-1、115-2、115-3、115-4はそれぞれ、凹部51-1、51-4、52-1、52-4のそれぞれに収まる。図示していないが、補助リブ120-1及び突起121、123~127はそれぞれ、ガイド溝55に収まる。補助リブ120-2及び突起121、123~127はそれぞれ、ガイド溝56に収まる。突起121、123~127のそれぞれの先端は、底面73に当たる。補助リブ120-1の突起122の先端は、先端面71に接する。補助リブ120-2の突起122の先端は、先端面72に接する。
【0060】
上述の状態では、高さ方向Tにおいて車輪115-1、115-2の先端が浴槽100の重力によって底面53に押し当たり、車輪115-3、115-4の先端が浴槽100の重力によって底面54に押し当たる。また、補助リブ120-1、120-2の突起121、123~127の先端が底面73、74に当たるため、
図5に示す状態と同様に、浴槽100は、長手方向Mにおいて固定される。幅方向Dでは、補助リブ120-1、120-2及び突起121、123~127は、ガイド溝55、56の側壁同士の間にあるため、
図5に示す状態と同様に、浴槽100は、ガイド溝55、56によって幅方向Dでの移動を規制される。このように浴槽100を配置すると、長手方向Mにおいて浴槽100と防水パン25との間に、移乗台37、38を並べて配置できる。
【0061】
以上説明した本実施形態の浴室構造5は、少なくとも浴槽100と、浴槽支持部200としての防水パン21-1と、を備える。浴槽100は、浴槽本体104と、長手方向Mにおいて湯溜凹部102の外側に設けられた車輪115-1~115-4と、を備える。防水パン21-1には、車輪115-1~115-4が離脱可能に収まる凹部51-1~51-6、凹部52-1~52-6が形成されている。このことによって、本実施形態の浴室構造5によれば、浴槽本体104の底面107に車輪等の移動機構がある従来の浴室構造に比べて、高さ方向Tにおける底面107及び浴槽框106の基端側の面と浴槽パン床面27との距離を短くし、浴槽本体104を浴槽パン床面27に近づけ、長手方向Mに沿って浴槽100を安定させると共に容易に移動させることができる。
【0062】
また、従来の浴室構造のように、浴槽本体の底面に車輪があると、浴槽パン床面27を例えば洗い場パン床面28より下げる必要が生じ、浴室構造5で許容される高低差の大部分を、浴槽パン床面27を洗い場パン床面28から下げるためのオフセットとして使うことになる。その場合、湯溜凹部102から排出される湯水を浴室構造5の外部の排水管に導くための排水溝の勾配を十分に確保することができない。一方、本実施形態の浴室構造5によれば、底面107と浴槽パン床面27との距離が近いので、浴室構造5全体で許容される高低差の大部分を第1排水溝61と第2排水溝62との高低差に用いることができ、第1排水溝61と第2排水溝62との勾配を十分にとることができる。このことによって、浴槽100の湯水の排水効率を良好に確保できる。
【0063】
また、本実施形態の浴室構造5では、浴槽パン床面27と洗い場パン床面28との高さの差異が0mm以上5mm以内であるので、実質的に浴槽パン床面27と洗い場パン床面28は互いに同じ高さにある。そのため、本実施形態の浴室構造5によれば、従来の浴室構造のように浴槽パン床面に、洗い場パン床面との高さを揃えて移乗台等を設置可能とするためのサイドボードを設置する必要がなく、移乗台37、38を浴槽パン床面27に直接設置できる。そのため、浴槽パン床面27に従来のサイドボードを設ける必要がなくなり、浴室構造5のサイドボードレス化を実現できる。
【0064】
また、本実施形態の浴室構造5では、湯溜凹部102の底面103の外周縁部に浴槽排水口150が設けられる。浴槽排水口150の長手方向Mの大きさは浴槽排水口150の高さ方向Tの大きさより大きい。浴槽パン床面27には、高さ方向Tにおいて浴槽排水口150に対向し且つ浴槽排水口150と同じく長手方向Mに沿って延在する第1排水溝61が形成されている。このことによって、浴槽排水口150から排出される湯水の第1排水溝61への単位時間当たりの排出量を増加させ、且つ湯水を第1排水溝61から溢れにくくすることができる。また、浴槽100の移動に伴って浴槽排水口150が長手方向Mの任意の位置に移動しても、浴槽排水口150から排出される湯水を第1排水溝61に円滑に流入させ、浴室排水口70から浴室10の外部に排水し、浴槽100の湯水の排水効率を高めることができる。
【0065】
また、本実施形態の浴室構造5では、浴槽パン床面27に、第1排水溝61と浴室10の外部に通ずる浴室排水口70に連通するように幅方向Dに沿って延在する第2排水溝62が形成されている。本実施形態の浴室構造5によれば、浴槽パン床面27を長手方向Mの所定の位置から中央部に向かって下降させて浴槽パン床面27上及びガイド溝55、56内の湯水や水滴を第2排水溝62に集め、第1排水溝61に向かって流下させ、最終的に浴室排水口70から浴室10の外部に排水し、浴室構造5における排水効率を高めることができる。また、第2排水溝62の底面66に浴室給水口75を形成し、給水管76において浴室給水口75に接続した端部及び浴室給水口75に近い部分を第2排水溝62の内部に配置し、浴槽本体104において幅方向Dで防水パン23に隣り合う位置に形成された浴槽給水口137に給水管76を円滑に接続できる。長手方向に余裕を持たせて給水管76を第2排水溝62に配置することによって、浴槽100を長手方向Mの任意の位置に移動させても、給水管76の張りの発生や浴室給水口75及び浴槽給水口137からの脱落を防止できる。
【0066】
また、本実施形態の浴室構造5では、浴槽100は、湯溜凹部102の底面103より低い補助リブ120-1、120-2をさらに備える。防水パン21-1には、長手方向Mに沿って延在し、且つ補助リブ120-1、120-2の少なくとも一部が収まるガイド溝55,56が形成されている。本実施形態の浴室構造5によれば、補助リブ120-1、120-2の少なくとも先端部及び突起121~127のいずれかがガイド溝55、56に収め、浴槽100の幅方向Dにおける移動を規制できる。浴槽100の幅方向Dにおける移動を規制した状態で、浴槽100を浴槽パン床面27で移動させることによって、浴槽パン床面27において車輪115-1~115-4が本来接するべき経路からこれらの車輪がずれないようにし、浴槽100の幅方向Dにおけるずれをなくすことができる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0068】
例えば、上述の実施形態では、凹部51-1~51-5、52-1~52-6及びガイド溝55、56は、防水パン21-1に形成されるが、本発明の浴室構造においてこれらの凹部及びガイド溝は床に直接形成されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
5 浴室構造
21-1 防水パン
27 浴槽パン床面
28 洗い場パン床面
51-1、51-2、51-3、51-4、51-5、51-6、52-1、52-2、52-3、52-4、52-5、52-6 凹部
100 浴槽
104 浴槽本体
102 湯溜凹部
115-1、115-2、115-3、115-4 車輪
200 浴槽支持部