(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】搬送ロボットおよびこれを備えたワーク搬送システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230912BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 D
(21)【出願番号】P 2019169369
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】井浦 惇
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-201606(JP,A)
【文献】特開2006-120861(JP,A)
【文献】特開平11-238779(JP,A)
【文献】特開平04-075891(JP,A)
【文献】特表2004-505789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、上記支持体に支持される旋回ベースと、上記旋回ベースを旋回させる旋回機構と、上記旋回ベースに支持されており、ワークを支持するためのハンド部と、上記旋回ベースに対して上記ハンド部を水平に直線移動させる直線移動機構と、を備え、
上記旋回機構は、上記支持体に対して、上記旋回ベースを上下方向に延びる第1旋回軸の周りに旋回させる第1旋回機構と、上記第1旋回軸に対して所定角度傾斜した第2旋回軸の周りに上記旋回ベースを旋回させる第2旋回機構と、を含み、
上記支持体は、
上記旋回機構を介して上記旋回ベースを支持し、上記第1旋回軸と直角である回動軸の周りに回動可能な回動部材を有する、搬送ロボット。
【請求項2】
上記第1旋回軸、上記第2旋回軸および上記回動軸は、上記回動部材の内部に位置する一点で交差する、請求項1に記載の搬送ロボット。
【請求項3】
上記ハンド部は、上記直線移動機構によって互いに独立して直線移動させられる第1ハンドおよび第2ハンドを含む、請求項1または2に記載の搬送ロボット。
【請求項4】
上記第1ハンドは、上下方向視において重なるように複数の薄板状ワークを支持する、請求項3に記載の搬送ロボット。
【請求項5】
上記支持体は、上下方向に延びる固定ベースと、基端部が上記固定ベースの上端部において水平な第1方向に延びる第1の水平軸の周りに回動可能に支持された第1アームと、基端部が上記第1アームの先端部において上記第1方向に延びる第2の水平軸の周りに回動可能に支持された第2アームと、を含み、
上記回動部材は、上記第2アームの先端部において上記第1方向に延びる上記回動軸の周りに回動可能に支持される、請求項1ないし4のいずれかに記載の搬送ロボット。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送ロボットと、当該搬送ロボットが配置される搬送室と、当該搬送室に隣接して設けられ、ワークを収納する少なくとも1つの収納室と、上記ワークに所定の処理を施す複数の処理室と、を備え、
上記搬送室は、上記第1方向および上下方向のいずれにも直角である第2方向に延びており、
上記少なくとも1つの収納室は、上記搬送室の上記第2方向における端部に隣接して配置され、
上記複数の処理室は、上記搬送室の上記第1方向における端部に隣接し、かつ上記第2方向において間隔を隔てて配置される、ワーク搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボット、およびこれを備えたワーク搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程において、薄板状のウエハ(ワーク)は搬送ロボットによって搬送される。たとえば拡散炉等においてウエハに適宜処理を行う際、搬送ロボットは、ウエハが収納された収納室とウエハに処理を施す処理室との間で、ウエハを搬送する。このようなウエハの搬送に用いる搬送ロボットは、たとえば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたウエハ搬送用の搬送ロボットは、旋回動作させられる旋回ベース(旋回ブロック5e)と、この旋回ベースに支持されるハンド部(複数のプレート5fと1つのプレート5f)と、を備える。ハンド部のプレート5fにウエハが載置される。旋回ベースが適宜旋回させられることで、ハンド部は、収納室や処理室に正対する方向を向くことが可能である。また、ハンド部は、水平方向に直線移動可能である。ハンド部が収納室あるいは処理室に向けて直線移動させられると、当該収納室や処理室においてウエハの受渡しが可能になる。ウエハ搬送時には、上記複数のプレート5fおよび1つのプレート5fは、互いに独立して搬送室等へ向けた水平移動が可能とされる。上記複数のプレート5fは、上下方向視において重なるように複数のウエハを支持する。上記複数のプレート5fおよび1つのプレート5fについて、その両方または片方を適宜動作させることで、必要枚数のウエハを効率よく搬送することが可能である。
【0004】
ウエハ搬送時において、上記複数のプレート5fおよび1つのプレート5fの水平動作は片持ち状で行われるので、動作部やハンド部等の自重により部材に撓みが生じる場合がある。この場合、ハンド部の水平姿勢が維持できなくなり、搬送室や処理室との間でのウエハの受渡しが適切に行えないおそれがある。このような不都合に対し、たとえばハンド部の付け根部分に駆動機構を設けてハンド部をスイングさせて水平姿勢に近づけることが考えられる。しかしながら、上記複数のプレート5fおよび1つのプレート5fが互いに独立して水平動作させられる構成では、複数のプレート5fおよび1つのプレート5fそれぞれに対応する駆動機構を設ける必要がある。そうすると、追加の部品点数が多く構造が複雑となり、ウエハ搬送には適さないパーティクルも発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、構造が複雑になるのを回避しつつ、ワーク搬送時にハンド部が所定の姿勢を維持することが可能な搬送ロボットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される搬送ロボットは、支持体と、上記支持体に支持される旋回ベースと、上記旋回ベースを旋回させる旋回機構と、上記旋回ベースに支持されており、ワークを支持するためのハンド部と、上記旋回ベースに対して上記ハンド部を水平に直線移動させる直線移動機構と、を備え、上記旋回機構は、上記支持体に対して、上記旋回ベースを上下方向に延びる第1旋回軸の周りに旋回させる第1旋回機構と、上記第1旋回軸に対して所定角度傾斜した第2旋回軸の周りに上記旋回ベースを旋回させる第2旋回機構と、を含み、上記支持体は、上記第1旋回軸と直角である回動軸の周りに回動可能な回動部材を有する。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記第1旋回軸、上記第2旋回軸および上記回動軸は、上記回動部材の内部に位置する一点で交差する。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記ハンド部は、上記直線移動機構によって互いに独立して直線移動させられる第1ハンドおよび第2ハンドを含む。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記第1ハンドは、上下方向視において重なるように複数の薄板状ワークを支持する。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記支持体は、上下方向に延びる固定ベースと、基端部が上記固定ベースの上端部において水平な第1方向に延びる第1の水平軸の周りに回動可能に支持された第1アームと、基端部が上記第1アームの先端部において上記第1方向に延びる第2の水平軸の周りに回動可能に支持された第2アームと、を含み、上記回動部材は、上記第2アームの先端部において上記第1方向に延びる上記回動軸の周りに回動可能に支持される。
【0013】
本発明の第2側面によって提供されるワーク搬送システムは、上記本発明の第1の側面に係る搬送ロボットと、当該搬送ロボットが配置される搬送室と、当該搬送室に隣接して設けられ、ワークを収納する少なくとも1つの収納室と、上記ワークに所定の処理を施す複数の処理室と、を備え、上記搬送室は、上記第1方向および上下方向のいずれにも直角である第2方向に延びており、上記少なくとも1つの収納室は、上記搬送室の上記第2方向における端部に隣接して配置され、上記複数の処理室は、上記搬送室の上記第1方向における端部に隣接し、かつ上記第2方向において間隔を隔てて配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る搬送ロボットにおいて、旋回ベースを旋回させるための旋回機構は、第1旋回機構および第2旋回機構を含む。第1旋回機構は、支持体(回動部材)に対して、旋回ベースを上下方向に延びる第1旋回軸の周りに旋回させる。第2旋回機構は、第1旋回軸に対して所定角度傾斜した第2旋回軸の周りに旋回ベースを旋回させる。旋回ベースを支持する回動部材は、第1旋回軸と直角である回動軸の周りに回動可能である。本発明に係る搬送ロボットによりワークの受渡しを行う際、旋回ベースに支持されたハンド部が直線移動機構によって旋回ベースの前方に進出させられる。ここで、ハンド部は片持ち状に旋回ベースから進出するので、直線移動機構、ハンド部や当該ハンド部に支持されたワーク等の自重により直線移動機構等の部材に撓みが生じ、ハンド部が旋回ベースの前後方向において傾く場合がある。このような場合においても、旋回機構(第1旋回機構および第2旋回機構)および回動部材の協働によって、旋回ベースを旋回させることなく旋回ベースの前後方向の傾きだけを適宜調整することができる。したがって、本発明に係る搬送ロボットによれば、ワークの受渡し時にハンド部を水平姿勢に維持することができ、当該ワークの受渡しを適切に行うことが可能である。
【0015】
また、本発明に係る搬送ロボットは、従来と比べて実質的に第2旋回機構だけが追加された構成である。このため、たとえばハンド部の付け根部分に駆動機構を設けてハンド部をスイングさせる構成と比べて、構造が複雑になるのを回避することができる。また、旋回ベースの旋回動作を行うための第2旋回機構を追加する構成によれば、たとえばハンド部の付け根部分でスイングさせる場合と比べて、パーティクルの発生を低減するとともに、搬送ロボットの高さ方向の寸法増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る搬送ロボットを備えて構成されたワーク搬送システムの一例を示す平面図である。
【
図4】搬送ロボットにおける旋回機構を説明するための部分拡大左側面図である。
【
図6】旋回機構の概略構造の一例を示す部分断面図である。
【
図7】旋回ベースの傾き状態の変化を説明するための図である。
【
図8】旋回ベースの傾き状態の変化を説明するための図である。
【
図9】旋回ベースの傾き状態の変化を説明するための図である。
【
図10】旋回ベースの傾き状態の変化を説明するための図である。
【
図11】旋回ベースの傾き状態の変化を説明するための図である。
【
図12】旋回ベースの傾き状態の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る搬送ロボットを備えて構成されたワーク搬送システムの一例を示している。本実施形態のワーク搬送システムA1は、搬送室1と、収納室2と、処理室3と、搬送ロボットB1と、を備え、半導体製造のための円形シリコンウエハを薄板状ワークWとして搬送するように構成されたものである。
【0019】
搬送室1は、所定の内部空間を有する略直方体形状とされており、平面視において、方向X(第2方向)を長手方向として延びる略長方形状である。この搬送室1内に、搬送ロボットB1が配置されている。搬送ロボットB1は、搬送室1の方向Xにおける中央に配置される。
【0020】
収納室2は、たとえば複数の薄板状ワークWを保持したカセットを収納可能に構成されている。収納室2は、搬送室1の方向Xにおける端部に隣接して配置される。ワーク搬送システムA1において、少なくとも1つの収納室2を具備する。収納室2は、上下方向に間隔を隔てて設けてもよく、また、搬送室1の方向Xにおける両端部それぞれに隣接するように設けてもよい。収納室2の適所には、必要に応じて、上記カセットの入れ替え時に開かれる開閉式のシャッタ(図示略)が設けられる。また、搬送室1と収納室2との間には、必要に応じて、搬送ロボットB1による薄板状ワークWの搬出入の際に開かれる開閉式のシャッタ(図示略)が設けられる。収納室2内の上記カセットには、たとえば最大で25枚の薄板状ワークWが上下方向視において重なるように収容される。
【0021】
処理室3は、たとえば拡散炉など加熱処理を薄板状ワークWに対して行うためのものである。本実施形態において、複数の処理室3が搬送室1に隣接して配置される。本実施形態では、4つの処理室3(
図1では3つの処理室3を表す)が搬送室1の方向Y(方向Xおよび上下方向のいずれにも直角である方向)における端部に配置されている。これら処理室3は、方向Xにおいて一定の間隔を隔てて配置される。各処理室3の内部には、複数(たとえば60枚)の薄板状ワークWが上下方向視において重なるように収容される。搬送室1と各処理室3との間には、必要に応じて開閉式のシャッタ(図示略)が設けられる。
【0022】
搬送ロボットB1は、収納室2と処理室3との間で薄板状ワークWの搬送を行うためのものである。
図2、
図3に示すように、搬送ロボットB1は、支持体4と、旋回ベース5と、旋回機構6と、直線移動機構7と、ハンド部8と、を備えている。
【0023】
支持体4は、固定ベース40、第1アーム41、第2アーム42および回動部材43を有する。固定ベース40は、上下方向Zに延びており、下端部が搬送室1の床面に固定される。第1アーム41は、方向Xおよび上下方向Zがなす面内に延びており、固定ベース40に支持されている。具体的には、第1アーム41は、その基端部が固定ベース40の上端部において方向Y(水平な第1方向)に延びる第1の水平軸O1の周りに回動可能に支持される。第2アーム42は、方向Xおよび上下方向Zがなす面内に延びており、第1アーム41に支持されている。具体的には、第2アーム42は、その基端部が第1アーム41の先端部において方向Yに延びる第2の水平軸O2の周りに回動可能に支持される。回動部材43は、第2アーム42に支持される。具体的には、回動部材43は、第2アーム42の先端部において方向Yに延びる回動軸Oxの周りに回動可能に支持される。
【0024】
詳細な図示説明は省略するが、第1アーム41および第2アーム42は、たとえばモータを駆動源とし、ベルト機構や減速機等の動力伝達手段を用いることで、第1の水平軸O1および第2の水平軸O2の周りに回動させられる。そして、上記モータを駆動制御することで、
図1において仮想線で示すように、支持体4に支持された旋回ベース5を収納室2あるいは各処理室3の正面に移動させることができる。
【0025】
旋回ベース5は、回動部材43(支持体4)に支持されている。詳細は後述するが、旋回ベース5は、旋回機構6によって適宜旋回させられる。
【0026】
ハンド部8は、円形の薄板状ワークWを支持するものである。ハンド部8は、直線移動機構7を介して旋回ベース5に支持されている。本実施形態では、ハンド部8は、多段式ハンド81およびハンド82を含む。多段式ハンド81は、保持体811および二股状の複数のフォーク812を有し、複数のフォーク812それぞれの基端部が保持体811によって一括して保持された構成とされる。複数のフォーク812は、上下方向Z視において重なっており、上下方向Zにおいて一定間隔で配置される。ハンド82は、二股状の1つのフォーク821を有する。詳細な図示説明は省略するが、たとえば各フォーク812およびフォーク821の適所には、円形の薄板状ワークWを載置支持するための凹段部が形成されている。多段式ハンド81において、複数のフォーク812それぞれに1枚の薄板状ワークWが支持され、上下方向Z視において重なるように複数(
図2に示した例では11枚)の薄板状ワークWを支持することができる。ハンド82においては、フォーク821に1枚の薄板状ワークWが支持される。
【0027】
直線移動機構7は、ハンド部8(多段式ハンド81およびハンド82)を水平方向に直線移動させるものである。本実施形態では、直線移動機構7は、各々が長手状のハンド用アーム71,72,73,74を含んで構成される。
【0028】
ハンド用アーム71は、その基端部が旋回ベース5の上部の適所において垂直軸V1の周りに回動可能に支持されている。ハンド用アーム72は、その基端部がハンド用アーム71の先端部において垂直軸V2の周りに回動可能に支持されている。多段式ハンド81(保持体811)は、その基端部がハンド用アーム72の先端部において垂直軸V3の周りに回動可能に支持されている。
【0029】
ハンド用アーム73は、その基端部が旋回ベース5の上部の適所において垂直軸V4の周りに回動可能に支持されている。ハンド用アーム74は、その基端部がハンド用アーム73の先端部において垂直軸V5の周りに回動可能に支持されている。ハンド82は、その基端部がハンド用アーム74の先端部において垂直軸V6の周りに回動可能に支持されている。
【0030】
詳細な図示説明は省略するが、直線移動機構7は、たとえば駆動源としてのモータ、およびベルト機構や減速機等の動力伝達手段を含んで構成される。上記モータおよび動力伝達手段を用いることで、ハンド用アーム71、ハンド用アーム72および多段式ハンド81は、垂直軸V1,V2,V3周りに回動させられ、また、ハンド用アーム73、ハンド用アーム74およびハンド82は、垂直軸V4,V5,V6周りに回動させられる。そして、上記モータを駆動制御することで、多段式ハンド81およびハンド82を互いに独立して直線移動させることができる。
図2においては、多段式ハンド81およびハンド82が旋回ベース5の真上に待機する状態(基準位置)を実線で表し、多段式ハンド81およびハンド82が基準位置から水平に直線移動して旋回ベース5の前方に進出した状態(進出位置)を仮想線で表す。
【0031】
搬送ロボットB1により収納室2や処理室3において薄板状ワークWの受渡しを行う際、旋回ベース5を収納室2あるいは処理室3の正面に移動させる。そしてハンド部8(多段式ハンド81およびハンド82)が収納室2あるいは処理室3に正対する状態で多段式ハンド81やハンド82を旋回ベース5の前方に進出させる。そうすると、多段式ハンド81やハンド82は、収納室2あるいは処理室3の内部に進入し、当該収納室2あるいは処理室3において薄板状ワークWの受渡しを行うことが可能である。
図1において、多段式ハンド81が収納室2や処理室3の内部に進入して進出位置にある態様を仮想線で表す。
【0032】
図6は、旋回機構6の概略構造の一例を模式的に示す図である。旋回機構6は、旋回ベース5を旋回させるものであり、第1旋回機構61および第2旋回機構62を含んで構成される。第1旋回機構61は、支持体4(回動部材43)に対して、旋回ベース5を上下方向Zに延びる第1旋回軸S1の周りに旋回させるものである。第2旋回機構62は、第1旋回軸S1に対して所定角度傾斜した第2旋回軸S2の周りに旋回ベース5を旋回させるものである。
【0033】
第1旋回機構61は、たとえばモータ611および減速機612を含む。モータ611は、回動部材43の内部に配置されている。減速機612は、回動部材43の上部に形成された開口部に相対回転可能に装着されている。減速機612の回転軸は、第1旋回軸S1に一致している。モータ611の出力軸にはプーリ613が取り付けられ、また減速機612の入力軸にはプーリ614が取り付けられており、これらプーリ613,614に無端ベルト615が掛け回されている。
【0034】
第2旋回機構62は、たとえばモータ621および減速機622を含む。モータ621は、旋回ベース5の内部に配置されている。減速機622は、旋回ベース5の下部に形成された開口部に相対回転可能に装着されている。減速機622の回転軸は、第2旋回軸S2に一致している。モータ621の出力軸にはプーリ623が取り付けられ、また減速機622の入力軸にはプーリ624が取り付けられており、これらプーリ623,624に無端ベルト625が掛け回されている。
【0035】
減速機612と減速機622との間には、傾斜部材64が介在している。傾斜部材64は、下部水平面641および上部傾斜面642を有する。下部水平面641は、水平面に沿う平面であり、下部水平面641に減速機612が取り付けられている。上部傾斜面642は、下部水平面641に対して所定角度傾斜する傾斜平面である。上部傾斜面642には、減速機622が取り付けられている。
【0036】
第1旋回軸S1は下部水平面641に対して直角であり、第2旋回軸S2は上部傾斜面642に対して直角である。そして、第1旋回軸S1に対する第2旋回軸S2の傾斜角度θは、下部水平面641に対する上部傾斜面642の傾斜角度と同一である。第2旋回軸S2の傾斜角度θは、たとえば0.5~3°程度であるが、特に限定されるものではない。
【0037】
上記減速機612,622は、たとえばハーモニックドライブ(登録商標)を用いて構成される。ただし、減速機612,622の形態はこれに限定されず、たとえば遊星歯車機構を用いたものを採用してもよい。
【0038】
なお、減速機612には、筒状体63が取り付けられている。筒状体63は、回動部材43と旋回ベース5との間において、減速機612、傾斜部材64および減速機622を囲っている。
【0039】
第1旋回軸S1は、回動軸Ox(回動部材43の回動軸心)と直角である。本実施形態において、
図4~
図6に示すように、
回動軸Oxと第1旋回軸S1とは直交する。また、本実施形態において、
図6に示すように、第1旋回軸S1、第2旋回軸S2および回動軸Oxは、回動部材43の内部に位置する特定の一点(交点P1)で交差する。
【0040】
上記構成により、旋回ベース5は、旋回機構6(第1旋回機構61および第2旋回機構62)を介して支持体4(回動部材43)に支持される。具体的には、旋回ベース5は、減速機612、傾斜部材64および減速機622を介して回動部材43に支持される。
【0041】
次に、旋回機構6の動作について説明する。
【0042】
旋回ベース5を旋回させる際、第1旋回機構61のモータ611を駆動する。これにより、旋回ベース5は、支持体4に対して第1旋回軸S1の周りに回転する。たとえば
図1に示した収納室2への薄板状ワークWの搬出入の際、第1旋回機構61(モータ611)を駆動制御することにより、旋回ベース5を旋回させる。
図1において仮想線で示すように、収納室2の正面に位置する旋回ベース5は、ハンド部8が収納室2に正対する方向を向くように旋回させられる。
【0043】
一方、第1旋回機構61(モータ611)と第2旋回機構62(モータ621)を同時に駆動することで、旋回ベース5の傾き状態を変えることができる。具体的には、モータ611を駆動すると、支持体4に対して旋回ベース5が傾斜部材64とともに第1旋回軸S1の周りに回転する。その一方、モータ621を駆動すると、旋回ベース5が傾斜部材64に対して第2旋回軸S2の周りに回転する。
【0044】
ここで、モータ611(第1旋回機構61)による旋回ベース5の第1旋回軸S1周りの回転速度と、モータ621(第2旋回機構62)による旋回ベース5の第2旋回軸S2周りの回転速度とを等速度にし、かつ、モータ611,621の回転による減速機612,622の出力を互いに反対方向とする。これにより、支持体4に対する旋回ベース5の回転がキャンセルされ、旋回ベース5は旋回しない。その一方、傾斜部材64は支持体4に対して第1旋回軸S1の周りに所定角度回転している。このため、傾斜部材64の上部傾斜面642の傾斜方向は変化し、傾斜部材64に支持された旋回ベース5の傾き状態が変化する。
【0045】
上記の旋回ベース5の傾き状態の変化について、
図7~
図12を参照してより詳細に説明する。
【0046】
図7は、
図6に示した旋回ベース5と同様の傾き状態を示し、回動部材43、旋回ベース5、傾斜部材64、直線移動機構7、およびハンド部8の配置を模式的に表す。
図7において、(a)が左側面図であり、(b)が正面図である。旋回ベース5において、ハンド部8が進出する方向(
図7(a)において左方)が前方であり、その反対方向(
図7(a)において右方)が後方である。なお、
図7(b)においては直線移動機構7およびハンド部8の記載を省略しており、これは後述する
図8(b)、
図10(b)、
図12(b)についても同様である。
【0047】
図7においては、傾斜部材64については、旋回ベース5の前方が後方よりも上がるように傾斜している。これにより、
図7(a)に示すように、旋回ベース5は、前方が後方よりも上位に位置するように傾斜する。また、
図7(b)に示すように、旋回ベース5は、正面から見て左右方向に水平である。
【0048】
図8は、
図7に示した状態から、旋回ベース5を第1旋回機構61により第1旋回軸S1の周りに平面視で時計回りに90°回転させ、かつ旋回ベース5を第2旋回機構62により第2旋回軸S2の周りに反時計回りに90°回転させた状態を示す。これにより傾斜部材64の傾斜方向が変化し、傾斜部材64は、旋回ベース5の正面から見て左方が下がるように傾斜する。ここで、
図8(a)に示すように、旋回ベース5は、側面から見て前後方向に水平となる。その一方、
図8(b)に示すように、旋回ベース5は、正面から見て左方が下がるように傾斜する。
【0049】
さらに、
図8(b)の矢印N1で示すように、回動部材43を回動軸Oxの周りに回動させる。第1旋回軸S1および第2旋回軸S2は回動軸Ox上の交点P1を通るため、回動部材43を回動軸Oxの周りに予め設定された所定角度回動させることで、
図9に示すように、旋回ベース5は、正面から見て左右方向に水平となる。このとき、旋回ベース5の正面から見て、第2旋回軸S2は鉛直方向に沿う。なお、旋回ベース5の旋回動作に同期して回動部材43を適宜回動させると、旋回ベース5の旋回動作中における左右の傾きを殆ど無くすことができる。
【0050】
図10は、
図7に示した状態から、旋回ベース5を第1旋回機構61により第1旋回軸S1の周りに平面視で時計回りに45°回転させ、かつ旋回ベース5を第2旋回機構62により第2旋回軸S2の周りに反時計回りに45°回転させた状態を示す。これにより傾斜部材64の傾斜方向が変化する。傾斜部材64は、旋回ベース5の側面から見て後方が下がり、かつ旋回ベース5の正面から見て左方が下がるように傾斜する。これにより、旋回ベース5は、
図10(a)に示すように側面からみて後方が下がり、かつ正面から見て左方が下がるように傾斜する。ここで、
図10(a)に示した旋回ベース5の前後方向の傾斜角度は、
図7(a)に示した旋回ベース5の前後方向の傾斜角度よりも小さい。また、
図10(b)に示した旋回ベース5の左右方向の傾斜角度は、
図8(b)に示した旋回ベース5の左右方向の傾斜角度よりも小さい。
【0051】
さらに、
図10(b)の矢印N1で示すように、回動部材43を回動軸Oxの周りに回動させる。第1旋回軸S1および第2旋回軸S2は回動軸Ox上の交点P1を通るため、回動部材43を回動軸Oxの周りに予め設定された所定角度回動させることで、
図11に示すように、旋回ベース5は、正面から見て左右方向に水平となる。このとき、旋回ベース5の正面から見て、第2旋回軸S2は鉛直方向に沿う。なお、旋回ベース5の旋回動作に同期して回動部材43を適宜回動させると、旋回ベース5の旋回動作中における左右の傾きを殆ど無くすことができる。
【0052】
図12は、
図7に示した状態から、旋回ベース5を第1旋回機構61により第1旋回軸S1の周りに平面視で時計回りに180°回転させ、かつ旋回ベース5を第2旋回機構62により第2旋回軸S2の周りに反時計回りに180°回転させた状態を示す。これにより傾斜部材64の傾斜方向が変化し、傾斜部材64は、旋回ベース5の側面から見て前方が下がるように傾斜する。ここで、
図12(a)に示すように、旋回ベース5は、側面から見て前方が下がるように傾斜する。その一方、
図12(b)に示すように、旋回ベース5は、正面から見て左右方向に水平となる。
【0053】
図7(a)に示した旋回ベース5は後方が下がっていたのに対し、
図12(a)に示した旋回ベース5は前方が下がっており、旋回ベース5の傾斜方向が反対である。一方、
図12(a)に示した旋回ベース5の傾斜角度と
図7(a)に示した旋回ベース5の傾斜角度は同一である。なお、
図7(b)、
図8(b)および
図12(b)を対比すると理解できるように、旋回ベース5の旋回動作中に回動部材43の回動を停止すると、旋回ベース5の旋回動作途中に左右方向において傾きが生じる。旋回ベース5の旋回動作に同期して回動部材43を適宜回動させると、旋回ベース5の旋回動作中における左右の傾きを殆ど無くすことができる。
【0054】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0055】
本実施形態の搬送ロボットB1において、旋回ベース5を旋回させるための旋回機構6は、第1旋回機構61および第2旋回機構62を含む。第1旋回機構61は、支持体4(回動部材43)に対して、旋回ベース5を上下方向Zに延びる第1旋回軸S1の周りに旋回させる。第2旋回機構62は、第1旋回軸S1に対して所定角度傾斜した第2旋回軸S2の周りに旋回ベース5を旋回させる。旋回ベース5を支持する回動部材43は、第1旋回軸S1と直角である回動軸Oxの周りに回動可能である。
【0056】
たとえば搬送ロボットB1により処理室3において薄板状ワークWの受渡しを行う際、旋回ベース5に支持されたハンド部8が直線移動機構7によって旋回ベース5の前方に進出させられ、処理室3の内部に進入する。ここで、ハンド部8は片持ち状に旋回ベース5から進出するので、直線移動機構7、ハンド部8や薄板状ワークW等の自重により直線移動機構7等の部材に撓みが生じ、ハンド部8が旋回ベース5の前後方向において傾く場合がある。このような場合においても、
図7~
図12を参照して説明したように、旋回機構6(第1旋回機構61および第2旋回機構62)および回動部材43の協働によって、旋回ベース5を旋回させることなく旋回ベース5の前後方向の傾きだけを適宜調整することができる。したがって、搬送ロボットB1によれば、薄板状ワークWの受渡し時にハンド部8を水平姿勢に維持することができ、薄板状ワークWの受渡しを適切に行うことが可能である。
【0057】
また、本実施形態において、収納室2や処理室3において薄板状ワークWの受渡しを行うように構成された搬送ロボットB1において、従来と比べて実質的に第2旋回機構62だけが追加された構成である。このため、たとえばハンド部8の付け根部分に駆動機構を設けてハンド部8をスイングさせる構成と比べて、構造が複雑になるのを回避することができる。また、旋回ベース5の旋回動作を行うための第2旋回機構62を追加する構成によれば、たとえばハンド部の付け根部分でスイングさせる場合と比べて、パーティクルの発生を低減するとともに、搬送ロボットB1の高さ方向の寸法増加を抑制することができる。
【0058】
図7~
図12に基づく説明から理解されるように、旋回ベース5の前後方向の傾斜角度の調整範囲は比較的小さい。本実施形態では、旋回ベース5の前後方向の傾斜角度は、旋回ベース5を第1旋回軸S1および第2旋回軸S2の周りに180°回転する範囲内において調整が可能である。このような構成によれば、旋回ベース5の前後方向の傾斜角度は、旋回ベース5の広い回転角度範囲内での回転角度調整に応じて、細かく高精度に調整することができる。
【0059】
本実施形態において、第1旋回機構61の第1旋回軸S1、第2旋回機構62の第2旋回軸S2、および回動部材43の回動軸Oxは、回動部材43の内部の交点P1で交差する。このような構成によれば、
図7~
図12を参照して説明したように、旋回ベース5の前後方向の傾きの調整にともない正面から見たときに旋回ベース5の左右方向に傾きが生じても、回動部材43を回動軸Oxの周りに予め設定された所定角度回動させることで、容易に旋回ベース5の左右方向の傾きを無くして左右方向に水平とすることができる。
【0060】
本実施形態において、ハンド部8は、多段式ハンド81(第1ハンド)およびハンド82(第2ハンド)を含む。多段式ハンド81およびハンド82は、直線移動機構7によって互いに独立して直線移動させられる。このような構成によれば、薄板状ワークWの受渡し時に、多段式ハンド81およびハンド82の両方を用いる場合といずれか片方を用いる場合とで、ハンド部8の傾きに変化が生じ得る。このような場合でも、旋回ベース5の前後方向の傾きを所望に調整可能であり、薄板状ワークWの受渡し時にハンド部8を容易に水平姿勢とすることが可能である。
【0061】
多段式ハンド81は、上下方向Z視において重なるように複数の薄板状ワークWを支持する。このような構成によれば、収納室2と処理室3との間で搬送すべき枚数の薄板状ワークWを効率よく搬送することができる。
【0062】
支持体4は、上下方向に延びる固定ベース40と、第1アーム41と、第2アーム42と、回動部材43と、を含む。第1アーム41の基端部は、固定ベース40の上端部において水平な方向Yに延びる第1の水平軸O1の周りに回動可能に支持される。第2アーム42の基端部は、第1アーム41の先端部において方向Yに延び第2の水平軸O2の周りに回動可能に支持される。回動部材43は、第2アーム42の先端部において方向Yに延びる回動軸Oxの周りに回動可能に支持される。このような構成によれば、たとえば平面視で方向Yと直角である方向Xにおいて離れて配置された収納室2や処理室3の正面に、支持体4に支持された旋回ベース5を適切に移動させることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0064】
上記実施形態において、支持体4が固定ベース40、第1アーム41、および第2アーム42を具備する場合について説明したが、これに限定されない。旋回ベース5を所定の位置に移動させることが可能であれば、支持体4の構成は適宜変更可能である。
【0065】
上記実施形態では、直線移動機構について、回動可能に連結された複数のハンド用アームにより構成される場合について説明したが、これに限定されない。たとえば直線移動機構として、直線運動するスライダ等を具備する構成を採用してもよい。また、旋回機構6(第1旋回機構61および第2旋回機構62)の具体的な構成についても、上記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0066】
A1:ワーク搬送システム、B1:搬送ロボット、1:搬送室、2:収納室、3:処理室、4:支持体、40:固定ベース、41:第1アーム、42:第2アーム、43:回動部材、5:旋回ベース、6:旋回機構、61:第1旋回機構、62:第2旋回機構、7:直線移動機構、8:ハンド部、81:多段式ハンド(第1ハンド)、82:ハンド(第2ハンド)、Ox:回動軸、O1:第1の水平軸、O2:第2の水平軸、P1:交点、S1:第1旋回軸、S2:第2旋回軸、W:薄板状ワーク、X:方向(第2方向)、Y:方向(第1方向)、Z:上下方向