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特許7347902印刷装置及びインクジェットによる印刷方法
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  • 特許-印刷装置及びインクジェットによる印刷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】印刷装置及びインクジェットによる印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/00 20060101AFI20230912BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230912BHJP
   B65H 29/32 20060101ALI20230912BHJP
   B65H 16/02 20060101ALI20230912BHJP
   B65H 18/08 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B65H5/00 D
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B65H29/32 A
B65H16/02
B65H18/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019168436
(22)【出願日】2019-09-17
(65)【公開番号】P2021046272
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀尚
(72)【発明者】
【氏名】木村 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小野 信一
(72)【発明者】
【氏名】東 広樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】桑原 正人
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-301340(JP,A)
【文献】実開平04-122038(JP,U)
【文献】特開平05-162881(JP,A)
【文献】特開2009-241277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B41J 2/01
B65H 29/32
B65H 16/02
B65H 18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を巻き出す巻出し部と、
上記巻出し部から巻き出された上記印刷用紙を巻き取る巻取り部と、
上記巻出し部から巻き出されてきた上記印刷用紙の表面側に印刷する複数のインクジェットヘッドと、
上流側のインクジェットヘッドと下流側のインクジェットヘッドとの間に設けられ、上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された印刷用紙を該印刷用紙の裏面側から密着状に保持して加熱しながら搬送する加熱式搬送ベルトとを備えており、
上記加熱式搬送ベルトが、上記インクジェットヘッドを避けて配置されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
上記加熱式搬送ベルトは、静電気帯電により、上記印刷用紙を密着状に保持するように構成されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷装置において、
上記加熱式搬送ベルトの上流側には、上記巻出し部から巻き出されてきた上記印刷用紙を予め加熱して乾燥させる、熱ロールで構成されたプレヒート部が設けられている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の印刷装置において、
上記加熱式搬送ベルトの上方には、該加熱式搬送ベルトよりも上流側の上記インクジェットヘッドで印刷された上記印刷用紙を乾燥させるインクジェット間乾燥部が設けられている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の印刷装置において、
上記加熱式搬送ベルトの下流側且つ上記複数のインクジェットヘッドの下流側には、熱ロールで構成された下流側乾燥部が設けられ、該下流側乾燥部を通過した上記印刷用紙が上記巻取り部に巻き取られるように構成されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置において、
最も上流側のインクジェットヘッドの下流側で且つ上記下流側乾燥部の上流側には、上記印刷用紙の印刷面側から接触するローラは設けられていない
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
印刷用紙を巻き出す巻出し工程と、
上記巻出し工程により巻き出されてきた上記印刷用紙の表面側に複数のインクジェットヘッドによって印刷する印刷工程と、
上記複数のインクジェットヘッドの間において、複数のインクジェットヘッドを避けた位置で、上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された印刷用紙を加熱式搬送ベルトによって該印刷用紙の裏面側から密着状に保持して加熱しながら搬送する加熱搬送工程と、
上記加熱搬送工程及び上記印刷工程を経た上記印刷用紙を巻き取る巻取り工程とを含むことを特徴とするインクジェットによる印刷方法。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェットによる印刷方法において、
上記印刷工程の前に熱ロールによって上記印刷用紙を約60℃に加熱するプレヒート工程と、
上記加熱搬送工程の後に、熱ロールで構成された下流側乾燥部によって上記印刷用紙を加熱する工程とをさらに含む
ことを特徴とするインクジェットによる印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の印刷装置及び印刷方法に関し、特に印刷及び乾燥を並行して行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト搬送タイプにおいて、プリントヘッドと、搬送ベルトを静電気帯電する帯電手段及び除電手段を備えたインクジェットプリンタは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ロール搬送タイプにおいて、インクジェットヘッドと印刷シートを静電気帯電する帯電装置及び除電装置とを備えた印刷装置は知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、複数のヘッドと、各ヘッド間に配置された送風ファンとを備えた装置が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平4-122038号公報
【文献】特開2010-94953号公報
【文献】特許第5230490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなベルト搬送タイプでは、プリントヘッドを増設しやすくメンテナンス性もよいが、基材がベルトから浮きやすいというデメリットがある。また、ベルト素材に金属等を使用すると、加熱時に歪みが発生してしまうという問題がある。
【0006】
一方、ロール搬送タイプでは、ロール上のヘッド設置数制限、メンテナンス性などに問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクの乾燥性を向上させて鮮明な文字及び画像を形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、印字用紙をベルトに密着させた状態で加熱するようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
印刷用紙を巻き出す巻出し部と、
上記巻出し部から巻き出された上記印刷用紙を巻き取る巻取り部と、
上記巻出し部から巻き出されてきた上記印刷用紙の表面側に印刷する複数のインクジェットヘッドと、
上流側のインクジェットヘッドと下流側のインクジェットヘッドとの間に設けられ、上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された印刷用紙を該印刷用紙の裏面側から密着状に保持して加熱しながら搬送する加熱式搬送ベルトとを備えている。
【0010】
上記の構成によると、加熱式搬送ベルトは、印刷用紙の裏面側から印刷用紙に密着して熱伝導効率をよくした状態で印刷用紙を加熱する。このため、表面側の印刷面を汚すことなく印刷用紙を浮かせずにインクをむらなく効率的に乾燥させることができる。また、加熱式搬送ベルトは、インクジェットヘッドを避けて配置されているので、加熱式搬送ベルトの熱によってインクジェットヘッドが加熱されて目詰まりしたり、インク粘度低下によってインクが漏れ出したりすることはない。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記加熱式搬送ベルトは、静電気帯電により、上記印刷用紙を密着状に保持するように構成されている。
【0012】
上記の構成によると、印刷される表面側に触れて汚すことなく印刷用紙を密着させて効率よく加熱できる。また、加熱式搬送ベルトの素材として加熱時に歪みが生じてしまう金属以外を使用することができる。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記加熱式搬送ベルトの上流側には、上記巻出し部から巻き出されてきた上記印刷用紙を予め加熱して乾燥させるプレヒート部が設けられている。
【0014】
上記の構成によると、通常6.5~7%程度の含水率の印刷用紙の含水率を予めプレヒート部で加熱し、ある程度乾燥させておくことで、インクジェットヘッドから吐出されたインクが染みこみやすくなってより鮮明な印刷が可能となる。
【0015】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、
上記加熱式搬送ベルトの上方には、該加熱式搬送ベルトよりも上流側の上記インクジェットヘッドで印刷された上記印刷用紙を乾燥させるインクジェット間乾燥部が設けられている。
【0016】
上記の構成によると、加熱式搬送ベルトで加熱して乾燥するだけでなく、インクジェット間乾燥部で加熱することで、より効率よくインクの乾燥が行われる。
【0017】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、
上記加熱式搬送ベルトの下流側且つ上記複数のインクジェットヘッドの下流側には、下流側乾燥部が設けられ、該下流側乾燥部を通過した上記印刷用紙が上記巻取り部に巻き取られるように構成されている。
【0018】
上記の構成によると、巻取り部に巻き取られる前に確実に印刷用紙のインクが乾燥する。
【0019】
第6の発明では、第5の発明において、
最も上流側のインクジェットヘッドの下流側で且つ上記下流側乾燥部の上流側には、上記印刷用紙の印刷面側から接触するローラは設けられていない。
【0020】
上記の構成によると、十分に乾いていない印刷面がローラに触れることはないので、ローラが汚れず、仕上がりのきれいな印刷が行われる。
【0021】
第7の発明では、
印刷用紙を巻き出す巻出し工程と、
上記巻出し部から巻き出されてきた上記印刷用紙の表面側に複数のインクジェットヘッドによって印刷する印刷工程と、
上記複数のインクジェットヘッドの間において、上流側のインクジェットヘッドによって表面に印刷された印刷用紙を加熱式搬送ベルトによって該印刷用紙の裏面側から密着状に保持して加熱しながら搬送する加熱搬送工程と、
上記加熱搬送工程及び上記印刷工程を経た上記印刷用紙を巻き取る巻取り工程とを含む構成とする。
【0022】
上記の構成によると、加熱式搬送ベルトは、印刷用紙の裏面側から印刷用紙に密着して熱伝導効率をよくした状態で印刷用紙を加熱する。このため、表面側の印刷面を汚すことなく印刷用紙を浮かせずにインクをむらなく効率的に乾燥させることができる。
【0023】
第8の発明では、第7の発明において、
上記印刷工程の前に上記印刷用紙を約60℃に加熱するプレヒート工程を含む。
【0024】
上記の構成によると、インクジェットによる印刷の前に予め印刷用紙を加熱して含水率を積極的に低下させることができるので、その後のインクジェットによるインクが印刷用紙に迅速且つ確実に吸い込まれる。ここで、約60℃というのは、厳密に60℃である必要はなく、60℃前後を理想とし、通常の紙の含水率6.5~7%を減少させることができる温度であればよい意味である。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、巻出し部から巻き出されてきた印刷用紙を加熱式搬送ベルトによって印刷用紙の裏面側から密着状に保持して加熱しながら搬送するようにしたことにより、インクの乾燥性を向上させて鮮明な文字及び画像を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は本発明の実施形態のインクジェット方式の印刷装置1を示し、この印刷装置1は、印刷用紙Pを巻き出す巻出し部2を備えている。この巻き出し部2は、印刷用紙Pのロールを回転可能に支持するように構成されている。印刷用紙Pは、例えば紙素材よりなる。
【0029】
また、印刷装置1は、巻出し部2から巻き出された印刷用紙Pを巻き取る巻取り部3を最下流側に備えている。巻出し部2は、印刷されていない紙のロールを回転可能に取付可能となっている。巻取り部3は、例えば、図示しない電動モータ等よりなる駆動装置によって、例えば、印刷用紙が10~50m/minの搬送速度となるように駆動される。巻き出し部2から巻き出された印刷用紙Pは、適宜設けられた複数のガイドローラ4にガイドされながら、巻取り部3に巻き取られるようになっている。巻取り部3に巻き取られた印刷用紙は、一巻きのロールとして取り出される。
【0030】
本実施形態では、まず、巻き出し部2から巻き出された印刷用紙Pは、ガイドローラ4の部分で、コロナ処理装置5によってコロナ処理される。このコロナ処理により印刷用紙の表面をコロナ放電照射により改質させることができる。コロナ処理装置5は、公知の直流高電圧発生装置、高周波電源装置等を含むが、このコロナ処理装置5はなくてもよい。
【0031】
コロナ処理された印刷用紙Pは、複数のガイドローラ4がガイドされながら、プレヒート部6において、プレヒート処理が行われるようになっている。プレヒート部6は、例えば外径300mmのプレヒート用熱ロール7を備え、このプレヒート用熱ロール7は、約30~100℃に保たれている。プレヒート部6は、さらに蒸気吸引装置又は熱風装置8を備えていてもよい。
【0032】
そしてプレヒート処理された印刷用紙Pは、ガイドローラ4にガイドされてインクジェット方式の、最も上流側のインクジェットヘッド9a,9bと、下流側のインクジェットヘッド9c,9dによって印刷されるようになっている。インクジェットヘッドの個数や距離は特に限定されない。
【0033】
印刷装置1は、上流側のインクジェットヘッド9a,9bで表面側に印刷された印刷用紙Pを加熱するインクジェット間乾燥部10によって加熱されるようになっている。インクジェット間乾燥部10は、印刷用紙Pの裏面側から密着状に保持して加熱しながら搬送する加熱式搬送ベルト11を備えている。加熱式搬送ベルト11は、静電気を帯電可能な絶縁部材を含み、駆動プーリ12と従動プーリ13との間に掛けられ、例えば、10~50m/minの搬送速度で駆動されるようになっている。加熱式搬送ベルト11は、図示しない直流高電圧発生装置、各種チャージング用電極等によって静電気が帯電されるようになっている。また、図示しないヒータなどの加熱装置により、約30~100℃に加熱されるようになっている。
【0034】
インクジェット間乾燥部10は、さらに印刷用紙Pを上方から乾燥させる第1乾燥部14を備えている。第1乾燥部14は、熱風乾燥などで方式は特に限定されないが、加熱式搬送ベルト11による乾燥を補助するものであり、例えば、加熱式搬送ベルト11の上方の長さ約400mmの部分に設けられている。またインクジェット間乾燥部10は、例えば、約30~100℃で印刷用紙Pを加熱するように構成されているが、なくてもよい。加熱式搬送ベルト11で印刷用紙Pを加熱して乾燥させるだけでなく、インクジェット間乾燥部10で加熱することで、より効率よくインクの乾燥が行われる。
【0035】
例えば、上流側のインクジェットヘッド9a,9bは、ガイドローラ4と、加熱式搬送ベルト11の従動プーリ13との間の200mm程度の範囲に配置されている。下流側のインクジェットヘッド9c,9dは、加熱式搬送ベルト11の駆動プーリ12と、その下流側の後述する最終乾燥用熱ロール16との間の200mm程度の位置に設けられている。上記のように2つのインクジェットヘッド9a,9bまたは2つのインクジェットヘッド9c,9dを配置する場合には、約200mmの範囲に配置されるが、この値は機械の設計に応じて変更可能であり、例えば、熱や風の影響、機器接続部分等を考慮する場合には、約300~700mmの範囲が必要となる。このように、加熱式搬送ベルト11の真上には、インクジェットヘッド9a~9dは設けられていない。インクジェットヘッド9a~9dが加熱により目詰まり等を起こさないようにするためである。
【0036】
そして、インクジェットヘッド9a~9dによって印刷された印刷用紙Pを加熱して乾燥させる、下流側乾燥部としての最終乾燥部15が設けられている。最終乾燥部15は、例えば、最終乾燥用熱ロール16を含み、この最終乾燥用熱ロール16は、例えば、外径300~400mm程度のもので、30~100℃程度に加熱されており、巻き付いた印刷用紙Pを加熱してインクを乾燥させる役割を果たす。最終乾燥部15は、第2乾燥部17を含んでいてもよく、この第2乾燥部17は、熱風乾燥などで方式は特に限定されないが、最終乾燥用熱ロール16による乾燥を補助するものであり、例えば、30~100℃で印刷用紙Pを加熱するように構成されている。この第2乾燥部17は、あってもなくてもよい。
【0037】
最終乾燥用熱ロール16を通過した印刷用紙Pは、インクがすでに乾燥しているので、図1に示すように、その下流側では印刷用紙Pの表面側に接するようにガイドローラ4が設けられている。そして、最も上流側のインクジェット9aの下流側で且つ最終乾燥用熱ロール16の上流側には、印刷用紙Pの印刷面側から接触するローラは設けられていない。
【0038】
-インクジェットによる印刷方法-
上記印刷装置1を用いて印刷用紙Pにインクジェットによって印刷を行う方法について説明する。
【0039】
まず、巻出し工程で、印刷用紙Pを巻き出す。これは、巻取り工程において、駆動装置を駆動して印刷用紙Pを巻き取ることによって開始される。例えば、インクの塗布量がウエット状態で10g/mのときに、搬送速度は約44m/minとなる。
【0040】
次いで、コロナ処理工程で印刷用紙Pの表面にコロナ処理が行われる。このコロナ処理は省略してもよい。
【0041】
次いで、プレヒート工程で、プレヒート用熱ロール7の外周で60℃程度の加熱されると共に、熱風装置8によっても約60℃に加熱される。これにより、印刷用紙Pは、通常の含水率よりも低い含水率に予め乾燥させられる。
【0042】
次いで、第1印刷工程で、インクジェットヘッド9a,9bによって、印刷用紙Pに対して所定のインクが塗布される。このとき、通常6.5~7%程度の含水率の印刷用紙Pの含水率を予めプレヒート部6で加熱してある程度乾燥させられているので、インクジェットヘッド9a,9bから吐出されたインクが染みこみやすくなってより鮮明な印刷が可能となる。
【0043】
次いで、加熱搬送工程において、上流側のインクジェットヘッド9a,9bによって印刷された印刷用紙Pが裏面側から密着状に保持されて例えば60℃程度に加熱されながら搬送される。このとき、加熱式搬送ベルト11は、静電気帯電により、印刷用紙Pを密着状に保持した状態で加熱するので、印刷される表面側に触れて汚すことなく印刷用紙Pを密着させて効率よく確実に加熱できる。また、静電気帯電を用いているので、加熱時に歪みが生じてしまう金属以外を使用することができる。この加熱搬送工程において、第1乾燥部14により補助的に印刷用紙Pを約60℃に加熱してもよい。
【0044】
次いで、下流側のインクジェットヘッド9c,9dによって印刷用紙Pの表面側に印刷が行われる。このとき、加熱搬送工程においてすでにインクが十分に乾燥させられているので、印刷用紙Pにおいてインクが混じったり滲んだりすることはない。
【0045】
そして、最終乾燥工程において、最終乾燥用熱ロール16の外周で約60℃に加熱されると共に、第2乾燥部17で約60℃に乾燥させられる。これにより、印刷用紙Pのインクは、ほぼ完全に乾燥させられるので、ガイドローラ4の外周に印刷面が触れてもガイドローラ4を汚すことはない。
【0046】
そして、巻取り工程において、ガイドローラ4を通過した印刷用紙Pは、インクが十分に乾燥した状態で巻取り部3に巻き取られる。本実施形態では、十分に乾いていない印刷面がローラに触れることはないので、ローラが汚れず、仕上がりのきれいな印刷が行われる。
【0047】
このように、加熱式搬送ベルト11は、印刷用紙Pの裏面側から印刷用紙Pに密着して熱伝導効率をよくした状態で印刷用紙Pを加熱する。このため、表面側の印刷面を汚すことなく印刷用紙Pを浮かせずにインクをむらなく効率的に乾燥させることができる。
【0048】
また、加熱式搬送ベルト11は、インクジェットヘッド9a~9dを避けて配置されているので、加熱式搬送ベルト11の熱によってインクジェットヘッド9a~9dが加熱されて目詰まりすることはない。
【0049】
したがって、本実施形態に係る印刷装置1によると、巻出し部2から巻き出されてきた印刷用紙Pを加熱式搬送ベルト11によって印刷用紙Pの裏面側から密着状に保持して加熱しながら搬送するようにしたことにより、インクの乾燥性を向上させて鮮明な文字及び画像を形成できる。
【0050】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0051】
すなわち、上記実施形態では、加熱式搬送ベルト11において、静電気帯電により印刷用紙Pを加熱式搬送ベルト11に密着させるようにしているが、吸引など別の方法で印刷用紙Pを密着させるようにしてもよい。
【0052】
また、加熱式搬送ベルト11は、それ自身が通電等により発熱する素材で構成されていてもよい。
【0053】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0054】
1 印刷装置
2 巻出し部
3 巻取り部
4 ガイドローラ
5 コロナ処理装置
6 プレヒート部
7 プレヒート用熱ロール
8 熱風装置
9a,9b 上流側のインクジェットヘッド
9c,9d 下流側のインクジェットヘッド
10 インクジェット間乾燥部
11 加熱式搬送ベルト
12 駆動プーリ
13 従動プーリ
14 第1乾燥部
15 最終乾燥部(下流側乾燥部)
16 最終乾燥用熱ロール
17 第2乾燥部
図1