(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】荷役車両の遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20230912BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
H04Q9/00 321B
B66F9/24 A
(21)【出願番号】P 2021147517
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】卯路 彰
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128938(JP,A)
【文献】特開2020-005123(JP,A)
【文献】特開2016-201613(JP,A)
【文献】特開2020-125197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遠隔操作者が使用する遠隔操作装置と該遠隔操作装置を介しての遠隔操作が可能な複数の荷役車両とを備えた遠隔操作システムであって、
前記複数の荷役車両のそれぞれは、目的地までの走行については前記遠隔操作なしで自律的に行うことができるが、前記目的地における荷取りおよび荷置きについては前記遠隔操作なしでは行うことができないよう構成されており、
また、前記複数の荷役車両のそれぞれは、前記遠隔操作装置との通信を行う通信部と、
視覚的に異なる複数の報知状態をとり得る報知部と、前記通信部および前記報知部を制御する制御部とを備え、
前記荷役車両の前記報知部は、当該荷役車両の周辺にいる者および前記遠隔操作者から視認され得るように当該荷役車両に取り付けられ、
前記荷役車両の前記制御部は、(1)
当該荷役車両が前記目的地に向かって自律的に走行しているときと、(2)
当該荷役車両の前記通信部を介して、
当該荷役車両が前記目的地
に到着
したことを示す到着信号を前記遠隔操作装置に送信してから前記遠隔操作の開始を示す操作開始信号を前記遠隔操作装置から受信するまでの間と、(3)
当該荷役車両の前記通信部を介して、前記操作開始信号を受信してから前記遠隔操作の終了を示す操作終了信号を前記遠隔操作装置から受信するまでの間とで、
当該荷役車両の前記報知部の前記報知状態を異ならせ
、
また、前記荷役車両の前記制御部は、当該荷役車両の前記遠隔操作を担っている前記遠隔操作者に応じて、当該荷役車両の前記報知部の前記報知状態を異ならせる
ことを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項2】
前記遠隔操作装置は、前記複数の荷役車両のうちの1つに前記操作開始信号を送信してから該1つに前記操作終了信号を送信するまでの間は、前記複数の荷役車両のうちの別の1つに前記操作開始信号を送信することはできない
ことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記複数の荷役車両のそれぞれは、荷役装置と、前記荷役装置に向けられた撮像部とをさらに備え、
前記荷役車両の前記制御部は、前記操作開始信号を受信してから前記操作終了信号を受信するまでの間、
当該荷役車両の前記撮像部によって撮影された映像に関する映像信号を
当該荷役車両の前記通信部を介して前記遠隔操作装置に送信し続ける
ことを特徴とする請求項1または2に記載の遠隔操作システム。
【請求項4】
前記遠隔操作装置の数が複数であり、
前記複数の荷役車両は、前記複数の遠隔操作装置のいずれかを介して遠隔操作される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両の遠隔操作システムに関し、特に、1人以上の遠隔操作者のそれぞれが複数台の荷役車両の遠隔操作を担えるよう構成された遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔操作可能なフォークリフトの動作が停止したことを遠隔操作者に報知する報知部を設けた遠隔操作システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。報知部は、ランプ等からなり、視認性を高めるためにフォークリフトの屋根に設けられる。このシステムは、遠隔操作装置としてのスマートフォンまたはタブレットの画面に、動作が停止した旨の表示を行うこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1人の遠隔操作者が複数台の同型の荷役車両の遠隔操作を担う場合は、自分が今まさに遠隔操作を行っている荷役車両がどの荷役車両なのかが一目で分かるようになっていることが好ましい。しかしながら、出願人の知る限り、そのような遠隔操作システムは今のところ存在しない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、遠隔操作が行われている荷役車両がどの荷役車両なのかを遠隔操作者に報知することが可能な遠隔操作システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る遠隔操作システムは、遠隔操作者が使用する遠隔操作装置と該遠隔操作装置を介しての遠隔操作が可能な複数の荷役車両とを備えた遠隔操作システムであって、上記複数の荷役車両のそれぞれは、目的地までの走行については遠隔操作なしで自律的に行うことができるが、目的地における荷取りおよび荷置きについては遠隔操作なしでは行うことができないよう構成されており、また、上記複数の荷役車両のそれぞれは、遠隔操作装置との通信を行う通信部と、複数の報知状態をとり得る報知部と、通信部および報知部を制御する制御部とを備え、制御部は、(1)目的地に向かって自律的に走行しているときと、(2)通信部を介して、目的地への到着を示す到着信号を遠隔操作装置に送信してから遠隔操作の開始を示す操作開始信号を遠隔操作装置から受信するまでの間と、(3)通信部を介して、操作開始信号を受信してから遠隔操作の終了を示す操作終了信号を遠隔操作装置から受信するまでの間とで、報知部の報知状態を異ならせる、との特徴を有している。
【0007】
上記遠隔操作システムの遠隔操作装置は、上記複数の荷役車両のうちの1つに操作開始信号を送信してから該1つに操作終了信号を送信するまでの間は、上記複数の荷役車両のうちの別の1つに操作開始信号を送信することはできないことが好ましい。
【0008】
上記遠隔操作システムに備えられた複数の荷役車両のそれぞれは、荷役装置と該荷役装置に向けられた撮像部とをさらに備え、制御部は、操作開始信号を受信してから操作終了信号を受信するまでの間、撮像部によって撮影された映像に関する映像信号を通信部を介して遠隔操作装置に送信し続けることが好ましい。
【0009】
上記遠隔操作システムに備えられた遠隔操作装置の数は複数であってもよい。この場合は、複数の荷役車両のそれぞれをいずれかの遠隔操作装置を介して遠隔操作することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遠隔操作が行われている荷役車両がどの荷役車両なのかを遠隔操作者に報知することが可能な遠隔操作システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例に係る遠隔操作システムの概要を示す図である。
【
図2】第1実施例に係る遠隔操作システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施例に係る遠隔操作システムのある動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図4】第1実施例に係る遠隔操作システムの別の動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図5】第1実施例に係る遠隔操作システムのさらに別の動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図6】第1実施例に係る遠隔操作システムのさらに別の動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図7】第1実施例に係る遠隔操作システムのさらに別の動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図8】第1実施例に係る遠隔操作システムのさらに別の動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図9】第1実施例に係る遠隔操作システムのさらに別の動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施例に係る遠隔操作システムの概要を示す図である。
【
図11】第2実施例に係る遠隔操作システムのある動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図12】第2実施例に係る遠隔操作システムの別の動作局面において、(A)遠隔操作装置の表示部に表示される画面、および(B)荷役車両の報知部がとる報知状態を示す図である。
【
図13】本発明の変形例に係る遠隔操作システムの報知部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る遠隔操作システムの実施例について説明する。
【0013】
[第1実施例]
[システムの構成]
図1に、本発明の第1実施例に係る遠隔操作システム1Aの概要を示す。同図に示すように、遠隔操作システム1Aは、遠隔操作者U1が1台以上の荷役車両(例えば、3台の荷役車両F1,F2,F3)の遠隔操作を担うことを可能とする。なお、各荷役車両F1,F2,F3,F4,F5は、目的地までの走行については遠隔操作なしで自律的に行うことができる。したがって、遠隔操作者U1は、目的地における荷取りおよび荷置きだけを遠隔操作すればよい。
【0014】
図2に示すように、本実施例に係る遠隔操作システム1Aは、遠隔操作者U1が使用する遠隔操作装置10と、5台の同型の荷役車両F1,F2,F3,F4,F5とを備えている。荷役車両F1,F2,F3,F4,F5はいずれも、リーチ型フォークリフトと呼ばれるフォークリフトである。なお、本明細書では、5台の荷役車両F1,F2,F3,F4,F5を区別しない場合に符号20を使用することがある。
【0015】
遠隔操作装置10は、通信部11と、操作部12と、表示部13と、制御部14とを備えている。
【0016】
通信部11は、所定のプロトコルにしたがって後述する荷役車両20の通信部21と相互に無線通信を行うことができる。
【0017】
操作部12は、荷役車両20を遠隔操作する際に遠隔操作者U1が直接操作する複数のレバーからなっている。この複数のレバーには、フォークを傾動(ティルト)させるためのレバーと、左右一対のフォークおよびバックレストをマストに沿って昇降させるためのレバーと、マストをフォーク等とともに前後方向に移動(リーチイン/リーチアウト)させるためのレバーとが含まれている。
【0018】
表示部13は、タッチパネルディスプレイからなっている。表示部13は、遠隔操作者U1に対して各種情報を提示することができる。また、表示部13は、遠隔操作者U1からの各種指令を受け付けることもできる。
【0019】
制御部14は、マイクロコンピュータ等からなり、主に次の動作を行う。
(1)操作部12に加えられた操作に対応した信号(以下、「遠隔操作信号」という)を通信部11を介していずれかの荷役車両20に送信する。
(2)表示部13が受け付けた指令に対応した信号(以下、「指令信号」という)を通信部11を介していずれかの荷役車両20に送信する。
(3)通信部11を介して荷役車両20から受信した信号(後述する状態信号および映像信号)に対応した画面を表示部13に表示させる。
【0020】
なお、制御部14は、荷役車両20から受信した状態信号に基づいて、荷役車両20の現在の動作状態を常に把握することができる。
【0021】
荷役車両20は、通信部21と、報知部22と、撮像部23と、走行装置24と、荷役装置25と、制御部26とを備えている。
【0022】
通信部21は、所定のプロトコルにしたがって遠隔操作装置10の通信部11と相互に無線通信を行うことができる。
【0023】
報知部22は、10インチ程度のカラー液晶ディスプレイからなっている。報知部22は、荷役車両20の動作状態を遠隔操作者U1および荷役車両20の周辺にいる者に知らしめるためのもので、荷役車両20の目立つ位置(例えば、ヘッドガードの後端部)に取り付けられている。荷役車両20は、異なる位置に取り付けられた複数の報知部22を備えていてもよい。
【0024】
撮像部23は、CCDカメラからなっている。撮像部23は、撮像面が前下方を向くようにバックレストの上端部に取り付けられている。このため、撮像部23が生成した映像には、フォークの先端部が必ず映ることになる。
【0025】
走行装置24は、操舵輪でもある駆動輪と、駆動輪を駆動して荷役車両20を走行させる駆動機構と、駆動輪の向きを変更して荷役車両20の進行方向を変化させる操舵機構と、1つ以上の従動輪とを含んでいる。
【0026】
荷役装置25は、前述のマストと、マストに沿って昇降する前述の左右一対のフォークおよびバックレストとを含んでいる。
【0027】
制御部26は、マイクロコンピュータ等からなり、主に次の動作を行う。
(1)通信部21を介して遠隔操作装置10から受信した遠隔操作信号に基づいて荷役装置25を作動させる。
(2)遠隔操作信号によらずに、走行装置24の駆動機構および操舵機構を作動させる。
(3)報知部22の報知状態を荷役車両20の動作状態に応じて変化させる。
(4)荷役車両20の動作状態に対応した信号(以下、「状態信号」という)を通信部21を介して遠隔操作装置10に定期的に、または動作状態が変化したタイミングで送信する。
(5)撮像部23が生成した映像に対応した信号(以下、「映像信号」という)を通信部21を介して遠隔操作装置10に送信する。
制御部26は、遠隔操作信号に基づいて走行装置24を作動させてよい。
【0028】
[システムの動作]
続いて、
図3~
図9を参照しながら、本実施例に係る遠隔操作システム1Aの動作について具体的に説明する。なお、初期状態において、荷役車両F1,F2,F3,F4,F5はいずれも所定の待機場所にて待機しており、かつ、荷役車両F1,F2,F3,F4,F5の報知部22には、白色の背景のみからなる画面が表示されているものとする。
【0029】
(遠隔操作装置10を起動)
遠隔操作者U1が遠隔操作装置10を起動させると、遠隔操作装置10の表示部13に待機中の荷役車両F1,F2,F3,F4,F5に対応したシンボルS1,S2,S3,S4,S5を有する画面が表示される(
図3(A)参照)。このとき、荷役車両F1,F2,F3,F4,F5の報知部22には、相変わらず白色の背景のみからなる画面が表示されている(
図3(B)参照)。
【0030】
(荷役車両F1,F2,F3を選択)
遠隔操作者U1がシンボルS1,S2,S3をタッチすることにより荷役車両F1,F2,F3を選択すると、遠隔操作者U1が荷役車両F1,F2,F3の遠隔操作を担うこととなり、遠隔操作装置10の表示部13に、荷役車両F1に関する領域A1と、荷役車両F2に関する領域A2と、荷役車両F3に関する領域A3とを有する画面が表示される(
図4(A)参照)。そして、これとともに、選択された荷役車両F1,F2,F3の報知部22に表示される画面が、白色の背景のみからなる画面から、白色の背景と遠隔操作者U1に対応した文字等(本実施例では、文字「U1」)とで構成された画面へと切り替わる(
図4(B)参照)。つまり、荷役車両F1,F2,F3の制御部26が、報知部22の報知状態を変化させる。
【0031】
各領域A1,A2,A3は、荷役車両の識別番号を表示するためのサブ領域a1と、荷役作業の識別番号等を表示するためのサブ領域a2と、荷役車両の動作状態等を表示するためのサブ領域a3とを含んでいる。例えば、領域A1のサブ領域a1には文字「F1」が表示され、領域A1のサブ領域a3には文字「待機中」が表示されている。この段階では、荷役車両F1,F2,F3に荷役作業は割り当てられていない。このため、領域A1,A2,A3のサブ領域a2には、荷役作業を割り当てるための「割り当て」ボタンが表示されている。
【0032】
遠隔操作者U1が領域A1のサブ領域a2に表示された割り当てボタンをタッチすると、荷役車両F1に割り当て可能な未完了荷役作業のリストが表示される。遠隔操作者U1は、そのリストの中から荷役作業F1に割り当てたい一の荷役作業を選択することができる。荷役作業F2,F3についても同様である。
【0033】
本実施例では、表示される未完了荷役作業のリストに、位置P1に置かれている荷物を位置P2に移動させる荷役作業W0001と、位置P3に置かれている荷物を位置P4に移動させる荷役作業W0002と、位置P5に置かれている荷物を位置P6に移動させる荷役作業W0003とが含まれているものとする。
【0034】
(荷役車両F1,F2,F3に荷役作業を割り当て)
遠隔操作者U1が上記の手順で荷役車両F1に荷役作業W0001を割り当て、荷役車両F2に荷役作業W0002を割り当て、荷役車両F3に荷役作業W0003を割り当てると、遠隔操作装置10の制御部14は、割り当てられた荷役作業の内容を指令信号として荷役車両F1,F2,F3に送信する。そして、指令信号を受信した荷役車両F1,F2,F3の制御部26は、荷取り位置(最初の目的地)に向かって自律走行するように走行装置24を制御する。例えば、荷役車両F1の制御部26は、位置P1に向かうように走行装置24を制御する。
【0035】
このとき、遠隔操作装置10の表示部13には、
図5(A)に示した画面が表示される。この画面は、領域A1,A2,A3のサブ領域a2に割り当てられた荷役作業の識別番号が表示されている点と、領域A1,A2,A3のサブ領域a3に自律走行中である旨が表示されている点とにおいて
図4(A)に示した画面と相違している。
【0036】
(荷役車両F1が位置P1に到着)
荷役車両F1が目的地である位置P1に到着すると、荷役車両F1の制御部26が、その旨を示す状態信号(これを特に「到着信号」という)を遠隔操作装置10に送信するとともに、報知部22に表示されている画面の背景の色を白色から青色に変化させる(
図6(B)参照)。つまり、荷役車両F1の制御部26が、報知部22の報知状態を変化させる。
【0037】
荷役車両F1から到着信号を受信した遠隔操作装置10の制御部14は、表示部13を制御して、領域A1のサブ領域a3に遠隔操作開始ボタンを表示させる(
図6(A)参照)。
【0038】
遠隔操作者U1は、荷役車両F1の報知部22に表示されている画面の背景の色が青色に変化したことにより、荷役車両F1が目的地に到着したことを知ることができる。また、遠隔操作者U1は、領域A1に遠隔操作開始ボタンが表示されたことによっても、荷役車両F1が目的地に到着したことを知ることができる。
【0039】
(荷役車両F1の遠隔操作を開始)
遠隔操作者U1が遠隔操作開始ボタンをタッチすると、遠隔操作装置10の制御部14が、その旨を示す指令信号(これを特に「操作開始信号」という)を荷役車両F1に送信する。
【0040】
操作開始信号を受信した荷役車両F1の制御部26は、撮像部23を起動し、撮像部23が生成した映像に対応する映像信号を荷役操作装置10に送信し始める。そして、映像信号を受信した遠隔操作装置10の制御部14は、表示部13に表示させる画面を撮像部23が生成した映像を主体としたものに切り替える(
図7(A)参照)。これにより、遠隔操作者U1は、映像を見ながら操作部12を操作して荷役車両F1に荷物Bの荷取りを行わせることができる。このとき、荷役車両F1の制御部26は、遠隔操作装置10から受信した遠隔操作信号に基づいて荷役装置25を作動させる。
【0041】
また、操作開始信号を受信した荷役車両F1の制御部26は、報知部22に表示されている画面の背景の色を青色から赤色に変化させる(
図7(B)参照)。つまり、荷役車両F1の制御部26が、報知部22の報知状態を変化させる。
【0042】
図7(A)に示すように、表示部13に表示された画面は、遠隔操作の対象となっている荷役車両の識別番号(本実施例では、文字「F1」)を表示する領域A4と、遠隔操作終了ボタンを表示する領域A5とを有している。領域A4は、文字および/または文字の背景が赤色となっている。
【0043】
表示部13に表示された画面は、遠隔操作の対象となっていない荷役車両の動作状態を表示する領域A6をさらに有している。領域A6には、荷役車両F2の動作状態(自律走行中)に対応した白色のシンボルS6と、荷役車両F3の動作状態(自律走行中)に対応した白色のシンボルS7とが表示されている。
【0044】
遠隔操作者U1は、荷役車両F1の報知部22に表示されている画面の背景の色が赤色であることから、遠隔操作が行われている荷役車両は荷役車両F1であることを知ることができる。また、遠隔操作者U1は、領域A4に文字「F1」が表示され、かつその背景が赤色であることからも、遠隔操作が行われている荷役車両は荷役車両F1であることを知ることができる。
【0045】
(荷役車両F2が位置P3に到着)
遠隔操作者U1が荷役車両F1の遠隔操作を行っているときに荷役車両F2が目的地である位置P3に到着すると、荷役車両F2の制御部26が、到着信号を遠隔操作装置10に送信するとともに、報知部22に表示されている画面の背景の色を白色から青色に変化させる(
図8(B)参照)。つまり、荷役車両F2の制御部26が、報知部22の報知状態を変化させる。
【0046】
遠隔操作者U1が2台の荷役車両F1,F2の遠隔操作を同時に行うのは危険である。このため、この時点では、遠隔操作装置10の表示部13に遠隔操作開始ボタンは表示されない(
図8(A)参照)。言い換えると、遠隔操作装置10の制御部14は、荷役車両F1に後述する操作終了信号を送信するまでの間は、荷役車両F2に操作開始信号を送信することはできない。ただし、領域A6に表示されているシンボルS6の色は、青色に変化する。このため、遠隔操作者U1は、この青色への変化により、荷役車両F2が目的地に到着したことを知ることはできる。当然ながら、遠隔操作者U1は、荷役車両F2の報知部22に表示されている画面の背景の色が青色に変化したことによっても、荷役車両F2が目的地に到着したことを知ることができる。
【0047】
(荷役車両F1の遠隔操作を終了)
遠隔操作者U1が荷役車両F1の遠隔操作を終えて遠隔操作終了ボタンをタッチすると、遠隔操作装置10の制御部14が、その旨を示す指令信号(これを特に「操作終了信号」という)を荷役車両F1に送信する。
【0048】
操作終了信号を受信した荷役車両F1の制御部26は、撮像部23を停止させるとともに、荷役操作装置10への映像信号の送信を停止する。また、荷役車両F1の制御部26は、次の目的地である荷置き位置P2に向かって自律走行するように走行装置24を制御するとともに、報知部22に表示されている画面の背景の色を赤色から白色に変化させる(
図9(B)参照)。つまり、荷役車両F1の制御部26が、報知部22の報知状態を変化させる。
【0049】
映像信号の送信が停止されたことを受けて、荷役操作装置10の制御部14は、表示部13に表示される画面を遠隔操作前の画面に似たものに切り替える(
図9(A)参照)。同図に示した画面は、領域A1のサブ領域a3に位置P2に向けて自律走行中である旨が表示されている点と、領域A2のサブ領域a3に遠隔操作開始ボタンが表示されている点とにおいて
図5(A)に示した遠隔操作前の画面と相違している。
【0050】
このように、本実施例に係る遠隔操作システム1Aでは、(1)目的地に向かって自律的に走行しているときと、(2)目的地に到着してから遠隔操作が開始されるまでの間、すなわち、荷役車両20の制御部26が到着信号を送信してから操作開始信号を受信するまでの間と、(3)遠隔操作が行われている間、すなわち、荷役車両20の制御部26が操作開始信号を受信してから操作終了信号を受信するまでの間とで、報知部22の報知状態が異なる。このため、本実施例に係る遠隔操作システム1Aによれば、遠隔操作者U1は、報知部22の赤色に基づいて、まさに今自分が遠隔操作を行っている荷役車両がどれなのかを容易に把握することができる。また、遠隔操作システム1Aによれば、遠隔操作者U1は、報知部22の青色に基づいて、次に自分が遠隔操作を行うべき荷役車両がどれなのかを容易に把握することができる。
【0051】
また、本実施例に係る遠隔操作システム1Aでは、遠隔操作者U1の手元にある遠隔操作装置10の表示部13に、荷役車両F1,F2,F3の報知部22に表示されている画面に対応した表示がなされる(特に、
図7,8参照)。このため、本実施例に係る遠隔操作システム1Aによれば、遠隔操作者U1は、荷役車両F1,F2,F3を視認することができなくても、まさに今自分が遠隔操作を行っている荷役車両がどれなのか等を容易に把握することができる。
【0052】
[第2実施例]
図10に、本発明の第2実施例に係る遠隔操作システム1Bの概要を示す。同図に示すように、遠隔操作システム1Bは、遠隔操作者U1が1台以上の荷役車両(例えば、3台の荷役車両F1,F2,F3)の遠隔操作を担うことと、遠隔操作者U2が1台以上の荷役車両(例えば、2台の荷役車両F4,F5)の遠隔操作を担うこととを可能とする。
【0053】
本実施例に係る遠隔操作システム1Bは、遠隔操作者U2が使用する遠隔操作装置10をさらに備えている点で遠隔操作システム1Aと相違している。なお、以下の説明では、遠隔操作者U2が使用する遠隔操作装置10を指し示すときに、便宜上、符号10’を使用する。
【0054】
遠隔操作者U1が荷役車両F1,F2,F3の遠隔操作を担うことになった後、例えば、
図4に示した局面において遠隔操作者U2が遠隔操作装置10’を起動させると、遠隔操作装置10’の表示部13に待機中の荷役車両F1,F2,F3,F4,F5に対応したシンボルS1,S2,S3,S4,S5を有する画面が表示される(
図11(A)参照)。ただし、シンボルS1,S2,S3は、シンボルS4,S5と比較して目立たない態様となっている。
【0055】
遠隔操作者U2がシンボルS4,S5をタッチすることにより荷役車両F4,F5を選択すると、遠隔操作者U2が荷役車両F4,F5の遠隔操作を担うこととなり、遠隔操作装置10’の表示部13に、荷役車両F4に関する領域A1と、荷役車両F5に関する領域A2とを有する画面が表示される(
図12(A)参照)。そして、これとともに、新たに選択された荷役車両F4,F5の報知部22に表示される画面が、白色の背景のみからなる画面から、白色の背景と遠隔操作者U2に対応した文字等(本実施例では、文字「U2」)とで構成された画面へと切り替わる(
図12(B)参照)。つまり、荷役車両F4,F5の制御部26が、報知部22の報知状態を変化させる。
【0056】
このように、本実施例に係る遠隔操作システム1Bでは、荷役車両20の報知部22に遠隔操作者に対応した文字等(「U1」または「U2」)で構成された画面が表示される。このため、本実施例に係る遠隔操作システム1Bによれば、遠隔操作者U1,U2は、自分自身が遠隔操作を担うことになっている荷役車両とそうでない荷役車両とを容易に区別することができる。
【0057】
[変形例]
以上、本発明に係る遠隔操作システムの実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。
【0058】
荷役車両20の報知部22は、カラー液晶ディスプレイに限定されない。例えば、報知部22は、2つの発光部22a,22bを有するマルチカラータイプの積層信号灯であってもよい(
図13参照)。この報知部22は、2つの発光部22a,22bの発光状態を次のように切り替えることにより、カラー液晶ディスプレイと同様の報知状態をとることができる。
(1)上側発光部22a
・遠隔操作者U1が遠隔操作を担っている場合は青色に発光
・遠隔操作者U2が遠隔操作を担っている場合は赤色に発光
・いずれにも該当しない場合は消灯
(2)下側発光部22b
・目的地に向かって自律的に走行しているときは白色に発光
・目的地に到着してから遠隔操作が開始されるまでの間は青色に発光
・遠隔操作が行われている間は赤色に発光
【0059】
遠隔操作装置10は、スマートフォンまたはタブレットであってもよい。この場合、遠隔操作者は、タッチパネルディスプレイの画面に表示されたレバー状またはボタン状のシンボルをなぞることにより、荷役車両20を遠隔操作することができる。つまり、この場合は、操作部12としての物理的なレバーを省略することができる。
【0060】
荷役車両20は、リーチ型フォークリフトに限定されない。荷役車両20は、他の形式のフォークリフトであってもよいし、フォークリフト以外の荷役車両であってもよい。
【0061】
荷役車両20の動作状態を示す色は、白色、青色、赤色に限定されない。また、本発明に係る遠隔操作システムは、色以外の視覚情報を用いて、荷役車両20の動作状態を報知してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1A,1B 遠隔操作システム
10 遠隔操作装置
11 通信部
12 操作部
13 表示部
14 制御部
20 荷役車両
21 通信部
22 報知部
23 撮像部
24 走行装置
25 荷役装置
26 制御部
F1,F2,F3,F4,F5 荷役車両
U1,U2 遠隔操作者