IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

特許7347921アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム
<>
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図1
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図2
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図3
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図4
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図5
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図6
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図7
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図8
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図9
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図10
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図11
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図12
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図13
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図14
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図15
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図16
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図17
  • 特許-アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/00 20180101AFI20230912BHJP
   A61B 5/00 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
G16H40/00
A61B5/00 102A
A61B5/00 102B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018131717
(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2020009322
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】手塚 真二
(72)【発明者】
【氏名】宗島 理恵
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘子
(72)【発明者】
【氏名】山野 薫
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】伏本 正典
【審判官】古川 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-205710(JP,A)
【文献】特表2011-501274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間に発生したアラーム情報と識別情報を取得する取得部と、
前記アラーム情報と前記識別情報から第1のアラーム情報と第1の識別情報および第2のアラーム情報と第2の識別情報を選択し、前記第1のアラーム情報および前記第2のアラーム情報に関する統計の解析をする演算部と、
前記演算部が解析した前記第1のアラーム情報および前記第2のアラーム情報に関する統計を比較できる形態で出力する出力部と、を有し、
前記第1および第2の識別情報は、設置地域、診療科分類、施設規模使用機器、施設運用分類に応じた識別情報、の少なくとも一つ、および施設名に応じた識別情報であり、
前記演算部は、前記第1のアラーム情報および前記第2のアラーム情報に関する統計として、所定期間当たりのアラーム件数、所定期間所定人数当たりのアラーム件数、所定期間当たりのアラーム解除率、の少なくともいずれか1つを解析し、前記第1および第2の少なくとも一つの識別情報と、前記所定期間当たりのアラーム件数、前記所定期間所定人数当たりのアラーム件数、および前記所定期間当たりのアラーム解除率の少なくともいずれか1つを用いて、一施設と他施設を比較するための総合判定を演算し、
前記出力部は、前記演算部が演算した総合判定を出力するアラーム情報処理装置。
【請求項2】
前記所定期間当たりのアラーム件数または前記所定期間所定人数当たりのアラーム件数は、患者の生体情報の異常を示すバイタルアラームの件数、前記生体情報を取得する医療機器の異常を示すテクニカルアラームの件数、およびバイタルアラームの件数とテクニカルアラームの件数の合計件数を含む、請求項1に記載のアラーム情報処理装置。
【請求項3】
前記所定期間当たりのアラーム解除率は、処置の緊急度が最も低い低優先度アラームの解除率、処置の緊急度が低優先度アラームよりも高い中優先度アラームの解除率、および処置の緊急度が最も高い高優先度アラームの解除率の少なくともいずれか1つを含む、請求項1または2に記載のアラーム情報処理装置。
【請求項4】
コンピュータに、
所定期間に発生したアラーム情報と識別情報を取得させる機能と、
前記アラーム情報と前記識別情報から第1のアラーム情報と第1の識別情報および第2のアラーム情報と第2の識別情報を選択し、第1のアラーム情報および第2のアラーム情報に関する統計の解析をさせる機能と、
解析した前記第1のアラーム情報および前記第2のアラーム情報に関する統計を比較できる形態で出力させる機能と、
を実現させるものであり、
前記第1および第2の識別情報は、設置地域、診療科分類、施設規模使用機器、施設運用分類に応じた識別情報、の少なくとも一つ、および施設名に応じた識別情報であり、
前記コンピュータは、前記第1のアラーム情報および前記第2のアラーム情報に関する統計として、所定期間当たりのアラーム件数、所定期間所定人数当たりのアラーム件数、所定期間当たりのアラーム解除率、の少なくともいずれか1つを解析させ、前記第1および第2の少なくとも一つの識別情報と、前記所定期間当たりのアラーム件数、前記所定期間所定人数当たりのアラーム件数、および前記所定期間当たりのアラーム解除率の少なくともいずれか1つを用いて、一施設と他施設を比較するための総合判定を演算させ、演算された総合判定を出力させるアラーム情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、一施設における患者のアラームに関するアラーム情報を時系列的または統計的に処理し、アラームレポートを出力する、アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5624509号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のアラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムでは、一施設における所定の期間のアラームレポートは出力できるものの、他施設との比較におけるアラームレポートを出力したり、一施設のアラームレポートの経時的な推移を出力したりすることはできない。
【0005】
そこで、本発明は、医療現場のアラーム情報(個々のアラームに関する情報の集合)から、一施設または他施設との比較におけるアラーム(個々のアラームに関する情報)に関する統計を出力したり、一施設のアラームに関する統計の経時的な推移を出力したりできる、アラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るアラーム情報処理装置は、所定期間に発生したアラーム情報と識別情報を取得する取得部と、アラーム情報と識別情報から第1のアラーム情報と第1の識別情報および第2のアラーム情報と第2の識別情報を選択し、第1のアラーム情報および第2のアラーム情報に関する統計の解析をする演算部と、演算部が解析した第1のアラーム情報および第2のアラーム情報に関する統計を比較できる形態で出力する出力部と、を有し、第1および第2の識別情報は、設置地域、診療科分類、施設規模使用機器、施設運用分類に応じた識別情報、の少なくとも一つ、および施設名に応じた識別情報であり、演算部は、第1のアラーム情報および第2のアラーム情報に関する統計として、所定期間当たりのアラーム件数、所定期間所定人数当たりのアラーム件数、所定期間当たりのアラーム解除率、の少なくともいずれか1つを解析し、第1および第2の少なくとも一つの識別情報と、所定期間当たりのアラーム件数、所定期間所定人数当たりのアラーム件数、および所定期間当たりのアラーム解除率の少なくともいずれか1つを用いて、一施設と他施設を比較するための総合判定を演算し、出力部は、演算部が演算した総合判定を出力する。
【0007】
本発明の一態様に係るアラーム情報処理プログラムは、コンピュータに、所定期間に発生したアラーム情報と識別情報を取得させる機能と、アラーム情報と識別情報から第1のアラーム情報と第1の識別情報および第2のアラーム情報と第2の識別情報を選択し、第1のアラーム情報および第2のアラーム情報に関する統計の解析をさせる機能と、解析した第1のアラーム情報および第2のアラーム情報に関する統計を比較できる形態で出力させる機能と、を実現させるものであり、第1および第2の識別情報は、設置地域、診療科分類、施設規模使用機器、施設運用分類に応じた識別情報、の少なくとも一つ、および施設名に応じた識別情報であり、コンピュータは、第1のアラーム情報および第2のアラーム情報に関する統計として、所定期間当たりのアラーム件数、所定期間所定人数当たりのアラーム件数、所定期間当たりのアラーム解除率、の少なくともいずれか1つを解析させ、第1および第2の少なくとも一つの識別情報と、所定期間当たりのアラーム件数、所定期間所定人数当たりのアラーム件数、および所定期間当たりのアラーム解除率の少なくともいずれか1つを用いて、一施設と他施設を比較するための総合判定を演算させ、演算された総合判定を出力させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムによれば、医療現場のアラーム情報からアラームに関する統計を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明が適用される医療用システムの概略構成図である。
図2図1のセントラルモニタ装置とアラーム情報処理装置との接続図である。
図3】アラーム情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】アラーム情報処理装置が取得するアラーム情報の一例である。
図5】実施形態1におけるアラーム情報処理装置の動作フローチャートである。
図6図5のS110のサブルーチンフローチャートである。
図7】出力部が出力する、「一日当たりのアラーム件数」の出力形態を示す図である。
図8】出力部が出力する、「一日一人当たりのアラーム件数」の出力形態を示す図である。
図9】出力部が出力する、「高優先度アラーム解除率」の出力形態を示す図である。
図10】出力部が出力する、「総合判定」の出力形態を示す図である。
図11】出力部が出力する、「アラーム低減のヒント」の出力形態を示す図である。
図12】実施形態2におけるアラーム情報処理装置の動作フローチャートである。
図13図12のS210のサブルーチンフローチャートである。
図14】出力部が出力する、「一日当たりのアラーム件数の推移」の出力形態1を示す図である。
図15】出力部が出力する、「一日当たりのアラーム件数の推移」の出力形態2を示す図である。
図16】出力部が出力する、「一日一人当たりのアラーム件数の推移」の出力形態を示す図である。
図17】出力部が出力する、「アラーム解除率の推移」の出力形態を示す図である。
図18】出力部が出力する、「総合判定の推移」の出力形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、添付図面を参照しながら、本発明に係るアラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムの実施形態を、[実施形態1]と[実施形態2]とに分けて説明する。なお、明細書中、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[実施形態1]
本実施形態は、選択した一施設(自施設)と他施設のアラームに関する統計を比較できるようにした実施形態である。
【0011】
(医療用システムの構成)
まず、医療用システムの構成について説明する。
【0012】
図1は、本発明が適用される医療用システム100の概略構成図である。医療用システム100は、生体情報モニタ装置110、セントラルモニタ装置120、およびアラーム情報処理装置130を備える。生体情報モニタ装置110とセントラルモニタ装置120とは、通信回線140を介して相互に通信可能に接続される。また、セントラルモニタ装置120とアラーム情報処理装置130とは、通信回線150を介して相互に通信可能に接続される。通信回線140、150は、有線または無線によって生体情報やアラームに関する情報(アラーム情報)を伝送可能な通信回線である。通信回線140、150は、たとえば、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDIなどの規格によりコンピュータやネットワーク機器同士を接続したLAN(Local Area Network)、LAN同士を専用線で接続したWAN(Wide Area Network)、またはインターネットにおいてプライベートネットワークを拡張するVPN(Virtual Private Network)などを用いて形成される通信回線である。
【0013】
生体情報モニタ装置110は、患者105の病室に設置されるベッドサイドモニタである。生体情報モニタ装置110は、通常、病室に収容されている患者105の数に応じた台数を設置する。生体情報モニタ装置110は、患者105の生体情報を取得して表示したり、取得した生体情報をセントラルモニタ装置120に送信したりする。
【0014】
セントラルモニタ装置120は、医療スタッフが常駐する、たとえばナースステーションなどの部屋に設置されるセントラルモニタである。セントラルモニタ装置120は、通常、1つのナースステーション当たりに1台が設置される。セントラルモニタ装置120は、通信回線140を介して接続されている、全ての生体情報モニタ装置110から受信した生体情報を表示したり、所定の場合にアラームを発生させたりする。セントラルモニタ装置120が発生させた全てのアラームは、セントラルモニタ装置120内の記憶部(図示せず)にアラーム情報として記憶される。
【0015】
アラーム情報処理装置130は、通常は装置(たとえば生体情報モニタ装置110、セントラルモニタ装置120など)外に設けたコンピュータによって構成される。そのコンピュータは、本実施形態のアラーム情報処理プログラムを記憶している。アラーム情報処理プログラムは、そのコンピュータに、アラーム処理プログラムを実行させることによって、複数の施設で所定期間に発生したアラーム情報を取得させる機能と、取得したアラーム情報を有する一施設を選択し一施設と他施設とのアラームに関する統計解析を演算させる機能と、演算したアラームに関する統計を比較できる形態で出力させる機能とを実現させることができる。すなわち、そのコンピュータにアラーム処理プログラムを実行させることによって、そのコンピュータはアラーム情報処理装置130となる。
【0016】
アラーム情報処理装置130は、通信回線150を介して接続されている、全てのセントラルモニタ装置120からアラーム情報を取得する。アラーム情報処理装置130は、取得したアラーム情報を統計的に処理し、アラームに関する統計(たとえばアラームレポート)を出力する。なお、アラーム情報処理装置130が演算したアラームに関する統計は、各施設のセントラルモニタ装置120に向けて送信しても良い。各施設では、送信されたアラームに関する統計を、ディスプレイに表示したりプリントしたりする。
【0017】
図2は、図1のセントラルモニタ装置120とアラーム情報処理装置130との接続図である。図示するように、アラーム情報処理装置130には通信回線150を介して複数のセントラルモニタ装置120が接続される。
【0018】
セントラルモニタ装置120は1か所のナースステーションに通常1台設置されるが、1つのナースステーションで複数のセントラルモニタ装置120が設置される場合もある。アラーム情報処理装置130には、1つのセントラルモニタ装置120だけではなく、複数のセントラルモニタ装置120も接続される。したがって、アラーム情報処理装置130は、少なくとも1台以上のセントラルモニタ装置120からアラーム情報が取得できる。
【0019】
アラーム情報処理装置130に接続されるセントラルモニタ装置120は、設置地域(関東などの地域名、東京都などの都道府県名など)、診療科分類(外科、内科などの専門分野名)、施設規模(平均患者数、スタッフ数、ベット数など)、施設名(○○病院、□□病棟など)、使用機器(セントラルモニタ型式、バージョンなど)、施設運用分類(△△チームなど)などの分類に応じた識別情報が割り当てられている。各セントラルモニタ装置120からアラーム情報処理装置130にアラーム情報が出力されるときには、アラーム情報にこれらの識別情報が付与される。したがって、アラーム情報処理装置130は、たとえば、自施設と他施設とのアラームに関する統計を、設置地域ごと、診療科分類ごと、施設規模ごと、施設ごとに、またはその組合せに分類して演算することができる。
【0020】
さらに具体的には、アラーム情報処理装置130は、たとえば、自施設である、○○病院の平均患者数〇~〇人の内科の1か月分のアラームに関する統計と、他施設である、全ての地域の全ての病院の平均患者数〇~〇人の内科の1か月分のアラームに関する統計とを演算することができる。
【0021】
図3は、アラーム情報処理装置130の概略構成を示すブロック図である。図示するように、アラーム情報処理装置130は、制御部131、記憶部132、通信部133、操作部136、演算部137、および出力部138を備える。これらの構成要素はバス139を介して相互に接続される。なお、制御部131、記憶部132、および通信部133は取得部135を構成する。
【0022】
制御部131は、主にCPU(Central Processing Unit)によって構成され、プログラムに従い、バス139を介して接続される上記各構成要素の制御や各種の演算処理を実行する。
【0023】
記憶部132は、あらかじめ各種プログラムや各種データを記憶するROM(Read Only Memory)、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、各種プログラムや各種データを記憶するハードディスクなどから構成される。本実施形態のアラーム情報処理プログラムはROMに、セントラルモニタ装置120から取得した全てのアラーム情報はRAMまたはハードディスクにそれぞれ記憶される。
【0024】
通信部133は、全てのセントラルモニタ装置120からアラーム情報を受信したり、全てのセントラルモニタ装置120に演算したアラームに関する統計を送信したりするためのインターフェースである。
【0025】
上記のように、制御部131、記憶部132、および通信部133は取得部135を構成するが、取得部135は、自施設と他施設とで所定期間(たとえば1か月間)に発生したアラーム情報を取得する機能を有する。
【0026】
操作部136は、キーボードやタッチパネルなどから構成され、ユーザーの各種操作を受け付ける。操作部136では、演算させるアラームに関する統計をどのような出力形態で出力させるのかを指定することができる。たとえば、アラームに関する統計を、施設の設置地域ごと、診療科分類ごと、施設規模ごと、施設ごと、などに分類して演算するように指定することができる。
【0027】
演算部137は、制御部131と同様に主にCPUによって構成され、取得部135が取得したアラーム情報から自施設と他施設とのアラームに関する統計を演算する。具体的には、記憶部132に記憶されているアラーム情報から、操作部136によって指定されたアラームに関する統計を演算する。
【0028】
出力部138は、記憶部132に記憶されているアラーム情報や、演算部137が演算したアラームに関する統計をディスプレイに表示したり、プリンタでプリントしたりする。
【0029】
以上のように構成された本実施形態のアラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムによれば、医療現場のアラーム情報からアラームに関する統計を出力することができる。
【0030】
(医療用システムの動作)
次に、医療用システム100の概略の動作について説明する。
【0031】
生体情報モニタ装置110は患者105(図1参照)の各種生体情報を計測する。生体情報モニタ装置110によって計測される生体情報には、心電図(ECG)、動脈血酸素飽和度(SpO2)、観血式血圧(IBP)、非観血式血圧(NIBP)、呼吸(RESP)、呼気および吸気の二酸化炭素量(CO2)などがある。
【0032】
たとえば、ECGを計測する生体情報モニタ装置110は、不整脈または心拍数(HR)の上下限についての異常を、生体の異常を示すバイタルアラームとして検出する。また、生体情報モニタ装置110は、計測信号に内在するノイズがある場合または1つ以上の電極からの信号がない場合など、医療機器の技術的な異常をテクニカルアラームとして検出する。一方、SpO2を計測する生体情報モニタ装置110は、SpO2または脈拍数(PR)の上下限についての異常を、バイタルアラームとして検出する。また、生体情報モニタ装置110は、患者105に取り付けたプローブからの信号または脈波が正常に受信されない場合、このような異常をテクニカルアラームとして検出する。このように、患者105の生体情報の異常を示すアラームがバイタルアラームとなり、また、生体情報を取得する医療機器の異常を示すアラームがテクニカルアラームとなる。このような生体情報の計測は、侵襲的または非侵襲的になされうる。
【0033】
異常を検出した場合、生体情報モニタ装置110は、アラームを発生する。アラームには、処置の緊急度が最も低い低優先度アラーム、処置の緊急度が低優先度アラームよりも高い中優先度アラーム、および処置の緊急度が最も高い高優先度アラームの3つの種類がある。アラームを発生させた異常についての情報は、アラーム情報として生体情報モニタ装置110に記憶される。同時にこのアラーム情報は通信回線140を介してセントラルモニタ装置120に送信される。セントラルモニタ装置120は、通信回線140に接続された一以上の生体情報モニタ装置110からアラーム情報を取得し記憶する。
【0034】
図4は、セントラルモニタ装置120が記憶するアラーム情報の一例である。図に示すように、アラーム情報40は、複数のアラーム内容40-1~40-6などと識別情報40-7を含み、図示されるように行毎に時系列に並べて、セントラルモニタ装置120に記憶される。
【0035】
アラーム内容40-1は、アラームが発生した時刻を示す。時刻は、秒単位まで記憶されてもよい。アラーム内容40-2は、アラームが発生した場所を示す。図示されるように、アラーム情報は、異なる場所の異なる生体情報モニタ装置110からアラーム情報を取得できる。アラーム内容40-3は、アラームを発生させた患者105のベッドの識別情報を示す。
【0036】
アラーム内容40-4は、生体情報モニタ装置110により計測された生体情報の計測値を示す。アラーム内容40-5は、生体情報モニタ装置110により検出された生体情報の異常に対応するアラームの内容を示す。たとえば、1つのパラメータとしてのECGに関連して、「不整脈」および「心拍数(HR)上下限」などの情報がアラーム内容として含まれる。また、SpO2に関連して、「SpO2上下限」および「PR上下限」などの情報がアラーム内容として含まれる。また、IBP、NIBP、RESPおよびCO2に関連して、それぞれのパラメータの上下限などの情報がアラーム内容に含まれる。アラーム内容40-6は、発生したアラームが生体情報の異常に関するものかまたは技術上の異常に関するものかを示し、上記のバイタルアラームまたはテクニカルアラームかの種別を示す。
【0037】
なお、ECGに関連するテクニカルアラームとして「解析不能」および「電極確認」、SpO2に関連するテクニカルアラームとして「プローブ確認」、「脈波検出不能」および「外来光ノイズ」などの情報がアラーム内容に含まれる。また、テクニカルアラームのうち、いずれのパラメータにも関連しない内容として「電波切れ」などの内容も含まれる。さらに、アラーム情報には、アラームが発生してから解消されるまでの時間、医療スタッフによりアラームが解除されたか、などの情報も含まれる。
【0038】
識別情報40-7は、セントラルモニタ装置120の設置地域ごと、診療科分類ごと、施設規模ごと、施設ごとに割り当てられている。セントラルモニタ装置120は、記憶しているアラーム情報40をアラーム情報処理装置130に送信するときには、設置地域ごと、診療科分類ごと、施設規模ごと、施設ごとなどに割り当てられている識別情報40-7を付与する。アラーム情報処理装置130は、接続されている全てのセントラルモニタ装置120から、識別情報40-7が付与されたアラーム情報40を取得する。
【0039】
アラーム情報処理装置130は、セントラルモニタ装置120から取得したアラーム情報40から、各施設のアラームに関する統計を演算し、アラームレポートを出力する。
(アラーム情報処理装置の動作)
次に、アラーム情報処理装置130の具体的な動作を説明する。図5は、実施形態1におけるアラーム情報処理装置130の動作フローチャートである。この動作フローチャートは、本実施形態のアラーム情報処理装置130内で処理されるアラーム情報処理プログラムの実行手順でもある。
【0040】
図3に示した取得部135は、複数の施設で所定期間に発生したアラーム情報40を取得する(S100)。具体的には、図3に示した通信部133は、優先又は無線で接続されている全てのセントラルモニタ装置120と通信し、図4に示した、所定期間に発生したアラーム情報40を識別情報40-7とともに受信する。受信した全てのアラーム情報40は識別情報40-7とともに記憶部132に記憶される。通信部133にアラーム情報40を受信させる動作および記憶部132にアラーム情報40を記憶させる動作は、制御部131が制御する。
【0041】
次に、図3に示した演算部137は、取得部135が取得したアラーム情報40を有する一施設を選択し一施設(自施設)と他施設とのアラームに関する統計を演算する。(S110)。具体的には、図3に示した演算部137は、操作部136によって指定された、該当するアラーム情報を記憶部132から取り出して、操作部136によって指定された出力形態のアラームに関する統計を演算する。アラームに関する統計は、たとえば、自施設と他施設とを、設置地域ごと、診療科分類ごと、施設規模ごと、施設ごとなどで比較できるような形態で演算される。アラームに関する統計の具体的な演算は図6のフローチャートを用いて後述する。
【0042】
次に、図3に示した出力部138は、演算部137が演算したアラームに関する統計を自施設と他施設とが比較できる形態で出力する。なお、演算部137にアラームに関する統計を演算させる動作、出力部138にアラームに関する統計を出力させる動作は、制御部131が制御する。アラームに関する統計の具体的な出力形態は、図7から図11を用いて後述する。
【0043】
図6は、図5のS110のサブルーチンフローチャートである。演算部137は、記憶部132に記憶されているアラーム情報から、アラーム情報処理装置130に接続されている全てのセントラルモニタ装置120の一日当たりのアラーム件数を演算する。このアラーム件数は、バイタルアラームの件数とテクニカルアラームの件数の合計件数である。このアラーム件数は、一日当たりの、バイタルアラームの件数およびテクニカルアラームの件数に分けて演算してもよい(S111)。
【0044】
次に、演算部137は、記憶部132に記憶されているアラーム情報から、アラーム情報処理装置130に接続されている全てのセントラルモニタ装置120の、一日一人当たりの、バイタルアラームの件数およびテクニカルアラームの件数を演算する(S112)。
【0045】
さらに、演算部137は、記憶部132に記憶されている、アラーム情報に含まれる高優先度アラーム、中優先度アラーム、および低優先度アラームの3つのアラームの内の、高優先度アラームの解除率、すなわち、医療スタッフにより高優先度アラームが解除された割合を示す高優先度アラーム解除率を演算する。高優先度アラーム解除率は、(高優先度アラームを解除した件数/高優先度アラームの発生した件数)を演算することによって得られる(S113)。本実施形態では、高優先度アラーム解除率だけを演算しているが、この他に、中優先度アラーム解除率、低優先度アラーム解除率を演算しても良い。
【0046】
さらに、演算部137は、一日当たりのアラーム件数、一日一人当たりのアラーム件数、およびアラーム解除率を用いて、自施設の総合判定を演算する(S114)。総合判定は、一日当たりのアラーム件数から評価する「環境」、アラームを鳴らすために設定している閾値の妥当性を評価する「設定」、アラームが鳴ったときに医療スタッフがアラームをどの程度解除しているのかを評価する「対応」、一日一人当たりのテクニカルアラームの件数から評価する「管理」、の4項目のレーダーチャートを演算することによって行なう。
【0047】
最後に、演算部137は、一日一人当たりのアラーム件数をアラームの発生原因項目別に分類して、アラーム件数の多い項目順に並べた、アラーム低減のヒントを演算する。具体的には、アラーム件数を低減させるためのヒントは、バイタルアラームおよびテクニカルアラームの発生原因ごとのアラーム件数、一日一人当たりのアラーム件数に対する発生原因ごとのアラーム件数の割合を含める(S115)。
【0048】
以上のように、本実施形態では、アラームに関する統計として、一日当たり(所定期間当たり)のアラーム件数、一日一人当たり(所定期間所定人数当たり)のアラーム件数、およびアラーム解除率を演算している。なお、本実施形態では、一日当たりのアラーム件数、一日一人当たりのアラーム件数、およびアラーム解除率の3つを演算しているが、少なくともいずれか1つを演算するようにしても良い。また、所定期間は1日を例示したが、これに限らず、日勤、夜勤の勤務時間、1週間、15日間など、であっても良い。また、所定人数は一人を例示したが、複数人であっても良い。
【0049】
本実施形態によれば、それぞれの施設が一日当たりどの程度のアラーム件数が発生しているか、一日一人当たりにどの程度のアラーム件数が発生しているか、アラームの解除率がどの程度であるかが、アラームに関する統計として演算できる。
【0050】
また、一日当たりのアラーム件数または一日一人当たりのアラーム件数は、患者105の生体情報の異常を示すバイタルアラームの件数、患者105の生体情報を取得する医療機器の異常を示すテクニカルアラームの件数、およびそのバイタルアラームの件数とそのテクニカルアラームの件数の合計件数を含んでいる。
【0051】
本実施形態によれば、一日当たりの、バイタルアラームの件数、テクニカルアラームの件数を演算でき、また、一日一人当たりの、バイタルアラームの件数、テクニカルアラームの件数を演算できる。したがって、アラームに関する統計を細かく採ることができる。
【0052】
なお、アラーム解除率は、処置の緊急度が最も低い低優先度アラームの解除率、処置の緊急度が低優先度アラームよりも高い中優先度アラームの解除率、および処置の緊急度が最も高い高優先度アラームの解除率を含んでもよい。したがって、アラームの解除率に関する統計を細かく採ることができる。
【0053】
本実施形態では、自施設の総合判定を他施設との比較において演算しているので、自施設におけるアラーム管理の改善点を容易に把握することができる。
【0054】
本実施形態では、自施設のアラーム件数を低減させるためのヒントを演算し、アラーム件数を低減させるためのヒントは、バイタルアラームおよびテクニカルアラームの発生原因ごとのアラーム件数、一日一人当たりのアラーム件数に対する発生原因ごとのアラーム件数の割合を含めている。このため、アラーム件数を減少させるために何をしなければならないかが明確になる。
【0055】
次に、図6のサブルーチンフローチャートの処理によって得られた、一日当たりのアラーム件数、一日一人当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数、高優先度アラーム解除率、総合判定、およびアラーム件数を低減させるためのヒントの出力形態を説明する。これらのアラームに関する統計は、アラームレポートとして、出力部138によって出力される。アラームレポートはディスプレイに表示しても良いし、プリンタによってプリントされても良い。
【0056】
図7は、出力部138が出力する、「一日当たりのアラーム件数」の出力形態である。一日当たりのアラーム件数は、一日当たりのアラーム件数が少ない施設から多い施設の順に、横軸の左側から右側に向けてアラーム件数を示す棒グラフを並べて表示する。自施設の棒グラフの色を他施設の棒グラフの色と違え、自施設の棒グラフの位置がわかるようにしている。また、一日当たりのアラーム件数の全施設の平均値を直線で表示している。これらの表示によって、自施設の一日当たりのアラーム件数が平均値に対して多いのか少ないのか、自施設の他施設に対する相対位置がどのあたりであるのかがわかる。
【0057】
図8は、出力部138が出力する、「一日一人当たりのアラーム件数」の出力形態である。アラーム件数は、バイタルアラームの件数とテクニカルアラームの件数に分け、バイタルアラームの件数を縦軸に、テクニカルアラームの件数を横軸に設定する。一日一人当たりのアラーム件数は、各施設のバイタルアラームの件数と各施設のテクニカルアラームの件数を平面上にプロットすることによって表示する。全ての施設の平均もその平面上にプロットすることによって表示する。自施設のプロット位置のプロット色は他施設のプロット位置のプロット色と違え、自施設のプロット位置がわかるようにしている。また、全ての施設の平均のプロット位置のプロット色も他のプロット色とは違え、自施設と他施設のプロット位置の相対位置がわかるようにしている。これらの表示によって、自施設の一日一人当たりのバイタルアラームおよびテクニカルアラームの件数が平均に対して多いのか少ないのか、自施設の他施設に対する相対位置がどのあたりであるのかがわかる。
【0058】
図9は、出力部138が出力する、「高優先度アラーム解除率」の出力形態である。高優先度アラーム解除率は、解除率(%)を0-10、11-20、21-30、31-40、41-50、51-60、61-70、71-80、81-90、91-100の10区分に区分し、該当する区分の施設数を棒グラフで表示する。自施設の高優先度アラーム解除率に該当する区分の棒グラフの色を他施設の棒グラフの色と違え、自施設の棒グラフの位置がわかるようにしている。また、全施設の高優先度アラーム解除率の平均も表示する。これらの表示によって、自施設の高優先度アラーム解除率が他施設に対して多いのか少ないのか、自施設の他施設に対する相対位置がどのあたりであるのかがわかる。
【0059】
図10は、出力部138が出力する、「総合判定」の出力形態である。総合判定は、「環境」、「設定」、「対応」、「管理」の4項目のレーダーチャートで表示される。総合判定は、5段階評価で行われ、各段階の間には閾値を設けている。総合判定は、4つの項目の評価段階を結ぶことによって形成される四角形の面積が大きいほど優秀な判定となる。総合判定の結果、『他施設平均と比較して対応の評価が低くなっています。高優先度のアラームへの対応が不十分である可能性があります』というコメントが画面上に表示される。
【0060】
「環境」は、一日当たりのアラーム件数から評価され、一日当たりのアラーム件数が少ないほど評価が良い。一日当たりのアラーム件数が多いと、アラームが鳴っていることが多いので、施設の環境を悪化させるからである。したがって、一日当たりのアラーム件数が多い施設ほど中心に近づく点にプロットされる。
【0061】
「設定」は、一日一人当たりのバイタルアラームの件数から評価され、一日一人当たりのバイタルアラーム件数が少ないほど評価が良い。一日一人当たりのバイタルアラーム件数が多い場合には、たとえば、心拍数などの生体情報に対するバイタルアラームの設定値が患者の容態に適していないことが多いからである。したがって、「設定」の評価を参照することで、バイタルアラームの設定値が適切であるか否かがわかり、設定値を変更させる機会を提供できる。
【0062】
「対応」は、アラームが鳴ったときに医療スタッフがアラームをどの程度の割合で解除しているのか、すなわちアラーム解除率から評価され、アラーム解除率が大きいほど評価が良い。本実施形態では、高優先度アラーム解除率によって「対応」を評価している。高優先度アラームが鳴ったときには、医療スタッフは即座に患者105に対応するとともに高優先度アラームの解除ボタンを押す。「対応」の評価を参照することによって、看護師の人数が足りているのか、高優先度アラームの発生が多すぎないか、などを把握することができる。
【0063】
「管理」は、一日一人当たりのテクニカルアラームの件数から評価され、一日一人当たりのテクニカルアラーム件数が少ないほど評価が良い。一日一人当たりのテクニカルアラーム件数が多い場合には、たとえば、患者105から電極が外れる、指のセンサが外れる、通信回線140を構成する無線の電波が切れるなど、測定状態や通信状態がうまく管理されていないことが多い。したがって、「管理」の評価を参照することで、測定状態が良くなるように電極やセンサが外れにくくなるような改善するとか、通信機器を改善するとか、といった機会を提供できる。
【0064】
図11は、出力部138が出力する、「アラーム低減のヒント」の出力形態である。アラーム低減のヒントは、まず、1つは、全施設の一日一人当たりのバイタルおよびテクニカルのアラーム件数の平均データにおいて、アラーム件数の多い項目から順にその件数を示す棒グラフを示し、それらの件数の示す累積割合を折れ線グラフで示したものである。もう1つは、また、自施設の一日一人当たりのバイタルおよびテクニカルのアラーム件数において、アラームの多い項目から順にその件数を示す棒グラフを示し、それらの件数の示す累積割合を折れ線グラフで示したものである。これらの2つを比較することによって、自施設で改善すべき点が明確になる。
【0065】
図11では、全施設の一日一人当たりのアラーム件数として、電池切れを示すテクニカルアラームの件数が最も多く、次に電極確認を示すテクニカルアラームの件数が多い。しかし、自施設では、一日一人当たりのアラーム件数として、SpO2数値の異常を示すバイタルアラームの件数が最も多く、次に、SpO2脈波検出不能を示すテクニカルアラームの件数が多い。これらを見ると、自施設は、SpO2のバイタルアラームおよびテクニカルアラームの件数が多く、他施設とは異なった項目でアラームが多いことがわかる。この場合、SpO2の測定に関するバイタルアラームおよびテクニカルアラームの件数が少なくなるような対策を取れば、アラーム件数を減少させることができる、との予測ができる。このように、アラーム低減のヒントによって、自施設でまずどのアラームが改善すべきなのかが明確になる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、図7から図11に示したような出力形態で、アラームに関する統計を出力するので、自施設と他施設とを比較することができ、自施設で改善させるべき医療行為を把握することができる。なお、図7から図11に示した出力形態は一例であり、アラームに関する統計の見せ方としては、これらの例以外にも種々の出力形態が採用できる。たとえば、自施設と同一の地域内にある他施設と比較できるようにしたもの、自施設と同一規模の他施設と比較できるようにしたものなど、種々のものが考えられる。
【0067】
[実施形態2]
本実施形態は、自施設のアラームに関する統計の経時的な推移を出力できるようにした実施形態である。
【0068】
本実施形態において、医療用システム100の概略構成、セントラルモニタ装置120とアラーム情報処理装置130との接続、アラーム情報処理装置130の概略構成、およびアラーム情報処理装置130が取得するアラーム情報40は、実施形態1において説明した通りである。本実施形態では、アラーム情報処理装置130の機能が実施形態1とは異なる。
【0069】
本実施形態のアラーム情報処理装置130は、実施形態1のアラーム情報処理装置130とは異なり、自施設のアラームに関する統計の経時的な推移を演算することができる。具体的には、アラーム情報処理装置130は、たとえば、自施設である、○○病院の平均患者数〇~〇人の内科の1年分の1か月ごとのアラームに関する統計の推移を演算することができる。
【0070】
本実施形態のアラーム情報処理装置130は、通常は施設外に設けたコンピュータによって構成される。そのコンピュータは、本実施形態のアラーム情報処理プログラムを記憶している。本実施形態のアラーム情報処理プログラムは、コンピュータに、自施設で所定期間ごとに発生したアラーム情報を取得させる機能と、取得したアラーム情報から所定期間ごとのアラームに関する統計を演算させる機能と、演算したアラームに関する統計を所定期間ごとに比較できる形態で出力させる機能とを実現させることができる。すなわち、そのコンピュータにアラーム処理プログラムを実行させることによって、そのコンピュータはアラーム情報処理装置130となる。
【0071】
また、本実施形態のアラーム情報処理装置130は、実施形態1とは異なる機能を持つ取得部135、演算部137、および出力部138を有する(図3参照)。取得部135は、自施設で所定期間ごとに発生したアラーム情報を取得する。演算部137は、取得部135が取得したアラーム情報40から所定期間ごとのアラームに関する統計を演算する。出力部138は、演算部137が演算したアラームに関する統計を所定期間ごとに比較できる形態で出力する。
(アラーム情報処理装置の動作)
次に、アラーム情報処理装置130の具体的な動作を説明する。図12は、実施形態2におけるアラーム情報処理装置130の動作フローチャートである。この動作フローチャートは、本実施形態のアラーム情報処理装置130内で処理されるアラーム情報処理プログラムの実行手順でもある。
【0072】
図3に示した取得部135は、セントラルモニタ装置120から所定期間ごとに発生したアラーム情報40を取得する(S200)。具体的には、図3に示した通信部133は、自施設のセントラルモニタ装置120と通信し、図4に示した、所定期間に発生したアラーム情報40を識別情報40-7とともに受信する。受信した全てのアラーム情報40は識別情報40-7とともに記憶部132に記憶される。通信部133にアラーム情報40を受信させる動作および記憶部132にアラーム情報40を記憶させる動作は、制御部131が制御する。
【0073】
次に、図3に示した演算部137は、取得部135が取得したアラーム情報40から自施設の所定期間ごとのアラームに関する統計を演算する(S210)。具体的には、図3に示した演算部137は、操作部136によって指定された期間内の、該当するアラーム情報を記憶部132から取り出して、操作部136によって指定された形態のアラームに関する統計を演算する。アラームに関する統計は、たとえば、自施設の1か月ごとのアラームに関する統計の推移を比較できるような形態で演算される。アラームに関する統計の具体的な演算は図13のフローチャートを用いて後述する。
【0074】
次に、図3に示した出力部138は、演算部137が演算したアラームに関する統計を所定期間ごとに比較できる形態で出力する。なお、演算部137にアラームに関する統計を演算させる動作、出力部138にアラームに関する統計を出力させる動作は、制御部131が制御する。アラームに関する統計の具体的な出力形態は、図14から図18を用いて後述する。
【0075】
図13は、図12のS210のサブルーチンフローチャートである。演算部137は、記憶部132に記憶されているアラーム情報から、一日当たりのアラーム件数、バイタルおよびテクニカルアラーム件数、一日当たりのアラーム件数に対するバイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合を演算する(S211)。
【0076】
次に、演算部137は、記憶部132に記憶されているアラーム情報から、自施設のセントラルモニタ装置120の、一日一人当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数を演算する(S212)。
【0077】
さらに、演算部137は、記憶部132に記憶されている、アラーム情報に含まれる高優先度アラーム、中優先度アラーム、および低優先度アラームの各アラーム解除率を演算する。すなわち、医療スタッフにより、高優先度アラームが解除された割合を示す高優先度アラーム解除率、中優先度アラームが解除された割合を示す中優先度アラーム解除率、および低優先度アラームが解除された割合を示す低優先度アラーム解除率をそれぞれ演算する(S213)。
【0078】
さらに、演算部137は、一日当たりのアラーム件数、バイタルおよびテクニカルアラーム件数、一日当たりのアラーム件数に対するバイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合、一日一人当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数、高優先度アラーム解除率、中優先度アラーム解除率、および低優先度アラーム解除率を用いて、自施設の総合判定を演算する(S214)。総合判定は、一日当たりのアラーム件数から評価する「環境」、一日一人当たりのバイタルアラームの件数から閾値の妥当性を評価する「設定」、アラームが鳴ったときに医療スタッフがアラームをどの程度解除しているのかを評価する「対応」、一日一人当たりのテクニカルアラームの件数から評価する「管理」、の4項目のレーダーチャートを演算することによって行なう。
【0079】
次に、図13のサブルーチンフローチャートの処理によって得られた、一日当たりのアラーム件数の推移、バイタルおよびテクニカルアラーム件数の推移、一日当たりのアラーム件数に対するバイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合の推移、一日一人当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数の推移、高優先度アラーム解除率の推移、中優先度アラーム解除率の推移、および低優先度アラーム解除率の推移、および総合判定の推移の出力形態を説明する。これらのアラームに関する統計は、アラームレポートとして、出力部138によって出力される。アラームレポートはディスプレイに表示しても良いし、プリンタによってプリントされても良い。
【0080】
図14は、出力部138が出力する、「一日当たりのアラーム件数の推移」の出力形態1である。自施設の5階のフロアーでの一日当たりのアラーム件数の推移は、各月における一日当たりのアラーム件数を示す円グラフを時系列に1年分並べることによって表示する。円グラフの円の大きさは一日当たりのアラーム件数に対応している。したがって、円グラフの円の大きさが小さいほど一日当たりのアラーム件数が少ない。また、一日当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数、一日当たりのアラーム件数に対するバイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合は、円グラフの円を分割することによって表示する。したがって、円グラフの円がどのように分割されているかによって、一日当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数、一日当たりのアラーム件数に対するバイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合を大雑把に把握できる。
【0081】
図14を見ると、16年4月から17年3月にかけて、円グラフの円が小さくなっていることがわかる。つまり、一日当たりのアラーム件数は次第に減少してきており、対策が功を奏していることが見て取れる。
【0082】
図15は、出力部138が出力する、「一日当たりのアラーム件数の推移」の出力形態2である。図15図14と同じく、「一日当たりのアラーム件数の推移」を表しているが、図14とは見せ方が異なる。図15では、1か月ごとの一日当たりのアラーム件数を示す棒グラフを時系列に1年分並べることによって表示する。棒グラフの棒の長さは、一日当たりのアラーム件数に対応している。したがって、棒グラフの円の棒の長さが短いほど一日当たりのアラーム件数が少ない。また、一日当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数は、棒グラフの棒を分割することによって表示する。さらに、一日当たりのアラーム件数に対するバイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合は、それぞれの折れ線グラフによって表示する。この棒グラフと折れ線グラフとにより、一日当たりのバイタルおよびテクニカルアラーム件数、一日当たりのアラーム件数に対するバイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合の1年分の推移が把握できる。
【0083】
図15を見ると、16年4月から17年3月にかけて、棒グラフの高さは低くなる傾向にあることがわかる。つまり、一日当たりのアラーム件数は次第に減少してきており、対策が功を奏していることが見て取れる。また、バイタルおよびテクニカルアラーム件数の割合は、テクニカルアラーム件数の割合が多いので、今後、一日当たりのアラーム件数をさらに減少させるためには、テクニカルアラームの発生を抑える対策が有効であることがわかる。
【0084】
図16は、出力部138が出力する、「一日1人当たりのアラーム件数の推移」の表示態様を示す図である。アラーム件数は、バイタルアラームの件数とテクニカルアラームの件数に分け、バイタルアラームの件数を縦軸に、テクニカルアラームの件数を横軸に設定した対数ブラフである。一日一人当たりのアラーム件数の推移は、1か月ごとのバイタルアラームの件数とテクニカルアラームの件数を平面上にプロットすることによって表示する。
【0085】
図16を見ると、一日1人当たりのアラーム件数は、月を追うごとに次第に減少していることがわかる。また、バイタルアラームの件数とテクニカルアラームの件数も月を追うごとに次第に減少していることがわかる。したがって、対策が功を奏していることが見て取れる。
【0086】
図17は、「アラーム解除率の推移」の出力形態を示す図である。アラーム解除率は、高優先度アラーム、中優先度アラーム、低優先度アラームの3つのそれぞれの解除率を折れ線グラフによって表現する。
【0087】
図17を見ると、高優先度アラーム解除率は、3、4か月前から上昇しているので、高優先度アラームに対する医療スタッフの対応に改善が見られる。また、中優先度アラームおよび低優先度アラームの解除率はあまりよくないが、これらも3、4か月前から上昇しているので、高優先度アラームに対する医療スタッフの対応に改善が見られる。
【0088】
図18は、出力部138が出力する、「総合判定の推移」の出力形態を示す図である。総合判定の推移は、各月における総合判定を示すレーダーチャートを時系列に1年分並べることによって表示する。総合判定は、5段階評価で行われ、各段階の間には閾値を設けている。総合判定は、4つの項目の評価段階を結ぶことによって形成される四角形の面積が大きいほど優秀な判定となる。総合判定の、「環境」、「設定」、「対応」、「管理」の4項目のレーダーチャートの詳細については、実施形態1で説明した。
【0089】
図18を見ると、総合判定は、16年4月から17年3月にかけて、四角形の面積が次第に大きくなっている。したがって、この総合判定の推移をみると、自施設のアラームに関する統計が、総合的に見ても良くなってきていることがわかる。
【0090】
以上のように構成された本実施形態のアラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムによれば、医療現場のアラーム情報からアラームに関する統計を出力することができる。さらに具体的には、本実施形態によれば、自施設の、「一日当たりのアラーム件数の推移」、「一日1人当たりのアラーム件数の推移」、「アラーム解除率の推移」、および「総合判定の推移」を1年分見ることができる。このため、自施設のアラームに関する統計の改善具合が把握できるだけでなく、改善するための方向性も把握できる。
【0091】
以上、本発明のアラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムを、実施形態1と実施形態2に分けて説明したが、実施形態1と2とを統合させた形態とすることもできる。つまり、自施設と他施設のアラームに関する情報を比較できるようにするだけでなく、自施設のアラームに関する統計の経時的な推移も把握できるようにしても良い。
【0092】
なお、実施形態1では、具体的な出力形態として、図7から図11を例示したが、出力形態はこれらの図に示したものには限らない。また、実施形態2では、具体的な出力形態として、図14から図18を例示したが、出力形態はこれらの図に示したものには限らない。必要に応じて、様々な出力形態を採用しても良いのはもちろんである。
【0093】
本実施形態1は、選択した一施設(自施設)と他施設のアラームに関する統計を比較できるようにし例で説明した。しかしながら、自施設のA病棟とB病棟で発生したアラームに関する統計を比較できるようにしてもよい。さらに自施設のA病棟の異なる期間(例えば、1月と2月)のアラームに関する統計を比較できるようにしてもよい。
【0094】
また、実施形態1および実施形態2では、アラーム情報処理装置130を施設外に設けたコンピュータによって構成する場合を例示したが、アラーム情報処理装置130を1つの装置内に設ける態様を採用することもできる。
【0095】
以上、本発明のアラーム情報処理装置およびアラーム情報処理プログラムは、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々の形態に改変可能である。
【符号の説明】
【0096】
100 医療用システム、
105 患者、
110 生体情報モニタ装置、
120 セントラルモニタ装置、
130 アラーム情報処理装置、
131 制御部、
132 記憶部、
133 通信部、
135 取得部、
136 操作部、
137 演算部、
138 出力部、
139 バス、
140、150 通信回線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18