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特許7347932ムコリピドーシスII型を治療するためのアデノ随伴ウイルスベクター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ムコリピドーシスII型を治療するためのアデノ随伴ウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20230912BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230912BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230912BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230912BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
A61P1/10
A61P1/12
A61P9/00
A61P11/00
A61P11/16
A61P19/00
A61P21/00
A61P25/28
A61P31/00
A61P43/00 111
C12N7/01
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018531240
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-10
(86)【国際出願番号】 US2016066611
(87)【国際公開番号】W WO2017106313
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】62/267,502
(32)【優先日】2015-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】512196600
【氏名又は名称】サムソン ライフ パブリック ウェルフェア ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン・イュー
(72)【発明者】
【氏名】チン・トン-キュ
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】長井 啓子
【審判官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/060722(WO,A1)
【文献】J Inherit.Metab.Dis.,vol.38,Suppl.1,S245(2015)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N, A01K, A61K, A61P, G01N, C12N
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)をコードする核酸および少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列(ITR)を含み、ここで、該ベクターは、CMVエンハンサーおよびニワトリベータアクチン(CBA)プロモーターを含み、ここで:
(i)該CBAプロモーターは、切断型CBAプロモーターであり、該切断型プロモーターは、CBAプロモーターの-106番目の位置の上流の塩基を欠失している、および
(ii)該CMVエンハンサーは、短縮型CMVエンハンサーである、
前記rAAVベクター。
【請求項2】
請求項1に記載のrAAVベクターであって、ここで、
(a)該GNPTABは、アルファサブユニットおよびベータサブユニットを含む;
(b)該GNPTABは、プロモーターと作動可能に連結されている;
(c)該GNPTABは、ヒトGNPTABである;
(d)該GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む;
(e)該GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列を含む;および/または
(f)該AAV逆位末端反復配列は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV血清型ITRである;
前記rAAVベクター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のrAAVベクターであって、ここで、該ベクターは:
(a)イントロン;
(b)ポリアデニル化配列;
および/または
(c)2つのITR;
を含む、前記rAAVベクター。
【請求項4】
該イントロンは、MVMイントロンである、請求項3に記載のrAAVベクター。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のrAAVベクターを含むrAAV粒子であって、ここで、該rAAV粒子はキャプシドを含み、ここで、該rAAV粒子は:
(a)AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAVまたはrAAV2/HBoV1血清型キャプシド;および/または
(b)(1)同じAAV血清型に由来する少なくとも1つのITRおよびキャプシド、もしくは
(2)該rAAV粒子のキャプシドとは異なるAAV血清型に由来する少なくとも1つのITRを含む、
前記rAAV粒子。
【請求項6】
請求項5に記載のrAAV粒子であって、該rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を、宿主細胞にトランスフェクトすること、ならびにAAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することによって産生される、
前記rAAV粒子。
【請求項7】
請求項5に記載のrAAV粒子であって、該rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を含みAAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞によって産生される、
前記rAAV粒子。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載のrAAV粒子を含む医薬組成物。
【請求項9】
哺乳動物におけるムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を治療するために使用する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の医薬組成物であって、ここで、該治療は、ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和し、または進行を遅延させ、ここで、該ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状は、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である、前記医薬組成物。
【請求項11】
ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の、身体のサイズ、骨塩量、または骨密度を、維持し、その減少を防止し、または増加させるために使用する、請求項8に記載の医薬組成物であって、ここで、該rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、該rAAVベクターは、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)をコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み、該GNPTABの発現は、体重増加の維持、減
少の防止、もしくは増加、身長増加の維持もしくは増加、および/または、骨塩量もしくは骨密度の維持、減少の防止、もしくは増加をもたらす、前記医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和し、または進行を遅延させるために使用する、請求項8に記載の医薬組成物であって、ここで、該rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、該rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み;該ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状は、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である、前記医薬組成物。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、ここで:
該rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、そして該rAAVベクターは、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)をコードする核酸、少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列(ITR)、ならびに、CMVエンハンサーおよびニワトリベータアクチン(CBA)プロモーターを含み、ここで:
(i)該CBAプロモーターは、切断型CBAプロモーターであり、該切断型プロモーターは、CBAプロモーターの-106番目の位置の上流の塩基を欠失している、および
(ii)該CMVエンハンサーは、短縮型CMVエンハンサーである、
前記医薬組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の医薬組成物であって、ここで、
(a)該GNPTABは、アルファサブユニットおよびベータサブユニットを含む;
(b)該GNPTABは、プロモーターと作動可能に連結されている;
(c)該GNPTABは、ヒトGNPTABである;
(d)該GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む;
(e)該GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列を含む;および/または
(f)該AAV逆位末端反復配列は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV血清型ITRである;
前記医薬組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の医薬組成物であって、ベクターは:
(a)イントロン;
(b)ポリアデニル化配列;
および/または
(c)2つのITR;
を含む、前記医薬組成物。
【請求項16】
請求項8~15のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、ここで、rAAV粒子は、キャプシドを含み、ここで、該rAAV粒子は:
(a)AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAVまたはrAAV2/HBoV1血清型キャプシド;および/または
(b)(1)同じAAV血清型に由来する少なくとも1つのITRおよびキャプシド、もしくは
(2)該rAAV粒子のキャプシドとは異なるAAV血清型に由来する少なくとも1つのITRを含む、
前記医薬組成物。
【請求項17】
請求項8~16のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、ここで、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を、宿主細胞にトランスフェクトすること、ならびにAAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することによって産生される、前記医薬組成物。
【請求項18】
請求項8~16のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、ここで、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を含みAAVヘルパー機能をコードする核酸を提供するAAV産生細胞によって産生される、前記医薬組成物。
【請求項19】
哺乳動物は、ヒトである、
請求項~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項8~19のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、ここで:
(a)rAAV粒子は、静脈内、腹腔内、動脈内、筋肉内、皮下または肝臓内に投与される;
(b)rAAV粒子は、2つ以上の場所に投与される;
(c)投与は、繰り返される;および/または
(d)rAAV粒子は、医薬組成物中にある;
前記医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~4のいずれか1項に記載のrAAVベクター、請求項5~7のいずれか1項に記載のrAAV粒子、または請求項8に記載の医薬組成物、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月15日に出願された米国仮出願第62/267,502号の優先権の利益を主張し、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
以下のASCIIテキストファイルでの提出の内容は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:159792012640SEQLIST.txt、データ記録日:2016年12月9日、サイズ:21kb)。
【0003】
本発明は、ムコリピドーシスII型および/またはIII型を治療するための、rAAVベクター、粒子、組成物、ならびにこれらに関する方法、キットおよび使用に関する。
【背景技術】
【0004】
ムコリピドーシスII型およびIII型(ML II;ML III)は、UDP-GlcNAc;リソソーム酵素;N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼと略される)の欠損によって特徴づけられる、常染色体劣性のリソソーム蓄積症である。GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼは、3つの異なるサブユニットのα、βおよびγからなる六量体の酵素複合体である。αサブユニットおよびβサブユニットは、触媒活性を有し、単一遺伝子であるGNPTABによってコードされる。酵素活性の完全喪失をもたらすGNPTABの変異は、ML IIを有する患者において見出される。ムコリピドーシスIIは、高度に進行性であり、患者は、生後10年間を超えて生存することはまれである。加えて、ML IIのために利用可能な治療の選択肢は限られたままである。少数の患者では、骨髄移植のみが、試みられている。対照的に、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ活性の部分的な減少をもたらすGNPTABの変異は、ML IIIを有する患者において見出される。これらの患者は、通常、より軽度の症状およびより遅い疾患の進行を示すが、依然として、骨格異常、発育遅延および心拡大などの重篤な健康問題を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組織特異的トロピズムを呈し、導入遺伝子の持続発現を促進する、AAV血清型が利用できることにより、ML IIおよびML IIIを含む、リソソーム病の全身的な治療のためのAAV媒介遺伝子治療の可能性が提供される。したがって、ML II/IIIのAAV媒介治療の研究は、このアプローチが、この壊滅的な疾患に対する潜在的な治療戦略を示すか否かを確立するために重要である。しかしながら、ML II/IIIのAAV媒介治療を検討する前に、技術的な限界を克服する必要がある。GNPTAB(ヒトにおいて、5.6kb超)のコード配列は、内因性AAVゲノム(約4.7kb)よりも長い。したがって、ウイルス粒子内への効率的なパッケージングを依然として促進しつつ、機能性プロモーター/エンハンサー配列およびAAVゲノムの他の成分とともに、GNPTABを収容することができるAAVベクターは、非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)をコードする核酸および少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列(ITR)を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する。一部の実施形態において、GNPTABは、アルファサブユニットおよびベータサブユニットを含む。一部の実施形態において、GNPTABは、プロモーターと作動可能に連結されている。一部の実施形態において、GNPTABは、ヒトGNPTABである。一部の実施形態において、GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%または少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、プロモーターは、CMVエンハンサー/ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーターである。一部の実施形態において、CBAプロモーターは、改変型CBAプロモーターである。一部の実施形態において、改変型CBAプロモーターは、切断型CBAプロモーターである。一部の実施形態において、CMVエンハンサーは、短縮型CMVエンハンサーである。一部の実施形態において、ベクターは、イントロンを含む。一部の実施形態において、イントロンは、MVMイントロンである。一部の実施形態において、ベクターは、ポリアデニル化配列を含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列である。一部の実施形態において、AAV末端反復配列は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV血清型ITRである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、2つのITRを含む。
【0007】
一部の態様において、本発明は、上述の実施形態のいずれか1つのrAAVベクターを含むrAAV粒子を提供する。一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAVまたはrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、同じAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRおよびキャプシドを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVウイルス粒子のキャプシドとは異なるAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV8キャプシドを含み、ベクターは、AAV2 ITRを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を、宿主細胞にトランスフェクトすること、ならびにAAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することによって産生される。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を、宿主細胞にトランスフェクトすることによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスを宿主細胞に感染させることによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を含むAAV産生細胞によって産生され、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供する。一部の実施形態において、AAV産生細胞は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスをAAV産生細胞に感染させることによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるrAAV粒子のいずれかを含む医薬組成物を提供する。
【0008】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物におけるムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を治療するための方法であって、本明細書に記載されるrAAV粒子または本明細書に記載される医薬組成物のいずれかの有効量を、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物におけるムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を治療するための方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)をコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含む、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の身体のサイズを維持または増加させる方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)をコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み、GNPTABの発現は、体重増加の維持もしくは増加、および/または身長増加の維持もしくは増加をもたらす、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の身体のサイズの減少を防止する方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)をコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み、GNPTABの発現は、体重の減少を防止する、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の骨塩量を維持または増加させる方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み、GNPTABの発現は、骨塩量の維持または増加をもたらす、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の骨塩量の減少を防止する方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み、GNPTABの発現は、骨塩量の減少を防止する、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の骨密度を維持または増加させる方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み、GNPTABの発現は、骨密度の維持または増加をもたらす、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の骨密度の減少を防止する方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み、GNPTABの発現は、骨密度の減少を防止する、方法を提供する。
【0010】
上述の方法の一部の実施形態において、治療は、ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和し、ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状は、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である。一部の実施形態において、治療は、ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状の進行を遅延させ、ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状は、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和する方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み;ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状は、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である、方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状の進行を遅延させる方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含み;ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状は、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である、方法を提供する。
【0011】
上述の方法の一部の実施形態において、GNPTABは、プロモーターと作動可能に連結されている。一部の実施形態において、GNPTABは、ヒトGNPTABである。一部の実施形態において、GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約80%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、GNPTABは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、プロモーターは、CMVエンハンサー/ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーターである。一部の実施形態において、CBAプロモーターは、改変型CBAプロモーターである。一部の実施形態において、改変型CBAプロモーターは、切断型CBAプロモーターである。一部の実施形態において、CMVエンハンサーは、短縮型CMVエンハンサーである。一部の実施形態において、ベクターは、イントロンを含む。一部の実施形態において、イントロンは、MVMイントロンである。一部の実施形態において、ベクターは、ポリアデニル化配列を含む。一部の実施形態において、ポリアデニル化配列は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列である。一部の実施形態において、AAV末端反復配列は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV血清型ITRである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、2つのITRを含む。一部の実施形態において、AAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAVまたはrAAV2/HBoV1血清型キャプシドを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、同じAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRおよびキャプシドを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVウイルス粒子のキャプシドとは異なるAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRを含む。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV8キャプシドを含み、ベクターは、AAV2 ITRを含む。
【0012】
上述の実施形態の一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を、宿主細胞にトランスフェクトすること、ならびにAAVヘルパー機能をコードする核酸を提供することによって産生される。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を、宿主細胞にトランスフェクトすることによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスを宿主細胞に感染させることによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、ならびにAAV rep機能およびcap機能をコードする核酸を含むAAV産生細胞によって産生され、AAVヘルパー機能をコードする核酸を提供する。一部の実施形態において、AAV産生細胞は、AAVヘルパー機能をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、AAVヘルパー機能を提供するAAVヘルパーウイルスをAAV産生細胞に感染させることによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパーウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルスまたはバキュロウイルスである。
【0013】
上述の方法の一部の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。一部の実施形態において、ヒトは、小児の対象である。一部の実施形態において、ヒトは、若年成人である。
【0014】
上述の方法の一部の実施形態において、rAAVは、静脈内、腹腔内、動脈内、筋肉内、皮下または肝臓内に投与される。一部の実施形態において、rAAVは、静脈内に投与される。一部の実施形態において、rAAVは、2つ以上の場所に投与される。一部の実施形態において、投与は、繰り返される。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子は、医薬組成物中にある。一部の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0015】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物におけるML IIまたはML IIIを治療するための医薬の製造における、本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される方法のいずれかにおける使用のための医薬の製造における、本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIまたはML IIIを治療するための医薬の製造における、本明細書に記載されるいずれかのrAAV粒子の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される方法のいずれかにおける使用のための医薬の製造における、本明細書に記載されるいずれかのrAAV粒子の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIまたはML IIIを治療するための、本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される方法のいずれかにおける使用のための、本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIまたはML IIIを治療するための、本明細書に記載されるいずれかの組換えAAVの使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載される方法のいずれかにおける使用のための、本明細書に記載されるいずれかの組換えAAVの使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和するため、または哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状の進行を遅延させるための医薬の製造における、本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和するため、または哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状の進行を遅延させるための医薬の製造における、本明細書に記載されるいずれかのrAAV粒子の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和するため、または哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状の進行を遅延させるための、本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、本発明は、哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状を緩和するため、または哺乳動物におけるML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状の進行を遅延させるための、本明細書に記載されるいずれかの組換えAAVの使用を提供する。一部の実施形態において、ML IIもしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状は、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である。一部の実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0016】
一部の態様において、本発明は、本明細書に記載されるいずれかのrAAVベクター、本明細書に記載されるいずれかのrAAV粒子、または本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物を含むキットを提供する。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載されるいずれかの方法に従ってML IIまたはML IIIを治療するためのものである。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載されるいずれかのrAAVベクター、本明細書に記載されるいずれかのrAAV粒子、または本明細書に記載されるいずれかの医薬組成物を含む。一部の実施形態において、キットは、1つもしくはそれ以上の緩衝液または薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。一部の実施形態において、キットは、ML IIおよび/またはML IIIの治療における使用のための説明書をさらに含む。
【0017】
一部の態様において、本発明は、ムコリピドーシスII(ML II)の動物モデルであって、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(GNPTAB)遺伝子の少なくとも1つのアレルは、エクソン12およびエクソン20の間に位置する欠失を含む、動物モデルを提供する。一部の実施形態において、GNPTAB遺伝子の少なくとも1つのアレルは、エクソン12およびエクソン20にまたがる欠失を含む。一部の実施形態において、動物は、GNPTAB遺伝子中の欠失についてホモ接合性である。一部の実施形態において、動物は、GNPTAB遺伝子中の欠失についてヘテロ接合性である。一部の実施形態において、GNPTAB遺伝子の一部は、レポーターおよび/または選択的マーカーをコードする遺伝子によって置き換えられている。一部の実施形態において、選択的マーカーは、ネオマイシンに対する耐性を付与する。一部の実施形態において、動物は、哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物は、げっ歯類である。一部の実施形態において、げっ歯類は、マウスである。一部の実施形態において、マウスは、129/Svおよび/またはC57Bl/6に由来する遺伝的背景を有する。一部の実施形態において、動物は、免疫適格性または免疫不全性である。
【0018】
一部の態様において、本発明は、ムコリピドーシスII(ML II)の動物モデルを生成させる方法であって、動物のGNPTAB遺伝子の少なくとも1つのアレルにおけるエクソン12およびエクソン20の間に欠失を導入することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、GNPTAB遺伝子の少なくとも1つのアレルは、エクソン12およびエクソン20にまたがる欠失を含む。一部の実施形態において、動物は、GNPTAB遺伝子中の欠失についてホモ接合性となるように掛け合わされる。一部の実施形態において、動物は、GNPTAB遺伝子中の欠失についてヘテロ接合性となるように掛け合わされる。一部の実施形態において、GNPTAB遺伝子の一部は、レポーターおよび/または選択的マーカーをコードする遺伝子によって置き換えられている。一部の実施形態において、選択的マーカーは、ネオマイシンに対する耐性を付与する。一部の実施形態において、動物は、哺乳動物である。一部の実施形態において、哺乳動物は、げっ歯類である。一部の実施形態において、げっ歯類は、マウスである。一部の実施形態において、マウスは、129/Svおよび/またはC57Bl/6に由来する遺伝的背景を有する。一部の実施形態において、動物は、免疫適格性または免疫不全性である。
【0019】
一部の態様において、本発明は、ムコリピドーシスII(ML II)の治療のための薬剤を評価するための方法であって、本明細書に記載される動物モデルに薬剤を投与することを含み、ML IIの1つまたはそれ以上の症状の緩和は、薬剤がML IIの有益な治療を提供することを示す、方法を提供する。一部の実施形態において、ML IIの症状は、体重の減少、骨密度の減少、骨塩量の減少、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘または下痢である。一部の実施形態において、薬剤は、小分子、ポリペプチド、抗体、核酸または組換えウイルス粒子である。
【0020】
特許出願および刊行物を含む、本明細書に引用されるすべての参考文献は、それらの全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】マウスGNPTAB遺伝子構造およびGNPTABノックアウトマウスを生成させるために使用される遺伝子トラッピングベクターのゲノム挿入部位の略図を示す図である。
図1B】GNPTABノックアウトマウスを生成させるために使用されるマウスESクローンを示すサザンブロットである図である。
図2】GNPTABノックアウトマウスにおいて呈される成長遅延を示す図である。(図2A)6週齢の野生型(+/+)マウス、ヘテロ接合性(+/-)マウスおよびホモ接合性(-/-)マウスの体重(***;p<0.0001;ボンフェローニの多重比較検定)。(図2B)6週齢の野生型マウス、ヘテロ接合性マウスおよびホモ接合性マウスの鼻端-肛門の長さ(mm)(*;p<0.02;ボンフェローニの多重比較検定)。(図2C)野生型マウスおよびホモ接合性マウスの肉眼形態。
図3】野生型マウス(図3A)およびホモ接合性ノックアウトマウス(図3B)からのヘマトキシリンおよびエオシン染色された大腿軟骨の代表切片の光学顕微鏡画像を示す図である。
図4】ノックアウト(KO)マウスの唾液腺におけるオートリソソームの蓄積を実証する図である。(図4A図4C)EMは、粘膜細胞および漿液細胞で構成される、野生型マウスの唾液腺房の概観を示す。(図4D)KOの唾液腺房の概観。全体の構造は、KOでは、極めて多くの大きな空胞の蓄積によって破壊される。(図4E図4F)単一膜によって囲まれ、未分解の物質を含有する、高倍率での(図4D)の空胞。倍率の範囲を、(図4D)のボックスに示す。AL、オートリソソーム;Mu、粘膜細胞;N、核;SG、分泌顆粒。
図5】表示されたように、野生型マウス(白丸)およびKOマウス(黒丸)の血清中のリソソーム酵素活性を示す図である。N-アセチルグルコサミニダーゼ(図5A)、β-ヘキソサミニダーゼA(図5B)、β-ガラクトシダーゼ(図5C)およびβ-グルクロニダーゼ(図5D)の活性を示す。
図6】注射に関する実験の予定表の概要を示す図である。(図6A)6週齢でウイルスベクターを注射されたマウスについての長期治療の研究の予定表。(図6B)それぞれの治療群で注射されたマウスの総数(n)を示す。
図7A】マウスGNPTAB cDNAを含有するpAAV2/8-GNPTABベクターの模式図を表す図である。マウスGNPTAB cDNA配列は、GenBank受入番号NM_001004164.2に基づく。ヌクレオチド配列は、マウスにおける発現のためにコドン最適化された。アミノ酸配列は、未変化である。
図7B】AAV-GNPTABを注射されたKOマウスからの肝臓の、それらの対照の同腹仔と比較した、定量分析を示す図である。
図8】対照マウスおよびAAV-GNPTAB治療KOマウスについての、開始時の重量からの経時的な体重の変化を示す図である。(図8A)対照マウスおよびAAV-GNPTAB治療KOマウスの総体重(*p<0.05、ダネットの多重比較検定)。(図8B)データを、開始時の重量からの経時的な重量変化の量として表した。
図9】対照マウスおよびAAV-GNPTAB治療KOマウスについての、開始時の体長からの経時的な体長の変化を示す図である。(図9A)データを、注射前および注射6週間後で比較した体長の比として表した。(図9B)データを、注射前および注射32週間後で比較した体長の比として表した。
図10】注射前(図10A)、注射16週間後(図10B)および注射32週間後(図10C)の骨密度のレベルを示すヒストグラムを示す図である。(図10A)AAV-GNPTABで治療されたホモ接合性およびヘテロ接合性からのデータを、野生型およびヘテロ接合性のものと比較した(野生型と比較†;p<0.05、‡;p<0.02、ヘテロ接合性と比較*;p<0.02、**;p<0.002)。AAV-GNPTAB治療は、治療16週間後(図10B)および治療32週間後(図10C)のホモ接合性マウスにおける、BMD比(後/前のTx)の統計学的に有意な増加をもたらした。(図10B)治療の16週間後、AAV-GNPTABで治療されたGNPTABヌルマウスは、他のマウスよりも、BMD比の有意な増加を示した(**;P<0.02)。(図10C)治療の32週間後、BMD比の有意な相違が、GNPTABで治療されたマウスにおいて、観察された(#;p<0.05、**;p<0.02)。P値は、両側の独立t検定の解析によって決定された。データは、平均±SEMとして示される。
図11】注射前(図11A)、注射16週間後(図11B)および注射32週間後(図11C)の骨塩量のレベルを示すヒストグラムを示す図である。(図11A)AAV-GNPTABで治療されたホモ接合性およびヘテロ接合性からのデータを、野生型およびヘテロ接合性のものと比較した(野生型と比較†;p<0.05、‡;p<0.02、ヘテロ接合性と比較*;p<0.02、**;p<0.002)。AAV-GNPTAB治療は、治療16週間後(図11B)および治療32週間後(図11C)のホモ接合性マウスにおける、BMD比(後/前のTx)の統計学的に有意な増加をもたらした。(図11B)治療の16週間後、AAV-GNPTABで治療されたGNPTABヌルマウスは、他のマウスよりも、BMD比の有意な増加を示した(**;P<0.02)。(図11C)治療の32週間後、BMD比の有意な相違が、GNPTABで治療されたマウスにおいて、観察された(#;p<0.05、**;p<0.02)。P値は、両側の独立t検定の解析によって決定された。データは、平均±SEMとして示される。
図12】注射前のパーセント除脂肪量のレベル(図12A)、および注射32週間後のパーセント除脂肪量の変化(図12B)を示すヒストグラムを示す図である。(図12A)AAV-GNPTABで治療されたホモ接合性およびヘテロ接合性からのデータを、野生型およびヘテロ接合性のものと比較した(野生型と比較†;p<0.02、ヘテロ接合性と比較*;p<0.05、**;p<0.001)。(図12B)治療の32週間後、%除脂肪量の変化は、AAV-GNPTABで治療されたマウスにおいて観察されなかった。P値は、両側の独立t検定の解析によって決定された。データは、平均±SEMとして示される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一部の態様において、本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼのアルファサブユニットおよびベータサブユニット(GNPTAB)をコードする核酸、ならびに少なくとも1つのAAV逆位末端反復配列(ITR)を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを提供する。本明細書において、本開示のrAAVベクターを含むrAAV粒子、および本開示のrAAV粒子を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0023】
一部の態様において、本発明は、哺乳動物におけるムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を治療するための方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含む、方法をさらに提供する。本明細書において、ムコリピドーシスII型(ML II)またはムコリピドーシスIII型(ML III)を有する哺乳動物の、身体のサイズ、骨塩量および/または骨密度を増加させるための方法であって、rAAV粒子の有効量を、哺乳動物に投与することを含み、rAAV粒子は、rAAVベクターを含み、rAAVベクターは、GNPTABをコードする核酸および少なくとも1つのAAV ITRを含む、方法をさらに提供する。一部の実施形態において、GNPTABの発現は、身体のサイズ、骨塩量および/または骨密度の増加をもたらす。
【0024】
一部の態様において、本発明は、例えば、本開示のrAAVベクター、rAAV粒子または医薬組成物を使用する、ML IIまたはML IIIを治療するための使用および/またはキットをさらに提供する。
【0025】
I.一般的技法
本明細書に記載または参照される技法および手順は、一般に、従来的な手法、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrookら、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、2012年);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、2003年);Methods in Enzymologyシリーズ(Academic Press,Inc.);PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.HamesおよびG.R.Taylor編、1995年);Antibodies,A Laboratory Manual(HarlowおよびLane編、1988年);Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique and Specialized Applications(R.I.Freshney、第6版、J.Wiley and Sons、2010年);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984年);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、Academic Press、1998年);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、Plenum Press、1998年);Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、J.Wiley and Sons、1993~8年);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1996年);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987年);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら編、1994年);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991年);Short Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、J.Wiley and Sons、2002年);Immunobiology(C.A.Janewayら、2004年);Antibodies(P.Finch、1997年);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989年);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000年);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.HarlowおよびD.Lane、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999年);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995年);ならびにCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVitaら編、J.B.Lippincott Company、2011年)に記載されている広く利用されている手法などを使用して、当業者により十分に理解され、一般的に利用されている。
【0026】
II.定義
「ベクター」は、本明細書に使用されるとき、インビトロまたはインビボのいずれかで、宿主細胞に送達されるべき核酸を含む組換えプラスミドまたはウイルスを指す。
【0027】
本明細書に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかであるヌクレオチドの任意の長さのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、または多重鎖のDNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、またはプリン塩基およびピリミジン塩基、または他の天然のヌクレオチド塩基、化学的もしくは生化学的に修飾されたヌクレオチド塩基、非天然のヌクレオチド塩基、または誘導体化ヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるがこれらに限定されない。核酸の骨格は、糖およびリン酸基(RNAもしくはDNAにおいて典型的に見出すことができるような)、または修飾もしくは置換された糖もしくはリン酸基を含み得る。代替として、核酸の骨格は、ホスホロアミデートなどの合成サブユニットのポリマーを含み得、したがって、オリゴデオキシヌクレオシドホスホロアミデート(P-NH)または混合ホスホロアミデート-ホスホジエステルオリゴマーであり得る。加えて、二本鎖核酸は、相補的な鎖を合成し、これらの鎖を適切な条件下でアニーリングすること、またはDNAポリメラーゼを適切なプライマーとともに使用して相補的な鎖をデノボ合成することのいずれかによって、一本鎖ポリヌクレオチドの化学合成産物から得ることができる。
【0028】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指して互換的に使用され、最小の長さのものに限定されない。アミノ酸残基のこのようなポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含有し得、これらには、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸の二量体、三量体、および多量体が含まれるがこれらに限定されない。全長タンパク質およびそのフラグメントの両方が、この定義に包含される。これらの用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに、本発明の目的で、「ポリペプチド」とは、タンパク質が所望される活性を維持する限り、天然の配列に対する欠失、付加、および置換(一般に、保存的な性質)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位指向的変異生成によるもののように意図的なものであってもよく、またはタンパク質を産生する宿主の変異もしくはPCR増幅に起因するエラーによるもののように偶発的なものであってもよい。
【0029】
「組換えウイルスベクター」は、1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、ウイルス起源ではない核酸配列)を含む、組換えポリヌクレオチドベクターを指す。組換えAAVベクターの場合、組換え核酸には、少なくとも1つ、例えば、2つの逆位末端反復配列(ITR)が隣接している。
【0030】
「組換えAAVベクター(rAAVベクター)」は、少なくとも1つ、例えば、2つのAAV逆位末端反復配列(ITR)が隣接した1つまたはそれ以上の異種配列(すなわち、AAV起源ではない核酸配列)を含む、ポリヌクレオチドベクターを指す。このようなrAAVベクターは、好適なヘルパーウイルスに感染している(または好適なヘルパー機能を発現している)宿主細胞、ならびにAAV rep遺伝子産物およびcap遺伝子産物(すなわち、AAV Repタンパク質およびCapタンパク質)を発現している宿主細胞に存在する場合、感染性ウイルス粒子において複製され、そこにパッケージングされる。rAAVベクターが、より大きなポリヌクレオチド(例えば、染色体、またはクローニングもしくはトランスフェクションに使用されるプラスミドなどの別のベクター)に組み込まれると、rAAVベクターは、「プロベクター」と称することができ、これは、AAVパッケージング機能および好適なヘルパー機能の存在下において複製およびキャプシド化によって「レスキュー」することができる。rAAVベクターは、プラスミド、線状人工染色体、脂質との複合体、リポソーム内に封入されたもの、および、実施形態において、ウイルス粒子、特にAAV粒子にキャプシド化されたものを含むがこれらに限定されない、多数の形態のうちのいずれかであり得る。rAAVベクターは、AAVウイルスキャプシドにパッケージングされて、「組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV粒子)」を生成することができる。
【0031】
「rAAVウイルス」または「rAAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質およびキャプシド化されたrAAVベクターゲノムで構成されるウイルス粒子を指す。
【0032】
「異種」とは、比較される実体または導入もしくは組み込まれる実体の残りの部分の遺伝子型とは、遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子操作技法によって異なる細胞型に導入された核酸は、異種核酸である(また、発現された場合、異種ポリペプチドをコードし得る)。同様に、ウイルスベクターに組み込まれた細胞の配列(例えば、遺伝子またはその部分)は、そのベクターに対して異種のヌクレオチド配列である。
【0033】
「導入遺伝子」という用語は、細胞に導入され、RNAに転写することができ、場合によっては、適切な条件下で翻訳および/または発現することができる、核酸を指す。いくつかの態様において、導入遺伝子は、導入された細胞に所望される特性を付与するか、またはそうでなければ、所望される治療結果または診断結果をもたらす。別の態様では、導入遺伝子は、RNA干渉を媒介する分子、例えば、siRNAに転写される。
【0034】
ウイルス力価に関して使用される「ゲノム粒子(gp)」、「ゲノム等価物」、または「ゲノムコピー」という用語は、感染力または機能性に関係なく、組換えAAV DNAゲノムを含有するビリオンの数を指す。特定のベクター調製物におけるゲノム粒子の数は、本明細書の実施例に記載されているか、または例えばClarkら(1999年)Hum.Gene Ther.,10:1031~1039頁;Veldwijkら(2002年)Mol.Ther.,6:272~278頁に記載されているものなどの手順によって測定することができる。
【0035】
ウイルス力価に関して使用される「感染単位(iu)」、「感染性粒子」、または「複製単位」という用語は、例えば、McLaughlinら(1988年)J.Virol.,62:1963~1973頁に記載されているような、複製中心アッセイとしても知られている感染中心アッセイによって測定された、感染性および複製適合性の組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0036】
ウイルス力価に関して使用される「形質導入単位(tu)」という用語は、本明細書の実施例に記載されているか、または例えば、Xiaoら(1997年)Exp.Neurobiol.,144:113~124頁;もしくはFisherら(1996年)J.Virol.,70:520~532頁(LFUアッセイ)に記載に記載されているような、機能性アッセイにおいて測定された、機能的導入遺伝子産物の産生をもたらす感染性組換えAAVベクター粒子の数を指す。
【0037】
「逆位末端反復」または「ITR」配列とは、当該技術分野で十分に理解されている用語であり、ウイルスゲノムの末端に見られる、逆向きの比較的短い配列を指す。
【0038】
当該技術分野で十分に理解されている用語である「AAV逆位末端反復(ITR)」配列とは、天然の一本鎖AAVゲノムの両方の末端に存在するおよそ145ヌクレオチドの配列である。ITRの一番外側の125個のヌクレオチドは、2つの交互の配向のうちのいずれかで存在し得、異なるAAVゲノム間における異種性、および単一のAAVゲノムの2つの末端間における異種性をもたらす。一番外側の125個のヌクレオチドはまた、自己相補的な複数の短い領域(A、A’、B、B’、C、C’、およびD領域と示される)を含有し、鎖内塩基対合がITRのこの部分で生じることが可能である。
【0039】
「末端分離配列(terminal resolution sequence)」または「trs」は、ウイルスのDNA複製時にAAV repタンパク質によって切断される、AAV ITRのD領域内の配列である。変異体末端分離配列は、AAV repタンパク質による切断に不応性である。「AAVヘルパー機能」とは、AAVが宿主細胞によって複製され、パッケージングされることを可能にする機能を指す。AAVヘルパー機能は、AAV複製およびパッケージングを補助するヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子を含むが、これらに限定されない、多数の形式のうちのいずれかで提供される。遺伝毒性物質などの他のAAVヘルパー機能が、当該技術分野において既知である。
【0040】
「AAVヘルパー機能」とは、AAVが宿主細胞によって複製され、パッケージングされることを可能にする機能を指す。AAVヘルパー機能は、AAV複製およびパッケージングを補助するヘルパーウイルスまたはヘルパーウイルス遺伝子を含むがこれらに限定されない、多数の形式のうちのいずれかで提供される。遺伝毒性物質などの他のAAVヘルパー機能が、当該技術分野において既知である。
【0041】
AAVの「ヘルパーウイルス」とは、AAV(欠損パブロウイルスである)が、宿主細胞によって複製され、パッケージングされるのを可能にするウイルスを指す。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、例えばワクシニア、およびバキュロウイルスを含む、多くのこのようなヘルパーウイルスが、特定されている。アデノウイルスは、多数の異なる下位群を包含するが、下位群Cのアデノウイルス5型(Ad5)が、最も一般的に使用されている。ヒト起源、非ヒト哺乳動物起源、および鳥類起源の多数のアデノウイルスが既知であり、ATCCなどの受託機関から入手可能である。これもATCCなどの受託機関から入手可能なヘルペスファミリーのウイルスとしては、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、エプスタイン・バーウイルスウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、および偽性狂犬病ウイルス(PRV)が挙げられる。受託機関から入手可能なバキュロウイルスとしては、オートグラファカリフォルニアニュークレア多角体ウイルスが挙げられる。
【0042】
参照ポリペプチド配列または核酸配列に関する「配列同一性パーセント(%)」とは、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成した後に、参照ポリペプチド配列または核酸配列におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一である、候補配列におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドの割合として定義され、任意の保存的置換は配列同一性の一部とは見なさない。アミノ酸または核酸の配列同一性パーセントを判定する目的でのアライメントは、当業者の技能の範囲内の様々な手段で、例えば、例としてCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987年)、Supp.30,節7.7.18、表7.7.1に記載されているもの、ならびにBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを含む、公的に入手可能なコンピュータソフトウェアプログラムを使用して、達成することができる。潜在的なアライメントプログラムは、ALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)である。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含め、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。本明細書の目的で、所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(これは、代替として、所与のアミノ酸配列Bに対して、ある特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含む、所与のアミノ酸配列Aと言い換えることができる)は、次のように計算される:分率X/Yを100倍し、式中、Xは、配列アライメントプログラムによって、そのプログラムのAとBとのアライメントで同一な一致としてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%とは等しくならないことが、理解される。本明細書の目的で、所与の核酸配列Dに対する所与の核酸配列Cの核酸配列同一性%(これは、代替として、所与の核酸配列Dに対して、ある特定の核酸配列同一性%を有するまたは含む、所与の核酸配列Cと言い換えることができる)は、次のように計算される:分率W/Zを100倍し、式中、Wは、配列アライメントプログラムによって、そのプログラムのCとDとのアライメントで同一な一致としてスコア付けされたヌクレオチドの数であり、Zは、Dにおけるヌクレオチドの総数である。核酸配列Cの長さが、核酸配列Dの長さと等しくない場合、Dに対するCの核酸配列同一性%は、Cに対するDの核酸配列同一性%とは等しくならないことが、理解される。
【0043】
「単離された」分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)または細胞とは、それが、その天然の環境の成分から特定および分離されており、かつ/または回収されていることを意味する。
【0044】
「有効量」とは、臨床結果(例えば、症状の緩和、臨床エンドポイントの達成など)を含む、有益な結果または所望される結果を達成するのに十分な量である。有効量は、1回またはそれ以上の投与で投与することができる。疾患状態に関しては、有効量は、疾患を緩和、安定化、または疾患の発症を遅延させるのに十分な量である。例えば、rAAV粒子の有効量は、治療的ポリペプチドまたは治療的核酸などの異種核酸の所望される量を表す。
【0045】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ、ならびにげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0046】
本明細書に使用されるとき、「治療」は、有益な臨床結果または所望される臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的で、有益な臨床結果または所望される臨床結果としては、検出可能か検出不可能かに関係なく、症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(例えば、悪化しないこと)、疾患の拡散(例えば、転移)の防止、疾患進行の遅延もしくは緩慢化、疾患状態の緩和または軽減、ならびに寛解(部分的または完全に関係なく)が挙げられるがこれらに限定されない。「治療」はまた、治療を受けなかった場合に予測される生存と比較して、生存を延長させることも意味し得る。
【0047】
遺伝子またはコード配列への言及において使用されるとき、「N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはGNPTABとしても知られる)」は、UDP-N-アセチル-D-グルコサミンおよびリソソーム酵素D-マンノースからの、リソソーム酵素N-アセチル-グルコサミニル-ホスホ-D-マンノースならびにUMPの形成に関与する化学反応を触媒する酵素のアルファサブユニットおよびベータサブユニットをコードするポリヌクレオチド配列を指す(ECコード2.7.8.17)。ポリペプチドへの言及において使用されるとき、「N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(aka GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼまたはGNPTAB)」は前述の酵素のアルファサブユニットおよびベータサブユニットを指す(Kudo,M.ら、J Biol Chem.2005年、280(43):36141~9頁;Gelfman,CMら、Invest.Opthamol.Vis.Sci.2007年、48(11):5221~5228頁)。完全GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ酵素複合体は、αサブユニット、βサブユニットおよびγサブユニットを含むことが既知であり、そのアルファサブユニットおよびベータサブユニットは、酵素活性のために必要である。ECコード2.7.8.17に記載されている反応を触媒すること、および/もしくはGO term GO:0003976に記載されている分子機能を実行することが、既知であるか、または予測される任意の酵素は、本開示のGNPTABである。一部の実施形態において、GNPTABは、バリアントGNPTABである。一部の実施形態において、GNPTABは、切断型GNPTABである。一部の実施形態において、GNPTABをコードする核酸は、約4.7kbである。一部の実施形態において、GNPTABをコードする核酸は、約4.7kb未満である。一部の実施形態において、バリアント(例えば、切断型)GNPTABは、アルファサブユニットおよびベータサブユニットを含む。一部の実施形態において、バリアントGNPTAB(例えば、切断型GNPTAB)は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%、天然GNPTABと同一である。一部の実施形態において、バリアントGNPTAB(例えば、切断型GNPTAB)は、少なくとも約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%または10%、天然GNPTABの活性を維持する。ヒトGNPTABの例は、GenBank受入番号NP_077288.2およびNM_024312.4によって提供される。ヒトGNPTABアミノ酸配列の例は、配列番号1によって提供される。マウスGNPTABの例は、GenBank受入番号NP_001004164によって提供される。マウスGNPTABアミノ酸配列の例は、配列番号2によって提供される。GNPTABの追加の例は、GenBank受入番号が、XP_001155334およびXP_509312(チンパンジー)、XP_002687680およびNP_001179157(ウシ)、XP_416329(ニワトリ)、XP_532667(イヌ)、XP_001497199(ウマ)、XP_001079967およびXP_343195(ラット)ならびにNP_001038233(ゼブラフィッシュ)によって提供される。
【0048】
「ムコリピドーシスII型」(ML II、ML-IIおよびML II型という用語を、本明細書で互換的に使用する)および「ムコリピドーシスIII型」(ML III、ML-IIIおよびML III型という用語を、本明細書で互換的に使用する)は、GNPTAB遺伝子の変異によって引き起こされる疾患のクラスを指す。両方の疾患は、常染色体劣性遺伝疾患である。しかしながら、ML IIIは、典型的には、ML IIと比較して、GNPTAB機能のより穏和な喪失を引き起こす変異と関連する。そのため、ML IIは、典型的には、ML IIIよりも、より重篤な疾患表現型をもたらす。ML IIはまた、I細胞病としても既知である。ML IIのさらなる説明は、OMIMエントリー#252500に見られる。ML IIIは、偽性Hurlerポリジストロフィーとしても既知である。ML IIIのさらなる説明は、OMIMエントリー#252600に見られる。
【0049】
「ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター」は、ニワトリβ-アクチン遺伝子(例えば、GenBank Entrez Gene ID396526によって表されるニワトリのベータアクチン)に由来するポリヌクレオチド配列を指す。本明細書に使用されるとき、「ニワトリβ-アクチンプロモーター」は、Miyazaki,J.ら、(1989年)Gene 79(2):269~77頁に記載されている配列などの、サイトメガロウイルス(CMV)初期エンハンサーエレメント、ニワトリβ-アクチン遺伝子のプロモーターならびに第1のエクソンおよびイントロン、ならびにウサギベータグロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含有するプロモーターを指す。本明細書に使用されるとき、「CAGプロモーター」という用語は、互換的に使用される。本明細書に使用されるとき、「CMV初期エンハンサー/ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター」という用語は、互換的に使用される。
【0050】
短縮型ニワトリベータアクチンプロモーターは、~106番目の配列の上流が、プロモーター活性に著しい影響を与えることなく、欠失することができることを示す、欠失の研究に基づいて選択された(Quitschkeら、J.Biol.Chem.264:9539~9546頁、1989年)。
【0051】
本明細書における値またはパラメーターへの「約」への言及は、その値またはパラメーター自体を対象とする実施形態を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0052】
本明細書に使用されるとき、冠詞の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」には、別途示されない限り、複数形の参照物が含まれる。
【0053】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態を「含むこと」、「それらからなること」、および/または「本質的にそれらからなること」を含むことが理解される。
【0054】
III.ベクター
ある特定の態様において、本発明は、例えば、本明細書に記載される、方法、rAAV粒子および/または医薬組成物のいずれかにおける使用のために適切な、rAAVベクターを提供する。例えば、一部の実施形態において、異種核酸(例えば、機能性GNPTABポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)は、本開示のrAAVベクターにより対象に送達される。
【0055】
本開示のある特定の態様は、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼのアルファサブユニットおよびベータサブユニット(GNPTAB)、例えば、GNPTABポリペプチドまたは GNPTABポリペプチドをコードする核酸に関する。当該技術分野において既知であるように、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ(N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼとしても既知である)酵素は、2つのアルファサブユニット、2つのベータサブユニットおよび2つのガンマサブユニットを含む。アルファサブユニットおよびベータサブユニットは、GNPTAB遺伝子(GNPTA、I細胞病もしくはICD、またはマウスのEG432486もしくはmKIAA1208としても既知である)によってコードされる。GNPTAB遺伝子の例としては、例えば、ヒトGNPTAB(例えば、NCBI遺伝子ID番号79158で記載)およびマウスGNPTAB(例えば、NCBI遺伝子ID番号432486で記載)が挙げられる。
【0056】
一部の実施形態において、GNPTABポリペプチドは、ヒトGNPTABポリペプチドである。ヒトGNPTABポリペプチド配列は、限定されるものではないが、NCBI参照配列番号NP_077288が挙げられる。一部の実施形態において、GNPTABポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、GNPTABポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%同一である、アミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、GNPTABは、切断型GNPTABである。一部の実施形態において、GNPTABをコードする核酸は、約4.7kbである。一部の実施形態において、GNPTABをコードする核酸は、約4.7kb未満である。一部の実施形態において、バリアント(例えば、切断型)GNPTABは、アルファサブユニットおよびベータサブユニットを含む。一部の実施形態において、GNPTABポリペプチドは、野生型GNPTABポリペプチドの活性の少なくとも一部(例えば、野生型GNPTABの活性の少なくとも約5%、10%、25%、50%、75%または100%のいずれか)を維持する、バリアントGNPTABポリペプチド(例えば、切断型GNPTAB)である。一部の実施形態において、バリアントGNPTABポリペプチド(例えば、切断型GNPTAB)は野生型GNPTABポリペプチドと比較して、より高い活性を有する(例えば、野生型GNPTABと比較して、少なくとも約125%、150%、200%、300%または500%高い活性のいずれか)。
【0057】
一部の実施形態において、異種核酸(例えば、GNPTABをコードする核酸)は、プロモーターと作動可能に連結されている。例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、RSV LTR、MoMLV LTR、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーターおよびCK6プロモーター、トランスチレチンプロモーター(TTR)、TKプロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、HBVプロモーター、hAATプロモーター、LSPプロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2Fプロモーター、テロメラーゼ(hTERT)プロモーター;サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリベータアクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター、Niwaら、Gene、1991年、108(2):193~9頁)および伸長因子1-アルファプロモーター(EFl-アルファプロモーター)(Kimら、Gene、1990年、91(2):217~23およびGuoら、Gene Ther.、1996年、3(9):802~10頁)が挙げられるが、これらに限定されない。プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーターまたは抑制性プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは、ヒトβ-グルクロニダーゼプロモーター、またはニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーターに連結されているサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサーを含む。一部の実施形態において、プロモーターは、改変型CBAプロモーターまたは切断型CBAプロモーターを含む。一部の実施形態において、プロモーターは、短縮型CMVエンハンサーを含む。
【0058】
一部の実施形態において、ベクターは、イントロンを含む。例えば、一部の実施形態において、イントロンは、ニワトリベータアクチンおよびウサギベータグロビンに由来するキメライントロンである。一部の実施形態において、イントロンは、マウスの微小ウイルス(MVM)イントロンである。
【0059】
一部の実施形態において、ベクターは、ポリアデニル化(ポリA)配列を含む。ウシ成長ホルモン(BGH)ポリ(A)配列(例えば、受入番号EF592533を参照のこと)、SV40ポリアデニル化配列およびHSV TK pAポリアデニル化配列のように、多数のポリアデニル化配列の例が、当該技術分野で既知である。
【0060】
理論に縛られることを望まないが、GNPTABコード配列の大きなサイズのため、rAAVベクターの他のエレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリA配列など)のサイズを最小化することが有利である。一部の実施形態において、本明細書で記載されるプロモーターのいずれかの短縮型バリアントが、rAAVベクターにおいて使用される。プロモーター(例えば、上述で列挙されたプロモーター)の短縮型バリアントを生成させるための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、目的のプロモーターを、プロモーター配列に1つもしくはそれ以上のヌクレオチドの欠失および/または置換を導入することによって変異させることができ、このようなバリアントプロモーター配列は、それぞれのプロモーター配列の制御の下、レポーターコンストラクトを含むベクターに個々にクローニングすることができる。この系は、設計された強度(例えば、産生した転写物の量)を維持する、短縮型バリアントのプロモーターを特定するために使用することができる。一部の実施形態において、本開示のrAAVベクターは、例えば、本明細書に記載されるような、改変型、切断型およびまたは短縮型の、CMVエンハンサー/CBAプロモーターを含む。同様の方法が、転写物、mRNA安定性および/またはスプライシングのレベルを適切に維持する、短縮型バリアントのイントロンを特定するために使用することができる。一部の実施形態において、本開示のrAAVベクターは、本明細書に記載される短縮型イントロンを含む。同様の方法が、転写物、mRNA安定性および/またはポリアデニル化のレベルを適切に維持する、短縮型バリアントのポリA配列を特定するために使用することができる。一部の実施形態において、本開示のrAAVベクターは、本明細書に記載される短縮型ポリA配列を含む。一部の実施形態において、GTNAP遺伝子は、配列番号1または2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本発明は、治療的ポリペプチドをコードする1つまたはそれ以上の核酸配列および/またはrAAVウイルス粒子にパッケージングするための核酸の導入のための組換えウイルスゲノムの使用を考慮する。組換えウイルスゲノムは、治療的ポリペプチドおよび/または核酸の発現を確立するための任意のエレメント、例えば、プロモーター、本開示のITR、リボソーム結合エレメント、ターミネーター、エンハンサー、選択マーカー、イントロン、ポリAシグナルおよび/または複製開始点を含む。
【0062】
IV.ウイルス粒子およびウイルス粒子を産生する方法
本開示のある特定の態様は、例えば、本開示のrAAVベクターを含有する、rAAV粒子に関する。AAV粒子において、核酸は、AAV粒子にキャプシド化される。AAV粒子はまた、キャプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、核酸は、転写の方向に成分と作動可能に連結された目的のコード配列(例えば、GNPTABコード配列)、転写開始配列および転写終結配列を含む制御配列を含み、それによって発現カセットが形成される。発現カセットは、5’末端および3’末端で、少なくとも1つの機能的AAV ITR配列に隣接している。「機能的AAV ITR配列」とは、ITR配列が、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングについて、意図するように機能することを意味する。Davidsonら、PNAS、2000年、97(7)3428~32頁;Passiniら、J.Virol.,2003年、77(12):7034~40頁;およびPechanら、Gene Ther.、2009年、16:10~16頁を参照のこと、これらのすべては、それらの全体を参照によって本明細書に組み入れる。本発明の一部の態様を実施するために、組換えベクターは、キャプシド化に必須のAAVの配列の少なくともすべて、およびrAAVによる感染のための物理的構造を含む。本発明のベクターにおいて使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列(例えば、Kotin,Hum.Gene Ther.、1994年、5:793~801頁に記載されている)を有する必要はなく、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって変更されるか、またはAAV ITRは、複数のAAV血清型のいずれかに由来する。40種類を上回るAAV血清型が現在既知であり、新しい血清型および既存の血清型のバリアントが、特定され続けている。Gaoら、PNAS、2002年、99(18):11854~6頁;Gaoら、PNAS、2003年、100(10):6081~6頁;およびBossisら、J.Virol.、2003年、77(12):6799~810頁を参照のこと。いずれのAAV血清型の使用は、本発明の範囲内であると見なされる。一部の実施形態において、rAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAVまたはマウスAAV ITRなどを含むが、これらに限定されない、AAV血清型に由来するベクターである。一部の実施形態において、AAV中の核酸は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV ITRなどを含む。
【0063】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6(例えば、野生型AAV6キャプシド、または米国付与前公開第2012/0164106号に記載されているような、ShH10などのバリアントAAV6キャプシド)、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9(例えば、野生型AAV9キャプシド、または米国付与前公開第2013/0323226号に記載されているような、改変型AAV9キャプシド)、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、チロシンキャプシド変異体、ヘパリン結合キャプシド変異体、AAV2R471Aキャプシド、AAVAAV2/2-7m8キャプシド、AAV DJキャプシド(例えば、AAV-DJ/8キャプシド、AAV-DJ/9キャプシド、または米国付与前公開第2012/0066783号に記載されている任意のその他のキャプシド)、AAV2 N587Aキャプシド、AAV2 E548Aキャプシド、AAV2 N708Aキャプシド、AAV V708Kキャプシド、ヤギAAVキャプシド、AAV1/AAV2キメラキャプシド、ウシAAVキャプシド、マウスAAVキャプシド、rAAV2/HBoV1キャプシド、または米国特許第8,283,151号もしくは国際公開第WO/2003/042397号パンフレットに記載されているAAVキャプシドから選択されるキャプシド化されたタンパク質を含む。さらなる実施形態において、rAAV粒子は、クレードA~FのAAV血清型のキャプシドタンパク質を含む。
【0064】
異なるAAV血清型は、特定の標的細胞の形質導入を最適化するため、または特定の標的組織(例えば、病的な組織)内の特異的な細胞型を標的化するために使用される。rAAV粒子は、同じ血清型または混合血清型のウイルスタンパク質およびウイルス核酸を含むことができる。例えば、rAAV粒子は、同じAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRおよびキャプシドを含有するか、またはrAAV粒子は、rAAV粒子のキャプシドとは異なるAAV血清型に由来する1つまたはそれ以上のITRを含有する。ある特定の実施形態において、rAAV粒子は、AAV8キャプシドおよび1つまたはそれ以上(例えば、2つの)AAV2 ITRを含有する。
【0065】
AAV粒子の産生
トランスフェクション、安定な細胞株産生、ならびにアデノウイルス-AAVハイブリッド、ヘルペスウイルス-AAVハイブリッド(Conway,JEら(1997年)J.Virology 71(11):8780~8789頁)、およびバキュロウイルス-AAVハイブリッド(Urabe,Mら、(2002年)Human Gene Therapy 13(16):1935~1943頁;Kotin,R.(2011年)Hum Mol Genet.20(R1):R2~R6頁)を含む感染性ハイブリッドウイルス産生システムを含む、rAAVベクターの産生のための多数の方法が、当該技術分野で既知である。rAAVウイルス粒子の産生のためのrAAV産生培養物は、1)適切な宿主細胞、2)適切なヘルパーウイルス機能、3)AAV rep遺伝子およびcap遺伝子ならびに遺伝子産物;4)少なくとも1つのAAV ITR配列が隣接した核酸(治療的核酸など)(例えば、GNPTABをコードするAAVゲノム);ならびに5)rAAV産生を補助するのに適切な培地および培地成分のすべてを必要とする。一部の実施形態において、適切な宿主細胞は、霊長類の宿主細胞である。一部の実施形態において、適切な宿主細胞は、HeLa細胞、A549細胞、293細胞またはPerc.6細胞などの、ヒト由来細胞株である。一部の実施形態において、適切なヘルパーウイルス機能は、野生型アデノウイルスまたは変異体アデノウイルス(温度感受性アデノウイルスなど)、ヘルペスウイルス(HSV)、バキュロウイルス、またはヘルパー機能を提供するプラスミドコンストラクトによって提供される。一部の実施形態において、AAV rep遺伝子産物およびcap遺伝子産物は、任意のAAV血清型に由来する。強制するものではないが、一般に、AAV rep遺伝子産物は、rep遺伝子産物が、rAAVゲノムを複製し、パッケージングするように機能する限り、rAAVベクターゲノムのITRと同じ血清型のものである。当該技術分野で既知の適切な培地が、rAAVベクターの産生のために使用される。これらの培地としては、限定されるものではないが、改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む、Hyclone Laboratories製およびJRH製の培地、米国特許第6,566,118号に記載のものなどの特注の配合物、および米国特許第6,723,551号に記載されているSf-900 II SFM培地が挙げられ、これらのそれぞれは、特に、組換えAAVベクターの産生において使用するための特注の培地配合物に関して、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、アデノウイルスまたはHSVによって提供される。一部の実施形態において、AAVヘルパー機能は、バキュロウイルスによって提供され、宿主細胞は、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞)である。
【0066】
rAAV粒子を産生するための1つの方法は、トリプルトランスフェクション法である。簡潔には、rep遺伝子およびキャプシド遺伝子を含有するプラスミドを、ヘルパーアデノウイルスプラスミドと一緒に、細胞株(例えば、HEK-293細胞)に、(例えば、リン酸カルシウム法を使用して)トランスフェクトし、ウイルスを、回収し、場合により、精製する。このように、一部の実施形態において、rAAV粒子は、rAAVベクターをコードする核酸、AAV repおよびcapをコードする核酸、ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の、宿主細胞へのトリプルトランスフェクションによって産生され、宿主細胞への核酸のトランスフェクションにより、rAAV粒子を産生する能力を有する宿主細胞が生成する。
【0067】
一部の実施形態において、rAAV粒子は、産生細胞株法によって産生される(Martinら(2013年)Human Gene Therapy Methods 24:253~269頁;米国付与前公開第2004/0224411号;およびLiu,X.L.ら(1999年)Gene Ther.6:293~299頁を参照のこと)。簡潔には、細胞株(例えば、HeLa細胞株、293細胞株、A549細胞株、またはPerc.6細胞株)は、rep遺伝子、キャプシド遺伝子、およびプロモーター-異種核酸配列を含むベクターゲノム(例えば、GNPTAB)を含有するプラスミドを、安定にトランスフェクトされる。細胞株をスクリーニングして、rAAV産生のためのリードクローンを選択し、次いで、これを、産生バイオリアクターに展開し、ヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたはHSV)を感染させて、rAAV産生を開始する。続いて、ウイルスを採取し、アデノウイルスを不活性化(例えば、熱により)および/または除去し、rAAV粒子を精製する。このように、一部の実施形態において、rAAV粒子を、rAAVベクターをコードする核酸、AAV repおよびcapをコードする核酸、ならびにAAVヘルパーウイルス機能をコードする核酸の1つまたはそれ以上を含む、産生細胞株によって産生させた。本明細書に記載されるように、産生細胞株法は、トリプルトランスフェクション法と比較して、オーバーサイズゲノムを有するrAAV粒子の産生に有利である。
【0068】
一部の実施形態において、AAV rep遺伝子およびcap遺伝子をコードする核酸ならびに/またはrAAVゲノムは、産生細胞株において安定に維持される。一部の実施形態において、AAV rep遺伝子およびcap遺伝子ならびに/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、1つまたはそれ以上のプラスミドで細胞株に導入され、産生細胞株を生成する。一部の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、同じプラスミドで細胞に導入される。他の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、異なるプラスミドで細胞に導入される。一部の実施形態において、プラスミドを安定にトランスフェクトされた細胞株は、複数回の細胞株継代(例えば、5回、10回、20回、30回、40回、50回、または50回を上回る、細胞の継代)にわたって、プラスミドを維持する。例えば、プラスミドは、細胞複製物として複製されるか、またはプラスミドは、細胞ゲノムに組み込まれる。プラスミドを細胞(例えば、ヒト細胞)において自律的に複製することを可能にする様々な配列が、特定されている(例えば、Krysan,P.J.ら(1989年)Mol.Cell Biol.9:1026~1033頁を参照のこと)。一部の実施形態において、プラスミドは、プラスミドを維持する細胞の選択を可能にする、選択的マーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)を含有する。哺乳動物細胞において一般的に使用される選択的マーカーとしては、限定されるものではないが、ブラストサイジン、G418、ハイグロマイシンB、zeocin、ピューロマイシンおよびこれらの誘導体が挙げられる。核酸を細胞に導入するための方法は、当該技術分野で既知であり、限定されるものではないが、ウイルス形質導入、カチオン性トランスフェクション(例えば、DEAE-デキストランなどのカチオン性ポリマーまたはリポフェクタミンなどのカチオン性脂質を使用する)、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション、微粒子銃、エレクトロポレーションおよびナノ粒子トランスフェクションが挙げられる(さらなる詳細については、例えば、Kim,T.K.およびEberwine,J.H.(2010年)Anal.Bioanal.Chem.397:3173~3178頁を参照のこと)。
【0069】
一部の実施形態において、AAV rep遺伝子およびcap遺伝子をコードする核酸ならびに/またはrAAVゲノムは、産生細胞株のゲノムに安定に組み込まれる。一部の実施形態において、AAV rep遺伝子およびcap遺伝子ならびに/またはrAAVゲノムをコードする核酸は、1つまたはそれ以上のプラスミドで細胞株に導入され、産生細胞株を生成する。一部の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、同じプラスミドで細胞に導入される。他の実施形態において、AAV rep、AAV cap、およびrAAVゲノムは、異なるプラスミドで細胞に導入される。一部の実施形態において、プラスミドは、プラスミドを維持する細胞の選択を可能にする、選択的マーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)を含有する。様々な宿主細胞株に核酸を安定に組み込むための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、反復選択(例えば、選択的マーカーの使用による)が、選択的マーカー(およびAAV cap遺伝子およびrep遺伝子ならびに/またはrAAVゲノム)を含有する核酸が組み込まれている細胞を選択するために使用される。他の実施形態において、核酸は、部位特異的な方式で細胞株に組み込まれて、産生細胞株が生成する。FLP/FRT(例えば、O’Gorman,S.ら(1991年)Science 251:1351~1355頁を参照のこと)、Cre/loxP(例えば、Sauer,B.およびHenderson,N.(1988年)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5166~5170頁を参照のこと)、およびphi C31-att(例えば、Groth,A.C.ら(2000年)Proc.Natl.Acad.Sci.97:5995~6000頁を参照のこと)などの、いくつかの部位特異的な組換え系が、当該技術分野で既知である。
【0070】
一部の実施形態において、産生細胞株は、霊長類細胞株(例えば、Vero細胞株またはFRhL-2細胞株などの非ヒト霊長類細胞株)に由来する。一部の実施形態において、細胞株は、ヒト細胞株に由来する。一部の実施形態において、産生細胞株は、HeLa細胞、293細胞、A549細胞またはPERC.6(登録商標)(Crucell)細胞に由来する。例えば、産生細胞株を生成するための、細胞株へのAAV rep遺伝子およびcap遺伝子ならびに/またはオーバーサイズrAAVゲノムをコードする核酸の導入ならびに/または安定な維持/組み込みの前に、細胞株は、HeLa細胞株、293細胞株、A549細胞株、もしくはPERC.6(登録商標)(Crucell)細胞株、またはこれらの派生物である。
【0071】
一部の実施形態において、産生細胞株は、懸濁液中での増殖に適合する。当該技術分野で既知であるように、足場依存性細胞は、典型的に、マイクロキャリアビーズなどの基質なしで、懸濁液中で増殖することができない。懸濁液中での増殖に細胞株を適合させることには、例えば、撹拌パドルを用いて撹拌培養で細胞株を増殖させること、凝集塊化を防止するためにカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを欠く培養培地(および場合により、消泡剤)を使用すること、シリコン処理化合物でコーティングした培養容器を使用すること、ならびに各継代で(大きな凝集塊中または容器の側面ではなく)培養物中の細胞を選択することが含まれる。さらなる説明については、例えば、ATCCのよくある質問文書(www.atcc.org/Global/FAQs/9/1/Adapting%20a%20monolayer%20cell%20line%20to%20suspension-40.aspxで入手可能)およびその引例を参照のこと。
【0072】
一部の態様において、本明細書に開示されるいずれかのrAAV粒子を産生するための方法であって、(a)rAAV粒子が産生される条件下で、(i)AAV複製タンパク質および/またはキャプシド化タンパク質をそれぞれがコードする1つまたはそれ以上のAAVパッケージ遺伝子;(ii)少なくとも1つのAAV ITRが隣接した、本明細書に記載される異種核酸をコードする核酸を含むrAAVプロベクター、ならびに(iii)AAVヘルパー機能を含む宿主細胞を培養すること;ならびに(b)宿主細胞によって産生されたrAAV粒子を回収することを含む方法が、提供される。一部の実施形態において、前記少なくとも1つのAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV DJ、ヤギAAV、ウシAAV、またはマウスAAV血清型ITRなどからなる群から選択される。例えば、一部の実施形態において、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10またはAAVrh10である。ある特定の実施形態において、AAV中の核酸は、AAV2 ITRを含む。一部の実施形態において、前記キャプシド化タンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAVrh8R、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、AAV12、AAV2R471A、AAV2/2-7m8、AAV DJ、AAV2 N587A、AAV2 E548A、AAV2 N708A、AAV V708K、ヤギAAV、AAV1/AAV2キメラ、ウシAAV、マウスAAVキャプシドのrAAV2/HBoV1血清型キャプシドタンパク質、またはこれらの変異体からなる群から選択される。一部の実施形態において、キャプシド化タンパク質は、AAV8キャプシドタンパク質である。一部の実施形態において、rAAV粒子は、AAV8キャプシド、およびAAV2 ITRを含む組換えゲノム、ならびに治療的導入遺伝子/核酸をコードする核酸(例えば、GNPTABをコードする核酸)を含む。
【0073】
本発明の適切なrAAV産生培養培地には、血清または血清由来の組換えタンパク質が0.5%~20%(V/VまたはW/V)のレベルで補充される。あるいは、当該技術分野で既知であるように、rAAVベクターは、血清不含条件において産生し、これは、動物由来産物不含培地とも称する。当業者であれば、rAAVベクターの産生を補助するように設計された市販または特注の培地が、産生培養物におけるrAAVの力価を増加させるために、限定されるものではないが、グルコース、ビタミン、アミノ酸および/または成長因子を含む、当該技術分野で既知の1つまたはそれ以上の細胞培養成分も補充されることを、理解する。
【0074】
rAAV産生培養物は、特定の宿主細胞を利用するのに適切な様々な条件(広い温度範囲にわたって、様々な長さの時間など)下、増殖させることができる。当該技術分野で既知であるように、rAAV産生培養物は、例えば、ローラーボトル、中空繊維フィルター、マイクロキャリア、および充填床もしくは流動床バイオリアクターなどの適切な接着依存性の容器中で培養することができる、接着依存性の培養物を含む。rAAVベクター産生培養物はまた、例えば、撹拌フラスコ、撹拌槽バイオリアクター、およびWaveバッグシステムなどの使い捨てのシステムを含む、様々な方法で培養することができる、HeLa細胞、293細胞およびSF-9細胞などの懸濁液適合宿主細胞も含む。
【0075】
米国特許第6,566,118号により完全に記載されているように、本発明のrAAVベクター粒子は、産生培養物の宿主細胞の溶解によって、または細胞が、無傷の細胞から培地中にrAAV粒子を放出させるような当該技術分野で既知の条件下で培養されるならば、産生培養からの使用済み培地の採取によって、rAAV産生培養物から採取される。細胞を溶解させる適切な方法はまた、当該技術分野で既知であり、例えば、複数回の凍結/解凍サイクル、超音波処理、顕微溶液化ならびに界面活性剤および/またはプロテアーゼなどの化学物質での処理を含む。
【0076】
さらなる実施形態において、rAAV粒子は、精製される。本明細書で使用される「精製された」という用語は、rAAV粒子が天然に生じる場合、または最初に調製された場合にも存在する、他の成分の少なくともいくつかを含まない、rAAV粒子の調製物を含む。したがって、例えば、単離されたrAAV粒子は、培養溶解物または産生培養上清などの原料混合物から、それを濃縮するために精製技法を使用して、調製される。濃縮は、例えば、溶液中に存在するDNase耐性粒子(DRP)もしくはゲノムコピー(gc)の割合によって、または感染力によって、のような様々な方法で測定することができ、あるいは、濃縮は、原料混合物中に存在する第2の潜在的な干渉物質、例えば、例えば、ヘルパーウイルス、培地成分などを含む、産生培養混入物またはプロセス中の混入物を含む混入物に関連して測定することができる。
【0077】
一部の実施形態において、rAAV産生培養採取物は、宿主細胞デブリが除去するために清澄化される。一部の実施形態において、産生培養採取物は、例えば、グレードDOHCのMillipore Millistak+HC Pod Filter、グレードA1HCのMillipore Millistak+HC Pod Filter、および0.2μmのFilter Opticap XL1O Millipore Express SHC Hydrophilic Membraneフィルターを含む、一連のデプスフィルターを通じるろ過によって、清澄化される。清澄化は、遠心分離または当該技術分野で既知の細孔サイズが0.2μmもしくはそれ以上の任意の酢酸セルロースフィルターを通じるろ過など、当該技術分野で既知の様々な他の標準的な技法によって達成することもできる。
【0078】
一部の実施形態において、rAAV産生培養採取物は、産生培養物中に存在する任意の高分子量のDNAを消化するために、Benzonase(登録商標)でさらに処理される。一部の実施形態において、Benzonase(登録商標)消化は、例えば、30分間~数時間の時間、周囲温度から37℃の範囲の温度で、最終濃度1~2.5単位/mlのBenzonase(登録商標)を含む、当該技術分野で既知の標準的な条件下、行われる。
【0079】
rAAV粒子は、以下の精製工程:平衡遠心分離;フロースルーアニオン交換ろ過;rAAV粒子を濃縮するためのタンジェントフローろ過(TFF);アパタイトクロマトグラフィーによるrAAV捕捉;ヘルパーウイルスの熱失活;疎水性相互作用クロマトグラフィーによるrAAV捕捉;サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による緩衝液交換;ナノろ過;およびアニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーによるrAAV捕捉、の1つまたはそれ以上を使用して、単離または精製することができる。これらの工程は、単独、様々な組合せ、または異なる順序で、使用される。一部の実施形態において、本方法は、以下に記載される順序で、すべての工程を含む。rAAV粒子を精製するための方法は、例えば、Xiaoら(1998年)Journal of Virology 72:2224~2232頁;米国特許第6,989,264号および米国特許第8,137,948号;ならびに国際公開第WO2010/148143号パンフレットに見られる。
【0080】
V.治療の方法
本開示のある特定の態様は、ムコリピドーシスII型および/もしくはムコリピドーシスIII型を治療する方法、または、ムコリピドーシスII型もしくはムコリピドーシスIII型を有する哺乳動物における、体のサイズを増加させる方法、骨塩量を増加させる方法または骨密度を増加させる方法に関する。これらの方法は、一部分において、GNPTABのAAV-媒介発現が、マウスの疾患モデルにおける、骨成長障害などのML IIの症状を緩和することができるという本明細書に記載された発見に基づく。上述のように、両方の疾患は、触媒のGlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼのアルファサブユニットおよびベータサブユニットをコードする、GNPTAB遺伝子の機能欠失変異によって引き起こされる。
【0081】
ML IIは、GNPTABの変異によって引き起こされる常染色体劣性遺伝疾患として既知である。GNPTAB活性は、マンノース-6-ホスフェートをタンパク質に付加するために必要であり、それによって、それらをリソソームに輸送するためにマーキングする。GNPTAB活性がない場合、リソソームタンパク質(例えば、リソソームヒドロラーゼ)は、代わりに、細胞外に分泌される。結果として、グリコサミノグリカン、脂質およびオリゴ糖などの、通常、リソソーム中で破壊される物質が、細胞内に蓄積し、大きな封入体の存在がもたらされる。ML IIは、これらの封入体細胞(「I細胞」)の存在に起因して、I細胞病とも称し、これは、顕微鏡によって特定される。ML IIの症状は、しばしば、出生後直ぐに存在し、骨格異常、低身長、弱い筋緊張、筋緊張の欠如(低血圧症)、ヘルニア(例えば、膨隆した腹部、臍ヘルニア)、股関節脱臼および関節変形、心拡大、僧帽弁の肥厚および機能不全、気道の進行性粘膜肥厚、粗くおよび/または騒々しい呼吸、頻繁な呼吸器感染、便秘、下痢、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、ならびに発育遅延、特に、発声および運動技能、認知障害が挙げられる。これらの症状は、ML IIの患者を衰弱させ、典型的には、独立して歩くことができず、幼年期を超えて生存しない。
【0082】
ML IIのように、ML IIIは、GNPTABの変異によって引き起こされる常染色体劣性遺伝疾患として、当該技術分野において既知である。しかしながら、ML IIと比較して、ML IIIは、典型的には、GNPTABにおける、より弱い機能欠失変異をもたらし、それによって、より穏やかな疾患表現型によって特徴づけられる。ML IIIの症状は、3~5歳になるまで、完全には明らかではなく、重症度はかなりの可変性であり、一部の患者は60歳を超えて生き、他の患者は幼年期を超えて生存しない。ML IIIの症状としては、典型的には、骨格異常、低身長、大動脈弁疾患、角膜薄濁、軽度の器官拡張、運動機能の喪失および関節異常が挙げられる。ML IIIはまた、偽性Hurlerポリジストロフィーとも称する。より詳細な説明、ならびにML IIおよびML IIIの患者において見出される特異的な変異は、例えば、Paik,K.H.ら(2005年)Hum. Mutat.26(4):308~14頁を参照のこと。
【0083】
ML IIおよびML IIIのための様々な診断検査が、当該技術分野において既知である。一部の実施形態において、ML IIおよび/またはML IIIは、血清試料または他の患者の試料(例えば、皮膚試料または培養された線維芽細胞)中の、1つまたはそれ以上のリソソーム酵素の活性を測定することによって、診断される。血清中でのある特定のリソソーム酵素の活性は、正常な患者よりも、ML II患者では、5~20倍高い。同様に、ML IIIでは、これらの酵素の血清活性は、10倍まで上昇する。これらの酵素としては、限定されるものではないが、ベータ-D-ヘキソサミニダーゼ(ECコード3.2.1.52)、ベータ-D-グルクロニダーゼ(ECコード3.2.1.31)、ベータ-D-ガラクトシダーゼ(ECコード3.2.1.23)、アルファ-L-フコシダーゼ(ECコード3.2.1.51)およびアルファ-D-マンノシダーゼ(ECコード3.2.1.24)が挙げられる。対照的に、培養された線維芽細胞中でのこれらの活性は、欠損している。一部の実施形態において、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ活性は、ML IIまたはML IIIを診断するために、測定される。一部の実施形態において、試料が、正常な患者の試料からの活性と比較して、1%未満のN-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼの活性を示す患者は、ML IIと診断される。一部の実施形態において、試料が、正常な患者の試料からの活性と比較して、1%~10%の間のN-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼの活性を示す患者は、ML IIと診断される。
【0084】
一部の実施形態において、ML IIおよび/またはML IIIは、変異についてのGNPTABの遺伝子座(例えば、コード配列、プロモーター/イントロン配列、または任意の他の制御配列)を配列決定することによって、診断される。ML IIおよびML IIIは、尿の多糖類および/または尿のグリコサミノグリカンの増加によっても特徴づけられるが、これらの症状は、ML IIおよびML IIIに特異的ではない。一部の実施形態において、ML IIおよび/またはML IIIは、絨毛膜の試料を調べることによって、例えば、トロホブラストの組織診によって、出生前に診断される(例えば、Poenaru,L.ら(1984年)Am.J.Hum.Genet.36(6):1379~85頁を参照のこと)。上述するように、ML IIにおいて、患者の試料(例えば、線維芽細胞)からのI細胞はまた、顕微鏡法によって特定される。
【0085】
一部の実施形態において、ML IIおよび/またはML IIIのための治療(例えば、本開示の遺伝子治療ベクター)は、治療の効能のために試験される。例えば、一部の実施形態において、ML IIおよび/またはML IIIのための治療は、身長増加、骨塩量、骨密度の増加をもたらし、本明細書に記載されるML IIおよび/もしくはML IIIの1つまたはそれ以上の症状の緩和をもたらす。rAAV投与の有効性は、本明細書に記載されるいくつかの診断基準によってモニターすることができる。例えば、本発明の方法を使用して対象を治療後、対象は、例えば、本明細書に記載されるものを含む1つまたはそれ以上の臨床パラメーターによって、疾患状態の1つもしくはそれ以上の兆候または症状の進行における、改善および/または安定化および/または遅延について評価される。このような試験の例は、当該技術分野において既知であり、客観的および主観的な(例えば、対象が報告した)測定を含む。
【0086】
一部の実施形態において、GNPTABの発現は、治療の効能をモニターするために測定される。GNPTAB発現の測定は、GNPTAB mRNAおよび/またはタンパク質の発現を測定することを指す。mRNAおよび/またはタンパク質の発現を測定するための様々な方法が当該技術分野において既知であり、限定されるものではないが、qPCR、ノーザンブロット法、RNA-seq、半定量的PCR、ウエスタンブロット法、質量分析法、ELISAなどが挙げられる。
【0087】
一部の実施形態において、限定されるものではないが、ベータ-D-ヘキソサミニダーゼ(ECコード3.2.1.52)、ベータ-D-グルクロニダーゼ(ECコード3.2.1.31)、ベータ-D-ガラクトシダーゼ(ECコード3.2.1.23)、アルファ-L-フコシダーゼ(ECコード3.2.1.51)およびアルファ-D-マンノシダーゼ(ECコード3.2.1.24)を含む、1つまたはそれ以上のリソソーム酵素の活性は、治療の効能をモニターするために、患者の試料(例えば、血清試料)において測定される。血清中のリソソーム酵素活性の減少は、効能を示す。
【0088】
一部の実施形態において、関節または手足の機能の改善は、効能を示す。一部の実施形態において、発声の改善は、効能を示す。一部の実施形態において、運動機能の改善は、効能を示す。一部の実施形態において、成長速度の増加(例えば、体長増加の増加)は、効能を示す。一部の実施形態において、本明細書の実施例に記載されるように、骨密度、骨塩量および/または成長(例えば、体長)は、治療の効能をモニターするために評価される。体長をモニターするための方法は、当業者に周知である。骨密度および骨塩量をモニターするための試験(例えば、骨密度測定試験)もまた、(例えば、本明細書に記載されるように)当業者に周知であり、限定されるものではないが、二重エネルギーX線吸収測定(DEXA)スキャン、末梢の二重エネルギーX線吸収測定(P-DEXA)スキャン、二重光子吸収法(DPA)およびコンピュータ断層撮影(CT)スキャンが挙げられる。
【0089】
一部の実施形態において、ML IIおよび/またはML IIIのための治療(例えば、本開示の遺伝子治療ベクター)は、動物モデルにおいて試験される。ML IIおよびML IIIのための動物モデルが、当該技術分野において既知である。一部の実施形態において、ML IIおよび/またはML IIIのための治療は、本明細書の実施例で記載される、遺伝子組換えマウスモデルなどのマウスモデルで試験される。一部の実施形態において、ML IIのための治療は、ML IIのためのネコのモデルで試験される(さらなる説明については、Mazrier,H.ら(2003年)J.Hered.94(5):363~73頁またはBosshard,N.U.ら(1996年)Vet.Pathol.33(1):1~13頁を参照のこと)。
【0090】
特定のrAAVベクターおよび組成物の選択は、個々のヒトの医療歴および状態の特徴ならびに治療される個体を含むが、これらに限定されない、多くの異なる因子に依存する。このような特徴および適切な治療レジメンの設計の評価は、最終的には、処方医師の責任である。
【0091】
一部の態様において、本発明は、本開示のrAAV粒子の有効量を投与することによる、ML IIおよび/またはML IIIを治療する方法を提供する。rAAVは、目的の特定の組織に投与されるか、または、全身的に投与される。一部の実施形態において、有効量のrAAVは、非経口的に投与される。非経口の投与経路としては、限定されるものではないが、静脈内、腹腔内、骨内、動脈内、大脳内、筋肉内、髄腔内、皮下、脳室内、肝臓内などが挙げられる。一部の実施形態において、有効量のrAAVは、1つの投与経路を通じて投与される。一部の実施形態において、有効量のrAAVは、2つ以上の投与経路の組合せを通じて投与される。一部の実施形態において、有効量のrAAVは、1つの場所に投与される。他の実施形態において、有効量のrAAVは、2つ以上の場所に投与される。
【0092】
有効量のrAAVは(一部の実施形態において、粒子の形態で)、治療の目的に応じて、投与される。例えば、低い割合の形質導入で、所望される治療効果を達成することができる場合、したがって、治療の目的は、通常、このレベルの形質導入を満たすか、またはそれを上回ることである。一部の事例において、このレベルの形質導入は、所望される組織型の標的細胞の約1~5%のみの形質導入、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約20%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約50%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約80%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約95%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約99%の形質導入によって達成することができる。rAAV組成物は、同じ手順の間に、または数日間、数週間、数カ月間、もしくは数年間の間を空けてのいずれかで、1回またはそれ以上の投与によって投与される。本明細書に記載される投与経路のいずれか1つまたはそれ以上を使用することができる。一部の実施形態において、ヒトを治療するために、複数のベクターが使用される。
【0093】
AAVウイルス粒子によって形質導入された細胞を特定するための方法は、当該技術分野において既知であり;例えば、免疫組織化学的検査もしくは高感度緑色蛍光タンパク質などのマーカーの使用を、ウイルス粒子;例えば、アミノ酸の1つまたはそれ以上の置換を有するrAAVキャプシドを含むウイルス粒子の形質導入を検出するために使用することができる。
【0094】
一部の実施形態において、有効量のrAAV粒子は、2つ以上の場所に、同時または連続して投与される。他の実施形態において、有効量のrAAV粒子は、単一の場所に、2回以上投与される(例えば、繰り返して)。一部の実施形態において、rAAVウイルス粒子の複数回の注射は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間または24時間以下の時間を空ける。
【0095】
有効量のrAAVは(一部の実施形態において、粒子の形態で)、治療の目的に応じて、投与される。例えば、低い割合の形質導入で、所望される治療効果を達成することができる場合、したがって、治療の目的は、通常、このレベルの形質導入を満たすか、またはそれを上回ることである。一部の事例において、このレベルの形質導入は、標的細胞の約1~5%のみの形質導入、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約20%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約50%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約80%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約95%、一部の実施形態では、所望される組織型の細胞の少なくとも約99%の形質導入によって達成することができる。rAAV組成物は、同じ手順の間に、または数日間、数週間、数カ月間、もしくは数年間の間を空けてのいずれかで、1回またはそれ以上の投与によって投与される。一部の実施形態において、哺乳動物(例えば、ヒト)を治療するために、複数のベクターが使用される。
【0096】
一部の実施形態において、本開示のrAAV組成物は、ヒトへの投与のために使用される。一部の実施形態において、本開示のrAAV組成物は、小児の投与のために使用される。理論に縛られることを望まないが、ML IIおよびML IIIの症状の多くは、自然に発症するので(例えば、成長、手足および関節の異常;発声および運動の遅延)、生存中に可能な限り早く、ML IIおよび/またはML IIIを治療することが特に有利である。一部の実施形態において、有効量のrAAVは(一部の実施形態において、粒子の形態で)、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、4カ月未満、5カ月未満、6カ月未満、7カ月未満、8カ月未満、9カ月未満、10カ月未満、11カ月未満、1歳未満、13カ月未満、14カ月未満、15カ月未満、16カ月未満、17カ月未満、18カ月未満、19カ月未満、20カ月未満、21カ月未満、22カ月未満、2歳未満または3歳未満の患者に投与される。
【0097】
一部の実施形態において、本開示のrAAV組成物は、若年成人への投与のために使用される。一部の実施形態において、有効量のrAAVは(一部の実施形態において、粒子の形態で)、12歳未満、13歳未満、14歳未満、15歳未満、16歳未満、17歳未満、18歳未満、19歳未満、20歳未満、21歳未満、22歳未満、23歳未満、24歳未満または25歳未満の患者に投与される。
【0098】
VI.キットまたは製品
本明細書に記載されるrAAVベクター、粒子および/または医薬組成物は、例えば、本明細書に記載される本発明の方法の1つにおける使用のために設計された、キットまたは製品内に含有される。
【0099】
一般に、システムは、本発明の方法における使用のために適切な、カニューレ、1つまたはそれ以上のシリンジ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上)、および1つまたはそれ以上の液体(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上)を含む。
【0100】
シリンジは、液体の送達のためにカニューレに連結できるものである限り、任意の適切なシリンジである。一部の実施形態において、システムは、1つのシリンジを有する。一部の実施形態において、システムは、2つのシリンジを有する。一部の実施形態において、システムは、3つのシリンジを有する。一部の実施形態において、システムは、4つまたはそれ以上のシリンジを有する。本発明の方法における使用のために適切な液体は、本明細書に記載されるもの、例えば、本明細書に記載される有効量の1つまたはそれ以上のベクターをそれぞれ含む1つまたはそれ以上の液体、および1つまたはそれ以上の治療薬剤を含む1つまたはそれ以上の液体を含む。
【0101】
一部の実施形態において、キットは、単一の液体(例えば、有効量のベクターを含む薬学的に許容される液体)を含む。一部の実施形態において、キットは、2つの液体を含む。一部の実施形態において、キットは、3つの液体を含む。一部の実施形態において、キットは、4つまたはそれ以上の液体を含む。液体としては、希釈剤、緩衝液、賦形剤、または本開示のAAVベクター組成物の送達、希釈、安定化、緩衝化もしくはそうでなければ輸送のために適切な、本明細書に記載されるか、または当該技術分野で既知の任意の他の液体が挙げられる。一部の実施形態において、キットは、1つまたはそれ以上の緩衝液、例えば、pH緩衝水溶液を含む。緩衝液の例としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、および他の有機酸緩衝液が挙げられる。
【0102】
一部の実施形態において、キットは、容器を含む。適切な容器としては、例えば、バイアル、バッグ、シリンジおよびボトルが挙げられる。容器は、ガラス、金属またはプラスチックなどの、1つまたはそれ以上の物質製である。一部の実施形態において、容器は、本開示のrAAV組成物を保持するために使用される。一部の実施形態において、容器は、液体および/または他の治療薬剤も保持する。
【0103】
一部の実施形態において、キットは、本開示のrAAV組成物とともに、追加の治療薬剤を含む。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療薬剤は、混合される。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療薬剤は、別々に保持される。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療薬剤は、同じ容器中にある。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療薬剤は、異なる容器中にある。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療薬剤は、同時に投与される。一部の実施形態において、rAAV組成物および追加の治療薬剤は、同じ日に投与される。一部の実施形態において、rAAV組成物は、追加の治療薬剤の投与の、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、7日以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、2カ月以内、3カ月以内、4カ月以内、5カ月以内または6カ月以内に投与される。
【0104】
一部の実施形態において、キットは、AAVの投与の前に免疫系を一時的に抑制するための治療薬剤を含む。一部の実施形態において、患者は、AAV粒子に対するT細胞応答を阻害するために、ウイルス注射の直前および後に、一時的に免疫が抑制される(例えば、Ferreiraら、Hum.Gene Ther.25:180~188頁、2014年を参照のこと)。一部の実施形態において、キットは、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチルおよび/またはメチルプレドニゾロンをさらに提供する。
【0105】
本発明のrAAV粒子および/または組成物は、使用のための説明書を含めて、キット内にさらに包装される。一部の実施形態において、キットは、rAAV粒子の組成物の送達(例えば、本明細書に記載される任意の種類の非経口投与)のためのデバイスをさらに含む。一部の実施形態において、使用のための説明書は、本明細書に記載される方法の1つによる説明書を含む。一部の実施形態において、説明書は、容器に提供される(例えば、貼付される)ラベルに印刷される。一部の実施形態において、使用のための説明書は、例えば、ムコリピドーシスII型(ML II)および/またはムコリピドーシスIII型(ML III)を治療するため、身体のサイズを増加させるため、骨塩量を増加させるため、および/または骨密度を増加させるために、哺乳動物(例えば、ヒト)に、有効量のrAAV粒子を投与するための説明書を含む。
【0106】
VII.動物モデル
本発明はムコリピドーシスIIの動物モデルを提供する。GNPTAB変異マウスは、標準的な方法を使用して、宿主のブラストシストへの胚性幹(ES)細胞クローンのマイクロインジェクションによって生成される。簡潔には、マウスGNPTAB遺伝子座の標的の破壊は(例えば、エクソン12~エクソン20を欠失させた)、レポーターまたは選択的マーカー遺伝子を含有する置換ベクターでの相同組換えによって行われる。すべての子孫は、テールスニップDNAにおけるポリメラーゼ連鎖反応解析により遺伝子型が特定された。本研究において使用されるすべてのマウスは、野生型(+/+)マウスまたはヘテロ接合性(+/-)マウスもしくはホモ接合性(-/-)マウスとして特定されたオスであった。一部の実施形態において、GNPTAB遺伝子の少なくとも1つのアレルは、エクソン12およびエクソン20の間に位置する欠失を含む。一部の実施形態において、GNPTAB遺伝子の少なくとも1つのアレルは、エクソン12およびエクソン20にまたがる欠失を含む。一部の実施形態において、欠失は、エクソン12、13、14、15、16、17、18、19または20の1つまたはそれ以上の欠失を含む。一部の実施形態において、GNPTAB遺伝子の一部は、レポーターおよび/または選択的マーカーをコードする遺伝子によって置き換えられている。一部の実施形態において、選択的マーカーは、ネオマイシンに対する耐性を付与する。一部の実施形態において、動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、サル)である。一部の実施形態において、哺乳動物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)である。一部の実施形態において、動物は、免疫適格性または免疫不全性である。一部の実施形態において、動物モデルは、遺伝子組換え動物を含む。ML IIの他のマウスモデルは、Gelfmanら(Invest.Optham.Visual Sci.2007年、48:5221~5228頁)およびPaton,L.ら(J Biol Chem.2014年、289(39):26709~21頁)によって提供される。
【0107】
一部の態様において、本発明は、ムコリピドーシスII(ML II)の治療のための薬剤を評価するための方法であって、本明細書において記載される動物モデルに薬剤を投与することを含み、ML IIの1つまたはそれ以上の症状の緩和が、薬剤がML IIの有益な治療を提供することを示す、方法を提供する。一部の実施形態において、ML IIの症状は、体重の減少、骨密度の減少、骨塩量の減少、骨格異常、認知障害、粗大および微細運動能力の発達の遅延、難聴、筋緊張の欠如、膨隆した腹部、臍ヘルニア、気道の進行性粘膜肥厚、頻繁な呼吸器感染、僧帽弁の肥厚および機能不全、便秘および/または下痢である。一部の実施形態において、薬剤は、小分子、ポリペプチド、抗体、核酸または組換えウイルス粒子である。
【実施例
【0108】
本発明は、以下の実施例への言及によって、より完全に理解されるであろう。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される実施例および実施形態は、実例の目的のためのみであること、ならびにそれらを考慮して様々な改変または変更を当業者に示唆するものであって、様々な改変または変更が、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0109】
実施例1:GNPTABノックアウトマウスの生成および特性評価
ムコリピドーシスII型(ML II型またはML-II、II細胞病としても知られる;OMIMエントリー#252500)は、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GNPTAB)の欠損によって引き起こされる常染色体劣性のリソソーム蓄積障害である。線維芽細胞の細胞質における多数の封入体の存在、ムコ多糖尿の欠如、血清中のリソソーム酵素活性の増加、およびGlcNAc-ホスホトランスフェラーゼ活性の低下は、この疾患の特質である。ML II型の病理を研究するために、GNPTABノックアウト(KO)マウスを、発生させ、特性を評価した。
【0110】
方法
AAV2/8-GNPTABコンストラクトの生成
マウスGNPTABのコード配列を増幅し、Genescript(Piscataway、NJ、米国)によって、マウスにおける発現のためにコドン最適化した。GNPTAB cDNAの大きなサイズおよびAAVの制限された容量のために、cDNAは、いずれの利用可能なベクターにも適さない。したがって、CMVエンハンサーおよびニワトリベータアクチンプロモーターの短縮型ならびに非常に小さなイントロンを含有する新たな発現カセットを設計した。全長GNPTAB mRNAの発現を、インビトロでのHEK293細胞の一過性の感染、続いて、定量的RT-PCRによって確認した。このAAV2/8-GNPTABを精製し、-70℃で保管し、2.5×1012DNase耐性粒子/mLの濃度で使用した。短縮型エンハンサーおよびプロモーター配列を、これらの研究のために使用した。
【0111】
動物
GNPTAB変異マウスを、標準的な方法を使用して、宿主のブラストシストへの胚性幹(ES)細胞クローンのマイクロインジェクションによって生成させた。簡潔には、マウスGNPTAB遺伝子座の標的の破壊を(エクソン12~エクソン20を欠失させた)、ネオマイシン耐性遺伝子を含有する置換ベクターでの相同組換えによって行った。本研究に使用されるマウスは、混合した遺伝的背景であった(129/SvおよびC57BL/6)。すべての子孫は、テールスニップDNAにおけるポリメラーゼ連鎖反応解析により遺伝子型が特定された。本研究において使用されるすべてのマウスは、野生型(+/+)マウスまたはヘテロ接合性(+/-)マウスもしくはホモ接合性(-/-)マウスとして特定されたオスであった。
【0112】
マウスを、12時間の明暗サイクル下、コロニー室で、ケージあたり2~5頭の群で収容した。げっ歯類の餌(Harlan Teklad #8604、Madison、WI、米国)および水は自由に摂取可能とした。動物の管理は、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(National Academy Press、Washington DC、1996年)に記載されているガイドラインに従って実施した。
【0113】
ベクター注射
PBSまたはAAV-GNPTABの単回の両側i.v.注射を6週齢のGNPTAB KOマウスに行った。PBSを注射された野生型マウスまたはヘテロ接合性マウスの群を、対照群とした。AAV-GNPTABを注射されたそれぞれのマウスは、3×1011ベクター粒子を投与された。免疫応答を低減または除去するために、抗CD40リガンド抗体(MRI)を、単独で、Halbertら(1998年)J.Virol.72:9795~9805頁によるプロトコールに従って注射した。
【0114】
成長学
すべてのマウスを、電子デジタルキャリパーを使用して、総体重(g)および体長(鼻端-肛門の距離、mm)を測定することによって、毎週、調べた。
【0115】
組織学
10月齢の野生型マウスおよびGNPTAB-/-マウスを鎮静させ、PBSで心臓を経由して灌流させた。灌流に続いて、大腿骨を取り出し、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、0.5MのEDTAで脱灰し、パラフィン包埋した。大腿骨片(4μM)を、ヘマトキシリン-エオシンで染色した。4℃でのスライドのスキャニングおよび解析のために、Aperio ScanScope AT(v101.0)を使用した。この組織を、包埋し、TEMまたはヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)のために切断した。
【0116】
微細構造解析
野生型マウスおよびKOマウスを、断頭し、唾液腺を取り出し、2.5% のPBS中のグルタルアルデヒドに、4℃で終夜、浸漬することによって固定した。唾液腺を脱水し、次いで、さらに30分間PBS緩衝液で洗浄し、続いて、1%の四酸化オスミウムで、室温で1時間、後固定した。検体を、段階的なアルコールシリーズを通して脱水し、Epon812中に包埋した。半薄型の連続切片を、2.5μMで切断し(Leica ultracut UCT)、トルイジンブルーで染色し、光学顕微鏡下で観察した。透過型電子顕微鏡観察を、Mirgagni顕微鏡(FEI)で行った。
【0117】
リソソーム酵素アッセイ
血液を取り出し、試料を、15分間遠心分離し(8000xg)、血漿を、-70℃で保管した。血漿のリソソーム酵素活性を、Department of Chemical Pathology、Samsung Medical Center、韓国で測定した。ML IIにおいて、特異的なGlcNAc-ホスホトランスフェラーゼ活性は、測定することができなかった。したがって、上昇した血漿のリソソーム酵素に基づいて診断を行った。
【0118】
DEXA解析
骨密度(BMD)、骨塩量(BMC)および除脂肪量を、pDEXA SabreX線骨デンシトメーターを用いて、麻酔されたマウスで測定した。麻酔を投与した後、それぞれのマウスの重量を記録し、次いで、マウスを、DEXAスキャナーに置いた。データの解析のために、マウスの全身を含む領域の輪郭を示した。
【0119】
リアルタイムPCR
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を行い、ABI PRISM 7900HTシステムおよびTaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して、GNPTABのmRNAレベルの定量を行った。mRNAレベルは、GAPDHのレベルに関して表す。2-ΔΔCT法を使用して、SDS2.3ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用してデータを解析した。
【0120】
統計解析
GraphPad Prism Version 5を、統計解析、ならびに図および表の作成のために使用した。有意差を、独立Studentのt検定および一元ANOVA検定によって、決定した。特に規定のない限り、すべてのデータは、平均±SEMで表される。
【0121】
結果
遺伝子トラップ法を使用して、GNPTAB KOマウスを生成した。図1Aで説明されるように、エクソン12およびエクソン20の間にネオマイシン耐性遺伝子を含有する置換ベクターでの相同組換えを使用して、マウスを生成した。図1Bに示されるように、ESクローンのGNPTAB遺伝子における遺伝子トラップの存在を、サザンブロット解析により確認した。
【0122】
網羅的な表現型解析を、野生型動物、ヘテロ接合性動物およびホモ接合性動物で行った。KOマウスは、それらの小さなサイズによって、野生型(WT)の同腹仔から、視覚的に識別できた。平均体重(図2A)および平均体長(図2B)は、KOマウスにおいて、有意に減少していた。それらの小さなサイズと一致して、ホモ接合性マウスは、粗い顔面形状を示した(図2C)。
【0123】
図3Aに示されるように、正常軟骨において、明瞭な小窩スペースが、軟骨細胞を取り囲んでいた。細胞質は、単一の明瞭な空胞を含有していた。KOマウスにおいて、大腿骨の軟骨細胞は、著しく肥大し、それらの拡大した小窩は完全に満たされていた(図3B)。肥大軟骨細胞の細胞質は、不十分な量の微粒状の両染性物質を含有する豊富な微小空胞によって膨張していた。固定化に関連する軟骨細胞の収縮は少なく、拡大した小窩を満たしていた。これは、単一の大きく明瞭な空胞を含有し、部分的にのみ小窩が満たされた、野生型の軟骨細胞とは対照的である。
【0124】
光学顕微鏡によって調べると、粘液型および漿液型の分泌細胞からなる、外分泌唾液腺の腺房は、KOマウスにおいて広範囲の空胞化を示した(Gelfmanら、2007年、Invest.Optham.Visual Sci.48:5221~5228頁)。内在する病状への洞察を得るために、顎下の唾液腺を、電子顕微鏡(EM)によって解析した。
【0125】
粘液型および漿液型両方の分泌細胞は、野生型マウスにおいて、容易に観察された(図4A図4C)。対照的に、KOマウスの顎下の唾液腺の全体的な構造は、非常に全体的に破壊されており、EM切片における漿液細胞の識別を大きく妨げた(図4D図4F)。粘液型の分泌細胞は、異種物質を含有する大きな膜結合性の空胞でいっぱいであった(図4F図4F)。大きな空胞は、KOマウスの粘膜細胞に蓄積した、未分解の細胞質物質で満たされており、単一膜によって取り囲まれていた。これらの観察は、これらが、オートファジー性の区画とリソソームとの融合によって、形成されたオートリソソームを示す可能性があることを示す。
【0126】
ML-IIを有する患者は、リソソームに対するこれらの酵素の正確な標的化のために必須のマンノース-6-ホスフェート認識マーカーを合成できないので、その血清中に非常に上昇したレベルでリソソーム酵素を有する。この輸送の欠如は、血液への酵素の分泌過多をもたらす。図5A図5Dは、野生型マウスと比較して、KOマウスが、N-アセチルグルコサミニダーゼ(図5A)、β-ヘキソサミニダーゼA(図5B)、β-ガラクトシダーゼ(図5C)およびβ-グルクロニダーゼ(図5D)などのリソソーム酵素の非常に増加したレベルを示したことを示す。ヒトにおける観察と一致して、GlcNAc-1-ホスホトランスフェラーゼ活性が、ホモ接合性マウスにおいて欠如している場合、この表現型が予想される。
【0127】
要約すると、これらの実験は、GNPTAB KOマウスが、野生型マウスと比較して、特に、成長、唾液腺の形態およびリソソーム酵素のレベルに関して、明らかな、異なる表現型を呈したたことを実証する。これらの結果は、GNPTAB KOマウスが、ML-IIのための治療的処置を研究するためのモデル系となることを示す。
【0128】
実施例2:GNPTAB KOマウスにおけるGNPTABのAAV-媒介投与の評価
ML-IIを有する患者は、成長遅延を示すので、この研究の主たる目標は、ML-IIモデルにおいて成長を促進するAAV-媒介GNPTAB投与の効能を評価することであった。したがって、野生型マウス、GNPTABヘテロ接合性マウスおよびGNPTAB KOマウスの表現型を、AAV-GNPTABを注射されたGNPTAB KOマウスと比較して、解析した。
【0129】
図6Aおよび図6Bに示されるように、すべての解析の評価を、注射後2つの期間に実施した:最初は、注射後16週(12週齢で)に開始し、2回目は、注射後32週(38週齢で)に開始した。成長学解析を、注射後6週に加えた。
【0130】
CMVエンハンサー/CBAプロモーターによって制御されるマウスGNPTAB cDNAおよびBGHポリAシグナルを発現する発現カセットを含有するプラスミドを構築した(図7A)。全長GNPTABは、本明細書で記載される短縮型CMVエンハンサー/CBACBAプロモーターの制御下であった。AAV2/8-GNPTABを注射されたGNPTAB KOマウスからの肝臓の定量的リアルタイムPCR解析は、AAV-GNPTABの特異的で高度な発現を示した。予想されたように、いずれのAAV-GNPTAB mRNAも、対照の同腹仔からの試料中には存在しなかった(図7B)。
【0131】
AAV媒介遺伝子導入が、生理学的に関連する方法で、代謝に影響を及ぼすかどうかを決定するための最初の試験として、体重増加を、注射後32週間モニターした。図8Aに示されるように、KOマウスにおいて、AAV-GNPTABの治療の効果は観察されなかった。図8Bは、体重増加の点で、対照およびAAV-GNPTAB治療KOマウスの間で観察された相違がなかったことを示す。
【0132】
次に、KOマウスの低身長症の表現型を弱める有効性を評価した。AAV-GNPTABを注射されたKOマウスにおいて、治療の6週後に低身長症の改善が認められ、身体のサイズの増加を示す(図9A図9Bおよび下記の表1)。
【0133】
【表1】
【0134】
次に、骨密度(BMD)、骨塩量(BMC)および身体組成を測定した。DEXAは、骨塩および身体組成(体脂肪量として)を決定するためのX線に基づく画像処理技術である。AAV-GNPTABの導入は、AAVを注射されたKOマウスのBMCおよびBMDの相対的増加を誘導した。図10A図10Cは、注射前に得られたBMDの生データ(図10A)、ならびに注射の前および後と比較したBMDの相対比率(図10B図10C)を示す。これらのデータも、以下の表2に示す。これらの結果は、骨密度に対する遺伝子導入の有意な効果を実証する。
【0135】
【表2】
【0136】
同様に、骨塩量(BMC)の生データは、強い遺伝子治療効果を示した(図11A)。比率のデータ(図11B図11C)も、骨の成長における有意な効果に近かった。これらのデータも、以下の表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
次に、DEXAスキャナーを使用する身体の除脂肪含量の分析は、除脂肪量もKOマウスにおいて減少したことを明らかにした(図12A)。図12Bに示されるように、注射後32週で、対照マウスは、注射前のデータとの比較において、除脂肪量の百分率の有意な減少を示した。しかしながら、除脂肪量の有意な変化は、AAV-GNPTAB治療KOマウスでは観察されなかった。これらのデータも、以下の表4に示す。
【0139】
【表4】
【0140】
要約すると、GNPTAB KOマウスは、ヒトML II型の場合のように、健康に育つことができず、低い骨密度を有していた。このモデルを使用して、ML II型の治療のためにAAVベクターを使用する遺伝子治療の可能性を調べた。過剰発現したGNPTABは、KOマウスにおける骨成長障害を部分的に保護することがわかった。全体として、AAVベクターによるGNPTABの全身送達は、非常に効率的であり、ML II型における骨の病態を是正するための有望な一アプローチである。
【0141】
配列
別途注記されない限り、すべてのポリペプチド配列はN末端~C末端で示される。
別途注記されない限り、すべての核酸配列は5’~3’で示される。
GNPTAB
ヒトGNPTABタンパク質配列(配列番号1)
MLFKLLQRQTYTCLSHRYGLYVCFLGVVVTIVSAFQFGEVVLEWSRDQYHVLFDSYRDNIAGKSFQNRLC
LPMPIDVVYTWVNGTDLELLKELQQVREQMEEEQKAMREILGKNTTEPTKKSEKQLECLLTHCIKVPMLV
LDPALPANITLKDLPSLYPSFHSASDIFNVAKPKNPSTNVSVVVFDSTKDVEDAHSGLLKGNSRQTVWRG
YLTTDKEVPGLVLMQDLAFLSGFPPTFKETNQLKTKLPENLSSKVKLLQLYSEASVALLKLNNPKDFQEL
NKQTKKNMTIDGKELTISPAYLLWDLSAISQSKQDEDISASRFEDNEELRYSLRSIERHAPWVRNIFIVT
NGQIPSWLNLDNPRVTIVTHQDVFRNLSHLPTFSSPAIESHIHRIEGLSQKFIYLNDDVMFGKDVWPDDF
YSHSKGQKVYLTWPVPNCAEGCPGSWIKDGYCDKACNNSACDWDGGDCSGNSGGSRYIAGGGGTGSIGVG
QPWQFGGGINSVSYCNQGCANSWLADKFCDQACNVLSCGFDAGDCGQDHFHELYKVILLPNQTHYIIPKG
ECLPYFSFAEVAKRGVEGAYSDNPIIRHASIANKWKTIHLIMHSGMNATTIHFNLTFQNTNDEEFKMQIT
VEVDTREGPKLNSTAQKGYENLVSPITLLPEAEILFEDIPKEKRFPKFKRHDVNSTRRAQEEVKIPLVNI
SLLPKDAQLSLNTLDLQLEHGDITLKGYNLSKSALLRSFLMNSQHAKIKNQAIITDETNDSLVAPQEKQV
HKSILPNSLGVSERLQRLTFPAVSVKVNGHDQGQNPPLDLETTARFRVETHTQKTIGGNVTKEKPPSLIV
PLESQMTKEKKITGKEKENSRMEENAENHIGVTEVLLGRKLQHYTDSYLGFLPWEKKKYFQDLLDEEESL
KTQLAYFTDSKNTGRQLKDTFADSLRYVNKILNSKFGFTSRKVPAHMPHMIDRIVMQELQDMFPEEFDKT
SFHKVRHSEDMQFAFSYFYYLMSAVQPLNISQVFDEVDTDQSGVLSDREIRTLATRIHELPLSLQDLTGL
EHMLINCSKMLPADITQLNNIPPTQESYYDPNLPPVTKSLVTNCKPVTDKIHKAYKDKNKYRFEIMGEEE
IAFKMIRTNVSHVVGQLDDIRKNPRKFVCLNDNIDHNHKDAQTVKAVLRDFYESMFPIPSQFELPREYRN
RFLHMHELQEWRAYRDKLKFWTHCVLATLIMFTIFSFFAEQLIALKRKIFPRRRIHKEASPNRIRV

マウスGNPTABタンパク質配列(配列番号2)
MLLKLLQRQTYTCLSHRYGLYVCFVGVVVTIVSAFQFGEVVLEWSRDQYHVLFDSYRDNIAGKSFQNRLC
LPMPIDVVYTWVNGTDLELLKELQQVREHMEEEQRAMRETLGKNTTEPTKKSEKQLECLLTHCIKVPMLV
LDPPLPANCTLKDLPTLYPSFHAASDMFNVAKPKNPSTNVSVVVFDTTKDVEDAHAGPFKGGSKQMVWRA
YLTTDKEAPGLVLMQGLAFLSGFPPTFKETSQLKTKLPEKLSSKIKLLRLYSEASVALLKLNNPKGFQEL
NKQTKKNMTIDGKELTISPAYLLWDLSAISQSKQDEDVSASRFEDNEELRYSLRSIERHAPWVRNIFIVT
NGQIPSWLNLDNPRVTIVTHQDIFQNLSHLPTFSSPAIESHIHRIEGLSQKFIYLNDDVMFGKDVWPDDF
YSHSKGQKVYLTWPVPNCAEGCPGSWIKDGYCDKACNNSACDWDGGDCSGNTAGNRFVAGGGGTGNIGAG
QHWQFGGGINTISYCNQGCANSWLADKFCDQACNVLSCGFDAGDCGQDHFHELYKVTLLPNQTHYVVPKG
EYLSYFSFANIARRGVEGTYSDNPIIRHASIANKWKTIHLIMHSGMNATTIYFNLTLQNANDEEFKIQIA
VEVDTREAPKLNSTTQKAYESLVSPVTPLPQADVPFEDVPKEKRFPKIRRHDVNATGRFQEEVKIPRVNI
SLLPKEAQVRLSNLDLQLERGDITLKGYNLSKSALLRSFLGNSLDTKIKPQARTDETKGNLEVPQENPSH
RRPHGFAGEHRSERWTAPAETVTVKGRDHALNPPPVLETNARLAQPTLGVTVSKENLSPLIVPPESHLPK
EEESDRAEGNAVPVKELVPGRRLQQNYPGFLPWEKKKYFQDLLDEEESLKTQLAYFTDSKHTGRQLKDTF
ADSLRYVNKILNSKFGFTSRKVPAHMPHMIDRIVMQELQDMFPEEFDKTSFHKVRHSEDMQFAFSYFYYL
MSAVQPLNISQVFHEVDTDQSGVLSDREIRTLATRIHDLPLSLQDLTGLEHMLINCSKMLPANITQLNNI
PPTQEAYYDPNLPPVTKSLVTNCKPVTDKIHKAYKDKNKYRFEIMGEEEIAFKMIRTNVSHVVGQLDDIR
KNPRKFVCLNDNIDHNHKDARTVKAVLRDFYESMFPIPSQFELPREYRNRFLHMHELQEWRAYRDKLKFW
THCVLATLIIFTIFSFFAEQIIALKRKIFPRRRIHKEASPDRIRV
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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