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特許7347938樹脂製容器口部とプラスチックキャップとの組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】樹脂製容器口部とプラスチックキャップとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
B65D41/34 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019033541
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020138740
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】大岡 新治
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0015490(US,A1)
【文献】国際公開第2014/077311(WO,A1)
【文献】特表2012-516272(JP,A)
【文献】特開2003-252353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子部に形成された切欠きから成る軸方向に延びるベント部を有し、非結晶である樹脂製容器口部と、該容器口部に適用され、前記樹脂製容器に内容物を充填した後、窒素封入を行うアセプティック充填用プラスチックキャップとの組み合わせにおいて、
前記プラスチックキャップは、頂板部及び該頂板部から垂下するスカート部から成り、前記頂板部内面には、少なくとも前記容器口部外面をシールするアウターリング及び前記容器口部内面をシールするインナーリングが形成され、前記アウターリング内面はキャップ内方に向かって傾斜した形状を有し、前記スカート部内面には螺子部が形成されており、前記スカート部の下端には破断可能な弱化部を介してタンパーエビデントバンドが形成されていて、
栓状態にあっては、前記インナーリング外面のシールポイントが前記容器口部外面に形成された螺子部の始点から螺子の形成方向に向かって最初に形成される切欠きに対応する前記容器口部内面に位置し、前記アウターリング内面のシールポイントが前記容器口部外面に圧着することにより、密封性が維持され、
開封工程において、前記インナーリング外面のシールポイントは、前記アウターリングによるシールが解除される前に容器口部の螺子部の始点よりも上方に位置する前記容器口部内面で圧着状態に移行し、前記アウターリングによるシールが解除されても、前記弱化部が破断されるまでは、前記インナーリングの外面が前記容器口部の内面と圧着し続けて密封性が維持され、前記弱化部が破断された後に、前記インナーリングによるシールは解除される、ことを特徴とする組み合わせ
【請求項2】
前記インナーリングのシールポイントは、外方に膨出した最外径部であり、前記アウターリングのシールポイントは、下方に向かって傾斜する内面下端の最内径部である請求項1に記載の組み合わせ
【請求項3】
前記アウターリングとインナーリングの間には、容器口部先端と接触するコンタクトリングが形成されている請求項1又は2記載の組み合わせ
【請求項4】
前記樹脂製容器の最上段の螺子部に形成される切欠きの上端から容器口部先端までの軸方向長さをW、閉栓状態からアウターリングの密封が解除されるまでのキャップの上昇距離をX、閉栓状態から弱化部が破断されるまでのキャップの上昇距離をY、閉栓状態からシールブレイクまでのキャップの上昇距離をZとしたとき、下記式
Y<Z 及び X>(Z-W)
を満足する請求項1~の何れかに記載の組み合わせ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器殊にベント付螺子ボトル口部とプラスチックキャップとの組み合わせに関するものであり、より詳細には、寸法精度にばらつきがある容器口部に適用された場合でも、確実にタンパーエビデント性を発現可能な、樹脂製容器口部とプラスチックキャップとの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の液体が充填された容器のキャップとして、容器口部に螺子係合により装着される樹脂キャップが広く使用されている。かかる樹脂キャップとして、不正使用防止のために、キャップのスカート下端に、破断可能な弱化部を介してタンパーエビデントバンド(以下TEバンドという)が形成されたキャップが広く用いられている。
TEバンドによる開封明示機能は、キャップを開封するために旋回するとキャップ本体は上昇するが、TEバンドは容器口部と係合し、その上昇が抑制されている結果、破断可能な弱化部が破断して、TEバンドはキャップ本体から切り離されて容器口部側に残り、キャップ本体のみが容器口部から取り除かれることにより、キャップが一旦開封されたものであることが明示されるという機能である。
【0003】
TEバンドが確実な開封明示機能を発揮するためには、キャップ本体とTEバンドの間の弱化部が破断される、キャップの旋回角度(以下、「ブリッジブレイク角度」ということがある)が、容器の密封性が解除される、キャップの旋回角度(以下、「シールブレイク角度」ということがある)よりも小さいことが重要である。
【0004】
このようなTEバンドを適用するプラスチック容器に、自生圧力を有する炭酸飲料等の内容物を充填した場合や、アセプティック、ホットパック等により自生圧力を有さない非炭酸飲料等の内容物であっても、容器内ヘッドスペースの空気を窒素に置き換える液体窒素滴下工程を経て充填した場合、容器内に内圧がかかっている。このため、キャップをシールブレイク角度まで旋回して内圧を効率よく解放するために、容器口部にベント部、すなわち容器口部の螺子部に軸方向の切欠きが形成されている(特許文献1)。
また、アセプティック充填に適用される容器蓋として、天面壁と天面壁の周縁から垂下するスカート壁を具備し、天面壁の内面には内側筒状シール片(インナーリング)と外側筒状シール片(アウターリング)とを備え、内側筒状シール片の外周面は容器蓋の中心軸線に対して傾斜角度θ1をなして下方に向かって半径方向外方に傾斜して延出し、次いで下方に向かって内方に傾斜して延出し、内側筒状シール片の内周面の上部は中心軸線に対して傾斜角度θ1よりも大きいθ3をなして下方に向かって半径方向外方に傾斜して延出しており、内側筒状シール片の肉厚は下方に向かって漸次減少しており、外側筒状が容器蓋の中心軸線に対して下方に向かって半径方向外方に傾斜して延出している容器蓋が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-338789号公報
【文献】特許第4098797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、容器口部にベント部を形成するため螺子部に切欠きを設けた容器にTEバンド付のキャップを適用した場合に、想定されたシールブレイク角度よりも小さい角度でシールブレイクが生じてしまう場合があることが分かった。本発明者等がかかる容器口部について精査した結果、ベント部を形成するために、螺子山に切欠きを形成した部分および切欠きを形成していない部分(通常の螺子山)に対応する容器口部内面付近において、ひけ等の成形歪に起因する樹脂収縮量の差が生じていることが分かった。かかる容器口部内面は、容器の密封性を確保するキャップのインナーリングが当接する部分であり、このような収縮量の差が凹凸を形成してしまうため、凹凸がインナーリングによるシールポイントに形成されていると、インナーリングが充分に密着されない部分が生じて、所期のシールブレイク角度よりも小さい角度で密封性が解除されてしまうおそれがある。
【0007】
従って、本発明の目的は、ベント部が形成された螺子部を有する樹脂製容器口部とこれに適用されるプラスチックキャップとの組み合わせにおいて、容器口部とのインナーリング及びアウターリングのシールポイントを開封工程中に切り替え、寸法精度に劣る容器に適用された場合にも確実な密封性を発現可能であり、TEバンドを有していてもシールブレイクが確実にブリッジブレイクよりも後に発現され、優れたTE性を発現可能な樹脂製容器口部とプラスチックキャップとの組み合わせを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、螺子部に形成された切欠きから成る軸方向に延びるベント部を有し、非結晶である樹脂製容器口部と、該容器口部に適用され、前記樹脂製容器に内容物を充填した後、窒素封入を行うアセプティック充填用プラスチックキャップとの組み合わせにおいて、
前記プラスチックキャップは、頂板部及び該頂板部から垂下するスカート部から成り、前記頂板部内面には、少なくとも前記容器口部外面をシールするアウターリング及び前記容器口部内面をシールするインナーリングが形成され、前記アウターリング内面はキャップ内方に向かって傾斜した形状を有し、前記スカート部内面には螺子部が形成されており、前記スカート部の下端には破断可能な弱化部を介してタンパーエビデントバンドが形成されていて、
栓状態にあっては、前記インナーリング外面のシールポイントが前記容器口部外面に形成された螺子部の始点から螺子の形成方向に向かって最初に形成される切欠きに対応する前記容器口部内面に位置し、前記アウターリング内面のシールポイントが前記容器口部外面に圧着することにより、密封性が維持され、
開封工程において、前記インナーリング外面のシールポイントは、前記アウターリングによるシールが解除される前に容器口部の螺子部の始点よりも上方に位置する前記容器口部内面で圧着状態に移行し、前記アウターリングによるシールが解除されても、前記弱化部が破断されるまでは、前記インナーリングの外面が前記容器口部の内面と圧着し続けて密封性が維持され、前記弱化部が破断された後に、前記インナーリングによるシールは解除される、ことを特徴とする組み合わせが提供される。
【0009】
本発明の樹脂製容器口部とプラスチックキャップとの組み合わせにおいては、
1.前記インナーリングのシールポイントは、外方に膨出した最外径部であり、前記アウターリングのシールポイントは、下方に向かって傾斜する内面下端の最内径部であること、
2.前記アウターリングとインナーリングの間には、容器口部先端と接触するコンタクトリングが形成されていること、
.前記樹脂製容器の最上段の螺子部に形成される切欠きの上端から容器口部先端までの軸方向長さをW、閉栓状態からアウターリングの密封が解除されるまでのキャップの上昇距離をX、閉栓状態から弱化部が破断されるまでのキャップの上昇距離をY、閉栓状態からシールブレイクまでのキャップの上昇距離をZとしたとき、下記式
Y<Z 及び X>(Z-W)
を満足すること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂製容器口部とプラスチックキャップとの組み合わせにおいては、キャップの初期開封に際して、キャップと容器口部とのシールポイントをキャップの旋回角度に合わせて、アウターリングによるシールからインナーリングによるシールに切り替えることにより、寸法精度に劣る容器に適用された場合にも確実に密封性を確保できる。
またプラスチックキャップがTEバンドを有していても、シールブレイクが確実にブリッジブレイクよりも後になり、優れたTE性を発現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一部を構成する容器口部の一例を示す側面図である。
図2】本発明の他部を構成するキャップの一例の半側面図及び半断面図である。
図3図2に示すキャップの一例を図1に示した、ベント付螺子部を有する容器口部に適用した状態を示す側断面図である。
図4図3に示した、キャップが適用された容器口部において、開封のためにキャップを旋回し、アウターシールによるシールの解除が開始される状態を示す側断面図である。
図5図4に示した状態から、更にキャップを旋回し、キャップスカート部とTEバンドをつなぐ弱化部が破断された状態を示す側断面図である。
図6図5に示した状態から、更にキャップを旋回し、インナーリングによるシールの解除が開始される状態を示す側断面図である。
図7】本発明の他部を構成するキャップのインナーリング及びアウターリングの好適な寸法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組み合わせにあっては、その一部を構成するキャップのアウターリングが、キャップ内方に向かって傾斜した形状を有し、閉栓状態では少なくともアウターリングにより密封性が維持されていると共に、アウターリングによるシールが解除された後のインナーリングのシールポイントが、本発明の他部を構成する容器口部の螺子部の始点よりも上方に位置することが重要な特徴である。
前述したとおり、容器口部の螺子部にベント部を形成するために、螺子部に切欠きが形成された部分に対応する容器口部内面には凹凸が形成される可能性があるが、本発明においては、閉栓状態において、インナーリングが当該凹凸が形成される可能性のある容器口部内面部分に当接していても、アウターリングにより密封性が確保されている。その一方、アウターリングによる密封が解除された後には、インナーリングが容器口部の螺子部の始点よりも上方の位置、すなわち凹凸形成のおそれのない容器口部内面でシールポイントが形成される。従って、螺子部に切欠きが形成された部分に対応する容器口部内面に凹凸が形成されていたとしても確実な密封性が確保されている。
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明を説明する。
図1は、本発明の一部を構成する樹脂製容器の口部の一例を示す側面図である。容器口部1の螺子部2には、上段の螺子部2a及び下段の螺子部2bにそれぞれ切欠き3a,3bが設けられて軸方向に延びるベント部3Aを形成している。この容器口部には、図示されたベント部3A,3B以外にも、図示されていないベント部が2つあり、合計4つのベント部が形成されている。このような容器口部においては、容器口部外面に螺子部による凸部、切欠きによる凹部が容器の成形と同時に形成されており、螺子部の凸部に対応する容器口部が肉厚となり、ひけが大きく、容器口部内面は内径が大きくなりやすく、逆に切欠きの凹部に対応する容器口部は凸部と比べ肉薄となり、ひけが小さく、容器口部内面は内径が小さくなりやすいことから、切欠きに対応する容器口部内面近傍には凹凸ができやすい傾向がある。
またこの容器口部の先端付近外面には、容器成形の際に生じるパーティングラインに伴う段差5が形成されている。
また容器口部下部には、キャップのTEバンド内面に形成されるフラップ片と係合するための係合用突起6が形成されている。
【0014】
図2は、本発明の他部を構成するプラスチックキャップの一例を示す図であり、右半分が側面図、左半分が側断面図である。
全体を10で示すラスチックキャップは、頂板部11及びこの頂板部11の周縁から垂下するスカート部12から成るキャップ本体10aと、このキャップ本体10aと弱化部17を介して一体に成形されたTEバンド20から成っている。頂板部11には、容器口部1の内面1aと接触して密封性を確保するインナーリング13、容器口部の外面1bと接触するアウターリング14、インナーリング13とアウターリング14の間に形成され、インナーリング13の付け根部外方に位置する、容器口部先端1cと接触するコンタクトリング15が形成されている。またスカート部12には、容器口部に形成された螺子部2と係合する螺子部16が形成されている。TEバンド20の内面には、下端から上方に延びる複数のフラップ片21が形成されている。
【0015】
図3は、図2に示したプラスチックキャップを図1に示した容器口部に適用した状態を示す側断面図である。
本発明の他部を構成するプラスチックキャップにおいては、アウターリング14の内面及び外面が、キャップ内方に向かって内面が傾斜した形状を有していることから、図3に示すように、容器口部外面1bを外側から抱き込むように圧着した状態になっており、アウターリング14の内面下端の最内径部がシールポイントP1となっている。閉栓状態において、容器口部1とキャップ10はアウターリング14によるシールポイントP1で密封性が確保されている。
またこの状態においては、インナーリング13の外側面の最外径部のシールポイントQ1は、アウターリング14のシールポイントP1よりも下方且つ容器口部の上段の螺子部2a付近(具体的には、図1に示す容器口部1の螺子部の始点4から螺子の形成方向に向かって最初に形成される切欠き3aに対応する容器口部内面位置)で容器口部内面1aと密着している。インナーリング13のシールポイントQ1が密着する容器口部内面1aは螺子部2a付近であることから、その表面に凹凸が形成されている可能性があるが、本発明の他部を構成するキャップにおいては、上述したとおり、アウターリング14の内面が内方に向かって傾斜した形状を有していることから、インナーリング13のシールポイントQ1による密封性が確保されない場合でも、この状態においては、アウターリング14のシールポイントP1により密封性が確保されている。更にコンタクトリング15も容器口部先端1cと密着して、キャップはアウターリング14及びコンタクトリング15の少なくとも2点で容器口部と密着して密封性を確保している。
【0016】
図4は、図3に示された閉栓状態から、キャップが開封方向に旋回されてアウターリング14による密封が解除された状態を示す側断面図である。
キャップ10が開封のために旋回され、上方に移動し始めると、まずコンタクトリング15が容器口部先端1cから離れる。次いでアウターリング14のシールポイントP1と容器口部外面1bとの圧着が解除される。この状態において、インナーリング13のシールポイントQ1は容器口部の螺子部の始点2aよりも上方の容器口部内面1aと圧着している。すなわちインナーリング13のシールポイントQ1は、図3の閉栓状態から図4のアウターリング14によるシール解除状態までの開封工程において、上方に移動しながら密着状態を維持すると共に、図4の状態では容器口部内面1aのうち、凹凸が形成されている可能性がある内面領域よりも上方に位置する螺子部非形成領域でシールポイントQ1が圧着していることから、インナーリング13による確実な密封性が確保されている。
また、インナーリング13は頂板部11から直線部13aが垂下しており、次いでインナーリング13の外面が円弧形状に膨出し、シールポイントQ1が容器口部内面1aの形状に対して密着するため、シールポイントQ1に対応するよう直線部13aは弾性的に変形する。
【0017】
図5は、図4に示されたアウターリング14による密封が解除された状態から、更にキャップ10が開封方向に旋回され、キャップ本体10aとTEバンド20をつなぐ弱化部17が破断された状態(ブリッジブレーク)を示す側断面図である。すなわち、開封のためのキャップの旋回が進むと、TEバンド20のフラップ片21が容器口部の係合用突起6に係止し、TEバンド20はキャップ本体10aの上昇に追従できないため、破断可能な弱化部17が破断される(ブリッジブレイク)。この状態においては、アウターリング14は容器口部と接触していないが、インナーリング13のシールポイントQ1が、容器口部の螺子部が形成されていない螺子部非形成領域、すなわち凹凸が形成されない容器口部内面1aと圧着していることから、確実な密封性が維持されている。
【0018】
図6は、図5に示されたTEバンド20の弱化部17が切り離された状態から、更にキャップが開封方向に旋回され、インナーリング13のシールポイントQ1が容器口部内面1aから離れる状態(シールブレイク)を示す側断面図である。インナーリング13のシールポイントQ1が螺子部非形成領域に対応する容器口部内面1aと接触しなくなり、この時点で初めて容器の密封性は解除される(シールブレイク)。
【0019】
本発明の他部を構成するプラスチックキャップにおいて、閉栓状態でアウターリングが密封性を確保できることが重要であり、このようなアウターリングの長さは、適用すべき容器の口部の形状によって異なるが、1.0~1.6mmの長さを有することが好ましい。またアウターリング内面のキャップ内方への傾斜角度(軸方向に対する)は0~10°の範囲にあることが好ましい。
【0020】
本発明の一部を構成する容器口部において、キャップの初期開封における旋回角度は、容器口部及びキャップの螺子部のピッチ等によっても異なるが、一般に流通しているサイズの樹脂製容器においては、前述した図3の閉栓状態から図4の状態までの旋回で120~180度、上下軸方向高さでは0.3~0.6mm、図3の状態から図5の状態までの旋回で190~230度、上下軸方向高さで1.0~1.4mm、図3の状態から図6のシールブレイクの状態に至るまでが270~310度、上下軸方向高さでは1.8~2.2mmの範囲内にある。
ポリエステルボトルとして一般的な容器であるPCO-1881ボトルにおいては、前述した図3の密封状態から図4の状態までの旋回で約150度、図4の状態から図5の状態までの旋回で約60度、図5の状態から図6のシールブレイクの状態に至るまでが約80度に形成されており、螺子部の始点から螺子の形成方向に向かって最初に形成されるベント部30aを形成する最上段の螺子部に形成されるべき切欠きを形成しないことによって、アウターシール解除後からシールブレイクよりも前の旋回角度において、容器内面が平滑に形成され、インナーリングによる密封を確実に行うことができる。
【0021】
インナーリングが当接する容器口部内面の樹脂収縮量差由来の凹凸が発生する箇所は、容器口部上端から1.7mm以上垂下した箇所であり、インナーリングは図3の状態では容器口部上端から1.8~2.2mm垂下した箇所で密着している。図4の状態まで旋回するにはキャップ10が0.3~0.6mm上昇することとなるため、図3から図4の状態まで旋回している途中で容器外面の肉厚差が少なく樹脂収縮率の差が少ない箇所へインナーリング13のシールポイントQ1が移動し圧着する。その後、図4の弱化部が破断するまでキャップ10は旋回され、図3の閉栓状態から1.0~1.4mm上昇する。インナーリング13のシールポイントQ1は図3の閉栓状態から図6のシールブレイクするまでにキャップ10は1.8~2.2mm上昇することとなる。
前述したインナーリングが当接する容器口部内面の樹脂収縮量差由来の凹凸が発生する箇所の上端(最上段の螺子部に形成された切欠きの上端)から容器口部上端までの軸方向長さをW、図3の閉栓状態から図4のアウターリングの密封が解除されるまでのキャップ10の上昇距離をX、図3の閉栓状態から図5の弱化部17が破断する状態までのキャップ10の上昇距離をY、図3の閉栓状態から図6のシールブレイクするまでの距離をZとした場合、Y<ZかつX>Z-Wの関係にある。上記W,X,Y,Zの距離を図7に示す。
【0022】
本発明の他部を構成するプラスチックキャップは、熱可塑性樹脂、例えば低-、中-、或いは高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)等を用い、圧縮成形や射出成形等により成形できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の樹脂製容器口部とプラスチックキャップとの組み合わせは、容器口部内面にひけ等の成形歪による凹凸が生じやすい、容器口部の成形と同時に螺子部及びベント部を構成する切欠きを形成する、ベント機構が形成された樹脂製容器に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 容器口部、2 螺子部、3A,3B ベント部、3a,ab 切欠き、4 螺子部始点、5 段差部、6 係合用突起、10 キャップ、11 頂板部、12 スカート部、13 インナーリング、14 アウターリング、15 コンタクトリング、16 螺子部、17 弱化部、20 TEバンド、21 フラップ片。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7