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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】保護装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/04 20060101AFI20230912BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20230912BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H02H7/04 A
H02H3/16 B
H02H3/00 Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019063903
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020167774
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】山川 寛
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠彰
(72)【発明者】
【氏名】古川 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】長岡 卓也
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-276672(JP,A)
【文献】特開2010-074866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H1/00-3/253
H02H7/00-7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器の中性点とグラウンドとの間に接続された中性点接地抵抗に流れる地絡電流を検出する第1地絡電流検出リレーと、
前記変圧器と母線との間の接続と遮断を切り替える遮断器と、
前記母線に流れる地絡電流を検出する第2地絡電流検出リレーと、
前記第1地絡電流検出リレーの検出結果と前記第2地絡電流検出リレーの検出結果に基づく所定条件を満足した場合に、前記遮断器を開制御する制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記第1地絡電流検出リレーが地絡電流を検出している状態において、前記第2地絡電流検出リレーが地絡電流を検出していない場合に前記所定条件を満足したと判定し、前記遮断器を開制御する
ことを特徴とする保護装置。
【請求項2】
変圧器の中性点とグラウンドとの間に接続された中性点接地抵抗に流れる地絡電流を検出する第1地絡電流検出リレーと、
前記変圧器と母線との間の接続と遮断を切り替える遮断器と、
前記母線に流れる地絡電流を検出する第2地絡電流検出リレーと、
前記第1地絡電流検出リレーの検出結果と前記第2地絡電流検出リレーの検出結果に基づく所定条件を満足した場合に、前記遮断器を開制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記変圧器に前記中性点接地抵抗が接続され、且つ前記第1地絡電流検出リレーが地絡電流を検出した状態において、前記第2地絡電流検出リレーが地絡電流を検出していない場合に前記所定条件を満足したと判定し、前記遮断器を開制御する
ことを特徴とする保護装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保護装置において、
前記制御装置は、前記所定条件を満足した状態が所定期間継続した場合に、前記遮断器を開制御する
ことを特徴とする保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護装置に関し、例えば、電力用変圧器の事故を電気的に検出する保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力系統(例えば、特別高圧系統)における電力用変圧器(以下、単に「変圧器」とも称する。)は、地絡事故時の安全性を向上させるため、二次側(低圧側)のY結線の中性点を接地している。例えば、275kV以上の電力系統の変圧器では、抵抗を介さずに中性点を接地する直接接地方式が採用され、66kV以下の変圧器では、抵抗を介して中性点を接地する抵抗接地方式が採用されることが多い。
【0003】
また、変圧器には、変圧器の事故を電気的に検出する保護装置が取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。この保護装置としては、変圧器の1次側と2次側の電流比に基づいて変圧器の異常の有無を監視する比率差動リレーが知られている。
【0004】
しかしながら、変圧器の中性点が抵抗を介して接地されている側に接続されている系統(抵抗接地系統)で地絡事故が発生した場合、事故電流の大きさが変圧器の定格電流に比べて小さいので、比率差動リレーによって当該地絡事故を検出することは一般的に困難である。このため、変圧器の抵抗接地系統側の地絡事故を検出することを目的として、比率差動リレーよりも高感度に事故検出が可能な地絡方向リレー(DGR:Directional Ground Relay)を抵抗接地系統側に設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-78754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、変電所によっては、2台以上の変圧器を設置し、それらの変圧器を並列に接続して運転する並列運転(並行運転)が行われる場合がある。
【0007】
例えば、66kV以下の変圧器が並列運転される変電所においては、それぞれの変圧器の中性点を抵抗(「中性点接地抵抗」とも称する。)を介して接地することが好ましい。
【0008】
一方で、地絡事故が発生した場合に、地絡電流の大きさによっては、電磁誘導障害が発生する虞がある。そのため、地絡事故の発生時に流れる地絡電流には、系統毎に上限値(許容値)が定められている。
【0009】
上述したように、中性点接地抵抗を全ての変圧器に接続して並列運転させているときに地絡事故が発生した場合、各中性点接地抵抗を経由して地絡電流が流れ、地絡電流の総量が許容値を超える虞がある。そのため、従来、万が一地絡事故が発生したときに地絡電流が許容値を超えないように、並列運転する複数の変圧器のうち一台の変圧器の中性点にのみ中性点接地抵抗を接続して運用せざるを得ない場合があった。
【0010】
しかしながら、中性点接地抵抗が接続された変圧器が中性点接地抵抗が接続されていない変圧器と並列運転を行っているときに地絡事故が起こった場合、事故原因の除去の遅延や停電範囲の拡大を招く虞があることが、本願発明者らの検討により明らかとなった。以下、図を用いて詳細に説明する。
【0011】
図7Aおよび図7Bは、従来の並列運転を行う2台の変圧器を有する変電所の構成例を示す図である。
図7A図7Bに示すように、変電所900は、発電設備(発電所)99から一次側母線98を介して供給された電力を変圧して二次側母線97に供給する2台の変圧器90_1,90_2と、変圧器90_1,90_2毎に対応して設けられた遮断器93および地絡方向リレー(DGR)92と、を備えている。
【0012】
変圧器90_1,90_2は、一次側巻線および二次側巻線がともにY結線(スター結線)された三相2巻線変圧器である。変圧器90_1,90_2は並列運転可能に構成されており、並列運転させる場合には、一方の変圧器にのみ中性点接地抵抗Rを接続し、地絡事故の発生時に流れる地絡電流が許容値を超えないようにしている。図7A図7Bでは、一例として、変圧器90_1が中性点接地抵抗Rを介して接地されている場合が示されている。
【0013】
変圧器90_1側の遮断器93は、変圧器90_1の一次側と一次側母線98との間、変圧器90_1の二次側と二次側母線97との間にそれぞれ接続されている。変圧器90_2側の遮断器93は、変圧器90_2の一次側と一次側母線98との間、変圧器90_2の二次側と二次側母線97との間にそれぞれ接続されている。地絡方向リレー92は、二次側母線97側から変圧器90_1,90_2の二次側に流れる地絡電流をそれぞれ検出したとき、対応する遮断器93をそれぞれ開制御する。
【0014】
ここで、中性点接地抵抗Rが接続されている変圧器90_1と、中性点接地抵抗Rが接続されていない変圧器90_2とが並列運転を行っているときに地絡事故が発生した場合について考える。
【0015】
例えば、図7Aに示すように、中性点接地抵抗Rが接続されていない変圧器90_2の二次側で地絡事故が発生した場合、地絡電流は、グラウンドから、変圧器90_1の二次側の中性点接地抵抗Rおよび二次側母線97を経由して変圧器90_2側の地絡点Eに流れ込む。このため、変圧器90_2側の地絡方向リレー92の電流検出器(変流器)CTによって地絡電流が検出され、当該地絡方向リレー92によって変圧器90_2側の各遮断器93が開(オフ)制御される。これにより、地絡事故が発生した変圧器90_2が母線98および二次側母線97から切り離される。このとき、変圧器90_1側の遮断器93は閉(オン)状態であるので、変圧器90_1から二次側母線97への電力供給が継続される。
【0016】
一方、図7Bに示すように、中性点接地抵抗Rが接続されている変圧器90_1の二次側で地絡事故が発生した場合、地絡電流は、グラウンドから変圧器90_1の二次側の中性点接地抵抗Rを経由して地絡点Eに流れ込むものの、変圧器90_1側の地絡方向リレー92の電流検出器CTが設置されている箇所には流れない。そのため、変圧器90_1側の地絡方向リレー92は、地絡電流を検出することができず、変圧器90_1側の遮断器93の閉(オン)状態が維持される。その結果、地絡電流が流れ続け、事故原因の特定および除去の遅れや停電範囲の拡大を招く虞がある。
【0017】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、複数の変圧器が並列運転される変電所において、地絡事故を確実に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の代表的な実施の形態に係る保護装置は、変圧器の中性点とグラウンドとの間に接続された中性点接地抵抗に流れる地絡電流を検出する第1地絡電流検出リレーと、前記変圧器と母線との間の接続と遮断を切り替える遮断器と、前記母線に流れる地絡電流を検出する第2地絡電流検出リレーと、前記第1地絡電流検出リレーの検出結果と前記第2地絡電流検出リレーの検出結果に基づく所定条件を満足した場合に、前記遮断器を開制御する制御装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る探査方法によれば、複数の変圧器が並列運転される変電所において、地絡事故を確実に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る保護装置を備えた変電所の構成を示す図である。
図2】制御装置の構成例を示す図である。
図3A】各地絡過電流リレーの検出結果に基づく遮断器の制御状態を示す図である。
図3B】中性点接地抵抗の接続の有無を考慮した場合の各地絡過電流リレーの検出結果に基づく遮断器の制御状態を示す図である。
図4】本実施の形態に係る保護装置の動作を説明するための図である。
図5】本実施の形態に係る保護装置の動作を説明するための図である。
図6】制御装置の別の構成例を示す図である。
図7A】従来の並列運転を行う2台の変圧器を有する変電所の構成例を示す図である。
図7B】従来の並列運転を行う2台の変圧器を有する変電所の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0022】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る保護装置(10,10_1,10_2)は、変圧器(1,1_1,1_2)の中性点とグラウンドとの間に接続された中性点接地抵抗(R)に流れる地絡電流を検出する第1地絡電流検出リレー(4A)と、前記変圧器と母線との間の接続と遮断を切り替える遮断器(3)と、前記母線に流れる地絡電流を検出する第2地絡電流検出リレー(4B/2)と、前記第1地絡電流検出リレーの検出結果と前記第2地絡電流検出リレーの検出結果に基づく所定条件を満足した場合に、前記遮断器を開制御する制御装置(6,6A)と、を備えることを特徴とする。
【0023】
〔2〕上記保護装置において、前記制御装置は、前記第1地絡電流検出リレーが地絡電流を検出している状態において、前記第2地絡電流検出リレーが地絡電流を検出していない場合に前記所定条件を満足したと判定し、前記遮断器を開制御してもよい。
【0024】
〔3〕上記保護装置において、前記制御装置は、前記変圧器に前記中性点接地抵抗が接続され、且つ前記第1地絡電流検出リレーが地絡電流を検出した状態において、前記第2地絡電流検出リレーが地絡電流を検出していない場合に前記所定条件を満足したと判定し、前記遮断器を開制御してもよい。
【0025】
〔4〕上記保護装置において、前記制御装置(6A)は、前記所定条件を満足した状態が所定期間継続した場合に、前記遮断器を開制御してもよい。
【0026】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係る保護装置を備えた変電所の構成を示す図である。
同図に示される変電所100は、複数の変圧器の並列運転が可能な変電設備を備えるとともに、各変圧器において発生した事故を検出するための保護装置を備えている。
【0028】
具体的に、変電所100は、発電設備(発電所)9から一次側母線8を介して供給された電力を変圧して二次側母線7に供給する複数の変圧器1_1~1_n(nは2以上の整数)と、保護装置10_1~10_nとを備えている。
【0029】
なお、以下の説明では、変電所100が二台の変圧器1_1,1_2(n=2)を備え、変圧器1_1,1_2毎に保護装置10_1,10_2が設置される場合を例にとり説明するが、変圧器の台数(n)は特に制限されない。
また、変圧器1_1と変圧器1_2について、特に区別しない場合には、サフィックスを省略して「変圧器1」と表記する。保護装置10_1と保護装置10_2についても同様に、「保護装置10」と表記する。
【0030】
変圧器1_1,1_2は、電力用変圧器であって、例えば、一次巻線および二次巻線がそれぞれY結線(スター結線)された三相2巻線変圧器である。例えば、変圧器1_1,1_2の一次側の定格電圧は154kVであり、二次側の定格電圧は66kVである。
【0031】
変圧器1_1,1_2は並列運転可能に構成されている。変圧器1_1,1_2を並列運転させる場合には、地絡事故の発生時の地絡電流が許容値を超えないようにするために、一方の変圧器の二次側の中性点に中性点接地抵抗Rが接続される。本実施の形態では、変圧器1_1,1_2毎に中性点接地抵抗Rが設けられ、各中性点接地抵抗Rは、例えばスイッチ等により、変圧器1_1,1_2の二次側の中性点とグラウンドとの間に接続可能に構成されている。ここでは、一例として、変圧器1_1の二次側が中性点接地抵抗Rを介して接地されているものとする。
【0032】
保護装置10_1,10_2は、変圧器1_1,1_2において発生した地絡事故を検出するための装置である。保護装置10_1,10_2は、変圧器1_1,1_2毎に設けられている。
なお、保護装置10_1と保護装置10_2とは、同一の構成であるため、代表して保護装置10_1について、具体的に説明する。
【0033】
図1に示すように、保護装置10_1は、遮断器(CB:Circuit Breaker)3、地絡電流検出リレー4A,4B、地絡方向リレー(DGR)2、および制御装置(CNTR)6を有している。
【0034】
遮断器3は、変圧器1_1と母線との間の接続と遮断を切り替える装置である。図1に示されるように、遮断器3は、変圧器1_1の一次側と一次側母線8との間、変圧器1_1の二次側と二次側母線7との間に、それぞれ接続されている。通常時においては、遮断器3は閉状態となり、変圧器1_1の一次側と一次側母線8とが接続され、変圧器1_1の二次側と二次側母線7とが接続される。
【0035】
遮断器3は、制御装置6および地絡方向リレー2からの制御信号によって開制御(オフ)される。制御装置6からの制御信号と地絡方向リレー2からの制御信号の少なくとも一方が“開(オフ)制御”を指示する信号である場合に、開(遮断)状態となり、変圧器1_1を一次側母線7,8からそれぞれ切り離す。
【0036】
地絡電流検出リレー4A,4Bは、母線に流れる過電流を検出する装置である。地絡電流検出リレー4A,4Bは、例えば、地絡過電流リレー(OCGR:Over Current Ground Relay)である。以下、地絡電流検出リレー4A,4Bを「地絡過電流リレー4A,4B」とも称する。
【0037】
第1地絡電流検出リレーとしての地絡過電流リレー(OCGR)4Aは、変圧器1_1の中性点とグラウンドとの間に接続された中性点接地抵抗Rに流れる地絡電流を検出する装置である。具体的に、地絡過電流リレー4Aは、変圧器1_1の二次側の中性点とグラウンドとの間の中性点接地抵抗Rを通る経路に設置された電流検出器CT1によって、中性点接地抵抗Rに流れる地絡電流(地絡電流の向きは不問)が検出された場合に、その検出結果を制御装置6に出力する。
【0038】
第2地絡電流検出リレーとしての地絡過電流リレー(OCGR)4Bは、二次側母線7と変圧器1_1の間に流れる地絡電流を検出する装置である。具体的に、地絡過電流リレー4Bは、上述した遮断器3と二次側母線7とを接続する電線に設置された電流検出器CT2によって、二次側母線7側から、または二次側母線7側に向かって流れる地絡電流(地絡電流の向きは不問)が検出された場合に、その検出結果を制御装置6に出力する。
【0039】
地絡方向リレー(DGR)2は、二次側母線7側から変圧器1_1側に流れる地絡電流を検出した場合に、遮断器3を開制御する。具体的に、地絡方向リレー2は、遮断器3と二次側母線7とを接続する電線に設置された電流検出器(変流器)CT2によって二次側母線7側から変圧器1_1に向かって流れる地絡電流が検出されたとき、各遮断器3を接続状態から遮断状態にするための制御信号を遮断器3に出力する。遮断器3は、地絡方向リレー2からの開制御を指示する制御信号に応じて遮断状態となり、変圧器1_1を一次側母線8および二次側母線7から切り離す。
【0040】
制御装置6は、地絡過電流リレー4Aの検出結果および地絡過電流リレー4Bの検出結果に基づいて、遮断器3を制御する装置である。
具体的に、制御装置6は、地絡過電流リレー4Aの検出結果と地絡過電流リレー4Bの検出結果とに基づく所定条件を満足した場合に、遮断器3を開制御する。
【0041】
図2は、制御装置6の構成例を示す図である。
図2に示すように、制御装置6は、条件判定部61と信号出力部62とを有する。
条件判定部61は、地絡過電流リレー4Aの検出結果と地絡過電流リレー4Bの検出結果とに基づく所定条件を満足したか否かを判定する機能部である。具体的に、条件判定部61は、地絡過電流リレー4Bが地絡電流を検出していない状態において、地絡過電流リレー4Aが地絡電流を検出した場合に所定条件を満足したと判定し、上記以外の場合に、所定条件を満足していないと判定する。
【0042】
信号出力部62は、条件判定部61の判定結果に基づいて、各遮断器3の開制御するための制御信号を出力する。具体的に、信号出力部62は、条件判定部61が所定条件を満足したと判定した場合に、各遮断器3の開制御(遮断)を指示する制御信号を出力する。
【0043】
ここで、制御装置6は、例えば、CPU等のプロセッサが各種メモリに記憶されたプログラムにしたがってデータ処理を行うプログラム処理装置を含む電子機器によって実現してもよいし、専用ロジック回路等を含む電子機器によって実現してもよく、制御装置6のハードウェア構成は特に制限されない。
【0044】
図3Aは、地絡過電流リレー4A,4Bの検出結果に基づく遮断器3への制御出力を示す図である。同図において、“H”は地絡電流が検出されていることを表し、“L”は地絡電流が検出されていないことを表している。
【0045】
図3Aに示すように、制御装置6は、上述した条件判定部61および信号出力部62により、地絡過電流リレー4Aによって地絡電流が検出され(OCGR4A:H)、且つ地絡過電流リレー4Bによって地絡電流が検出されていない(OCGR4B:L)場合に、各遮断器3を開制御(遮断)して、変圧器1_1を一次側母線8および二次側母線7から切り離す。上記以外の場合には、制御装置6は、制御出力を行わない。すなわち、遮断器3は、閉状態が維持される。
【0046】
なお、制御装置6は、地絡過電流リレー4A,4Bの検出結果に加えて、中性点接地抵抗Rの接続の有無を所定条件に加えてもよい。すなわち、条件判定部61は、変圧器1_1に中性点接地抵抗Rが接続され、且つ地絡過電流リレー4Bが地絡電流を検出していない状態において、地絡過電流リレー4Aが地絡電流を検出した場合に所定条件を満足したと判定する。
【0047】
これによれば、図3Bに示すように、制御装置6は、中性点接地抵抗Rが変圧器1_1の二次側に接続されている状態において、地絡過電流リレー4Aによって地絡電流が検出され(OCGR4A:H)、且つ地絡過電流リレー4Bによって地絡電流が検出されていない(OCGR4B:L)場合に、遮断器3を開制御(遮断)して、変圧器1_1を母線8および送電線7から切り離す。
【0048】
次に、保護装置10の具体的な動作について説明する。
図4図5は、本実施の形態に係る保護装置10の動作を説明するための図である。
【0049】
図4に示すように、変圧器1_1,1_2の並列運転中に、中性点接地抵抗Rが接続された変圧器1_1の二次側で地絡事故が発生した場合を考える。
【0050】
この場合、地絡電流は、図4に示すように、グラウンドから変圧器1_1の二次側の中性点接地抵抗Rを経由して地絡点Eに流れ込む。
このとき、変圧器1_1(保護装置10_1)側では、電流検出器CT1によって地絡電流が検出されるため、地絡過電流リレー4Aは、地絡電流が検出されたことを示す検出結果(H)を制御装置6に出力する。一方で、地絡電流は二次側母線7には流れ込まないため、保護装置10_1側の電流検出器CT2は地絡電流を検出しない。そのため、地絡過電流リレー4Bは、地絡電流が検出されていないこと(L)を制御装置6に出力する。このとき、地絡方向リレー2は、電流検出器CT2によって地絡電流が検出されていないため、開制御(遮断)を指示する制御信号を遮断器3に引き続き出力しない。
【0051】
保護装置10_1側の制御装置6は、地絡過電流リレー4Aによって地絡電流が検出され(検出結果:H)、且つ地絡過電流リレー4Bによって地絡電流が検出されていない(検出結果:L)ことから、所定条件を満足していると判定し、遮断器3を開(オフ)制御する(図3A参照)。これにより、保護装置10_1側の各遮断器3が開制御(遮断)され、地絡事故が発生した変圧器1_1が一次側母線8および二次側母線7から切り離される。
【0052】
一方、変圧器1_2(保護装置10_2)側では、地絡電流が流れないため、保護装置10_2側の各遮断器3の閉状態(接続)が維持され、変圧器1_2から二次側母線7への電力供給が継続される。
【0053】
したがって、保護装置10_1,10_2によれば、図4に示すように複数の変圧器の並列運転中に中性点接地抵抗が接続されている変圧器側において地絡事故が発生した場合であっても、地絡事故が発生した変圧器を一次側母線8および二次側母線7から確実に切り離し、且つ地絡事故が発生していない変圧器から二次側母線7への電力供給を継続することが可能となる。
【0054】
次に、図5に示すように、変圧器1_1,1_2の並列運転中に、中性点接地抵抗Rが接続されていない変圧器1_2の二次側で地絡事故が発生した場合を考える。
【0055】
この場合、地絡電流は、図5に示すように、グラウンドから、変圧器1_1の二次側の中性点接地抵抗R、保護装置10_1側の遮断器3、二次側母線7、および保護装置10_2側の遮断器3を経由して、地絡点Eに流れ込む。
このとき、変圧器1_2(保護装置10_2)側では、電流検出器CT2によって地絡電流が検出されるため、地絡過電流リレー4Bが、地絡電流が検出されたことを示す検出結果(H)を制御装置6に出力する。その一方で、変圧器1_2には中性点接地抵抗Rが接続されていないため、変圧器1_2の中性点を経由して地絡点Eに流れ込む地絡電流は発生しない。そのため、保護装置10_2側の電流検出器CT1によって地絡電流は検出されず、地絡過電流リレー4Aは、地絡電流が検出されていないことを示す検出結果(L)を制御装置6に出力する。保護装置10_2側の制御装置6は、地絡過電流リレー4Aによって地絡電流が検出されず(検出結果:L)、且つ地絡過電流リレー4Bによって地絡電流が検出されている(検出結果:H)ことから、所定条件を満足していないと判定し、遮断器3に対し開制御(遮断)を指示する制御信号を出力しない(図3A参照)。
【0056】
また、図5に示すように、保護装置10_2側の電流検出器CT2は、二次側母線7側から変圧器1_2の二次側に向かって流れる地絡電流を検出する。これにより、保護装置10_2側の地絡方向リレー2が開制御(遮断)を指示する制御信号を保護装置10_2側の各遮断器3に出力する。これにより、保護装置10_2側の各遮断器3が開制御(遮断)され、地絡事故が発生した変圧器1_2を一次側母線8および二次側母線7から切り離すことができる。
【0057】
一方、変圧器1_1(保護装置10_1)側では、電流検出器CT2によって地絡電流が検出されるため、地絡過電流リレー4Bが、地絡電流が検出されたことを示す検出結果(H)を制御装置6に出力する。また、電流検出器CT1によって地絡電流が検出されるため、地絡過電流リレー4Aが、地絡電流が検出されたことを示す検出結果(H)を制御装置6に出力する。保護装置10_1側の制御装置6は、地絡過電流リレー4Aによって地絡電流が検出され(検出結果:H)、且つ地絡過電流リレー4Bによって地絡電流が検出された(検出結果:H)ことから、所定条件を満足していないと判定し、遮断器3の開制御(遮断)を指示する制御信号を出力しない(図3A参照)。
【0058】
また、図5に示すように、保護装置10_1側の電流検出器CT2によって検出される地絡電流は、二次側母線7側から変圧器1_1の二次側に向かって流れる電流ではない。そのため、保護装置10_1側の地絡方向リレー2は、開制御(遮断)を指示する制御信号を出力しない。
これにより、保護装置10_1側の各遮断器3は閉状態(接続)が維持され、変圧器1_1から二次側母線7への電力供給が継続される。
【0059】
したがって、保護装置10_1,10_2によれば、図5に示すように複数の変圧器の並列運転中に中性点接地抵抗が接続されていない変圧器側において地絡事故が発生した場合であっても、地絡事故が発生した変圧器を一次側母線8および二次側母線7から確実に切り離し、且つ地絡事故が発生していない変圧器から二次側母線7への電力供給を継続することが可能となる。
【0060】
以上、本実施の形態に係る保護装置10は、変圧器1の中性点接地抵抗Rに流れる地絡電流を検出する地絡過電流リレー4Aと、変圧器1と電線(二次側母線7)との間の接続と遮断を切り替える遮断器3と、電線(二次側母線7)に流れる地絡電流を検出する地絡過電流リレー4Bと、地絡過電流リレー4Aの検出結果と地絡過電流リレー4Bの検出結果とに基づく所定条件を満足した場合に遮断器3を開制御する制御装置6と、を備えている。
【0061】
保護装置10によれば、中性点接地抵抗Rが接続された変圧器1が中性点接地抵抗Rが接続されていない他の変圧器1と並列運転を行っているときに、中性点接地抵抗Rが接続されている変圧器1側で地絡事故が発生した場合であっても、上述したように、地絡事故が発生した変圧器1を一次側母線8および二次側母線7から確実に切り離し、且つ地絡事故が発生していない他の変圧器から二次側母線7への電力供給を継続することが可能となる。
【0062】
具体的に、保護装置10の制御装置6は、地絡過電流リレー4Bが地絡電流を検出していない状態において地絡過電流リレー4Aが地絡電流を検出した場合に所定条件を満足したと判定し、遮断器3を開制御(遮断)する。
【0063】
これによれば、地絡事故が発生していない変圧器を遮断することなく、地絡事故が発生した変圧器のみを確実に遮断することが可能となる。
例えば、仮に、制御装置6が、地絡過電流リレー4Bの検出結果を考慮せず、地絡過電流リレー4Aの検出結果のみに基づいて遮断器3の開閉制御を行う場合について考える。この場合において、例えば、中性点接地抵抗Rが接続されていない変圧器1_2側において地絡事故が発生したとき、上述した図5に示す経路で地絡電流が流れるため、変圧器1_1側の地絡過電流リレー4Aが地絡電流を検出したこと示す検出結果を制御装置6に出力する。制御装置6は、制御装置6から出力された検出結果のみに基づいて、遮断器3を開制御(遮断)する。これにより、地絡事故が発生していない変圧器1_1も一次側母線8および二次側母線7から切り離され、二次側母線7への電力供給が停止してしまう。
【0064】
このように、中性点接地抵抗Rに流れる地絡電流を検出する地絡過電流リレー4Aの検出結果のみに基づいて遮断器3の開制御を行った場合、地絡事故が発生した変圧器1のみならず、地絡事故が発生していない変圧器1も遮断されてしまうため、変電所100から二次側母線7への電力供給が完全に停止してしまう。
【0065】
これに対し、本実施の形態に係る保護装置10によれば、地絡過電流リレー4Aの検出結果のみならず、二次側母線7に流れる地絡電流を検出する地絡過電流リレー4Bの検出結果も考慮して遮断器3の開制御を行うので、地絡事故が発生した変圧器1のみを確実に遮断した上で、地絡事故が発生していない変圧器1から二次側母線7への電力供給を確実に継続することが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態に係る保護装置10において、地絡過電流リレー4A,4Bの検出結果に加えて、中性点接地抵抗Rの接続の有無を、遮断器3の開制御のための所定条件に加えてもよい。すなわち、制御装置6は、変圧器1_1に中性点接地抵抗Rが接続され、且つ地絡過電流リレー4Bが地絡電流を検出していない状態において、地絡過電流リレー4Aが地絡電流を検出した場合に所定条件を満足したと判定し、遮断器3を開制御する。
【0067】
これによれば、中性点接地抵抗Rが接続されていないにも関わらず、地絡過電流リレー4Aが誤検出して、地絡過電流リレー4A,4Bの検出結果に基づく所定条件を満足する状況が発生したとしても、遮断器3が誤って遮断されることを防止することが可能となる。
【0068】
以上、本実施の形態に係る保護装置10によれば、複数の変圧器が並列運転される変電所において地絡事故を確実に検出することが可能となるので、地絡事故が発生した場合に、その事故原因の特定および除去の遅れや停電範囲の拡大を防止することが可能となる。
【0069】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0070】
例えば、上記実施の形態では、地絡電流検出リレー4Bが地絡過電流リレーである場合を例示したが、これに限られない。例えば、地絡電流検出リレー4Bとして、地絡過電流リレーの代わりに地絡方向リレー(DGR)を用いてもよい。例えば、図1において、地絡電流検出リレー4Bとして、地絡過電流リレー(OCGR)に代えて地絡方向リレー(DGR)を設ける。この場合、地絡電流検出リレー4Bとしての地絡方向リレーは、変圧器1_1側から二次側母線7側に流れる地絡電流を検出する。制御装置6は、地絡電流検出リレー4Aとしての地絡過電流リレー(OCGR)の検出結果と地絡電流検出リレー4Bとしての地絡方向リレー(DGR)の検出結果に基づく所定条件を満足した場合に、遮断器3を開制御する。
【0071】
また、上記実施の形態では、変圧器1_1,1_2が三相2巻線変圧器である場合を例示したが、三相3巻線変圧器であってもよい。例えば、変圧器1_1,1_2は、一次巻線および二次巻線がY結線、三次巻線がΔ結線の三相3巻線変圧器であってもよい。この場合も二次巻線側の中性点に中性点接地抵抗Rが接続可能にされる。
【0072】
また、上記実施の形態では、変圧器1_1,1_2の二次側の地絡事故を検出するように保護装置10を構成する場合を例示したが、変圧器1_1,1_2の一次側の地絡事故を検出するように保護装置10を構成してもよい。
【0073】
また、上記実施の形態において、保護装置10は、所定条件を満足した状態が所定期間継続した場合に、遮断器3を開制御(遮断)してもよい。例えば、図6に示す制御装置6Aのように、条件判定部61と信号出力部62との間にタイマ63を更に設けてもよい。タイマ63は、条件判定部61が所定条件を満足したと判定した状態が所定期間、継続した場合に、信号出力部62に対して、各遮断器3の開制御を指示する制御信号を出力させる。
これによれば、例えば地絡事故以外の別の原因で、地絡過電流リレー4A,4Bの検出結果に基づく所定条件を満足する状況が一時的に発生した場合に、遮断器3が誤って開制御されて変圧器1が遮断されてしまうことを防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1,1_1,1_2…変圧器、2…地絡方向リレー(DGR)、3…遮断器、4A…(第1)地絡過電流リレー(OCGR)、4B…(第2)地絡過電流リレー(OCGR)、6,6A…制御装置(CNTR)、7…二次側母線、8…一次側母線、9…発電設備(発電所)、10,10_1~10_n…保護装置、61…条件判定部、62…信号出力部、63…タイマ、100…変電所、CT1,CT2…電流検出器(変流器)、E…地絡点、R…中性点接地抵抗。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B