(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】嵌合式建材パネル
(51)【国際特許分類】
E04D 3/362 20060101AFI20230912BHJP
E04D 3/363 20060101ALI20230912BHJP
E04D 3/365 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E04D3/362 C
E04D3/363 A
E04D3/365 E
(21)【出願番号】P 2019090818
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205120(JP,A)
【文献】実公昭46-002509(JP,Y1)
【文献】特開2011-162995(JP,A)
【文献】特開平11-343706(JP,A)
【文献】特開昭61-057747(JP,A)
【文献】特開平10-096300(JP,A)
【文献】実開平03-078817(JP,U)
【文献】実開平02-134123(JP,U)
【文献】実開昭62-059215(JP,U)
【文献】米国特許第5438810(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
13/00-15/07
E04F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って伸延する一対の長尺縁部とこれら各長尺縁部を挟み込み幅方向に沿って伸延する一対の短尺縁部とによって区画された輪郭形状を有するパネル本体と、該パネル本体の各短尺縁部にそれぞれ設けられた下継手、上継手と、該パネル本体の各長尺縁部のそれぞれに沿って一体連結する上ハゼ、下ハゼとを備え、該下継手を、該パネル本体の水上側に隣接配置する他の建材パネルの上継手に嵌合、引っ掛け、該上継手を、該パネル本体の水下側に隣接配置する他の建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛けてパネル同士を縦方向に接続する一方、該上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する別の建材パネルの下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させてパネル同士を横方向に接続して建築構造物の屋根、壁を構築する嵌合式建材パネルであって、
前記下継手に、該パネル本体の短尺縁部の全域にわたってつながる板状体を設け、
前記上継手に、該パネル本体に面一状態で一体連結する第一の板状体を設け、
該下継手に設けられた板状体は、該パネル本体の水下側に向けて折り返され、水上側に隣接配置する他の建材パネルの上継手との嵌合、引っ掛け空間を区画形成する第一の折り返し片と、該第一の折り返し片の先端部でパネル本体の水上側に向けて折り返された第二の折り返し片とを有し、
該第一の板状体は、その先端部でパネル本体の水上側に向けて折り返されて隣接配置する他の建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛け可能な第三の折り返し片を有し、
前記第一の折り返し片と前記第二の折り返し片との折り返し部分において前記パネル本体の短尺縁部側に膨出されるとともに、前記第一の折り返し片と前記短尺縁部との間に形成される嵌合、引っ掛け空間の入側開口を狭める膨出部を設け、
該第三の折り返し片に、その先端部を内向きに折り返
されるとともに、前記第三の折り返し片と前記下継手との嵌合時に、前記膨出部により前記入側開口が狭まった前記嵌合、引っ掛け空間にスナップ嵌合される返し部を設け、
該第二の折り返し片に、該第二の折り返し片の幅方向の端部につながり、浸入雨水の排出経路を形成する延長片を設けたことを特徴とする嵌合式建材パネル。
【請求項2】
前記下継手は、前記板状体の幅方向の端縁および該上ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の建材パネルの上ハゼに嵌合可能な第一のハゼと、該板状体のもう一方の幅方向の縁部および該下ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の建材パネルの下ハゼに嵌合可能な第二のハゼとを有し、
前記上継手は、前記第一の板状体の幅方向の各端部および前記上ハゼ、下ハゼにそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ、第四のハゼとを有することを特徴とする請求項1に記載した嵌合式建材パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅や事務所、マンション、福祉施設、リゾート施設等の屋根や壁を構築するのに用いて好適な、嵌合式建材パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
嵌合式の建材パネルは、従来、屋根材として広く用いられており、パネル本体の幅方向の端部に設けられた上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する他の建材パネルの下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させることによりパネル同士をつなぎ合わせる施工が行われてきている。しかし、近年では、さらに、パネル本体の長手方向に上継手、下継手を設け、水下側、水上側に隣接配置される建材パネルとの相互間で上継手、下継手をそれぞれ相互に嵌合させてパネル同士をつなぎ合わせる構造の建材パネルも開発されてきており、この点に関する先行技術としては、例えば、特許文献1が参照される。
【0003】
ところで、上記従来の建材パネルは、強風の吹き込みや過大な負圧が作用した場合に、パネルのつなぎ合わせ部分で変形を引き起こすことがないとはいえず未だ改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、とくに、上継手、下継手の強化を図り、つなぎ合わせ部分での変形を確実に回避し得る嵌合式建材パネルを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長手方向に沿って伸延する一対の長尺縁部とこれら各長尺縁部を挟み込み幅方向に沿って伸延する一対の短尺縁部とによって区画された輪郭形状を有するパネル本体と、該パネル本体の各短尺縁部にそれぞれ設けられた下継手、上継手と、該パネル本体の各長尺縁部のそれぞれに沿って一体連結する上ハゼ、下ハゼとを備え、該下継手を、該パネル本体の水上側に隣接配置する他の建材パネルの上継手に嵌合、引っ掛け、該上継手を、該パネル本体の水下側に隣接配置する他の建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛けてパネル同士を縦方向に接続する一方、該上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する別の建材パネルの下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させてパネル同士を横方向に接続して建築構造物の屋根、壁を構築する嵌合式建材パネルであって、
前記下継手に、該パネル本体の短尺縁部の全域にわたってつながる板状体を設け、
前記上継手に、該パネル本体に面一状態で一体連結する第一の板状体を設け、
該下継手に設けられた板状体は、該パネル本体の水下側に向けて折り返され、水上側に隣接配置する他の建材パネルの上継手との嵌合、引っ掛け空間を区画形成する第一の折り返し片と、該第一の折り返し片の先端部でパネル本体の水上側に向けて折り返された第二の折り返し片とを有し、
該第一の板状体は、その先端部でパネル本体の水上側に向けて折り返されて隣接配置する他の建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛け可能な第三の折り返し片を有し、
前記第一の折り返し片と前記第二の折り返し片との折り返し部分において前記パネル本体の短尺縁部側に膨出されるとともに、前記第一折り返し片と前記短尺縁部との間に形成される嵌合、引っ掛け空間の入側開口を狭める膨出部を設け、
該第三の折り返し片に、その先端部を内向きに折り返されるとともに、前記第三の折り返し片と前記下継手との嵌合時に、前記膨出部により前記入側開口が狭まった前記嵌合、引っ掛け空間にスナップ嵌合される返し部を設け、
該第二の折り返し片に、該第二の折り返し片の幅方向の端部につながり、浸入雨水の排出経路を形成する延長片を設けたことを特徴とする嵌合式建材パネルである。
【0007】
上記の構成からなる嵌合式建材パネルにおいて、前記下継手は、前記板状体の幅方向の端縁および該上ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の建材パネルの上ハゼに嵌合可能な第一のハゼと、該板状体のもう一方の幅方向の縁部および該下ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の建材パネルの下ハゼに嵌合可能な第二のハゼとを有し、
前記上継手は、前記第一の板状体の幅方向の各端部および前記上ハゼ、下ハゼにそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ、第四のハゼとを有することが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下継手を、第一の折り返し片と第二の折り返し片とを備えた二重折り構造とし、上継手の第三の折り返し片に返し部を設けたため、その部位の剛性が高まり、強風の吹き込みや過大な負圧が作用しても簡単に変形することがない。
【0009】
また、本発明によれば、第一の折り返し片に、該嵌合空間の入側開口に向けて張り出して該入側開口を狭める膨出部を設け、第三の折り返し片に、その先端部を内向きに折り返した返し部を設けたため、建材パネルを僅かにスライドさせるだけで水下側、水上側に隣接配置する他の建材パネルの下継手、上継手とスナップ嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明にしたがう嵌合式建材パネルの実施の形態をその全体について示した外観斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1のA-A断面を拡大して示した図であり、(b)は、
図1のB-B断面を示した図である。
【
図3】
図1に示した嵌合式建材パネルを下継手側から見た外観斜視図である。
【
図4】下継手を展開状態で示した外観斜視図である。
【
図5】下継手を展開状態で示した外観斜視図である。
【
図7】本発明にしたがう嵌合式建材パネルの他の実施の形態を一部分について示した外観斜視図である。
【
図8】建材パネルのつなぎ合わせ状況を示した断面図である。
【
図9】本発明にしたがう嵌合式建材パネルを縦方向につなぎ合わせる状況を示した図である。
【
図10】本発明にしたがう嵌合式建材パネルを横方向につなぎ合わせる状況を示した図である。
【
図11】本発明にしたがう嵌合式建材パネルの他の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう嵌合式建材パネルの実施の形態をその全体について示した外観斜視図であり、
図2(a)(b)は、
図1のA-A断面、B-B断面をそれぞれ拡大して示した図であり、
図3は、
図1に示した嵌合式建材パネルを下継手側から見た外観斜視図であり、
図4、
図5は、下継手を展開状態で示した外観斜視図であり、
図6は、
図1のC-C断面を示した図である。
【0012】
本発明にしたがう嵌合式建材パネルは、屋根を葺きあげる場合、壁を構築する場合のいずれにおいても、下継手が設けられた側を水上側に向け、上継手が設けられた側を水下側に向けて配置するものとする。
【0013】
建築構造物の屋根、壁を構築するにあたっては、本発明にしたがう建材パネルと同じ構成からなる建材パネルを複数枚用いることを前提としており、隣接配置する他の建材パネル、隣接配配置する別の建材パネルについても本願発明にしたがう建材パネルと同じ構成からなるものを用いる。また、建材パネルを構成する素材としては、厚さ0.2~1.0mm程度になる亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、銅板、アルミニウム板、ステンレス鋼板あるいは、それらの塗装または被覆鋼板等を用いることができる。
【0014】
図1~6における符号1は、パネル本体である。パネル本体1は、長手方向に沿って伸延する一対の長尺縁部1a、1bと、これら長尺縁部1a、1bを挟み込み、幅方向に沿って伸延する一対の短尺縁部1c、1dによって区画された、全体として矩形状をなす輪郭形状を有している。
【0015】
また、2は、パネル本体1の長尺縁部1aに一体連結するとともに、隣接配置する別の建材パネルの下ハゼに嵌合してパネル同士を接続する上ハゼである。
【0016】
上ハゼ2は、長尺縁部1aから立ち上がる傾斜側板2aと、この傾斜側板2aの上端に係止顎部t1を介してつながるとともに、桁方向に隣接配置する別の建材パネルの下ハゼに嵌合可能な内部空間を有する先端先細り形状をなすドーム型の頭部2bと、この頭部2bに係止顎部t2を介して垂下、保持され、傾斜側板2aとの相互間にて下開き開口を形成する傾斜側板2cとから構成されている。上ハゼ2は、頭部2bの側壁に長尺縁部1aに沿って延伸する凹部を設けることが可能であり、これにより、桁方向に隣接配置する別の建材パネルの下ハゼに嵌合させた際に、その相互間で面接触するのを避けて雨水の侵入を防止することができるようになっている。
【0017】
また、3は、パネル本体1の長尺縁部1bに一体連結するとともに、もう一方に隣接配置する別の建材パネルの下ハゼに嵌合してパネル同士を接続する下ハゼである。
【0018】
この下ハゼ3は、長尺縁部1bから立ち上がる側板3aと、この側板3aの上端に係止顎部t3を介してつながるとともに、隣接配置する別の建材パネルの上ハゼに嵌合可能な先端先細り形状をなすドーム型の頭部3bと、この頭部3bに係止顎部t4介して垂下、保持され、側板3aとの相互間にて下開き開口を形成する側板3cと、この側板3cの下端に水平姿勢でもって一体的につながるビス止め片3dから構成されている。
【0019】
係止顎部t1と係止顎部t2とは相互に逆向きに突出していて、両者でもって嵌合させたハゼの引き抜けを防止する。また、係止顎部t3と係止顎部t4とは、上記の係止顎部t1、係止顎部t2と同様に、相互に逆向きになっており、両者でもって嵌合させたハゼの引き抜けを防止する。
【0020】
4は、パネル本体1の短尺縁部1cに設けられた下継手である。この下継手4は、水上側に隣接配置する他の建材パネルの上継手の下側において重ね合わさるものであって、パネル本体1の短尺縁部1cの全域にわたって面一状態でつながる板状体4aと、この板状体4aの幅方向の端縁および上ハゼ2の端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の建材パネルの上ハゼ(上継手の第三のハゼに相当するもの)に嵌合可能な第一のハゼ4bと、該板状体4aのもう一方の幅方向の縁部および下ハゼ3の端部においてつながるとともに水上側に隣接配置する他の建材パネルの下ハゼ(上継手の第四のハゼに相当するもの)に嵌合可能な第二のハゼ4cとから構成されている。第二のハゼ4cの下端には、下ハゼ3のビス止め片3dに同一平面でつながる舌片4dを設けておくことができる。
【0021】
下継手4の板状体4aは、該板状体4aの後端部でパネル本体1の水下側に向けて上向きに折り返され、該板状体4aとの相互間で水上側に隣接配置する他の建材パネルの上継手との嵌合、引っ掛け空間Mを区画形成する第一の折り返し片4a1と、該第一の折り返し片4a1の先端部でパネル本体1の水上側に向けて折り返され、該板状体4aの後端縁を通りこして伸延する第二の折り返し片4a2とを有しており、これにより下継手4は、二重折り構造となりその部位の剛性を高めることができるようになっている。
【0022】
第二の折り返し片4a2は、その中間部分に曲げ加工を施して段下がりをなす断面形状としたものを例として示したが、該第二の折り返し片4a2は、平坦な板状のものを適用することも可能であり、図示のものに限定されない。
【0023】
また、符号5は、第一の折り返し片4a1に設けられた膨出部である。この膨出部5は、嵌合空間Mの入側開口に向けて張り出しており、入側開口を狭めるものであって、第一の折り返し片4a1に曲げ加工を施すことにより形成される。膨出部5を設けることにより水上側に隣接配置する他の建材パネルとつなぎ合わせる際に、その上継手とスナップ嵌合させることができる。
【0024】
また、符号6は、第二の折り返し片4a2の幅方向の端部に連続して設けられ、浸入雨水の排出経路を形成する延長片である。この延長片6は、第二の折り返し片4a2と同一平面でつながり、その境界Pに設けられた切欠き部6aに第二のハゼ4cを差し入れることにより第二のハゼ4cの外壁側へ周り込むようになっており、切欠き部6aにより形成された舌片6bがビス止め片3dの上に重なるように配置されている。
【0025】
建材パネルのつなぎ合わせ部分において、第二の折り返し片4a2を通ってパネルの内側に雨水が浸入した場合、その浸入雨水は、
図1の矢印に示すように、延長片6によりビス止め片3dへと誘導され、該ビス止め片3dに沿って流下して水下側の端部から排出される。
【0026】
下継手4は、基本的には、ロール成形によりパネル本体1、上ハゼ2、下ハゼ3と同一断面形状に形成したのち、プレス成形による絞り加工を施すことによって成形される。
【0027】
下継手4の幅寸法は、水上側に隣接配置する他の建材パネルとのつなぎ合わせに際して相互に確実に重ね合わせることができるように、水上側に隣接配置する他の建材パネルのパネル本体の幅寸法(実際には上継手の幅寸法)よりも若干広くしておくのが好ましい。
【0028】
また、符号7は、パネル本体1のもう一方の短尺縁部1dに設けられた上継手(パネルの水下側に配置される)である。この上継手7は、パネル本体1と面一状態でつながり、水下側に隣接配置する他の建材パネルの短尺縁部(下継手に相当する部分)の上側において重ね合わさるものである。
【0029】
上継手7は、パネル本体1に面一状態で一体連結する第一の板状体7aと、この第一の板状体7aの幅方向の各端部および上ハゼ2、下ハゼ3にそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ7b、第四のハゼ7cとを備えており、第一の板状体7aには、該第一の板状体7aの先端部でパネル本体1の水上側に向けて下向きに折り返されて隣接配置する他の建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛け可能な第三の折り返し片7dが設けられている。
【0030】
第三の折り返し片7dは、第一の板状体7aに対して180°曲げとなるように折り返しておくことができる。
【0031】
また、符号8は、第三の折り返し片7d、延長片6に設けられた返し部である。この返し部8は、第三の折り返し片7dの先端部を内向きに折り返してパネル本体1との相互間隔を狭めるものである。返し部8を設けることによりその部位の剛性が高められるとともに、水下側に隣接配置する他の建材パネルとつなぎ合わせる際にその下継手とスナップ嵌合させることできる。
【0032】
また、符号9は、第二のハゼ4cに設けられた舌片である。舌片9は、第二のハゼ4cの内壁4c1の後端縁に縦状につながっており、それを外壁4c2側へと折り返し内壁4c1と外壁4c2との間に形成される隙間dを塞ぐことにより浸入雨水の該隙間dからの流れ込みを回避するものである。
【0033】
隙間dには、シール材を充填しておくことができ、また、舌片8の裏面には、シール材を貼着しておくことができる。
【0034】
また、符号10は、第二の折り返し片4a2、延長片6の端縁を、例えば、曲げ加工により折り返すことによって隆起させた堰である。この堰10は、浸入雨水を、第二の折り返し片4a2、延長片6の外側へと流出するのを阻止する機能を有している。なお、延長片6に設けられた堰10の端部は、ビス止め片3dに形成された折り返し部の内側に巻き込まれている。
【0035】
上記の構成からなる嵌合式建材パネルは、下継手4が二重折り構造になっており、その部位が高い強度を有しているため過大な負圧が作用しても変形を起し難く、また、建材パネルのつなぎ合わせ部分から雨水が浸入することがあったとしても、その浸入雨水を、水下側から効率よく排出することができる。
【0036】
なお、
図7に示すように、第一のハゼ4b、第二のハゼ4cおよび第二の折り返し片4a2の外表面には、第一のハゼ4bから第二のハゼ4cに至るまでの間で連続的に伸延する止水用のパッキン11を設けることもでき、建材パネル同士をつなぎ合わせた際にパッキン11を押し潰すことにより屋根あるいは壁の止水性をより一層高めることが可能となる。
【0037】
本発明にしたがう嵌合式建材パネルを用いて屋根を葺きあげる場合において、建材パネルを梁間方向、すなわち、縦方向につなぎ合わせるには、まず、
図8、
図9に示すように、下継手4に水上側において隣接配置する他の建材パネルの上継手7′の第三の折り返し片7d′をスナップ嵌合させて引っ掛けるとともに、下継手4の第一のハゼ4bを、水上側において隣接配置する他の建材パネルの上継手7′の第三のハゼ7b′に、また、下継手4の第二のハゼ4cを、該水上側において隣接配置する他の建材パネルの上継手7′の第四のハゼ7c′にそれぞれ嵌合させる一方、上継手7の第三のハゼ7bを、水下側において隣接配置する他の建材パネルの下継手4′の第一のハゼ4b′に、また、上継手7の第四のハゼ7cを、水下側において隣接配置する他の建材パネルの下継手4′の第二のハゼ4c′に嵌合させればよい。
【0038】
また、本発明にしたがう嵌合式建材パネルを桁方向、すなわち、横方向につなぎ合わせるには、
図10に示すように、下ハゼ3を、隣接配置する別の建材パネルの上ハゼ2′′に嵌合させ、上ハゼ2を、隣接配置する別の建材パネルの下ハゼ3′′に嵌合させればよく、この作業を、縦方向でのつなぎ合わせ作業と並行して行うことにより建築構造物の屋根を葺きあげることができる。
【0039】
建築構造物の壁を構築するに際しても、屋根を葺きあげる場合と同じ手順で建材パネルをつなぎ合わせればよい。
【0040】
とくに、本発明にしたがう建材パネルにおいては、上継手7の第三の折り返し片7dの長さL(
図6参照)を5~20mm程度の短い寸法に、また、下継手4の第一の折り返し片4a1、第一の折り返し片4a1の長さL1(
図2参照)を5~20mm程度の短い寸法に設定できるので、建材パネルをつなぎ合わせる際の建材パネルのスライド量を小さくすることが可能であり、建材パネルのつなぎ合わせ部分に段差が形成されたとしもその段差が目立ち難くく、屋根や壁の美観を保つことができる利点を有している。
【0041】
延長片6については、第二の折り返し片4a2の幅方向の端部に連続して設けられたもの、すなわち、一体連結したもの(同一板)を適用することができるが、
図11に示すように、折り返し部を有する板状体12を、第二の折り返し片4a2の幅方向の端部に取り付けて構成することも可能であり、この場合、板状体12は、堰10およびビス止め片3dの折り返し部の内側に巻き込むことにより固定するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、つなぎ合わせ部分の強度の改善を可能とする嵌合式建材パネルが提供できる。
【符号の説明】
【0043】
1 パネル本体
1a 長尺縁部
1b 長尺縁部
1c 短尺縁部
1d 短尺縁部
2 上ハゼ
2a 傾斜側板
2b 頭部
2c 傾斜側板
3 下ハゼ
3a 側板
3b 頭部
3c 側板
3d ビス止め片
4 下継手
4a 板状体
4b 第一のハゼ
4c 第二のハゼ
4d 舌片
5 膨出部
6 延長片
6a 切欠き部
6b 舌片
7 上継手
7a 第一の板状体
7b 第三のハゼ
7c 第四のハゼ
7d 第三の折り返し片
8 返し部
9 舌片
10 堰
11 止水用のパッキン
12 板状体
M 嵌合、引っ掛け空間