(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】巻線機
(51)【国際特許分類】
H02K 15/095 20060101AFI20230912BHJP
H01F 41/088 20160101ALI20230912BHJP
H01F 41/09 20160101ALI20230912BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H02K15/095
H01F41/088
H01F41/09
H01F41/04 F
(21)【出願番号】P 2019118001
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519231946
【氏名又は名称】森川 渡
(74)【代理人】
【識別番号】100143410
【氏名又は名称】牧野 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】森川 渡
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-237100(JP,A)
【文献】特開2003-061320(JP,A)
【文献】特開平01-311853(JP,A)
【文献】特開平02-250644(JP,A)
【文献】特開2002-057056(JP,A)
【文献】特開2002-353059(JP,A)
【文献】特開2002-153025(JP,A)
【文献】特開2014-147165(JP,A)
【文献】特開2016-046860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/095
H01F 41/088
H01F 41/09
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向に外方に向かって突出する複数の極を有する多極電機子の各極にコイル形成用の線材を巻き付ける巻線を行う巻線機であって、
線材を極に巻線するためのフライヤが、第1フライヤと前記第1フライヤから見て多極電機子側に配置された第2フライヤとからなり、
前記第1フライヤと前記第2フライヤとは、略同軸または平行な回転軸を中心に同期して回転可能に構成されており、
前記第2フライヤは、線材を巻線される極へ案内するメインフォーマを挿通し、前記第1フライヤに対し
てスピンドル軸の軸方向に相対的に移動し、前記メインフォーマを挿抜可能に構成されており、
前記第2フライヤを前記回転軸の軸方向及び軸方向と垂直方向に移動させる移動手段を備え、
巻線を行うときには前記第1フライヤと前記第2フライヤとが同期して回転し、巻線を係止部に対して係止する端末線処理を行うときには前記第2フライヤが単独で駆動することを特徴とする巻線機。
【請求項2】
第1フライヤ装置と、
第2フライヤ装置と、
一端に前記メインフォーマが回転不能に取り付けられ、前記第1フライヤが一体で回転するように取り付けられたスピンドル軸と、
を備えており、
前記第1フライヤ装置は、
前記第1フライヤと、
前記第1フライヤを、前記スピンドル軸を中心軸として回転させる第1フライヤ回転手段と、
前記第1フライヤ回転手段が取り付けられるとともに前記スピンドル軸を軸支し、前記第1フライヤ及び前記メインフォーマを、多極電機子に対し、前記スピンドル軸の軸方向に接近及び離間するように往復運動させる第1フライヤ送り手段と、
を備え、
第2フライヤ装置は、
前記第2フライヤと、
前記第2フライヤにその回転軸から離間して取り付けられており、線材を保持するノズルと、
前記第2フライヤを、前記スピンドル軸または前記スピンドル軸と平行な回転軸を中心として回転させる第2フライヤ回転手段と、
前記第2フライヤを、多極電機子に対し、前記スピンドル軸の軸方向に接近及び離間するように往復運動させる第2フライヤ送り手段と、
を備え、
前記第1フライヤが線材を前記第2フライヤに案内し、前記第1フライヤ及び前記第2フライヤが同期して回転することにより、前記ノズルが前記巻線する極の周囲を旋回する軌跡を描くように駆動して、極への巻線を行い、
前記第2フライヤは、前記第2フライヤから前記メインフォーマが内部から抜け出た状態で、前記係止部に対して相対的に移動することにより端末線処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の巻線機。
【請求項3】
前記第1フライヤ装置は、前記メインフォーマを回転不能に保持する回転防止機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載の巻線機。
【請求項4】
前記係止部は、前記多極電機子の端子に形成され、線材を係止して保持する巻線保持部であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機。
【請求項5】
前記係止部は、前記多極電機子を保持する多極電機子保持装置に、線材を係止して保持する巻線保持部として設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機。
【請求項6】
前記第1フライヤと前記第2フライヤとを複数組備え、
巻線を行うときには各組の第1フライヤと第2フライヤとが同期して回転し、端末線処理を行うときには複数の第2フライヤが単独で駆動する多連式巻線機であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の巻線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径方向に外方に向かって突出する複数の極を有する多極電機子(主としてモータコア)の各極にコイル形成用の線材を巻き付ける巻線を行う巻線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、
図1に示すようなアウターロータ型多極電機子であるモータ多極電機子Cの各多極電機子極部a(極)にコイル形成用の線材Wを巻き付けるために、巻線機が広く使用されている。このような巻線機として、線材を案内するメインフォーマを配置した状態で、線材を保持するノズルが取り付けられたフライヤを回転させ、ノズルが巻線する極aの周囲を旋回する軌跡を描くように駆動して極への巻線を行う、フライヤ駆動式の巻線機が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、発電機用モータ、自動車用ファンモータ、送風機など大型モータの需要が増大している。このような大型モータに用いる多極電機子では、線径が大きい太線が用いられる。太線の巻線工程において、巻線開始時のスタート線W(S)(巻線開始線)、巻線終了時のフィニッシュ線W(F)(巻線終了線)、巻線途中のタップ線W(T)(巻線途中線)が所定の巻きスペースから外れることのないように保持しておくための端末線処理として、ピン状の端子に線材を巻き付けるカラゲ方式(接合は半田付け等)やU字またはV字の溝状部に線材を係止して保持するカシメ方式(接合はヒュージング溶接等)が行われている。例えば、カシメ方式は、スタート線W(S)、フィニッシュ線W(F)、タップ線W(T)を、多極電機子Cに立設される端子tに設けられた端子保持部taに引っ掛ける、または挟み込んで係止することにより行われる。
【0005】
太線は剛性が高いので、太線の巻線を行う巻線機では剛性が高い大型のフライヤを用いる必要がある。端末線処理を行うために大型のフライヤ及び巻線ヘッドを駆動させることは巻線機の大型化、高額化につながるため、従来、端末線処理を行うための専用の端末線処理装置を用意することが必要であった。
【0006】
そこで、本発明は、半径方向に外方に向かって突出する複数の極を有する多極電機子の各極にコイル形成用の線材を巻き付けて多極電機子を作製するための巻線機であって、太線の巻線が可能で、端末線処理を効率よく行うことができる巻線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、半径方向に外方に向かって突出する複数の極を有する多極電機子の各極にコイル形成用の線材を巻き付けて多極電機子を作製するための巻線機であって、線材を極に巻線するためのフライヤが、第1フライヤと前記第1フライヤから見て多極電機子側に配置された第2フライヤとからなり、前記第1フライヤと前記第2フライヤとは、略同軸または平行な回転軸を中心に同期して回転可能に構成されており、前記第2フライヤは、線材を巻線される極へ案内するメインフォーマを挿通し、前記第1フライヤに対してスピンドル軸の軸方向に相対的に移動し、前記メインフォーマを挿抜可能に構成されており、前記第2フライヤを前記回転軸の軸方向及び軸方向と垂直方向に移動させる移動手段を備え、巻線を行うときには前記第1フライヤと前記第2フライヤと同期して回転し、巻線を係止部に対して係止する端末線処理を行うときには前記第2フライヤが単独で駆動する、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の巻線機において、第1フライヤ装置と、第2フライヤ装置と、一端に前記メインフォーマが回転不能に取り付けられ、前記第1フライヤが一体で回転するように取り付けられたスピンドル軸と、を備えており、前記第1フライヤ装置は、前記第1フライヤと、前記第1フライヤを、前記スピンドル軸を中心軸として回転させる第1フライヤ回転手段と、前記第1フライヤ回転手段が取り付けられるとともに前記スピンドル軸を軸支し、前記第1フライヤ及び前記メインフォーマを、多極電機子に対し、前記スピンドル軸の軸方向に接近及び離間するように往復運動させる第1フライヤ送り手段と、を備え、第2フライヤ装置は、前記第2フライヤと、前記第2フライヤにその回転軸から離間して取り付けられており、線材を保持するノズルと、前記第2フライヤを、前記スピンドル軸または前記スピンドル軸と平行な回転軸を中心として回転させる第2フライヤ回転手段と、前記第2フライヤを、多極電機子に対し、前記スピンドル軸の軸方向に接近及び離間するように往復運動させる第2フライヤ送り手段と、を備え、前記第1フライヤが線材を前記第2フライヤに案内し、前記第1フライヤ及び前記第2フライヤが同期して回転することにより、前記ノズルが前記巻線する極の周囲を旋回する軌跡を描くように駆動して、極への巻線を行い、前記第2フライヤは、前記第2フライヤから前記メインフォーマが内部から抜け出た状態で、前記係止部に対して相対的に移動することにより端末線処理を行う、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の巻線機において、前記第1フライヤ装置は、前記メインフォーマを回転不能に保持する回転防止機構を備えた、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機において、前記係止部は、前記多極電機子の端子に形成され、線材を係止して保持する巻線保持部である、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の巻線機において、前記係止部は、前記多極電機子を保持する多極電機子保持装置に、線材を係止して保持する巻線保持部として設けられている、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の巻線機において、前記第1フライヤと前記第2フライヤとを複数組備え、巻線を行うときには各組の第1フライヤと第2フライヤとが同期して回転し、端末線処理を行うときには複数の第2フライヤが単独で駆動する多連式巻線機である、という技術的手段を用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の巻線機によれば、係止部に線材を係止して保持する端末線処理を、メインフォーマを後退させて第2フライヤから抜き出した状態で、第2フライヤを単独で駆動して行うことができる。これにより、第1フライヤを大型のフライヤとして剛性を保ち、太線の巻線を可能とするとともに、第2フライヤを軽量化することができるので、端末線処理を効率よく行うことができるとともに、専用の端末線処理装置が不要となる。発電機用モータ、自動車用ファンモータ、送風機など大型モータでは、線材として太線が用いられるため、本発明の巻線機を好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図7】多連式(2連式)巻線機の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(巻線機の構成)
本発明に係る巻線機について、図を参照して説明する。本発明に係る巻線機は、半径方向に外方に向かって突出する複数の極を有する多極電機子の各極にコイル形成用の線材を巻き付けて多極電機子を作製するための巻線機であって、具体的にはアウターロータ型多極電機子の各極にコイル形成用の線材を巻き付けるための巻線機である。本発明に係る巻線機は、多相モータ用のステータとなるステータ多極電機子(以下、多極電機子という)Cの、多極電機子芯部としての放射状の各多極電機子極部a(極)に対し、線材Wの巻線工程を行う。なお、以下の説明においては、
図1中で多極電機子に対しスピンドル軸の軸方向に接近する方向を前進方向、離間する方向を後退方向、
図1中でスピンドル軸の軸方向に垂直方向で、上昇、下降する方向をそれぞれ上方向、下方向という。
【0016】
巻線機Mは、第1フライヤ装置1、第2フライヤ装置2、上下送り装置3、多極電機子保持装置4、スピンドル軸5、巻線ヘッド6、固定ベース7、サイドフォーマ8、図示しない線材Wの供給手段、制御装置を備えている。
【0017】
第1フライヤ装置1は、第1フライヤ10、第1フライヤ回転用モータ11、第1フライヤ送り用モータ12、を備えている。
【0018】
第1フライヤ10は、線材Wを送るための線材送りリール10aと、線材Wを引き出して第2フライヤ20に案内するための案内部10bと、第1タイミングプーリ10c、第2タイミングプーリ10d、タイミングベルト10eを備えている。
【0019】
第1フライヤ10は、スピンドル軸5に固定されている。スピンドル軸5は、第1ベース13にベアリング14を介して支持され、第1ベース13に取り付けられている第1フライヤ回転用モータ11により、プーリ15とタイミングベルト16を介して回転可能に設けられている。これにより、第1フライヤ10は、スピンドル軸5を回転中心として回転可能に支持されており、回転時に動的バランスが取れるように形成されている。また、スピンドル軸5は中空に形成されており、内部に線材Wが挿通される。ここで、第1フライヤ回転手段は、第1フライヤ回転用モータ11、第1ベース13、ベアリング14、プーリ15、タイミングベルト16を備えて構成される。
【0020】
1対の第1タイミングプーリ10cはそれぞれ第1ベース13及び巻線ヘッド6に固定され、第2タイミングプーリ10dはベアリング10fを介して回転可能に第1フライヤ10に取り付けられている。タイミングベルト10eは、第1タイミングプーリ10cと第2タイミングプーリ10dとに、張り渡されている。この構成により、スピンドル軸5が回転しても第2タイミングプーリ10dが回転するだけで、巻線ヘッド6を回転不能に保持することができる。ここで、第1タイミングプーリ10c、第2タイミングプーリ10d、タイミングベルト10eが「メインフォーマを回転不能に保持する回転防止機構」に相当する。
【0021】
第1フライヤ送り用モータ12は、固定ベース7に載置されており、ボールネジ17を介して第1ベース13に接続されている。第1フライヤ送り用モータ12は、第1ベース13を前後方向に移動可能に構成されており、第1フライヤ10及びメインフォーマ60を、多極電機子Cに対し、接近及び離間するように往復運動させることができる。ここで、第1フライヤ送り手段は、第1フライヤ送り用モータ12、第1ベース13、ボールネジ17を備えて構成される。
【0022】
第2フライヤ装置2は、第1フライヤ装置1の前方に配置されており、第2フライヤ20、第2フライヤ回転用モータ21、第2フライヤ送り用モータ22、ノズル23を備えている。
【0023】
第2フライヤ20は、中空の略円筒状に形成されており、先端部外周の1箇所に、多極電機子Cに巻き付けられるべき線材Wが引き出されるノズル23が取付けられている。
【0024】
第2フライヤ20は、第2ベース24にベアリング25を介して支持されており、第2ベース24に取り付けられている第2フライヤ回転用モータ21により、プーリ26とタイミングベルト27を介して回転可能に設けられている。第2フライヤ20は、スピンドル軸5と同軸で回転可能に支持されており、回転時に動的バランスが取れるように形成されている。ここで、第2フライヤ回転手段は、第2フライヤ回転用モータ21、第2ベース24、ベアリング25、プーリ26、タイミングベルト27を備えて構成される。
【0025】
第2ベース24は、第2フライヤ送り用モータ22にボールネジ28を介して接続されており、前後方向に移動可能に構成されている。
【0026】
第2フライヤ送り用モータ22は、上下可動ベース31に載置されており、ボールネジ28を介して第2ベース24に接続されている。第2フライヤ送り用モータ22は、第2ベース24を前後方向に移動可能に構成されており、第2フライヤ20を、多極電機子Cに対し、接近及び離間するように往復運動させることができる。ここで、第2フライヤ送り手段は、第2フライヤ送り用モータ22、第2ベース24、ボールネジ28を備えて構成される。
【0027】
上下送り装置3は、固定ベース7に取り付けられており、フライヤ上下用モータ30、上下可動ベース31、ボールネジ機構32を備えている。フライヤ上下用モータ30は、ボールネジ機構32を介して、第2フライヤ送り用モータ22が載置された上下可動ベース31の下方に接続されている。上下送り装置3は、フライヤ上下用モータ30の駆動により上下可動ベース31を上下方向へ移動させることができる。これにより、第2フライヤ20を多極電機子Cに対して上下方向に位置決めすることができる。つまり、第1フライヤ装置1が上下方向に移動することはなく、第2フライヤ装置2が第1フライヤ装置1とは独立で上下方向に移動可能に構成されている。
【0028】
巻線ヘッド6は、メインフォーマ60がスピンドル軸5と同軸に配置されフォーマベース61に取り付けられ構成されている。
【0029】
メインフォーマ60は、スピンドル軸5の多極電機子C側の端部にベアリング5aを介して取り付けられており、スピンドル軸5の移動により第2フライヤ20に対して前後方向に相対移動し、第2フライヤ20の内側に挿抜可能に構成されている。また、第1フライヤ10とメインフォーマ60とは前後方向には相対的には移動せず、位置関係は変わらない。
【0030】
メインフォーマ60は、前端部に多極電機子Cの1つの多極電機子極部aに被せるための開口を有している。メインフォーマ60は、開閉手段9により開閉される。開閉手段9は、メインフォーマ60を開閉するための開閉軸90、開閉軸移動用モータ91を備えている。
【0031】
開閉軸90は、スピンドル軸5の内部に挿通されている。開閉軸90は開閉軸移動用モータ91によりボールねじ機構92を駆動させスピンドル軸5の軸方向に移動可能に構成される。開閉軸90は、開閉軸移動用モータ91を用いてスピンドル軸5方向に前進または後退することにより、開閉軸端部のテーパ90aを用いてスピンドル軸5の軸線を中心に開閉する。
【0032】
サイドフォーマ8は、図示しない駆動装置により巻線を行う多極電機子極部aの両側の多極電機子極部aに装着可能に構成されている。
【0033】
線材Wの巻線時には、制御装置により第1フライヤ10と第2フライヤ20とを同期させて回転させることができる。
【0034】
巻線機Mは、上記構成を備えているので、メインフォーマ60の前後動作を、第2フライヤ20(ノズル23)の前後動作と独立で制御することができる。例えば、線材Wの巻線時に、第1フライヤ10と第2フライヤ20とを同期させて回転させることができる。また、端子tの巻線保持部taに線材Wを係止して固定する端末線処理を、メインフォーマ60を後退させて第2フライヤ20から抜き出した状態で、第2フライヤ20を単独で駆動して行うことができる。
【0035】
多極電機子保持装置4は、固定ベース7に取り付けられており、多極電機子割出用モータ40、割出回転軸41、多極電機子押え用シリンダ42を備えている。多極電機子割出用モータ40は、固定ベース7に固定される。割出回転軸41は多極電機子割出用モータ40により回転可能に軸着されている。割出回転軸41は、多極電機子Cの下面側を保持し、上面側から多極電機子押え用シリンダ42により押圧して固定することができる。割出回転軸41は、正逆回転する多極電機子割出用モータ40により、1つの多極電機子極部aに対する巻線動作が終る毎に間欠回転して、次の巻線動作を行う多極電機子極部aまで割出回転させる。
【0036】
線材Wの巻線時には、制御装置により第1フライヤ10と第2フライヤ20とを同期させて回転させることができる。また、端末線処理を行うときには制御装置により、第2フライヤ20を単独で駆動することができる。
【0037】
ここで、第2フライヤ送り手段及び上下送り装置3が「第2フライヤ20を回転軸の軸方向及び軸方向と垂直方向に移動させる移動手段」に相当する。
【0038】
(巻線方法)
以下に、巻線機Mを用いて多極電機子Cの多極電機子極部aに巻線し、多極電機子を製造するための線材Wの巻線方法について説明する。
【0039】
まず、ステップS1では、
図3(A)に示すように、多極電機子Cを多極電機子保持装置4の割出回転軸41にセットし、制御装置のスタートスイッチ(図示せず)を操作すると、多極電機子押え用シリンダ42が下降し、多極電機子Cを押圧して固定し、多極電機子割出用モータ40により巻線を行う多極電機子極部aを第2フライヤ20側に配置する。このとき、巻線ヘッド6は、第2フライヤ20の外部に位置するように後退しており、第2フライヤ20のノズル23は、多極電機子Cの端子に対向する位置に配置されている。また、線材Wの一端は、図示しない線クランプ装置により保持されている。
【0040】
図3(B)に示すように、続くステップS2では、第2フライヤ送り用モータ22により第2フライヤ20を多極電機子Cに向かって前進させ、第2フライヤ上下用モータ30により多極電機子Cに対する第2フライヤ20の上下方向の位置決めを行い、端子tに線材Wを係止するための係止位置に移動する。
【0041】
ステップS3では、第2フライヤ回転用モータ21及び第2フライヤ送り用モータ22が協働し、端子tの巻線保持部taに線材Wをスタート線W(S)として係止するように駆動し、端末線処理を行う。
【0042】
ステップS4では、
図4(C)に示すように、第2フライヤ送り用モータ22及び第2フライヤ上下用モータ30が作動し、第2フライヤ20を多極電機子Cの中心に対して位置決めする。
【0043】
ステップS5では、
図4(D)に示すように、第1フライヤ送りモータ12が作動し、フォーマベース61が前進する。そして、開閉軸90によりメインフォーマ60が開口し、メインフォーマ60の開口部が巻線すべき多極電機子極部aに被せられ、その両側の多極電機子極部aにはサイドフォーマ8が装着される。メインフォーマ60は、巻線ヘッド6が、ベアリング5a、第1タイミングプーリ10c、第2タイミングプーリ10d、タイミングベルト10e等により非回転に保持されているため、スピンドル軸5に対して非回転となる。
【0044】
ステップS6では、多極電機子Cに対し、メインフォーマ60を配置した状態で、第2フライヤ回転用モータ21によりノズル23を保持する第2フライヤ20を回転させることにより、ノズル23が多極電機子極部aの断面軸心を回転中心とする円形軌道を描く。ノズル23から引き出される線材Wは、メインフォーマ60により案内されて多極電機子極部aに落とし込まれ、巻き付けられる。このとき、第1フライヤ10は、第1フライヤ回転用モータ11により第2フライヤ20と同期してスピンドル軸5を中心に回転する。なお、第2フライヤ20の回転軸は必ずしもスピンドル軸5と一致しなくてもよい。
【0045】
そして、メインフォーマ60は、第1フライヤ送り用モータ12により、徐々に後退させられ、第1フライヤ10と第2フライヤ20とはともに後退し、第1フライヤ10及び第2フライヤ20の1回転毎に線材Wの略線径1本分を送る。これにより、多極電機子極部aに巻線層が1層形成される。第1フライヤ送り用モータ12により、メインフォーマ60を複数回往復させて、複数の層状に線材Wを巻線することができる。ここで、第2フライヤ20を後退(あるいは前進)させない構成を採用することもできる。
【0046】
1つ目の多極電機子極部aに対する巻線が終了すると、第1フライヤ送り用モータ12が作動し、メインフォーマ60が多極電機子Cから後退する。
【0047】
ステップS7では、多極電機子割出用モータ40が作動し、次に巻線する多極電機子極部aを選択する。
【0048】
ステップS8では、ステップS3-7を設定された回数(n回)繰り返し、n個の多極電機子極部aに巻線する。
【0049】
ステップS9では、
図5(E)に示すように、第1フライヤ送り用モータ12が作動して第1フライヤ10が後退する。そして、ステップS2、S3と同様に、多極電機子割出用モータ40と、第2フライヤ送り用モータ22と、第2フライヤ上下用モータ30と、が、作動し、タップ線W(T)、またはフィニッシュ線W(F)を端末線処理する端末線処理が行われる。これにより、モータの第1相が形成される。
【0050】
ステップS10では、ステップS3-S9を所定回数繰り返し(例えば、3相モータの場合は、U相、V相、W相の3相に対応して3回)、多極電機子Cへの巻線が完了する。
【0051】
例えば、
図1に示すように巻線を行うには、まず、端子t(W-U)にスタート線W(S)を係止した後に、U1→U2→U3→U4の順にU相の巻線を行う。続いて、端子t(U-V)にタップ線W(T)を係止し、V1→V2→V3→V4の順にV相の巻線を行う。そして、端子t(V-W)にタップ線W(T)を係止し、W1→W2→W3→W4の順にW相の巻線を行い、端子t(W-U)にフィニッシュ線W(F)を係止して巻線を終了する。
【0052】
ステップS11では、
図5(F)に示すように、第2フライヤ送り用モータ22と、第2フライヤ上下用モータ30と、が、作動し、第2フライヤ20が後退し、多極電機子押え用シリンダ42が上昇し、多極電機子Cは多極電機子として巻線機Mから取り出される。
【0053】
本発明の巻線機Mで好適に多極電機子を製造可能なモータは、発電機用モータ、自動車用ファンモータ、送風機など多極電機子サイズが大きい、例えば、φ30-200mm程度の大型モータであり、これら大型モータでは、線材Wとして太線が用いられる。ここで、太線とは、代表的な線径として公称導体径が0.5-3.0mm程度のものを例示することができる。また、端子形状は厚さt0.4-1.0mmの板状であるものを例示することができる。
【0054】
図6に、端末線処理の変更例を示す。この変更例では、線材Wを係止して保持する巻線保持部は、多極電機子保持装置4の多極電機子押え用シリンダ42の先端部に設けられている。(図示略:例えば、特開2002-57056号公報のフック部材45と同様の構成)
【0055】
なお、本実施形態では、カシメ方式による端末線処理を行う構成を採用したが、巻線機Mは、カラゲ方式による端末線処理を行う場合にも適用可能である。
【0056】
本発明の巻線機として、複数組のフライヤを備えた多連式巻線機を採用することができる。ここで、当該多連式巻線機は、第1フライヤ10と第2フライヤ20とを複数組備えており、巻線を行うときには各組の第1フライヤと第2フライヤとが同期して回転するように構成されている。
図7に、2つの第1フライヤ10、10に対し2つの第2フライヤ20、20がそれぞれ組をなす2連式の巻線機について、回転手段を中心に示す。第1フライヤ10、10は、第1フライヤ回転用モータ11により、第1フライヤ回転用モータ11に設けられたプーリ15a、それぞれの第1フライヤ10に設けられたプーリ15b、15b、タイミングベルト16を介して連動して回転可能に設けられている。第2フライヤ20、20は、第2フライヤ回転用モータ21により、第2フライヤ回転用モータ21に設けられたプーリ26a、それぞれの第2フライヤ20に設けられたプーリ26b、26b、タイミングベルト27を介して連動して回転可能に設けられている。巻線を行うときには各組の第1フライヤ10と第2フライヤ20とが同期して回転し、端末線処理を行うときには第1フライヤ10は駆動せずに複数の第2フライヤ20が単独で駆動する。このような多連式巻線機によれば、複数個の多極電機子Cを同時に巻線することができるので、効率的な巻線が可能である。ここで、
図7では、第1フライヤ回転用モータ11、第2フライヤ回転用モータ21をそれぞれ1台ずつ備えた構成を示したが、それぞれ複数台備えた構成も採用することができる。また、多連式巻線機は、2連式に限定されるものではない。
【0057】
(実施形態の効果)
本発明の巻線機Mによれば、端末線処理を、メインフォーマ60を後退させて第2フライヤ20から抜き出した状態で、第2フライヤ20を単独で駆動して行うことができる。これにより、第1フライヤ10を大型のフライヤとして剛性を保ち、太線の巻線を可能とするとともに、第2フライヤ20を軽量化することができるので、端末線処理を効率よく行うことができるとともに、専用の端末線処理装置が不要となる。
【符号の説明】
【0058】
1…第1フライヤ装置、
10…第1フライヤ
10a…線材送りリール
10b…案内部
10c…第1タイミングプーリ
10d…第2タイミングプーリ
10e…タイミングベルト
10f…ベアリング
11…第1フライヤ回転用モータ
12…第1フライヤ送り用モータ
13…第1ベース
14…ベアリング
15…プーリ
16…タイミングベルト
17…ボールネジ
2…第2フライヤ装置
20…第2フライヤ
21…第2フライヤ回転用モータ
22…第2フライヤ送り用モータ
23…ノズル
24…第2ベース
25…ベアリング
26…プーリ
27…タイミングベルト
28…ボールネジ
3…上下送り装置(移動装置)
30…フライヤ上下用モータ
31…上下可動ベース
32…ボールネジ機構
4…多極電機子保持装置
40…多極電機子割出用モータ
41…割出回転軸
42…多極電機子押え用シリンダ
5…スピンドル軸、
5a…ベアリング
6…巻線ヘッド
60…メインフォーマ
61…フォーマベース
7…固定ベース
8…サイドフォーマ
9…開閉手段
90…開閉軸
90a…テーパ
91…開閉軸移動用モータ
92…ボールねじ機構
C…多極電機子
a…多極電機子極部(極)
t…端子
ta…巻線保持部
M…巻線機
W…線材