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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/06 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
B26D7/06 C
B26D7/06 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019126134
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021010973
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【弁理士】
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 謙介
(72)【発明者】
【氏名】井本 雅史
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-012778(JP,A)
【文献】特開2005-170617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/01 - 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉のシート(3)を送り出す給紙部(5)と、
前記給紙部(5)から送り出された前記シート(3)を抜き型(4)でプレスすることにより、前記シート(3)を、シート前端のグリッパーマージン部分(3a)と、前記グリッパーマージン部分(3a)の後側に位置する製品部分(3b)および非製品部分(3c)とに切り分けるプレス部(6)と、
前記プレス部(6)の下流側に配置され、前記シート(3)から前記非製品部分(3c)を除去するストリッピング部(7)と、
前記ストリッピング部(7)の下流側に配置され、前記グリッパーマージン部分(3a)から前記製品部分(3b)を分離して取り外すハンマー部(8)と、
前記グリッパーマージン部分(3a)に刺さる複数のスパイクピン(27)を固定したグリッパーバー(20)を、そのグリッパーバー(20)の両端に連結された一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)で、前記プレス部(6)、前記ストリッピング部(7)、前記ハンマー部(8)に順に停止させながら循環移動する間欠搬送装置(22)と、
前記グリッパーバー(20)が前記ハンマー部(8)から前記プレス部(6)に戻る途中で、前記グリッパーバー(20)から前記グリッパーマージン部分(3a)を除去するマージン除去部(28)と、を有する平盤打抜き機(1)に取り付けられる平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置であって、
前記グリッパーバー(20)が前記マージン除去部(28)から前記プレス部(6)に戻る途中の前記グリッパーバー(20)の間欠停止位置(P)で前記グリッパーバー(20)を撮影するグリッパーバー検査カメラ(30)と、
前記グリッパーバー検査カメラ(30)で得られる前記グリッパーバー(20)の画像に基づいて検査を行なうグリッパーバー検査制御部(32)と、
を有し、
前記グリッパーバー検査制御部(32)は、前記グリッパーバー検査カメラ(30)で得られる前記グリッパーバー(20)の画像を、検査前にあらかじめ前記グリッパーバー検査カメラ(30)で前記グリッパーバー(20)を撮影して記憶したマスター画像と比較することで、前記スパイクピン(27)の折損を検出するスパイク折れ検査を行なうように構成されている平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項2】
前記複数のグリッパーバー(20)には、それぞれグリッパーバー識別マーク(38)が付され、
前記グリッパーバー検査制御部(32)は、検査前にあらかじめ複数の前記グリッパーバー(20)を撮影して得られる複数の前記マスター画像を前記グリッパーバー識別マーク(38)に対応して記憶し、前記複数のグリッパーバー(20)を、前記グリッパーバー識別マーク(38)に対応した別々のマスター画像を用いて検査するように構成されている請求項に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項3】
前記グリッパーバー(20)は、前記一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)に両端が連結されたバー部材(25)と、前記バー部材(25)の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、前記バー部材(25)から前記グリッパーバー駆動チェーン(21)の搬送方向後方に突出するスパイクピン固定板(26)と、前記スパイクピン固定板(26)から垂直に立ち上がるように前記スパイクピン固定板(26)に固定された前記スパイクピン(27)とを有し、
前記間欠停止位置(P)にあるグリッパーバー(20)の前記スパイクピン(27)および前記スパイクピン固定板(26)に光を照射する照明装置(31)が設けられ、
前記照明装置(31)は、前記スパイクピン固定板(26)で反射した正反射光(37)が前記グリッパーバー検査カメラ(30)に入射するように前記スパイクピン(27)に対して前記グリッパーバー検査カメラ(30)のある側とは反対側に配置されている請求項1または2に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項4】
前記スパイクピン固定板(26)の前記グリッパーバー検査カメラ(30)で撮影される面が、光沢のある金属面とされている請求項に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項5】
枚葉のシート(3)を送り出す給紙部(5)と、
前記給紙部(5)から送り出された前記シート(3)を抜き型(4)でプレスすることにより、前記シート(3)を、シート前端のグリッパーマージン部分(3a)と、前記グリッパーマージン部分(3a)の後側に位置する製品部分(3b)および非製品部分(3c)とに切り分けるプレス部(6)と、
前記プレス部(6)の下流側に配置され、前記シート(3)から前記非製品部分(3c)を除去するストリッピング部(7)と、
前記ストリッピング部(7)の下流側に配置され、前記グリッパーマージン部分(3a)から前記製品部分(3b)を分離して取り外すハンマー部(8)と、
前記グリッパーマージン部分(3a)に刺さる複数のスパイクピン(27)を固定したグリッパーバー(20)を、そのグリッパーバー(20)の両端に連結された一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)で、前記プレス部(6)、前記ストリッピング部(7)、前記ハンマー部(8)に順に停止させながら循環移動する間欠搬送装置(22)と、
前記グリッパーバー(20)が前記ハンマー部(8)から前記プレス部(6)に戻る途中で、前記グリッパーバー(20)から前記グリッパーマージン部分(3a)を除去するマージン除去部(28)と、を有する平盤打抜き機(1)に取り付けられる平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置であって、
前記グリッパーバー(20)が前記マージン除去部(28)から前記プレス部(6)に戻る途中の前記グリッパーバー(20)の間欠停止位置(P)で前記グリッパーバー(20)を撮影するグリッパーバー検査カメラ(30)と、
前記グリッパーバー検査カメラ(30)で得られる前記グリッパーバー(20)の画像に基づいて検査を行なうグリッパーバー検査制御部(32)と、
を有し、
前記グリッパーバー検査制御部(32)は、前記グリッパーバー検査カメラ(30)で得られる前記グリッパーバー(20)の画像を、検査前にあらかじめ前記グリッパーバー検査カメラ(30)で前記グリッパーバー(20)を撮影して記憶したマスター画像と比較することで、前記マージン除去部(28)で除去しきれずに残った前記グリッパーマージン部分(3a)の破片を検出するマージン残り検査を行なうように構成されている平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項6】
前記複数のグリッパーバー(20)には、それぞれグリッパーバー識別マーク(38)が付され、
前記グリッパーバー検査制御部(32)は、検査前にあらかじめ複数の前記グリッパーバー(20)を撮影して得られる複数の前記マスター画像を前記グリッパーバー識別マーク(38)に対応して記憶し、前記複数のグリッパーバー(20)を、前記グリッパーバー識別マーク(38)に対応した別々のマスター画像を用いて検査するように構成されている請求項に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項7】
前記グリッパーバー(20)は、前記一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)に両端が連結されたバー部材(25)と、前記バー部材(25)の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、前記バー部材(25)から前記グリッパーバー駆動チェーン(21)の搬送方向後方に突出するスパイクピン固定板(26)と、前記スパイクピン固定板(26)から垂直に立ち上がるように前記スパイクピン固定板(26)に固定された前記スパイクピン(27)とを有し、
前記間欠停止位置(P)にあるグリッパーバー(20)の前記スパイクピン(27)および前記スパイクピン固定板(26)に光を照射する照明装置(31)が設けられ、
前記照明装置(31)は、前記スパイクピン固定板(26)で反射した正反射光(37)が前記グリッパーバー検査カメラ(30)に入射するように前記スパイクピン(27)に対して前記グリッパーバー検査カメラ(30)のある側とは反対側に配置されている請求項5または6に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項8】
前記スパイクピン固定板(26)の前記グリッパーバー検査カメラ(30)で撮影される面が、光沢のある金属面とされている請求項に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項9】
枚葉のシート(3)を送り出す給紙部(5)と、
前記給紙部(5)から送り出された前記シート(3)を抜き型(4)でプレスすることにより、前記シート(3)を、シート前端のグリッパーマージン部分(3a)と、前記グリッパーマージン部分(3a)の後側に位置する製品部分(3b)および非製品部分(3c)とに切り分けるプレス部(6)と、
前記プレス部(6)の下流側に配置され、前記シート(3)から前記非製品部分(3c)を除去するストリッピング部(7)と、
前記ストリッピング部(7)の下流側に配置され、前記グリッパーマージン部分(3a)から前記製品部分(3b)を分離して取り外すハンマー部(8)と、
前記グリッパーマージン部分(3a)に刺さる複数のスパイクピン(27)を固定したグリッパーバー(20)を、そのグリッパーバー(20)の両端に連結された一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)で、前記プレス部(6)、前記ストリッピング部(7)、前記ハンマー部(8)に順に停止させながら循環移動する間欠搬送装置(22)と、
前記グリッパーバー(20)が前記ハンマー部(8)から前記プレス部(6)に戻る途中で、前記グリッパーバー(20)から前記グリッパーマージン部分(3a)を除去するマージン除去部(28)と、を有する平盤打抜き機(1)に取り付けられる平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置であって、
前記グリッパーバー(20)が前記マージン除去部(28)から前記プレス部(6)に戻る途中の前記グリッパーバー(20)の間欠停止位置(P)で前記グリッパーバー(20)を撮影するグリッパーバー検査カメラ(30)と、
前記グリッパーバー検査カメラ(30)で得られる前記グリッパーバー(20)の画像に基づいて検査を行なうグリッパーバー検査制御部(32)と、
を有し、
前記グリッパーバー検査制御部(32)は、前記グリッパーバー検査カメラ(30)で得られる前記グリッパーバー(20)の画像に基づいて、前記グリッパーバー(20)の間欠停止位置(P)の基準位置からのずれ量(S)を計測することで、前記グリッパーバー駆動チェーン(21)の伸びの異常を検出するチェーン伸び検査を行なうように構成されている平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項10】
前記グリッパーバー(20)は、前記一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)に両端が連結されたバー部材(25)と、前記バー部材(25)の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、前記バー部材(25)から前記グリッパーバー駆動チェーン(21)の搬送方向後方に突出するスパイクピン固定板(26)と、前記スパイクピン固定板(26)から垂直に立ち上がるように前記スパイクピン固定板(26)に固定された前記スパイクピン(27)とを有し、
前記間欠停止位置(P)にあるグリッパーバー(20)の前記スパイクピン(27)および前記スパイクピン固定板(26)に光を照射する照明装置(31)が設けられ、
前記照明装置(31)は、前記スパイクピン固定板(26)で反射した正反射光(37)が前記グリッパーバー検査カメラ(30)に入射するように前記スパイクピン(27)に対して前記グリッパーバー検査カメラ(30)のある側とは反対側に配置されている請求項に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項11】
前記スパイクピン固定板(26)の前記グリッパーバー検査カメラ(30)で撮影される面が、光沢のある金属面とされている請求項10に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項12】
枚葉のシート(3)を送り出す給紙部(5)と、
前記給紙部(5)から送り出された前記シート(3)を抜き型(4)でプレスすることにより、前記シート(3)を、シート前端のグリッパーマージン部分(3a)と、前記グリッパーマージン部分(3a)の後側に位置する製品部分(3b)および非製品部分(3c)とに切り分けるプレス部(6)と、
前記プレス部(6)の下流側に配置され、前記シート(3)から前記非製品部分(3c)を除去するストリッピング部(7)と、
前記ストリッピング部(7)の下流側に配置され、前記グリッパーマージン部分(3a)から前記製品部分(3b)を分離して取り外すハンマー部(8)と、
前記グリッパーマージン部分(3a)に刺さる複数のスパイクピン(27)を固定したグリッパーバー(20)を、そのグリッパーバー(20)の両端に連結された一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)で、前記プレス部(6)、前記ストリッピング部(7)、前記ハンマー部(8)に順に停止させながら循環移動する間欠搬送装置(22)と、
前記グリッパーバー(20)が前記ハンマー部(8)から前記プレス部(6)に戻る途中で、前記グリッパーバー(20)から前記グリッパーマージン部分(3a)を除去するマージン除去部(28)と、を有する平盤打抜き機(1)に取り付けられる平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置であって、
前記グリッパーバー(20)が前記マージン除去部(28)から前記プレス部(6)に戻る途中の前記グリッパーバー(20)の間欠停止位置(P)で前記グリッパーバー(20)を撮影するグリッパーバー検査カメラ(30)と、
前記グリッパーバー検査カメラ(30)で得られる前記グリッパーバー(20)の画像に基づいて検査を行なうグリッパーバー検査制御部(32)と、
を有し、
前記グリッパーバー(20)は、前記一対のグリッパーバー駆動チェーン(21)に両端が連結されたバー部材(25)と、前記バー部材(25)の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、前記バー部材(25)から前記グリッパーバー駆動チェーン(21)の搬送方向後方に突出するスパイクピン固定板(26)と、前記スパイクピン固定板(26)から垂直に立ち上がるように前記スパイクピン固定板(26)に固定された前記スパイクピン(27)とを有し、
前記間欠停止位置(P)にあるグリッパーバー(20)の前記スパイクピン(27)および前記スパイクピン固定板(26)に光を照射する照明装置(31)が設けられ、
前記照明装置(31)は、前記スパイクピン固定板(26)で反射した正反射光(37)が前記グリッパーバー検査カメラ(30)に入射するように前記スパイクピン(27)に対して前記グリッパーバー検査カメラ(30)のある側とは反対側に配置されている平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【請求項13】
前記スパイクピン固定板(26)の前記グリッパーバー検査カメラ(30)で撮影される面が、光沢のある金属面とされている請求項12に記載の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
段ボールシート等のシートを抜き型でプレスし、所定形状の製品を得る平盤打抜き機が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の平盤打抜き機は、シートの搬送方向に沿って上流側から下流側に向かって順に、給紙部、プレス部、ストリッピング部、ハンマー部を有する。給紙部から送り出されたシートは、プレス部において、抜き型でプレスされることにより、シート前端のグリッパーマージン部分と、グリッパーマージン部分の後側に位置する製品部分および非製品部分とに切り分けられ、その後、プレス部の下流側に位置するストリッピング部において、シートから非製品部分が除去され、その後、ストリッピング部の下流側に位置するハンマー部において、グリッパーマージン部分から製品部分が分離して取り出される。
【0004】
また、特許文献1の平盤打抜き機は、給紙部から送り出されたシートを、上記のプレス部、ストリッピング部、ハンマー部に順に搬送するための装置として、グリッパーマージン部分に刺さる複数のスパイクピンを固定したグリッパーバーを、そのグリッパーバーの両端に連結された一対のグリッパーバー駆動チェーンで、プレス部、ストリッピング部、ハンマー部に順に停止させながら循環移動する間欠搬送装置を有する。また、この平盤打抜き機には、グリッパーバーがハンマー部からプレス部に戻る途中で、グリッパーバーからグリッパーマージン部分を除去するマージン除去部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-127412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者は、上記構成の平盤打抜き機を用い、多数の製品を生産したときに、スパイクピンの折れた部分や、シートのグリッパーマージン部分の破片が製品に混入する問題に接した。
【0007】
すなわち、平盤打抜き機は、シートの高速かつ正確な間欠搬送を可能とするために、シートを保持するグリッパーバーに、シート前端のグリッパーマージン部分に刺さるスパイクピンを用いている。そして、このスパイクピンが、金属疲労等により折損する場合があり、このとき、スパイクピンの折れた部分が製品に混入するおそれがある。また、グリッパーバーがハンマー部からプレス部に戻る途中にマージン除去部が設けられているが、このマージン除去部で、グリッパーバーからグリッパーマージン部分を除去するときに、グリッパーマージン部分がスパイクピンから円滑に抜けずに破れ、グリッパーバーにグリッパーマージン部分の破片が除去しきれずに残ってしまい、その結果、グリッパーマージン部分の破片が製品に混入するおそれもある。このように、スパイクピンの折れた部分やグリッパーマージン部分の破片が製品に混入した場合、製品を出荷する前に実施される検査(金属探知機による検査や、作業者による目視検査など)において、それを発見して除去することができれば良いが、発見することができないおそれもある。
【0008】
そこで、本願の発明者は、スパイクピンが金属疲労等により折損したときや、グリッパーマージン部分の破片がマージン除去部で除去しきれずにグリッパーバーに残ってしまったときに、それを即座に検出することができないかを検討した。
【0009】
その結果、発明者は、平盤打抜き機のグリッパーバーが循環して移動する経路のうち、グリッパーバーがグリッパーマージン部分を保持しない部位において、グリッパーバーの状態をカメラで検査すれば、スパイクピンが金属疲労等により折損したときや、グリッパーマージン部分の破片がマージン除去部で除去しきれずにグリッパーバーに残ってしまったとき等に、それを検出することが可能となるという着想を得た。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、スパイクピンが金属疲労等により折損したときや、グリッパーマージン部分の破片がマージン除去部で除去しきれずにグリッパーバーに残ってしまったときなど、平盤打抜き機のグリッパーバーの状態に異変があるときに、それを検出することが可能な平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明では、以下の構成の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置を提供する。
すなわち、枚葉のシートを送り出す給紙部と、
前記給紙部から送り出された前記シートを抜き型でプレスすることにより、前記シートを、シート前端のグリッパーマージン部分と、前記グリッパーマージン部分の後側に位置する製品部分および非製品部分とに切り分けるプレス部と、
前記プレス部の下流側に配置され、前記シートから前記非製品部分を除去するストリッピング部と、
前記ストリッピング部の下流側に配置され、前記グリッパーマージン部分から前記製品部分を分離して落とすハンマー部と、
前記グリッパーマージン部分に刺さる複数のスパイクピンを固定したグリッパーバーを、そのグリッパーバーの両端に連結された一対のグリッパーバー駆動チェーンで、前記プレス部、前記ストリッピング部、前記ハンマー部に順に停止させながら循環移動する間欠搬送装置と、
前記グリッパーバーが前記ハンマー部から前記プレス部に戻る途中で、前記グリッパーバーから前記グリッパーマージン部分を除去するマージン除去部と、を有する平盤打抜き機に取り付けられる平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置であって、
前記グリッパーバーが前記マージン除去部から前記プレス部に戻る途中の前記グリッパーバーの間欠停止位置で前記グリッパーバーを撮影するグリッパーバー検査カメラと、
前記グリッパーバー検査カメラで得られる前記グリッパーバーの画像に基づいて検査を行なうグリッパーバー検査制御部と、
を有する平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置を提供する。
【0012】
このようにすると、グリッパーバーからグリッパーマージン部分が除去された後の間欠停止位置で、グリッパーバー検査カメラがグリッパーバーを撮影し、そのグリッパーバー検査カメラの撮影により得られたグリッパーバーの画像に基づいて検査を行なうので、平盤打抜き機のグリッパーバーの状態を検査することが可能である。
【0013】
前記グリッパーバー検査制御部は、前記グリッパーバー検査カメラで得られる前記グリッパーバーの画像を、検査前にあらかじめ前記グリッパーバー検査カメラで前記グリッパーバーを撮影して記憶したマスター画像と比較することで、前記スパイクピンの折損を検出するスパイク折れ検査を行なうように構成することができる。
【0014】
このようにすると、スパイクピンが金属疲労等により折損したときに、そのスパイクピンの折損した部分を、グリッパーバー検査カメラで得られるグリッパーバーの画像と、検査前にあらかじめグリッパーバー検査カメラでグリッパーバーを撮影して記憶したマスター画像との差異として検出することが可能である。そのため、スパイクピンが金属疲労等により折損したときに、それを確実に検出することが可能であり、スパイクピンの折れた部分が製品に混入する事故を防止することが可能となる。
【0015】
前記グリッパーバー検査制御部は、前記グリッパーバー検査カメラで得られる前記グリッパーバーの画像を、検査前にあらかじめ前記グリッパーバー検査カメラで前記グリッパーバーを撮影して記憶したマスター画像と比較することで、前記マージン除去部で除去しきれずに残った前記グリッパーマージン部分の破片を検出するマージン残り検査を行なうように構成することができる。
【0016】
このようにすると、マージン除去部においてグリッパーマージン部分がスパイクピンから円滑に抜けずに破れ、グリッパーバーにグリッパーマージン部分の破片が除去しきれずに残ってしまったときに、そのグリッパーマージン部分の破片を、グリッパーバー検査カメラで得られるグリッパーバーの画像と、検査前にあらかじめグリッパーバー検査カメラでグリッパーバーを撮影して記憶したマスター画像との差異として検出することが可能である。そのため、グリッパーマージン部分の破片がマージン除去部で除去しきれずにグリッパーバーに残ってしまったときに、それを確実に検出することが可能であり、グリッパーマージン部分の破片が製品に混入する事故を防止することが可能となる。
【0017】
ここで、前記複数のグリッパーバーに、それぞれグリッパーバー識別マークを付するともに、前記グリッパーバー検査制御部を、検査前にあらかじめ複数の前記グリッパーバーを撮影して得られる複数の前記マスター画像を前記グリッパーバー識別マークに対応して記憶し、前記複数のグリッパーバーを、前記グリッパーバー識別マークに対応した別々のマスター画像を用いて検査するように構成すると好ましい。
【0018】
このようにすると、複数のグリッパーバーを、その各グリッパーバーを撮影して得られる別々のマスター画像に基づいて検査するので、正確かつ安定した検査が可能となる。
【0019】
前記グリッパーバー検査制御部は、前記グリッパーバー検査カメラで得られる前記グリッパーバーの画像に基づいて、前記グリッパーバーの間欠停止位置の基準位置からのずれ量を計測することで、前記グリッパーバー駆動チェーンの伸びの異常を検出するチェーン伸び検査を行なうように構成することができる。
【0020】
このようにすると、グリッパーバー駆動チェーンの伸びが経時的に進行したときに、そのグリッパーバー駆動チェーンの伸びの大きさに応じてグリッパーバーの間欠停止位置が変化し、その間欠停止位置の基準位置からのずれ量が次第に大きくなるので、グリッパーバー検査カメラで得られるグリッパーバーの画像に基づいて、グリッパーバー駆動チェーンの伸びの異常を検出することが可能となる。
【0021】
前記グリッパーバーとして、前記一対のグリッパーバー駆動チェーンに両端が連結されたバー部材と、前記バー部材の長さ方向に間隔をおいて複数設けられ、前記バー部材から前記グリッパーバー駆動チェーンの搬送方向後方に突出するスパイクピン固定板と、前記スパイクピン固定板から垂直に立ち上がるように前記スパイクピン固定板に固定された前記スパイクピンとを有するものを採用する場合、
前記間欠停止位置にあるグリッパーバーの前記スパイクピンおよび前記スパイクピン固定板に光を照射する照明装置を更に設け、
前記照明装置は、前記スパイクピン固定板で反射した正反射光が前記グリッパーバー検査カメラに入射するように前記スパイクピンに対して前記グリッパーバー検査カメラのある側とは反対側に配置すると好ましい。
【0022】
このようにすると、グリッパーバー検査カメラでスパイクピンおよびスパイクピン固定板を撮影したときに、スパイクピンの部分の画像は、照明装置から照射される光が直接届かないスパイクピンの陰側の部分となるので暗くなり、スパイクピン固定板の部分の画像は、照明装置から照射される光の正反射光によって明るくなり、その結果、スパイクピンの部分とスパイクピン固定板の部分とが高いコントラストで区別可能な画像を得ることができる。そのため、正確かつ安定した検査を行なうことが可能となる。
【0023】
このとき、前記スパイクピン固定板の前記グリッパーバー検査カメラで撮影される面を、光沢のある金属面とすると好ましい。
【0024】
このようにすると、照明装置でスパイクピン固定板に光を照射したときの正反射光が特に明るいものとなるため、グリッパーバー検査カメラでスパイクピンおよびスパイクピン固定板を撮影したときに、スパイクピンの部分とスパイクピン固定板の部分とが特に高いコントラストで区別可能となり、きわめて正確かつ安定した検査を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
この発明の平盤打抜き機のグリッパーバー検査装置は、グリッパーバーからグリッパーマージン部分が除去された後の間欠停止位置で、グリッパーバー検査カメラがグリッパーバーを撮影し、そのグリッパーバー検査カメラの撮影により得られたグリッパーバーの画像に基づいて検査を行なうので、平盤打抜き機のグリッパーバーの状態を検査することが可能である。そのため、スパイクピンが金属疲労等により折損したときや、グリッパーマージン部分の破片がマージン除去部で除去しきれずにグリッパーバーに残ってしまったときなど、平盤打抜き機のグリッパーバーの状態に異変があるときに、それを検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の実施形態の検査装置を組み込んだ平盤打抜き機を示す図
図2図1に示す平盤打抜き機のプレス部でプレスした直後のシートを上側から見た図
図3図1に示す平盤打抜き機の検査装置の近傍の拡大図
図4図3に示す検査装置の右側面図
図5図3に示す検査装置の平面図
図6図3に示す検査装置のグリッパーバー検査カメラの近傍の拡大図
図7図6に示す検査装置のグリッパーバー検査カメラの近傍の平面図
図8図3に示す検査装置の照明装置の近傍の拡大図
図9図4に示すグリッパーバー検査カメラの視野とグリッパーバーとの関係を示す図
図10図1のグリッパーバー検査カメラで撮影して得られるグリッパーバーの画像のスパイクピンおよびスパイクピン固定板の部分を示す図
図11】スパイクピンが折損したときに、図1のグリッパーバー検査カメラで撮影して得られるグリッパーバーの画像のスパイクピンおよびスパイクピン固定板の部分を示す図
図12図10のXII-XII線に対応する位置に沿ってスパイクピンおよびスパイクピン固定板を破断した断面図
図13図11のXIII-XIII線に対応する位置に沿ってスパイクピンおよびスパイクピン固定板を破断した断面図
図14】左側の図は、グリッパーバー駆動チェーンの伸びが進行したときに、図1のグリッパーバー検査カメラで撮影して得られるグリッパーバーの画像のスパイクピンおよびスパイクピン固定板の部分を示す図であり、右側の図は、グリッパーバー駆動チェーンの伸びが進行する前に、図1のグリッパーバー検査カメラで撮影して得られるグリッパーバーの画像のスパイクピンおよびスパイクピン固定板の部分を示す図
図15】グリッパーマージン部分の破片が除去されずにグリッパーバーに残った状態を図8に対応して示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に、この発明の実施形態の検査装置2を組み込んだ平盤打抜き機1を示す。この平盤打抜き機1は、枚葉の段ボールシート3(以下「シート3」という)を抜き型4でプレスし、所定の輪郭形状をもつ箱ブランクを製品として製造する機械である。平盤打抜き機1は、シート3の搬送方向に沿って上流側から下流側に向かって順に、給紙部5、プレス部6、ストリッピング部7、ハンマー部8を有する。
【0028】
給紙部5は、積み上げた状態の複数のシート3の前端および後端をそれぞれ案内するフロントガイド9およびバックガイド10と、その積み上げた状態のシート3の最下部から1枚ずつシート3を下流側に送り出すシート送り装置11を有する。
【0029】
プレス部6は、シート3の搬送経路を間に挟んで上下に対向する上部プラテン12と下部プラテン13とを有する。上部プラテン12の下面には、シート3を切断する切断刃をもつ抜き型4が着脱可能に取り付けられている。上部プラテン12は、固定の支持とされている。下部プラテン13は、昇降駆動機構14によって昇降可能に支持されている。給紙部5から送り出されたシート3は、プレス部6において抜き型4でプレスされることにより、図2に示すように、シート前端のグリッパーマージン部分3aと、グリッパーマージン部分3aの後側に位置する製品部分3bおよび非製品部分3cとに切り分けられる。
【0030】
図1に示すように、プレス部6の下流側に配置されたストリッピング部7は、シート3の搬送経路を間に挟んで上下に対向するストリッピング上型15とストリッピング下型16とを有する。ストリッピング上型15とストリッピング下型16は、両者でシート3を挟み込む位置と、両者がシート3から離反する位置とで、それぞれ昇降可能に支持されている。プレス部6からストリッピング部7に送り込まれたシート3は、ストリッピング上型15とストリッピング下型16とで挟み込まれることで、図2に示す非製品部分3cが除去される。すなわち、図2に示すように、シート3を構成するグリッパーマージン部分3aと製品部分3bと非製品部分3cのうち、グリッパーマージン部分3aと製品部分3bとを残し、非製品部分3cが分離して除去される。非製品部分3cは、ストリッピング下型16の下方に配置された抜き屑コンベヤ17で外部に排出される。
【0031】
図1に示すように、ストリッピング部7の下流側に配置されたハンマー部8では、グリッパーマージン部分3aから製品部分3bが分離して取り出される。グリッパーマージン部分3aから分離された製品部分3bは昇降コンベヤ18に順に積み上げられ、その後、製品排出コンベヤ19で外部に搬送される。
【0032】
この平盤打抜き機1は、給紙部5から送り出されたシート3を、プレス部6、ストリッピング部7、ハンマー部8に順に搬送するための装置として、シート3のグリッパーマージン部分3a(図2参照)を保持するグリッパーバー20を、そのグリッパーバー20の両端に連結された一対のグリッパーバー駆動チェーン21(図2参照)で、プレス部6、ストリッピング部7、ハンマー部8に順に停止させながら循環移動する間欠搬送装置22を有する。
【0033】
間欠搬送装置22は、プレス部6の上流側でシート3の搬送経路を挟む両側に対向して配置された一対の上流側チェーンホイール23(図では一方のみを示す)と、ハンマー部8の下流側でシート3の搬送経路を挟む両側に対向して配置された一対の下流側チェーンホイール24(図では一方のみを示す)と、一対の上流側チェーンホイール23と一対の下流側チェーンホイール24の間に巻き掛けられた一対のグリッパーバー駆動チェーン21と、一対のグリッパーバー駆動チェーン21の間を架け渡すように一対のグリッパーバー駆動チェーン21に両端が連結されたグリッパーバー20と、上流側チェーンホイール23を回転駆動する図示しない回転駆動機構とを有する。
【0034】
グリッパーバー20は、グリッパーバー駆動チェーン21の長さ方向に一定の間隔をおいて複数(図では8個)設けられている。グリッパーバー20の設置間隔は、平盤打抜き機1におけるシート3の間欠搬送距離(すなわち、プレス部6からストリッピング部7へのシート3の搬送距離。またはストリッピング部7からハンマー部8へのシート3の搬送距離)に等しくなるように設定されている。
【0035】
図2に示すように、グリッパーバー20は、一対のグリッパーバー駆動チェーン21に両端が連結されたバー部材25と、バー部材25の長さ方向に間隔をおいて複数設けられたスパイクピン固定板26と、スパイクピン固定板26から垂直に立ち上がるようにスパイクピン固定板26に固定されたスパイクピン27とを有する。スパイクピン27は、グリッパーマージン部分3aに刺さることでシート3をグリッパーバー20に保持する尖ったピンである。スパイクピン27およびスパイクピン固定板26は、金属(ステンレススチール)で形成されている。各スパイクピン固定板26は、バー部材25からグリッパーバー駆動チェーン21の搬送方向後方に突出するようにバー部材25に固定されている。図1に示すように、各グリッパーバー20は、グリッパーバー駆動チェーン21を間欠駆動することにより、プレス部6、ストリッピング部7、ハンマー部8に順に停止しながら循環移動される。
【0036】
図1に示すように、この平盤打抜き機1には、グリッパーバー20がハンマー部8からプレス部6に戻る途中で、グリッパーバー20からグリッパーマージン部分3aを除去するマージン除去部28が設けられている。マージン除去部28は、ストリッピング部7の上方位置よりも下流側チェーンホイール24の側に配置されている。マージン除去部28は、グリッパーバー20から除去したグリッパーマージン部分3aを外部に排出するマージン排出コンベヤ29を有する。
【0037】
また、この平盤打抜き機1には、グリッパーバー20の状態を検査するグリッパーバー検査装置2として、グリッパーバー20がマージン除去部28からプレス部6に戻る途中のグリッパーバー20の間欠停止位置P(図では上流側チェーンホイール23に入る直前の間欠停止位置)でグリッパーバー20を撮影するグリッパーバー検査カメラ30と、間欠停止位置Pにあるグリッパーバー20のスパイクピン27およびスパイクピン固定板26に光を照射する照明装置31と、グリッパーバー検査カメラ30で得られるグリッパーバー20の画像に基づいて検査を行なうグリッパーバー検査制御部32とが取り付けられている。
【0038】
図3図5に示すように、グリッパーバー検査カメラ30は、平盤打抜き機1のフレーム33から上方に突出するように設けられたカメラ支持台34に固定されている。グリッパーバー検査カメラ30は、グリッパーバー20の長さ方向とその直交方向(グリッパーバー20の搬送方向)とにそれぞれ幅をもつ矩形領域の画像を同時に読み取るエリアカメラである。グリッパーバー検査カメラ30は、グリッパーバー20の長さ方向と平行な方向に間隔をおいて2台配置されている。グリッパーバー検査カメラ30からグリッパーバー20までの距離は、カメラの視野角が60度未満に収まる大きさとなるように(例えば、カメラ1台あたりの視野幅が800mm程度のときは800mm以上)に設定されている。これにより、視野幅の端部に位置するスパイクピン27を安定して撮影することが可能となっている。また、グリッパーバー検査カメラ30は、モノクロカメラを採用することで、高いコントラストをもつ画像を得ることができ、より高い精度をもつ検査が可能となる。
【0039】
図6および図7に示すように、グリッパーバー検査カメラ30は、グリッパーバー20に対する撮影角度を調整可能な角度調整ブラケット35、および、グリッパーバー20からの高さを調整可能な高さ調整ブラケット36とで支持されている。
【0040】
図3に示すように、照明装置31は、グリッパーバー検査カメラ30よりもグリッパーバー20に近い位置に配置されている。照明装置31は、グリッパーバー20の長さ方向に沿って多数のLED発光素子39を内蔵したLED照明である。
【0041】
ここで、照明装置31は、スパイクピン固定板26で反射した正反射光37がグリッパーバー検査カメラ30に入射するようにスパイクピン27に対してグリッパーバー検査カメラ30のある側とは反対側に配置されている。ここで、照明装置31は、スパイクピン27に対してグリッパーバー20の搬送方向前側に配置され、グリッパーバー検査カメラ30は、スパイクピン27に対してグリッパーバー20の搬送方向後側に配置されている。
【0042】
図8に示すように、照明装置31とグリッパーバー検査カメラ30は、照明装置31からスパイクピン固定板26への光の入射角θ1と、スパイクピン固定板26で正反射してグリッパーバー検査カメラ30に入る正反射光37の反射角θ2とが同じになるように配置されている。すなわち、照明装置31からスパイクピン固定板26に入射した光がスパイクピン固定板26の表面で反射するとき、光の入射角θ1と等しい反射角θ2でスパイクピン固定板26から反射する正反射光37と、正反射光37の方向を除く全方向に反射する拡散反射光とが生じる。そして、グリッパーバー検査カメラ30は、照明装置31からスパイクピン固定板26への光の入射角θ1と等しい反射角θ2でスパイクピン固定板26から反射した正反射光37を受光するように正反射光37の延長線上に配置されている。スパイクピン固定板26のグリッパーバー検査カメラ30で撮影される面(図では上面)は、塗装が施されておらず、光沢のある金属面とされている。
【0043】
図9に示すように、各グリッパーバー20には、グリッパーバー検査カメラ30で撮影される領域(ここでは、図8におけるバー部材25の上面)に、グリッパーバー識別マーク38が付されている。グリッパーバー識別マーク38は、グリッパーバー検査カメラ30で撮影されるグリッパーバー識別マーク38の画像に基づいて、そのグリッパーバー識別マーク38が付されたグリッパーバー20が、複数のグリッパーバー20のうちのいずれのグリッパーバー20であるかを識別することができるように、グリッパーバー20ごとに異なったマークとなっている。
【0044】
上記の平盤打抜き機1は、給紙部5が1枚ずつシート3を送り出し、その各シート3をグリッパーバー20で保持し、プレス部6、ストリッピング部7、ハンマー部8に順に停止させながら間欠搬送し、製品を製造する。このとき、ハンマー部8を通過した直後のグリッパーバー20のスパイクピン27は、グリッパーマージン部分3aが刺さった状態となっているが、その後、グリッパーバー20がマージン除去部28を通過するときに、グリッパーバー20のスパイクピン27からグリッパーマージン部分3aが除去される。そのため、マージン除去部28からプレス部6に戻る途中のグリッパーバー20は、グリッパーマージン部分3aを保持しない状態となっている。その後、給紙部5とプレス部6の間に配置された上流側チェーンホイール23の位置で、グリッパーバー20のスパイクピン27が、給紙部5から送り出されたシート3の前端のグリッパーマージン部分3aに刺さってシート3を保持し、再び、プレス部6、ストリッピング部7、ハンマー部8に順に停止させながら間欠搬送する。
【0045】
ところで、スパイクピン27が、金属疲労等により折損する場合があり、このとき、スパイクピン27の折れた部分が製品に混入するおそれがある。また、マージン除去部28で、グリッパーバー20からグリッパーマージン部分3aを除去するときに、グリッパーマージン部分3aがスパイクピン27から円滑に抜けずに破れ、グリッパーバー20にグリッパーマージン部分3aの破片が除去しきれずに残ってしまい、その結果、グリッパーマージン部分3aの破片が製品に混入するおそれもある。このように、スパイクピン27の折れた部分やグリッパーマージン部分3aの破片が製品に混入した場合、製品を出荷する前に実施される検査(金属探知機による検査や、作業者による目視検査など)において、それを発見して除去することができれば良いが、発見することができないおそれもある。
【0046】
そこで、スパイクピン27が金属疲労等により折損したときや、グリッパーマージン部分3aの破片がマージン除去部28で除去しきれずにグリッパーバー20に残ってしまったときに、それを即座に検出することができるように、グリッパーバー検査制御部32は、グリッパーバー検査カメラ30で得られるグリッパーバー20の画像に基づいて検査を行なう。この検査の制御を以下に説明する。
【0047】
[スパイク折れ検査制御]
まず、スパイク折れ検査制御に用いるマスター画像を作成して記憶する。すなわち、検査前にあらかじめグリッパーバー検査カメラ30で複数のグリッパーバー20をそれぞれ撮影し、そのとき得られるグリッパーバー20の画像をマスター画像として記憶する。ここで、マスター画像を取得するにあたっては、給紙部5からシート3を送り出さずに、グリッパーバー20のみを、プレス部6、ストリッピング部7、ハンマー部8に順に停止させながら移動させ、その際に、間欠停止位置Pに順に停止する各グリッパーバー20をグリッパーバー検査カメラ30で順に撮影することで、各グリッパーバー20のマスター画像を得ることが可能である。
【0048】
ここで、マスター画像は、図10に示すように、スパイクピン固定板26の部分が明るくなり、そのスパイクピン固定板26を背景にしてスパイクピン27が暗く写ったものとなる。すなわち、グリッパーバー検査カメラ30でスパイクピン27およびスパイクピン固定板26を撮影したときに、グリッパーバー検査カメラ30は、スパイクピン27の照明装置31で照射される側とは反対側の部分を撮影することになるので、スパイクピン27の部分の画像が、照明装置31から照射される光が直接届かないスパイクピン27の陰側の部分となって暗くなり、一方、スパイクピン固定板26の部分の画像は、照明装置31から照射される光の正反射光37によって明るくなる。これにより、マスター画像は、スパイクピン27の部分とスパイクピン固定板26の部分とが高いコントラストで区別可能に写ったものとなる。
【0049】
次に、給紙部5から1枚ずつシート3を送り出し、製品を製造する。このとき、間欠停止位置Pに順に停止するグリッパーバー20をグリッパーバー検査カメラ30で撮影し、その撮影によって得られるグリッパーバー20の画像を、マスター画像と比較することで、スパイクピン27の折損を検出するスパイク折れ検査を行なう。このとき、図10図12に示すように、スパイクピン27に折損がない正常時は、グリッパーバー20の画像は、スパイクピン27の全体がスパイクピン固定板26を背景にして暗く写ったものとなるが、図11図13に示すように、スパイクピン27が金属疲労等により折損したときは、グリッパーバー20の画像は、本来スパイクピン27によって暗く写るべき部分が明るく写ったものとなる。そのため、製品製造中に、グリッパーバー検査カメラ30で撮影して得られるグリッパーバー20の画像のデータと、マスター画像のデータとの差分を演算する処理を行なうことで、スパイクピン27の折損を検出することが可能となる。スパイクピン27の折損を検出したときは、グリッパーバー検査制御部32に電気的に接続された図示しないブザーやランプや液晶画面などで作業者に異常を報知する。
【0050】
[マージン残り検査制御]
まず、スパイク折れ検査制御のときと同様に、マージン残り検査制御に用いるマスター画像を得る。スパイク折れ検査制御とマージン残り検査制御を同時に並行して行なう場合、マージン残り検査制御に用いるマスター画像は、スパイク折れ検査制御のマスター画像と共通のものを使用することができる。
【0051】
次に、給紙部5から1枚ずつシート3を送り出し、製品を製造する。このとき、間欠停止位置Pに順に停止するグリッパーバー20をグリッパーバー検査カメラ30で撮影し、その撮影によって得られるグリッパーバー20の画像を、マスター画像と比較することで、マージン除去部28で除去しきれずに残ったグリッパーマージン部分3aの破片を検出するマージン残り検査を行なう。このとき、図10図12に示すように、マージン除去部28においてグリッパーマージン部分3aがスパイクから完全に除去されている正常時は、グリッパーバー20の画像は、スパイクピン固定板26の全体が明るく写ったものとなるが、図15に示すように、グリッパーマージン部分3aの破片がマージン除去部28で除去しきれずにグリッパーバー20に残ってしまったときは、スパイクピン固定板26の一部が、グリッパーマージン部分3aの破片で覆われるため、その部分が暗く写ったものとなる。そのため、製品製造中に、グリッパーバー検査カメラ30で撮影して得られるグリッパーバー20の画像のデータと、マスター画像のデータとの差分を演算する処理を行なうことで、グリッパーバー20に残ったグリッパーマージン部分3aの破片を検出することが可能となる。グリッパーマージン部分3aの破片を検出したときは、ブザーや液晶画面などで作業者に異常を報知する。
【0052】
ここで、上記のスパイク折れ検査制御とマージン残り検査制御のいずれにおいても、グリッパーバー検査制御部32は、検査前にあらかじめ複数のグリッパーバー20を撮影して得られる複数のマスター画像をグリッパーバー識別マーク38に対応して記憶し、複数のグリッパーバー20を、グリッパーバー識別マーク38に対応した別々のマスター画像を用いて検査する。
【0053】
[チェーン伸び検査制御]
まず、チェーン伸び検査制御に用いるマスター画像を作成して記憶する。チェーン伸び検査制御に用いるマスター画像は、上記のスパイク折れ検査制御やマージン残り検査制御に用いるマスター画像とは別のものを用いる。すなわち、スパイク折れ検査制御やマージン残り検査制御のマスター画像は、スパイクピン27の折損が検出されたとき等に新たなマスター画像に更新するが、チェーン伸び検査に用いるマスター画像は、スパイクピン27の折損が検出されたときにも更新せずに、新品のグリッパーバー駆動チェーン21の使用を開始した当初のマスター画像、あるいは、グリッパーバー駆動チェーン21の張力調整を行なった直後に得たマスター画像を継続して使用する。
【0054】
次に、給紙部5から1枚ずつシート3を送り出し、製品を製造する。このとき、間欠停止位置Pに順に停止するグリッパーバー20をグリッパーバー検査カメラ30で撮影し、図14に示すように、その撮影によって得られるグリッパーバー20の画像に基づいて、グリッパーバー20の間欠停止位置Pの基準位置(マスター画像を得た時のグリッパーバー20の間欠停止位置P)からのずれ量Sを計測する。図14において、左側に示すスパイクピン固定板26は、グリッパーバー駆動チェーン21の伸びが進行したときにグリッパーバー検査カメラ30で撮影したグリッパーバー20の画像であり、これに対し、右側に示すスパイクピン固定板26は、新品のグリッパーバー駆動チェーン21の使用を開始した当初にグリッパーバー検査カメラ30で撮影したグリッパーバー20の画像(基準位置にあるグリッパーバー20を撮影したマスター画像)である。グリッパーバー20の間欠停止位置Pの基準位置からのずれ量Sは、例えば、画像処理によって、マスター画像におけるスパイクピン固定板26の後端の位置と、検査中に撮影した画像のスパイクピン固定板26の後端の位置とをそれぞれ検出し、その差を演算することで得ることができる。そして、グリッパーバー20の間欠停止位置Pの基準位置からのずれ量Sがあらかじめ設定された許容限界に達したときは、グリッパーバー駆動チェーン21の伸びが異常であると判断し、ブザーや液晶画面などで作業者に異常を報知する。
【0055】
このグリッパーバー検査装置2は、グリッパーバー20からグリッパーマージン部分3aが除去された後の間欠停止位置Pで、グリッパーバー検査カメラ30がグリッパーバー20を撮影し、そのグリッパーバー検査カメラ30の撮影により得られたグリッパーバー20の画像に基づいて検査を行なうので、平盤打抜き機1のグリッパーバー20の状態を検査することが可能である。そのため、スパイクピン27が金属疲労等により折損したときや、グリッパーマージン部分3aの破片がマージン除去部28で除去しきれずにグリッパーバー20に残ってしまったときや、グリッパーバー駆動チェーン21の伸びが過度に大きくなったときなど、平盤打抜き機1のグリッパーバー20の状態に異変があるときに、それを検出することが可能である。
【0056】
また、このグリッパーバー検査装置2は、複数のグリッパーバー20にそれぞれグリッパーバー識別マーク38を付するともに、グリッパーバー検査制御部32を、検査前にあらかじめ複数のグリッパーバー20を撮影して得られる複数のマスター画像をグリッパーバー識別マーク38に対応して記憶し、複数のグリッパーバー20を、グリッパーバー識別マーク38に対応した別々のマスター画像を用いて検査するように構成しているので、複数のグリッパーバー20の形状や寸法等がグリッパーバー20同士でわずかに異なるときでも、正確かつ安定した検査が可能である。
【0057】
また、このグリッパーバー検査装置2は、グリッパーバー検査カメラ30でスパイクピン27およびスパイクピン固定板26を撮影したときに、スパイクピン27の部分の画像は、照明装置31から照射される光が直接届かないスパイクピン27の陰側の部分となるので暗くなり、スパイクピン固定板26の部分の画像は、照明装置31から照射される光の正反射光37によって明るくなり、その結果、スパイクピン27の部分とスパイクピン固定板26の部分とが高いコントラストで区別可能な画像を得ることができる。そのため、正確かつ安定した検査を行なうことが可能である。
【0058】
また、このグリッパーバー検査装置2は、スパイクピン固定板26のグリッパーバー検査カメラ30で撮影される面が、塗装等が施されておらず、光沢のある金属面となっているので、照明装置31でスパイクピン固定板26に光を照射したときの正反射光37が特に明るいものとなる。そのため、グリッパーバー検査カメラ30でスパイクピン27およびスパイクピン固定板26を撮影したときに、スパイクピン27の部分とスパイクピン固定板26の部分とが特に高いコントラストで区別可能となり、きわめて正確かつ安定した検査を行なうことが可能となっている。
【0059】
上記実施形態では、グリッパーバー検査カメラ30によるグリッパーバー20の撮影位置として、グリッパーバー20の上流側チェーンホイール23に入る直前の間欠停止位置Pを採用したが、グリッパーバー20がマージン除去部28からプレス部6に戻る途中の間欠停止位置であれば、グリッパーバー20の上流側チェーンホイール23に入る直前の間欠停止位置Pよりもさらに上流側の間欠停止位置でグリッパーバー20を撮影するようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態では、シート3として段ボールシートを採用したものを挙げて説明したが、板紙からなるシート3の平盤打抜き機にも、この発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 平盤打抜き機
2 グリッパーバー検査装置
3 シート
3a グリッパーマージン部分
3b 製品部分
3c 非製品部分
4 抜き型
5 給紙部
6 プレス部
7 ストリッピング部
8 ハンマー部
20 グリッパーバー
21 グリッパーバー駆動チェーン
22 間欠搬送装置
25 バー部材
26 スパイクピン固定板
27 スパイクピン
28 マージン除去部
30 グリッパーバー検査カメラ
31 照明装置
32 グリッパーバー検査制御部
37 正反射光
38 グリッパーバー識別マーク
P 間欠停止位置
S ずれ量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15