(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04007 20160101AFI20230912BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20230912BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230912BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20230912BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20230912BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20230912BHJP
【FI】
H01M8/04007
H01M8/043
H01M8/00 Z
H01M8/0432
H01M8/04701
F24H1/00 631A
(21)【出願番号】P 2019133773
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-191949(JP,A)
【文献】特開2018-044715(JP,A)
【文献】特開2019-096484(JP,A)
【文献】特開2015-022864(JP,A)
【文献】特開2017-150738(JP,A)
【文献】特開2012-209173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源に連系する通常運転制御と、系統電源から解列して単体で発電を行なう自立運転制御とが実行可能な燃料電池装置であって、
燃料電池
モジュールと、
前記燃料電池モジュールの排熱と熱媒体との間で熱交換を行なう熱交換器と、
前記熱媒体を前記熱交換器とタンクとの間で循環させる循環流路と、
前記循環流路に配設され、自立運転制御実行時に通電される余剰電力消費部材と、
前記循環流路における前記熱交換器よりも上流側に配設されたラジエータと、
前記ラジエータに送風する冷却ファンと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
通常運転時に実行する第1ファン駆動制御と、
自立運転時に実行し、前記第1ファン駆動制御とは駆動パターンの異なる第2ファン駆動制御と、
を含む冷却ファン駆動制御を備える燃料電池装置。
【請求項2】
前記冷却ファン駆動制御は、単位時間当たりの前記冷却ファンの回転数の増加量が、第1ファン駆動制御よりも第2ファン駆動制御の方が大きく設定されている、請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記冷却ファン駆動制御は、単位時間当たりの前記冷却ファンの回転数の減少量が、第1ファン駆動制御よりも第2ファン駆動制御の方が大きく設定されている、請求項1または2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記ラジエータ入口側の熱媒体の温度を検出する第1温度センサと、
前記ラジエータ出口側の熱媒体の温度を検出する第2温度センサと、を備え、
前記制御装置は、
前記第2温度センサの検出温度に基づいて、前記第1ファン駆動制御における前記冷却ファンの回転数を制御し、
前記第1温度センサの検出温度に基づいて、前記第2ファン駆動制御における前記冷却ファンの回転数を制御する、請求項1から3のいずれか1つに記載の燃料電池装置。
【請求項5】
装置外部の気温を検出する第3温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1温度センサで測定された第1の熱媒体温度と前記第3温度センサで測定された外気温とを比較する熱媒温度比較制御を含み、
前記第2ファン駆動制御実行中は、前記熱媒温度比較制御に基づいて、前記冷却ファンの回転数を増減させる、請求項4に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記熱媒温度比較制御に基づいて、前記冷却ファンをオンオフ制御する、請求項5に記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2温度センサで測定された第2の熱媒体温度が、予め定められた第1設定温度未満である場合に、前記冷却ファンの駆動を停止する凍結抑制制御を実行する、請求項4から6のいずれか1つに記載の燃料電池装置。
【請求項8】
前記凍結抑制制御の実行中に、前記第2温度センサで測定された第2の熱媒体温度が、予め定められた第2設定温度を上回った場合、
前記制御装置は、前記凍結抑制制御の実行を停止して、前記第2ファン駆動制御に復帰する、請求項7に記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素を含有する原燃料ガスと酸素含有ガス(空気)とを用いて発電を行ない、電気を外部に供給する。また、燃料電池は、燃料電池のヒートモジュールより生じた排熱を回収して温水としてタンクに貯留し、この温水を直接にまたは間接に外部に供給する、コジェネレーションシステムの一部を構成する。なお、システム全体を燃料電池装置と呼ぶ。
【0003】
熱の回収と温水の貯留(蓄熱ともいう)には、水を熱媒体とする熱循環系が用いられる。熱循環系は、排熱と水とを熱交換させる熱交換器と、温水を貯留する蓄熱タンクと、これらの間で水を循環させる循環流路および循環ポンプと、から構成されている。
【0004】
また、熱循環系は、熱交換器に送給する水の温度を下げるためのラジエータ(冷却器)と、このラジエータに送風する冷却ファンとを備えている。このラジエータは、熱交換器に循環する熱媒体の温度を下げて、いわゆる「水自立運転」に使用される、排ガス中の水分が凝縮した凝縮水を、水蒸気改質用の改質水として効率的に回収する。
【0005】
前述の、熱循環系内に配置されたラジエータに送風する冷却ファンの制御に関し、特許文献1には、ラジエータ冷却ファンの回転を調節する、回転駆動(モータ)のオン/オフデューティ比を、所定の間隔で多段制御することにより、循環する熱媒体の温度を、よりきめ細かく制御し、一定範囲内に維持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃料電池装置は、系統電源に連系した状態で発電を行なう通常運転と、停電時等、系統電源から解列した状態において、燃料電池装置単体で発電を行なう自立運転と呼ばれるモード(仕様)とを備えている。この自立運転の際は、外部の要求負荷の増減に直ちに追従できるよう、定格最大の発電量で運転を継続する。
【0008】
また、燃料電池装置は、前述の自立運転(定格運転)中に、外部の要求負荷が小さいか無くなる場合に備えて、この定格最大の発電量(電流)を内部で消費するための、余剰電力ヒータ等の余剰電力消費部材を備えている。
【0009】
しかしながら、余剰電力消費部材は、その余剰電力で生じる熱を、前述の熱循環系内を循環する熱媒体(水)に伝えるよう配置されているため、自立運転中は、通常運転中に比べて熱循環系が高温になりやすく、水の突沸が発生するおそれがあった。
【0010】
本開示の目的は、熱循環系の耐久性の低下を抑制することができる燃料電池装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の燃料電池装置は、系統電源に連系する通常運転制御と、系統電源から解列して単体で発電を行なう自立運転制御とが実行可能な燃料電池装置である。この燃料電池装置は燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールの排熱と熱媒体との間で熱交換を行なう熱交換器と、前記熱媒体を前記熱交換器とタンクとの間で循環させる循環流路と、前記循環流路に配設され、自立運転制御実行時に通電される余剰電力消費部材と、前記循環流路における前記熱交換器よりも上流側に配設されたラジエータと、前記ラジエータに送風する冷却ファンと、制御装置と、を備える。
前記制御装置は、通常運転時に実行する第1ファン駆動制御と、自立運転時に実行される、前記第1ファン駆動制御とは駆動パターンの異なる第2ファン駆動制御と、を含む冷却ファン駆動制御を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の燃料電池装置によれば、熱循環系の耐久性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
【
図2】外装ケース内の燃料電池装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】第1ファン駆動制御に関するフローチャートである。
【
図4】第2ファン駆動制御に関するフローチャートである。
【
図5】第2ファン駆動制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参考にしながら、実施形態を説明する。
【0015】
図1は、実施形態の燃料電池装置の構成の概略を示すブロック図である。なお、燃料電池装置において汎用的な装置や機器等については、詳しい説明を行なわず、図中への符号の付与のみに留めているものもある。
【0016】
図1に示す実施形態の燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1と、燃料電池モジュール1に接続された熱交換器2と、燃料電池モジュール1から排出される高温度の排ガスの熱および熱エネルギーを熱交換により回収し、温水として貯留する蓄熱タンク3と、排ガス中に含まれる水分が熱交換により凝縮して生成した凝縮水を改質水として貯留する改質水タンク10と、を備える。
【0017】
また、燃料電池装置100は、原燃料ポンプおよび原燃料流路等を含む原燃料供給装置13と、空気ブロアおよび酸素含有ガス流路等を含む酸素含有ガス供給装置14とを備える。さらに、水自立運転を継続するための、凝縮水流路Cと、前述の改質水タンク10と、改質水供給ポンプP2および改質水流路Rを含む改質水供給装置を含む。
【0018】
そして、燃料電池装置100は、先に述べた熱交換器2、蓄熱タンク3、ラジエータ4、ラジエータ4を冷却する冷却ファン5、熱媒循環ポンプP1と、これらを環状に接続する熱媒循環流路Qとからなる、排熱回収用の熱媒循環系(第1のヒートサイクル)を備えている。
【0019】
なお、
図1の中では、蓄熱タンク3の底部出口(導出口)からラジエータ4の入口側までの熱媒体(水)流路を、ラジエータ4の上流側の流路Q1として記載し、ラジエータ4の出口側から熱交換器2を経由して蓄熱タンク3上側の入口(導入口)までの熱媒体流路を、ラジエータ4の下流側の流路Q2として記載している。下流側の流路Q2には、燃料電池の自立運転時に余剰電力の消費に用いられる、余剰電力消費部材(余剰電力ヒータ)6が配設されている。
【0020】
そして、燃料電池装置100は、
図2に示すような、各フレーム41と各外装パネル42とからなるケース40の中に配設されている。このケース40の中の、燃料電池モジュール1および各補機の周りや、流路、配管等には、以下のような制御手段20および電力調整装置(パワーコンディショナ30)や、複数の計測機器やセンサ、または他の補機等が設けられている。
【0021】
燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュール1および各補機の動作を制御する手段として、外部の系統電源および外部負荷と接続あるいは連系するパワーコンディショナ30と、このパワーコンディショナ30と連系して、燃料電池の発電運転を補助する各補機の動作を制御する制御装置20と、この制御装置20に付属または内蔵される記憶装置等を備える。
【0022】
制御装置20は、記憶装置および表示装置(ともに図示省略)と、燃料電池装置100を構成する各種構成部品および各種センサと接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。制御装置20は、それに付属する記憶装置(図示省略)に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。
【0023】
なお、燃料電池装置100は、筐体内外の各部の温度を計測するための、温度センサ、サーミスタ等の温度計測器または温度計を、複数備える。
【0024】
たとえば、
図1に示すように、蓄熱タンク3の低部(底部)の導出口とラジエータ4との間のラジエータ流路Q1(以下、上流側ということがある)には、ラジエータ入口側の第1の熱媒体の温度を検出する第1温度センサとして、サーミスタTM1が配置されている。なお、第1温度センサとして、蓄熱タンク3の底部近傍の低い位置(低部)に配設された、サーミスタTM11を利用する場合もある。このサーミスタTM11も、ラジエータ入口側の第1の熱媒体の温度を検出するものである。
【0025】
また、ラジエータ4の出口側であり、かつ熱交換器2の入口側の水の温度を測定・確認するために、ラジエータ4と熱交換器との間の流路Q2(以下、下流側ということがある)に、サーミスタTM2が配設されている。このサーミスタTM2は、本開示の、ラジエータ出口側の第2の熱媒体の温度を検出する第2温度センサの一例である。なお、第2温度センサとして、熱交換器2の入口に配設されたサーミスタTM12を利用してもよい。このサーミスタTM12も、ラジエータ出口側の第2の熱媒体の温度を検出するものである。
【0026】
さらに、装置(ケース)の周囲の気温を測定するために、外気温測定用のサーミスタTM3が配設されている。
【0027】
なお、後記の実施形態では、第1温度センサである、ラジエータ上流側のサーミスタTM1またはTM11が測定する第1の熱媒体温度(変数)をTH1と記載し、第2温度センサである、ラジエータ下流側のサーミスタTM2またはTM12が測定する第2の熱媒体温度(変数)をTH2と記載する。また、第3温度センサであるサーミスタTM3により測定された外気温(変数)は、後記でTH3と表示する。
【0028】
熱交換器2の出口側から導出された、高温の水の温度を測定・確認するために、下流側循環流路Q2における熱交換器2の出口側(図示上側)に、別途、サーミスタTM4を配設してもよい。
【0029】
前述の制御装置20から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置20およびパワーコンディショナ30と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。各図では、制御装置20と、燃料電池を構成する各装置および各センサとを結ぶ接続線の図示を、省略している場合がある。また、制御装置20が行なう本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。
【0030】
なお、後記の実施形態において、熱媒循環系(ヒートサイクル)に配設された循環ポンプP1および冷却ファン5は、その回転駆動がともにパルス駆動方式のものであり、制御装置20は、これらのパルス駆動のオン/オフデューティ比を増減させ、循環ポンプP1の回転駆動力および吐出量と、冷却ファン5の回転駆動力および送風量とを調節して、熱媒循環流路Q内を流れる熱媒体(水)の温度を制御しているものとする。
【0031】
また、実施形態において、ラジエータ4の冷却ファン5は、ファンの時間あたり回転数を計測して出力する回転センサ部を備えており、この回転センサ部の信号出力が制御装置20に入力されているものとする。すなわち、前述のファンの回転数(回転/分)は、流量計等を備えていない冷却ファン5の送風量を代替する。
【0032】
制御装置20は、燃料電池11の発電運転を、複数の運転モードを適宜切り替えて制御する。複数の運転モードは、通常運転(通常運転制御)および自立運転(自立運転制御)を含んでいる。
【0033】
通常運転は系統電源に連系した状態で燃料電池11の発電を制御するものである。本実施形態では、通常運転時において、制御装置20は熱交換器2に送給する熱媒体の温度を下げて凝縮水を回収できるように、冷却ファン5を第1ファン駆動制御にて制御する。なお、通常運転には、定格の発電電力で運転を行なう定格運転と、外部負荷の変動に応じて出力を変動させる部分負荷運転とを含んでもよい。
【0034】
自立運転は、停電等により系統電源から解列した場合でも、燃料電池11の発電を継続するように制御するものであり、定格発電量で発電を行なう。なお、自立運転時の定格発電を維持するために、熱循環系には余剰電力ヒータ6が設けられており、外部の要求負荷が小さいか無い場合に、内部負荷として、余剰電力ヒータ6に通電される。つまり、内部負荷と外部負荷の総和が定格発電量に相当するように、制御されている。
【0035】
ここで、余剰電力ヒータ6は、余剰電力ヒータ6で生じた熱を、熱循環系内を循環する熱媒体に伝えるように、配設されている。そのため、熱循環系が、自立運転中は、通常運転中に比べて高温になりやすい。それゆえ、本実施形態で、制御装置20は、熱循環系を充分に冷却できるように、冷却ファン5を、第1ファン制御とは駆動パターンの異なる第2ファン駆動制御にて制御する。
【0036】
すなわち、熱循環系が比較的高温になりやすい自立運転時でも、通常運転時とは駆動パターンの異なる、冷却ファン5の駆動(回転数)制御を実行することで、熱媒体を効率よく冷却することができるため、熱循環系の耐久性の低下を抑制することができる。
【0037】
前述の第1ファン駆動制御および第2ファン駆動制御について、フローチャートを用いて説明を行なう。
【0038】
燃料電池が系統電源に連系した状態、すなわち制御装置20が電力調整装置(30)を介して系統電源に連系した状態で「通常運転」を行なっている場合、制御装置20は、
図3に示すフローチャートのように、ラジエータ4出口に配設されたサーミスタTM2(第2温度センサ)、または、ラジエータ4出口下流の、熱交換器2入口に配設されたサーミスタTM12が測定する、第2の熱媒体温度TH2(℃)を基準に、この第2の熱媒体温度TH2が、制御の目標温度であるX2(℃)以上X1(℃)以下の範囲内になるように、冷却ファン5の送風量を制御している。これは、本開示の冷却ファン駆動制御における第1ファン駆動制御の一例である。
【0039】
燃料電池が通常運転状態の場合、
図3に示すように、制御装置20は、制御が〔スタート〕すると、〔ステップ1〕(以下、「ステップ」を「S」と略す)において、ラジエータ4出口(低温側)のサーミスタTM2が測定する第2の熱媒体温度TH2が、予め定められた、目標上限温度X1を超えるか否かを確認する。なお、制御開始時の冷却ファン5の駆動デューティ比は0%である。
【0040】
〔S1〕において、第2の熱媒体温度TH2が上限温度X1を超える[YES]の場合、制御装置20は、〔S2〕~〔S5〕において、回転駆動(モータ)のオン/オフデューティ比を、予め設定されているR1(%)増加させる。
【0041】
具体的には、〔S2〕において、サーミスタTM3(第3温度センサ)が測定する外気温TH3(℃)が、前述の第2の熱媒体温度TH2より低いことを確認した後、〔S3〕の判定において、冷却ファン5の駆動デューティ比が100%未満、すなわち全速回転状態でなければ、制御装置20は、ファン駆動のデューティ比をR1増加させて、冷却ファン5の送風量を増加させる。なお、増加するファン駆動のデューティ比R1(%)は、冷却ファン5の能力等応じて適宜設定できる。R1は、たとえば10~20%の範囲内の小さな値である。
【0042】
また、制御装置20は、第2の熱媒体温度TH2が、上限温度X1以下になるか、あるいは、冷却ファン5の駆動デューティ比が100%(全速駆動)に達するまで、〔S1〕~〔S5〕のループを繰り返す。
【0043】
一方、〔S1〕において、第2の熱媒体温度TH2が上限温度X1以下の[NO]の場合、制御装置20は、〔S6〕~〔S9〕において、回転駆動(モータ)のオン/オフデューティ比を、予め設定されているR2(%)減少させる。
【0044】
具体的には、〔S6〕において、第2の熱媒体温度TH2が下限温度X2を下回っているか否かを確認した後、下回っていれば、〔S7〕の判定において、ファンの駆動デューティ比が0%より大きい、すなわちファンが停止状態でないことを確認する。停止状態でないことが確認できれば、ファン駆動のデューティ比をR2減少させて、冷却ファン5の送風量を減少させる。なお、減少させるファン駆動のデューティ比R2は、冷却ファン5の能力等応じて適宜設定できる。R2は、たとえば10~20%の範囲内の小さな値である。
【0045】
制御装置20は、第2の熱媒体温度TH2が、下限温度X2以上か、あるいは、冷却ファン5の駆動デューティ比が0%(ファン停止状態)に達するまで、〔S1〕と、〔S6〕~〔S9〕のループを繰り返す。
【0046】
以上のように、本実施形態において、通常運転時は、冷却ファン5の回転駆動のオン/オフデューティ比を比較的緩やかに増減させる。つまり、冷却ファン5の回転数を増加させる際、単位時間当たりの回転数の増加量を小さくしており、同様に、冷却ファン5の回転数を減少させる際、単位時間当たりの回転数の減少量を小さくしている。
【0047】
これにより、循環する熱媒体の温度を、よりきめ細かく、一定範囲内(X2≦TH2≦X1)に維持できることができる。なお、上限温度X1と下限温度X2とは、燃料電池モジュール1の定格発電量や熱交換器2の熱交換効率に基づいて、充分な凝縮水を回収できる温度に適宜設定すればよい。
【0048】
燃料電池が系統電源から解列して、単体で「自立運転」を行なっている場合、制御装置20は、
図4に示すフローチャートのように、ラジエータ4入口に配設されたサーミスタTM1(第1温度センサ)、または、ラジエータ4入口上流側の、蓄熱タンク3内の低部に配設されたサーミスタTM11が測定する、第1の熱媒体温度TH1(℃)と、サーミスタTM3(第3温度センサ)が測定する外気温TH3と、に基づいて、冷却ファン5の送風量を制御する。これは、本開示の冷却ファン駆動制御における第2ファン駆動制御の一例である。
【0049】
制御装置20は、制御が〔スタート〕すると、〔S11〕において、ラジエータ4入口側の第1の熱媒体温度TH1が、〔外気温TH3+Y〕℃を上回る温度に達したか否かを確認する。なお、制御開始時の冷却ファン5の駆動デューティ比は0%である。
【0050】
〔S11〕において、第1の熱媒体温度TH1が、〔外気温TH3+Y〕℃を上回る温度に達する[YES]の場合、制御装置20は、続く〔S12〕において、ファン駆動のデューティ比をR3(%)増加させて、冷却ファン5の送風量を増加させる。
【0051】
なお、ファン駆動のデューティ比の増加量R3(%)は、第1ファン駆動制御における冷却ファンの増加量R1(%)よりも大きければよく、冷却ファン5の能力等応じて適宜設定できる。また、外気温TH3に付加されるY℃は、たとえば1~10℃の範囲内の小さな値である。
【0052】
また、〔S11〕において、ラジエータ4入口側の第1の熱媒体温度TH1が〔外気温TH3+Y〕℃を下回る[NO]の場合は、第1の熱媒体温度TH1が〔外気温TH3+Y〕℃以上となるまでループを繰り返す。
【0053】
本実施形態において、自立運転時は、通常運転時に比べて、冷却ファン5の回転駆動のオン/オフデューティ比を速やかに増加させている。つまり、冷却ファン5の回転数を増加させる際、単位時間当たりの回転数の増加量(増加幅)を大きくしている。
【0054】
すなわち、単位時間当たりの回転数の増加量を大きくすることで、熱循環系内の熱媒体の温度を、より大きく低下させることができる。その結果、外部負荷からの要求電力が減って、熱媒循環流路Q上に配設された余剰電力ヒータ6が作動した場合でも、この熱媒循環流路Q内での水の突沸の発生を、抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、第2ファン駆動制御において冷却ファン5の回転数を増加させる際に、増加量をR3(%)に設定しているが、増加量R3(%)は、第1ファン駆動制御における冷却ファンの増加量R1(%)よりも大きければよい。
【0056】
つぎに、〔S13〕において、冷却ファン5のデューティ比をR3増加させた状態で、ラジエータ4入口側の第1の熱媒体温度TH1が、外気温TH3を下回るか否かを確認する。
【0057】
〔S13〕において、第1の熱媒体温度TH1が外気温TH3(℃)を下回る[YES]になったことが確認されると、〔S14〕において、ファン駆動のデューティ比をR4(%)減少させて、冷却ファン5の送風量を減量した後に、〔S11〕に戻る。
【0058】
なお、ファン駆動のデューティ比の減少量R4(%)は、第1ファン駆動制御における冷却ファンの減少量R2(%)よりも大きければよく、冷却ファン5の能力等応じて適宜設定できる。また、減少量R4を100%に設定して、冷却ファン5を停止させてもよい。
【0059】
一方、〔S13〕において、蓄熱タンク3低部の第1の熱媒体温度TH1が外気温TH3以上の[NO]の場合は、第1の熱媒体温度TH1が外気温TH3を下回るまで、ループを繰り返す。
【0060】
本実施形態において、自立運転時は、通常運転時に比べて、冷却ファン5の回転駆動のオン/オフデューティ比を速やかに減少させる。つまり、冷却ファン5の回転数を減少させる際、単位時間当たりの回転数の減少量を大きくしている。
【0061】
すなわち、単位時間当たりの回転数の減少量を大きくすることで、冷却ファン5の消費電力が抑制され、燃料電池装置の内部負荷を低減することができるため、より多くの電力を外部負荷に供給することができる。
【0062】
本実施形態において、通常運転時に実行する第1ファン駆動制御では、ラジエータ出口側の第2の熱媒体の温度TH2に基づいて冷却ファン5を駆動させることで、効率よく凝縮水を回収している。
【0063】
一方、通常運転時と比較して、熱媒体の温度が高温になりやすい自立運転時に実行する第2ファン駆動制御では、ラジエータ出口側よりも高温であるラジエータ入口側の第1の熱媒体の温度TH1に基づいて、冷却ファン5を駆動させることで、熱循環系の熱媒体の温度を効率よく低減させることができる。ひいては、余剰電力ヒータ6が稼動した場合でも、熱媒循環流路Q内での水の突沸の発生を抑制することができる。
【0064】
また、第2ファン駆動制御実行中は、ラジエータ4入口側のサーミスタTM1もしくは蓄熱タンク3に配置されたTM11が測定する第1の熱媒体温度TH1と、サーミスタTM3が測定する外気温TH3と、を比較する熱媒温度比較制御に基づいて、冷却ファン5を制御することで、熱循環系の熱媒体を適切に冷却することができる。
【0065】
さらに、熱媒温度比較制御実行中は、冷却ファン5をオンオフ制御させることにより、熱循環系内の熱媒体の温度を素早く低下できるとともに、燃料電池装置100の内部負荷を低減することができるため、より多くの電力を外部負荷に供給することができる。
【0066】
ところで、熱媒温度比較制御は、熱循環系の熱媒体温度と、外気温の温度を比較した結果に基づいて冷却ファン5の回転数を制御しているため、冬季など外気温が低い場合は、熱媒体が過度に冷却されてしまう可能性がある。
【0067】
そこで、制御装置20は、ラジエータ4出口(熱交換器2入口)に配設されたサーミスタTM2(第2温度センサ)が測定する、第2の熱媒体温度TH2を基準に、この第2の熱媒体温度TH2が、冷却ファン5を強制的に停止させる温度を満たしているかを判定するとともに、この判定に基づいて、冷却ファン5を強制停止する制御(凍結抑制制御)を実行する。以下は、本開示の凍結抑制制御の一例である。
【0068】
図5に示すフローチャートにおいて、制御装置20は、制御が〔スタート〕すると、〔S21〕において、前述の通常運転時の第1ファン駆動制御でも用いられた、ラジエータ4出口に配設されたサーミスタTM2(第2温度センサ)が測定する第2の熱媒体温度TH2が、冷却ファン5を強制的に停止する「凍結抑制モード」を開始する基準である、第1設定温度Z1未満であるか否か、を確認する。
【0069】
〔S21〕において、第2の熱媒体温度TH2が第1設定温度Z1未満[YES]であれば、前述の第1の熱媒体温度TH1や外気温TH3によらず、つまりは、第2ファン駆動制御における冷却ファン5の駆動状態に関わらず、〔S22〕において、冷却ファン5の強制停止を実行する。
【0070】
また、〔S21〕において、第2の熱媒体温度TH2が第1設定温度Z1以上の[NO]の場合は、第2の熱媒体温度TH2が第1設定温度Z1未満になるまで、ループを繰り返す。
【0071】
これにより、燃料電池装置100内の熱循環系を構成する水配管の凍結破損が抑制されるため、熱循環系の耐久性の低下を抑制することができる。
【0072】
つぎに、〔S23〕において、冷却ファン5を強制停止させている状態で、第2の熱媒体温度TH2が、第2設定温度Z2を上回るか否かを、確認する。
【0073】
〔S23〕において、第2の熱媒体温度TH2が第2設定温度Z2より高い[YES]の場合、〔S24〕において、冷却ファン5の強制停止を解除する。強制停止が解除された場合における冷却ファン5の駆動デューティ比は、前述の第2ファン駆動制御に基づいて決定される。
【0074】
また、〔S23〕において、第2の熱媒体温度TH2が第2設定温度Z2以下の[NO]の場合は、第2の熱媒体温度TH2が第2設定温度Z2より高くなるまで、ループを繰り返す。なお、第2設定温度Z2は第1設定温度Z1よりも高い温度である。
【0075】
これにより、燃料電池装置100内の熱循環系を構成する水配管に、凍結が発生することを抑制しつつ、効率良く熱媒体を冷却することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 燃料電池モジュール
2 熱交換器
3 蓄熱タンク
4 ラジエータ
5 冷却ファン
20 制御装置
100 燃料電池装置
P1 循環ポンプ
Q 熱媒循環流路
TM サーミスタ