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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽体のための中空撚り線
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/12 20060101AFI20230912BHJP
   D02G 3/12 20060101ALI20230912BHJP
   D02G 3/38 20060101ALI20230912BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20230912BHJP
   H01B 5/10 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
D07B1/12
D02G3/12
D02G3/38
H05K9/00 E
H05K9/00 H
H05K9/00 W
H01B5/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019143666
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025155
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000110147
【氏名又は名称】トクセン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住本 伸
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅人
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227623(JP,A)
【文献】特開2019-107326(JP,A)
【文献】特開2017-048471(JP,A)
【文献】特開2009-158331(JP,A)
【文献】特開2006-331758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00 - 9/00
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
H05K 9/00
F16J 15/00 - 15/14
H01B 5/10 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と外層との2つの層を備えており、
それぞれの層が、複数の素線が撚られることで形成されており、
これらの素線が、その材質が銅、銅合金、スズメッキ銅、銅メッキスチール、ニッケル、ニッケル基合金、モネル、アルミニウム又はアルミニウム合金である第一素線と、その材質が純鉄、鉄-コバルト合金、パーマロイ又はフェライト系ステンレススチールである第二素線とを含む、電磁波遮蔽体のための中空撚り線。
【請求項2】
その直径D1の、その厚みTに対する比(D1/T)が、3以上20以下である請求項1に記載の撚り線。
【請求項3】
その直径が0.3mm以上10mm以下であり、それぞれの素線の直径が0.05mm以上1.0mm以下である請求項1又は2に記載の撚り線。
【請求項4】
その断面が扁平である請求項1から3のいずれかに記載の撚り線。
【請求項5】
それぞれの素線が平線である請求項1から4のいずれかに記載の撚り線。
【請求項6】
上記素線の、厚みに対する幅の比が、1.5以上である請求項5に記載の撚り線。
【請求項7】
上記内層が複数の第一素線からなり、上記外層が複数の第二素線からなる請求項1に記載の撚り線。
【請求項8】
上記内層が複数の第二素線からなり、上記外層が複数の第一素線からなる請求項1に記載の撚り線。
【請求項9】
中空撚り線を備えており、
上記中空撚り線が、内層と外層との2つの層を有しており、
それぞれの層が、複数の素線が撚られることで形成されており、
上記素線が、その材質が銅、銅合金、スズメッキ銅、銅メッキスチール、ニッケル、ニッケル基合金、モネル、アルミニウム又はアルミニウム合金である第一素線と、その材質が純鉄、鉄-コバルト合金、パーマロイ又はフェライト系ステンレススチールである第二素線とを含む、
電磁波遮蔽体。
【請求項10】
中空撚り線を備えており、
上記中空撚り線が、内層と外層との2つの層を有しており、
それぞれの層が、複数の素線が撚られることで形成されており、
上記素線が、その材質が銅、銅合金、スズメッキ銅、銅メッキスチール、ニッケル、ニッケル基合金、モネル、アルミニウム又はアルミニウム合金である第一素線と、その材質が純鉄、鉄-コバルト合金、パーマロイ又はフェライト系ステンレススチールである第二素線とを含む、
ガスケット。
【請求項11】
ボディ、蓋及びガスケットを備えており、
上記ガスケットが、上記ボディと上記蓋との間に形成されたスペースに収容されており、
上記ガスケットが中空撚り線を有しており、
上記中空撚り線が、内層と外層との2つの層を有しており、
それぞれの層が、複数の素線が撚られることで形成されており、
上記素線が、その材質が銅、銅合金、スズメッキ銅、銅メッキスチール、ニッケル、ニッケル基合金、モネル、アルミニウム又はアルミニウム合金である第一素線と、その材質が純鉄、鉄-コバルト合金、パーマロイ又はフェライト系ステンレススチールである第二素線とを含む、
電磁波遮蔽性筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットのような電磁波遮蔽体(Electromagnetic Wave Shield)に好適な、中空撚り線に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、インバータを有している。インバータでは、電磁波が発生する。この電磁波を遮蔽する目的で、インバータは金属製の筐体に収容されている。しかし、この筐体の合わせ目から、電磁波が漏れ出るおそれがある。電磁波の漏出は、自動車の機器に悪影響を与える。電磁波による人体への悪影響も、懸念される。
【0003】
電気自動車のモータでも、電磁波は発生する。電気自動車において無線給電が提案されている。この無線給電が実用化されれば、電磁波の遮蔽の要求がますます高まると予想される。さらに、電気自動車以外の様々な分野においても、電磁波の遮蔽は重要である。種々の分野において、電磁波がより遮蔽されうる筐体が望まれている。
【0004】
合わせ目の近傍にガスケットを有する筐体が、提案されている。ガスケットは、電磁波遮蔽体の一種である。特開平5-340475号公報には、コイル状のガスケットが開示されている。実用新案登録第2536221号公報には、メッシュ状のガスケットが開示されている。
【0005】
電磁波遮蔽体にとって、電気遮蔽性及び磁気遮蔽性の両方が重要である。特開平11-40973号公報には、その材質がステンレススチールであるワイヤと、その材質がスーパーマロイであるワイヤとが用いられたメッシュが開示されている。このメッシュから、電磁波遮蔽体が得られる。ステンレススチールである線は主として電気遮蔽性に寄与し、スーパーマロイである線は主として磁気遮蔽性に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-340475号公報
【文献】実用新案登録第2536221号公報
【文献】特開平11-40973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガスケットは通常、圧縮状態で使用される。圧縮により適切な形状に変形するガスケットが、望まれている。圧縮荷重で永久歪みを起こしやすいガスケットは、繰り返しの使用に適さない。形状復元性に優れたガスケットが、望まれている。
【0008】
低周波域から高周波域に至るまでの領域で電磁波が発生する機器では、電気遮蔽性及び磁気遮蔽性の、高次元での両立が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、諸性能に優れた電磁波遮蔽体の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る中空撚り線は、電磁波遮蔽体に使用される。この中空撚り線は、内層と外層との2つの層を有する。それぞれの層は、複数の素線が撚られることで形成される。これらの素線は、電気遮蔽性を有する第一素線と、磁気遮蔽性を有する第二素線とを含む。
【0011】
好ましくは、第一素線の材質は、銅、銅合金、スズメッキ銅、銅メッキスチール、ニッケル、ニッケル基合金、モネル、アルミニウム又はアルミニウム合金である。好ましくは、第二素線の材質は、純鉄、鉄-コバルト合金、パーマロイ又はフェライト系ステンレススチールである。
【0012】
好ましくは、この撚り線の直径D1の、厚みTに対する比(D1/T)は、3以上20以下である。
【0013】
好ましくは、撚り線の直径は0.3mm以上10mm以下であり、それぞれの素線の直径は0.05mm以上1.0mm以下である。
【0014】
好ましくは、撚り線の断面は、扁平である。
【0015】
好ましくは、それぞれの素線は、平線である。この素線の、厚みに対する幅の比は、1.5以上である。
【0016】
好ましくは、内層は複数の第一素線からなり、外層は複数の第二素線からなる。内層が複数の第二素線からなり、外層が複数の第一素線からなってもよい。
【0017】
他の観点によれば、本発明に係る電磁波遮蔽体は、中空撚り線を有する。この中空撚り線は、内層と外層との2つの層を有する。それぞれの層は、複数の素線が撚られることで形成される。これらの素線は、電気遮蔽性を有する第一素線と、磁気遮蔽性を有する第二素線とを含む。
【0018】
さらに他の観点によれば、本発明に係るガスケットは、中空撚り線を有する。この中空撚り線は、内層と外層との2つの層を有する。それぞれの層は、複数の素線が撚られることで形成される。これらの素線は、電気遮蔽性を有する第一素線と、磁気遮蔽性を有する第二素線とを含む。
【0019】
さらに他の観点によれば、本発明に係る電磁波遮蔽性筐体は、ボディ、蓋及びガスケットを有する。このガスケットは、ボディと蓋との間に形成されたスペースに収容される。このガスケットは、中空撚り線を有する。この中空撚り線は、内層と外層との2つの層を有する。それぞれの層は、複数の素線が撚られることで形成される。これらの素線は、電気遮蔽性を有する第一素線と、磁気遮蔽性を有する第二素線とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電磁波遮蔽体は、中空撚り線を有するので、変形しやすく、かつ形状復元性に優れる。この中空撚り線は、第一素線及び第二素線を有するので、電磁波遮蔽性に優れる。本発明では、複数種類の素線の撚りにより、変形容易性、耐久性及び電磁波遮蔽性の、3つの課題が、同時に解決される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る中空撚り線の一部が示された正面図である。
図2図2は、図1の中空撚り線が示された拡大断面図である。
図3図3は、図1の中空撚り線の素線の一部が示された斜視図である。
図4図4は、図1の中空撚り線から形成されたガスケットを有する筐体が示された分解断面図である。
図5図5は、図4の筐体の一部が示された平面図である。
図6図6は、図4の筐体の一部が示された拡大断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係る中空撚り線が示された断面図である。
図8図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る中空撚り線が示された断面図である。
図9図9は、図8の中空撚り線から形成されたガスケットが示された断面斜視図である。
図10図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る中空撚り線が示された断面図である。
図11図11は、図10の中空撚り線の素線の一部が示された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0023】
図1及び2に、中空撚り線2が示されている。この撚り線2は、長尺である。この撚り線2は、内層4と外層6との2つの層を有している。内層4は、6本の第一素線8aが撚られることで形成されている。外層6は、6本の第二素線8bが撚られることで形成されている。外層6の素線8の数は、内層4の素線8の数と同じである。図1から明らかな通り、内層4の撚りの方向は時計回りであり、外層6の撚りの方向は反時計回りである。外層6の撚りの方向は、内層4の撚りの方向とは逆である。内層4の撚りの方向が反時計回りであり、外層6の撚りの方向が時計回りであってもよい。外層6の撚りの方向が、内層4の撚りの方向と同じであってもよい。
【0024】
図2において矢印D1で示されているのは、撚り線2の直径(外径)である。一般的な直径D1は、0.3mm以上10mm以下である。図2において矢印D2で示されているのは、撚り線2の内径である。一般的な内径D2は、0.1mm以上8mm以下である。
【0025】
図3は、図1の中空撚り線2の素線8の一部が示された斜視図である。図3には、撚られる前の素線8が示されている。この素線8の断面形状は、円である。図2の断面の方向は、素線8の半径方向に対して傾斜している。従って図2では、素線8の断面は非円形を呈している。図3において矢印D3で示されているのは、素線8の直径である。一般的な直径D3は、0.05mm以上1.0mm以下である。
【0026】
第一素線8aの材質は、電気伝導率が高い金属である。従って第一素線8aは、電気遮蔽性を有する。好ましくは、電気伝導率が1.0・10S/m以上である金属が、第一素線8aに用いられうる。第一素線8aに適した金属として、銅、銅合金、スズメッキ銅、銅メッキスチール、ニッケル、ニッケル基合金、モネル、アルミニウム及びアルミニウム合金が例示される。ステンレススチールが、第一素線8aに用いられてもよい。典型的なステンレススチールは、SUS304である。モネルは、ニッケル及び銅が主成分である合金である。モネルは、鉄、マンガン及び硫黄を含みうる。1つの第一素線8aの材質が、他の第一素線8aの材質と異なってもよい。
【0027】
第二素線8bの材質は、透磁率μが大きい金属である。従って第二素線8bは、磁気遮蔽性を有する。好ましくは、透磁率μが1.0・10H/m以上である金属が、第二素線8bに用いられうる。第二素線8bに適した金属として、純鉄、鉄-コバルト合金、パーマロイ及びフェライト系ステンレススチールが例示される。パーマロイは、ニッケル及び鉄が主成分である合金である。パーマロイは、銅、モリブデン、クロム、ニオブ及びタンタルを含みうる。パーマロイの概念には、スーパーマロイ、ミューメタル及びハードパーマロイが含まれる。典型的なフェライト系ステンレススチールは、SUS430である。1つの第二素線8bの材質が、他の第二素線8bの材質と異なってもよい。
【0028】
この撚り線2を材料として、種々の電磁波遮蔽体が製作されうる。電磁波遮蔽体の一例として、ガスケットが挙げられる。図4-6に、ガスケット10を有する筐体12が示されている。
【0029】
図4に示されるように、この筐体12は、ボディ14、蓋16及びガスケット10を有する。ボディ14は、上縁18を有している。この上縁18に沿うように撚り線2が曲げられて、ガスケット10が形成されている(図5も参照)。ガスケット10は、接着剤等の手段により、ボディ14に取り付けられている。図4では、蓋16がボディ14と分離されて示されている。蓋16が、ヒンジを介してボディ14に固定されてもよい。
【0030】
図6では、蓋16が閉められている。ガスケット10は、ボディ14と蓋16との間に形成されたスペースに、収容されている。ガスケット10は、蓋16から荷重を受けている。この荷重の方向は、撚り線2の半径方向である。ガスケット10が撚り線2からなるので、このガスケット10は柔軟性を有する。従って、荷重を受けたガスケット10は、容易に圧縮変形する。この変形により、ガスケット10は、ボディ14と蓋16との間のスペースを満たす。
【0031】
撚り線2からガスケット10が得られているので、このガスケット10は内層4と外層6とを有する。前述の通り、内層4は第一素線8aを有しており、外層6は第二素線8bを有している。この筐体12に収容された機器が電磁波を発すると、主として内層4が電気遮蔽性に寄与し、主として外層6が磁気遮蔽性に寄与する。しかも、変形したガスケット10がボディ14と蓋16との間のスペースを満たしているので、電磁波の漏洩が抑制される。この筐体12は、電磁波遮蔽性に極めて優れる。
【0032】
ガスケット10が撚り線2から得られているので、このガスケット10では、永久歪みが生じにくい。ボディ14から蓋16が外されると、ガスケット10は圧縮状態から復元する。さらに蓋16が閉じられたときには、ガスケット10は、再び圧縮変形しうる。このガスケット10は、繰り返しの使用に耐える。このガスケット10は、耐久性に優れる。
【0033】
図2に示されるように、素線8とこれに近接する素線8とは、部分的に離間している。素線8とこれに近接する素線8との間には、空隙が存在している。この空隙は、撚り線2の変形能及び形状復元性に寄与する。空隙を有する撚り線2は、ガスケット10に適している。
【0034】
図2に示された撚り線2の厚みTは、下記の数式によって算出される。
T = (D1 - D2) / 2
直径D1の厚みTに対する比(D1/T)は、3以上20以下が好ましい。比(D1/T)が3以上である撚り線2は、変形能に優れる。この観点から、比(D1/T)は5以上が好ましく、8以上が特に好ましい。比(D1/T)が20以下である撚り線2は、復元性に優れる。この観点から、比(D1/T)は17以下が好ましく、15以下が特に好ましい。
【0035】
内層4は、材質が同じである素線8のみから形成されている。この内層4の製造は、容易である。外層6は、材質が同じである素線8のみから形成されている。この外層6の製造は、容易である。
【0036】
内層4における素線8の数は、3でもよく、4でもよく、5でもよく、7以上でもよい。外層6における素線8の数は、3でもよく、4でもよく、5でもよく、7以上でもよい。外層6の素線8の数が、内層4の素線8の数と異なってもよい。
【0037】
内層4が、複数の第二素線8bが撚られることで形成されてもよい。この内層4は、磁気遮蔽性に寄与する。外層6が、複数の第一素線8aが撚られることで形成されてもよい。この外層6は、電気遮蔽性に寄与する。
【0038】
撚り線2が、内層4及び外層6と共に、他の層を有してもよい。
【0039】
図7は、本発明の他の実施形態に係る中空撚り線20が示された断面図である。図示されていないが、この撚り線20は、図1及び2に示された中空撚り線20と同様、長尺である。図7には、撚り線20の長さ方向に対して垂直な断面が示されている。
【0040】
この撚り線20は、内層22及び外層24の2つの層を有している。内層22は、3本の第一素線26aと、3本の第二素線26bが撚られることで形成されている。図7から明らかなように、内層22において、第一素線26aと第二素線26bとは、交互に配置されている。外層24は、3本の第一素線26aと、3本の第二素線26bが撚られることで形成されている。図7から明らかなように、外層24において、第一素線26aと第二素線26bとは、交互に配置されている。それぞれの素線26の断面形状は、円である。
【0041】
第一素線26aの材質は、電気伝導率が高い金属である。従って第一素線26aは、電気遮蔽性を有する。第二素線26bの材質は、透磁率μが大きい金属である。従って第二素線26bは、磁気遮蔽性を有する。この撚り線20は、電磁波遮蔽性に優れる。
【0042】
前述の通り、この内層22では、第一素線26aと第二素線26bとが、交互に配置されている。交互ではない配置を、内層22が有してもよい。前述の通り、この外層24では、第一素線26aと第二素線26bとが、交互に配置されている。交互ではない配置を、外層24が有してもよい。
【0043】
前述の通り、この内層22は、3本の第一素線26aと3本の第二素線26bとを有している。第一素線26aの数と第二素線26bの数とは、同じである。第一素線26aの数と第二素線26bの数とが、異なってもよい。第一素線26aの数は、ゼロでもよく、1本でもよく、2本でもよく、4本以上でもよい。第二素線26bの数は、ゼロでもよく、1本でもよく、2本でもよく、4本以上でもよい。第一素線26aの数Naと、第二素線26bの数Nbとの組み合わせ(Na,Nb)として、(0,6)、(1,5)、(2,4)、(3,3)、(4,2)、(5,1)及び(6,0)が挙げられる。内層22が、第一素線26a及び第二素線26bと共に、他の素線26を有してもよい。
【0044】
前述の通り、この外層24は、3本の第一素線26aと3本の第二素線26bとを有している。第一素線26aの数と第二素線26bの数とは、同じである。第一素線26aの数と第二素線26bの数とが、異なってもよい。第一素線26aの数は、ゼロでもよく、1本でもよく、2本でもよく、4本以上でもよい。第二素線26bの数は、ゼロでもよく、1本でもよく、2本でもよく、4本以上でもよい。第一素線26aの数Naと、第二素線26bの数Nbとの組み合わせ(Na,Nb)として、(0,6)、(1,5)、(2,4)、(3,3)、(4,2)、(5,1)及び(6,0)が挙げられる。外層24が、第一素線26a及び第二素線26bと共に、他の素線26を有してもよい。
【0045】
内層22が第一素線26aを有さない場合は、外層24が1以上の第一素線26aを有する。外層24が第一素線26aを有さない場合は、内層22が1以上の第一素線26aを有する。内層22が第二素線26bを有さない場合は、外層24が1以上の第二素線26bを有する。外層24が第二素線26bを有さない場合は、内層22が1以上の第二素線26bを有する。
【0046】
電磁波遮蔽性の観点から、撚り線20における第一素線26aの総数と第二素線26bの総数との比は、1/4以上4/1以下が好ましく、2/3以上3/2以下が特に好ましい。
【0047】
内層22又は外層24において、素線26の総数が、4本でもよい。この場合の第一素線26aの数Naと第二素線26bの数Nbとの組み合わせ(Na,Nb)として、(0,4)、(1,3)、(2,2)、(3,1)及び(4,0)が挙げられる。
【0048】
内層22又は外層24において、素線26の総数が、5本でもよい。この場合の第一素線26aの数Naと第二素線26bの数Nbとの組み合わせ(Na,Nb)として、(0,5)、(1,4)、(2,3)、(3,2)、(4,1)及び(5,0)が挙げられる。
【0049】
内層22又は外層24において、素線26の総数が、7本でもよい。この場合の第一素線26aの数Naと第二素線26bの数Nbとの組み合わせ(Na,Nb)として、(0,7)、(1,6)、(2,5)、(3,4)、(4,3)、(5,2)、(6,1)及び(7,0)が挙げられる。
【0050】
内層22又は外層24において、素線26の総数が、8本でもよい。この場合の第一素線26aの数Naと第二素線26bの数Nbとの組み合わせ(Na,Nb)として、(0,8)、(1,7)、(2,6)、(3,5)、(4,4)、(5,3)、(6,2)、(7,1)及び(8,0)が挙げられる。
【0051】
撚り線20が、9本以上の素線26を有してもよい。
【0052】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る中空撚り線28が示された断面図である。図示されていないが、この撚り線28は、図1及び2に示された中空撚り線28と同様、長尺である。図8には、撚り線28の長さ方向に対して垂直な断面が示されている。
【0053】
この撚り線28は、内層30及び外層32の2つの層を有している。内層30は、6本の第一素線34aが撚られることで形成されている。外層32は、6本の第二素線34bが撚られることで形成されている。それぞれの素線34の断面形状は、円である。
【0054】
第一素線34aの材質は、電気伝導率が高い金属である。従って第一素線34aは、電気遮蔽性を有する。第二素線34bの材質は、透磁率μが大きい金属である。従って第二素線34bは、磁気遮蔽性を有する。この撚り線28は、電磁波遮蔽性に優れる。
【0055】
図8から明らかなように、この撚り線28の断面形状は扁平である。図8において、矢印L1はこの撚り線28の長径を表し、矢印L2はこの撚り線28の短径を表す。この撚り線28は、図1及び2に示された撚り線28に塑性加工が施されることで、製作されうる。典型的な塑性加工は、圧延である。
【0056】
図9は、図8の撚り線28から形成されたガスケット36が示された断面斜視図である。図9では、撚り線28が曲げられている。この曲げにより、撚り線28は、エネルギー的に低位な姿勢をとる。具体的には、撚り線28は、長軸が起立する姿勢をとる。このガスケット36に、長軸方向の圧縮荷重がかかると、撚り線28は十分に変形し、かつ優れた形状復元性を発揮する。この観点から、扁平度(L2/L1)は1.5以上が好ましく、2.0以上が特に好ましい。扁平度(L1/L2)は、5.0以下が好ましい。
【0057】
複数の第二素線34bが撚られることで、内層30が形成されてもよい。複数の第一素線34aが撚られることで、外層32が形成されてもよい。内層30において、第一素線34aと第二素線34bとが混在してもよい。外層32において、第一素線34aと第二素線34bとが混在してもよい。
【0058】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る中空撚り線38が示された断面図である。図示されていないが、この撚り線38は、図1及び2に示された中空撚り線38と同様、長尺である。図10には、撚り線38の長さ方向に対して垂直な断面が示されている。
【0059】
この撚り線38は、内層40及び外層42の2つの層を有している。内層40は、6本の第一素線44aが撚られることで形成されている。外層42は、6本の第二素線44bが撚られることで形成されている。
【0060】
第一素線44aの材質は、電気伝導率が高い金属である。従って第一素線44aは、電気遮蔽性を有する。第二素線44bの材質は、透磁率μが大きい金属である。従って第二素線44bは、磁気遮蔽性を有する。この撚り線38は、電磁波遮蔽性に優れる。
【0061】
図11に、素線44の一部が示されている。図11には、撚られる前の状態の素線44が示されている。図11から明らかなように、素線44の断面形状は、長円である。素線44は、内平坦面46、外平坦面48及び一対の湾曲面50を有している。本発明では、内平坦面44及び外平坦面46を有し、かつ幅Wが厚みTよりも大きい素線44は、「平線」と称される。この素線44は、平線である。
【0062】
平線の厚みは小さいので、この撚り線38から得られたガスケットは、柔軟性を有する。このガスケットが荷重を受けると、容易に圧縮変形する。この観点から、厚みT1に対する幅Wの比(W/T1)は1.5以上が好ましく、2.0以上が特に好ましい。比(W/T1)は、10.0以下が好ましい。
【0063】
複数の第二素線44bが撚られることで、内層40が形成されてもよい。複数の第一素線44aが撚られることで、外層42が形成されてもよい。内層40において、第一素線44aと第二素線44bとが混在してもよい。外層42において、第一素線44aと第二素線44bとが混在してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る中空撚り線は、圧縮荷重下で使用される種々の電磁波遮蔽体に、適している。
【符号の説明】
【0065】
2、20、28、38・・・中空撚り線
4、22、30、40・・・内層
6、24、32、42・・・外層
8、26、34、44・・・素線
8a、26a、34a、44a・・・第一素線
8b、26b、34b、44b・・・第二素線
10、36・・・ガスケット
12・・・筐体
14・・・ボディ
16・・・蓋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11