(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】マルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/72 20060101AFI20230912BHJP
H03H 7/46 20060101ALI20230912BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20230912BHJP
H03H 9/70 20060101ALI20230912BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20230912BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20230912BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H03H9/72
H03H7/46 A
H03H9/17 F
H03H9/70
H03H9/54 Z
H03H9/64 Z
H03H9/25 A
H03H7/46 C
(21)【出願番号】P 2019148577
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】井坂 史章
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-207045(JP,A)
【文献】特開2017-204827(JP,A)
【文献】特開2018-157510(JP,A)
【文献】特開2017-212628(JP,A)
【文献】特開2017-188807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/76
H03H 5/00- 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1基板と、
前記第1面との間に空隙を挟み平面視において重なる第2面を有する第2基板と、
前記第1面に設けられ、共通端子から第1端子に至る第1直列経路に直列に接続された1または複数の第1直列共振器と、一端が前記第1直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第1並列共振器と、を備える第1フィルタと、
前記第2面に設けられ、前記共通端子から第2端子に至る第2直列経路に直列に接続された1または複数の第2直列共振器と、一端が前記第2直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第2並列共振器と、を備え、
前記1または複数の第2直列共振器と前記1または複数の第2並列共振器は、圧電膜と、前記圧電膜と前記第2基板との間に設けられた第1電極と、前記圧電膜と前記空隙との間に設けられ、前記圧電膜の少なくとも一部を挟み前記第1電極と平面視において重なる共振領域を形成する第2電極と、を各々備え、
前記1または複数の第2並列共振器のうち少なくとも1つの第2並列共振器において、前記第1電極は前記第2直列経路に接続され、前記第2電極は前記グランドに接続され、共振領域の少なくとも一部は、前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる第2フィルタと、
を備えるマルチプレクサ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2並列共振器において共振領域から引き出された第1電極の少なくとも一部と、前記少なくとも1つの第2並列共振器において共振領域から引き出された第2電極の少なくとも一部と、は前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2並列共振器において、共振領域の少なくとも一部は、前記1または複数の第1直列共振器の少なくとも1つの第1直列共振器の少なくとも一部と平面視において重なる請求項1または2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
前記1または複数の第2並列共振器は複数の第2並列共振器であり、
前記少なくとも1つの第2並列共振器は、前記複数の第2並列共振器のうち前記共通端子に電気接続上最も近い第2並列共振器以外の第2並列共振器を含む請求項1から3のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記1または複数の第2直列共振器および前記1または複数の第2並列共振器のうち、前記少なくとも1つの第2並列共振器のうち前記第2端子に電気接続上最も近い第2並列共振器より前記第2端子に電気接続上近い共振器は平面視において前記第1直列経路と重ならない請求項1から4のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2並列共振器と前記少なくとも1つの第2並列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器とを接続する配線は、前記少なくとも1つの第2並列共振器において共振領域から引き出された第1電極と、前記少なくとも1つの第2並列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器において共振領域から引き出された第2電極と、を電気的に接続する接続配線を備える請求項1から5のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項7】
第1面を有する第1基板と、
前記第1面との間に空隙を挟み平面視において重なる第2面を有する第2基板と、
前記第1面に設けられ、共通端子から第1端子に至る第1直列経路に直列に接続された1または複数の第1直列共振器と、一端が前記第1直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第1並列共振器と、を備える第1フィルタと、
前記第2面に設けられ、前記共通端子から第2端子に至る第2直列経路に直列に接続された1または複数の第2直列共振器と、一端が前記第2直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第2並列共振器と、を備え、
前記1または複数の第2直列共振器と前記1または複数の第2並列共振器は、圧電膜と、前記圧電膜と前記第2基板との間に設けられた第1電極と、前記圧電膜と前記空隙との間に設けられ、前記圧電膜の少なくとも一部を挟み前記第1電極と平面視において重なる共振領域を形成する第2電極と、を各々備え、
前記1または複数の第2直列共振器のうち少なくとも1つの第2直列共振器において、前記第1電極は
他の第2直列共振器を介しまたは介さずに前記第2端子に接続され、前記第2電極は
他の第2直列共振器を介しまたは介さずに前記共通端子に接続され、共振領域の少なくとも一部は、前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる第2フィルタと、
を備えるマルチプレクサ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2直列共振器において共振領域から引き出された第1電極の少なくとも一部と、前記少なくとも1つの第2直列共振器において共振領域から引き出された第2電極の少なくとも一部と、は前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる請求項7に記載のマルチプレクサ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2直列共振器において、共振領域の少なくとも一部は、前記1または複数の第1直列共振器の少なくとも1つの第1直列共振器の少なくとも一部と平面視において重なる請求項7または8に記載のマルチプレクサ。
【請求項10】
前記1または複数の第2直列共振器は複数の第2直列共振器であり、
前記少なくとも1つの第2直列共振器は、前記複数の第2直列共振器のうち前記共通端子に電気接続上最も近い第2直列共振器以外の第2直列共振器を含む請求項7から9のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項11】
前記1または複数の第2直列共振器および前記1または複数の第2並列共振器のうち、前記少なくとも1つの第2直列共振器のうち前記第2端子に電気接続上最も近い第2直列共振器より前記第2端子に電気接続上近い共振器は平面視において前記第1直列経路と重ならない請求項7から10のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項12】
前記1または複数の第2直列共振器は複数の第2直列共振器であり、
前記少なくとも1つの第2直列共振器と前記少なくとも1つの第2直列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器とを接続する配線は、前記少なくとも1つの第2直列共振器において共振領域から引き出された第1電極および第2電極の一方と、前記少なくとも1つの第2直列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器において共振領域から引き出された第1電極および第2電極の他方と、を電気的に接続する接続配線を備える請求項7から11のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項13】
前記1または複数の第2直列共振器および前記1または複数の第2並列共振器は、前記第1直列経路に平面視において重ならない共振器を含む請求項1から12のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【請求項14】
前記第1フィルタの通過帯域と前記第2フィルタの通過帯域は重ならない請求項1から13のいずれか一項に記載のマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチプレクサに関し、例えば複数の基板にそれぞれ設けられたフィルタを有するマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタが形成された2つの基板をフィルタが形成された面が空隙を挟み対向するように搭載することが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、平面視において2つのフィルタが重なるように設けること、および平面視において2つのフィルタを重ならないように設けることが記載されている。2つの基板間にシールドパターンを設けることが知られている(例えば特許文献2)。最も共通端子に近い直列共振器同士を重ねることが記載されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-67617号公報
【文献】特開2017-204827号公報
【文献】特開2018-157510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つのフィルタを重なるように設けると、フィルタ間が干渉し、アイソレーション特性が劣化する。特に高周波信号が伝送する配線同士を重ねるとアイソレーション特性が劣化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、アイソレーション特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1面を有する第1基板と、前記第1面との間に空隙を挟み平面視において重なる第2面を有する第2基板と、前記第1面に設けられ、共通端子から第1端子に至る第1直列経路に直列に接続された1または複数の第1直列共振器と、一端が前記第1直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第1並列共振器と、を備える第1フィルタと、前記第2面に設けられ、前記共通端子から第2端子に至る第2直列経路に直列に接続された1または複数の第2直列共振器と、一端が前記第2直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第2並列共振器と、を備え、前記1または複数の第2直列共振器と前記1または複数の第2並列共振器は、圧電膜と、前記圧電膜と前記第2基板との間に設けられた第1電極と、前記圧電膜と前記空隙との間に設けられ、前記圧電膜の少なくとも一部を挟み前記第1電極と平面視において重なる共振領域を形成する第2電極と、を各々備え、前記1または複数の第2並列共振器のうち少なくとも1つの第2並列共振器において、前記第1電極は前記第2直列経路に接続され、前記第2電極は前記グランドに接続され、共振領域の少なくとも一部は、前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる第2フィルタと、を備えるマルチプレクサ。
【0007】
上記構成において、前記少なくとも1つの第2並列共振器において共振領域から引き出された第1電極の少なくとも一部と、前記少なくとも1つの第2並列共振器において共振領域から引き出された第2電極の少なくとも一部と、は前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記少なくとも1つの第2並列共振器において、共振領域の少なくとも一部は、前記1または複数の第1直列共振器の少なくとも1つの第1直列共振器の少なくとも一部と平面視において重なる構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記1または複数の第2並列共振器は複数の第2並列共振器であり、前記少なくとも1つの第2並列共振器は、前記複数の第2並列共振器のうち前記共通端子に電気接続上最も近い第2並列共振器以外の第2並列共振器を含む構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記1または複数の第2直列共振器および前記1または複数の第2並列共振器のうち、前記少なくとも1つの第2並列共振器のうち前記第2端子に電気接続上最も近い第2並列共振器より前記第2端子に電気接続上近い共振器は平面視において前記第1直列経路と重ならない構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記少なくとも1つの第2並列共振器と前記少なくとも1つの第2並列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器とを接続する配線は、前記少なくとも1つの第2並列共振器において共振領域から引き出された第1電極と、前記少なくとも1つの第2並列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器において共振領域から引き出された第2電極と、を電気的に接続する接続配線を備える構成とすることができる。
【0012】
本発明は、第1面を有する第1基板と、前記第1面との間に空隙を挟み平面視において重なる第2面を有する第2基板と、前記第1面に設けられ、共通端子から第1端子に至る第1直列経路に直列に接続された1または複数の第1直列共振器と、一端が前記第1直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第1並列共振器と、を備える第1フィルタと、前記第2面に設けられ、前記共通端子から第2端子に至る第2直列経路に直列に接続された1または複数の第2直列共振器と、一端が前記第2直列経路に接続し他端がグランドに接続された1または複数の第2並列共振器と、を備え、 前記1または複数の第2直列共振器と前記1または複数の第2並列共振器は、圧電膜と、前記圧電膜と前記第2基板との間に設けられた第1電極と、前記圧電膜と前記空隙との間に設けられ、前記圧電膜の少なくとも一部を挟み前記第1電極と平面視において重なる共振領域を形成する第2電極と、を各々備え、前記1または複数の第2直列共振器のうち少なくとも1つの第2直列共振器において、前記第1電極は他の第2直列共振器を介しまたは介さずに前記第2端子に接続され、前記第2電極は他の第2直列共振器を介しまたは介さずに前記共通端子に接続され、共振領域の少なくとも一部は、前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる第2フィルタと、を備えるマルチプレクサである。
【0013】
上記構成において、前記少なくとも1つの第2直列共振器において共振領域から引き出された第1電極の少なくとも一部と、前記少なくとも1つの第2直列共振器において共振領域から引き出された第2電極の少なくとも一部と、は前記第1直列経路の少なくとも一部と平面視において重なる構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記少なくとも1つの第2直列共振器において、共振領域の少なくとも一部は、前記1または複数の第1直列共振器の少なくとも1つの第1直列共振器の少なくとも一部と平面視において重なる構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記1または複数の第2直列共振器は複数の第2直列共振器であり、前記少なくとも1つの第2直列共振器は、前記複数の第2直列共振器のうち前記共通端子に電気接続上最も近い第2直列共振器以外の第2直列共振器を含む構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記1または複数の第2直列共振器および前記1または複数の第2並列共振器のうち、前記少なくとも1つの第2直列共振器のうち前記第2端子に電気接続上最も近い第2直列共振器より前記第2端子に電気接続上近い共振器は平面視において前記第1直列経路と重ならない構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記1または複数の第2直列共振器は複数の第2直列共振器であり、前記少なくとも1つの第2直列共振器と前記少なくとも1つの第2直列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器とを接続する配線は、前記少なくとも1つの第2直列共振器において共振領域から引き出された第1電極および第2電極の一方と、前記少なくとも1つの第2直列共振器に電気接続上最も近い第2直列共振器において共振領域から引き出された第1電極および第2電極の他方と、を電気的に接続する接続配線を備える構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記1または複数の第2直列共振器および前記1または複数の第2並列共振器は、前記第1直列経路に平面視において重ならない共振器を含む構成とすることができる。
【0019】
上記構成において、前記第1フィルタの通過帯域と前記第2フィルタの通過帯域は重ならない構成とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アイソレーション特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施例1におけるマルチプレクサの回路図である。
【
図2】
図2は、実施例1におけるマルチプレクサの断面図である。
【
図3】
図3(a)は、弾性波共振器12の平面図であり、
図3(b)は、弾性波共振器22の断面図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、実験におけるそれぞれサンプルAおよびBの平面図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は、実験におけるそれぞれサンプルAおよびBの断面図である。
【
図6】
図6(a)は、実験のサンプルAおよびBにおける周波数に対するS32を示す図、
図6(b)は、
図6(a)における共振周波数付近の拡大図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、それぞれサンプルAおよびBの等価回路である。
【
図8】
図8(a)は、マルチプレクサAにおける基板10の上面を示す平面図、
図8(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
【
図9】
図9(a)は、マルチプレクサAにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図9(b)は、
図9(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。
【
図10】
図10(a)は、マルチプレクサBにおける基板10の上面を示す平面図、
図10(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
【
図11】
図11(a)は、マルチプレクサBにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図11(b)は、
図11(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。
【
図12】
図12(a)はシミュレーションにおけるマルチプレクサAおよびBの周波数に対するアイソレーションを示す図、
図12(b)は、
図12(a)における通過帯域付近の拡大図である。
【
図13】
図13(a)は、実施例1の変形例1に係るマルチプレクサの基板20の下面を示す平面図、
図13(b)は、切り替え部の断面図である。
【
図14】
図14(a)は、実施例1の変形例1のマルチプレクサにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図14(b)は、
図14(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。
【
図15】
図15(a)は、実施例1の変形例2における基板10の上面を示す平面図、
図15(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
【
図16】
図16(a)は、実施例1の変形例2のマルチプレクサにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図16(b)は、
図16(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。
【
図17】
図17(a)および
図17(b)は、思考実験におけるそれぞれサンプルCおよびDの平面図である。
【
図18】
図18(a)および
図18(b)は、思考実験におけるそれぞれサンプルCおよびDの断面図である。
【
図20】
図20(a)は、実施例2における基板10の上面を示す平面図、
図20(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
【
図21】
図21(a)は、実施例2のマルチプレクサにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図21(b)は、
図21(a)における直列共振器S24付近の拡大図である。
【
図22】
図22(a)および
図22(b)は、それぞれ実施例2の変形例1および2に係るマルチプレクサにおいて受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図における直列共振器S24付近の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1におけるマルチプレクサの回路図である。
図1に示すように、共通端子Antと送信端子Tx(第1端子)との間に送信フィルタ50(第1フィルタ)が接続されている。共通端子Antと受信端子Rx(第2端子)との間に受信フィルタ52(第2フィルタ)が接続されている。送信フィルタ50の通過帯域と受信フィルタ52の通過帯域とは重なっていない。送信フィルタ50は、送信端子Txに入力した高周波信号のうち送信帯域の信号を共通端子Antに出力し、他の周波数帯域の信号を抑圧する。受信フィルタ52は、共通端子Antに入力した高周波信号のうち受信帯域の信号を受信端子Rxに出力し、他の周波数の信号を抑圧する。
【0024】
送信フィルタ50はラダー型フィルタであり、直列共振器S11からS16(第1直列共振器)および並列共振器P11からP16(第1並列共振器)を有している。直列共振器S11からS16は、共通端子Antから送信端子Txに至る直列経路51(第1直列経路)に直列に接続されている。並列共振器P11からP16は、一端が直列経路51に接続され他端がグランドに接続された並列経路55に直列に接続されている。
【0025】
受信フィルタ52はラダー型フィルタであり、直列共振器S21からS26(第2直列共振器)および並列共振器P21からP23(第2並列共振器)を有している。直列共振器S21からS26は、共通端子Antから受信端子Rxに至る直列経路53(第2直列経路)に直列に接続されている。並列共振器P21からP23は、一端が直列経路53に接続され他端がグランドに接続された並列経路56に直列に接続されている。
【0026】
図2は、実施例1におけるマルチプレクサの断面図である。
図2に示すように、基板10上に基板20が搭載されている。基板10は支持基板10aと圧電基板10bとを有する。支持基板10aは例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、水晶基板またはシリコン基板である。圧電基板10bは、例えばタンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である。圧電基板10bは支持基板10aの上面に接合されている。圧電基板10bと支持基板10aの接合面は平面であり平坦である。基板10は圧電基板であり支持基板に接合されていなくてもよい。
【0027】
基板10(第1基板)の上面(第1面)に弾性波共振器12および配線14を有する送信フィルタ50が設けられている。基板10の下面に端子18が設けられている。端子18は、弾性波共振器12および22を外部と接続するためのフットパッドである。基板10を貫通するようにビア配線16が設けられている。ビア配線16は、配線14と端子18とを電気的に接続する。配線14、ビア配線16および端子18は例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。端子18は、共通端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rxおよびグランド端子を含む。
【0028】
基板20(第2基板)の下面(第2面)に弾性波共振器22および配線24を有する受信フィルタ52が設けられている。基板20は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板またはシリコン基板である。配線24は例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。基板10の配線14と基板20の配線24はバンプ26を介し接合されている。基板10の上面と基板20の下面とは空隙28を介し平面視において重なる。
【0029】
基板10の上面の周縁に環状金属層32が設けられている。基板10上に基板20を囲むように封止部30が設けられている。封止部30は環状金属層32に接合されている。封止部30は、例えば半田等の金属または樹脂等の絶縁体である。基板20および封止部30の上面にリッド34が設けられている。リッド34は、例えばコバール等の金属板または絶縁体板である。封止部30およびリッド34を覆うように保護膜36が設けられている。保護膜36は例えばニッケル等の金属膜または絶縁膜である。
【0030】
図3(a)は、弾性波共振器12の平面図であり、
図3(b)は、弾性波共振器22の断面図である。
図3(a)に示すように、弾性波共振器12は弾性表面波共振器である。圧電基板である基板10にIDT(Interdigital Transducer)42と反射器41が形成されている。IDT42は、互いに対向する1対の櫛型電極42dを有する。櫛型電極42dは、複数の電極指42aと複数の電極指42aを接続するバスバー42cとを有する。反射器41は、IDT42の両側に設けられている。IDT42が基板10に弾性表面波を励振する。IDT42および反射器41は例えばアルミニウム膜または銅膜により形成される。基板10上にIDT42および反射器41を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。
【0031】
図3(b)に示すように、弾性波共振器22は圧電薄膜共振器である。基板20上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極45(第1電極)および上部電極47(第2電極)が設けられている。下部電極45は、圧電膜46と基板20との間に設けられ、上部電極47は圧電膜46と空隙28との間に設けられている。下部電極45と基板20との間に空隙49が形成されている。下部電極45と基板20との間に空隙49の代わりに弾性波を反射する音響反射膜を設けてもよい。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極45と上部電極47とが平面視において重なる領域が共振領域48である。共振領域48内の下部電極45および上部電極47は圧電膜46内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。下部電極45および上部電極47は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜である。
【0032】
弾性波共振器12および22は、弾性波を励振する電極を含む。このため、弾性波の励振を阻害しないように、弾性波共振器12および22は
図2で図示された空隙28に覆われている。
【0033】
送信フィルタ50は基板10の上面に設けられている。直列共振器S11からS16および並列共振器P11からP16は弾性波共振器12である。受信フィルタ52は基板20の下面に設けられている。直列共振器S21からS26および並列共振器P21からP23は弾性波共振器22である。送信フィルタ50のうち一部と、受信フィルタ52のうち一部とが平面視において重なっている。例えば送信フィルタ50の直列共振器S13と送信フィルタ50の並列共振器P22が重なっている。これにより、直列共振器S13と並列共振器P22との間に寄生キャパシタンスC0が形成される。
【0034】
送信端子Txから入力した受信帯域の信号は送信フィルタ50により抑圧される。送信フィルタ50と受信フィルタ52とが重なっていると、送信フィルタ50から空隙28(すなわち寄生キャパシタンスC0)を介し受信フィルタ52に信号が漏れる。これにより、
図1(a)の矢印58のように、送信端子Txから受信端子Rxに受信帯域の信号が漏れる。よって、アイソレーション特性が劣化する。送信フィルタ50と受信フィルタ52とを平面視において重ならないように設けることにより、アイソレーション特性を改善できる。しかしながら、マルチプレクサが大型化してしまう。送信フィルタ50と受信フィルタ52とを平面視において重なるように設けることにより、小型化できる。しかしながらアイソレーション特性が劣化してしまう。そこで、送信フィルタ50の一部と受信フィルタ52の一部が平面視において重なるようにする。これにより、アイソレーション特性を抑制しかつ小型化が可能となる。
【0035】
[実験]
送信フィルタ50の一部と受信フィルタ52の一部が平面視において重なった場合を想定し実験を行った。
【0036】
図4(a)および
図4(b)は、実験におけるそれぞれサンプルAおよびBの平面図である。
図5(a)および
図5(b)は、実験におけるそれぞれサンプルAおよびBの断面図である。
図5(a)および
図5(b)は、
図5(a)および
図5(b)の線路L1に沿った断面である。サンプルAは実施例1に対応し、サンプルBは比較例1に対応する。
【0037】
図4(a)および
図5(a)に示すように、サンプルAでは、ポート1(Port1)とポート3(Port3)との間に線路L1が接続されている。線路L1は基板10上の配線14により形成されている。ポート1(Port2)とポート4(Port4)の間に直列共振器S1およびS2が直列接続されている。直列共振器S1とS2との間の配線L2は下部電極45により形成されている。配線L2とグランドとの間に並列共振器P1が接続されている。並列共振器P1とグランドとの間の配線L3は上部電極47により形成されている。ポート2およびポート4と直列共振器S1およびS2との間の配線は上部電極47により形成されている。並列共振器P1の上部電極47はグランドGndに接続され、下部電極45は配線L2に接続されている。
【0038】
図4(b)および
図5(b)に示すように、サンプルBでは、配線L2は上部電極47により形成されている。並列共振器P1とグランドとの間の配線L3は下部電極45により形成されている。ポート2およびポート4と直列共振器S1およびS2との間の配線は下部電極45により形成されている。並列共振器P1の上部電極47は配線L2に接続され、下部電極45はグランドGndに接続されている。その他の構成はサンプルAと同じであり説明を省略する。
【0039】
サンプルAおよびBの各寸法および材料は以下である。
支持基板10a:厚さが400μmのサファイア基板
圧電基板10b:厚さが20μmのタンタル酸リチウム基板
配線14:基板10側から厚さが0.03μmのチタン層、厚さが0.1μmのアルミニウム層、厚さが0.2μmのチタン層および厚さが1μmの金層
線路L1の幅:25μm
基板10の大きさ:1930μm×1630μm
基板20:厚さが150μmのシリコン基板
下部電極45:基板20側から厚さが0.07μmのクロム層および厚さが0.19μmのルテニウム層
圧電膜46:厚さが0.94μmの窒化アルミニウム層
上部電極47:圧電膜46側から厚さが0.12μmのルテニウム層および厚さが0.05μmのクロム層
基板20の大きさ:910μm×710μm
基板10と20との距離:10μm
線路L1と配線L2の重なる面積:2720μm2
線路L1と配線L3の重なる面積:3350μm2
直列共振器S1およびS2の共振周波数:2766MHz
並列共振器P1の共振周波数:2568MHz
【0040】
図6(a)は、実験のサンプルAおよびBにおける周波数に対するS32を示す図、
図6(b)は、
図6(a)における共振周波数付近の拡大図である。S32は、ポート3からポート2へのアイソレーション特性に相当する。
【0041】
図6(a)および
図6(b)に示すように、サンプルAはサンプルBよりS32が小さい。2640MHzでは、サンプルAのS32は-42.353dBであり、サンプルBのS32は-40.004dBである。このように、サンプルAのS32はサンプルBのS32より最大で2.3dB小さい。
【0042】
図7(a)および
図7(b)は、それぞれサンプルAおよびBの等価回路である。
図7(a)に示すように、ポート1と3との間の線路は線路L1である。並列共振器P1のポート2側の配線は配線L2であり、並列共振器P1のグランド側の配線は配線L3である。キャパシタンスC1、C2およびC3は、
図5(a)のように、線路L1と配線L2との間の寄生キャパシタンス、線路L1と配線L3との間の寄生キャパシタンスおよび線路L1と共振領域48との寄生キャパシタンスにそれぞれ対応する。線路L1と共振領域48との寄生キャパシタンスは主に共振領域48内の上部電極47と線路L1との寄生キャパシタンスである。サンプルAでは共振領域48の上部電極47がグランドに接続されているため、キャパシタンスC3は並列共振器P1よりグランド側に設けられている。
【0043】
図7(b)における、キャパシタンスC1´、C2´およびC3´は、
図5(b)のように、線路L1と配線L2との間の寄生キャパシタンス、線路L1と配線L3との間の寄生キャパシタンスおよび線路L1と共振領域48との寄生キャパシタンスにそれぞれ対応する。サンプルBでは上部電極47がポート2側に接続されているため、キャパシタンスC3は並列共振器P1よりポート2側に設けられている。
【0044】
さらに、サンプルAではサンプルBより線路L1と配線L2との距離が大きい。このため、C1<C1´となる。サンプルAではサンプルBより線路L1と配線L3との距離が小さい。このため、C2>C2´となる。線路L1と共振領域48における上部電極47との距離はサンプルAとBで同じため、C3=C3´となる。
【0045】
C2+C3>C2´となるため、サンプルAにおいて、並列共振器P1よりグランド側においてキャパシタンスC2+C3を介し線路L1から配線L3および共振領域48に漏洩する信号60aは、サンプルBにおいてキャパシタンスC2´を介し線路L1から配線L3に漏洩する信号60bより大きくなる。
【0046】
C1<C1´+C3´となるため、サンプルAにおいて、並列共振器P1よりポート2側においてキャパシタンスC1を介し線路L1から配線L2に漏洩する信号61aは、サンプルBにおいてキャパシタンスC1´+C3´を介し線路L1から配線L2および共振領域48の上部電極47に漏洩する信号61bより小さくなる。
【0047】
サンプルAでは、ポート3からポート2に漏洩する信号は主に信号60aであり、信号60aは並列共振器P1を通過する。一方、サンプルBでは、ポート3からポート2に漏洩する信号は主に信号61bであり並列共振器P2を通過しない。サンプルAでは並列共振器P1において信号60aを抑圧できるため、サンプルBに比べアイソレーション特性が改善すると考えられる。
【0048】
[シミュレーション]
マルチプレクサAおよびBについてシミュレーションを行った。シミュレーション条件は、上記実験と同じである。マルチプレクサAは実施例1に対応し、マルチプレクサは比較例1に対応する。マルチプレクサAおよびBは、バンド7(送信帯域:2500MH~2570MHz、受信帯域:2620MHz~2690MHz)用のマルチプレクサである。各共振器の共振周波数および反共振周波数はバンド7のマルチプレクサとして機能するように調整した。
【0049】
[マルチプレクサA]
図8(a)は、マルチプレクサAにおける基板10の上面を示す平面図、
図8(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
図8(b)は基板20の下面を上方から透視した平面図である。
【0050】
図8(a)に示すように、基板10の上面に弾性波共振器12および配線14が設けられている。平面に平行な方向をX方向およびY方向とする。弾性波共振器12は、弾性表面波共振器である。基板10の周縁に環状金属層32が設けられている。配線14にビア配線16が接続されている。
【0051】
パッドPa1、Pt1、Pr1およびPg1は、それぞれ共通端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rxおよびグランド端子にビア配線16を介し接続される。パッドPa1は基板10の+Y側の周縁部に設けられ、パッドPt1は基板10の-X側かつ-Y側の角部に設けられている。パッドPa1とPt1との間に直列に直列共振器S11からS16、並列に並列共振器P11からP16が配線14を介し接続されている。直列共振器S11からS16および並列共振器P11からP16は送信フィルタ50を形成する。直列共振器S11からS16およびこれらを接続する配線14は直列経路51である。直列経路51と並列共振器P11からP16を介しパッドPg1に至る経路は並列経路55(
図1参照)である。
【0052】
図8(b)に示すように、基板20の下面に弾性波共振器22および配線24が設けられている。弾性波共振器22は、圧電薄膜共振器である。配線24は下部電極45および上部電極47により形成されている。下部電極45により形成された配線24と上部電極47により形成された配線24のクロスを変えて図示している。配線24にはバンプ26が接続されている。
【0053】
パッドPa2、Pr2およびPg2は、それぞれ共通端子Ant、受信端子Rxおよびグランド端子にバンプ26、配線14およびビア配線16を介し接続される。パッドPa2は基板20の+Y側の周縁部に設けられ、パッドPr2は基板10の+X側かつ-Y側の角部に設けられている。パッドPa2とPr2との間に直列に直列共振器S21からS26、並列に並列共振器P21からP23が配線24を介し接続されている。直列共振器S21からS26および並列共振器P21からP23は受信フィルタ52を形成する。直列共振器S21からS26およびこれらとほぼ同電位の配線24は太点線で示す直列経路53である。直列経路53と並列共振器P21からP23を介しパッドPg2に至る経路は並列経路56(
図1参照)である。
【0054】
図9(a)は、マルチプレクサAにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図9(b)は、
図9(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。基板10に基板20の弾性波共振器22および配線24を重ねて図示している。
図9(a)および
図9(b)に示すように、並列共振器P22の一部が直列共振器S13の一部と重なっている。直列共振器S23とS24と並列共振器P22との間の配線が配線L2に対応し、並列共振器P22とグランドパッドPg2との間の配線が配線L3に対応する。配線L2、L3および並列共振器P22の共振領域と直列経路51とが重なる領域をそれぞれ領域64、65および66としてクロスで図示している。配線L2は下部電極45により形成され、配線L3は上部電極47により形成されている。これにより、領域64では下部電極45と配線14が重なり、領域65では上部電極47と配線14が重なる。並列共振器P22の上部電極47は配線L3に接続される。
【0055】
[マルチプレクサB]
図10(a)は、マルチプレクサBにおける基板10の上面を示す平面図、
図10(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
図10(b)は基板20の下面を上方から透視した平面図である。
図11(a)は、マルチプレクサBにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図11(b)は、
図11(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。
【0056】
図10(a)から
図11(b)に示すように、マルチプレクサBでは、配線24の下部電極45と47がマルチプレクサAとは反対である。配線L2、L3および並列共振器P22の共振領域と直列経路51とが重なる領域をそれぞれ領域64´、65´および66´としてクロスで図示している。配線L2は上部電極47により形成され、配線L3は下部電極45により形成されている。これにより、領域64´では上部電極47と配線14が重なり、領域65´では下部電極45と配線14が重なる。並列共振器P22の上部電極47は配線L2に接続される。その他の構成はマルチプレクサAと同じである。
【0057】
図12(a)はシミュレーションにおけるマルチプレクサAおよびBの周波数に対するアイソレーションを示す図、
図12(b)は、
図12(a)における通過帯域付近の拡大図である。アイソレーションは送信端子Txから受信端子Rxへの高周波信号の漏洩を示している。
【0058】
図12(a)および
図12(b)に示すように、マルチプレクサAではマルチプレクサBに比べアイソレーションが向上している。特に、
図12(b)のように、受信帯域におけるマルチプレクサAのアイソレーションはマルチプレクサBより向上している。
【0059】
マルチプレクサAおよびBのように、並列共振器P22として圧電薄膜共振器を用いる場合、グランドに接続される電極を上部電極47とする場合と下部電極45とする場合が考えられる。上記実験およびシミュレーションによれば、グランドに接続される電極を上部電極47とすることにより、アイソレーションを抑制できる。
【0060】
実施例1によれば、1または複数の並列共振器P21からP23のうち少なくとも1つの並列共振器P22において、下部電極45は直列経路53に接続され、上部電極47はグランドに接続され、共振領域48の少なくとも一部は、直列経路51の少なくとも一部と平面視において重なる。これにより、直列経路51から並列共振器P22を介し直列経路53に漏洩する信号が並列共振器P22により抑圧されるため、アイソレーションを抑制できる。
【0061】
また、並列共振器P22において、共振領域48から引き出された下部電極45の少なくとも一部と、共振領域48から引き出された上部電極47の少なくとも一部と、は直列経路51の少なくとも一部と平面視において重なる。これにより、直列経路51から並列共振器P22、配線L2およびL3を介し直列経路53に漏洩する信号が並列共振器P22により抑圧されるため、アイソレーションを抑制できる。
【0062】
並列共振器P22において、共振領域48の少なくとも一部は、直列共振器S11からS16の少なくとも1つの直列共振器S13の少なくとも一部と平面視において重なる。これにより、アイソレーションをより向上できる。
【0063】
複数の並列共振器P21からP23のうち共通端子Antに近い並列共振器P21を介して送信フィルタ50から受信フィルタ52に信号が漏洩した信号は受信端子Rx側の並列共振器P22、P23および直列共振器S22からS26により抑圧される。よって、並列共振器P21の上部電極47がグランドに接続されており、並列共振器P21で信号を抑圧しても、その効果は大きくない。よって、直列経路51と重なる並列共振器は、複数の並列共振器P21からP23のうち共通端子Antに電気接続上最も近い並列共振器P21以外であることが好ましい。
【0064】
直列共振器S21からS26および並列共振器P21からP23は、直列経路51に平面視において重ならない共振器を含むことが好ましい。これにより、アイソレーションをより抑制できる。
【0065】
直列経路51と重なる並列共振器のうち受信端子Rxに電気接続上最も近い並列共振器P22より受信端子Rxに近い並列共振器P23および直列共振器S24からS26が直列経路51と重なると、送信端子Txから受信端子Rxに漏洩する信号が大きくなる。よって、並列共振器P23および直列共振器S24からS26は直列経路51に平面視において重ならないことが好ましい。これにより、アイソレーションをより抑制できる。
【0066】
[実施例1の変形例1]
図13(a)は、実施例1の変形例1に係るマルチプレクサの基板20の下面を示す平面図、
図13(b)は、切り替え部の断面図である。
図13(a)に示すように、実施例1の変形例1では、配線24の途中に下部電極45と上部電極47とを切り替える切り替え部70が設けられている。直列共振器S23およびS24の上部電極47は配線L2に接続され、並列共振器P22の下部電極45は配線L2に接続されている(
図14(b)参照)。配線L2内において上部電極47と下部電極45を切り替え部70により切り替えている。並列共振器P22の上部電極47は配線L3に接続されている(
図14(b)参照)。
【0067】
図13(b)に示すように、切り替え部70では、圧電膜46の側面に上部電極47が形成されており、切り替え部70において下部電極45と上部電極47とが電気的に接続されている。
【0068】
図14(a)は、実施例1の変形例1のマルチプレクサにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図14(b)は、
図14(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。
図14(a)および
図14(b)に示すように、配線L2と直列経路51との重なる領域64には上部電極47と直列経路51とが重なる領域64aと下部電極45と直列経路51とが重なる領域64bが存在する。領域64bは並列共振器P22と接している。その他の構成は実施例1のマルチプレクサAと同じであり説明を省略する。
【0069】
実施例1の変形例1によれば、並列共振器P22と並列共振器P22に電気接続上最も近い直列共振器S23およびS24とを接続する配線L2は、並列共振器P22において共振領域48から引き出された下部電極45と、直列共振器S23およびS24において共振領域48から引き出された上部電極47と、を電気的に接続する切り替え部70(接続配線)を備える。これにより、並列共振器P22の下部電極45を配線L2に接続できる。切り替え部70は、並列共振器P22と直列共振器S23との間と、並列共振器P22と直列共振器S24との間と、の少なくとも一方に設けられていればよい。切り替え部70は、並列共振器P22とグランドとの間に設けられていてもよい。
【0070】
[実施例1の変形例2]
図15(a)は、実施例1の変形例2における基板10の上面を示す平面図、
図15(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
図15(a)に示すように、実施例1の変形例2の送信フィルタ50では、弾性波共振器12として圧電薄膜共振器が設けられている。パッドPa1とPt2との間の直列に直列共振器S11からS16が接続され、並列に並列共振器P11からP13が接続されている。配線14は、下部電極45または上部電極47により形成されている。
【0071】
図16(a)は、実施例1の変形例2のマルチプレクサにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図16(b)は、
図16(a)における並列共振器P22付近の拡大図である。
図16(a)および
図16(b)に示すように、配線L2と直列経路51との重なる領域64では下部電極45同士が重なり、配線L3と直列経路51とが重なる領域65では上部電極47同士が重なっている。その他の構成は実施例1のマルチプレクサAと同じであり説明を省略する。
【0072】
実施例1の変形例2のように、送信フィルタ50の弾性波共振器12は、圧電薄膜共振器でもよい。並列共振器P22と直列共振器S13が重なる場合、並列共振器P22から引き出された下部電極45と直列共振器S13から引き出された下部電極45とが重なり、並列共振器P22から引き出された上部電極47と直列共振器S13から引き出された上部電極47とが重なることが好ましい。これにより、
図7(a)のキャパシタンスC1はより小さくなり、キャパシタンスC2はより大きくなる。よって、アイソレーションをより抑制できる。
【実施例2】
【0073】
[思考実験]
図17(a)および
図17(b)は、思考実験におけるそれぞれサンプルCおよびDの平面図である。
図18(a)および
図18(b)は、思考実験におけるそれぞれサンプルCおよびDの断面図である。
図18(a)および
図18(b)は、
図17(a)および
図17(b)の線路L1に沿った断面である。サンプルCは実施例1に対応し、サンプルDは比較例2に対応する。
【0074】
図17(a)および
図18(a)に示すように、サンプルCでは、線路L1は基板10上の配線14により形成されている。直列共振器S1は共通端子Antと受信端子Rxとの間に接続されている。直列共振器S1と共通端子Antとの間の配線L4は上部電極47により形成されている。直列共振器S1と受信端子Rxとの間の配線L5は下部電極45により形成されている。線路L1は平面視において配線L4、L5および直列共振器S1と重なっている。
【0075】
図17(b)および
図18(b)に示すように、サンプルDでは、配線L4は下部電極45により形成されている。配線L5は上部電極47により形成されている。その他の構成はサンプルCと同じであり説明を省略する。
【0076】
図19(a)および
図19(b)は、それぞれサンプルCおよびDの等価回路である。
図19(a)に示すように、線路L1は送信端子Txと共通端子Antとの間の直列経路51である。キャパシタンスC1、C2およびC3は、
図18(a)のように、線路L1と配線L4との間の寄生キャパシタンス、線路L1と配線L5との間の寄生キャパシタンスおよび線路L1と共振領域48との寄生キャパシタンス、にそれぞれ対応する。線路L1と共振領域48との寄生キャパシタンスは主に共振領域48内の上部電極47と線路L1との寄生キャパシタンスである。サンプルCでは共振領域48の上部電極47が配線L4に接続されているため、キャパシタンスC3は直列共振器S1より共通端子Ant側に設けられている。
【0077】
図19(b)における、キャパシタンスC1´、C2´およびC3´は、
図18(b)のように、線路L1と配線L4との間の寄生キャパシタンス、線路L1と配線L5との間の寄生キャパシタンスおよび線路L1と共振領域48における下部電極45との寄生キャパシタンス、にそれぞれ対応する。サンプルDでは上部電極47が受信端子Rx側に接続されているため、キャパシタンスC3´は直列共振器S1より受信端子Rx側に設けられている。
【0078】
さらに、サンプルCではサンプルDより線路L1と配線L4との距離が小さい。このため、C1>C1´となる。サンプルCではサンプルDより線路L1と配線L5との距離が大きい。このため、C2<C2´となる。線路L1と共振領域48における上部電極47との距離はサンプルCとDで同じため、C3=C3´となる。
【0079】
C1+C3>C1´となるため、サンプルCにおいて、送信端子TxからキャパシタンスC1+C3を介し線路L1から配線L4および共振領域48に漏洩する信号63aは、サンプルDにおいて送信端子TxからキャパシタンスC1´を介し線路L1から配線L5に漏洩する信号63bより大きくなる。
【0080】
C2<C2´+C3´となるため、サンプルCにおいて、送信端子TxからキャパシタンスC2を介し線路L1から配線L5に漏洩する信号62aは、サンプルDにおいてキャパシタンスC1´+C3´を介し線路L1から配線L5および共振領域48の上部電極47に漏洩する信号62bより小さくなる。
【0081】
サンプルCでは、送信端子Txから受信端子Rxに漏洩する信号は主に信号63aであり、信号63aは直列共振器S1を通過する。一方、サンプルDでは、送信端子Txから受信端子Rxに漏洩する信号は主に信号62bであり直列共振器S1を通過しない。サンプルCで直列共振器S1において信号63aを抑圧できるため、サンプルDに比べアイソレーション特性が改善すると考えられる。
【0082】
図20(a)は、実施例2における基板10の上面を示す平面図、
図20(b)は、基板20の下面を示す平面図である。
図21(a)は、実施例2のマルチプレクサにおける受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図、
図21(b)は、
図21(a)における直列共振器S24付近の拡大図である。
図20(a)から
図21(b)に示すように、実施例2の送信フィルタ50は、実施例1のマルチプレクサAと同じである。直列共振器S24の一部が直列経路51の一部と重なっている。
【0083】
直列共振器S23とS24との間の配線が配線L4に対応し、直列共振器S24とS25との間の配線が配線L5に対応する(
図21(b)参照)。配線L4、L5および直列共振器S24の共振領域と直列経路51とが重なる領域をそれぞれ領域67、68および69としてクロスで図示している。配線L4は上部電極47により形成され、配線L5は下部電極45により形成されている。これにより、領域67では上部電極47と配線14が重なり、領域68では下部電極45と配線14が重なる。直列共振器S24の上部電極47は配線L4に接続される。
【0084】
実施例2によれば、1または複数の直列共振器S21からS26のうち少なくとも1つの直列共振器S24において、下部電極45は受信端子Rxに接続され、上部電極47は共通端子Antに接続されている。共振領域48の少なくとも一部は、直列経路51の少なくとも一部と平面視において重なる。これにより、直列経路51から直列共振器S24を介し直列経路53に漏洩する信号が直列共振器S24により抑圧されるため、アイソレーションを抑制できる。
【0085】
また、直列共振器S24において、共振領域48から引き出された下部電極45の少なくとも一部と、共振領域48から引き出された上部電極47の少なくとも一部と、は直列経路51の少なくとも一部と平面視において重なる。これにより、直列経路51から直列共振器S24、配線L2およびL3を介し直列経路53に漏洩する信号が直列共振器S24により抑圧されるため、アイソレーションを抑制できる。
【0086】
複数の直列共振器S21からS26のうち共通端子Antに近い直列共振器S21を介して送信フィルタ50から受信フィルタ52に信号が漏洩した信号は受信端子Rx側の並列共振器P21からP23および直列共振器S22からS26により抑圧される。よって、直列共振器S21の上部電極47がグランドに接続されており、直列共振器S21で信号を抑圧しても、その効果は大きくない。よって、直列経路51と重なる直列共振器は、複数の直列共振器S21からS26のうち共通端子Antに電気接続上最も近い直列共振器S21以外であることが好ましい。
【0087】
直列共振器S24より受信端子Rxに近い並列共振器P23、直列共振器S25およびS26が直列経路51と重なると、送信端子Txから受信端子Rxに漏洩する信号が大きくなる。よって、並列共振器P23、直列共振器S25およびS26は直列経路51に平面視において重ならないことが好ましい。これにより、アイソレーションをより抑制できる。
【0088】
[実施例2の変形例1]
図22(a)は実施例2の変形例1に係るマルチプレクサにおいて受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図における直列共振器S24付近の図である。
図22(a)に示すように、配線L4およびL5に各々切り替え部70が設けられている。配線L4は直列共振器S23の下部電極45に接続されているが、切り替え部70により配線L4は直列共振器S24の上部電極47に接続されている。配線L5は直列共振器S25の上部電極47に接続されているが、切り替え部70により配線L5は直列共振器S24の下部電極45に接続されている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0089】
実施例2の変形例1によれば、直列共振器S24と直列共振器S24に電気接続上最も近い直列共振器S23およびS25とを接続する配線L4およびL5は、直列共振器S24において共振領域48から引き出された下部電極45および上部電極47の一方と、直列共振器S23およびS25において共振領域48から引き出された下部電極45および上部電極47の他方と、を電気的に接続する切り替え部70(接続配線)を備える。これにより、直列共振器S24の下部電極45および上部電極47をそれぞれ配線L5およびL4に接続できる。切り替え部70は、直列共振器S24と直列共振器S23との間と、直列共振器S24と直列共振器S25との間と、の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0090】
[実施例2の変形例2]
図22(b)は実施例2の変形例2に係るマルチプレクサにおいて受信フィルタ52を基板10の上面に重ねた平面図の直列共振器S24付近の図である。
図22(b)に示すように弾性波共振器12は圧電薄膜共振器である。配線L4と直列経路51との重なる領域67では上部電極47同士が重なり、配線L5と直列経路51とが重なる領域68では下部電極45同士が重なっている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0091】
実施例2の変形例2によれば、直列共振器S24において、共振領域48の少なくとも一部は、1または複数の直列共振器S11からS16の少なくとも1つの直列共振器S13の少なくとも一部と平面視において重なる。これにより、アイソレーションをより向上できる。
【0092】
送信フィルタ50の弾性波共振器12は、圧電薄膜共振器でもよい。直列共振器S24と直列共振器S13が重なる場合、直列共振器S24から引き出された下部電極45と直列共振器S13から引き出された下部電極45とが重なり、直列共振器S24から引き出された上部電極47と直列共振器S13から引き出された上部電極47とが重なることが好ましい。これにより、
図19(a)のキャパシタンスC1はより大きくなり、キャパシタンスC2はより小さくなる。よって、アイソレーションをより抑制できる。
【0093】
実施例1、2およびその変形例において、弾性波共振器12が弾性表面波共振器のとき、直列経路51に直列共振器のIDT42を含め反射器41を含めない。弾性波共振器12が圧電薄膜共振器のとき、直列経路51に共振領域を含める。
【0094】
実施例1、2およびその変形例においては、第1フィルタを受信フィルタ52および第2フィルタを送信フィルタ50として説明したが、第1フィルタが送信フィルタ50であり、第2フィルタが受信フィルタ52でもよい。ラダー型フィルタを構成する直列共振器および並列共振器の個数は任意に設定することができる。基板20を囲むように封止部30が設けられている例を説明したが、封止部30は設けられていなくてもよい。マルチプレクサとしてデュプレクサの例を説明したが、マルチプレクサは、トリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。第1フィルタおよび第2フィルタはマルチプレクサの少なくとも2つのフィルタであればよい。
【0095】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10、20 基板
12、22 弾性波共振器
14、24 配線
16 ビア配線
18 端子
26 バンプ
28 空隙
45 下部電極
46 圧電膜
47 上部電極
48 共振領域
50 送信フィルタ
51、53 直列経路
52 受信フィルタ
55、56 並列経路
70 切り替え部