(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230912BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20230912BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230912BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/48 004
C08G18/48 033
C08G18/76 057
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2019151230
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018156224
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】是佐 尚哉
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-213414(JP,A)
【文献】特開2013-119620(JP,A)
【文献】特表2016-530390(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0047024(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101747485(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0340464(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105461897(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とイソシアネート成分と発泡剤を少なくとも含む発泡ポリウレタン組成物の反応物からなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分は、40質量部以上80質量部以下の第1のポリオール(A)と5質量部以上40質量部以下の第2のポリオール(B)と15質量部以上30質量部以下の第3のポリオール(C)(ただし、第1のポリオール(A)と第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)の添加量の合計は100質量部)を含み、
前記第1のポリオール(A)は、数平均分子量が800以上1500以下、且つ、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が40質量%以上70質量%以下であり、
前記第2のポリオール(B)は、数平均分子量が2000以上4000以下、且つ、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が50質量%以上であり、
前記第3のポリオール(C)は、数平均分子量が2000以上4000以下、且つ、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が20質量%以下であり、
前記イソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネートであり、イソシアネートインデックスが40以上100以下であ
り、
前記第1のポリオール(A)と前記第2のポリオール(B)と前記第3のポリオール(C)は、いずれもポリアルキレンエーテルポリオールである、ことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記第1のポリオール(A)と前記第2のポリオール(B)と前記第3のポリオール(C)は、いずれも
平均官基数が2以上4以下である、請求項1に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
アスカーゴム硬度計F型により測定した温度10℃の雰囲気下での表面硬さと温度30℃の雰囲気下での表面硬さの差が55以下である、請求項1または2に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
通気量150ml/cm
2/s以上であり、圧縮残留ひずみが3.0%以下であり、反発弾性が15%未満であり、かつ40%圧縮硬さが10N以上である請求項3に記載の軟質ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド、マットレス、枕、ソファーや座布団等といった家具類及び/又は寝具類(以下、家具・寝具類)に緩衝材が用いられている。このような緩衝材として、これまで軟質ポリウレタンフォームが多く用いられていた。
【0003】
軟質ポリウレタンフォームのなかでも、反発弾性の低いものである低反発ポリウレタンフォームについては、それに身体の圧力が負荷された場合における身体との接触領域での体圧分散性に優れており、すなわち体圧分布の均等性に優れたものである。このため、緩衝材として低反発ポリウレタンフォームを用いることが望まれてきている。
【0004】
このような低反発ポリウレタンフォームを家具・寝具類における緩衝材として使用する場合においては、低反発ポリウレタンフォームの通気性の悪さという課題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、一般的に従来から用いられてきたポリエーテルポリオールと、該ポリエーテルポリオールに比べてエチレンオキサイド含有率を高めた特定のポリエーテルポリオールとを混合したものをポリオール成分として用いた軟質ポリウレタンフォームが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の軟質ポリウレタンフォームは、高い通気性を実現するものである。
【0008】
しかしながら、昨今では、低反発ポリウレタンフォームを家具・寝具類における緩衝材としての使用を検討する場合に、高い通気性の実現の他に、感温性を抑制できていることが要請されるようになってきた。低反発ポリウレタンフォームが感温性を抑制できているとは、夏場と冬場で気温が異なることに伴って低反発ポリウレタンフォームの物性に相違が発生してしまうことが抑制されることをいう。したがって、感温性を抑制できている低反発ポリウレタンフォームは、家具・寝具類の緩衝材としてより一層優れたものとなる。
【0009】
本発明は、通気性に優れつつ感温性を抑制された軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)ポリオール成分とイソシアネート成分と発泡剤を少なくとも含む発泡ポリウレタン組成物の反応物からなる軟質ポリウレタンフォームであって、
前記ポリオール成分は、40質量部以上80質量部以下の第1のポリオール(A)と5質量部以上40質量部以下の第2のポリオール(B)と15質量部以上30質量部以下の第3のポリオール(C)(ただし、第1のポリオール(A)と第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)の添加量の合計は100質量部)を含み、
前記第1のポリオール(A)は、数平均分子量が800以上1500以下、且つ、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が40質量%以上70質量%以下であり、
前記第2のポリオール(B)は、数平均分子量が2000以上4000以下、且つ、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が50質量%以上であり、
前記第3のポリオール(C)は、数平均分子量が2000以上4000以下、且つ、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が20質量%以下であり、
前記イソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネートであり、イソシアネートインデックスが40以上100以下であり、
前記第1のポリオール(A)と前記第2のポリオール(B)と前記第3のポリオール(C)は、いずれもポリアルキレンエーテルポリオールである、ことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム、
(2)前記第1のポリオール(A)と前記第2のポリオール(B)と前記第3のポリオール(C)は、いずれも平均官基数が2以上4以下である、上記(1)に記載の軟質ポリウレタンフォーム、
(3)アスカーゴム硬度計F型により測定した温度10℃の雰囲気下での表面硬さと温度30℃の雰囲気下での表面硬さの差が55以下である、上記(1)または(2)に記載の軟質ポリウレタンフォーム、
(4)通気量150ml/cm2 /s以上であり、圧縮残留ひずみが3.0%以下であり、反発弾性が15%未満であり、かつ40%圧縮硬さが10N以上である上記(3)に記載の軟質ポリウレタンフォーム、
を要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通気性に優れつつ感温性を抑制された軟質ポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[軟質ポリウレタンフォーム]
本発明は、軟質ポリウレタンフォームである。軟質ポリウレタンフォームは、ポリオール成分とイソシアネート成分と発泡剤を少なくとも含む発泡ポリウレタン組成物の反応物からなる。
【0013】
発泡ポリウレタン組成物を構成するポリオール成分とイソシアネート成分と発泡剤は、次に示すようなものである。
【0014】
(ポリオール成分)
ポリオール成分は、第1のポリオール(A)と第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)を含む。
【0015】
(第1のポリオール)
第1のポリオール(A)は、数平均分子量が800以上1500以下、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率(以下、EO含有率ともいう)が40質量%以上70質量%以下である。第1のポリオール(A)は、平均官能基数が2以上4以下であることが好ましい。
【0016】
軟質ポリウレタンフォームの感温性抑制の観点からは、第1のポリオール(A)は、数平均分子量が900以上1500以下であることが更に好ましい。
【0017】
(第2のポリオール)
第2のポリオール(B)は、数平均分子量が2000以上4000以下、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が50質量%以上である。またエチレンオキサイド単位の含有率の上限は特に限定されず、100質量%以下の範囲において適宜調整することができる。第2のポリオール(B)は、平均官能基数が2以上4以下であることが好ましい。
【0018】
ポリウレタンフォームに形成される隣り合う気泡(セル)間の連通性をより良好にする観点からは、第2のポリオール(B)は、数平均分子量が2500以上3500以下であることが更に好ましい。
【0019】
(第3のポリオール)
第3のポリオール(C)は、数平均分子量が2000以上4000以下、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、エチレンオキサイド単位の含有率が20質量%以下である。またエチレンオキサイド単位の含有率の下限は特に限定されず、0質量%以上の範囲において適宜調整することができる。第3のポリオール(C)は、平均官能基数が2以上4以下であることが好ましい。
【0020】
第1のポリオール(A)と第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)は、それぞれ個別に、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどであってもよいが、特に限定されない。
【0021】
(水酸基価)
第1のポリオール(A)は、水酸基価が110mgKOH/g以上210mgKOH/g以下であることが好ましく、水酸基価が130mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であることが更に好ましい。第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)はいずれも水酸基価が40mgKOH/g以上90mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0022】
なお、第1のポリオール(A)と第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)それぞれについて、水酸基価はJIS K 1557 1に基づき測定することができる。
【0023】
(添加量)
発泡ポリウレタン組成物には、第1のポリオール(A)と第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)の添加量の合計を100質量部とする場合に、ポリオール成分として、40質量部以上80質量部以下の第1のポリオール(A)と5質量部以上40質量部以下の第2のポリオール(B)と15質量部以上30質量部以下の第3のポリオール(C)が含まれる。
【0024】
第1のポリオール(A)の添加量が40質量部未満では、軟質ポリウレタンフォームの反発弾性が高くなりすぎてしまうおそれがある。第1のポリオール(A)の添加量が80質量部を超えると、軟質ポリウレタンフォームに形成されるセルが大きくなり、セルの均一性に劣るものができてしまう虞がある。
【0025】
第2のポリオール(B)の添加量が5質量部未満では、ウレタンフォームのセルの連通性が低下するという虞がある。第2のポリオール(B)の添加量が40質量部を超えると、軟質ポリウレタンフォームに形成されるセルが大きくなり、セルの均一性に劣るものができてしまう虞がある。
【0026】
第3のポリオール(C)の添加量が15質量部未満では、軟質ウレタンフォームが発泡状態を保てず沈み込む現象(いわゆるコラップス現象)を生じる虞がある。第3のポリオール(C)の添加量が30質量部を超えると、軟質ウレタンフォームの通気性が悪化し、さらにフォームが脆くなる虞がある。
【0027】
(その他のポリオール)
ポリオール成分には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記した第1のポリオール(A)と第2のポリオール(B)と第3のポリオール(C)のいずれにも該当しないその他のポリオール(ポリオール(D)と呼ぶ)が含まれてもよい。ポリオール成分にポリオール(D)が含まれる場合、ポリオール(D)の添加量は、ポリオール成分全体量100質量%において20質量%以下であることが好ましい。尚、ここでいうポリオール成分全体量とは、第1のポリオール(A)、第2のポリオール(B)および第3のポリオール(C)に加え、上記ポリオール(D)を含めたポリオール成分の全体量を指す。ポリオール(D)が20質量%を超えてポリオール成分に含まれると、得られる軟質ポリウレタンフォームの感温性が悪化してしまう虞があるほか、通気性が低下してしまう虞がある。
【0028】
(イソシアネート成分)
イソシアネート成分は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDIと呼ぶことがある。)であり、発泡ポリウレタン組成物におけるイソシアネートインデックスが40以上100以下である。
【0029】
イソシアネート成分がMDIであるために、イソシアネート成分がトリレンジイソシアネート(TDIと呼ぶことがある。)である軟質ポリウレタンフォームよりも反発弾性を低く、また、通気性をより高いものとすることができる。
【0030】
イソシアネートインデックスが40以上であることで、感温性の抑制性を保ちながら40%圧縮硬さが10N以上に保持された軟質ポリウレタンフォームを効率的に得ることができるという効果を得ることができる。この効果を得る観点から、イソシアネートインデックスが60以上であることが更に好ましい。また、イソシアネートインデックスが100以下であることで、温度10℃雰囲気下の表面硬さが硬くなりすぎる虞を抑制するという効果を得ることができる。この効果を得る観点から、イソシアネートインデックスが80以下であることがさらに好ましい。
【0031】
(イソシアネートインデックスの特定方法)
イソシアネートインデックスは、発泡ポリウレタン組成物におけるイソシアネート成分に含まれるイソシアネート基と、ポリオール成分及び発泡剤の水等に含まれる活性水素の当量比を算出することで特定することができる。
【0032】
(発泡剤)
発泡剤としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のもの等が適宜選択されてよい。具体的に、発泡剤としては水が好適に用いられる。
【0033】
発泡剤の添加量は、軟質ポリウレタンフォームの用途に応じて適宜設定される。例えば、得られる軟質ポリウレタンフォームをマットレスとして使用した際にマットレスの密度や40%圧縮硬さを適切にする観点では、ポリオール成分100質量部に対して、水が0.5質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。
【0034】
発泡ポリウレタン組成物には、上記したポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤が含まれる他に、本発明の効果を損なわない範囲で整泡剤、触媒が添加されてよく、さらにその他の各種の添加物が添加されてもよい。
【0035】
(整泡剤)
整泡剤としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のもの等を適宜選択することができ、例えば、シロキサン-ポリエーテルブロック共重合体のシリコーン系化合物が挙げられる。
【0036】
整泡剤の添加量は、得られる軟質ポリウレタンフォームのセルを均一にするために、ポリオール成分100質量部に対して、0.5質量部以上2.0質量部以下の範囲であることが好ましい。整泡剤の添加量が0.5質量部未満では、軟質ポリウレタンフォームのセルが均一形成されなくなる虞がある。整泡剤の添加量が2.0質量部を超えると、通気量が低くなる虞がある。
【0037】
(触媒)
触媒としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いることができるものを適宜選択されてよい。例えば、触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、イミダゾール等の3級アミン化合物などのアミン系触媒を用いることができる。また、スタナスオクトエート等の錫化合物、ニッケルアセチルアセトネート等のニッケル化合物などの金属系触媒を用いることもできる。これら触媒としては単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、触媒の添加量は、ポリオール成分100質量部に対して、0.3質量部以上1.0質量部以下とされること好ましい。
【0038】
(他の添加剤)
ポリオール成分、イソシアネート成分、発泡剤、整泡剤、触媒の他に、必要に応じて、さらに他の添加剤が添加されてもよい。他の添加剤としては、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、紫外線吸収剤などポリウレタンフォームの製造に際して一般的に使用可能な添加剤をあげることができる。他の添加剤の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜選択されてよい。
【0039】
上述したような発泡ポリウレタン組成物の反応物が、本発明の軟質ポリウレタンフォームである。本発明の軟質ポリウレタンフォームは、通気量が150ml/cm2/s以上であり、温度10℃の雰囲気下での表面硬さと温度30℃の雰囲気下での表面硬さの差の絶対値が55以下である。軟質ポリウレタンフォームは、温度10℃の雰囲気下での表面硬さと温度30℃の雰囲気下での表面硬さの差が55以下の範囲に抑えられているものであることから、感温性の抑制されたものである。また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、通気量が150ml/cm2/s以上であることから、通気性に優れたものである。なお、感温性の観点からは、軟質ポリウレタンフォームは、温度10℃の雰囲気下での表面硬さと温度30℃の雰囲気下での表面硬さの差が35以下であることが、より好ましい。
特に本発明の所期の課題を良好に解決するとともに優れた軟質性を示す軟質ポリウレタンフォームを提供するという観点からは、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、アスカーゴム硬度計F型により測定した温度10℃の雰囲気下での表面硬さと温度30℃の雰囲気下での表面硬さの差の絶対値が55以下であるとともに、通気量150ml/cm2/s以上であり、圧縮残留ひずみが3.0%以下であり、反発弾性が15%未満であり、かつ40%圧縮硬さが10N以上であることがさらに好ましい。
【0040】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、圧縮残留ひずみが3.0%以下であり、反発弾性が15%未満であり、40%圧縮硬さが10N以上である。したがって、軟質ポリウレタンフォームは、低反発ポリウレタンフォームとしてきわめて優れた性質を有する。軟質ポリウレタンフォームは、反発弾性が15%未満以下であることから衝撃を吸収しやすい。そして、軟質ポリウレタンフォームは、圧縮残留ひずみが3.0%以下であることから長期間の使用においても復元性がよく、へたりにくい。また、軟質ポリウレタンフォームは、40%圧縮硬さが10N以上であることから、適度な力で変形する程度の硬さを有するものである。
【0041】
なお、上記した軟質ポリウレタンフォームの通気性、表面硬さ、圧縮残留ひずみ、反発弾性、圧縮硬さは、それぞれ次のように特定することができる。
【0042】
(通気性の特定方法)
軟質ポリウレタンフォームの通気性は、通気量(ml/cm2/s)によって特定することができる。この通気量は、例えばJIS K 6400 7 B法(フラジール式通気量)にて測定することができる。
【0043】
(表面硬さの特定方法)
軟質ポリウレタンフォームの表面硬さは、次のように特定することができる。すなわち、軟質ポリウレタンフォームを縦150mm×横150mm×高さ50mmの寸法に調製し、これを試験片とする。所定温度(10℃、30℃)雰囲気下で試験片を1時間静置し、その後に、アスカーゴム硬度計F型を試験片上に載せ、その時点から20秒後における試験片表面の硬さの数値を測定する。この数値が軟質ポリウレタンフォームの表面硬さとなる。所定温度として10℃、30℃が選択されることで、軟質ポリウレタンフォームについて、10℃雰囲気下での表面硬さ、30℃雰囲気下での表面硬さを特定することができる。
【0044】
(圧縮残留ひずみの特定方法)
軟質ポリウレタンフォームの圧縮残留ひずみ(%)は、JIS K 6400 4 A法に準じた方法にて測定することができる。
【0045】
(反発弾性の特定方法)
軟質ポリウレタンフォームの反発弾性(%)は、JIS K 6400 3に準じた方法にて測定することができる。
【0046】
(40%圧縮硬さの特定方法)
軟質ポリウレタンフォームの40%圧縮硬さ(N)は、JIS K 6400 2 A法に準じた方法にて測定することができる。
【0047】
(密度)
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、その密度が30kg/m3以上60kg/m3以下であることが好ましい。軟質ポリウレタンフォームの密度が30kg/m3未満の場合、軟質ポリウレタンフォームがへたり易くなるおそれがあり、一方、60kg/m3を超える場合、家具や寝具の緩衝材などといった様々な用途で軟質ポリウレタンフォームを使用した場合にその質量が大きくなりすぎて使い辛いものになってしまう。
【0048】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、このように通気性に優れつつ感温性を抑制されたものであるともに低反発ポリウレタンフォームとして優れたものであることから、ベッド、マットレス、枕、ソファーや座布団等といった家具や寝具の緩衝材の用途に非常に適している。また、本発明の軟質ポリウレタンフォームは、洗浄用のスポンジ、フィルター、パット、スポーツ用品、サポーター、水耕栽培用マット、食品用等といった用途でも好適に使用することができるものである。
【0049】
(軟質ポリウレタンフォームの製造方法)
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、特に限定されず、従前より公知の方法等を適宜採用されてよい。例えば、ポリオール成分に、発泡剤、整泡剤、触媒といったイソシアネート成分を除いたその他の成分を混合して混合物を調製し、その後、その混合物に対してイソシアネート成分を混合して発泡ポリウレタン組成物を形成する。発泡ポリウレタン組成物では、ウレタン反応が生じてポリウレタン樹脂が形成されていくとともに発泡剤の作用によってポリウレタン樹脂が発泡した状態となる。こうして本発明の軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0050】
次に、実施例を用いて本発明を更に説明する。
【実施例】
【0051】
まず、ポリオール化合物、イソシアネート化合物、発泡剤、整泡剤、触媒が準備された。
【0052】
ポリオール化合物としては、4種類のポリエーテルポリオール(次に示すポリエーテルポリオール(1)からポリエーテルポリオール(4))が準備された。ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール(1)からポリエーテルポリオール(4)の4種類の化合物より選択されたポリオール化合物の組み合わせで形成された。
【0053】
ポリエーテルポリオール(1)は、数平均分子量が1000、官能基数が3、水酸基価が167mgKOH/g、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、EO含有率が50質量%のポリエーテルポリオール(ダウ・ケミカル社製、商品名VORANOL(商標) WK3140)である。
【0054】
ポリエーテルポリオール(2)は、数平均分子量が3360、官能基数が3、水酸基価が50mgKOH/g、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、EO含有率が75質量%のポリエーテルポリオール(三井化学株式会社製、商品名アクトコール(商標)EP-505S)である。
【0055】
ポリエーテルポリオール(3)は、数平均分子量が3000、官能基数が3、水酸基価が56mgKOH/g、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、EO含有率が0質量%のポリエーテルポリオール(旭硝子株式会社製、商品名EXCENOL(商標)3030)である。
【0056】
ポリエーテルポリオール(4)は、数平均分子量が700、官能基数が3、水酸基価が240mgKOH/g、アルキレンオキサイド単位の全量を100質量%とした場合に、EO含有率が0質量%のポリエーテルポリオール(旭硝子株式会社製、商品名EXCENOL(商標)730)である。
【0057】
ポリエーテルポリオール(1)は、第1のポリオール(A)に対応し、ポリエーテルポリオール(2)は、第2のポリオール(B)に対応し、ポリエーテルポリオール(3)は、第3のポリオール(C)に対応し、ポリエーテルポリオール(4)は、その他のポリオール(D)に対応している。
【0058】
イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトリレンジイソシアネート(TDI)が準備された。本発明の軟質ポリウレタンフォームにおけるイソシアネート成分となるイソシアネート化合物には、MDIが対応する。
【0059】
発泡剤としては、水が用いられた。
【0060】
整泡剤としては、シリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名SF-2904)が準備された。
【0061】
触媒としては、第3級アミン系触媒A(触媒A)と第3級アミン系触媒B(触媒B)が準備された。触媒Aは、トリエチレンジアミンの含有量が33質量%であるジプロピレングリコール溶液(東ソー株式会社製、商品名TEDA(商標)-L33)である。触媒Bは、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(東ソー株式会社製、商品名TOYOCAT(商標) ETS)である。
【0062】
実施例1から14、比較例1から8
表1、表2に示すような添加量にてポリオール成分、発泡剤、整泡剤、触媒を混合して混合物を調製し、その後、その混合物に対してイソシアネート成分を混合して発泡ポリウレタン組成物を形成するとともに上面の解放された矩形の箱型容器に投入した。箱型容器内で発泡ポリウレタン組成物では、ウレタン反応が生じてポリウレタン樹脂が形成されていくとともに発泡剤の作用によってポリウレタン樹脂が発泡した状態となり、軟質ポリウレタンフォームが得られた。
【0063】
なお、表1、表2中、イソシアネートインデックスの欄に記載された数値を除き、発泡ポリウレタン組成物の欄(ポリオール成分の欄、整泡剤の欄、発泡剤の欄、触媒の欄、イソシアネート成分の欄の各欄)に記載された各数値の単位は、質量部である。
【0064】
実施例1から14、比較例1から8で得られた軟質ポリウレタンフォームの発泡状態を目視にて観察して次のように、発泡性評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0065】
(発泡性評価)
○(良好): 発泡によって軟質ポリウレタンフォームに形成されたセルの大きさが均一で、軟質ポリウレタンフォームの発泡直後の沈みこみも認められない。
×(不良): 発泡によって軟質ポリウレタンフォームに形成されたセルの大きさが均一でなく、および/又は、軟質ポリウレタンフォームの発泡直後の沈みこみが認められる。
【0066】
比較例2で得られた軟質ポリウレタンフォームについては、セルが大きくなりすぎ、不均一であり、比較例7で得られた軟質ポリウレタンフォームについては、軟質ポリウレタンフォームの発泡直後の沈みこみが認められたため、いずれについても発泡性評価が×(不良)であった。
【0067】
実施例1から14、比較例1および3から6、ならびに比較例8で得られた軟質ポリウレタンフォームを用いて、上述した方法に従い、密度、40%圧縮硬さ、反発弾性、圧縮残留ひずみ、通気量)を特定した。また、実施例1から14、比較例1、4、5、6および8で得られた軟質ポリウレタンフォームを用いて、温度10℃の雰囲気下での表面硬さ(T1)、温度30℃の雰囲気下での表面硬さ(T2)を特定した。そして、T1とT2の差の絶対値に基づき、次のように、感温性の評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0068】
(感温性の評価)
A(きわめて良好):T1とT2の差の絶対値が20以下である。
B(より良好):T1とT2の差の絶対値が20を超え、35以下である。
C(良好):T1とT2の差の絶対値が35を超え、55以下である。
D(不良):T1とT2の差の絶対値が55を超え、65以下である。
E(きわめて不良):T1とT2の差の絶対値が65を超える。
【0069】
【0070】