(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】日焼け止め用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/894 20060101AFI20230912BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230912BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230912BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230912BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230912BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/34
A61K8/891
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2019151794
(22)【出願日】2019-08-22
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】519305672
【氏名又は名称】藤之原 飛馬
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(74)【代理人】
【識別番号】100150212
【氏名又は名称】上野山 温子
(72)【発明者】
【氏名】藤之原 飛馬
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛微粒子と、架橋型ポリエーテル変性シリコーンと、シリコーン油と、
水と、を含み、
該酸化亜鉛微粒子の含有割合が、
15重量%~
30重量%であり、
酸化チタン微粒子を含まないか、または、0.8重量%以下の含有割合で含み、
該シリコーン油が、ジメチコンを含み、
該ジメチコンの含有割合が、5重量%~15重量%であり、
該架橋型ポリエーテル変性シリコーンが、架橋型ポリオキシエチレン変性シリコーンであり、
該架橋型ポリオキシエチレン変性シリコーンの含有割合が、0.01重量%~1重量%であり、
紫外線吸収剤を含まない、日焼け止め用組成物
(ただし、非架橋型シリコーン活性剤を含むものを除く)。
【請求項2】
前記架橋型
ポリオキシエチレン変性シリコーンの含有割合が、0.01重量%~
0.8重量%である、請求項1に記載の日焼け止め用組成物。
【請求項3】
前記
ジメチコンの含有割合が、
8重量%~
13重量%である、請求項1または2に記載の日焼け止め用組成物。
【請求項4】
パラオキシ安息香酸アルキルエステル、フェノキシエタノールおよびトリクロサン
を含まない、請求項1から
3のいずれかに記載の日焼け止め用組成物。
【請求項5】
1,2-ヘキサンジオールを1.0重量%~3.0重量%の含有割合でさらに含む、請求項4に記載の日焼け止め用組成物。
【請求項6】
前記架橋型ポリオキシエチレン変性シリコーンが、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、および(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーから選択される、請求項1から5のいずれかに記載の日焼け止め用組成物。
【請求項7】
前記架橋型ポリオキシエチレン変性シリコーンが、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーである、請求項1から5のいずれかに記載の日焼け止め用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け止め用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め用組成物には、通常、紫外線から肌を守るための成分として、紫外線吸収剤および/または紫外線散乱剤が配合されている(特許文献1等)。
【0003】
近年、日焼け止め用組成物に配合される紫外線吸収剤の一部(具体的には、オキシベンゾン、オクチノキサート、オクトクリレンおよびエンザカメン)がサンゴ礁に悪影響を及ぼす可能性が指摘され、一部の国または地域においては、そのような成分を含む日焼け止め用組成物の販売や使用の禁止が決定されている。
【0004】
紫外線吸収剤を用いることなく、高い紫外線防御効果を得るためには、紫外線散乱剤の配合量を増加させる必要があるが、紫外線散乱剤の配合量を増加させた場合、日焼け止め用組成物を塗布する際の伸びや塗布後の感触が悪くなる等の使用感の問題や、塗布後の肌が不自然に白くなる白浮きの問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、使用を禁止された上記特定の紫外線吸収剤を含まない日焼け止め用組成物であって、使用感の問題および白浮きの問題が改善された日焼け止め用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの局面によれば、酸化亜鉛微粒子と、架橋型ポリエーテル変性シリコーンと、シリコーン油と、を含み、該酸化亜鉛微粒子の含有割合が、8重量%~40重量%であり、酸化チタン微粒子を含まないか、または、0.8重量%以下の含有割合で含み、紫外線吸収剤を含まない、日焼け止め用組成物が提供される。
1つの実施形態において、上記架橋型ポリエーテル変性シリコーンの含有割合が、0.01重量%~1重量%である。
1つの実施形態において、上記シリコーン油の含有割合が、5重量%~15重量%である。
1つの実施形態において、上記酸化亜鉛微粒子の含有割合が、15重量%~30重量%であり、上記架橋型ポリエーテル変性シリコーンが、(ジメチコン/PEG-10/15)クロスポリマーであり、該(ジメチコン/PEG-10/15)クロスポリマーの含有割合が、0.01重量%~1重量%であり、上記シリコーン油が、ジメチコンであり、該ジメチコンの配合割合が、5重量%~15重量%である。
1つの実施形態において、上記日焼け止め用組成物は、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、フェノキシエタノールおよびトリクロサンを実質的に含まない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記禁止成分を含まない日焼け止め用組成物であって、使用感の問題および白浮きの問題が改善された日焼け止め用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態による日焼け止め用組成物は、酸化亜鉛(ZnO)微粒子と、架橋型ポリエーテル変性シリコーンと、シリコーン油と、を含み、該酸化亜鉛微粒子の含有割合が、8重量%~40重量%であり、酸化チタン(TiO2)微粒子を含まないか、または、0.8重量%以下の含有割合で含む。上記日焼け止め用組成物は、目的に応じて、シリコーン油以外の油剤、水および任意の適切な成分をさらに含むことができる。
【0010】
なお、本発明において、上記酸化亜鉛微粒子および酸化チタン微粒子は、紫外線散乱剤として機能するものであり、以下の説明において、両者をまとめて紫外線散乱剤と称する場合がある。また、本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。同様に、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
【0011】
上記日焼け止め用組成物は、オキシベンゾン、オクチノキサート、オクトクリレンおよびエンザカメンから選択される紫外線吸収剤を含まず、代表的には、これら以外の紫外線吸収剤(例えば、メトキシケイ皮酸オクチル等の桂皮酸誘導体、サリチル酸オクチル等のサリチル酸誘導体)も含まない。本発明の実施形態による日焼け止め用組成物においては、紫外線散乱剤の分散安定性が優れることから、紫外線吸収剤を配合しなくても、十分な紫外線防御効果が発揮され得る。紫外線吸収剤を含まない日焼け止め用組成物によれば、サンゴ礁への悪影響が低減されるだけでなく、皮膚への刺激性も低減され得る。
【0012】
1つの実施形態において、上記日焼け止め用組成物は、油中水型の乳化組成物である。架橋型ポリエーテル変性シリコーンを用いることにより、酸化亜鉛微粒子を極めて良好にシリコーン油を含む油相中に分散できるとともに、内相中に大量の水を保持することができる。その結果、実用上十分な日焼け止め効果を維持しつつ、白浮きの原因となり得る酸化チタンの含有割合を所定の値以下とすることができ、かつ、使用感に優れた日焼け止め用組成物が得られ得る。
【0013】
以下、日焼け止め用組成物に配合され得る成分について説明する。
【0014】
〈酸化亜鉛微粒子〉
酸化亜鉛微粒子としては、日焼け止め効果および使用感の観点から、好ましくは平均粒子径が10nm~200nm、より好ましくは20nm~100nm、さらに好ましくは20nm~80nmであるものが用いられ得る。また、上記粒子径範囲を超えると、白浮きの抑制が不十分となる場合がある。上記平均粒子径は、任意の適切な方法、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定可能である。
【0015】
酸化亜鉛微粒子には、分散性を向上させる観点から、表面処理が施され得る。1つの実施形態において、表面処理は、疎水化処理であり得る。
【0016】
酸化亜鉛微粒子表面の疎水化処理法としては、脂肪酸処理(例えば、イソステアリン酸)、脂肪アルコール処理(例えば、ステアリルアルコール)、シリコーン処理(例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン)、フッ素処理(例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等)等が挙げられる。
【0017】
疎水化処理における表面処理量は、処理対象の酸化亜鉛微粒子の重量に対して、好ましくは、0.1重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~5重量%であり得る。
【0018】
酸化亜鉛微粒子は、粉体としてそのまま用いてもよいが、分散性向上の観点から、分散媒に分散した分散体として用いることができる。例えば、疎水化処理された酸化亜鉛微粒子は、分散剤を用いて油性成分に分散させた分散体として用いることができる。分散剤としては、ポリヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸等が挙げられる。また、油性成分としては、炭化水素油(イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン等の炭素数8~16のイソアルカン等)、エステル油(トリエチルヘキサノイン、安息香酸C12-15アルキル等)、天然油(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等)が挙げられる。分散体における酸化亜鉛微粒子の含有割合は、例えば50重量%~70重量%であり得る。このような酸化亜鉛微粒子の分散体としては、Croda社製のsolaveilTM CZシリーズ(CZ-100、CZ-200、CZ-300)、鈴木油脂工業社製の商品名「プルセアMZS-5104」等の市販品を用いることもできる。なかでも、solaveilTM CZシリーズは、酸化亜鉛微粒子の粒度分布が非常に狭く制御され、かつ、二次粒子が出来にくいように高度に分散処理されており、結果として、実用上十分な紫外線防御効果を有し、分散安定性に優れた日焼け止め用組成物が得られ得る点で好ましい。
【0019】
日焼け止め用組成物における酸化亜鉛微粒子の含有割合は、例えば8重量%以上であり、好ましくは8重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~35重量%、さらに好ましくは11重量%~30重量%、さらにより好ましくは15重量%~30重量%、さらにより好ましくは15重量%~20重量%である。上記含有割合であれば、実用上十分な紫外線防御効果を得つつ、白浮きおよび使用感の問題を解決することができる。
【0020】
〈酸化チタン微粒子〉
本発明の実施形態による日焼け止め用組成物において、酸化チタン微粒子は、任意成分である。日焼け止め用組成物における酸化チタン微粒子の含有割合は、0重量%~0.8重量%であり、好ましくは0重量%~0.5重量%である。酸化チタン微粒子の含有割合が0.8重量%を超えると、白浮きが生じる場合がある。
【0021】
酸化チタン微粒子の平均粒子径は、日焼け止め効果および使用感の観点より、好ましくは10nm~200nmであり、より好ましくは10nm~100nm、さらに好ましくは10nm~50nmである。上記平均粒子径は、任意の適切な方法、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定可能である。
【0022】
酸化チタン微粒子には、紫外線散乱効果を向上する観点から、表面処理が施され得る。酸化チタン微粒子の表面処理法としては、任意の適切な方法が用いられ得る。例えば、酸化チタン微粒子表面に油脂を吸着させる方法、脂肪酸処理、金属石鹸処理、シリコーン処理、フッ素処理等が挙げられる。また、酸化チタン微粒子は、他の無機材料で被覆され、複合体微粒子とされた後に表面処理が施されてもよい。他の無機材料としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。
【0023】
上記酸化チタン微粒子の表面処理量は、表面処理後の酸化チタン微粒子に対して、好ましくは1重量%~15重量%である。
【0024】
酸化チタン微粒子は、粉体としてそのまま用いてもよいが、分散性向上の観点から、分散媒に分散した分散体として用いることができる。例えば、表面処理された酸化チタン微粒子は、分散剤を用いて油性成分に分散させた分散体として用いることができる。分散剤および油性成分としては、上記酸化亜鉛微粒子の分散体に関して例示したものが同様に例示される。分散体における酸化チタン微粒子の含有割合は、例えば40重量%~60重量%であり得る。このような酸化チタン微粒子の分散体としては、Croda社製のsolaveilTM XTシリーズ等の市販品を用いることもできる。
【0025】
〈架橋型ポリエーテル変性シリコーン〉
架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、日焼け止め用組成物の乳化安定性を向上させ得る。また、架橋型ポリエーテル変性シリコーンとシリコーン油とを組み合わせて用いることにより、優れた安定性および実用上十分な日焼け止め効果を維持しつつ、水系ジェルに匹敵するようなみずみずしい塗布時の伸びやサラサラとした塗布後の感触が得られ得る。
【0026】
架橋型ポリエーテル変性シリコーンとしては、主鎖骨格をなすシリコーン鎖同士がポリエーテル鎖で架橋している任意の適切なシリコーン架橋物を用いることができる。当該ポリエーテル鎖としては、2価のポリオキシアルキレン基が好ましく、炭素数2~8のポリオキシアルキレン基がより好ましく、炭素数2~4のポリオキシアルキレン基(ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等)がさらに好ましく、ポリオキシエチレン基がさらにより好ましい。また、主鎖骨格をなすシリコーン鎖は、好ましくはポリジメチルシロキサン骨格を含み、当該ポリジメチルシロキサン骨格は、目的に応じてメチル基の一部がアルキル基で変性されていてもよい。アルキル基で変性されている場合のアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状の炭素数8~20のアルキル基(カプリル基、ラウリル基、ミリスチル基等)が挙げられる。
【0027】
架橋型ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、(ジメチコン/(PEG-10/15)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。なかでも、(ジメチコン/(PEG-10/15)クロスポリマーが好ましく用いられる。1つの実施形態において、(ジメチコン/(PEG-10/15)クロスポリマーは、例えば、下記式(I)で表される構造を有し得る。
【化1】
(式中、nは3~30、pは1~10、qは1~250の整数である)
【0028】
日焼け止め用組成物における架橋型ポリエーテル変性シリコーンの含有割合は、好ましくは0.01重量%~1.0重量%、より好ましくは0.02重量%~0.8重量%、さらに好ましくは0.03重量%~0.6重量%、さらにより好ましくは0.05重量%~0.4重量%である。上記含有割合であれば、高い安定性を有し、使用感に優れた日焼け止め用組成物が得られ得る。
【0029】
〈シリコーン油〉
シリコーン油としては、従来から化粧料等に用いられているものを用いることができる。具体例としては、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、カプリリルメチコン、ジメチコン(ジメチルポリシロキサンとも称する)、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等が挙げられる。シリコーン油を用いることにより、優れた使用感を有し、かつ、安定性に優れた日焼け止め用組成物が得られ得る。
【0030】
上記シリコーン油の中でも、ジメチコンが好ましい。ジメチコンと上記架橋型ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(ジメチコン/(PEG-10/15)クロスポリマー)とを組み合わせて用いることにより、十分な日焼け止め効果を維持しつつ、水系ジェルに匹敵するようなみずみずしい塗布時の伸びやサラサラとした塗布後の感触が得られ得る。
【0031】
日焼け止め用組成物におけるシリコーン油の含有割合は、好ましくは3重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~15重量%であり、さらに好ましくは8重量%~13重量%である。
【0032】
〈他の油剤〉
シリコーン油以外の油剤としては、エステル油、天然油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール等が挙げられる。
【0033】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-へプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-へプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、トリエチルヘキサノイン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0034】
天然油としては、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、ククイナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
【0035】
炭化水素油としては、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン等の炭素数8~16のイソアルカン(イソパラフィン)、ミネラルオイル、スクワラン等が挙げられる。
【0036】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ラノリン酸等が挙げられる。
【0037】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0038】
日焼け止め用組成物における上記他の油剤の含有割合は、例えばシリコーン油との合計配合割合が10重量%~45重量%、好ましくは12重量%~40重量%、より好ましくは15重量%~30重量%となるように設定され得る。
【0039】
〈水〉
水としては、通常化粧料に適用し得る水を用いることができる。
【0040】
日焼け止め用組成物における水の含有割合は、例えば30重量%~80重量%であり、好ましくは35重量%~75重量%、より好ましくは40重量%~65重量%、さらに好ましくは45重量%~60重量%である。
【0041】
〈他の成分〉
上記日焼け止め用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記成分以外の他の成分を含むことができる。他の成分としては、化粧品に配合し得る成分であればよく、増粘剤および/または乳化安定剤、乳化剤、美容成分、保湿剤および感触向上剤、pH調整剤、塩、香料、防腐剤等が挙げられる。
【0042】
増粘剤および/または乳化安定剤としては、通常化粧料に適用し得る増粘剤および/または乳化安定剤を用いることができる。具体例としては、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマー)、メチルビニルエーテル(PVM)/マレイン酸(MA)/デカジエン)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン(VP))コポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー等が挙げられる。
【0043】
日焼け止め用組成物における上記増粘剤および/または乳化安定剤の含有割合は、例えば0.05重量%~1重量%、好ましくは0.1重量%~0.5重量%である。本発明の日焼け止め用組成物においては、上記架橋型ポリエーテル変性シリコーンが優れた乳化安定性および増粘効果を発揮し得ることから、さらなる増粘剤および/または乳化安定剤を使用しない場合であっても、日焼け止め用組成物をジェル状の剤型にすることができる。
【0044】
乳化剤としては、通常化粧料に適用し得る乳化剤を用いることができる。好ましくは非イオン性界面活性剤が用いられ、エステル型もしくはエーテルエステル型非イオン性界面活性剤がより好ましい。具体例としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0045】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類としては、ポリオキシエチレン(6)モノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン(10)モノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン(30)モノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレン(1)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(2)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(4)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(10)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(25)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(40)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(45)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(55)モノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(60)モノイソステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(2)モノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(6)モノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(10)モノオレイン酸エステル等が例示される。また、ポリオキシエチレンのジ(12-ヒドロキシステアリン酸)エステル(INCI名:ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30)を用いることもできる。
【0046】
日焼け止め用組成物における乳化剤の含有割合は、好ましくは0.5重量%~5重量%であり得る。
【0047】
美容成分としては、例えばナイアシンアミド、コンフリー葉エキス、イザヨイバラエキス、アラントイン、ヤエヤマアオキ果汁、テルミナリアフェルジナンジアナ果実エキス、ミルシアリアデュビア果実エキス、アスコルビルグルコシド、アルファグルコシルヘスペリジン、ワイルドタイムエキス、マンダリンオレンジ果皮エキス、ダイズ種子エキス、オウゴン根エキス、キサントフィル、シアノコバラミン等が挙げられる。
【0048】
保湿剤および感触向上剤としては、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、1,2-ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ヘキシレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体等のポリオール類及びその重合体;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシジグリコール)、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコールアルキルエーテル類;(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10等のエステル;α―グルカン、ヒアルロン酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、カラギーナン、ポリエチレンオキサイド等の水溶性ポリマー;グルコシルセラミド等の糖脂質;等が挙げられる。
【0049】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、クエン酸、グリコール酸等が挙げられる。
【0050】
防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、ベンジルパラベン等のパラベン(パラオキシ安息香酸アルキルエステル)、トリクロサン、フェノキシエタノール等が挙げられるが、好ましくは、上記日焼け止め用組成物は、これらの防腐剤を実質的に含まない。これらの防腐剤もまた、サンゴ礁に悪影響を及ぼす可能性が指摘されているからである。例えば、保湿成分として例示した1,2-ヘキサンジオール等の制菌効果を利用することにより、上記防腐剤フリーの日焼け止め用組成物を実現することができる。この場合、1,2-ヘキサンジオール等の制菌効果を有する成分の含有割合は、例えば1.0重量%~3.0重量%であり得る。
【0051】
上記日焼け止め用組成物は、任意の適切な方法によって製造することができる。例えば、油性成分および水性成分をそれぞれ任意の適切な温度に加温し、両者を混合および撹拌することによって得ることができる。
【0052】
上記日焼け止め用組成物のSPF値は、例えば25以上、好ましくは30以上、より好ましくは35以上である。一般に、SPF値の増大には、酸化亜鉛微粒子よりも酸化チタン微粒子の方が有効であるところ、上記日焼け止め用組成物は、優れた乳化安定性(分散安定性)等に起因して、酸化チタン微粒子の配合割合が極めて少ないにもかかわらず、実用上十分なSPF値を実現することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実験例における「部」および「%」は重量基準である。
【0054】
下記実験例で用いた各成分の詳細は、以下の通りである。
・酸化チタン微粒子分散体:Croda社製、商品名「solaveil XT-300」(酸化チタン含有量:47重量%、溶媒:トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセル)
・酸化亜鉛微粒子分散体:Croda社製、商品名「solaveil CZ-300」(酸化亜鉛含有量:60重量%、溶媒:トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセル)
・ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30:クローダジャパン社製、商品名「CITHROL DPHS」
・PPG-15ステアリル:クローダジャパン社製、商品名「SP ARLAMOL PS15E MBAL」
・カルボマー:Lubrizol Advanced Materials社製、商品名「Carbopol Ultrez 10 polymer」
・(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:Lubrizol Advanced Materials 社製、商品名「Carbopol Ultrez 21 polymer」
・(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー(自己乳化タイプ):Lubrizol Advanced Materials社製、商品名「Pemulen TR-2 Polymeric Emulsifier」
・(PVM/MA/デカジエン)クロスポリマー:アシュランド・ジャパン株式会社製、商品名「STABILIZE QM」
・(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー:クラリアントジャパン社製、商品名「Aristoflex AVC」
・(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー:ADEKA社製、商品名「アデカノール GT-700」
・(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー:信越化学工業社製、商品名「KSG-210」(20~30%の(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーが70~80%のジメチコンに膨潤しているシリコーンゲル)を表2に記載の(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー配合量となるように用いた。
【0055】
[実験例1~13]
表1に示す配合量(合計:100部)となるように各成分を混合して、日焼け止め用組成物を得た。得られた日焼け止め用組成物を専用プラスティック板に0.02g塗布し、1時間乾燥させた後、透明性を目視にて確認し、以下の基準で白浮きを評価した。また、参考例として、紫外線散乱剤を含み、紫外線吸収剤を含まない日焼け止め用組成物(発売元:ジーエルイー合同会社、商品名「Sプロテクトクリーム」)を用いて同様に白浮きを評価した。結果を表1に併せて示す。
≪白浮きの評価基準1≫
◎:塗り広げることで無色透明
〇:塗り広げることで白味がほぼ気にならない透明感
×:塗り広げても白さを確認できる
【0056】
【0057】
表1に示されるとおり、酸化チタン微粒子の含有割合が0.8重量%を超える実験例9~13の日焼け止め用組成物では、白浮きが生じた。一方、酸化チタン微粒子の含有割合が0.8重量%以下である実験例1~8の日焼け止め用組成物では白浮きが抑制されており、酸化チタン微粒子を含まない実験例1~7の日焼け止め用組成物では、その効果が顕著であった。
【0058】
[実験例14~20]
表2に示す配合量(合計:100部)となるように各成分を定法に従って混合して、油中水型の日焼け止め用組成物を得た。なお、表2中、「ジェル」の剤型は、応力のない状態では一定程度の保形性を発揮し得る程度に高粘度であり、外力が加わると粘度が低下してゾル状に変化する物性を意味する。得られた日焼け止め用組成物の調製から72時間後の状態を観察し、以下の基準で安定性を評価した。結果を表2に併せて示す。
≪安定性の評価基準≫
〇:分離、樹脂の凝集やムラ、変色が認められない。
×:分離、樹脂の凝集やムラ、変色のいずれかを認める。
【0059】
上記安定性評価で良好な安定性を示した実験例20の日焼け止め用組成物0.5gをパネラー10名に、前腕に指で塗り広げてもらい、白浮きおよび使用感を以下の評価基準で評価した。結果を表2に併せて示す。
≪使用感1の評価基準≫
〇:塗布時のみずみずしさおよびノビのよさが良好である
×:塗布時のみずみずしさおよびノビのよさが不良である
≪使用感2の評価基準≫
〇:塗布後の触感がさらさらである
×:塗布後の触感にべたつきがある
≪白浮きの評価基準2≫
〇:白浮きが視認されない
×:白浮きが視認される
【0060】
【0061】
表2に示されるように、酸化亜鉛微粒子と架橋型ポリエーテル変性シリコーンとシリコーン油とを組み合わせて用いることにより、白浮きが抑制され、安定性および使用感に優れた日焼け止め用組成物を得ることができる。
【0062】
本発明の日焼け止め用組成物は、化粧料の分野で好適に利用され得る。