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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】パワーカッタ
(51)【国際特許分類】
   B23D 45/16 20060101AFI20230912BHJP
   B28D 1/04 20060101ALI20230912BHJP
   B24B 27/08 20060101ALI20230912BHJP
   B23D 47/00 20060101ALI20230912BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B23D45/16
B28D1/04 Z
B24B27/08
B23D47/00 Z
B25F5/00 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019166619
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021041508
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 卓也
(72)【発明者】
【氏名】冨永 健太
(72)【発明者】
【氏名】津田 翔
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0299943(US,A1)
【文献】特開2019-038269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0120436(US,A1)
【文献】特開2018-134726(JP,A)
【文献】特開2014-148021(JP,A)
【文献】特開2015-199175(JP,A)
【文献】特開2017-042912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/00-65/04
B24B 21/00-39/06
B25F 1/00-5/02
B27B 1/00-23/00
B27G 1/00-23/00
B28D 1/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーカッタであって、
ディスクブレードと、
前記ディスクブレードを回転可能に支持するとともに、前記ディスクブレードを回転駆動する電動モータを有する本体と、
前記本体に着脱可能に取り付けられているとともに、前記電動モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、
前記本体に設けられているとともに、ユーザによって把持されるグリップと、
前記グリップに設けられているとともに、ユーザによって操作されたときに前記複数のバッテリパックを前記電動モータへ電気的に接続するメインスイッチと、
を備え、
前記グリップの中心軸は、前記ディスクブレードの回転軸に垂直な基準面に沿って延びているとともに、前記基準面上に位置しており、
前記基準面から前記ディスクブレードまでの距離は、前記グリップの幅寸法の1.5倍以下であ
前記複数のバッテリパックは、少なくとも第1バッテリパックと第2バッテリパックを含み、
前記第1バッテリパックの重心は、前記基準面の一方側に位置し、前記第2バッテリパックの重心は、前記基準面の他方側に位置し、
前記基準面から前記第1バッテリパックの前記重心までの距離は、前記グリップの幅寸法の1.5倍よりも大きく
前記基準面から前記第2バッテリパックの前記重心までの距離は、前記グリップの幅寸法の1.5倍よりも大きく、
前記基準面から前記パワーカッタの重心までの距離は、前記グリップの幅寸法の1.5倍以下である、
パワーカッタ。
【請求項2】
前記基準面から前記第1バッテリパックの前記重心までの距離は、前記基準面から前記第2バッテリパックの前記重心までの距離と等しい、請求項に記載のパワーカッタ。
【請求項3】
前記第1バッテリパックと前記第2バッテリパックは、前記基準面に対して対称に配置されている、請求項に記載のパワーカッタ。
【請求項4】
前記ディスクブレードは、前記本体の前部に位置し、前記グリップは、前記本体の後部に位置し、
前記電動モータは、前記ディスクブレードと前記グリップとの間に位置する、請求項1からのいずれか一項に記載のパワーカッタ。
【請求項5】
前記本体は、前記複数のバッテリパックを覆う開閉可能なカバーを有する、請求項1からのいずれか一項に記載のパワーカッタ。
【請求項6】
前記複数のバッテリパックの各々は、前記本体へ上方から取り付けられるとともに、前記本体から上方に向けて取り外される、請求項1からのいずれか一項に記載のパワーカッタ。
【請求項7】
前記本体は、前記複数のバッテリパックの少なくとも二つを直列に接続する、請求項1からのいずれか一項に記載のパワーカッタ。
【請求項8】
前記本体は、前記複数のバッテリパックの少なくとも二つを並列に接続する、請求項1からのいずれか一項に記載のパワーカッタ。
【請求項9】
前記基準面から前記ディスクブレードまでの距離は、前記グリップの幅寸法よりも小さい、請求項1からのいずれか一項に記載のパワーカッタ。
パワーカッタ。
【請求項10】
前記基準面から前記パワーカッタの重心までの距離は、前記グリップの幅寸法よりも小さい、請求項1からのいずれか一項に記載のパワーカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーカッタであって、特に、手持ち式のパワーカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、パワーカッタが開示されている。このパワーカッタは、ディスクブレードと、ディスクブレードを回転可能に支持するとともに、ディスクブレードを回転駆動する電動モータを有する本体と、本体に着脱可能に取り付けられているとともに、電動モータに電力を供給するバッテリパックとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0120436号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパワーカッタでは、単一のバッテリパックを使用しているので、パワーカッタの出力又は動作時間が不足するおそれがある。従って、本明細書は、パワーカッタの出力及び/又は動作時間を改善し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術の一側面により、パワーカッタが提供される。このパワーカッタは、ディスクブレードと、ディスクブレードを回転可能に支持するとともにディスクブレードを回転駆動する電動モータを有する本体と、本体に着脱可能に取り付けられているとともに、電動モータに電力を供給する複数のバッテリパックと、本体に設けられているとともに、ユーザによって把持されるグリップと、グリップに設けられているとともに、ユーザによって操作されたときに複数のバッテリパックを電動モータへ電気的に接続するメインスイッチとを備える。
【0006】
上記したパワーカッタでは、複数のバッテリパックによって、電動モータへ電力を供給することができる。これにより、パワーカッタの出力及び/又は動作時間が有意に改善される。ここで、本明細書におけるパワーカッタとは、特に、グリップの中心軸が、ディスクブレードの回転軸に垂直な基準面に沿って延びており、その基準面からディスクブレードまでの距離が、グリップの幅寸法の1.5倍以下であるものを意図する。なお、ディスクブレードが基準面上に位置しており、基準面からディスクブレードまでの距離がゼロであってもよい。
【0007】
その一方で、複数のバッテリパックを本体に取り付けると、パワーカッタの重量が大きく増加するので、ユーザによるパワーカッタの操作性が悪化するおそれがある。これを避けるために、本技術の一実施形態では、基準面からパワーカッタの重心までの距離が、グリップの幅寸法の1.5倍以下であってもよい。このような構成によると、パワーカッタの重心が基準面の近くに位置することで、ユーザがグリップを把持してパワーカッタを保持したときに、パワーカッタの姿勢が安定しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のパワーカッタ10の外観を示す斜視図。
図2】実施例1のパワーカッタ10の外観を示す斜視図であって、バッテリパックカバー22が開放されている。
図3】実施例1のパワーカッタ10の外観を示す側面図。
図4】実施例1のパワーカッタ10の外観を示す平面図。
図5】実施例1のパワーカッタ10の電気的な構成を示す回路図。
図6】実施例1のパワーカッタ10の重量配分を説明するための平面図。
図7】実施例2のパワーカッタ110の外観を示す側面図。
図8】実施例2のパワーカッタ110の外観を示す平面図。
図9】実施例3のパワーカッタ210の外観を示す側面図。
図10】実施例3のパワーカッタ210の外観を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、複数のバッテリパックは、少なくとも第1バッテリパックと第2バッテリパックを含んでもよい。この場合、第1バッテリパックの重心は、前記した基準面の一方側に位置し、第2バッテリパックの重心は、当該基準面の他方側に位置してもよい。このような構成によると、各々のバッテリパックの重量が比較的に大きい場合でも、複数のバッテリパックを含むパワーカッタの重心を、基準面の近くに配置することができる。
【0010】
本技術の一実施形態において、基準面から第1バッテリパックの重心までの距離は、グリップの幅寸法の1.5倍よりも大きくてもよい。このような構成によると、第1バッテリパックの重心が、基準面から比較的に離れて位置することで、パワーカッタの慣性モーメントが増大する。これにより、例えば切断対象物からの反力といった外力に対して、パワーカッタの姿勢が安定しやすい。
【0011】
上記に加えて、基準面から第2バッテリパックの重心までの距離についても、グリップの幅寸法の1.5倍よりも大きくてもよい。このような構成によると、パワーカッタの慣性モーメントがさらに増大して、パワーカッタの姿勢がより安定しやすくなる。
【0012】
本技術の一実施形態において、基準面から第1バッテリパックの重心までの距離は、基準面から第2バッテリパックの重心までの距離と等しくてもよい。このような構成によると、複数のバッテリパックを含むパワーカッタの重心を、基準面の近くに配置しやすい。なお、第1バッテリパックの重量は、第2バッテリの重量と同じであってもよいし、第2バッテリの重量と異なってもよい。
【0013】
上記の実施形態において、第1バッテリパックと第2バッテリパックは、基準面に対して対称に配置されていてもよい。但し、他の実施形態として、第1バッテリパックと第2バッテリパックは、例えば本体の重心の位置を考慮して、基準面に対して非対称に配置されていてもよい。
【0014】
本技術の一実施形態において、複数のバッテリパックの各々の重心が全て、基準面からグリップの幅寸法の1.5倍以下の距離に位置してもよい。このような構成によると、本体に取り付けられたバッテリパックの数が変化に対して、パワーカッタの重心の位置に生じる変化を抑制することができる。従って、本体に取り付けられたバッテリパックの数にかかわらず、ユーザがグリップを把持してパワーカッタを保持したときに、パワーカッタの姿勢が安定しやすい。
【0015】
本技術の一実施形態において、ディスクブレードが本体の前部に位置し、グリップが本体の後部に位置してもよい。この場合、電動モータは、ディスクブレードとグリップとの間に位置するとよい。
【0016】
本技術の一実施形態において、本体は、複数のバッテリパックを覆う開閉可能なカバーを有してもよい。このような構成によると、本体に取り付けられた複数のバッテリパックを、水濡れや粉塵から保護することができる。
【0017】
本技術の一実施形態において、複数のバッテリパックの各々は、本体へ上方から取り付けられるとともに、本体から上方に向けて取り外されてもよい。このような構成によると、ユーザは、パワーカッタが地面に載置された状態で、本体に対して各々のバッテリパックを着脱しやすい。
【0018】
本技術の一実施形態において、本体は、複数のバッテリパックの少なくとも二つを、直列に接続するように構成されてもよい。このような構成によると、パワーカッタの出力を高くすることができる。
【0019】
本技術の一実施形態において、本体は、複数のバッテリパックの少なくとも二つを、並列に接続するように構成されてもよい。このような構成によると、パワーカッタの動作時間を長くすることができる。
【0020】
本技術の一実施形態において、基準面からディスクブレードまでの距離は、グリップの幅寸法よりも小さくてもよい。このような構成によると、グリップの基準面に対してディスクブレードがより近くに位置するので、ディスクブレードに作用する反力に対して、ユーザはパワーカッタを安定して保持しやすい。
【0021】
本技術の一実施形態において、基準面からパワーカッタの重心までの距離は、グリップの幅寸法よりも小さくてもよい。このような構成によると、グリップの基準面に対してパワーカッタの重心がより近くに位置するので、ユーザがグリップを把持してパワーカッタを保持したときに、パワーカッタの姿勢が安定しやすい。
【0022】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善されたパワーカッタを提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0023】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0024】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【実施例1】
【0025】
図面を参照して、実施例1のパワーカッタ10を説明する。パワーカッタ10は、手持ち式の動力工具であり、主に石材や鉄材といった切断対象物を切断するために用いられる。図1から図5に示すように、パワーカッタ10は、ディスクブレード12と、ディスクブレード12を回転可能に支持する本体14とを備える。本体14には、ディスクブレード12を回転駆動する電動モータ4と、電動モータ4を制御するコントロールユニット6が設けられている(図5参照)。コントロールユニット6は、例えば電力変換回路やマイクロプロセッサを有する。電動モータ4は、本体14の内部に位置しており、例えば伝達ベルト(図示省略)を介して、前記ディスクブレード12に接続されている。なお、電動モータ4の動力をディスクブレード12へ伝達する伝達機構は、ギア、ロッドなどの剛体部品のみで構成され、ベルトが無い構造であってもよい。
【0026】
ディスクブレード12は、円板形状を有するブレードであり、その外周縁に複数の刃先又は研削砥石を有している。ディスクブレード12は、例えばダイヤモンドホイールであってもよい。ディスクブレード12は、いわゆる消耗品であることから、本体14に対して着脱可能に取り付けられている。特に限定されないが、ディスクブレード12は、本体14のブレードアーム14aに取り付けられている。ブレードアーム14aは、本体14から前方に延びており、ディスクブレード12は、ブレードアーム14aの先端に位置している。ディスクブレード12の回転軸は、ブレードアーム14aの長手方向に対して垂直に伸びている。
【0027】
パワーカッタ10は、複数のバッテリパック2をさらに備える。各々のバッテリパック2は、少なくとも一つの二次電池セルを有する。本体14には、複数のバッテリインターフェース24が設けられている。各々のバッテリインターフェース24は、複数のバッテリパック2のうちの一つを着脱可能に受け入れる。これにより、複数のバッテリパック2は、本体14に着脱可能に取り付けられ、電動モータ4に電力を供給する。本体14はさらに、バッテリパックカバー22を有する。バッテリパックカバー22は、開閉可能なカバーであって、バッテリインターフェース24に取り付けられた複数のバッテリパック2を覆う。これにより、複数のバッテリパック2が水濡れや粉塵から保護される。図5に示すように、本体14は、複数のバッテリパック2を直列に接続するように構成されており、直列に接続された複数のバッテリパック2は、コントロールユニット6を介してモータへ電気的に接続される。なお、他の実施形態として、本体14は、複数のバッテリパック2を並列に接続するように構成されてもよい。
【0028】
パワーカッタ10は、ブレードカバー16をさらに備える。ブレードカバー16は、本体14に組み付けられており、ディスクブレード12の一部を覆っている。ブレードカバー16は、ディスクブレード12によって発生する粉塵が、ユーザに向けて飛散することを防止する。ブレードカバー16の具体的な構造は、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例におけるブレードカバー16は、ブレードアーム14aの先端に取り付けられており、ディスクブレード12の周方向における一部(例えば、150度以上の角度範囲)を覆うように構成されている。また、ブレードカバー16の少なくとも一部が、本体14に対して可動式であってもよい。
【0029】
パワーカッタ10は、給水ホース40をさらに備える。給水ホース40は、本体14に組み付けられており、ブレードカバー16内へ水を供給するように構成されている。給水ホース40の先端は、プラグ42を介して、本体14のホース先端ホルダ50に接続されている。特に限定されないが、ホース先端ホルダ50は、ブレードアーム14aに設けられており、ブレードカバー16に隣接している。給水ホース40の基端には、給水コネクタ44が設けられている。給水コネクタ44は、本体14によって保持されており、例えば水道の蛇口といった外部の給水源に、図示しないホースを介して接続される。
【0030】
パワーカッタ10は、前方グリップ18と後方グリップ20とをさらに備える。前方グリップ18と後方グリップ20はそれぞれ、本体14に設けられている。前方グリップ18は、本体14の前部に位置しており、本体14の上方から側方に亘って伸びている。後方グリップ20は、本体14の後部に位置しており、本体14から後方に向けて伸びている。通常、ユーザは、左手で前方グリップ18を把持し、右手で後方グリップ20を把持することで、パワーカッタ10を保持する。このとき、ユーザは、前方グリップ18を把持する位置を変更することで、パワーカッタ10の姿勢を調整することができる。後方グリップ20には、メインスイッチ30が設けられている。ユーザがメインスイッチ30を操作すると、複数のバッテリパック2は、コントロールユニット6を介して電動モータ4へ電気的に接続される。これにより、電動モータ4はディスクブレード12を駆動する。ユーザがメインスイッチ30の操作を解除すると、複数のバッテリパック2が電動モータ4から電気的に切断され、電動モータ4はディスクブレード12の駆動を中止する。
【0031】
パワーカッタ10は、照明器32と、照明器32をオン及びオフするための照明スイッチ34をさらに備える。照明器32と照明スイッチ34は、特に限定されないが、本体14に設けられている。照明器32は、本体14の前部に位置しており、ディスクブレード12やその切断対象物を照明する。一例ではあるが、本実施例における照明器32は、少なくとも一つの発光ダイオードを用いて構成されている。照明スイッチ34は、後方グリップ20の上面に位置しており、ユーザが後方グリップ20を把持したまま操作できるように構成されている。
【0032】
パワーカッタ10は、過負荷インジケータ36とバッテリインジケータ38とをさらに備える。過負荷インジケータ36は、ディスクブレード12に加えられた過負荷をユーザに報知する報知器である。特に限定されないが、本実施例における過負荷インジケータは、少なくとも一つの発光ダイオードを有しており、ディスクブレード12に加えられた負荷が所定値を超えたときに、当該発光ダイオードを点灯させる。通常、ユーザは、過負荷インジケータ36を看視しながら、切断対象物に対してディスクブレード12を押し付ける力を調整する。そのことから、過負荷インジケータ36は、パワーカッタ10を使用中のユーザにとって、視認しやすい位置に配置されるとよい。バッテリインジケータ38は、複数のバッテリパック2の各々の充電レベルをユーザに報知する報知器である。特に限定されないが、本実施例におけるバッテリインジケータ38は、各々のバッテリパック2に対して複数の発光ダイオードを有しており、各々のバッテリパック2の充電レベルに応じて、発光させる発光ダイオードの数を変更するように構成されている。
【0033】
パワーカッタ10は、吸気口26と排気口28とをさらに備える。吸気口26と排気口28は本体14に設けられており、本体14の内部へ冷却風を導入する。吸気口26は、本体14の後部に位置しており、排気口28は、本体14の前部に位置している。即ち、吸気口26からディスクブレード12までの距離は、排気口28からディスクブレード12までの距離よりも大きい。このように、吸気口26がディスクブレード12から離れて位置していると、ディスクブレード12による粉塵が本体14の内部へ侵入することを抑制することができる。その一方で、排気口28はディスクブレード12の近くに位置してもよく、吸気口26と排気口28とを互いに離して配置することによって、本体14の内部において広い範囲に冷却風を流すことができる。
【0034】
図6に示すように、本実施例におけるパワーカッタ10では、後方グリップ20の中心軸が、ディスクブレード12の回転軸Rに垂直な基準面Pに沿って延びており、その基準面P上にディスクブレード12も位置している。言い換えると、回転軸Rに垂直な基準面P上に、後方グリップ20の中心軸とディスクブレード12との両者が位置している。このような構成によると、後方グリップ20を把持するユーザが、切断対象物からディスクブレード12に作用する反力を受け止めやすい。しかしながら、他の実施形態として、ディスクブレード12は、必ずしも基準面P上に位置しなくてもよく、図6に示す中央領域A内に位置すればよい。ここでいう中央領域Aとは、中央領域Aは、基準面Pを中心として、後方グリップ20の幅寸法WGの三倍の幅寸法WAを有する領域である。
【0035】
図6において、二つの平面P1、P2は、中央領域Aの境界を示す。二つの平面P1、P2は基準面Pと平行であって、一方の平面P1は基準面Pの一方側に位置しており、他方の平面P2は基準面Pの他方側に位置している。前述したように、中央領域Aの幅寸法WAは、後方グリップ20の幅寸法WGの三倍である。従って、基準面Pから各々の平面P1、P2までの距離は、後方グリップ20の幅寸法WGの1.5倍に等しい。言い換えると、ディスクブレード12が中央領域A内に位置する場合、基準面Pからディスクブレード12までの距離は、後方グリップ20の幅寸法WGの1.5倍以下となる。通常、ディスクブレード12は本体14の前部に位置し、後方グリップ20は本体14の後部に位置する。そして、電動モータ4は、基準面P上において、ディスクブレード12と後方グリップ20との間に位置する。
【0036】
本実施例のパワーカッタ10は、電動モータ4によってディスクブレード12を回転駆動することで、石材や鉄材といった切断対象物を切断する。このとき、電動モータ4には、直列に接続された複数のバッテリパック2によって、比較的に高電圧の電力が供給される。これにより、パワーカッタ10の出力が大きく改善されている。なお、パワーカッタ10は、二つのバッテリパック2に限られず、より多くのバッテリパック2を備えてもよい。その一方で、複数のバッテリパック2を本体14に取り付けると、パワーカッタ10の重量が大きく増加するので、ユーザによるパワーカッタ10の操作性が悪化するおそれがある。これを避けるために、本実施例のパワーカッタ10は、基準面Pからパワーカッタ10の重心GTまでの距離が、後方グリップ20の幅寸法WGの1.5倍以下となるように設計されている。即ち、パワーカッタ10の重心GTは、中央領域A内に位置している。このような構成によると、パワーカッタ10の重心GTが基準面Pの近くに位置することで、ユーザが後方グリップ20を把持してパワーカッタ10を保持したときに、パワーカッタ10の姿勢が安定しやすい。
【0037】
本実施例のパワーカッタ10では、一方のバッテリパック2の重心GB1が、基準面Pの一方側に位置しており、他方のバッテリパック2の重心GB2が、基準面Pの他方側に位置している。即ち、二つのバッテリパック2の重心GB1、GB2が、基準面Pの両側に分配されている。このような構成によると、各々のバッテリパック2の重量が比較的に大きい場合でも、複数のバッテリパック2を含むパワーカッタ10の重心GTを、基準面Pの近くに配置することができる。
【0038】
本実施例のパワーカッタ10では、基準面Pから各々のバッテリパック2の重心GB1、GB2までの距離が、グリップの幅寸法の1.5倍よりも大きい。即ち、各々のバッテリパック2の重心GB1、GB2は、中央領域Aの外側に位置している。このような構成によると、各々のバッテリパック2の重心GB1、GB2が、基準面Pから比較的に離れて位置することで、パワーカッタ10の慣性モーメントが増大する。これにより、例えば切断対象物からの反力といった外力に対して、パワーカッタ10の姿勢が安定しやすい。なお、他の実施形態として、二つのバッテリパック2の重心GB1、GB2の一方のみが、中央領域Aの外側に位置してもよい。
【0039】
本実施例のパワーカッタ10では、基準面Pから一方のバッテリパック2の重心GB1までの距離が、基準面Pから他方のバッテリパック2の重心GB2までの距離と等しい。このような構成によると、複数のバッテリパック2を含むパワーカッタ10の重心GTを、基準面Pの近くに配置しやすい。なお、二つのバッテリパック2の重量は、互いに等しくてもよいし、互いに異なってもよい。
【0040】
本実施例のパワーカッタ10では、二つのバッテリパック2が、基準面Pに対して対称に配置されている。但し、他の実施形態として、二つのバッテリパック2は、例えば本体14の重心GTの位置を考慮して、基準面Pに対して非対称に配置されていてもよい。
【0041】
本実施例のパワーカッタ10では、複数のバッテリパック2の各々が、本体14へ上方から取り付けられるとともに、本体14から上方に向けて取り外される。このような構成によると、ユーザは、パワーカッタ10が地面に載置された状態で、本体14に対して各々のバッテリパック2を着脱しやすい。
【実施例2】
【0042】
図7図8を参照して、実施例2のパワーカッタ110を説明する。実施例2のパワーカッタ110は、実施例1のパワーカッタ10と比較して、複数のバッテリパック2の位置が変更されている。以下では、実施例1のパワーカッタ10との相違点を主に説明する。実施例1と共通又は対応する構成要素については、図7図8において同一の符号が付されており、実施例1に記載した説明をここに援用することで、重複する説明を省略する。
【0043】
実施例2のパワーカッタ110では、二つのバッテリパック2が、本体14の上部に取り付けられている。複数のバッテリパック2の各々は、本体14へ後方から取り付けられるとともに、本体14から後方に向けて取り外される。このような構成によると、ユーザは、パワーカッタ110が地面に載置された状態で、本体14に対して各々のバッテリパック2を着脱しやすい。
【0044】
本実施例のパワーカッタ110においても、基準面Pからパワーカッタ110の重心GTまでの距離が、後方グリップ20の幅寸法WGの1.5倍以下となるように設計されている。即ち、パワーカッタ110の重心GTは、中央領域A内に位置している。一方のバッテリパック2の重心GB1は、基準面Pの一方側に位置しており、他方のバッテリパック2の重心GB2は、基準面Pの他方側に位置している。二つのバッテリパック2は、基準面Pに対して対称に配置されており、基準面Pから一方のバッテリパック2の重心GB1までの距離は、基準面Pから他方のバッテリパック2の重心GB2までの距離と等しい。そして、基準面Pから各々のバッテリパック2の重心GB1、GB2までの距離は、グリップの幅寸法の1.5倍よりも大きい。即ち、各々のバッテリパック2の重心GB1、GB2は、中央領域Aの外側に位置している。
【実施例3】
【0045】
図9図10を参照して、実施例3のパワーカッタ210を説明する。実施例3のパワーカッタ210は、実施例1のパワーカッタ10と比較して、複数のバッテリパック2の位置が変更されている。以下では、実施例1のパワーカッタ10との相違点を主に説明する。実施例1と共通又は対応する構成要素については、図9図10において同一の符号が付されており、実施例1に記載した説明をここに援用することで、重複する説明を省略する。
【0046】
実施例2のパワーカッタ210では、二つのバッテリパック2が、本体14の下部に取り付けられている。このような構成によると、二つのバッテリパック2の重量によって、使用時におけるパワーカッタ210の姿勢が安定しやすい。なお、複数のバッテリパック2の各々は、本体14へ側方から取り付けられるとともに、本体14から側方に向けて取り外される。
【0047】
本実施例のパワーカッタ210においても、基準面Pからパワーカッタ110の重心GTまでの距離が、後方グリップ20の幅寸法WGの1.5倍以下となるように設計されている。即ち、パワーカッタ210の重心GTは、中央領域A内に位置している。但し、実施例1、2と異なり、二つのバッテリパック2の重心GB1、GB2は、中央領域A内に位置しており、特に、ほぼ基準面P上に位置している。このような構成によると、複数のバッテリパック2を含むパワーカッタ210の重心GTを、基準面Pの近くに配置しやすい。なお、二つのバッテリパック2の重量は、互いに等しくてもよいし、互いに異なってもよい。
【0048】
実施例1-3のパワーカッタ10、110、210では、基準面Pからパワーカッタ10、110、210の重心GTまでの距離が、後方グリップ20の幅寸法WGよりも小さくてもよい。このような構成によると、後方グリップ20の基準面Pに対してパワーカッタ10、110、210の重心GTがより近くに位置するので、ユーザが後方グリップ20を把持してパワーカッタ10、110、210を保持したときに、パワーカッタ10、110、210の姿勢が安定しやすい。
【0049】
加えて、又は、代えて、基準面Pからディスクブレード12までの距離が、後方グリップ20の幅寸法WGよりも小さくてもよい。このような構成によると、後方グリップ20の基準面Pに対してディスクブレード12がより近くに位置するので、ディスクブレード12に作用する反力に対して、ユーザはパワーカッタ10、110、210を安定して保持しやすい。
【0050】
本明細書では、二個のバッテリパック2を使用するパワーカッタ10、110、210について説明したが、パワーカッタ10、110、210は、二個のバッテリパック2に限られず、三つ以上のバッテリパック2を使用するものであってもよい。また、複数のバッテリパック2は、互いに異なる重量を有してもよい。
【符号の説明】
【0051】
2:バッテリパック
4:電動モータ
6:コントロールユニット
10、110、210:パワーカッタ
12:ディスクブレード
14:本体
14a:ブレードアーム
16:ブレードカバー
18:前方グリップ
20:後方グリップ
22:バッテリパックカバー
24:バッテリパックインターフェース
26:吸気口
28:排気口
30:メインスイッチ
32:照明器
34:照明スイッチ
36:過負荷インジケータ
38:バッテリインジケータ
40:給水ホース
50:ホース先端ホルダ
A:中央領域
GT:パワーカッタの重心
GB1、GB2:バッテリパックの重心
P:基準面
R:ディスクブレードの回転軸
WA:中央領域の幅寸法
WG:後方グリップの幅寸法
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10