(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】発泡性エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20230912BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230912BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230912BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230912BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230912BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230912BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230912BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230912BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/02
A61K8/06
A61K8/31
A61K8/37
A61K9/12
A61K47/06
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/26
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019180342
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横木 亜矢子
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321771(JP,A)
【文献】特開2001-181180(JP,A)
【文献】特開2011-079753(JP,A)
【文献】特開2006-241038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワセリン、レシチン、親油性界面活性剤および水を含む原液と、液化ガスとを含み、
前記親油性界面活性剤のHLBは、1~5であ
り、
前記ワセリンの含有量は、原液中、20~50質量%である、発泡性エアゾール組成物。
【請求項2】
前記親油性界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステルのうち、少なくともいずれかを含む、請求項
1記載の発泡性エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、ワセリンを多く含む場合であっても安定性が優れ、塗布しやすい発泡性エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚を乾燥から保護するなどの目的でワセリンを含む発泡性エアゾール組成物が開発されている。特許文献1には、ワセリン10質量%以上、水50質量%以上、HLB6~10の乳化剤を含む原液と噴射剤を含む水中油型乳濁液の発泡性エアゾール組成物が開示されている。特許文献2は、ワセリン3~11質量%、HLB17である界面活性剤1~5質量%、水27~82質量%の発泡性エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平01-156906号公報
【文献】特表2013-528212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発泡性エアゾール組成物は、水を多く含む水中油型乳濁液を含む。そのため、このような発泡性エアゾール組成物は、塗布感が得られにくく、水で流れ落ちやすく、効果が維持されにくい。また、特許文献2の発泡性エアゾール組成物は、ワセリンを多く配合すると、原液が分離しやすく、安定性が低い。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ワセリンを多く含む場合であっても安定性が優れ、塗布しやすい発泡性エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)ワセリン、レシチン、親油性界面活性剤および水を含む原液と、液化ガスとを含み、前記親油性界面活性剤のHLBは、1~5である、発泡性エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、ワセリンを多く含む場合であっても、優れた安定性を示す。また、発泡性エアゾール組成物は、肌等に均一に塗り広げやすく、保湿効果が得られやすい。
【0009】
(2)前記ワセリンの含有量は、原液中、20~50質量%である、(1)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、多くのワセリンを含んでいるにもかかわらず、優れた安定性を示す。また、発泡性エアゾール組成物は、肌等に均一に塗り広げやすく、保湿効果が得られやすい。
【0011】
(3)前記親油性界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステルのうち、少なくともいずれかを含む、(1)または(2)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、ワセリンが析出しにくく、より安定性が優れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワセリンを多く含む場合であっても安定性が優れ、塗布しやすい発泡性エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<発泡性エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の発泡性エアゾール組成物(以下、エアゾール組成物という)は、ワセリン、レシチン、親油性界面活性剤および水を含む原液と、液化ガスとを含む。親油性界面活性剤のHLBは、1~5である。このようなエアゾール組成物は、ワセリンを含んでいるにもかかわらず、優れた安定性を示す。また、エアゾール組成物は、肌等に均一に塗り広げやすく、保湿効果が得られやすい。以下、それぞれについて説明する。
【0015】
(原液)
原液は、ワセリン、レシチン、親油性界面活性剤および水を含む。
【0016】
・ワセリン
ワセリンは、適用箇所(たとえば皮膚など)を乾燥から保護するために配合されている。
【0017】
ワセリンは特に限定されない。一例を挙げると、ワセリンは、白色ワセリン、黄色ワセリン等である。ワセリンは併用されてもよい。
【0018】
ワセリンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ワセリンの含有量は、原液中、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、ワセリンの含有量は、原液中、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。ワセリンの含有量が上記範囲内であることにより、得られるエアゾール組成物は、適用箇所において乾燥を防止する効果が優れる。また、エアゾール組成物は、多くのワセリンを含んでいるにもかかわらず、優れた安定性を示し、かつ、肌等に均一に塗り広げやすく、保湿効果が得られやすい。
【0019】
・レシチン
レシチンは、エアゾール組成物が吐出時に発泡してフォームを形成するように、エアゾール組成物にエマルジョンを形成させるために配合される。
【0020】
レシチンは特に限定されない。一例を挙げると、レシチンは、酵素分解レシチン、水素添加酵素分解レシチン、ヒドロキシレシチン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、アセチル化レシチン等である。これらの中でも、レシチンは、より安定なエアゾール組成物を形成しやすい点から、水素添加酵素分解レシチンを含むことが好ましい。レシチンは併用されてもよい。
【0021】
レシチンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、レシチンの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、レシチンの含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。レシチンの含有量が上記範囲内であることにより、得られるエアゾール組成物は、吐出時に発泡してフォームを形成しやすい。
【0022】
・親油性界面活性剤
親油性界面活性剤は、エアゾール組成物が油中水型エマルジョンを形成し、吐出時に発泡してフォームを形成するために配合される。
【0023】
親油性界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、親油性界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類などのHLBが1~5の親油性界面活性剤であることが好ましく、HLBが1.5~4.2の親油性界面活性剤がより好ましい。親油性界面活性剤のHLBが上記範囲内であることにより、得られるエアゾール組成物は、吐出時に発泡してフォームを形成しやすい。
【0024】
本実施形態において、親油性界面活性剤は、安定したエマルジョンを形成しやすい点から、ソルビタン脂肪酸エステル類またはグリセリン脂肪酸エステル類のうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。親油性界面活性剤としてソルビタン脂肪酸エステル類またはグリセリン脂肪酸エステル類のうち、少なくともいずれか一方が含まれることにより、エアゾール組成物は、ワセリンが析出しにくく、より安定性が優れる。
【0025】
親油性界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、親油性界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、親油性界面活性剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。親油性界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られるエアゾール組成物は、親油性界面活性剤によるべたつきを感じにくく、吐出時に発泡してフォームを形成しやすい。また、ワセリンを多く含有する原液を泡状に吐出しやすい。
【0026】
・水
水は、原液やエアゾール組成物の粘度を調節するために配合される。
【0027】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0028】
水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、原液中、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、粘度が適切に調整されやすい。
【0029】
・任意成分
原液は、上記ワセリン、レシチン、親油性界面活性剤および水のほか、用途に応じて油成分、他の界面活性剤、アルコール類、高分子化合物、有効成分などの任意成分を含んでもよい。
【0030】
油成分は、エアゾール組成物の安定性を向上させるために好適に配合される。
【0031】
油成分は特に限定されない。一例を挙げると、油成分は、炭化水素、シリコーン、エステル油、高級脂肪酸、油脂、ロウ、高級アルコール等である。油成分は併用されてもよい。
【0032】
炭化水素は特に限定されない。一例を挙げると、炭化水素は、ワセリン以外に、n-ヘキサン、i-ヘキサン、ケロシン、石油エーテル、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、パラフィン、イソパラフィン等である。
【0033】
シリコーンは特に限定されない。一例を挙げると、シリコーンは、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等である。
【0034】
エステル油は特に限定されない。一例を挙げると、エステル油は、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、酢酸ラノリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸イソセチル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル等である。
【0035】
高級脂肪酸は特に限定されない。一例を挙げると、高級脂肪酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等である。
【0036】
油脂は特に限定されない。一例を挙げると、油脂は、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、ホホバ油、麦芽油、ヤシ油、パーム油、硬化ヒマシ油等である。
【0037】
ロウは特に限定されない。一例を挙げると、ロウは、ミツロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、カンデリラロウ、カルナウバロウ、鯨ロウ、モンタンロウ等である。
【0038】
高級アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、高級アルコールは、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコールなどの直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノールなどの分岐鎖アルコール等である。
【0039】
これらの中でも、油成分は、水酸基やカルボキシ基などの親水基を持たない炭化水素またはシリコーンのうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。このような油成分を含むエアゾール組成物は、より安定性が優れる。
【0040】
油成分が配合される場合、油成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油成分の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油成分の含有量は、原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。油成分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、より安定性が優れる。
【0041】
界面活性剤は、吐出時に発泡してフォームを形成するために好適に配合される。
【0042】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのHLBが5以上である親水性界面活性剤、サポニン、大豆リン脂質、大豆リゾリン脂質液などの天然界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、リン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸石けん、アルキルリン酸塩とポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、N-アシルタウリン塩、アルキル硫酸塩、スルホン酸塩などの陰イオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤、酢酸ベタイン、イミダゾリンなどの両性界面活性剤、アルギン酸ナトリウム、トラガカントゴムなどの高分子性界面活性剤、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤等である。
【0043】
界面活性剤が配合される場合、界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、吐出時に発泡してフォームを形成しやすい。
【0044】
アルコール類は、水に溶解しにくい有効成分の溶媒として好適に配合される。また、アルコールは、乾燥性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0045】
アルコール類は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、ペンタエリスリトリールなどの4価アルコール、キシリトールなどの5価アルコール、ソルビトール、マンニトールなどの6価アルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリンなどの多価アルコールの重合体等である。
【0046】
アルコール類が配合される場合、アルコール類の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類の含有量は、原液中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、アルコール類の含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。アルコール類の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、有効成分を配合しやすく、かつ、乾燥性が適切に調整されやすい。
【0047】
高分子化合物は、原液の粘度を調節する等の目的で好適に配合される。
【0048】
高分子化合物は特に限定されない。一例を挙げると、高分子化合物は、寒天、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトルセルロース、結晶セルロース、セルロースナノファイバー、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ナトリウム等である。
【0049】
高分子化合物が配合される場合、高分子化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、高分子化合物の含有量は、原液中、0.001質量%以上であることが好ましく、0.002質量%以上であることがより好ましい。また、高分子化合物の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。高分子化合物の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、原液の粘度が適切に調節されやすい。
【0050】
本実施形態の原液は、さらに、製品の目的に応じて各種有効成分が配合されてもよい。有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゼン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、オクチルトリメトキシシラン被覆酸化チタンなどの紫外線散乱剤、塩化カルプロニウムやトウガラシチンキなどの血行促進剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、サリチル酸やレゾルシンなどの角質溶解剤、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、ミントやメントールなどの清涼剤、塩化セチルピリジニウムやイソプロピルメチルフェノールなどの殺菌消毒剤、グリチルリチン酸ジカリウムやトラネキサム酸などの抗炎症剤、フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料、クエン酸や乳酸などのpH調整剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤等である。
【0051】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.01~20質量%の範囲が好ましく、0.1~10質量%の範囲がより好ましい。
【0052】
原液全体の説明に戻り、原液の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の含有量は、エアゾール組成物中、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、噴射されたエアゾール組成物は、経時的に分離しにくく安定であり、かつ、塗り伸ばしやすい泡体を形成しやすい。
【0053】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、水にワセリン、レシチン、親油性界面活性剤、任意成分等を添加し、混合することにより調製し得る。
【0054】
(液化ガス)
液化ガスは、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、エアゾール容器からエアゾール組成物を噴射する噴射剤として作用する。また、液化ガスは、外部に吐出されると気化して原液を発泡させて泡体を形成し、塗り伸ばしやすくするために配合される。
【0055】
液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィン等である。液化ガスは併用されてもよい。これらの中でも、液化ガスは、より安定なエアゾール組成物を形成しやすい点から、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガスであることが好ましい。
【0056】
液化ガスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、経時的に分離しにくく安定であり、原液を発泡させて泡体を形成し、塗り伸ばしやすい。
【0057】
なお、本実施形態のエアゾール組成物は、低温時の発泡性を向上させる目的で、噴射剤として圧縮ガスが併用されてもよい。圧縮ガスは、亜酸化窒素ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気、酸素ガス等である。
【0058】
エアゾール組成物全体の説明に戻り、エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物は、耐圧性の容器本体に原液を充填し、容器本体にバルブを固着し、バルブから液化ガスを充填し、原液と液化ガスを混合することにより調製し得る。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0060】
(実施例1)
以下の表1に示される処方にしたがって、原液Aを調製した。この原液A19g(95質量%)をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填し、耐圧容器の口部にバルブを固着した。バルブから液化石油ガス1g(5質量%)を充填し、実施例1のエアゾール組成物を調製した。
【0061】
【0062】
(実施例2~7、比較例1~3)
表1に示される処方にしたがって、原液B~Hを調製した。得られた原液A~Hを用いて、表2に示される処方にしたがって、実施例1と同様の方法により液化石油ガスを充填し、それぞれ実施例2~7および比較例1~3のエアゾール組成物を調製した。
【0063】
実施例1~7および比較例1~3において得られたエアゾール組成物を用いて、以下の評価方法により、原液外観、エアゾール組成物の外観、吐出状態、経時変化および泡の伸びを評価した。結果を表2に示す。
【0064】
1.原液外観
25℃において、調製後のそれぞれの原液の状態を、目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
〇:原液は、析出物がなく、安定であった。
×:原液は、析出物があり、不安定であった。
【0065】
2.エアゾール組成物の外観
25℃において、調製後のそれぞれのエアゾール組成物の状態を、目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
〇:エアゾール組成物は、析出物がなく、安定であった。
×:エアゾール組成物は、析出物があり、不安定であった。
-:安定な原液でなかったため、評価しなかった。
【0066】
3.吐出状態
耐圧容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物を、手に吐出した。得られた吐出物の状態を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:吐出物は、泡状であった。
×:吐出物は、液状であった。
-:安定な原液でなかったため、評価しなかった。
【0067】
4.経時変化
25℃において1ヵ月間保持した後、それぞれのエアゾール組成物の外観を、目視で観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
〇:エアゾール組成物は、析出物がなく、安定であった。
×:エアゾール組成物は、析出物があり、不安定であった。
-:安定な原液でなかったため、評価しなかった。
【0068】
5.泡の伸び
耐圧容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物をガラス板上に1g吐出し、指で伸ばし、泡が途切れたときの長さを測定した。また、ワセリン1gをガラス板上に塗布し、指で伸ばし、ワセリンが途切れた時の長さを測定すると、26cmであった。なお、表2において、「-」は、安定な原液でなかったため、評価しなかったことを示している。
【0069】
【0070】
表2に示されるように、本発明の実施例1~7のエアゾール組成物は、ワセリンを多く含んでいるにもかかわらず、調製後および経時的に安定であった。また、実施例1~7のエアゾール組成物は、泡状に噴射することができ、適用箇所において塗り伸ばしやすいことがわかった。一方、レシチンを含まない比較例1や、親油性界面活性剤やレシチンを含まず親水性界面活性剤で作製した比較例2、親油性界面活性剤を含まない比較例3の原液は、ワセリンを多く含んでいるため、析出を抑えることができず不安定であった。