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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電流測定回路、電流測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20230912BHJP
   G01R 15/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01R19/00 B
G01R15/00 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019200827
(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2021076388
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 慎也
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 聖也
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/096359(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103344897(CN,A)
【文献】国際公開第2006/016400(WO,A1)
【文献】特開2017-127079(JP,A)
【文献】実開昭55-148653(JP,U)
【文献】特開2005-210565(JP,A)
【文献】特表2019-512685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ素子に直列接続されたセンス抵抗と、
第1端が前記センス抵抗の第1端に接続されて第2端がセンス信号の出力端に接続された抵抗と、
第1端が前記センス信号の出力端に接続されて第2端が前記センス抵抗の第2端に接続されたキャパシタと、
を有し、
前記センス抵抗は、所定の単位抵抗値を持つ単位抵抗素子又は前記単位抵抗素子が複数直列接続された単位抵抗素子列を複数並列に接続して成る、電流測定回路。
【請求項2】
前記センス抵抗の抵抗値をRSENとし、前記センス抵抗のインダクタンス値をLSENとし、前記抵抗の抵抗値をRSとし、前記キャパシタの容量値をCSとすると、RSEN×RS=LSEN/CSが成立する請求項1に記載の電流測定回路。
【請求項3】
前記抵抗の抵抗値は、150~470Ωである、請求項1又は2に記載の電流測定回路。
【請求項4】
前記キャパシタの容量値は、1000~2200pFである、請求項1~3のいずれか一項に記載の電流測定回路。
【請求項5】
前記センス抵抗の抵抗値は、3.0~6.67mΩである、請求項1~4のいずれか一項に記載の電流測定回路。
【請求項6】
前記センス抵抗のインダクタンス値は、0.5~2.84nHである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電流測定回路。
【請求項7】
前記スイッチ素子のゲート・ソース間に形成される信号ループから分離された位置に設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の電流測定回路。
【請求項8】
前記スイッチ素子と接地端または電源端との間に設けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の電流測定回路。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の電流測定回路から出力される前記センス信号に基づいて、前記スイッチ素子のターンオン遷移期間及びターンオフ遷移期間における過渡電流波形を測定する電流測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、電流測定回路及び電流測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速スイッチ素子(SiC-MOSFET[metal oxide semiconductor field effect transistor]など)のターンオン遷移期間及びターンオフ遷移期間における過渡電流波形を測定する手段として、各種方式(ロゴスキー方式、CT方式、ホール素子方式など)の電流プローブが広く一般に用いられている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-72822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図16で示したように、スイッチ素子100に流れる電流Iを電流プローブ101で測定するためには、電流Iが流れる導体102を実機(本図左)とは異なる形態で引き回さねばならず、正しい測定結果が得られないおそれもあった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、スイッチ素子の過渡電流波形を高精度に測定することのできる電流測定回路及び電流測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されている電流測定回路は、前記スイッチ素子に直列接続されたセンス抵抗と、第1端が前記センス抵抗の第1端に接続されて第2端がセンス信号の出力端に接続された抵抗と、第1端が前記センス信号の出力端に接続されて第2端が前記センス抵抗の第2端に接続されたキャパシタと、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1の構成から成る電流測定回路において、前記センス抵抗の抵抗値をRSENとし、前記センス抵抗のインダクタンス値をLSENとし、前記抵抗の抵抗値をRSとし、前記キャパシタの容量値をCSとすると、RSEN×RS=LSEN/CSが成立する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第1又は第2の構成から成る電流測定回路において、前記センス抵抗は、所定の単位抵抗値を持つ単位抵抗素子をm直列×n並列に接続して成る構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第1~第3いずれかの構成から成る電流測定回路において、前記抵抗の抵抗値は、150~470Ωである構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1~第4いずれかの構成から成る電流測定回路において、前記キャパシタの容量値は、1000~2200pFである構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1~第5いずれかの構成から成る電流測定回路において、前記センス抵抗の抵抗値は、3.0~6.67mΩである構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1~第6いずれかの構成から成る電流測定回路において、前記センス抵抗のインダクタンス値は、0.5~2.84nHである構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1~第7いずれかの構成から成る電流測定回路は、前記スイッチ素子のゲート・ソース間に形成される信号ループから分離された位置に設けられている構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1~第8いずれかの構成から成る電流測定回路は、前記スイッチ素子と接地端または電源端との間に設けられている構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、本明細書中に開示されている電流測定方法は、上記第1~第9いずれかの構成から成る電流測定回路から出力される前記センス信号に基づいて、前記スイッチ素子のターンオン遷移期間及びターンオフ遷移期間における過渡電流波形を測定する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0017】
本明細書中に開示されている発明によれば、スイッチ素子の過渡電流波形を高精度に測定することのできる電流測定回路及び電流測定方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電流測定回路の第1実施形態を示す図
図2】第1実施形態におけるセンス抵抗の実装例を示す図
図3】第1実施形態における測定波形を示す図
図4】電流測定回路の第2実施形態を示す図
図5】第2実施形態における測定波形を示す図
図6】第3実施形態におけるセンス抵抗の実装例を示す図
図7】センス抵抗の周波数特性を示す図
図8】第3実施形態における測定波形を示す図
図9】第4実施形態におけるセンス抵抗の実装例を示す図
図10】第4実施形態における測定波形を示す図
図11】第5実施形態における電流測定回路の実装位置を示す図
図12】第5実施形態における測定波形を示す図
図13】第6実施形態における電流測定回路の実装位置を示す図
図14】第6実施形態における測定波形を示す図
図15】電流測定回路の導入事例を示す図
図16】電流プローブを用いた電流測定の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態(比較例)>
図1は、電流測定回路の第1実施形態(後出の第2実施形態以下と対比される比較例に相当)を示す図である。本実施形態の電流測定回路10は、スイッチ素子1(本図では、SiC-NMOSFET)に直列接続されたセンス抵抗11を有し、スイッチ素子1のドレイン・ソース間に流れるドレイン電流Ids(例えば100A)に応じたセンス信号S10を出力する。なお、スイッチ素子1は、ゲート抵抗Rg及びゲート容量Cg(いずれも不図示)を持つ。
【0020】
センス抵抗11は、スイッチ素子1のソースと接地端PGNDの間に接続されており、その第1端(=高電位端)に現れるノード電圧VRSENがセンス信号S10として引き出される。なお、センス抵抗11は、抵抗成分RSENのほかに、インダクタンス成分LSEN(いわゆるESL[equivalent series inductance])を持つ。
【0021】
図2は、第1実施形態におけるセンス抵抗11の実装例を示す図である。本実装例のセンス抵抗11は、所定の単位抵抗値(例えば20mΩ)を持つ単位抵抗素子R1(例えば3.2mm×1.6mmサイズのチップ抵抗器)を2直列×6並列に接続して成る。従って、R1=20mΩである場合には、RSEN=6.67mΩとなる。
【0022】
なお、単位抵抗素子R1を6並列とすることにより、単一の抵抗素子を用いる場合と比べて、センス抵抗11のインダクタンス成分LSENを小さく抑えることができる。
【0023】
図3は、第1実施形態における測定波形を示す図であり、上から順に、スイッチ素子1のゲート・ソース間電圧Vgs及びドレイン・ソース間電圧Vds、並びに、センス信号S10(=ノード電圧VRSEN)が描写されている。なお、センス信号S10の実線はドレイン電流Idsの実測波形であり、破線はドレイン電流Idsの理想波形である。
【0024】
また、測定条件は、Rg=3.3Ω、Cg=30nF、RSEN=6.67mΩ、LSEN=1.72nHである。
【0025】
ゲート・ソース間電圧Vgsが上昇してスイッチ素子1がオンすると、ドレイン・ソース間電圧Vdsが低下すると共にドレイン電流Idsが増大する(時刻t11~t12のターンオン遷移期間τonを参照)。一方、ゲート・ソース間電圧Vgsが低下してスイッチ素子1がオフすると、ドレイン・ソース間電圧Vdsが上昇すると共にドレイン電流Idsが減少する(時刻t13~t14のターンオフ遷移期間τoffを参照)。
【0026】
ところで、極めて短時間(τon(τoff)=数ns~数百ns)で大電流の立上げ/立下げが可能なスイッチ素子1(=SiCデバイスやGANデバイスなど)のスイッチング損失を正しく評価するためには、電流測定回路10から出力されるセンス信号S10に基づいて、スイッチ素子1のターンオン遷移期間τon及びターンオフ遷移期間τoffにおけるドレイン電流Idsの過渡電流波形を正確に測定することが重要となる。
【0027】
しかしながら、先にも述べたように、センス抵抗11は、本来の抵抗成分RSENだけでなく、インダクタンス成分LSENを持つ。そのため、スイッチ素子1のターンオン遷移期間τon及びターンオフ遷移期間τoffには、インダクタンス成分LSENに起電圧(サージ電圧)が生じるので、ドレイン電流Idsの実測波形が理想波形(本来の過渡電流波形)から大きく乖離してしまう。
【0028】
以下では、センス抵抗11がインダクタンス成分LSENを持っていても、ドレイン電流Idsの過渡電流波形を高精度に測定することのできる電流測定回路10の新規な実施形態を提案する。
【0029】
<第2実施形態>
図4は、電流測定回路の第2実施形態を示す図である。本実施形態の電流測定回路10は、先出のセンス抵抗11に加えて抵抗12とキャパシタ13をさらに有し、両素子間に現れるノード電圧VCSをセンス信号S10として出力する。なお、センス抵抗11は、先出の図2と同じく、単位抵抗素子R1(20mΩ)を2直列×6並列に接続して成るものとし、ここでは重複した説明は割愛する。
【0030】
抵抗12の第1端は、センス抵抗11の第1端(=スイッチ素子1のソース)に接続されている。抵抗12の第2端とキャパシタ13の第1端は、いずれもセンス信号S10の出力端に接続されている。キャパシタ13の第2端は、センス抵抗11の第2端(=接地端PGND)に接続されている。
【0031】
なお、センス抵抗11の抵抗値をRSENとし、センス抵抗11のインダクタンス値をLSENとし、抵抗12の抵抗値をRSとし、キャパシタ13の容量値をCSとすると、RSEN×RS=LSEN/CSが成立するように、各素子のインピーダンス調整を行うことが望ましい。
【0032】
このように、抵抗12とキャパシタ13から成るRCネットワークをセンス抵抗11の両端間に追加した上で、適切なインピーダンス調整を行うことにより、VCS=RSEN×Idsとなる。すなわち、センス信号S10(=ノード電圧VCS)として、センス電圧11のインダクタンス成分LSENの影響を受けることなく、抵抗成分RSENの両端間電圧のみを等価的に測定することができるようになる。
【0033】
なお、電流検出回路10は、例えば、センス抵抗11、抵抗12、及び、キャパシタ13を単一のパッケージ(ないしはケース)に収納したモジュールとして、顧客(ユーザ)に提供するとよい。
【0034】
図5は、第2実施形態における測定波形を示す図であり、上から順に、スイッチ素子1のゲート・ソース間電圧Vgs及びドレイン・ソース間電圧Vds、並びに、センス信号S10(=ノード電圧VCS)が描写されている。なお、センス信号S10の実線はドレイン電流Idsの実測波形であり、破線はドレイン電流Idsの理想波形である。また、一点鎖線は第1実施形態の実測波形を示している。
【0035】
また、測定条件は、Rg=3.3Ω、Cg=30nF、RSEN=6.67mΩ、LSEN=1.72nH、RS=150Ω、CS=1000pFである。
【0036】
本図で示すように、本実施形態の電流測定回路10によれば、先の第1実施形態と比べて、ターンオン遷移期間τon(時刻t21~t22)及びターンオフ遷移期間τoff(時刻t23~t24)におけるドレイン電流Idsの実測波形を理想波形に近付けることが可能となる。
【0037】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態におけるセンス抵抗11の実装例を示す図である。本実施形態の電流測定回路10は、先出の第2実施形態(図4)と同一の回路構成であるが、センス抵抗11の実装パターンが異なる。
【0038】
本図に即して具体的に述べると、本実装例のセンス抵抗11は、所定の単位抵抗値(例えば3.0mΩ)を持つ単位抵抗素子R2(例えば10.0mm×5.2mmサイズのチップ抵抗器)を一つだけ接続して成る。従って、R2=3.0mΩである場合には、RSEN=3.0mΩとなる。
【0039】
図7は、センス抵抗11の周波数特性を示す図である。なお、横軸は周波数fであり、縦軸はインピーダンスZである。
【0040】
本図で示したように、共振周波数fr(=RSEN/2π・LSEN)よりも低い周波数帯域では、センス抵抗11が純粋な抵抗成分RSENとして機能するが、共振周波数frよりも高い周波数帯域では、センス抵抗11のインダクタンス成分LSENが悪影響を及ぼすようになる。
【0041】
例えば、図6で示したように、センス抵抗11の抵抗成分RSENを所望値(3.0mΩ)まで下げるために、単位抵抗素子R2を単純に大型化すると、センス抵抗11のインダクタンス成分LSENが増大するので、センス抵抗11の共振周波数frが低下する。
【0042】
このような共振周波数frの低下により、電流測定回路10の使用周波数帯域(例えば10kHz~10MHz)において、センス抵抗11が完全にコイルとして動作する場合には、たとえ図4のRCネットワークが導入されていても、スイッチ素子1のターンオン遷移期間τon及びターンオフ遷移期間τoffにおけるドレイン電流Idsの過渡電流波形を正確に測定することができなくなる。
【0043】
図8は、第3実施形態における測定波形を示す図であり、上から順に、スイッチ素子1のゲート・ソース間電圧Vgs及びドレイン・ソース間電圧Vds、並びに、センス信号S10(=ノード電圧VCS)が描写されている。なお、センス信号S10の実線はドレイン電流Idsの実測波形であり、破線はドレイン電流Idsの理想波形である。また、一点鎖線は第1実施形態の実測波形を示しており、二点鎖線は第2実施形態の実測波形を示している。
【0044】
また、測定条件は、Rg=10Ω、RSEN=3.0mΩ、LSEN=2.84nH、RS=470Ω、CS=1000pFである。
【0045】
本図で示すように、本実施形態の電流測定回路10では、先の第2実施形態と比べて、ターンオン遷移期間τon(時刻t31~t32)及びターンオフ遷移期間τoff(時刻t33~t34)におけるドレイン電流Idsの実測波形が理想波形から乖離してしまうことが分かる。
【0046】
<第4実施形態>
図9は、第4実施形態におけるセンス抵抗の実装例を示す図である。本実施形態の電流測定回路10は、先出の第2実施形態(図4)と同一の回路構成であるが、センス抵抗11の実装パターンが異なる。
【0047】
本図に即して具体的に述べると、本実装例のセンス抵抗11は、所定の単位抵抗値(例えば10mΩ)を持つ単位抵抗素子R3(例えば1.6mm×3.2mmサイズのチップ抵抗器)を3つ並列に接続して成る。従って、R3=10mΩである場合には、RSEN=3.3mΩとなる。
【0048】
すなわち、図6の単位抵抗素子R2(3.0mΩ)と同等の抵抗成分RSENを得るために、3つの単位抵抗素子R3(10Ω)が並列に接続されている。このような実装パターンを採用することにより、単一の単位抵抗素子R2を用いる場合と比べて、センス抵抗11のインダクタンス成分LSENを小さく抑えることが可能となり、延いては、共振周波数frを引き上げることが可能となる。
【0049】
このように、センス抵抗11の共振周波数frを高めるためには、個々のインピーダンス特性が良い単位抵抗素子(=小型でESLが小さく、かつ、単位抵抗値の高い素子)を複数並列接続することにより、所望の抵抗成分RSENを得るようにするとよい。
【0050】
例えば、図示は割愛するが、センス抵抗11として、47mΩ/1nHの単位抵抗素子を10個並列に接続することにより、fr=7.5MHz、及び、RSEN=4.7mΩを実現することができる。
【0051】
図10は、第4実施形態における測定波形を示す図であり、上から順番に、スイッチ素子1のゲート・ソース間電圧Vgs及びドレイン・ソース間電圧Vds、並びに、センス信号S10(=ノード電圧VCS)が描写されている。なお、センス信号S10の実線はドレイン電流Idsの実測波形であり、破線はドレイン電流Idsの理想波形である。また、一点鎖線は第1実施形態の実測波形を示しており、二点鎖線は第2実施形態の実測波形を示しており、三点鎖線は第3実施形態の実測波形を示している。
【0052】
また、測定条件は、Rg=10Ω、RSEN=3.3mΩ、LSEN=0.5nH、RS=150Ω、CS=2200pFである。
【0053】
本図で示すように、本実施形態の電流測定回路10によれば、先の第2実施形態と比べて、ターンオン遷移期間τon(時刻t41~t42)及びターンオフ遷移期間τoff(時刻t43~t44)におけるドレイン電流Idsの実測波形を理想波形にさらに近付けることが可能となる。
【0054】
<RSEN及びLSEN>
上記の第2~第4実施形態を対比すれば明らかなように、スイッチ素子1のターンオン遷移期間τon及びターンオフ遷移期間τoffにおけるドレイン電流Idsの過渡電流波形を正確に測定するためには、センス抵抗11の抵抗成分RSENとインダクタンス成分LSENのバランスが非常に重要となる。
【0055】
なお、センス抵抗11の抵抗成分RSENを下げると共振周波数frが低下するので、抵抗成分RSENはあまり下げ過ぎない方がよい。
【0056】
<第5実施形態>
図11は、第5実施形態における電流測定回路の実装位置を示す図である。本実施形態の電流測定回路10は、先出の第2実施形態(図4)と同一の回路構成である。また、センス抵抗11は、先出の図9と同じく、単位抵抗素子R3(10mΩ)を3つ並列に接続して成るものとする。
【0057】
ここで、電流測定回路10は、スイッチ素子1、信号調整部2、ドライバ3、及び、コントローラ4が搭載される評価基板上において、スイッチ素子1のゲート・ソース間に形成されるゲート駆動信号G1の信号ループ(図中の破線矢印を参照)に組み込まれた位置に設けられている。
【0058】
すなわち、ゲート制御信号S1を生成するコントローラ4、及び、ゲート制御信号S1に応じてゲート駆動信号G1を生成するドライバ3それぞれの基準電位端は、いずれも接地端PGNDに接続されている。
【0059】
図12は、第5実施形態における測定波形を示す図であり、上から順に、スイッチ素子1のゲート・ソース間電圧Vgs及びドレイン・ソース間電圧Vds、並びに、センス信号S10(=ノード電圧VCS)が描写されている。なお、センス信号S10の実線はドレイン電流Idsの実測波形であり、破線はドレイン電流Idsの理想波形である。
【0060】
また、測定条件は、Rg=33Ω、RSEN=3.3mΩ、LSEN=0.5nH、RS=150Ω、CS=2200pFである。
【0061】
先にも述べたように、本実施形態の電流測定回路10は、ゲート駆動信号G1が伝達される信号ループ上に設けられている。そのため、ゲート・ソース間電圧Vgsの変動がセンス信号S10(=ノード電圧VCS)に重畳してしまう。
【0062】
従って、例えば、スイッチ素子1のターンオン遷移期間τon(時刻t51~t52)及びターンオフ遷移期間τoff(時刻t53~t54)には、プラトー領域におけるゲート・ソース間電圧Vgsの変動がセンス信号S10に重畳するので、ドレイン電流Idsの実測波形が理想波形から乖離する。
【0063】
<第6実施形態>
図13は、第6実施形態における電流測定回路の実装位置を示す図である。本実施形態の電流測定回路10は、先出の第2実施形態(図4)と同一の回路構成である。また、センス抵抗11は、先出の図9と同じく、単位抵抗素子R3(10mΩ)を3つ並列に接続して成るものとする。
【0064】
ここで、電流測定回路10は、先出の第5実施形態(図11)と異なり、スイッチ素子1のゲート・ソース間に形成されるゲート駆動信号G1の信号ループ(図中の破線矢印を参照)から分離された位置に設けられている。
【0065】
すなわち、ドライバ3及びコントローラ4それぞれの基準電位端は、いずれもスイッチ素子1のソースに直結されており、接地端PGNDから切り離されている。
【0066】
図14は、第6実施形態における測定波形を示す図であり、上から順に、スイッチ素子1のゲート・ソース間電圧Vgs及びドレイン・ソース間電圧Vds、並びに、センス信号S10(=ノード電圧VCS)が描写されている。なお、センス信号S10の実線はドレイン電流Idsの実測波形であり、破線はドレイン電流Idsの理想波形である。
【0067】
また、測定条件は、Rg=3.3Ω、RSEN=3.3mΩ、LSEN=0.5nH、RS=150Ω、CS=2200pFである。
【0068】
先にも述べたように、本実施形態の電流測定回路10は、ゲート駆動信号G1が伝達される信号ループから分離された位置に設けられている。そのため、ゲート・ソース間電圧Vgsの変動がセンス信号S10(=ノード電圧VCS)に重畳することはない。
【0069】
従って、例えば、スイッチ素子1のターンオン遷移期間τon(時刻t61~t62)及びターンオフ遷移期間τoff(時刻t63~t64)において、プラトー領域におけるゲート・ソース間電圧Vgsの変動が生じたとしても、センス信号S10には重畳しないので、ドレイン電流Idsの実測波形を理想波形に近付けることができる。
【0070】
<導入事例>
図15は、これまでに説明してきた電流測定回路10をスイッチング電源に導入した事例を示す図である。本図のスイッチング電源Xは、入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する降圧型スイッチ出力段の構成要素として、スイッチ素子1H及び1L(本図ではSiC-NMOSFET)と、キャパシタC1と、インダクタL1と、を有する。
【0071】
スイッチ素子1Hのドレインは、入力電圧Vinの入力端に接続されている。スイッチ素子1Hのソースとスイッチ素子1Lのドレインは、いずれもスイッチ電圧Vswの印加端に接続されている。スイッチ素子1Lのソースは、電流測定回路10を介して接地端PGNDに接続されている。スイッチ素子1H及び1Lそれぞれのゲートは、ゲート駆動信号GH及びGLの印加端に接続されている。インダクタL1の第1端は、スイッチ電圧Vswの印加端に接続されている。インダクタL1の第2端とキャパシタC1の第1端は、いずれも出力電圧Voutの出力端に接続されている。キャパシタC1の第2端は、接地端PGNDに接続されている。
【0072】
本構成例のスイッチング電源Xでは、スイッチ素子1H及び1Lを相補的にオン/オフすることでパルス状のスイッチ電圧Vswが生成され、これを整流及び平滑することで出力電圧Voutが生成される。
【0073】
なお、電流測定回路10は、センス信号S10に意図しない変動が生じないように、できるだけ電位の安定したノードに導入することが望ましい。
例えば、スイッチ素子1Lのドレイン・ソース間に流れるスイッチ電流IswLの過渡電流波形を測定する場合には、パルス駆動されるスイッチ電圧Vwの影響を極力受けないように、スイッチ素子1Lのソースと接地端PGNDとの間に電流測定回路10を設けることが望ましい。
【0074】
また、例えば、スイッチ素子1Hのドレイン・ソースに流れるスイッチ電流IswHの過渡電流波形を測定する場合には、スイッチ素子1Hのドレインと電源端(=入力電圧Vinの印加端)との間に電流測定回路10を設けることが望ましい。
【0075】
なお、電流測定回路10は、例えば、スイッチング電源Xの性能評価時において、スイッチ電流IswL(またはIswH)の過渡電流波形を測定する手段として、好適に利用することができる。
【0076】
また、電流測定回路10は、スイッチング電源Xの性能評価時だけでなく、その実使用時における電流検出手段(例えば、過電流検出手段または定電流制御手段)として、そのまま利用することも可能である。
【0077】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本明細書中に開示されている発明は、例えば、高速スイッチ素子(SiC-MOSFETなど)のターンオン遷移期間及びターンオフ遷移期間における過渡電流波形を測定する手段として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1、1H、1L スイッチ素子
2 信号調整部
3 ドライバ
4 コントローラ
10 電流測定回路
11 センス抵抗
12 抵抗
13 キャパシタ
C1 キャパシタ
L1 インダクタ
R1~R3 単位抵抗素子
RSEN 抵抗成分
LSEN インダクタンス成分
X スイッチング電源
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