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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】検体ラック搬送装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
G01N35/04 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019219285
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021089194
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊泉 大介
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527804(JP,A)
【文献】特開2007-309743(JP,A)
【文献】特開平11-271317(JP,A)
【文献】特表2008-513873(JP,A)
【文献】特表2019-527358(JP,A)
【文献】特開2003-083995(JP,A)
【文献】特開2010-133925(JP,A)
【文献】特開2007-322289(JP,A)
【文献】特開2017-44608(JP,A)
【文献】特開2013-205183(JP,A)
【文献】特表2015-517675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器を収容した検体ラックを検体ラック搬送路に沿って搬送する検体ラック搬送装置であって、
前記検体ラック搬送路上における前記検体ラックが停止すべき位置である基準停止位置及び前記基準停止位置の近傍に設けられた位置指標マーカを含む撮影エリアを撮影して位置画像を取得するカメラと、
前記基準停止位置に停止した前記検体ラックを前記カメラが撮影して取得された前記位置画像である基準位置画像を解析し、前記検体ラックの特定部分と前記位置指標マーカとの相対位置関係に基づいて、前記位置画像における前記基準停止位置を特定する基準停止位置特定部と、
評価対象の前記検体ラックを前記カメラが撮影して取得された前記位置画像である現在位置画像を解析することで、前記検体ラックの現在停止位置を特定する現在停止位置特定部と、
定され前記基準停止位置を基準として、前記現在停止位置を評価する現在停止位置評価部と、
を備えることを特徴とする検体ラック搬送装置。
【請求項2】
前記現在停止位置特定部は、前記検体ラックの搬送方向における縁辺の位置を前記現在停止位置として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検体ラック搬送装置。
【請求項3】
前記現在停止位置特定部は、前記検体ラックの搬送方向における先頭側の縁辺を前記現在停止位置として特定し、
前記カメラは、前記検体ラック搬送路の上方、且つ、前記検体ラックが前記基準停止位置にあるときの前記検体ラックの先頭側の縁辺の位置よりも前記搬送方向側に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の検体ラック搬送装置。
【請求項4】
前記カメラは、複数の検体ラック搬送路上における複数の前記基準停止位置及び前記位置指標マーカを含む撮影エリアを撮影して前記位置画像を取得し、
前記基準停止位置特定部は、各前記検体ラック搬送路について前記基準停止位置を特定し、
前記現在停止位置特定部は、前記現在位置画像を解析することで、各前記検体ラック搬送路における前記検体ラックの現在停止位置を特定し、
前記現在停止位置評価部は、各前記検体ラック搬送路について特定され各前記基準停止位置と、対応する前記検体ラック搬送路における前記現在停止位置との誤差を検出する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の検体ラック搬送装置。
【請求項5】
前記現在位置画像に基づいて、前記検体ラックの色を特定する検体ラック色特定部と、
事前に特定されている基準色を基準として、前記検体ラック色特定部が特定した前記検体ラックの色を評価する検体ラック色評価部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の検体ラック搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体ラック搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体容器を収容した検体ラックをラック搬送路に沿って搬送する検体ラック搬送装置が知られている。検体ラック搬送装置は、例えば、生体から採取された血液や尿などの検体を分析する検体分析装置に含まれている。あるいは、検体ラック搬送装置は、検体分析装置に併設して設けられる。なお、検体分析装置とは、例えば、免疫測定装置や生化学分析装置などである。
【0003】
検体ラック搬送装置においては、処理などのためにラック搬送路上の所定位置に検体ラックが停止させられる場合がある。例えば、上述の検体分析装置においては、検体ラックに収容された検体容器から検体を吸引するために、吸引対象の検体容器が所定の吸引位置に停止するように、検体ラックが停止させられる。
【0004】
検体ラック搬送装置においては、検体ラックを正しく所定位置に停止させることが必要となる場合があるため、従来、検体ラックを搬送する搬送ベルトを駆動するためのモータの回転量を検出するエンコーダ、あるいは、検出対象位置に検体ラックが存在しているか否かを検出するフォトセンサなどにより、検体ラックの停止位置が評価されていた。なお、検体ラックの停止位置を評価する、とは、検出された停止位置と正しい停止位置との間の誤差量の検出、及び、当該誤差量に応じた処置(例えば通知処理)などを含む概念である。
【0005】
また、特許文献1には、搬送ベルトの状態を検出するセンサの出力データに基づいて、搬送ベルトの劣化の有無を検出することで、検体ラックが正しく搬送されているか否かを判定する搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際特許公報WO2018/042915号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、検体ラックの停止位置を評価する方法として、エンコーダやフォトセンサを用いた評価方法が従来から提案されているが、従来の評価方法では、検体ラックの停止位置を評価するのに不十分な場合があった。例えば、エンコーダを用いた評価方法では、検体ラックがスリップ(搬送ベルトが移動しているにもかかわらず検体ラックが移動しない状態)している場合には、検体ラックの停止位置を正しく評価することができない。また、フォトセンサは、検出対象位置に検体ラックが存在しているか否かを検出することは可能であるが、検出した検体ラックの停止位置の詳細まで検出することが難しい場合があった。
【0008】
本発明の目的は、従来におけるラックの停止位置の評価方法に代えてあるいは加えて実施可能な、新たなラックの停止位置の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る検体ラック搬送装置は、検体容器を収容した検体ラックを検体ラック搬送路に沿って搬送する検体ラック搬送装置であって、前記検体ラック搬送路上における前記検体ラックが停止すべき位置である基準停止位置及び前記基準停止位置の近傍に設けられた位置指標マーカを含む撮影エリアを撮影して位置画像を取得するカメラと、前記基準停止位置に停止した前記検体ラックを前記カメラが撮影して取得された前記位置画像である基準位置画像を解析し、前記検体ラックの特定部分と前記位置指標マーカとの相対位置関係に基づいて、前記位置画像における前記基準停止位置を特定する基準停止位置特定部と、評価対象の前記検体ラックを前記カメラが撮影して取得された前記位置画像である現在位置画像を解析することで、前記検体ラックの現在停止位置を特定する現在停止位置特定部と、定され前記基準停止位置を基準として、前記現在停止位置を評価する現在停止位置評価部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、カメラで撮影することで得られた位置画像に基づいて検体ラックの現在停止位置が評価される。位置画像には、停止状態の検体ラックが含まれるため、検体ラックを搬送する搬送ベルトの回転数を検出するエンコーダを用いた検体ラックの現在停止位置の特定方法などに比して、より直接的に検体ラックの位置を特定できると言える。例えば、搬送ベルト上において検体ラックがスリップしていたとしても、検体ラックの現在停止位置を正しく特定することができる。なお、本発明に係る位置画像に基づく検体ラックの現在停止位置の評価方法は、従来からのエンコーダやフォトセンサを用いた検体ラックの現在停止位置の評価方法に加えて(併せて)実施することも可能である。
【0011】
望ましくは、前記現在停止位置特定部は、前記検体ラックの搬送方向における縁辺の位置を前記現在停止位置として特定する。
【0012】
望ましくは、前記現在停止位置特定部は、前記検体ラックの搬送方向における先頭側の縁辺を前記現在停止位置として特定し、前記カメラは、前記検体ラック搬送路の上方、且つ、前記検体ラックが前記基準停止位置にあるときの前記検体ラックの先頭側の縁辺の位置よりも前記搬送方向側に設けられる、ことを特徴とする。
【0013】
望ましくは、前記カメラは、複数の検体ラック搬送路上における複数の前記基準停止位置及び前記位置指標マーカを含む撮影エリアを撮影して前記位置画像を取得し、前記基準停止位置特定部は、各前記検体ラック搬送路について前記基準停止位置を特定し、前記現在停止位置特定部は、前記現在位置画像を解析することで、各前記検体ラック搬送路における前記検体ラックの現在停止位置を特定し、前記現在停止位置評価部は、各前記検体ラック搬送路について特定され各前記基準停止位置と、対応する前記検体ラック搬送路における前記現在停止位置との誤差を検出する、ことを特徴とする。
【0014】
望ましくは、前記現在位置画像に基づいて、前記検体ラックの色を特定する検体ラック色特定部と、事前に特定されている基準色を基準として、前記検体ラック色特定部が特定した前記検体ラックの色を評価する検体ラック色評価部と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来におけるラックの停止位置の評価方法に代えてあるいは加えて実施可能な、新たなラックの停止位置の評価方法を用いてラックの停止位置を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る検体ラック搬送装置の概略平面図である。
図2A】一般レーンにおける検体ラックの第1の基準停止位置を示す図である。
図2B】一般レーンにおける検体ラックの第2の基準停止位置を示す図である。
図2C】一般レーンにおける検体ラックの第3の基準停止位置を示す図である。
図2D】一般レーンにおける検体ラックの第4の基準停止位置を示す図である。
図2E】一般レーンにおける検体ラックの第5の基準停止位置を示す図である。
図3】緊急レーンにおける検体ラックの基準停止位置を示す図である。
図4】カメラの撮影エリアを示す図である。
図5】一般レーンの上方、且つ、基準停止位置の後方にカメラを設置した場合におけるカメラの撮影エリアを示す図である。
図6】一般レーンの上方、且つ、基準停止位置の前方にカメラを設置した場合におけるカメラの撮影エリアを示す図である。
図7】検体ラック位置評価装置の機能ブロック図である。
図8】基準位置画像の例を示す図である。
図9】基準位置画像の検出ラインにおける各x座標の画素の輝度値を表すグラフである。
図10】現在位置画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態に係る検体ラック搬送装置10の概略平面図が示されている。検体ラック搬送装置10は、例えば血液や尿などの検体が注入された検体容器を収容した検体ラック14を検体ラック搬送路に沿って搬送するものである。検体容器とは、検体を注入可能であり、検体ラック14に収容可能であり、且つ、収容状態において上部が開口しているような容器であればどのような容器であってもよい。本実施形態では、検体容器として細長筒状の検体チューブ12を用いる。本実施形態における検体ラック搬送装置10は、検体分析装置に組み込まれている。検体分析装置とは、上述のように、例えば、免疫測定装置や生化学分析装置などである。また、検体ラック搬送装置10は、検体分析装置とは別個に設けられてもよい。なお、図1において、X軸は左右方向としての第1水平方向を示し、Y軸は奥行方向としての第2水平方向を示し、Z軸は鉛直方向(高さ方向)を示す。
【0018】
検体ラック供給部20には、作業者によって、検体が注入された検体チューブ12を収容した複数の検体ラック14が搬入される。検体ラック14は複数の検体チューブ12を収容することができる。具体的には、検体ラック14は、平面視において略長方形となっており、長手方向に沿って並ぶ複数の収容穴を有している。複数の検体チューブ12が当該複数の収容穴に挿入されることで、複数の検体チューブ12が起立した姿勢で(すなわち開口が上方を向いた状態で)検体ラック14の長手方向に並んだ状態で収容される。本実施形態における検体ラック14は、5本の検体チューブ12を収容可能となっているが、検体ラック14としては1本の検体チューブ12のみ、あるいはその他の数の検体チューブ12を収容可能となっていてもよい。
【0019】
検体ラック搬送装置10においては、複数の色の検体ラック14が搬送され得る。検体ラック14の色は、それに収容される検体チューブ12に注入された検体の種類に応じて選択される。例えば、一般検体が注入された検体チューブ12は灰色の検体ラック14に収容され、緊急検体が注入された検体チューブ12は赤色の検体ラック14に収容され、再度分析が必要な再検検体が注入された検体チューブ12は桃色の検体ラック14に収容される、の如くである。つまり、検体ラック14の色によって、それに収容された検体チューブ12に注入された検体の種類を把握することができる。
【0020】
検体ラック供給部20に搬入された検体ラック14は、不図示の検体ラック搬送機構(例えば検体ラック14を右側へ押し出す押し出し機構)によって、1つずつ一般レーン22に搬送される。検体ラック14は、その長手方向つまり複数の検体チューブ12の並び方向と搬送方向とが一致する向きで一般レーン22に搬送される。
【0021】
一般レーン22は、左右方向に延伸する検体ラック搬送路である。一般レーン22の左端は検体ラック供給部20に接続されている。一般レーン22は、不図示のモータにより駆動される搬送ベルト22aを含んでいる。検体ラック供給部20から搬送されてきた検体ラック14が搬送ベルト22aに載置され、搬送ベルト22aが駆動することで、検体ラック14は、一般レーン22に沿って右側(X軸正方向側)に移動していく。
【0022】
一般レーン22上において、分注処理のために検体ラック14が停止する。ここで、検体分析装置における分注処理について簡単に説明する。
【0023】
図1に示すように、検体分析装置は、チップ供給部CF、分注アームAM、及び反応槽REを含んで構成されている。分注アームAMは、水平方向に延伸する形状を有しており、Z軸方向に延伸する軸AXを中心として水平面においてθ方向に回転可能となっている。分注アームAMは、軸AXとは反対側の端部近傍において下方に伸びるノズルを備えている。反応槽REは、環状の回転台を有しており、当該回転台には、その周方向に沿って複数の反応容器Tがセットされている。
【0024】
まず、分注アームAMは、ノズルがチップ供給部CFの上部となる位置までθ方向に回転し、当該位置においてチップ供給部CFから供給された新しいチップをノズルに装着する。次いで、分注アームAMは、ノズルの位置が一般レーン22上にある吸引位置となるまでθ方向に回転し、吸引位置にある検体チューブ12から検体を吸引する。なお、本明細書における吸引位置とは、水平面(XY平面)における位置を意味し、鉛直方向(Z軸方向)の位置は問わないものとする。その後、分注アームAMは、ノズルが反応槽REの反応容器Tの上部となる位置までθ方向に回転し、吸引した検体を反応容器Tに吐出する。
【0025】
検体が吐出された反応容器Tには、不図示の試薬注入機構により、検体と反応する試薬が注入される。あるいは、検体が吐出されるに先立って、予め反応容器Tに試薬が注入されていてもよい。その後、反応槽REにおいては、撹拌処理、B/F(Bound/Free)分離処理、あるいは測定処理などが行われる。なお、図1には反応槽REが1つのみ示されているが、検体分析装置は複数の反応槽REを有していてもよい。その場合には、複数の反応槽RE間において反応容器Tを搬送するための反応容器搬送機構が別途設けられる。
【0026】
分注処理においては、一般レーン22上にある吸引位置において検体チューブ12から検体が吸引されるから、吸引処理をするに当たり、検体チューブ12が吸引位置に位置するように、一般レーン22上において検体ラック14が停止する。なお、検体チューブ12が吸引位置に位置する、とは、少なくとも検体チューブ12の開口内に、吸引位置が位置することを意味する。理想的には、検体チューブ12の開口の中心が吸引位置となるのがよい。検体ラック14の停止位置の詳細については後述する。
【0027】
一般レーン22の右端は、中間レーン24の左手前側に接続されている。吸引処理を終えた検体チューブ12を収容した検体ラック14は、一般レーン22をさらに右側へ移動し中間レーン24に搬送される。
【0028】
中間レーン24は、奥行方向に延伸する検体ラック搬送路である。中間レーン24は、不図示の検体ラック搬送機構(例えば検体ラック14を奥側に押し込む押し込み機構)を有しており、当該検体ラック搬送機構により、検体ラック14は中間レーン24の奥側端部まで奥行方向側(Y軸正方向側)に移動される。中間レーン24の奥側端部まで移動した検体ラック14は、別の検体ラック搬送機構(例えば検体ラック14を左側へ押し出す押し出し機構)によって、回収レーン26に搬送される。
【0029】
回収レーン26は、左右方向に延伸する検体ラック搬送路である。回収レーン26の右端は中間レーン24の奥側端部に接続されており、左端は検体ラック排出部28に接続されている。一般レーン22同様、回収レーン26も不図示のモータにより駆動される搬送ベルト26aを含んでいる。中間レーン24からの検体ラック14が搬送ベルト26aに載置され、搬送ベルト26aが駆動することで、検体ラック14は、回収レーン26に沿って左側(X軸負方向側)に移動し、検体ラック排出部28まで搬送される。
【0030】
検体ラック排出部28に搬入された検体ラック14は、作業者によって搬出される。以上が検体ラック14の一般的な移動経路である。
【0031】
本実施形態に係る検体ラック搬送装置10は、さらに、緊急レーン30が設けられている。緊急レーン30は、一般レーン22と隣接して左右方向に延伸する検体ラック搬送路である。緊急レーン30の左端は検体ラック供給部20に接続され、右端は中間レーン24の左手前側に接続されている。上述のように、一般レーン22には、順番に1つずつ検体ラック14が搬送され、原則的にその順序において検体ラック14(に収容された検体チューブ12)に対して吸引処理が行われて検体の分析が行われるのであるが、一般レーン22に吸引処理待ちの検体チューブ12を収容した検体ラック14が待機しているときに、緊急で分析を行いたい検体、すなわち緊急検体が生じる場合がある。このような場合、当該緊急検体が注入された検体チューブ12を収容した検体ラック14を検体ラック供給部20から緊急レーン30に搬送することで、当該検体ラック14に収容された検体チューブ12について優先して吸引処理を行うことができる。一般レーン22同様、検体ラック14は、複数の検体チューブ12の並び方向と搬送方向とが一致する向きで緊急レーン30に搬送される。上述のように、本実施形態では、緊急レーン30には、原則的に一般レーン22で搬送される検体ラックとは異なる色の検体ラック14が搬送される。
【0032】
一般レーン22同様、緊急レーン30も不図示のモータにより駆動される搬送ベルト30aを含んでいる。検体ラック供給部20からの検体ラック14が搬送ベルト30aに載置され、搬送ベルト30aが駆動することで、検体ラック14は、緊急レーン30に沿って右側に移動していく。分注アームAMは、ノズルが緊急レーン30上となる位置までθ方向に回転可能であり、すなわち、緊急レーン30上にも吸引位置が存在する。したがって、緊急レーン30においても、吸引処理をするに当たって、検体チューブ12が吸引位置に位置するように、緊急レーン30上において検体ラック14が停止する。吸引処理を終えた検体チューブ12を収容した検体ラック14は、緊急レーン30に沿って右側へ移動し中間レーン24に搬送される。その後の検体ラック14の動きは、一般レーン22から中間レーン24に搬送された検体ラック14と同様である。
【0033】
図2A図2Eには、一般レーン22上における吸引位置40が示されている。本実施形態においては、検体ラック14の搬送方向に並んだ5つの検体チューブ12に対して順次吸引処理が行われる。したがって、1つの検体ラック14は、当該検体ラック14に収容された5つの検体チューブ12が順次吸引位置40に位置するように、図2A図2Eに示された5つの停止位置に順次停止する。
【0034】
図2A図2Eに示された検体ラック14の各停止位置は、吸引処理の対象となる各検体チューブ12の開口の中心に吸引位置40が位置している理想的な停止位置である。検体ラック搬送装置10としては、このような理想的な停止位置に検体ラック14を停止させるべく制御するのであるが、後述するような種々の要因により、検体ラック14の実際の停止位置が理想的な停止位置からずれる場合がある。本明細書においては、検体ラック14が停止すべき理想的な停止位置を基準停止位置と記載する。また、検体ラック14を基準停止位置に停止させるための制御のことを停止制御と記載する。
【0035】
図2Aには、検体ラック14に収容された、搬送方向側から見て1番目に位置する検体チューブ12aが吸引位置40に位置した検体ラック14の第1の基準停止位置が示され、図2Bには、検体ラック14に収容された、搬送方向側から見て2番目に位置する検体チューブ12bが吸引位置40に位置した検体ラック14の第2の基準停止位置が示され、図2Cには、検体ラック14に収容された、搬送方向側から見て3番目に位置する検体チューブ12cが吸引位置40に位置した検体ラック14の第3の基準停止位置が示され、図2Dには、検体ラック14に収容された、搬送方向側から見て4番目に位置する検体チューブ12dが吸引位置40に位置した検体ラック14の第4の基準停止位置が示され、図2Eには、検体ラック14に収容された、搬送方向側から見て5番目に位置する検体チューブ12eが吸引位置40に位置した検体ラック14の第5の基準停止位置が示されている。本実施形態では、1つの検体ラック14に5つの検体チューブ12が収容可能であるから、1つの検体ラック14は、一般レーン22上において5つの基準停止位置を有するが、言うまでもなく、1つの検体ラック14が停止すべき基準停止位置の数は、当該検体ラック14が収容可能な検体チューブ12の数に応じた数となる。
【0036】
一般レーン22には、その側壁22bからレーン側に突出可能な爪42が設けられる。爪42は、一般レーン22における停止制御を実現するためのものである。爪42は、一般レーン22の延伸方向すなわち検体ラック14の搬送方向に沿って移動可能であり、また、側壁22bの内側(レーン側とは反対側)へ引っ込むことも可能となっている。爪42は、不図示の爪制御機構によってその移動が制御される。爪42は例えばアルミなどの金属、あるいは樹脂で形成される。搬送ベルト22aの駆動により一般レーン22に沿って搬送されてきた検体ラック14が、レーン側に突出した爪42に当接することで、検体ラック14が停止する。このとき、搬送ベルト22aの駆動を止めてもよいし搬送ベルト22aを駆動させたままであってもよい。爪42が第1の基準停止位置に応じた位置(搬送方向の位置)に突出するように制御することで、検体ラック14を第1の基準停止位置に停止させる停止制御が実現される。
【0037】
検体チューブ12aに対する吸引処理のための十分な時間が経過した後、爪42が搬送方向に移動し、第2の基準停止位置に応じた位置(図2B参照)まで移動する。搬送ベルト22aの駆動により検体ラック14が搬送方向に移動した後、再度爪42に当接して再度停止する。これにより、検体ラック14を第2の基準停止位置に停止させる停止制御が実現される。
【0038】
以後同様に、第3~第5の基準停止位置に応じた位置に爪42を段階的に移動させることで、検体ラック14を第3~第5の基準停止位置に停止させる停止制御が実現される。検体チューブ12eへの吸引処理が完了した後、爪42が側壁22bの内側に引っ込むことで、検体ラック14が中間レーン24へ向かって搬送される。
【0039】
上述のようにして検体ラック14の停止制御が行われるのではあるが、停止した検体ラック14(の前端)と爪42との間に隙間が生じてしまったり、検体ラック14が傾いて(本明細書において検体ラック14が傾くとは、検体ラック14の長手方向と搬送方向がずれてしまうことを意味する)しまったり、あるいは、爪42を停止させる位置の調整ずれなどに起因して、検体ラック14が基準停止位置に停止しない場合が想定される。なお、検体ラック14が基準停止位置からずれてしまう要因は上述に限られるものではない。
【0040】
図3に示すように、緊急レーン30においても、一般レーン22と同様の処理により、検体ラック14に収容された5つの検体チューブ12それぞれが緊急レーン30上の吸引位置44に位置するように、検体ラック14の停止制御が行われる。すなわち、緊急レーン30にも、その側壁30bからレーン側に突出する爪46が設けられ、爪46が搬送方向に移動することで緊急レーン30上において検体ラック14が各基準停止位置に停止するように制御される。なお、上述の通り、検体分析装置の分注アームAMが、一般レーン22よりも手前側にある軸AXを中心にθ方向に回転するために、一般レーン22上の吸引位置40と、一般レーン22よりも奥側に位置する緊急レーン30上の吸引位置44とでは、そのX軸方向の位置が少しずれている。
【0041】
図1に戻り、カメラ32は、一般レーン22における検体ラック14の基準停止位置を含む撮影エリアを撮影して、停止制御により停止された検体ラック14を含む位置画像を取得する。
【0042】
図4に、カメラ32の撮影エリア50の一例が示されている。上述のように、一般レーン22において5つの基準停止位置が存在するから、撮影エリア50は、これらの基準停止位置を全て含むように設定される。なお、カメラ32は固定されており、その撮影エリア50は変動しない。
【0043】
詳しくは後述するが、カメラ32が撮影した位置画像を検体ラック位置評価装置34が解析することで、検体ラック14の停止位置が特定される。その特定処理においては、位置画像における検体ラック14の特定部分の位置が検体ラック14の停止位置として特定される。したがって、撮影エリア50としては、各基準停止位置に停止した場合の検体ラック14の全体までカバーする必要はなく、少なくとも、各基準停止位置に停止した場合における、検体ラック位置評価装置34にて特定される検体ラック14の特定部分をカバーしていればよい。例えば、本実施形態においては、検体ラック位置評価装置34は、検体ラック14の先頭縁辺60(搬送方向側の縁辺)の位置を検体ラック14の停止位置として特定する。したがって、撮影エリア50には、少なくとも、一般レーン22における第1の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60aの位置、一般レーン22における第2の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60bの位置、一般レーン22における第3の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60cの位置、一般レーン22における第4の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60dの位置、及び、一般レーン22における第5の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60eの位置が含まれていればよい。
【0044】
また、撮影エリア50には、複数の検体ラック搬送路における検体ラック14の基準停止位置が含まれているとよい。図4に示す通り、本実施形態においては、撮影エリア50には、一般レーン22における検体ラック14の基準停止位置のみならず、一般レーン22に隣接する緊急レーン30における検体ラック14の基準停止位置が含まれている。上述と同様の理由で、撮影エリア50には、少なくとも、各基準停止位置に停止した場合における、検体ラック位置評価装置34にて特定される検体ラック14の特定部分をカバーしていればよい。本実施形態では、撮影エリア50には、緊急レーン30における第1の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60fの位置、緊急レーン30における第2の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60gの位置、緊急レーン30における第3の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60hの位置、緊急レーン30における第4の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60iの位置、及び、緊急レーン30における第5の基準停止位置に停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60jの位置が含まれる。
【0045】
また、一般レーン22の基準停止位置の近傍、及び、緊急レーン30の基準停止位置の近傍に、位置指標マーカ62が設けられていてもよく、撮影エリア50に、当該位置指標マーカ62が含まれるのが望ましい。本実施形態では、一般レーン22の第1~第5の基準停止位置(各基準停止位置に検体ラック14が停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60の位置)のそれぞれの近傍に位置指標マーカ62a~62eが設けられ、緊急レーン30の第1~第5の基準停止位置(各基準停止位置に検体ラック14が停止したときの検体ラック14の先頭縁辺60)のそれぞれの近傍に位置指標マーカ62f~62jが設けられている。その上で、撮影エリア50は、位置指標マーカ62a~62jを含むように設定される。
【0046】
撮影エリア50が上述の条件を満たす限りにおいて、カメラ32はどの位置に設けられてもよいが、本実施形態においては、カメラ32は、一般レーン22及び緊急レーン30の上方に設けられる。
【0047】
上述のように、複数の検体チューブ12は、検体ラック14の複数の収容穴に挿入されることで起立した姿勢で検体ラック14に収容される。このとき、検体チューブ12の下側の一部分のみが収容穴に収容され、検体チューブ12の上側部分が収容穴に収容されずに収容穴の上端(すなわち検体ラック14の上端)から上側に突き出ている。このような場合であって、検体ラック位置評価装置34が検体ラック14の先頭縁辺60を検体ラック14の位置として検出する場合、カメラ32の位置によっては、検体ラック14に収容した検体チューブ12の背後に隠れてしまい、位置画像において先頭縁辺60がうまく映らない場合がある。
【0048】
図5は、一般レーン22の上方、且つ、基準停止位置(特に、検体チューブ12eが吸引位置40に位置した検体ラック14の第5の基準停止位置)に検体ラック14があるときの当該検体ラック14の先頭縁辺60よりも左側(搬送方向とは反対側)にカメラ32が設けられた場合のカメラ32の視野を示す側面図である。図5において、カメラ32の視野角はφで示されている。図5に示すように、この場合、カメラ32から見ると、先頭縁辺60が検体チューブ12aの背後に隠れてしまって、位置画像において先頭縁辺60が好適に映らないことになってしまう。
【0049】
したがって、検体ラック位置評価装置34が検体ラック14の先頭縁辺60を検体ラック14の位置として検出するならば、カメラ32は、一般レーン22(又は緊急レーン30)の上方、且つ、検体ラック14が基準停止位置にあるときの当該検体ラック14の先頭縁辺60の位置よりも搬送方向側に設けられるのが望ましい。特に、一般レーン22(又は緊急レーン30)において複数の基準停止位置がある場合には、カメラ32は、検体ラック14が最も搬送方向側に位置する基準停止位置(本実施形態では第5の基準停止位置)にあるときの当該検体ラック14の先頭縁辺60の位置よりも搬送方向側に設けられるのが望ましい。
【0050】
図6には、そのような位置にカメラ32が設けられた場合のカメラ32の視野を示す側面図である。図6に示す位置にカメラ32を設けることで、検体ラック14が最も搬送方向側にある第5の基準停止位置にあったとしても、カメラ32から見て検体ラック14の先頭縁辺60が検体チューブ12aの影には隠れない。したがって、位置画像において、先頭縁辺60が明確に映ることになる。
【0051】
本実施形態においては、カメラ32は、一般レーン22又は緊急レーン30において検体ラック14の停止制御が行われる度に、撮影エリア50を撮影して静止画である位置画像を取得する。また、カメラ32は、上述の撮影エリア50を動画で撮影し、検体ラック14の停止制御が行われるタイミングで当該動画から静止画を切り出して位置画像を取得してもよい。カメラ32によって取得された位置画像は検体ラック位置評価装置34に送られる。
【0052】
なお、より明確な位置画像を取得すべく、撮影エリア50を照射する光源が設けられてもよい。
【0053】
検体ラック位置評価装置34は、カメラ32が取得した位置画像に基づいて、停止制御により停止した検体ラック14の停止位置を評価する。以下、検体ラック位置評価装置34の詳細を図7を参照しつつ説明する。
【0054】
図7は、検体ラック位置評価装置34の機能ブロック図である。検体ラック位置評価装置34は、例えばコンピュータなどの情報処理装置などで構成される。
【0055】
検体分析装置によって実際の検体分析処理が実行されるに先立って、検体ラック搬送装置10の管理者(例えばサービスマンなど)によって、検体ラック14が一般レーン22及び緊急レーン30上の各基準停止位置に正しく停止するか否かの確認作業が行われる。なお、基準停止位置とは、特定の一か所の位置を意味するのではなく、その近傍領域を含む概念であってもよい。本実施形態では、一般レーン22及び緊急レーン30のそれぞれにおいて、複数の基準停止位置があるため、管理者は、各基準停止位置に検体ラック14を停止させるように検体ラック搬送装置10に停止制御を実行させ、検体ラック14の位置を確認する、という処理を順次行っていく。
【0056】
本実施形態では、当該確認作業においてカメラ32によって位置画像が取得される。確認作業中に取得された位置画像を特に基準位置画像と呼ぶ。具体的には、停止制御により検体ラック14が停止され、管理者の確認により検体ラック14が正しく基準停止位置に停止していると判断された場合、管理者の指示に従って、カメラ32は撮影エリア50(図4参照)を撮影する。この処理を、一般レーン22及び緊急レーン30の各基準停止位置について実行する。これにより、一般レーン22及び緊急レーン30の各基準停止位置についての複数の基準位置画像が取得される。
【0057】
基準停止位置特定部70は、基準位置画像を解析することで、基準位置画像上における基準停止位置を特定する。基準停止位置特定部70による基準停止位置の特定方法を図8及び図9を参照しながら説明する。
【0058】
図8は、基準位置画像PIrの一例である。図8において、x軸は基準位置画像PIrの横方向における画素の並び方向を示し、y軸は基準位置画像PIrの縦方向における画素の並び方向を示す。基準停止位置特定部70は、基準位置画像PIrを解析することで、検体ラック14の搬送方向における縁辺の位置を基準停止位置として特定することができる。検体ラック14の搬送方向における縁辺とは、検体ラック14の先頭縁辺60又は後尾縁辺64である。特に、本実施形態では、基準位置画像PIrにおいては、一般レーン22の延伸方向がx軸と平行となっていることから、検体ラック14の搬送方向における縁辺がほぼy軸に平行となる。したがって、検体ラック14の搬送方向における縁辺の位置を基準停止位置として特定することで、画像処理において容易に検体ラック14の基準停止位置を検出することができる。本実施形態では、検体ラック14の先頭縁辺60の位置を検体ラック14の基準停止位置として特定する。
【0059】
本実施形態においては、基準停止位置特定部70は、基準位置画像PIrにおけるy=aのライン(以後「検出ラインL」と記載する)上における各x座標の画素の輝度値に基づいて、検体ラック14の先頭縁辺60の位置(x座標)を特定する。上述のように、カメラ32の位置は固定されており撮影エリア50も固定され、且つ、基準位置画像PIrにおいて一般レーン22はX方向に延伸していることから、基準位置画像PIrにおいて一般レーン22(特に一般レーン22の搬送ベルト22a)の位置は既知である。具体的には、基準位置画像PIrのうち、b<y<cの領域が搬送ベルト22aに相当する画像領域であることが予め分かる。本実施形態では、検出ラインLは、a=(b+c)/2、つまり搬送ベルト22aの中央に沿ったラインとしている。上述のように、一般レーン22には爪42が突出し得るが、好適に先頭縁辺60の位置を特定できるよう、すなわち、爪42の輝度値が先頭縁辺60の検出処理に影響を及ぼさないように、検出ラインLに爪42が掛からないのが望ましい。
【0060】
図9は、検出ラインLにおける各x座標の画素の輝度値を表すグラフである。x座標の最大値ximaxからx座標が小さくなる方向(図8に示した基準位置画像PIrにおける右端から左側方向)へ見ていくと、最大値ximaxから一定の領域は、輝度値が低い低輝度領域Lbとなっている。低輝度領域Lbは搬送ベルト22aの画素に対応するものである。低輝度領域Lbの輝度値が低いのは、本実施形態における搬送ベルト22aの色が濃い色であるためである。
【0061】
そして、x座標Edにおいて輝度値が急峻に立ち上がり、x座標Edよりx座標が小さい領域は低輝度領域Lbよりも輝度値が高い高輝度領域Hbとなっている。高輝度領域Hbは検体ラック14の画素に対応するものである。高輝度領域Hbの輝度値が低輝度領域Lbよりも高いのは、本実施形態における検体ラック14の色が搬送ベルト22aの色よりも明るい、あるいは検体ラック14の材質が搬送ベルト22aの材質よりも反射率が高いためである。
【0062】
座標Edの位置が、検体ラック14の先頭縁辺60の位置、すなわち検体ラック14の基準停止位置である。したがって、基準停止位置特定部70は、検出ラインL上において、最大値ximaxからx座標が小さくなる方向に向かって、各画素の輝度値を検出していき、輝度値が急峻に高まった時のx座標を検体ラック14の基準停止位置として特定する。本実施形態では、基準停止位置特定部70がこのように基準停止位置を特定するため、搬送ベルト22aの色及び反射率と、検体ラック14の色及び反射率とを異ならせておくのがよい。
【0063】
好適には、上述の処理によって検体ラック14の先頭縁辺60の位置を特定すると共に、基準停止位置特定部70は、既知の画像処理により、基準位置画像PIrから位置指標マーカ62の位置(x座標)を検出し、位置指標マーカ62と先頭縁辺60との相対位置関係を検体ラック14の基準停止位置としてもよい。
【0064】
例えば、図8に示した基準位置画像PIrは、一般レーン22上の第1の基準停止位置に検体ラック14が停止した場合の画像であるので、基準停止位置特定部70は、第1の基準停止位置の近傍に設けられた位置指標マーカ62aの位置を基準とした先頭縁辺60の位置(例えば位置指標マーカ62aのx座標と先頭縁辺60のx座標との差)を、検体ラック14の第1の基準停止位置として特定するようにしてもよい。
【0065】
上述のように、本実施形態では、一般レーン22上において複数の基準停止位置を有するため、基準停止位置特定部70は、各基準停止位置に対応する基準位置画像PIrに基づいて、一般レーン22上の複数の基準停止位置を特定する。同様に、基準停止位置特定部70は、各基準停止位置に対応する基準位置画像PIrに基づいて、緊急レーン30上の複数の基準停止位置も特定する。本実施形態では、一般レーン22及び緊急レーン30それぞれについて、第1~第5の5つの基準停止位置が特定される。
【0066】
検体ラック搬送装置10のメーカとしては、基準停止位置が一般レーン22あるいは緊急レーン30上のある範囲内(期待範囲内)となるように調整されることを期待している。仮に、基準停止位置が期待範囲外となるならば、管理者による検体ラック14の停止位置の調整不良などが疑われる。カメラ32の撮影エリア50が既知であれば、基準位置画像PIrにおける各基準停止位置の期待範囲も予め分かることになる。また、位置指標マーカ62が設けられた場合には、期待範囲は位置指標マーカ62の近傍であり、先頭縁辺60との位置の差を基準停止位置とするならば、基準停止位置の絶対値は比較的小さい値となることが期待される。したがって、基準位置画像PIrから特定される各基準停止位置の期待範囲(x座標の範囲)を示す情報を予め後述の記憶部76に記憶させておき、基準停止位置特定部70は、特定した基準停止位置が期待範囲に含まれない場合に警告を発するようにしてもよい。警告は、例えば、検体ラック搬送装置10が有する表示部(不図示)に表示させることで行う。あるいは、検体ラック搬送装置10が有する音声出力部あるいは光出力部(いずれも不図示)から出力する音声又は光によって警告が行われてもよい。
【0067】
基準色特定部72は、基準位置画像PIrに含まれる検体ラック14の色を特定する。検体ラック14の色の特定方法は種々の特定方法を用いてよいが、本実施形態では、上述の検出ラインL上の高輝度領域Hbに属する画素の色値を検出することで検体ラック14の色を特定する。なお、検体ラック14の色は、例えばRGB値などで表現される。一般レーン22と緊急レーン30を搬送される検体ラック14の色が異なるならば、基準色特定部72は、一般レーン22の検体ラック14の色と緊急レーン30の検体ラック14の色を別々に特定する。
【0068】
入力部74は、種々のボタンやキーボードなどを含んで構成される。本実施形態では、基準位置画像PIrに基づいて、基準停止位置特定部70により各基準停止位置が特定され、基準色特定部72により検体ラック14の色が特定されていたが、各基準停止位置及び検体ラック14の色は入力部74により管理者あるいは作業者によって入力されてもよい。各基準停止位置及び検体ラック14の色を入力部74から入力するならば、基準位置画像に対する基準停止位置特定部70及び基準色特定部72の処理は不要となる。
【0069】
記憶部76は、例えばハードディスク、ROM、あるいはRAMなどを含んで構成される。また、記憶部76には、検体ラック搬送装置10の各部を動作させるための検体ラック搬送プログラムが記憶される。
【0070】
記憶部76には、基準停止位置特定部70が特定した、又は入力部74から入力された、一般レーン22及び緊急レーン30それぞれにおける複数の(本実施形態では5つの)基準停止位置を示す基準停止位置情報78が記憶される。また、記憶部76には、基準色特定部72が特定した、又は入力部74から入力された、一般レーン22及び緊急レーン30それぞれに沿って搬送される検体ラック14の色を示す基準色情報80が記憶される。
【0071】
記憶部76に基準停止位置情報78及び基準色情報80が記憶されると、実際の検体分析処理を実行する準備が整うため、実際の検体分析処理が開始される。すなわち、検体ラック搬送装置10は、検体分析処理のために検体チューブ12を収容した検体ラック14の搬送を開始する。
【0072】
上述の通り、カメラ32は、一般レーン22又は緊急レーン30において、停止制御により検体ラック14が停止する度に、撮影エリア50を撮影して位置画像を取得する。実際の検体分析処理が行われている間に取得された位置画像を特に現在位置画像と呼ぶ。
【0073】
現在停止位置特定部82は、現在位置画像を解析することで、現在位置画像上における検体ラック14の停止位置、すなわち現在停止位置を特定する。また、現在停止位置特定部82は、現在位置画像を解析することで、停止制御の対象となった検体ラック14が現在位置画像に含まれているか否かを判定する。例えば、検体ラック14が一般レーン22(又は緊急レーン30)を搬送されている間に、何者かによって誤って当該検体ラック14が取り除かれた場合、停止制御の対象となった検体ラック14が現在位置画像に含まれないこととなる。
【0074】
現在停止位置特定部82の現在停止位置の特定方法は、基本的に、基準停止位置特定部70の基準停止位置の特定方法と同じである。
【0075】
図10は、カメラ32により取得された現在位置画像PItの一例である。図10において、x軸は現在位置画像PItの横方向における画素の並び方向を示し、y軸は現在位置画像PItの縦方向における画素の並び方向を示す。現在停止位置特定部82は、現在位置画像PItを解析することで、検体ラック14の搬送方向における縁辺の位置(検体ラック14の先頭縁辺60又は後尾縁辺64)を現在停止位置として特定することができる。これにより、基準停止位置同様、画像処理において容易に検体ラック14の現在停止位置を検出することができる。本実施形態では、基準停止位置が検体ラック14の先頭縁辺60の位置として特定されていることに応じて、現在停止位置特定部82は、検体ラック14の先頭縁辺60の位置を検体ラック14の現在停止位置として特定する。
【0076】
また、現在停止位置特定部82は、現在位置画像PItの搬送ベルト22aに相当する画像領域内において複数の検出ラインLを設定し、複数の検出ラインLそれぞれにおいて検体ラック14の先頭縁辺60を検出するようにしてもよい。例えば、図10に示すように、y=aの検出ラインLと、y=d(b<d<c)の検出ラインLの2本の検出ラインLにおいて、それぞれ先頭縁辺60を検出するようにしてもよい。もちろん、複数の検出ラインLの数は3以上であっても構わない。これは、検体ラック14の傾き検出のためである。傾き検出については後述する。
【0077】
また、現在停止位置特定部82は、現在位置画像PItから先頭縁辺60が検出できなかった場合、停止制御の対象となった検体ラック14が現在位置画像PItに含まれていない、と判定する。
【0078】
現在停止位置特定部82は、停止制御により検体ラック14が緊急レーン30に停止した場合も、現在位置画像PItに基づいて、緊急レーン30上における検体ラック14の現在停止位置を特定する。また、現在停止位置特定部82は、現在位置画像PItを解析することで、停止制御の対象となった検体ラック14が現在位置画像に含まれているか否かを判定する。
【0079】
停止制御により検体ラック14が一般レーン22に停止すると共に、停止制御により検体ラック14が緊急レーン30に停止する場合もある。その場合、現在位置画像PItにおいては、一般レーン22に停止した検体ラック14と、緊急レーン30に停止した検体ラック14の2つの検体ラック14が含まれることになる。この場合、現在停止位置特定部82は、1つの現在位置画像PItに基づいて、一般レーン22に停止した検体ラック14の現在停止位置と、緊急レーン30に停止した検体ラック14の現在停止位置との両方を特定する。
【0080】
現在停止位置特定部82は、基準停止位置特定部70同様、現在位置画像PItにおける位置指標マーカ62と先頭縁辺60との相対位置関係を検体ラック14の現在停止位置としてもよい。
【0081】
現在停止位置特定部82は、現在位置画像PItにおいて検体ラック14の現在停止位置を特定する度に、特定した現在停止位置を現在停止位置評価部84へ渡す。
【0082】
現在停止位置評価部84は、記憶部76に記憶された基準停止位置情報78を基準として、現在停止位置特定部82が特定した検体ラック14の現在停止位置を評価する。現在停止位置評価部84は、まず、現在停止位置特定部82が特定した現在停止位置に対応する基準停止位置情報78を記憶部76から読み出す。本実施形態では、現在停止位置特定部82が現在停止位置を特定したタイミングで、直前に行われた停止制御に応じて、記憶部76から基準停止位置情報78を読み出す。例えば、現在停止位置特定部82から現在停止位置を受けた直前に、検体ラック14を一般レーン22の第1の基準停止位置に停止させる停止制御が行われたのであれば、現在停止位置評価部84は、一般レーン22の第1の基準停止位置に対応する基準停止位置情報78を読み出す。また、検体ラック14を緊急レーン30の第4の基準停止位置に停止させる停止制御が行われたのであれば、現在停止位置評価部84は、緊急レーン30の第4の基準停止位置に対応する基準停止位置情報78を読み出す。
【0083】
次いで、現在停止位置評価部84は、現在停止位置特定部82から受け取った現在停止位置と、記憶部76から読み出した基準停止位置情報78を比較する。現在停止位置及び基準停止位置が検体ラック14の先頭縁辺60のx座標である場合には、現在停止位置評価部84は、両x座標の誤差を演算する。現在停止位置評価部84は、当該誤差が所定の閾値未満であれば、検体ラック14の現在停止位置が正しいと判断する。一方、現在停止位置評価部84は、当該誤差が所定の閾値以上であれば、現在停止位置が正しい停止位置ではないと判断する。
【0084】
また、現在停止位置及び基準停止位置が、位置指標マーカ62の位置と先頭縁辺60の位置との相対位置関係(差)である場合には、現在停止位置評価部84は、両相対位置関係の誤差を演算する。ここで、現在停止位置及び基準停止位置が、位置指標マーカ62の位置と先頭縁辺60の位置との相対位置関係で表されることによって、基準位置画像PIrが撮影されたときのカメラ32の位置(すなわち撮影エリア50)と現在位置画像PItが撮影されたときのカメラ32の位置が多少ずれていたとしても、そのずれを吸収して、現在停止位置と基準停止位置とを比較することができる。現在停止位置評価部84は、当該誤差が所定の閾値未満であれば、検体ラック14の現在停止位置が正しいと判断する。一方、現在停止位置評価部84は、当該誤差が所定の閾値以上であれば、現在停止位置が正しい停止位置ではないと判断する。
【0085】
現在停止位置評価部84は、現在停止位置が正しい停止位置ではないと判断した場合、検体ラック搬送装置10が有する表示部に警告を表示させる。また、現在停止位置評価部84は、停止制御の対象となった検体ラック14が現在位置画像PItに含まれていないと判定した場合にも表示部に警告を表示させる。警告は、検体ラック搬送装置10が有する音声出力部あるいは光出力部から出力する音声又は光によって行われてもよい。また、現在停止位置評価部84は、現在停止位置が正しい停止位置ではないと判断した場合、検体分析装置の動作を停止するようにしてもよい。
【0086】
また、現在停止位置が正しい停止位置であるか否かに関わらず、現在停止位置と基準停止位置との誤差を表示するようにしてもよい。管理者は、表示された誤差を確認することで、誤差が未だ許容範囲内ではあるが、当該誤差を大きくする要因となる部品(例えば搬送ベルト22aなど)の交換時期を予測することが可能となる。
【0087】
また、現在停止位置特定部82が複数の検出ラインLそれぞれにおいて検体ラック14の先頭縁辺60の位置を検出した場合、現在停止位置評価部84は、各検出ラインLにおける先頭縁辺60の位置の差に基づいて、検体ラック14の傾きを検出することができる。具体的には、当該差が所定の閾値未満であれば、検体ラック14は傾いておらず、当該差が所定の閾値以上であれば、検体ラック14が傾いていると判断することができる。現在停止位置評価部84は、検体ラック14が傾いていると判断された場合に、警告を出力する、あるいは、検体分析装置の動作を停止するようにしてもよい。
【0088】
検体ラック色特定部86は、現在位置画像PItを解析することで、現在位置画像PItに含まれる検体ラック14の色を特定する。検体ラック色特定部86の検体ラック14の色の特定方法は、基準色特定部72の検体ラック色の特定方法と同じであるため、ここでは説明を省略する。検体ラック色特定部86は、現在位置画像PItにおいて検体ラック14の色を特定する度に、特定した色(例えばRGB値)を現在停止位置評価部84へ渡す。
【0089】
検体ラック色評価部88は、記憶部76に記憶された基準色情報80を基準として、検体ラック色特定部86が特定した検体ラック14の色を評価する。具体的には、検体ラック色評価部88は、検体ラック色特定部86が特定した検体ラック14の色と、基準色情報80とを比較して、色差を算出する。色差の算出は、例えば、R、G、Bそれぞれの値の差に基づいて算出する。検体ラック色評価部88は、当該色差が所定の閾値未満であれば、検体ラック14の色が正しいと判断する。一方、検体ラック色評価部88は、当該色差が所定の閾値以上であれば、検体ラック14の色が正しくないと判断する。
【0090】
検体ラック色評価部88は、検体ラック14の色が正しくないと判断した場合、すなわち、間違った種類の検体が注入された検体チューブ12を収容した検体ラック14が搬送されている場合、検体ラック搬送装置10が有する表示部に警告を表示させる。また、警告に併せて、正しい検体ラック14の色を表示するようにしてもよい。警告は、検体ラック搬送装置10が有する音声出力部あるいは光出力部から出力する音声又は光によって行われてもよい。また、検体ラック色評価部88は、検体ラック14の色が正しくないと判断した場合、検体分析装置の動作を停止するようにしてもよい。
【0091】
検体ラック位置評価装置34の構成概要は以上の通りである。なお、図7に示す、検体ラック位置評価装置34の各部のうち、基準停止位置特定部70、基準色特定部72、現在停止位置特定部82、現在停止位置評価部84、検体ラック色特定部86、及び検体ラック色評価部88の各部は、それぞれ、例えばプロセッサや電子回路などのハードウェアを利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリなどのデバイスが利用されてもよい。
【0092】
本実施形態に係る検体ラック搬送装置10によれば、一般レーン22及び緊急レーン30の少なくとも一方に停止した検体ラック14がカメラ32によって撮影され、現在位置画像PItが取得される。そして、現在位置画像PItに基づいて、検体ラック14の現在停止位置が評価される。検体ラック搬送装置10においては、停止状態の検体ラック14を含む現在位置画像PItによって現在停止位置が評価されるため、例えば搬送ベルト22a(又は26a)の回転数を検出するエンコーダを用いた検体ラック14の現在停止位置の特定方法などに比して、より直接的に検体ラック14の位置を特定できる。例えば、搬送ベルト22a上において検体ラック14がスリップしていたとしても、検体ラック14の現在停止位置を正しく特定することができる。また、本実施形態において、従来からの検体ラック14の現在停止位置の特定方法(エンコーダやフォトセンサを用いた方法)を併せて用いてもよい。
【0093】
また、本実施形態に係る検体ラック搬送装置10によれば、一般レーン22及び緊急レーン30の少なくとも一方に停止した検体ラック14の色が評価される。上述の通り、検体ラック14の色は、それに収容された検体チューブ12に注入された検体の種類を示すものであるから、検体ラック14の色を評価することで、誤った種類の検体に対して処理が行われるのを防止することができる。
【0094】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 検体ラック搬送装置、12 検体チューブ、14 検体ラック、20 検体ラック供給部、22 一般レーン、24 中間レーン、26 回収レーン、28 検体ラック排出部、30 緊急レーン、32 カメラ、34 検体ラック位置評価装置、40,44 吸引位置、42,46 爪、50 撮影エリア、60 先頭縁辺、62 位置指標マーカ、70 基準停止位置特定部、72 基準色特定部、74 入力部、76 記憶部、78 基準停止位置情報、80 基準色情報、82 現在停止位置特定部、84 現在停止位置評価部、86 検体ラック色特定部、88 検体ラック色評価部。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10