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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電圧検出回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20230912BHJP
   G01R 19/165 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H03K5/08 J
G01R19/165 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019234864
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103860
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安坂 信
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073584(JP,A)
【文献】特開平06-230044(JP,A)
【文献】特開2001-141761(JP,A)
【文献】特開昭48-037059(JP,A)
【文献】特開昭52-002160(JP,A)
【文献】特開2019-203851(JP,A)
【文献】特開昭60-051023(JP,A)
【文献】米国特許第04703251(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 5/00- 5/02
H03K 5/08- 5/12
H03K 5/15- 5/26
G01R 19/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧の印加端とグランド電位の印加端との間において直列に接続される第1トランジスタと第2トランジスタを含む第1インバータを有し、
前記第1トランジスタは、入力電圧を印加されるゲートを有するエンハンスメント型MOSトランジスタであり、
前記第2トランジスタは、自身のゲートとソースとが接続されるデプレッション型MOSトランジスタであり、
前記第1インバータの後段に、前記第1インバータと同じ構成で閾値電圧が同じである第2インバータが少なくとも1段接続されることで形成されるインバータの複数段構成を有し、
前記複数段構成の後段に配置される第3インバータをさらに有し、
前記第3インバータは、前記第1インバータおよび前記第2インバータに比べて温度による閾値電圧の変動が大きい、電圧検出回路。
【請求項2】
前記第2トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるドレインを有するデプレッション型NMOSトランジスタであり、
前記第1トランジスタは、前記第2トランジスタのソースと接続されるドレインと、前記グランド電位の印加端と接続されるソースと、を有するエンハンスメント型NMOSトランジスタである、請求項1に記載の電圧検出回路。
【請求項3】
前記第2トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるソースを有するデプレッション型PMOSトランジスタであり、
前記第1トランジスタは、前記第2トランジスタのドレインと接続されるドレインと、前記グランド電位の印加端と接続されるソースと、を有するエンハンスメント型NMOSトランジスタである、請求項1に記載の電圧検出回路。
【請求項4】
前記第1トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるソースを有するエンハンスメント型PMOSトランジスタであり、
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタのドレインと接続されるドレインと、前記グランド電位の印加端と接続されるソースと、を有するデプレッション型NMOSトランジスタである、請求項1に記載の電圧検出回路。
【請求項5】
前記第1トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるソースを有するエンハンスメント型PMOSトランジスタであり、
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタのドレインと接続されるソースと、前記グランド電位の印加端と接続されるドレインと、を有するデプレッション型PMOSトランジスタである、請求項1に記載の電圧検出回路。
【請求項6】
検出対象電圧を分圧して前記入力電圧を生成する際の分圧比を前記第3インバータの出力に応じて変化させることで、ヒステリシスが付与されている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電圧検出回路。
【請求項7】
前記検出対象電圧が印加されて前記入力電圧を生成する抵抗分圧回路と、
前記抵抗分圧回路に含まれる抵抗の両端間の開放・短絡を前記第3インバータの出力に応じて切り替えるスイッチと、を有する、請求項に記載の電圧検出回路。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電圧検出回路を半導体集積回路にて形成した、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なヒステリシス機能付きの電圧検出回路100を図9に示す。電圧検出回路100は、コンパレータ101と、定電流源102と、基準電圧源103と、分圧抵抗である抵抗R101~R105と、インバータINVaと、インバータINVbと、トランジスタM101と、を有している。
【0003】
コンパレータ101の反転入力端(-)には、検出対象電圧INを抵抗R101,R102により分圧して得られる比較対象電圧Vaが印加される。
【0004】
基準電圧源103は、バンドギャップリファレンスにより構成され、安定した直流電圧である基準電圧VBGを生成する。抵抗R103~R105は、直列に接続され、抵抗R103~R105による直列回路に対して基準電圧VBGが印加される。具体的には、抵抗R103の一端には、基準電圧VBGが印加される。抵抗R103の他端には、抵抗R104の一端が接続される。抵抗R104の他端には、抵抗R105の一端が接続される。抵抗R105の他端には、グランド電位の印加端が接続される。
【0005】
抵抗R103と抵抗R104とが接続されるノードNd101は、コンパレータ101の非反転入力端(+)に接続される。これにより、コンパレータ101の非反転入力端(+)には、基準電圧VBGを抵抗R103~R105により分圧して得られる基準電圧VREFが印加される。
【0006】
コンパレータ101は、比較対象電圧Vaと基準電圧VREFを比較し、比較対象電圧Vaと基準電圧VREFの大小関係に応じたレベルの信号CMPを出力する。比較対象電圧Vaが基準電圧VREFよりも高い場合、信号CMPはローレベルとなり、比較対象電圧Vaが基準電圧VREFよりも低い場合、信号CMPはハイレベルとなる。
【0007】
コンパレータ101の出力端は、インバータINVaの入力端に接続される。インバータINVaの出力端は、インバータINVbの入力端に接続される。これにより、コンパレータ101の出力する信号CMPがハイレベルである場合、インバータINVaの出力はローレベルとなり、インバータINVbの出力(電圧検出回路100の出力信号OUT)はハイレベルとなる。コンパレータ101の出力する信号CMPがローレベルである場合、インバータINVaの出力はハイレベルとなり、インバータINVbの出力(電圧検出回路100の出力信号OUT)はローレベルとなる。
【0008】
トランジスタM101は、NMOSトランジスタ(NチャネルMOSFET)により構成され、抵抗R105に並列接続される。トランジスタM101は、抵抗R105の両端間を開放または短絡するスイッチである。トランジスタM101のドレインは、抵抗R104,R105間のノードに接続され、トランジスタM101のソースは、グランド電位の印加端に接続される。トランジスタM101のゲートは、インバータINVAaの出力端とインバータINVbとが接続されるノードNdaに接続される。
【0009】
ノードNdaの信号がローレベルの場合、トランジスタM101がオフとなることで抵抗R105の両端間は開放される。この場合、基準電圧VREF=VREF1=VBG×(R104+R105)/(R103+R104+R105)となる。ノードNdaの信号がハイレベルの場合、トランジスタM101がオンとなることで抵抗R105の両端間は短絡される。この場合、基準電圧VREF=VREF2=VBG×R104/(R103+R104)となる。従って、VREF1>VREF2が成立する。このように、抵抗R103~R105は、基準電圧VBGを分圧することで基準電圧VREFを生成するが、その分圧における比は、ノードNdaでの信号(すなわち信号CMP)に応じて変化し、これによってコンパレータCMPにヒステリシスが付与されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-103995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の電圧検出回路100においては、複数のトランジスタ等で構成されるコンパレータ101や、コンパレータ101を駆動する定電流源102が必要であり、さらに、基準電圧VREFを生成するために基準電圧源103や分圧用の抵抗R103,R104が必要であった。これにより、回路面積の増加や消費電流の増加といった問題点が生じていた。
【0012】
上記状況に鑑み、本発明は、回路面積および消費電流の低減を可能とする電圧検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る電圧検出回路は、電源電圧の印加端とグランド電位の印加端との間において直列に接続される第1トランジスタと第2トランジスタを含むインバータを有し、前記第1トランジスタは、入力電圧を印加されるゲートを有するエンハンスメント型MOSトランジスタであり、前記第2トランジスタは、自身のゲートとソースとが接続されるデプレッション型MOSトランジスタである構成としている(第1の構成)。
【0014】
また、上記第1の構成において、前記第2トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるドレインを有するデプレッション型NMOSトランジスタであり、前記第1トランジスタは、前記第2トランジスタのソースと接続されるドレインと、前記グランド電位の印加端と接続されるソースと、を有するエンハンスメント型NMOSトランジスタである構成としてもよい(第2の構成)。
【0015】
また、上記第1の構成において、前記第2トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるソースを有するデプレッション型PMOSトランジスタであり、前記第1トランジスタは、前記第2トランジスタのドレインと接続されるドレインと、前記グランド電位の印加端と接続されるソースと、を有するエンハンスメント型NMOSトランジスタである構成としてもよい(第3の構成)。
【0016】
また、上記第1の構成において、前記第1トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるソースを有するエンハンスメント型PMOSトランジスタであり、前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタのドレインと接続されるドレインと、前記グランド電位の印加端と接続されるソースと、を有するデプレッション型NMOSトランジスタである構成としてもよい(第4の構成)。
【0017】
また、上記第1の構成において、前記第1トランジスタは、前記電源電圧の印加端と接続されるソースを有するエンハンスメント型PMOSトランジスタであり、前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタのドレインと接続されるソースと、前記グランド電位の印加端と接続されるドレインと、を有するデプレッション型PMOSトランジスタである構成としてもよい(第5の構成)。
【0018】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記インバータの後段に、前記インバータと同じ構成のインバータが少なくとも1段接続されることで形成される前記インバータの複数段構成を有する構成としてもよい(第6の構成)。
【0019】
また、上記第6の構成において、前記複数段構成の後段に配置されるインバータをさらに有する構成としてもよい(第7の構成)。
【0020】
また、上記第1から第7のいずれかの構成において、検出対象電圧を分圧して前記入力電圧を生成する際の分圧比を前記インバータの出力に応じて変化させることで、ヒステリシスが付与されている構成としてもよい(第8の構成)。
【0021】
また、上記第8の構成において、前記検出対象電圧が印加されて前記入力電圧を生成する抵抗分圧回路と、前記抵抗分圧回路に含まれる抵抗の両端間の開放・短絡を前記インバータの出力に応じて切り替えるスイッチと、を有する構成としてもよい(第9の構成)。
【0022】
また、本発明の別態様は、上記いずれかの電圧検出回路を半導体集積回路にて形成した半導体装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電圧検出回路によれば、回路面積および消費電流の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る電圧検出回路の構成を示す回路図である。
図2】第1実施形態に係る電圧検出回路における検出対象電圧INに対する出力信号OUTの挙動を示す図である。
図3】第1実施形態に係る電圧検出回路における検出対象電圧INに対する入力電圧VA、出力電圧VB、および出力信号OUTの挙動を示す図である。
図4】第2実施形態に係る電圧検出回路の構成を示す回路図である。
図5】第2実施形態に係る電圧検出回路における検出対象電圧INに対する出力電圧VA,VB,VCおよび出力信号OUTの挙動を示す図である。
図6】第3実施形態に係る電圧検出回路の構成を示す回路図である。
図7】第4実施形態に係る電圧検出回路の構成を示す回路図である。
図8】第5実施形態に係る電圧検出回路の構成を示す回路図である。
図9】従来の電圧検出回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電圧検出回路10の構成を示す回路図である。図1に示すように、電圧検出回路10は、第1インバータIVN1と、第2インバータINV2と、第3インバータINV3と、分圧抵抗としての抵抗R1~R3と、トランジスタM3と、を有している。
【0027】
第1インバータINV1は、デプレッション型NMOSトランジスタM1と、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2と、を有する。デプレッション型NMOSトランジスタM1と、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2は、電源電圧VDDとグランド電位との間において直列に接続される。具体的には、デプレッション型NMOSトランジスタM1のドレインは、電源電圧VDDの印加端に接続される。デプレッション型NMOSトランジスタM1のソースは、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のドレインとノードNd11にて接続される。エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のソースは、グランド電位の印加端に接続される。また、デプレッション型NMOSトランジスタM1のゲートは、デプレッション型NMOSトランジスタM1のソースとノードNd11にて接続される。
【0028】
抵抗R1~R3は、直列に接続され、抵抗R1~R3による直列回路に対して検出対象電圧INが印加される。具体的には、抵抗R1の一端には、検出対象電圧INが印加される。抵抗R1の他端には、抵抗R2の一端が接続される。抵抗R2の他端には、抵抗R3の一端が接続される。抵抗R3の他端には、グランド電位の印加端が接続される。抵抗R1~R3による直列回路により抵抗分圧回路10Aが形成される。
【0029】
抵抗R1と抵抗R2とが接続されるノードNd12は、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のゲートに接続される。これにより、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のゲートには、検出対象電圧INを抵抗R1~R3により分圧して得られる入力電圧VAが印加される。入力電圧VAは、第1インバータINV1に入力される電圧となる。
【0030】
第2インバータINV2および第3インバータINV3は、それぞれPチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETによるCMOS構成により構成される。
【0031】
第2インバータINV2の入力端は、ノードNd11に接続される。第1インバータINV1の出力電圧VBは、ノードNd11に生成されるので、第2インバータINV2に出力電圧VBが入力される。第3インバータINV3の入力端は、第2インバータINV2の出力端に接続される。第3インバータINV3の出力端に生成される電圧は、電圧検出回路10の出力信号OUTとなる。
【0032】
トランジスタM3は、NMOSトランジスタにより構成され、抵抗R3に並列接続される。トランジスタM3は、抵抗R3の両端間を開放または短絡するスイッチである。トランジスタM3のドレインは、抵抗R2,R3間のノードに接続され、トランジスタM3のソースは、グランド電位の印加端に接続される。トランジスタM3のゲートは、第3インバータINV3の出力端に接続される。
【0033】
ここで、第1インバータINV1の閾値電圧Vrefについて述べる。デプレッション型NMOSトランジスタM1は、飽和領域で使用する場合、定電流源となる。この場合のデプレッション型NMOSトランジスタM1に流れる電流をI1とすれば、I1は下記(1)式で表される。
I1=(1/2)・μn1・Cox・(W1/L1)・(VGS1-Vth1)(1)
ただし、μn1:デプレッション型NMOSトランジスタM1のキャリア移動度
ox:単位面積当たりのゲート容量
GS1:デプレッション型NMOSトランジスタM1のゲート・ソース間電圧
Vth1:デプレッション型NMOSトランジスタM1の閾値電圧
W1:デプレッション型NMOSトランジスタM1のゲート幅
L1:デプレッション型NMOSトランジスタM1のゲート長
【0034】
ここで、VGS1=0Vであるので上記(1)式は、下記(2)式となる。
I1=(1/2)・μn1・Cox・(W1/L1)・(Vth1)(2)
【0035】
また、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2を飽和領域で使用する場合、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2を流れる電流をI2とすれば、I2は下記(3)式で表される。
I2=(1/2)・μn2・Cox・(W2/L2)・(VGS2-Vth2)(3)
ただし、μn2:エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のキャリア移動度
GS2:エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のゲート・ソース間電圧
Vth2:エンハンスメント型NMOSトランジスタM2の閾値電圧
W2:エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のゲート幅
L2:エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のゲート長
【0036】
そして、I1=I2、VGS2=Vrefであるから、下記(4)式が成り立つ。
Vref=Vth2+|Vth1|・√μn1・(W1/L1)/(μn2・(W2/L2)) (4)
【0037】
上記(4)式より、第1インバータINV1の閾値電圧Vrefは、電源電圧VDDに依存しない安定した電圧となる。また、Vth1は正の温度特性を有し、Vth2は負の温度特性を有するので、W1,L1,W2,L2を調整することで、閾値電圧Vrefの温度による変動を抑制することも可能となる。
【0038】
入力電圧VA<閾値電圧Vrefの場合、出力電圧VBはハイレベルとなり、入力電圧VA>閾値電圧Vrefの場合、出力電圧VBはローレベルとなる。
【0039】
次に、電圧検出回路10の動作について説明する。図2は、検出対象電圧INに対する出力信号OUTの挙動を示す図である。ここで、第2インバータINV2の閾値電圧は、入力電圧VA=Vrefである場合の出力電圧VBの値と同じであるとする。
【0040】
まず、検出対象電圧INが0Vであるとき、入力電圧VA=0Vとなり、入力電圧VA<Vrefであるので、出力電圧VBはハイレベルとなる。従って、出力信号OUTはハイレベルとなり、トランジスタM3はオンとなり、抵抗R3の両端間は短絡される。これにより、出力電圧VAは、検出対象電圧INを抵抗R1,R2により分圧した電圧となる。
【0041】
そして、検出対象電圧INが0Vから上昇するにつれ、出力電圧VAが上昇する。出力電圧VAが閾値電圧Vrefを上回ると、出力電圧VBはローレベルとなる。これにより、第2インバータINV2の出力はハイレベルとなり、第3インバータINV3の出力である出力信号OUTはローレベルとなる。このときの検出対象電圧INを閾値電圧VDET1(図2)とすれば、
VDET1=Vref・(R1+R2)/R2
となる。
【0042】
このとき、トランジスタM3はオフとなり、抵抗R3の両端間は開放される。従って、入力電圧VAは、検出対象電圧INを抵抗R1~R3により分圧した電圧となる。
【0043】
その後、検出対象電圧INが低下するにつれ、出力電圧VAが低下し、出力電圧VAが閾値電圧Vrefを下回ると、出力電圧VBはハイレベルとなる。これにより、第2インバータINV2の出力はローレベルとなり、第3インバータINV3の出力である出力信号OUTはハイレベルとなる。このときの検出対象電圧INを閾値電圧VDET2(図2)とすれば、
VDET2=Vref・(R1+R2+R3)/(R2+R3)
となる。このようにして、電圧検出回路10にヒステリシスを付与することができる。
【0044】
そして、このような本実施形態に係る電圧検出回路10によれば、回路面積の低減および消費電流の低減が可能となる。さらに、電圧検出回路10によれば、図9に示す従来の構成のような基準電圧源103が不要となり、最小動作電圧の低電圧化も可能となる。
【0045】
<第1実施形態の課題>
第1実施形態に係る電圧検出回路10は、上述のように優れた効果を奏するが、以下のような課題も有している。図3は、電圧検出回路10における検出対象電圧INに対する入力電圧VA、出力電圧VB、および出力信号OUTの挙動を示す図である。
【0046】
デプレッション型NMOSトランジスタM1は、飽和領域で使用する場合は定電流源として機能するが、非飽和領域で使用する場合、定電流性が崩れ、インピーダンスが変化する。図3に示すように検出対象電圧INが0Vから上昇するにつれて、入力電圧VAが上昇し、出力電圧VBが変化すると、デプレッション型NMOSトランジスタM1のドレイン・ソース間電圧が変化する。これにより、デプレッション型NMOSトランジスタM1が非飽和領域から飽和領域へ切り替わる付近の図3に示す領域A1では、出力電圧VBの波形がなまる。また、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2は飽和領域から非飽和領域へ切り替わる付近の図3に示す領域A2では、出力電圧VBの波形がなまる。
【0047】
これにより、第1インバータINV1の後段に配置される第2インバータINV2の閾値電圧Vth_INV2がばらついたり、温度特性等で変化する場合、出力信号OUTがハイレベルからローレベルへ切り替わる閾値電圧VDET1にばらつきが生じてしまう。例えば、図3では、閾値電圧Vth_INV2のばらつき(または変動)ΔVth_INV2が生じた場合に生じる閾値電圧VDET1のばらつきΔVDET1を示している。すなわち、電圧検出回路10の閾値電圧VDET1にばらつきが生じてしまう。
【0048】
<第2実施形態>
上記課題に鑑み、さらなる改善を図った構成である第2実施形態について述べる。図4は、第2実施形態に係る電圧検出回路20の構成を示す回路図である。
【0049】
図4に示す電圧検出回路20の第1実施形態に係る電圧検出回路10(図1)との相違点は、第2インバータINV2を第1インバータINV1と同じ構成としていることである。具体的には、第2インバータINV2は、デプレッション型NMOSトランジスタM4と、エンハンスメント型NMOSトランジスタM5と、を有している。
【0050】
デプレッション型NMOSトランジスタM4と、エンハンスメント型NMOSトランジスタM5は、電源電圧VDDとグランド電位との間で直列に接続される。具体的には、デプレッション型NMOSトランジスタM4のドレインは、電源電圧VDDの印加端に接続される。デプレッション型NMOSトランジスタM4のソースは、エンハンスメント型NMOSトランジスタM5のドレインとノードNd21にて接続される。エンハンスメント型NMOSトランジスタM5のソースは、グランド電位の印加端に接続される。また、デプレッション型NMOSトランジスタM4のゲートは、デプレッション型NMOSトランジスタM4のソースとノードNd21にて接続される。
【0051】
エンハンスメント型NMOSトランジスタM5のゲートは、ノードNd11に接続される。ノードNd21は、第3インバータINV3の入力端に接続される。
【0052】
このように本実施形態では、第1インバータINV1と第2インバータINV2による2段構成としている。これにより、第1インバータINV1の出力である出力電圧VBと、第2インバータINV2の出力である出力電圧VCは、論理が反転する。しかしながら、第1インバータINV1と第2インバータINV2は同じ構成であるので、それらの閾値電圧は同じとなり、当該閾値電圧は電源電圧VDDに依存せず、温度による変動も抑制される。
【0053】
ここで、図5に、検出対象電圧INに対する出力電圧VA,VB,VCおよび出力信号OUTの挙動を示す。図5に示すように、第1インバータINV1の閾値電圧付近で出力電圧VBの波形は検出対象電圧INの軸に対してほぼ垂直になっているので、出力電圧VCの波形は、上記軸に対してより垂直に近い波形となり、より理想的な波形となる。
【0054】
これにより、第2インバータINV2の後段に配置される第3インバータINV3の閾値電圧Vth_INV3がばらついたり、変動した場合でも、電圧検出回路20の閾値電圧VDET1のばらつきを抑制することができる。例えば、図5では、閾値電圧Vth_INV3のばらつき(または変動)ΔVth_INV3が生じた場合に生じる閾値電圧VDET1のばらつきΔVDET1はほぼ無くなっている。
【0055】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る電圧検出回路30の構成を示す回路図である。本実施形態に係る電圧検出回路30は、第1実施形態に係る電圧検出回路10(図1)において第1インバータINV1に含まれるデプレッション型NMOSトランジスタM1をデプレッション型PMOSトランジスタM6に置き換えた構成となる。
【0056】
より具体的には、デプレッション型PMOSトランジスタM6のソースは、電源電圧VDDの印加端に接続される。デプレッション型PMOSトランジスタM6のドレインは、エンハンスメント型NMOSトランジスタM2のドレインに接続される。デプレッション型PMOSトランジスタM6のゲートは、デプレッション型PMOSトランジスタM6のソースに接続される。
【0057】
このような本実施形態であっても、第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0058】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態に係る電圧検出回路40の構成を示す回路図である。本実施形態に係る電圧検出回路40の第1実施形態に係る電圧検出回路10(図1)との相違点は、第1インバータINV1である。
【0059】
より具体的には、第1インバータINV1は、エンハンスメント型PMOSトラジスタM7と、デプレッション型NMOSトランジスタM8と、を有している。エンハンスメント型PMOSトランジスタM7のソースは、電源電圧VDDの印加端に接続される。エンハンスメント型PMOSトランジスタM7のドレインは、デプレッション型NMOSトランジスタM8のドレインとノードNd41にて接続される。デプレッション型NMOSトランジスタM8のソースは、グランド電位の印加端に接続される。デプレッション型NMOSトランジスタM8のゲートは、デプレッション型NMOSトランジスタM8のソースに接続される。ノードNd41は、第2インバータINV2の入力端に接続される。エンハンスメント型PMOSトランジスタM7のゲートは、抵抗R1,R2間のノードNd12に接続される。
【0060】
このような本実施形態であっても、第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0061】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態に係る電圧検出回路50の構成を示す回路図である。本実施形態に係る電圧検出回路50は、第4実施形態に係る電圧検出回路40(図7)において第1インバータINV1に含まれるデプレッション型NMOSトランジスタM8をデプレッション型PMOSトランジスタM9に置き換えた構成となる。
【0062】
より具体的には、エンハンスメント型PMOSトランジスタM7のドレインは、デプレッション型PMOSトランジスタM9のソースに接続される。デプレッション型PMOSトランジスタM9のドレインは、グランド電位の印加端に接続される。デプレッション型PMOSトランジスタM9のゲートは、デプレッション型PMOSトランジスタM9のソースに接続される。
【0063】
このような本実施形態であっても、第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0064】
<その他>
なお、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0065】
例えば、上記第3~第5実施形態に対して、上記第2実施形態を適用してもよい。すなわち、上記第3~第5実施形態における第2インバータINV2を、第1インバータINV1と同様の構成とし、2段構成としてもよい。
【0066】
また、例えば、第2実施形態等において同じ構成のインバータは2段に限らず、3段以上接続した構成としてもよい。
【0067】
また、例えば、電圧検出回路にヒステリシスを付与することは必須ではない。
【0068】
また、例えば、第1インバータINV1の出力電圧、または同じ構成のインバータによる複数段の構成の出力電圧は、インバータに限らず、MOSトランジスタのゲートに印加させてもよい。
【0069】
また、以上述べた各種実施形態に係る電圧検出回路は、任意の装置に搭載可能である。例えば、自動車等の車両に設置される車載機器や、スマートフォンやタブレット等の携帯情報端末に電圧比較回路を搭載することができる。
【0070】
また、上記各種実施形態に係る電圧検出回路は、半導体集積回路の形態で形成されてもよい。電圧検出回路を含む半導体集積回路をパッケージ化した半導体装置を構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、例えば、各種機器に備えられる電圧検出回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10~50 電圧検出回路
INV1 第1インバータ
INV2 第2インバータ
INV3 第3インバータ
M1 デプレッション型NMOSトランジスタ
M2 エンハンスメント型NMOSトランジスタ
M3 トランジスタ
M4 デプレッション型NMOSトランジスタ
M5 エンハンスメント型NMOSトランジスタ
M6 デプレッション型PMOSトランジスタ
M7 エンハンスメント型PMOSトランジスタ
M8 デプレッション型NMOSトランジスタ
M9 デプレッション型PMOSトランジスタ
R1~R3 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9