(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】異性化フェノール系清浄剤を含有する低粘度エンジンオイル
(51)【国際特許分類】
C10M 159/22 20060101AFI20230912BHJP
C10M 159/20 20060101ALI20230912BHJP
C10M 165/00 20060101ALI20230912BHJP
C10M 163/00 20060101ALI20230912BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20230912BHJP
C10M 145/14 20060101ALN20230912BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20230912BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20230912BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230912BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20230912BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20230912BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20230912BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230912BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
C10M159/22
C10M159/20
C10M165/00
C10M163/00
C10M159/24
C10M145/14
C10M137/10 A
C10N30:04
C10N40:25
C10N20:02
C10N10:04
C10N20:00 Z
C10N30:06
C10N30:08
(21)【出願番号】P 2019570085
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2018054807
(87)【国際公開番号】W WO2019003179
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッファ、アリグザンダー ボウマン
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、ジェイコブ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ブレンダン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】大窪 斎
(72)【発明者】
【氏名】久保 浩一
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ジョン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、カーティス ベイ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0378355(US,A1)
【文献】特開2013-170217(JP,A)
【文献】特表2011-508063(JP,A)
【文献】特表2013-512238(JP,A)
【文献】特表2012-532209(JP,A)
【文献】特開2017-105886(JP,A)
【文献】特開2017-105875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ASTM D445に従って決定された100℃で1.5~6.0mm
2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度の油であって、「主要量」は、組成物の50重量%超過を意味する、前記の潤滑粘度の油;及び
(b)アルキル置換フェノール系清浄剤の過塩基性金属塩:
を含む、ASTM D4683に従って決定された150℃で1.3~2.5cPの範囲のHTHS粘度を有する潤滑油組成物であって、
アルキル基が、0.1~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り10個~40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導され、
オレフィンの異性化レベル(I)は、水素-1(1H)NMRによって決定され、当該NMRは、TopSpin 3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して400MHzでクロロホルム-d1中で、a Bruker Ultrashield Plus 400で得られ、
異性化レベル(I)は、下記であり:
I=m/(m+n)、
上記の式中、mは、0.30±0.03~1.01±0.03ppmの間の化学シフトを持つメチル基のNMR積分であり、
nは、1.01±0.03~1.38±0.10ppmの間の化学シフトを持つメチレン基のNMR積分であり、
前記のアルキル置換フェノール系清浄剤は、Caアルキルヒドロキシベンゾエート化合物であり、
潤滑油組成物は、アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のCa含有量に関して、0.01~2.0wt%を含む、
前記の潤滑油組成物。
【請求項2】
アルキル置換フェノール系清浄剤が、カルボキシレート又はサリチレート清浄剤であり、アルキル基が、0.1~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り10個~40個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項3】
潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、又は0W-16 SAE粘度グレードである、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項4】
潤滑粘度の油が、API II種、III種、IV種、及び、V種の1つ以上から選択される基油である、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項5】
異性化ノルマルアルファオレフィンが、0.12~0.3のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有するか又は、異性化ノルマルアルファオレフィンが、0.16又は0.26のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項6】
ノルマルアルファオレフィン混合物が、分子当り14個~28個の炭素原子を有する、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項7】
ノルマルアルファオレフィン混合物が、分子当り18個~24個の炭素原子を有する、請求項1の
潤滑油組成物。
【請求項8】
ノルマルアルファオレフィン混合物が、分子当り20個~24個の炭素原子を有する、請求項1の
潤滑油組成物。
【請求項9】
ASTM D2896に従って決定された清浄剤のTBNが、オイルフリーベースで、100~600mg KOH/gramである、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項10】
スルホネート、フェネート、及びサリチレートから成る群から選択される追加の清浄剤を更に含む、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項11】
清浄剤が、マグネシウムスルホネートである、請求項10の潤滑油組成物。
【請求項12】
ポリメタクリレート分散剤VIIを更に含む、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項13】
1級又は2級ジチオリン酸亜鉛化合物又はそれらの混合物を更に含む、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項14】
摩擦調整剤を更に含む、請求項1の潤滑油組成物。
【請求項15】
エンジンを、請求項1から14のいずれか1項に記載の潤滑油組成物で潤滑にすることを含む、エンジンを潤滑にする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月30日に提出された米国仮出願第62/527,119の優先権及び利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
エンジンオイルは、様々な要求性能を満たすために、様々な添加剤とブレンドされる。燃料経済を増加させる周知のやり方は、潤滑油の粘度を減少させることである。しかし、このアプローチは、現在の設備能力及び仕様の限界に、現在では到達している。
【0003】
境界摩擦領域は、低粘度エンジンオイルの設計における重要な考慮である。2つの表面を分離する流体境膜が、表面上のアスペリティの高さよりも薄くなる時に、境界摩擦が起る。その結果得られる表面と表面との接触は、エンジン中の望ましくない高い摩擦と貧弱な燃料経済を作る。エンジン中の境界摩擦は、高負荷下、低いエンジン速度及び低い油粘度で起り得る。低粘度エンジンオイルは、エンジンを、オイルのより薄くてより丈夫でない膜に起因する境界摩擦条件中での作動に、より影響を受けやすくする。基油ではなく添加剤は、境界条件下で摩擦係数に影響を与えるので、境界条件下でのより低い摩擦係数を例証する添加剤は、エンジン中の低粘度油の優れた燃料経済を与えるであろう(すなわち、20SAEグレード未満)。第二に、より厳しい低温ポンピング及びクランキング要求を有する0W-XX潤滑油の要求を満たすために優れた低温性能を持つ添加剤を有することも、高い重要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
潤滑油配合技術の進歩にもかかわらず、上記の利益を持つ低粘度エンジンオイル潤滑剤の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の概要
本開示は、一般に、(a)100℃で1.5~6.0mm2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度の油;及び(b)アルキル置換清浄剤の過塩基性金属塩:を含む、150℃で約1.3~約2.5cPの範囲のHTHS粘度を有する潤滑油組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
開示の詳細な記述
ここに開示の主題の理解を促進するために、ここで使用されるようなたくさんの用語、略語又は他の速記が、下記に定義される。定義されていないあらゆる用語、略語又は速記も、本出願の提出時の当業者によって使用される通常の意味を有することが理解される。
【0007】
定義:
本明細書では、使用されるならば及び使用される時、下記の言葉及び表現は、下記で与えられる意味を有する。
【0008】
「主要量」は、組成物の50重量%超過を意味する。
【0009】
「少量」は、添加剤の活性成分として考えて、組成物中に存在する全ての添加剤の総質量に関して及び記載された添加剤に関して表現して、組成物の50重量%未満を意味する。
【0010】
「活性成分」又は「活性」とは、希釈剤でも溶媒でもない添加剤材料のことを言う。
【0011】
報告される全てのパーセンテージは、特に明記しない限り、活性成分ベースでの(すなわち、キャリヤー又は希釈油を無視した)重量%である。
【0012】
用語「フェネート」は、フェノールの塩を意味する。
【0013】
略語“ppm”は、潤滑油組成物の総重量に基づき、重量100万分率を意味する。
【0014】
全塩基価(TBN)は、ASTM D2896に従って決定された。
【0015】
150℃での高温高せん断(HTHS)粘度は、ASTM D4683に従って決定された。
【0016】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って決定された。
【0017】
-35℃でのコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度は、ASTM D5293に従って決定された。
【0018】
Noack揮発度は、ASTM D5800に従って決定された。
【0019】
ホウ素、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、リン、硫黄、及び亜鉛含有量は、ASTM D5185に従って決定された。
【0020】
窒素含有量は、ASTM D4629に従って決定された。
【0021】
金属-用語「金属」とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの混合物のことを言う。
【0022】
オレフィン-用語「オレフィン」とは、たくさんのプロセスによって得られる、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素のクラスのことを言う。1つの二重結合を含有するものは、モノアルケンと呼ばれ、2つの二重結合を持つものは、ジエン、アルキルジエン、又はジオレフィンと呼ばれる。アルファオレフィンは、二重結合が最初の炭素と2番目の炭素との間にあるので、特に反応性である。例は、1-オクテン及び1-オクタデセンであり、それらは、中生分解性界面活性剤の出発点として使用される。線状及び分岐オレフィンも、オレフィンの定義の中に含まれる。
【0023】
ノルマルアルファオレフィン-用語「ノルマルアルファオレフィン」とは、炭化水素鎖のアルファ位又は第1位に存在する炭素-炭素二重結合を持つ直鎖状の非分岐炭化水素であるオレフィンのことを言う。
【0024】
異性化ノルマルアルファオレフィン-ここで使用されるような用語「異性化ノルマルアルファオレフィン」とは、アルキル鎖に沿って分岐の導入及び/又は存在するオレフィン種の分布の変化という結果になる異性化条件に付されたアルファオレフィンのことを言う。異性化オレフィン生成物は、約10個~約40個の炭素原子、好ましくは約20個~約28個の炭素原子、及び好ましくは約20個~約24個の炭素原子を含有する線状アルファオレフィンを異性化することによって得ることができる。
【0025】
C10-40ノルマルアルファオレフィン-この用語は、10未満の炭素数が蒸留又は他の分別法によって除去されたノルマルアルファオレフィンのフラクションを定義する。
【0026】
ここで言及する全てのASTM標準は、本出願の出願日の時点において最新版である。
【0027】
一側面では、提供されるものは、
(a)100℃で1.5~6.0mm2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)アルキル置換フェノール系清浄剤の過塩基性金属塩:
を含む、150℃で約1.3~約2.5cPの範囲のHTHS粘度を有する潤滑油組成物であって、
アルキル基が、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導される、前記の潤滑油組成物である。
【0028】
一形態では、金属塩が、カルシウム、マグネシウム、又は、それらの組合せである。
【0029】
一形態では、提供されるものは、
(a)100℃で1.5~6.0mm2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)アルキル置換フェノール系清浄剤の過塩基性金属塩:
を含む、150℃で約1.3~約2.5cPの範囲のHTHS粘度を有する潤滑油組成物であって、
アルキル基が、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導され、
アルキル置換フェノール系清浄剤が、硫黄を含有しないフェネート、硫黄含有フェネート、ナフテネート、複合清浄剤、サリキサレート、カルボキシレート、サリチレート、サリゲニン、カリックスアレーン、硫黄架橋アルキルフェノール、アルキレン架橋アルキルフェノール、及び、それらの混合物から成る群から選択される、前記の潤滑油組成物である。
【0030】
一形態では、金属塩が、カルシウム、マグネシウム、又は、それらの組合せである。
【0031】
一形態では、提供されるものは、
(a)100℃で1.5~6.0mm2/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)アルキル置換フェノール系清浄剤、
を含む、150℃で約1.3~約2.5cPの範囲のHTHS粘度を有する潤滑油組成物であって、
当該フェノール系清浄剤が、カルボキシレート又はサリチレート清浄剤であり、アルキル基が、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、前記の潤滑油組成物である。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
(a)100℃で1.5~6.0mm
2
/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)アルキル置換フェノール系清浄剤の過塩基性金属塩:
を含む、150℃で約1.3~約2.5cPの範囲のHTHS粘度を有する潤滑油組成物であって、
アルキル基が、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導される、前記の潤滑油組成物。
[2]
アルキル置換フェノール系清浄剤が、硫黄を含有しないフェネート、硫黄含有フェネート、ナフテネート、複合清浄剤、サリキサレート、サリチレート、サリゲニン、カリックスアレーン、硫黄架橋アルキルフェノール、アルキレン架橋アルキルフェノール、及び、それらの混合物から成る群から選択される、[1]の潤滑油組成物。
[3]
アルキル置換フェノール系清浄剤が、カルボキシレート又はサリチレート清浄剤であり、アルキル基が、約0.1~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、[1]の潤滑油組成物。
[4]
アルキル置換フェノール系清浄剤が、異性化オレフィンフェネート清浄剤であり、アルキル基が、約0.1~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、[1]の潤滑油組成物。
[5]
過塩基性金属塩が、カルシウム、マグネシウム、又は、それらの組合せである、[1]の潤滑油組成物。
[6]
潤滑油組成物が、0W-8、0W-12、又は0W-16 SAE粘度グレードである、[1]の潤滑油組成物。
[7]
潤滑粘度の油が、API II種、III種、IV種、及び、V種の1つ以上から選択される基油である、[1]の潤滑油組成物。
[8]
異性化ノルマルアルファオレフィンが、約0.12~約0.3のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、[1]の潤滑油組成物。
[9]
異性化ノルマルアルファオレフィンが、約0.16のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、[1]の潤滑油組成物。
[10]
異性化ノルマルアルファオレフィンが、約0.26のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、[1]の潤滑油組成物。
[11]
ノルマルアルファオレフィン混合物が、分子当り約14個~約28個の炭素原子を有する、[1]の潤滑油組成物。
[12]
ノルマルアルファオレフィン混合物が、分子当り約18個~約24個の炭素原子を有する、[1]の過塩基性フェノール系清浄剤。
[13]
ノルマルアルファオレフィン混合物が、分子当り約20個~約24個の炭素原子を有する、[1]の過塩基性フェノール系清浄剤。
[14]
清浄剤のTBNが、オイルフリーベースで、100~600mg KOH/gramである、[1]の潤滑油組成物。
[15]
スルホネート、フェネート、及びサリチレートから成る群から選択される追加の清浄剤を更に含む、[1]の潤滑油組成物。
[16]
清浄剤が、マグネシウムスルホネートである、[15]の潤滑油組成物。
[17]
ポリメタクリレート分散剤VIIを更に含む、[1]の潤滑油組成物。
[18]
1級又は2級ジチオリン酸亜鉛化合物又はそれらの混合物を更に含む、[1]の潤滑油組成物。
[19]
摩擦調整剤を更に含む、[1]の潤滑油組成物。
[20]
エンジンを、150℃で約1.3~約2.5cPの範囲のHTHS粘度を有する潤滑油組成物で潤滑にすることを含む、エンジンを潤滑にする方法であって、前記潤滑油組成物が:
(a)100℃で1.5~6.0mm
2
/sの範囲の動粘度を有する主要量の潤滑粘度の油;及び
(b)アルキル置換フェノール系清浄剤の過塩基性金属塩、
を含み、
しかも、アルキル基が、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導される、前記の方法。
【0032】
フェノール系アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤
本開示の一側面では、フェノール系アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、異性化オレフィンアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である。
【0033】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤のTBNは、オイルフリーベースで、100-700、100-650、100-600、100-500、100-400、100-300、150-250、175-250、175-225mg KOH/gramである。
【0034】
本開示の一側面では、アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、C10-C40異性化NAOから誘導され、そして、活性ベースで10~300、好ましくは50~300、より好ましくは100~300、さらにより好ましくは150~300、及び最も好ましくは175~250mg KOH/gramのTBNを有する。
【0035】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、Caアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である。
【0036】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、アルキル化ヒドロキシベンゾエート清浄剤であることができる。他の形態では、当該清浄剤は、サリチレート清浄剤であることができる。他の形態では、当該清浄剤は、カルボキシレート清浄剤であることができる。
【0037】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートは、その全体をここに組み込む米国特許第8,993,499に記載されるように、調製できる。
【0038】
本開示の一側面では、アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、分子当り約14個~約28個の炭素原子、好ましくは約20個~約24個の炭素原子、又は好ましくは約14個~約18個の炭素原子、又は好ましくは分子当り約20個~約28個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基を有するアルキルフェノールから製造される。
【0039】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートは、約0.10~約0.40、好ましくは約0.10~約0.35、好ましくは約0.10~約0.30、好ましくは約0.12~約0.30、及びより好ましくは約0.12~約0.20の異性化レベル(I)を有する異性化NAOから誘導されるアルキル基を持つアルキルフェノールから製造される。
【0040】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートは、C10-C40異性化NAOとは異なるアルキル基を持つ1つ以上のアルキルフェノール及びC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキル基を持つ1つ以上のアルキルフェノールから製造される。
【0041】
本開示の一側面では、アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の異性化NAOは、約0.16の異性化レベルを有し、そして、約20個~約24個の炭素原子を有する。
【0042】
本開示の一側面では、アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の異性化NAOは、約0.26の異性化レベルを有し、そして、約20個~約24個の炭素原子を有する。
【0043】
本開示の一側面では、潤滑油組成物は、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートのCa含有量に関して、約0.01~2.0wt%、好ましくは0.1~1.0wt%、より好ましくは0.05~0.5wt%、より好ましくは0.1~0.5wt%を含む。
【0044】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含む潤滑油組成物は、自動車エンジンオイル組成物、ガスエンジンオイル組成物、二元燃料エンジンオイル組成物、車両ガスエンジンオイル組成物、又は機関車エンジンオイル組成物である。
【0045】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含む潤滑油組成物は、トランスミッションオイル、作動油、トラクター液、ギヤオイルなどの、自動車用及び工業用途の機能性流体である。
【0046】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含む潤滑油組成物は、マルチグレードオイル又はモノグレードオイルである。
【0047】
本開示の一側面では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含む潤滑油組成物は、クラッチだけでなく、クランクケース、ギアをも、潤滑にする。
【0048】
フェノール系フェネート清浄剤
本開示の一側面では、フェノール系清浄剤は、異性化オレフィンフェネート清浄剤である。
【0049】
本開示の一側面では、異性化オレフィンフェネート清浄剤は、オイルフリーベースで、100-600、150-500、150-450、200-450、250-450、300-450、300-400、325-425、350-425、350-400mgKOH/gramのTBNを有する。
【0050】
本開示の一側面では、フェノール系清浄剤は、アルキル化フェネート清浄剤であり、そこでは、アルキル基が、分子当り約10個~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導される。
【0051】
本開示の一側面では、フェノール系清浄剤は、約0.10~約0.40の間、好ましくは約0.10~約0.30、好ましくは約0.12~約0.30、及びより好ましくは約0.22~約0.30の、ノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する。
【0052】
本開示の一側面では、フェネート清浄剤は、硫化フェネート清浄剤である。
【0053】
本開示の一側面では、異性化オレフィンフェネート清浄剤は、その全体をここに組み込む米国特許第8,580,717に記載されるように、調製できる。
【0054】
本開示の一側面では、アルキル基は、分子当り約14個~約30個、約16個~約30個、約18個~約30個、約20個~約28個、20個~約24個、又は約18個~約28個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導される。
【0055】
他の形態では、アルファオレフィンの異性化レベルは約0.26であり、約20個~約24個の炭素原子を有する。
【0056】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(ときどき「ベースストック」又は「基油」と言われる)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、その中には、例えば最終の潤滑剤(又は潤滑剤組成物)を製造するために、添加剤及びことによると他の油がブレンドされる。基油は、濃縮物を製造するために有用であるだけでなく、それらから潤滑油組成物を製造するためにも有用であり、そして、天然潤滑油及び合成潤滑油及びそれらの組合せから選択できる。
【0057】
天然油は、パラフィン系、ナフテン系及び混合パラフィン系-ナフテン系タイプの水素化精製された溶媒処理鉱物潤滑油、及び、液体石油、動物油及び植物油を含む。石炭又は頁岩から誘導される潤滑粘度の油も、有用な基油である。
【0058】
合成潤滑油は、下記のものなどの炭化水素油を含む:重合及び共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン;ポリフェノール(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェノール);及びアルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、及びそれらの誘導体、類似物及び同族体。
【0059】
他の適切なクラスの合成潤滑油は、ジカルボン酸(例えば、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。これらのエステルの具体例は、下記のものを含む:アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、及び、1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2-エチルヘキサン酸と反応させることによって形成される複合エステル。
【0060】
合成油として有用なエステルは、C5~C12モノカルボン酸及びポリオール、及びポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールなど、から製造されるものをも含む。
【0061】
基油は、フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素から誘導されることができる。フィッシャー・トロプシュ合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を使用して、H2及びCOを含有する合成ガスから製造される。そのような炭化水素は、基油として有用であるために、更なる加工を典型的に要求する。例えば、炭化水素は、当業者に公知のプロセスを使用して、水素化異性化される;水素化分解されて水素化異性化される;脱ろうされる;又は水素化異性化されて脱ろうされる、ことができる。
【0062】
未精製油、精製油、及び再精製油は、本発明の潤滑油組成物中に使用できる。未精製油は、更なる精製処理なしで天然源又は合成源から直接得られるものである。例えば、乾留操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、又は、エステル化プロセスから直接得られて更なる処理なしで使用されるエステル油が、未精製油であろう。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製工程でそれらが更に処理されたことを除いて、未精製油と同様である。蒸留、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過及び浸透などの多くのそのような精製技術が、当業者に公知である。再精製油は、サービスですでに使用された精製油に適用される精製油を得るために使用されるものと同様のプロセスによって得られる。そのような再精製油は、再生油又は再加工油としても公知であり、そして、しばしば、油分解生成物及び使用済添加剤の認可のための技術によって、更に加工される。
【0063】
それ故に、本発明の潤滑油組成物を製造するために使用できる基油は、the American Petroleum Institute (API) Base Oil Interchangeability Guidelines (API Publication 1509)に特定されるI種~V種のいかなる基油から選択できる。そのような基油の種類(グループ)が、下記の表1に要約される:
【0064】
【0065】
ここで使用するのに適切な基油は、API II種、III種、IV種、及び、V種油及びそれらの組合せに対応するいかなる多種であり、好ましくは、それらの例外的な揮発度、安定性、粘度的及び清浄度特徴に起因してIII種~V種油である。
【0066】
基油は、本発明の潤滑油組成物の主成分を構成し、そして、50~(よりも大きく)99wt.%(例えば、70~95wt.%、又は85~95wt.%)の範囲の量で、存在する。
【0067】
基油は、火花点火式内燃機関用のクランクケース潤滑油として典型的に使用される合成油又は天然油のいかなるものから選択できる。基油は、1.5~6mm2/sの範囲の100℃での動粘度を、典型的に有する。潤滑基油の100℃での動粘度が6mm2/sを超える場合には、低温粘度特性が低減することがあり、そして、十分な燃料効率を得られないことがある。1.5mm2/s以下の動粘度では、潤滑箇所における油膜の形成が不十分であり;この理由で、潤滑が劣り、潤滑油組成物の蒸発損失が増加し得る。
【0068】
好ましくは、基油は、少なくとも90(例えば、少なくとも95、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、又は少なくとも120)の粘度指数を有する。もしも粘度指数が90未満ならば、粘度-温度特性、熱及び酸化安定性、及び揮発防止が低減するだけでなく、摩擦係数が増加する傾向もあり;耐摩耗性が低減する傾向もある。
【0069】
潤滑油組成物
潤滑油組成物は、粘度グレード定義SAE 0W-X(ここで、Xは、8、12、及び16のいずれか1つを表す)によって認識されるマルチグレードオイルであることができる。
【0070】
潤滑油組成物は、150℃で2.3cP以下(例えば、1.0~2.6cP、又は1.3~2.3cP)、例えば2.0cP以下(例えば、1.0~2.0cP、又は1.3~2.3cP)、又は、更に1.7cP以下(例えば、1.0~1.7cP、又は1.3~1.7cP)の高温せん断(HTHS)粘度を有する。
【0071】
潤滑油組成物は、少なくとも135(例えば、135~400、又は135~250)、少なくとも150(例えば、150~400、150~250)、少なくとも165(例えば、165~400、又は165~250)、少なくとも190(例えば、190~400、又は190~250)、又は少なくとも200(例えば、200~400、又は200~250)の粘度指数を有する。もしも潤滑油組成物の粘度指数が135未満ならば、150℃でのHTHS粘度を維持しながら燃料効率を改善することが困難なことがある。もしも潤滑油組成物の粘度指数が400を超えるならば、蒸発特性が低減することがあり、そして、シール材との調和特性及び添加剤の不十分な溶解性に起因する欠損を、引き起こすことがある。
【0072】
潤滑油組成物は、3~12mm2/s(例えば、3~8.2mm2/s、3.5~8.2mm2/s、又は4~8.2mm2/s)の範囲の100℃での動粘度を有する。
【0073】
一般に、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.7wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.70wt.%、0.01~0.6wt.%、0.01~0.5wt.%、0.01~0.4wt.%、0.01~0.3wt.%、0.01~0.2wt.%、0.01wt.%~0.10wt.%.の硫黄のレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.60wt.%以下、約0.50wt.%以下、約0.40wt.%以下、約0.30wt.%以下、約0.20wt.%以下、約0.10wt.%以下である。
【0074】
一形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.12wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.12wt.%のリンのレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.11wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.11wt.%のリンのレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.10wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.10wt.%のリンのレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.09wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.09wt.%のリンのレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.08wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.08wt.%のリンのレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.07wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.07wt.%のリンのレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.05wt.%以下、例えば、約0.01wt.%~約0.05wt.%のリンのレベルである。
【0075】
一形態では、本発明の潤滑油組成物によって製造される硫酸塩灰分のレベルは、ASTM D874によって決定して、約1.60wt.%以下、例えば、ASTM D874によって決定して、約0.10~約1.60wt.%の硫酸塩灰分のレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物によって製造される硫酸塩灰分のレベルは、ASTM D874によって決定して、約1.00wt.%以下、例えば、ASTM D874によって決定して、約0.10~約1.00wt.%の硫酸塩灰分のレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物によって製造される硫酸塩灰分のレベルは、ASTM D874によって決定して、約0.80wt.%以下、例えば、ASTM D874によって決定して、約0.10~約0.80wt.%の硫酸塩灰分のレベルである。一形態では、本発明の潤滑油組成物によって製造される硫酸塩灰分のレベルは、ASTM D874によって決定して、約0.60wt.%以下、例えば、ASTM D874によって決定して、約0.10~約0.60wt.%の硫酸塩灰分のレベルである。
【0076】
適切には、本発明の潤滑油組成物は、4~15mg KOH/g(例えば、5~12mg KOH/g、6~12mg KOH/g、又は8~12mg KOH/g)の全塩基価(TBN)を有することができる。
【0077】
粘度調整剤
潤滑油組成物は、粘度調整剤を含むこともできる。粘度調整剤は、潤滑油に高温及び低温作業性を与えるように機能する。使用される粘度調整剤は、単独の機能を有することもできるし、多機能であることもできる。分散剤としても機能する多機能粘度調整剤も公知である。適切な粘度調整剤は、下記のものを含む:ポリイソブチレン、エチレン及びプロピレン及び高級アルファ-オレフィンの共重合体、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレート共重合体、不飽和ジカルボン酸及びビニル化合物の共重合体、スチレン及びアクリル酸エステルの共重合体、及び、スチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、及びイソプレン/ブタジエンの部分水素化共重合体、並びに、ブタジエン及びイソプレン及びイソプレン/ジビニルベンゼンの部分水素化ホモポリマー。一形態では、粘度調整剤は、ポリアルキルメタクリレートである。粘度調整剤のトポロジーは、線状、分岐、多分岐、星形、又は櫛形トポロジーを含み得るが、それらに限定されない。
【0078】
適切な粘度調整剤は、30以下(例えば、10以下、5以下、又は、更には2以下)の永久せん断安定性指数(PSSI)を有する。PSSIは、添加剤によって寄与されるオイルの粘度における、せん断から生じる不可逆性の減少の尺度である。PSSIは、ASTM D6022に従って決定する。本開示の潤滑油組成物は、ステイ-イン-グレード能力を示す。新鮮な油(精製油)及びそのせん断バーションによる単一のSAE粘度グレード分類の範囲内での100℃での動粘度の保持は、オイルのステイ-イン-グレード能力の証拠である。
【0079】
粘度調整剤は、潤滑油組成物の総重量に基づき、0.5~15.0wt.%(例えば、0.5~10wt.%、0.5~5wt.%、1.0~15wt.%、1.0~10wt.%、又は1.0~5wt.%)の量で、使用できる。一形態では、粘度調整剤は、ここに記載の潤滑油組成物中に存在しない。
【0080】
追加の潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物は、潤滑油組成物のいかなる望ましい特性を改善する又は与えることができる他の従来の添加剤をも含有することができ、その中に、これらの添加剤が分散され又は溶解される。当業者に公知のいかなる添加剤も、ここに開示の潤滑油組成物中で使用できる。いくつかの適切な添加剤が、Mortier et al., “Chemistry and Technology of Lubricants”, 2nd Edition, London, Springer, (1996); and Leslie R. Rudnick, “Lubricant Additives: Chemistry and Applications”, New York, Marcel Dekker (2003)に記載され、それらの両方共に、参照によってここに組み込む。例えば、潤滑油組成物は、下記のものとブレンドできる:酸化防止剤、耐摩耗剤、金属清浄剤などの清浄剤、さび止め剤、曇り除去剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、腐食防止剤、無灰分散剤、多機能剤、染料、極圧添加剤など、及び、それらの混合物。様々な添加剤が公知であり市販されている。これらの添加剤又はそれらの類似の化合物は、通常のブレンド手順によって、開示の潤滑油組成物の調製用に使用できる。
【0081】
潤滑油配合物の調製において、例えば鉱物潤滑油などの炭化水素油中の又は他の適切な溶媒中の10~100wt.%活性成分の濃縮物の形態で、添加剤を導入することが、普通のやり方である。
【0082】
通常、これらの濃縮物は、例えばクランクケースモーター油などの完成した潤滑剤を形成する上で、添加剤パッケージの重量部当り3~100重量部、例えば5~40重量部の潤滑油で、希釈できる。濃縮物の目的は、もちろん、最終のブレンド中の溶解又は分散を促進することと同様に、様々な材料の取扱いを、より困難でなくてより不適当でないようにすることである。
【0083】
前記の添加剤の各々は、使用する時は、潤滑剤に所望の特性を与えるのに機能的に有効な量で、使用される。こうして、例えば、もしも添加剤が摩擦調整剤ならば、この摩擦調整剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦調整特性を与えるのに十分な量であろう。
【0084】
一般に、潤滑油組成物中の添加剤の各々の濃度は、使用される時は、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.001wt.%~約20wt.%、約0.01wt.%~約15wt.%、又は約0.1wt.%~約10wt.%、約0.005wt.%~約5wt.%、又は約0.1wt.%~約2.5wt.%の範囲にあることができる。更に、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に基づき、約0.001wt.%~約20wt.%、約0.01wt.%~約10wt.%、又は約0.1wt.%~約5wt.%の範囲にあることができる。
【0085】
下記の例は、開示の形態を例示するために提示されるが、述べている特定の形態に開示を制限する意図ではない。反対の指示がない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量による。全ての数値はおおよそである。数値範囲が与えられる時、記載された範囲外の形態も、依然として開示の範囲内にあることが、理解されるべきである。各々の例で記載される特定の詳細は、開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。ここに開示の形態に対する様々な修正をすることができることが、理解されるであろう。したがって、上記の記述は、好ましい形態の単なる例示であって、制限されると解釈すべきではない。例えば、本開示を操作するための最良の形態として実施される上記の機能は、例証のみの目的である。他のアレンジ及び方法も、本開示の本質及び範囲から逸脱することなしに、当業者によって実施できる。更に、当業者は、添付の特許請求の範囲の本質及び範囲の範囲内で、他の修正を想定するであろう。
【0086】
例
下記の例は、例証のみの目的を意図しており、本開示の範囲を決して制限しない。
【0087】
異性化レベルは、NMR法によって測定された。
【0088】
異性化レベル(I)及びNMR法
オレフィンの異性化レベル(I)は、水素-1(1H)NMRによって決定された。NMRスペクトルは、TopSpin 3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して400MHzでクロロホルム-d1中で、a Bruker Ultrashield Plus 400で得られた。
【0089】
異性化レベル(I)は、メチレン主鎖基(-CH2-)(化学シフト1.01-1.38ppm)に結合したメチル基(-CH3)(化学シフト0.30-1.01ppm)の相対量を表し、下記に示すような式(1)によって定義される:
I=m/(m+n) 式(1)
上記の式中、mは、0.30±0.03~1.01±0.03ppmの間の化学シフトを持つメチル基のNMR積分であり、nは、1.01±0.03~1.38±0.10ppmの間の化学シフトを持つメチレン基のNMR積分である。
【0090】
例A
アルキル化フェノール及びアルキル化フェネートが、C20-24異性化ノルマルアルファオレフィンを使用する米国特許第8,580,717と実質的に同じやり方で、調製された。アルファオレフィンの異性化レベルは約0.26であった。得られる生成物カルシウム含有量は、9.66%であり;硫黄が3.41%、未反応アルキルフェノールが8.2%であり、319cStの100℃での動粘度を有した。推定TBNは、オイルフリーベースで約400mg KOH/gであった。希釈油は35wt.%であった。
【0091】
比較例A
アルキル化フェノール及びアルキル化フェネートが、Chevron Oroniteから入手できるプロピレン四量体を使用して調製された。得られる生成物カルシウム含有量は、9.66%であり;硫黄が3.41%、未反応アルキルフェノールが8.2%であり、319cStの100℃での動粘度を有した。TBNは、活性ベースで380mg KOH/gであった。希釈油は31.4wt.%であった。
【0092】
ベースライン1
1.4cPの150℃でのHTHS粘度を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油及び下記の添加剤を含有する潤滑油組成物が、調製された:
(1)エチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド;
(2)ホウ酸塩処理ビス-スクシンイミド分散剤;
(3)カルシウム含有量に関して0.10wt.%の過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤;
(4)マグネシウム含有量に関して0.05wt.%の過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量に関して770ppmの1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(6)硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)ホウ酸塩処理有機摩擦調整剤;
(8)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(9)抑泡剤;
(10)2.5wt.%の、1のPSSIを有する非分散性ポリアルキルメタクリレート櫛形粘度調整剤;及び
(11)残り、II種基油(YUBASE(登録商標)2)。
【0093】
例1
配合ベースライン1に、カルシウム含有量に関して0.04wt.%の例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0094】
比較例1
配合ベースライン1に、カルシウム含有量に関して0.04wt.%の比較例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0095】
ベースライン2
SAE 0W-8完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油及び下記の添加剤を含有する潤滑油組成物が、調製された:
(1)エチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド;
(2)ホウ酸塩処理ビス-スクシンイミド分散剤;
(3)カルシウム含有量に関して0.10wt.%の過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤;
(4)マグネシウム含有量に関して0.05wt.%の過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量に関して770ppmの1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(6)硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)ホウ酸塩処理有機摩擦調整剤;
(8)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(9)抑泡剤;
(10)3.0wt.%の、1のPSSIを有する非分散性ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;及び
(11)残り、II種基油(YUBASE(登録商標)3)。
【0096】
例2
配合ベースライン2に、カルシウム含有量に関して0.04wt.%の例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0097】
比較例2
配合ベースライン2に、カルシウム含有量に関して0.04wt.%の比較例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0098】
ベースライン3
SAE 0W-12完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油及び下記の添加剤を含有する潤滑油組成物が、調製された:
(1)エチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド;
(2)ホウ酸塩処理ビス-スクシンイミド分散剤;
(3)カルシウム含有量に関して0.10wt.%の過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤;
(4)マグネシウム含有量に関して0.05wt.%の過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤;
(5)リン含有量に関して770ppmの1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(6)硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)ホウ酸塩処理有機摩擦調整剤;
(8)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(9)抑泡剤;
(10)2.0wt.%の、1のPSSIを有する非分散性ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;及び
(11)残り、III種基油(YUBASE(登録商標)4)。
【0099】
例3
配合ベースライン3に、カルシウム含有量に関して0.04wt.%の例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0100】
比較例3
配合ベースライン3に、カルシウム含有量に関して0.04wt.%の比較例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0101】
ベースライン4
1.4cPの150℃でのHTHS粘度を有する完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油及び下記の添加剤を含有する潤滑油組成物が、調製された:
(1)エチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド;
(2)ホウ酸塩処理ビス-スクシンイミド分散剤;
(3)マグネシウム含有量に関して0.05wt.%の過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤;
(4)リン含有量に関して770ppmの1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(5)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(6)硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)ホウ酸塩処理有機摩擦調整剤;
(8)抑泡剤;
(9)2.5wt.%の、1のPSSIを有する非分散性ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;及び
(10)残り、II種基油(YUBASE(登録商標)2)。
【0102】
例4
配合ベースライン4に、カルシウム含有量に関して0.14wt.%の例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0103】
比較例4
配合ベースライン4に、カルシウム含有量に関して0.14wt.%の比較例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0104】
ベースライン5
SAE 0W-8完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油及び下記の添加剤を含有する潤滑油組成物が、調製された:
(1)エチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド;
(2)ホウ酸塩処理ビス-スクシンイミド分散剤;
(3)マグネシウム含有量に関して0.05wt.%の過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤;
(4)リン含有量に関して770ppmの1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(5)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(6)硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)ホウ酸塩処理有機摩擦調整剤;
(8)抑泡剤;
(9)3.0wt.%の、1のPSSIを有する非分散性ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;及び
(10)残り、II種基油(YUBASE(登録商標)3)。
【0105】
例5
配合ベースライン5に、カルシウム含有量に関して0.14wt.%の例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0106】
比較例5
配合ベースライン5に、カルシウム含有量に関して0.14wt.%の比較例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0107】
ベースライン6
SAE 0W-12完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油及び下記の添加剤を含有する潤滑油組成物が、調製された:
(1)エチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド;
(2)ホウ酸塩処理ビス-スクシンイミド分散剤;
(3)マグネシウム含有量に関して0.05wt.%の過塩基性マグネシウムスルホネート清浄剤;
(4)リン含有量に関して770ppmの1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(5)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(6)硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)ホウ酸塩処理有機摩擦調整剤;
(8)抑泡剤;
(9)2.0wt.%の、1のPSSIを有する非分散性ポリアルキルメタクリレート粘度調整剤;及び
(10)残り、III種基油(YUBASE(登録商標)4)。
【0108】
例6
配合ベースライン6に、カルシウム含有量に関して0.14wt.%の例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0109】
比較例6
配合ベースライン6に、カルシウム含有量に関して0.14wt.%の比較例Aのカルシウムフェネート清浄剤が、添加された。
【0110】
例B
アルキル化フェノール及びアルキルヒドロキシベンゾエートが、C20-24異性化ノルマルアルファオレフィンを使用する米国特許第8,993,499と実質的に同じやり方で、調製された。アルファオレフィンの異性化レベルは約0.16であった。添加剤は、6.4wt.%のCa及び約20wt.%の希釈油を含有し、約180mgKOH/gのTBN及び約2.4の塩基度指数を有した。活性ベースで、この添加剤のTBNは、約225mgKOH/gである。
【0111】
比較例B
アルキルヒドロキシベンゾエートが、14~18の範囲の炭素原子数を有するアルキル基を少なくとも60mol.%含むC14-18ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキル基を持つアルキルフェノールから、調製された。アルキルヒドロキシベンゾエート中のCa wt%は約6.4であり、活性ベースで297mgKOH/gのTBNである。希釈油は41wt%であった。
【0112】
ベースライン7
SAE 0W-8完成油を提供するために、主要量の潤滑粘度の基油及び下記の添加剤を含有する潤滑油組成物が、調製された:
(1)エチレンカーボネート後処理ビス-スクシンイミド;
(2)ホウ酸塩処理ビス-スクシンイミド分散剤;
(4)リン含有量に関して770ppmの1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛及び2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物;
(5)アルキル化ジフェニルアミン;
(6)硫化モリブデンスクシンイミド錯体;
(7)ホウ酸塩処理有機摩擦調整剤;
(8)ケイ素含有量に関して5ppmの抑泡剤;
(9)0wt.% VII及び0.4wt.% PPD;及び
(10)残り、III種基油(YUBASE(登録商標)4)。
【0113】
例7
配合ベースライン7に、カルシウム含有量に関して0.18wt.%の例Bのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤が、添加された。
【0114】
比較例7
配合ベースライン7に、カルシウム含有量に関して0.18wt.%の高過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤が、添加された。
【0115】
比較例8
配合ベースライン7に、カルシウム含有量に関して0.18wt.%の比較例Bのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤が、添加された。
【0116】
ASTM D4684ミニロータリー粘度計試験(MRV)
この試験では、試験油がまず加熱され、その後、ミニロータリー粘度計セル中で、試験温度(この場合、-40℃)に冷却される。各々のセルは、較正ローターステーターセットを含有し、そこでは、ウェイトに取り付けられてローターシャフトのまわりに巻かれたストリングを使って、ローターが回転する。回転が起こって降伏応力を決定するまで、10gウェイトで開始して、一連の増加するウェイトが、ストリングに加えられる。結果は、パスカルでの加えられた力として降伏応力として報告される。その後、150gのウェイトが加えられて、油の見かけ粘度を決定する。見かけ粘度が大きいほど、油は、油ポンプ入口に連続的には及び十分には供給されないであろうと思われる。結果は、センチポイズでの粘度として報告される。各々の潤滑油組成物のMRV試験の結果を、下記の表2に述べる。
【0117】
スキャニングブルックフィールド
スキャニングブルックフィールド粘度:エンジンオイルの低温、低せん断速度、粘度/温度依存性を測定するために、ASTM D5133が使用される。エンジンオイルの低温、低せん断粘度的挙動は、油が、サンプインレットスクリーンに流れるであろうか否か、その後に油ポンプに流れるであろうか否か、その後に、低温開始後に直ちに又は最終的にエンジンダメージを妨げるのに十分な量で潤滑を要求するエンジン中の場所に、流れるであろうか否か、を決定する。ASTM D5133、スキャニングブルックフィールド粘度技術は、サンプルのブルックフィールド粘度を測定する(それは1℃/時間の一定の速度で冷却される)。MRVと同様に、ASTM D5133が、低温でのオイルのポンプ能力に関するように意図される。試験は、サンプルが40,000cPに到達する温度又は-40℃での粘度を報告する。ゲル化指数も報告され、それは、-5℃から最も低い試験温度までの粘度増加の変化の最も大きい速度として、定義される。乗用車エンジンオイル用の現在のAPI SL/ILSAC GF-5仕様は、12の最大ゲル化指数を要求する。結果は、下記の表2に示される。
【0118】
流動点(JIS K2269)
45mlのサンプルが、試験管中で45℃まで温められ、特定の方法によって冷却される。サンプルの温度が2.5℃下がるごとに、冷却浴から試験管が取り出され、サンプルが5秒間十分に動かないままでいる温度を読み取り、そして、この値に2.5℃が追加され、その結果を流動点とみなす。
【0119】
【0120】
【0121】
データによれば、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導された例Aのフェネートを含有する配合は、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されなかったフェネート清浄剤と比べて、1つ以上の測定で、優れた低温特性を示したことが、明らかである。清浄剤の濃度が高いほど、効果が大きい。
【0122】
Plint TE77高周波摩擦機
例及び比較例の境界摩擦係数測定が、(Phoenix Tribologyから市販の)Plint TE-77高周波摩擦機を使用して、得られた。各試験で、試験油の5mLサンプルが、装置に配置された。100℃でTE-77が運転されて、そして、試験片上に56Nの負荷が置かれた。往復速度は、10Hzから1Hzに一掃されて、そして、試験の全体にわたって摩擦係数データが収集された。摩擦係数測定は、表3に示される。
【0123】
【0124】
1~2Hzの往復速度でこれらの油で収集された摩擦係数データは、境界摩擦領域にある。
【0125】
境界摩擦領域は、低粘度エンジンオイルの設計における重要な考慮である。2つの表面を分離する流体境膜が、表面上のアスペリティの高さよりも薄くなる時に、境界摩擦が起る。その結果得られる表面と表面との接触は、エンジン中の望ましくない高い摩擦と貧弱な燃料経済を作る。エンジン中の境界摩擦は、高負荷下、低いエンジン速度及び低い油粘度で起り得る。低粘度エンジンオイルは、エンジンを、オイルのより薄くてより丈夫でない膜に起因する境界摩擦条件中での作動に、より影響を受けやすくする。基油ではなく添加剤は、境界条件下で摩擦係数に影響を与えるので、TE-77での境界条件下でのより低い摩擦係数を例証する添加剤は、エンジン中の低粘度油の優れた燃料経済を与えるであろう。
【0126】
例7からの境界摩擦領域結果に基づき、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含有する配合は、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されないものよりも優れることが、明白である。