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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】清浄剤化合物を含有する潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 159/22 20060101AFI20230912BHJP
   C10M 163/00 20060101ALI20230912BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20230912BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20230912BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
C10M159/22
C10M163/00
C10M129/54
C10M159/24
C10N30:04
C10N40:25
C10N20:00 Z
C10N10:02
C10N10:04
C10N30:06
C10N30:12
C10N30:00 Z
C10N40:04
C10N40:08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019571442
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 IB2018054806
(87)【国際公開番号】W WO2019003178
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】62/527,089
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】501381217
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・テクノロジー・ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッファ、アリグザンダー ボウマン
(72)【発明者】
【氏名】ハルトゲル、バルテル アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ホッセイニ、セイエデー マーブーベー
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、カーティス ベイ
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-508063(JP,A)
【文献】特表2016-535162(JP,A)
【文献】特開2017-105886(JP,A)
【文献】特開2017-105875(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071519(WO,A1)
【文献】特表2012-532209(JP,A)
【文献】特表2016-535163(JP,A)
【文献】特表2015-512455(JP,A)
【文献】特開2017-071769(JP,A)
【文献】特開2013-127066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)潤滑油組成物の50重量%を超える量の潤滑粘度の油、および
(b)約10~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィン(NAO)から誘導される少なくとも1種のCaアルキルヒドロキシベンゾエート化合物を含む1種以上の清浄剤であって、
前記Caアルキルヒドロキシベンゾエート化合物のASTM D2896に従って測定したTBNが、活性成分基準で少なくとも600mgKOH/gmであり、
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する清浄剤、
を含む潤滑油組成物。
【請求項2】
前記Caアルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で600~800mgKOH/gmである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
20~40個の炭素原子を有するアルキル基から誘導され、かつ請求項1に記載の前記Caアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤化合物とは異なる、アルカリまたはアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、またはサリキサレート、サリゲニン、または複合清浄剤、カルボキシレートまたはサリチレートから選択される1種以上の清浄剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記1種以上の清浄剤が、10~700mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属スルホネートである、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記1種以上の清浄剤が、100~600mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属フェネートである、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
1種以上の清浄剤が、20~28個の炭素原子を有するアルキル基から誘導され、かつ10~590mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートである、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記異性化ノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)は、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た、水素-1(1H)NMRにより測定し、
異性化レベル(I)は、
I=m/(m+n)
であり、式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値であ*る、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
追加的な清浄剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記追加的な清浄剤が、アルキルヒドロキシベンゾエート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせである、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記清浄剤がNAO、異性化NAO、またはそれらの組み合わせから誘導される請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記清浄剤が、異性化NAOから誘導されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエートである請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記スルホネートが、カルシウムスルホネートまたはマグネシウムスルホネートである、請求項9に記載の潤滑油。
【請求項13】
エンジンを潤滑する方法であって、前記エンジンを、請求項1から12のいずれか一項に記載の潤滑油組成物で潤滑することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年6月30日に提出された米国仮出願第62/527,089号の利益およびこれに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
過塩基性洗浄剤によって、潤滑特性が得られることは十分に説明されている。多くの場合、そのような清浄剤添加剤は、他の潤滑添加剤と共に配合されて、潤滑油組成物を形成し、特定の所望の潤滑特性を発揮する。金属含有清浄剤は、沈殿物を抑制する清浄剤および酸中和剤または防錆剤の両方として機能し、これにより、摩耗を低減し、腐食を抑制し、そしてエンジン寿命を延ばす。
本開示は、一般的に、摩耗抑制および腐食防止を同時に達成しつつ、さらに燃費の改善も達成する潤滑油組成物に関する。潤滑油組成物は、自動車エンジン、オートバイエンジン、天然ガスエンジン、デュアル燃料エンジン、鉄道機関車エンジン、モバイル天然ガスエンジンに適しており、自動車および産業用途用の機能性流体として適している。
【0003】
他の要因の中でも、本発明は、活性成分基準で600mgKOH/g以上のTBNを有する、より高度に過塩基性の金属ヒドロキシベンゾエート清浄剤を含有する潤滑油組成物が、当技術分野で先に説明されている過塩基性ヒドロキシベンゾエート清浄剤の技術を使用するよりも、費用対効果のより高い配合アプローチを提供することに加えて、改善された潤滑特性、例えば、低温での優れた性能、BN保持性、酸化および熱安定性、耐食性、ならびに酸化および熱安定性を発揮するという驚くべき発見に基づいている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施形態では、以下を含む潤滑油組成物を提供する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)約10~約40個の炭素原子を有する異性化NAOから誘導される少なくとも1 種のアルキルヒドロキシベンゾエート化合物を含む1種以上の清浄剤であって、
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で少なく とも600mgKOH/gmである清浄剤。
【0005】
エンジンを潤滑する方法であって、以下を含む潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑することを含む方法もまた提供する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)約10~40個の炭素原子を有する異性化NAOから誘導される少なくとも1種の アルキルヒドロキシベンゾエート化合物を含む1種以上の清浄剤であって、
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で少なくと も600mgKOH/gmである清浄剤。
【0006】
開示の詳細な説明
本発明は、種々の改変および代替の形態を許容するが、本明細書では、その具体的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、本明細書における具体的な実施形態の記載によって、本発明を開示した特定の形態に限定することを意図するものではなく、それとは反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に入るすべての改変、等価物、および代替物を含むことを意図するものと理解されるべきである。
なお、下記[1]から[24]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)約10~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィン(NAO)から誘導される少なくとも1種のアルキルヒドロキシベンゾエート化合物を含む1種以上の清浄剤であって、
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で少なくとも600mgKOH/gmである清浄剤、
を含む潤滑油組成物。
[2]
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で600~800mgKOH/gmである、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3]
20~40個の炭素原子を有するアルキル基から誘導され、かつ[1]に記載の前記アルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤化合物とは異なる、アルカリまたはアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、またはサリキサレート、サリゲニン、または複合清浄剤、カルボキシレートまたはサリチレートから選択される1種以上の清浄剤をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[4]
前記1種以上の清浄剤が、10~700mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属スルホネートである、[3]に記載の潤滑油組成物。
[5]
前記1種以上の清浄剤が、100~600mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属フェネートである、[3]に記載の潤滑油組成物。
[6]
1種以上の清浄剤が、20~28個の炭素原子を有するアルキル基から誘導され、かつ10~590mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートである、[3]に記載の潤滑油組成物。
[7]
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、[1]に記載の潤滑油組成物。
[8]
追加的な清浄剤をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[9]
前記追加的な清浄剤が、アルキルヒドロキシベンゾエート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせである、[8]に記載の潤滑油組成物。
[10]
前記清浄剤がNAO、異性化NAO、またはそれらの組み合わせから誘導される[9]に記載の潤滑油組成物。
[11]
前記清浄剤が、異性化NAOから誘導されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエートである[10]に記載の潤滑油組成物。
[12]
前記スルホネートが、カルシウムスルホネートまたはマグネシウムスルホネートである、[9]に記載の潤滑油。
[13]
エンジンを潤滑する方法であって、前記エンジンを、以下を含む潤滑油組成物で潤滑することを含む方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油、
(b)約10~40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィン(NAO)から誘導される少なくとも1種のアルキルヒドロキシベンゾエート化合物を含む1種以上の清浄剤であって、
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で少なくとも600mgKOH/gmである清浄剤。
[14]
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で600~800mgKOH/gmである、[13]に記載の方法。
[15]
前記潤滑油組成物が、20~40個の炭素原子を有するアルキル基から誘導され、かつ[1]に記載のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤化合物とは異なる、アルカリまたはアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、またはサリキサレート、サリゲニン、または複合清浄剤、カルボキシレートまたはサリチレートから選択される1種以上の清浄剤をさらに含む、[13]に記載の方法。
[16]
前記1種以上の清浄剤が、10~700mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属スルホネートである、[15]に記載の方法。
[17]
前記1種以上の清浄剤が、100~600mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属フェネートである、[15]に記載の方法。
[18]
前記1種以上の清浄剤が、20~28個の炭素原子を有するアルキル基から誘導され、かつ10~590mgKOH/gmのTBNを有するアルカリまたはアルカリ土類金属アルキルヒドロキシベンゾエートである、[15]に記載の方法。
[19]
前記異性化ノルマルアルファオレフィンが、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する、[13]に記載の方法。
[20]
前記潤滑油組成物が、追加的な清浄剤をさらに含む、[13]に記載の方法。
[21]
前記追加的な清浄剤が、アルキルヒドロキシベンゾエート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせである、[20]に記載の方法。
[22]
前記清浄剤が、NAO、異性化NAO、またはそれらの組み合わせから誘導される、[21]に記載の方法。
[23]
前記清浄剤が、異性化NAOから誘導されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエートである、[22]記載の方法。
[24]
前記スルホネートが、カルシウムスルホネートまたはマグネシウムスルホネートである、[21]に記載の方法。
【0007】
本明細書に開示する主題の理解を容易にするために、本明細書で使用するいくつかの用語、略語または他の略記を以下に定義する。定義されていない用語、略語または略記は、本出願の提出と同時期の当業者によって使用される通常の意味を有するものと理解される。
【0008】
定義
本明細書で使用する場合、以下の用語は、明示の断りがない限り、以下の意味を有する。この明細書では、以下の単語と表現は、使用される場合には、以下に示す意味を有する。
【0009】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0010】
「より少ない量」とは、組成物の50重量%より少ないことを意味し、記載された添加剤に関して、および組成物中に存在するすべての添加剤の全質量に関して表され、1種または複数種の添加剤の活性成分として示される。
【0011】
「活性成分(active ingredients)」もしくは「活性成分(actives)」または「オイルフリー」とは、希釈剤または溶媒ではない添加物質を指す。
【0012】
記載されるすべての百分率は、特に記載しない限り、活性成分基準(すなわち、担体または希釈油なし)での重量%である。
【0013】
略語「ppm」は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、重量による百万分率を意味する。
【0014】
全塩基価(TBN)は、ASTM D2896に従って測定した。
【0015】
金属-「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を指す。
【0016】
150℃での高温高剪断(HTHS)粘度は、ASTM D4863に従って測定した。
【0017】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って測定した。
【0018】
-35℃でのコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度は、ASTM D5293に従って測定した。
【0019】
オレフィン-「オレフィン」という用語は、多くのプロセスによって得られる、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素のクラスを指す。1つの二重結合を含むものはモノアルケンと呼ばれ、2つの二重結合を有するものはジエン、アルキルジエン、またはジオレフィンと呼ばれる。アルファオレフィンは、二重結合が1番目と2番目の炭素の間にあるため、特に反応性が高い。例には、1-オクテンおよび1-オクタデセンがあり、これらは中程度の生分解性界面活性剤の出発点として使用される。線状および分岐状オレフィンもまたオレフィンの定義に含まれる。
【0020】
ノルマルアルファオレフィン-「ノルマルアルファオレフィン」という用語は、鎖の始めや終わりに炭素-炭素二重結合が存在する直鎖非分岐炭化水素であるオレフィンを指す。
【0021】
異性化ノルマルアルファオレフィン。本明細書で使用される「異性化ノルマルアルファオレフィン」という用語は、異性化条件に供されたアルファオレフィンを指し、結果として、存在するオレフィン種の分布の変更および/またはアルキル鎖に沿った分岐の導入をもたらす。異性化オレフィン生成物は、約10~約40個の炭素原子、好ましくは約20~約28個の炭素原子、好ましくは約20~約24個の炭素原子を含む線状アルファオレフィンを異性化することにより得ることができる。
【0022】
本明細書で言及されるすべてのASTM標準は、本出願の出願日現在の最新バージョンである。
【0023】
一態様では、本開示は、以下を含む潤滑油組成物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)約10~40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導される少なくとも1種のアルキルヒドロキシベンゾエート化合物を含む1種以上の清浄剤であって、
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で少なくとも600mgKOH/gmである清浄剤。
【0024】
別の態様では、エンジンを潤滑する方法であって、前記エンジンを、以下を含む潤滑油組成物で潤滑することを含む方法が提供される:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)約10~40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導される少なくとも1種のアルキルヒドロキシベンゾエート化合物を含む1種以上の清浄剤であって、
前記アルキルヒドロキシベンゾエート化合物のTBNが、活性成分基準で少なくとも600mgKOH/gmである清浄剤。
【0025】
C10-C40異性化ノルマルアルファオレフィン(NAO)から誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤化合物
【0026】
本開示の一態様では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤化合物は、活性成分基準で少なくとも600、600以上、600~800、600~750、600~700mgKOH/グラムのTBNを有する。
【0027】
本開示の一態様では、オイルフリー基準で600mgKOH/グラム以上のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、米国特許第8,993,499号に記載されたように調製することができ、その全体を本明細書に援用する。
【0028】
本開示の一態様では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、Caアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である。
【0029】
本開示の一態様では、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、アルキル化ヒドロキシベンゾエート清浄剤であり得る。一実施形態では、清浄剤はサリチレート清浄剤であり得る。別の実施形態では、清浄剤はカルボキシレート清浄剤であり得る。本開示の一態様では、オイルフリー基準で600mgKOH/グラム以上のTBNを有するアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、1分子あたり約14~約28個、約20~約24個の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基を有するアルキルフェノールから作られる。
【0030】
本開示の一態様では、活性成分基準で600mgKOH/グラム以上のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、C10-C40異性化NAOから誘導されるアルキル基を有する1種以上のアルキルフェノールおよびC10-C40異性化NAOとは異なるアルキル基を有する1種以上のアルキルフェノールから作られる。好ましくは、C10-C40異性化NAOとは異なるアルキル基を有する1種以上のアルキルフェノールは、少なくとも9個の炭素原子、9~24個、および10~15個の炭素原子を有する高度に分岐したアルキル基を有する。本開示の一態様では、潤滑油組成物は、活性成分基準で600mgKOH/グラム以上のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をCa含量換算で約0.01~2重量%、好ましくは0.1~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%含む。本開示の一態様では、潤滑油組成物は、自動車エンジン油、ガスエンジン油、オートバイ油、デュアル燃料エンジン油、モバイルガスエンジン油、または機関車エンジン油中に(is)、活性成分基準で600以上のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含む。
【0031】
本開示の一態様では、潤滑油組成物は、自動車および産業用途の機能性流体、例えばトランスミッション油、油圧油、トラクター流体、ギア油など(et.)の中に(is)、オイルフリー基準で600mgKOH/グラム以上のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含む。本開示の一態様では、潤滑油組成物は、マルチグレードオイル中、活性成分基準で600mgKOH/グラム以上のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含む。
【0032】
本開示の一態様では、潤滑油組成物は、活性成分基準で600mgKOH/グラム以上のTBNを有するC10-C40異性化NAOから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含み、クランクケース、ギアおよびクラッチを潤滑する。
【0033】
追加の清浄剤
本発明の潤滑油組成物は、活性成分基準で10~800、10~700、30~690、100~600、150~600、150~500、200~450mgKOH/gのTBNを有する1種以上の過塩基性清浄剤をさらに含むことができる。
【0034】
使用することができる清浄剤には、油溶性過塩基性スルホネート、硫黄を含まないフェネート、硫化フェネート、サリキサレート、サリチレート、サリゲニン、複合清浄剤およびナフテネート清浄剤、ならびに金属、特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムの他の油溶性アルキルヒドロキシベンゾエートが含まれる。最も一般的に使用される金属は、カルシウムおよびマグネシウム(これらは両方とも潤滑剤に使用される清浄剤に存在する)、ならびに、ナトリウムと共にカルシウムおよび/またはマグネシウムの混合物である。
【0035】
過塩基性金属清浄剤は、一般的に、炭化水素、清浄剤酸、例えば、スルホン酸、アルキルヒドロキシベンゾエートなど、金属の酸化物または水酸化物(例えば、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)および促進剤、例えばキシレン、メタノールおよび水の混合物を炭酸化することによって製造される。例えば、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製するために、炭酸化において、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムは気体二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸は、過剰のCaOまたはCa(OH)で中和され、スルホネートを形成する。
【0036】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば、活性成分基準で100未満のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、低過塩基性塩のTBNは約30~約100であり得る。別の実施形態では、低過塩基性塩のTBNは約30~約80であり得る。過塩基性清浄剤は中過塩基性、例えば、約100~約250のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、中過塩基性塩のTBNは約100~約200であり得る。別の実施形態では、中過塩基性塩のTBNは約125~約175であり得る。過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば250を超えるTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、高過塩基性塩のTBNは、活性成分基準で約250~約800であり得る。
【0037】
一実施形態では、清浄剤は、1種以上のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩であり得る。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、1~4個、好ましくは1~3個のヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシおよびポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾールなどが含まれる。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0038】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、約10~約80個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導される。使用されるオレフィンは、線状、異性化線状、分岐状または部分的に分岐状の線状であり得る。オレフィンは、線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分岐オレフィンの混合物、部分的に分岐状の線状オレフィンの混合物、または前述のいずれかの混合物であり得る。
【0039】
一実施形態では、使用され得る線状オレフィンの混合物は、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。一実施形態では、ノルマルアルファオレフィンは、固体または液体触媒の少なくとも1種を使用して異性化される。
【0040】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸洗浄剤のアルカリ土類金属塩のアルキル基などのアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩内に含まれるアルキル基の少なくとも約50モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%は、C20以上である。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、アルキル基がC20~約C28ノルマルアルファオレフィンであるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸から誘導されるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩である。別の実施形態では、アルキル基は少なくとも2種のアルキル化フェノールから誘導される。少なくとも2種のアルキルフェノールのうちの少なくとも1種にあるアルキル基は、異性化アルファオレフィンから誘導される。別のアルキルフェノールにあるアルキル基は、分岐状または部分的に分岐状のオレフィン、高度に異性化されたオレフィンまたはそれらの混合物から誘導され得る。
【0041】
別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、20~40個の炭素原子、好ましくは20~28個の炭素原子、より好ましくは20~24個の炭素原子を有する異性化NAO(isomerized 20-24 NAO)を有するアルキル基から誘導されるサリチレートである。
【0042】
スルホネートは、典型的には、アルキル置換芳香族炭化水素、例えば、石油の留分から又は芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるもののスルホン化によって得られるスルホン酸から調製することができる。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものが含まれる。アルキル化は、触媒の存在下で、約3~70個を超える炭素原子を有するアルキル化剤を用いて行うことができる。アルカリールスルホネートには、通常、アルキル置換芳香族部分1つ当たり約9~約80個以上の炭素原子、好ましくは約16~約60個の炭素原子、好ましくは約16~30個の炭素原子、およびより好ましくは20~24個の炭素原子が含まれる。
【0043】
硫化フェネート清浄剤であるフェノールおよび硫化フェノールの金属塩は、酸化物または水酸化物などの適切な金属化合物との反応によって調製され、中性または過塩基性生成物は、当技術分野で周知の方法によって得ることができる。硫化フェノールは、フェノールを硫黄または硫化水素、一ハロゲン化硫黄または二ハロゲン化硫黄などの硫黄含有化合物と反応させることにより調製することができ、一般に2つ以上のフェノールが硫黄含有ブリッジで架橋された化合物の混合物である生成物が形成される。
【0044】
硫化フェネートの一般的な調製に関する追加的な詳細は、例えば、米国特許第2,680,096号;第3,178,368号、第3,801,507号、および第8,580,717号に見出すことができ、これらの内容を参照により本明細書に援用する。
【0045】
ここで、本プロセスで使用される反応物および試薬を詳細に検討すると、先ず硫黄のすべての同素体形態を使用することができる。硫黄は、溶融硫黄として、または固体(例えば、粉末または微粒子)として、または適合性のある炭化水素液体中の固体懸濁液として使用することができる。
【0046】
例えば、酸化カルシウムと比べて取り扱いが便利であり、さらに優れた結果が得られるため、カルシウム塩基として水酸化カルシウムを使用することが望ましい。他のカルシウム塩基、例えばカルシウムアルコキシドもまた使用することができる。
【0047】
使用できる適切なアルキルフェノールは、アルキル置換基が、得られる過塩基性硫化カルシウムアルキルフェネート組成物を油溶性にするのに十分な数の炭素原子を含むものである。油溶性は、単一の長鎖アルキル置換基(substitute)またはアルキル置換基の組み合わせによって得ることができる。典型的には、使用されるアルキルフェノールは、種々のアルキルフェノール、例えば、C20~C24アルキルフェノールの混合物である。
【0048】
一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、約0.1~約0.4のアルファオレフィンの異性化レベル(l)を有する異性化アルファオレフィンアルキル基から誘導される。一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、約9~約80個の炭素原子を有する分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物であるアルキル基から誘導される。一実施形態では、分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約40個の炭素原子を有する。一実施形態では、分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約18個の炭素原子を有する。一実施形態では、分岐オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約12個の炭素原子を有する。
【0049】
一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、蒸留カシューナッツ殻液(CNSL)または水素化蒸留カシューナッツ殻液を含む。蒸留CNSLは、生分解性のメタヒドロカルビル置換フェノールの混合物であり、ヒドロカルビル基は、カルダノールを含む線状かつ不飽和である。蒸留CNSLの接触水素化により、3-ペンタデシルフェノールが主に豊富なメタヒドロカルビル置換フェノールの混合物が生成される。
【0050】
アルキルフェノールは、パラアルキルフェノール、メタアルキルフェノールまたはオルトアルキルフェノールであり得る。p-アルキルフェノールは高度に過塩基性のカルシウム硫化アルキルフェネートの調製を促進すると考えられているため、過塩基性生成物を望む場合、アルキルフェノールは、好ましくは主にパラアルキルフェノールであり、オルトアルキルフェノールはアルキルフェノールの約45モルパーセント以下であり、より好ましくは、オルトアルキルフェノールはアルキルフェノールの約35モルパーセント以下である。アルキルヒドロキシトルエンまたはキシレン、および少なくとも1つの長鎖アルキル置換基に加えて1つ以上のアルキル置換基を有する他のアルキルフェノールもまた使用できる。蒸留カシューナッツ殻液の場合、蒸留CNSLの接触水素化により、メタヒドロカルビル置換フェノールの混合物が生成される。
【0051】
一実施形態では、1種以上の過塩基性洗浄剤は、上記の少なくとも2種の界面活性剤から誘導される界面活性剤系を含む当技術分野で知られている複合またはハイブリッド清浄剤であり得る。
【0052】
一実施形態では、1種以上の過塩基性清浄剤は、20~28個の炭素原子、より好ましくは20~24個の炭素原子を有するアルキル基を有するサリチレートであり得る。別の実施形態では、1種以上の過塩基性洗浄剤は、C14-18NAOから誘導されるアルキル基を有するサリチレートであり得、潤滑油に対してCa含量換算で0.05重量%未満、好ましくは0.025重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満で提供され得る。
【0053】
一般的に、清浄剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%~約50重量%、または約0.05重量%~約25重量%、または約0.1重量%~約20重量%、または約0.01~15重量%であり得る。
【0054】
耐摩耗剤
本明細書に開示した潤滑油組成物は、1種以上の耐摩耗剤を含むことができる。耐摩耗剤は、金属部品の摩耗を低減する。適切な耐摩耗剤には、式(式1)のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩が含まれる:
Zn[S-P(=S)(OR)(OR)] 式1
式中、RおよびRは、1~18個(例えば、2~12個)の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式ラジカルなどのラジカルを含むヒドロカルビルラジカルであり、同じか(of)異なってもよい。RおよびR基として特に好ましいのは、2~8個の炭素原子を有するアルキル基である(例えば、アルキル基は、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであり得る)。油溶性を得るために、炭素原子の全数(すなわち、R+R)は少なくとも5である。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第1級、第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせである。ZDDPは、潤滑油組成物中に3重量%以下(例えば、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)で存在してもよい。一実施形態では、本明細書に記載のマグネシウムサリチレート清浄剤を含有する潤滑油組成物は、酸化防止剤化合物をさらに含む。一実施形態では、酸化防止剤はジフェニルアミン酸化防止剤である。別の実施形態では、酸化防止剤はヒンダードフェノール酸化防止剤である。さらに別の実施形態では、酸化防止剤は、ジフェニルアミン酸化防止剤とヒンダードフェノール酸化防止剤との組み合わせである。
【0055】
酸化防止剤
本明細書に開示した潤滑油組成物は、1種以上の酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、使用中に鉱油が劣化する傾向を低減する。酸化劣化は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニス状の堆積物、および粘度の増加によって証拠付けられ得る。適切な酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、硫化アルキルフェノール、およびそれらのアルカリおよびアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0056】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、多くの場合、立体障害基としてセカンダリブチルおよび/またはターシャリブチル基を含む。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には線状または分岐状アルキル)および/または別の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;および4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが含まれる。他の有用なヒンダードフェノール酸化防止剤には、CibaからのIRGANOX(登録商標)L-135などの2,6-ジアルキルフェノールプロピオン酸エステル誘導体、および4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)および4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)などのビスフェノール酸化防止剤が含まれる。典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、1つのアミン窒素に直接結合した少なくとも2つの芳香族基を有する。典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。本明細書で有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例には、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-(4-tert-オクチル(octy)フェニル)-1-ナフチルアミン、およびN-(4-オクチルフェニル)-1-ナフチルアミンが含まれる。酸化防止剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%(例えば、0.1~2重量%)で存在し得る。
【0057】
分散剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、1種以上の分散剤を含むことができる。分散剤は、エンジン操作中の酸化によって生じる油に不溶性の物質を懸濁液中に維持し、これにより、スラッジの凝集および沈殿または金属部品上への堆積を防止する。本明細書で有用な分散剤には、ガソリンおよびディーゼルエンジンで使用する際の堆積物の形成を低減するのに有効であることが知られている窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤が含まれる。
【0058】
適切な分散剤には、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換コハク酸のヒドロキシエステル、ならびにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒドおよびポリアミンのマンニッヒ縮合生成物が含まれる。ポリアミンとヒドロカルビル置換フェニル酸の縮合生成物も適している。これらの分散剤の混合物も使用することがでる。基本的な窒素含有無灰分散剤は周知の潤滑油添加剤であり、その調製方法は特許文献に多く記載されている。好ましい分散剤は、アルケニル置換基が好ましくは40個を超える炭素原子の長鎖である、アルケニルスクシンイミドおよびスクシンアミドである。これらの物質は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸物質をアミン官能基含有分子と反応させることにより容易に生成される。適切なアミンの例は、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミンおよびポリオキシアルキレンポリアミンなどのポリアミンである。
【0059】
特に好ましい無灰分散剤は、ポリイソブテニル無水コハク酸およびポリアルキレンポリアミン、例えば式2のポリエチレンポリアミンから形成されるポリイソブテニルスクシンイミドである:
NH(CHCHNH)H 式2
式中、zは1~11である。ポリイソブテニル基はポリイソブテンから誘導され、好ましくは700~3000ダルトン(例えば、900~2500ダルトン)の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。例えば、ポリイソブテニルスクシンイミドは、900から2500ダルトンのMnを有するポリイソブテニル基から誘導されたビススクシンイミドであってもよい。当該技術分野で知られているように、分散剤は(例えば、ホウ素化剤または環状カルボネート、エチレンカルボネートなどで)後処理されてもよい。
【0060】
窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤は塩基性であり、追加的な硫酸化灰を導入することなく、それらが添加される潤滑油組成物のTBNに寄与する。分散剤は、潤滑油組成物の0.1~10重量%(例えば、2~5重量%)で存在し得る。
【0061】
消泡剤
本明細書に開示される潤滑油組成物は、油中の泡を破壊することができる1種以上の消泡剤を含むことができる。適切な発泡防止剤(foam inhibitor)または抗発泡防止剤(anti-foam inhibitor)の非限定的な例には、シリコーン油又はポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、アルコキシル化脂肪族酸、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、分岐ポリビニルエーテル、アルキルアクリレートポリマー、アルキルメタクリレートポリマー、ポリアルコキシアミン、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0062】
追加的な共添加剤
本開示の潤滑油組成物は、潤滑油組成物のいずれかの所望の特性を付与または改善することができる他の従来の添加剤もまた含有することができ、これらの添加剤は、分散または溶解されている。本明細書に開示する潤滑油組成物には、当業者に知られている任意の添加剤を使用することができる。いくつかの適切な添加剤は、Mortierらの「潤滑剤の化学及び技術(Chemistry and Technology of Lubricats)」第2版、ロンドン、Springer、(1996年);及びLeslie R.Rudnickの「潤滑剤添加剤(Lubricat Additives):化学及び応用(Chemistry and Applications)」ニューヨーク、Marcel Dekker、(2003年)に記載されており、これらの両方を参照により本明細書に援用する。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、摩耗防止剤、金属清浄剤等の清浄剤、防錆剤、抗曇り剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、腐食防止剤、無灰分散剤、多機能剤、染料、極圧剤など、およびそれらの混合物をブレンドすることができる。種々の添加剤が知られており、そして市販されている。これらの添加剤又はこれらの類似化合物は、通常のブレンド手順により、本開示の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0063】
潤滑油配合物の調製では、炭化水素油、例えば、鉱物潤滑油、または他の適切な溶媒中で、添加剤を10~100重量%の有効成分濃縮物の形態で導入することが一般的な慣行である。
【0064】
通常、これらの濃縮物は、最終的な潤滑剤、例えば、クランクケースモーターオイルを形成する際、添加剤パッケージの1重量部あたり3~100、例えば5~40重量部の潤滑油で希釈することができる。濃縮物の目的は、もちろん、種々の物質の取り扱いの困難さおよび煩わしさを少なくすること、さらに、最終的なブレンドでの溶解または分散を促進することである。
【0065】
前述の添加剤のそれぞれは、使用の際、潤滑剤に所望の特性を付与するのに機能的に有効な量で使用される。したがって、例えば、添加剤が摩擦調整剤である場合、この摩擦調整剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦調整特性を付与するのに十分な量となる。
【0066】
一般に、潤滑油組成物中の各添加剤の濃度は、使用の際、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%から約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であり得、さらに、潤滑油組成物中の添加剤の全量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であり得る。
【0067】
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、例えば最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を製造するために、添加剤および可能な他の油がこれにブレンドされる。基油は、濃縮物を製造するのに、ならびにそれから潤滑油組成物を製造するのに有用であり、天然および合成の潤滑油およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0068】
天然油には、動物性および植物性油、液体石油、ならびにパラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン-ナフテン系の水素化精製された溶媒処理された鉱物潤滑油が含まれる。石炭またはシェールに由来する潤滑粘度の油も有用な基油である。
【0069】
合成潤滑油には、重合および共重合(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン;ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);およびアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および同族体などの炭化水素油が含まれる。
【0070】
別の適切なクラスの合成潤滑油には、ジカルボン酸(例えば、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体的な例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、およびセバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2-エチルヘキサン酸2モルとを反応させることにより形成される複合エステルが含まれる。
【0071】
合成油として有用なエステルには、C~C12モノカルボン酸とポリオール、およびポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールとから作られるものも含まれる。
【0072】
基油は、Fischer-Tropsch法により合成された炭化水素から誘導することができる。Fischer-Tropsch法で合成された炭化水素は、Fischer-Tropsch触媒を使用して、HとCOを含む合成ガスから作られる。そのような炭化水素は、典型的には、基油として有用であるためにはさらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、当業者に知られているプロセスを使用して、水素異性化;水素化分解および水素異性化;脱ろう;または水素異性化および脱ろうをされ得る。
【0073】
本発明の潤滑油組成物には、未精製油、精製油および再精製油を使用することができる。未精製油は、更なる精製処理をすることなく天然又は合成供給源から直接得られるものである。たとえば、レトルト処理操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらに処理せずに使用されるエステル油が未精製油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油に似ている。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、ろ過および浸透などの多くのそのような精製技術は、当業者に知られている。
【0074】
再精製油は、既に使用されている精製油に適用され、精製油を得るために使用されるプロセスと類似のプロセスによって得られる。そのような再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、多くの場合、使用済み添加剤および油分解生成物を除去(approval)するための技術によってさらに処理される。
【0075】
したがって、本潤滑油組成物を製造するのに使用できる基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(API出版物1509)で指定されているグループI-Vの基油のいずれかから選択できる。このような基油グループを、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0076】
本明細書での使用に適した基油は、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVの油およびそれらの組み合わせに対応する任意の種類、好ましくは、並外れた揮発性、安定性、ビスコメトリック性および清浄性の特性のためにグループIIIからグループVの油である。
【0077】
基油とも呼ばれる本開示の潤滑油組成物で使用するための潤滑粘度の油は、典型的には、主要量、例えば、該組成物の全重量に基づいて、50重量%を超える量、好ましくは約70重量%、より好ましくは約80~約99.5重量%、最も好ましくは約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用される「基油」という表現は、単一の製造者により同じ仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様に適合し、且つ独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味するように理解されるものとする。本明細書で使用するための基油は、例えば、エンジン油、船舶用シリンダー油、機能性流体、例えば、油圧油、ギア油、トランスミッション流体などの任意のそして全てのこのような用途に対する潤滑油組成物を配合する際に使用される潤滑粘度の任意の現在知られている又は後に発見される油であり得る。加えて、本明細書で使用するための基油は、任意選択的に、粘度指数向上剤、例えば、ポリマー性アルキルメタクリレート;オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー又はスチレン-ブタジエンコポリマーなど;およびそれらの混合物を含有し得る。
【0078】
当業者には容易に分かるだろうが、基油の粘度は、その用途に依存する。従って、本明細書で使用するための基油の粘度は、通常は、摂氏100度(100℃)で約2~約2000センチストークス(cSt)の範囲である。一般的に、エンジン油として個々に使用される基油は、100℃で約2cSt~約30cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、そして最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有し、所望の使用目的及び最終的な油中の添加剤に応じて選択され又はブレンドされて、所望のグレードのエンジン油、例えば、0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、又は15W-40、30、40などのSAE粘度グレードを有する潤滑油組成物が得られる。
【0079】
潤滑油組成物
一般に、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.7重量%以下であり、例えば硫黄のレベルは、約0.01重量%~約0.70重量%、0.01~0.6重量%、0.01~0.5重量%、0.01~0.4重量%、0.01~0.3重量%、0.01~0.2重量%、0.01重量%~0.10重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中の硫黄のレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.60重量%以下、約0.50重量%以下、約0.40重量%以下、約0.30重量%以下、約0.20重量%以下、約0.10重量%以下である。
【0080】
一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.12重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.12重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.11重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.11重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.10重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.10重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.09重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.09重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.08重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.08重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.07重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.07重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物中のリンのレベルは、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.05重量%以下であり、例えば、リンのレベルは約0.01重量%~約0.05重量%である。
【0081】
一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約1.60重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10~約1.60重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約1.00重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10~約1.00重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.80重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10~約0.80重量%である。一実施形態では、本発明の潤滑油組成物によって生成される硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.60重量%以下であり、例えば、硫酸灰分のレベルは、ASTM D874によって測定する場合、約0.10から約0.60重量%である。
【0082】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提示されているが、記載された具体的な実施形態に本発明を限定する意図はない。断りがない限り、すべての部および百分率は重量による。すべての数値は概算である。数値範囲が与えられる場合、記載した範囲外の実施形態は依然として本発明の範囲内に含まれ得ることが理解されるべきである。各例で説明されている具体的な細目は、本発明の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【実施例
【0083】
以下の実施例は、単に例示を目的とする意図であり、本開示の範囲を決して限定しない。
異性化レベル(I)およびNMR法
オレフィンの異性化レベル(I)は、水素-1(1H)NMRにより測定した。NMRスペクトルは、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た。
【0084】
異性化レベル(I)は、メチレン骨格基(-CH2-)(化学シフト1.01~1.38ppm)に結合したメチル基(-CH3)(化学シフト0.3~1.01ppm)の相対的な量を表し、以下に示す式(1)により定義される、
I=m/(m+n) 式(I)
式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である。
【0085】
アルファオレフィンの異性化レベル(I)は、約0.1~約0.4、好ましくは約0.1~約0.3、より好ましくは約0.12~約0.3である。
【0086】
一実施形態では、NAOの異性化レベルは、約0.16であり、約20~約24個の炭素原子を有する。
【0087】
別の実施形態では、NAOの異性化レベルは、約0.26であり、約20~約24個の炭素原子を有する。
【0088】
ベースライン配合物1
主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含有する5W-40潤滑油組成物を調製した:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド;
(2)ジアルキルジチオリン酸亜鉛;
(3)酸化防止剤の混合物;
(4)消泡剤。
【0089】
実施例A
アルキル化フェノールおよびCaアルキルヒドロキシベンゾエートを、C20-24異性化ノルマルアルファオレフィンを使用して、米国特許第8,993,499号と実質的に同じ方法で調製した。アルファオレフィンの異性化レベルは約0.16である。得られたアルキルヒドロキシベンゾエート組成物は、オイルフリー基準で約630のTBNおよび約22.4重量%のCa含量を有する。
【0090】
実施例B
アルキル化フェノールおよびCaアルキルヒドロキシベンゾエートを、C20-24異性化ノルマルアルファオレフィンを使用して、米国特許第8,993,499号と実質的に同じ方法で調製した。アルファオレフィンの異性化レベルは約0.16である。得られたアルキルヒドロキシベンゾエート組成物は、オイルフリー基準で約225のTBNおよび約8重量%のCa含量を有する。
【0091】
比較例A
アルキルヒドロキシベンゾエートを、C14-18NAOから誘導されるアルキル基を有するアルキルフェノールから調製した。オイルフリー基準で約300のTBNおよび約10.6重量%のCa含量を有する。
【0092】
比較例B
アルキル化フェノールおよびアルキルヒドロキシベンゾエートを、CP Chemから入手可能なC20-28NAOを使用して、米国特許第8,030,258号と実質的に同じ方法で調製した。得られたアルキルヒドロキシベンゾエート組成物は、オイルフリー基準で約520のTBNおよび約18.7重量%のCa含量を有する。
【0093】
実施例1
ベースライン配合物1に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエート洗浄剤をCa含量換算で0.13重量%および実施例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエート洗浄剤をCa含量換算で0.05重量%添加した。
【0094】
実施例2
ベースライン配合物1に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をCa含量換算で0.13重量%および硫化過塩基性Caフェネート清浄剤をCa含量換算で0.02重量%添加した。
【0095】
実施例3
ベースライン配合物1に、実施例AのCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の(石鹸を9.83ミリモル)添加した。
【0096】
比較例1
ベースライン配合物1に、比較例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をCa含量換算で0.13重量%および硫化過塩基性Caフェネート清浄剤をCa含量換算で0.02重量%添加した。
【0097】
比較例2
ベースライン配合物1に、比較例BのCaアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の(石鹸を9.83ミリモル)添加した。
【0098】
HTCBT試験
ASTM D6594 HTCBT試験を使用して、ディーゼルエンジン潤滑剤を試験し、種々の金属、特にカムフォロアおよびベアリングで一般的に使用される鉛と銅の合金を腐食する傾向を判定する。銅、鉛、スズおよびリン青銅の4つの金属試験片を、測定量のエンジン油に浸す。上昇した温度(170℃)の油に、一定時間(168時間)、空気(5リットル/時)を吹き込む。試験が完了すると、銅試験片とストレスを受けた油を検査して、腐食と腐食生成物をそれぞれ検出する。新しい油およびストレスを受けた油中の銅、鉛、およびスズの濃度と、金属濃度のそれぞれの変化を記載する。合格するためには、鉛の濃度は120ppmを超えてはならず、銅は20ppmである必要がある。
【表2】

【表3】
【0099】
ベースライン配合物2
主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含有する重荷重自動車の潤滑油組成物を調製して、SAE15W-40の最終的な油を得た:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド分散剤;
(2)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物をリン含量換算で990ppm;
(3)50ppmのモリブデンを提供するモリブデンスクシンイミド錯体
(4)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(5)消泡剤をケイ素含量で5ppm;
(6)非分散剤OCPのVII(添加剤)を9.5重量%およびPPDを0.3重量%;ならびに
(7)残部、グループII基油(Chevron220R)。
【0100】
実施例4
配合物ベースライン2に、実施例Aのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をカルシウム含量換算で0.2290重量%および0.16の異性化レベルを有する異性化NAOから作られたC20-C24マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含量換算で0.078重量%添加した。特性:TBN(mgKOH/g)=35重量%の希釈油中199
【0101】
比較例3
配合物ベースライン2に、実施例Aのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をカルシウム含量換算で0.2290重量%およびアルファオレフィンから作られたC14-C18マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含量換算で0.075重量%添加した。特性:TBN(mgKOH/g)=236;Mg(重量%)=5.34。
【0102】
酸化剤Bx試験
25gの試料を特別なガラス酸化剤セルに秤量した。触媒を加えた後、ガラススターラーを挿入した。次に、セルを密閉し、340°Fに維持し、酸素供給源に接続した油浴に入れた。スターラーで油試料を攪拌しながら、1リットルの酸素を該セルに供給した。1リットルの酸素が試料によって消費されるまで試験を実行し、試験(sample)実行の合計時間(時間単位)を記載した。1リットルまでの時間が長いほど、良好な酸化性能を示す。結果を以下の表4に示す。
【表4】
【0103】
実施例C
アルキル化フェノールおよびCaアルキルヒドロキシベンゾエートを、C20-24異性化ノルマルアルファオレフィンを使用して、米国特許第8,993,499号と実質的に同じ方法で調製した。アルファオレフィンの異性化レベルは約0.16である。得られたアルキルヒドロキシベンゾエート組成物は、オイルフリー基準で約120のTBNおよび約4.2重量%のCa含量を有する。
【0104】
ベースライン配合物3
主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含有する乗用自動車の自動車用潤滑油組成物を調製して、SAE5W-30の最終的な油を得た:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド分散剤およびホウ素化分散剤;
(2)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛および第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物をリン含量換算で770ppm;
(3)180ppmのモリブデンを提供するモリブデンスクシンイミド錯体
(4)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(5)ホウ素化摩擦調整剤;
(5)消泡剤をケイ素含量換算で5ppm;
(6)非分散剤OCPのVII(添加剤)を9.5重量%およびPPDを0.3重量%;ならびに
(7)残部、グループIII基油。
【0105】
実施例5
配合物ベースライン3に、実施例Aのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート(32.3ミリモル)および実施例C(23.3ミリモル)のカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエートの両方の混合物を0.2230重量%の合計量で添加した。
【0106】
実施例6
配合物ベースライン3に、実施例Cのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート(23.3ミリモル)およびC20-24NAOから誘導されたHOBスルホネート(31.7ミリモル)の両方の混合物を0.2300重量%の合計量で添加した。
【0107】
比較例4
配合物ベースライン3に、オイルフリー基準で135のTBNを有するC20-28NAOから誘導されたカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート(24.1ミリモル)および比較例Bのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート(31.6ミリモル)の両方の混合物を0.2230重量%の合計量で添加した。
【0108】
比較例5
配合物ベースライン3に、オイルフリー基準で135のTBNを有するC20-28NAOから誘導されたカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート(27.7ミリモル)およびC20-24NAOから誘導されたHOBスルホネート(29.6ミリモル)の両方の混合物を0.2300重量%の合計量で添加した。
【0109】
ベースライン配合物4
主要量の潤滑粘度の基油および以下の添加剤を含有する乗用自動車の自動車用潤滑油組成物を調製して、SAE5W-40の最終的な油を得た:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド分散剤およびホウ素化分散剤;
(2)第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛をリン含量換算で740ppm;
(3)ホウ素化スルホネート、LOBスルホネート、およびMOBフェネートの混合物;
(4)90ppmのモリブデンを提供するモリブデンスクシンイミド錯体;
(5)アルキル化ジフェニルアミンおよびヒンダードフェノール酸化防止剤;
(6)消泡剤をケイ素含量換算で5ppm;
(7)非分散剤OCPのVII(添加剤)を13.5重量%およびPPDを0.3重量%;ならびに
(8)残部、グループIII基油。
【0110】
実施例7
配合物ベースライン4に、実施例Aのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート(27ミリモル)を添加した。
【0111】
比較例6
配合物ベースライン4に、比較例Bのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート(27ミリモル)を添加した。
【0112】
ASTM D4684ミニロータリー粘度計試験(MRV)
この試験では、ミニロータリー粘度計セル内で、試験油を最初に加熱し、次いで、試験温度に、この場合は-40℃に冷却した。各セルには、較正されたローターステーターセットが含まれており、ローターは、ローターシャフトに巻き付けられ、おもりに取り付けられたストリングによって回転する。降伏応力を測定するために回転が発生するまで、10gの重りから始まる一連の増加する重りをストリングに適用する。結果を、適用する力をパスカルで表す降伏応力として記載する。次に、150gの重りを適用して、油の見かけの粘度を測定する。見かけの粘度が大きいほど、油がオイルポンプの入口に連続的かつ適切に供給されない可能性が高くなる。結果を、センチポアズ単位の粘度として記載する。
【0113】
各潤滑油組成物のMRV試験の結果を以下の表4に示す。
【表5】

【表6】
【0114】
これらの実施例から、本発明のアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を配合した潤滑油は、約10~約40個の炭素原子を有する異性化NAOに由来しないアルキルヒドロキシベンゾエートを含む配合物と同等かそれより良好に機能することが明らかである。