(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】連鎖端子挿入治具
(51)【国際特許分類】
H01R 43/22 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
H01R43/22
(21)【出願番号】P 2020002096
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】横山 椋一
(72)【発明者】
【氏名】住田 敦
(72)【発明者】
【氏名】増田 純也
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-141745(JP,A)
【文献】特開昭61-131386(JP,A)
【文献】特開平08-293376(JP,A)
【文献】特開2003-229227(JP,A)
【文献】特開平08-273733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方端子に対して物理的且つ電気的に接続させるべく前記相手方端子毎に設けられた端子接続体、電線の端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続体並びに配列されたそれぞれの前記端子接続体及び前記電線接続体の間を繋ぐ連結体を有する連鎖端子に収容体への挿入方向に向けた押動力を作用させ、それぞれの前記端子接続体を前記収容体における前記端子接続体毎の端子収容室の収容完了位置まで挿入嵌合させる押動体を備え、
前記押動体は、それぞれの前記端子接続体の内の1つである第1端子接続体から見て前記挿入方向とは逆側に配置された前記電線接続体から当該逆側へと引き出されている前記電線と共に挟持される挟持部と、それぞれの前記端子接続体の内の残りの第2端子接続体を前記挿入方向に向けて前記収容完了位置まで押し動かす押動部と、を有することを特徴とした連鎖端子挿入治具。
【請求項2】
前記押動部は、前記連結体における前記第2端子接続体との連接部に対して前記押動力を作用させるものとして形成されることを特徴とした請求項1に記載の連鎖端子挿入治具。
【請求項3】
前記押動体は、前記押動部から前記挿入方向に突出させ、かつ、前記連接部に設けた空間部に挿入させることで前記連接部における前記挿入方向に対する交差方向の動きを係止させる係止部を有することを特徴とした請求項2に記載の連鎖端子挿入治具。
【請求項4】
前記押動体には、前記連鎖端子が前記第2端子接続体を2つ以上有する場合、前記第2端子接続体毎に前記押動部を設けることを特徴とした請求項1,2又は3に記載の連鎖端子挿入治具。
【請求項5】
前記押動体は、2つの前記押動部の間に前記電線接続体を配置させるものとして形成されることを特徴とした請求項4に記載の連鎖端子挿入治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連鎖端子挿入治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで云う連鎖端子とは、複数の相手方端子と電線とを電気接続させるための端子金具のことである。従来、この連鎖端子は、相手方端子に対して物理的且つ電気的に接続させるべく相手方端子毎に設けられた端子接続体と、電線の端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続体と、配列されたそれぞれの端子接続体と電線接続体の間を繋ぐ連結体と、を有している。例えば、この連鎖端子は、収容体の内方に収容される。その収容体には、端子接続体を収容完了位置に収容させ且つその収容完了位置で嵌合固定させる端子収容室が端子接続体毎に設けられている。端子接続体には、その端子収容室の中で相手方端子を物理的且つ電気的に接続させる。下記の特許文献1には、この種の連鎖端子の一例として、3つの端子接続体が間隔を空けて1列に並べられた所謂3連端子について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、連鎖端子においては、端子収容室の中で端子接続体に対して相手方端子を物理的且つ電気的に接続させるために、端子接続体を端子収容室へと収容させる際に、全ての端子接続体を各々の収容完了位置まで挿入嵌合させる必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、全ての端子接続体を各々の収容完了位置まで挿入嵌合させることが可能な連鎖端子挿入治具を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、相手方端子に対して物理的且つ電気的に接続させるべく前記相手方端子毎に設けられた端子接続体、電線の端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続体並びに配列されたそれぞれの前記端子接続体及び前記電線接続体の間を繋ぐ連結体を有する連鎖端子に収容体への挿入方向に向けた押動力を作用させ、それぞれの前記端子接続体を前記収容体における前記端子接続体毎の端子収容室の収容完了位置まで挿入嵌合させる押動体を備え、前記押動体は、それぞれの前記端子接続体の内の1つである第1端子接続体から見て前記挿入方向とは逆側に配置された前記電線接続体から当該逆側へと引き出されている前記電線と共に挟持される挟持部と、それぞれの前記端子接続体の内の残りの第2端子接続体を前記挿入方向に向けて前記収容完了位置まで押し動かす押動部と、を有することを特徴としている。
【0007】
ここで、前記押動部は、前記連結体における前記第2端子接続体との連接部に対して前記押動力を作用させるものとして形成されることが望ましい。
【0008】
また、前記押動体は、前記押動部から前記挿入方向に突出させ、かつ、前記連接部に設けた空間部に挿入させることで前記連接部における前記挿入方向に対する交差方向の動きを係止させる係止部を有することが望ましい。
【0009】
また、前記押動体には、前記連鎖端子が前記第2端子接続体を2つ以上有する場合、前記第2端子接続体毎に前記押動部を設けることが望ましい。
【0010】
また、前記押動体は、2つの前記押動部の間に前記電線接続体を配置させるものとして形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る連鎖端子挿入治具は、作業者等が挟持部及び電線に挿入方向の押動力を作用させることによって、この作業者等による押動力を第1端子接続体に対して電線接続体を介して作用させつつ、この押動力を第2端子接続体に対して押動部を介して作用させることができる。よって、この連鎖端子挿入治具は、連鎖端子の全ての端子接続体に対して挿入方向の押動力を作用させながら、この全ての端子接続体を端子収容室の収容完了位置まで挿入していくことができる。従って、この連鎖端子挿入治具は、その全ての端子接続体の収容完了位置への挿入嵌合が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、連鎖端子に組み付ける前の連鎖端子挿入治具を収容体と共に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、連鎖端子に組み付ける前の連鎖端子挿入治具を収容体と共に別角度から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、連鎖端子に組み付けた後の連鎖端子挿入治具を収容体と共に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、連鎖端子に組み付けた後の連鎖端子挿入治具を収容体と共に別角度から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、連鎖端子を連鎖端子挿入治具で収容体に挿入嵌合させた直後の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、連鎖端子挿入治具を連鎖端子と収容体から抜き取った後の状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、電線の端末に接続された連鎖端子を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、連鎖端子に組み付けた後の連鎖端子挿入治具を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る連鎖端子挿入治具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施形態]
本発明に係る連鎖端子挿入治具の実施形態の1つを
図1から
図9に基づいて説明する。
【0015】
先ず、本発明に係る連鎖端子挿入治具の概要について説明する。
【0016】
連鎖端子挿入治具は、連鎖端子を収容体の内方に収容させる際に、この連鎖端子に収容体への挿入方向に向けた押動力を作用させる治具である。以下、単に「挿入方向」と記した場合には、収容体に対する連鎖端子の挿入方向のことを示している。
【0017】
この連鎖端子挿入治具が用いられる連鎖端子とは、複数の相手方端子と電線とを電気接続させるための端子金具のことであり、金属等の導電性材料で成形される。この連鎖端子は、相手方端子に対して物理的且つ電気的に接続させるべく相手方端子毎に設けられた端子接続体と、電線の端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続体と、配列されたそれぞれの端子接続体及び電線接続体の間を繋ぐ連結体と、を有する。
【0018】
この連鎖端子において、端子接続体は、例えば、雌端子形状又は雄端子形状に形成されて、相手方端子との間で嵌合接続させるものであってもよく、丸型端子形状等の形に形成されて、相手方端子との間で螺子止め固定させるものであってもよい。この連鎖端子においては、配列された全ての端子接続体が同じ向きで収容体の内方に挿入されていく。例えば、この連鎖端子は、全ての端子接続体が1列に等間隔で配列されたものであってもよく、全ての端子接続体が格子状等の所定の規則に則って配列されたものであってもよく、全ての端子接続体が不規則に配列されたものであってもよい。
【0019】
この連鎖端子においては、電線接続体が1つ設けられており、この電線接続体に対して1本の電線が物理的且つ電気的に接続される。その電線接続体は、電線の端末に対して加締め固定させるなどして圧着接続させるものであってもよく、電線の端末に設けた端子金具との間で物理的且つ電気的に接続させるものであってもよい。この連鎖端子においては、それぞれの端子接続体の内の1つである第1端子接続体に対して、電線接続体が挿入方向とは逆側に配置される。つまり、この連鎖端子においては、それぞれの端子接続体の内の何れか1つ(第1端子接続体)と電線接続体とが連結体を介して1列に並べられる。そして、この連鎖端子においては、その挿入方向とは逆側に向けて、電線接続体から電線が引き出される。例えば、連鎖端子においては、全ての端子接続体が1列に配列されている場合、全ての端子接続体の内の端部に配置されたものを第1端子接続体とし、この第1端子接続体に並べて電線接続体を配置してもよい。また、連鎖端子においては、全ての端子接続体が1列に配列されている場合、全ての端子接続体の内の2つに挟まれているものを第1端子接続体とし、この第1端子接続体に並べて電線接続体を配置してもよい。
【0020】
一方、収容体とは、例えば、電気接続箱の筐体、その筐体の内方に組み付けられる所謂ブロック等の収容部材などのことであり、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。この収容体には、端子接続体を収容完了位置に収容させ且つその収容完了位置で嵌合固定させる端子収容室が端子接続体毎に設けられている。
【0021】
連鎖端子挿入治具は、収容体への挿入方向に向けた押動力を作用させ、それぞれの端子接続体を収容体における端子接続体毎の端子収容室の収容完了位置まで挿入嵌合させる押動体を備える。
【0022】
その押動体は、電線接続体から引き出された電線と共に挟持される挟持部を有する。その挟持部は、電線と共に作業者に把持させるものであってもよく、電線と共に端子挿入機のアーム等(図示略)に挟持させるものであってもよい。この挟持部は、電線と共に作業者等に挟み持たせた状態で先の押動力を作用させるための力点部として利用される。
【0023】
更に、この押動体は、それぞれの端子接続体の内の第1端子接続体以外の残りの第2端子接続体を挿入方向に向けて収容完了位置まで押し動かす押動部を有する。その押動部は、第2端子接続体に対して直接的又は間接的に押動力を作用させるものとして形成される。この押動体には、連鎖端子が第2端子接続体を2つ以上有する場合、その第2端子接続体毎に押動部を設けてもよい。また、押動部は、配列された2つ以上の第2端子接続体に対して押動力を作用させるものであってもよい。
【0024】
連鎖端子挿入治具は、このような構成を有するが故に、作業者等が挟持部及び電線に挿入方向の押動力を作用させることによって、この作業者等による押動力を第1端子接続体に対して電線接続体と連接部を介して作用させつつ、この押動力を第2端子接続体に対して押動部と連接部を介して作用させることができる。よって、この連鎖端子挿入治具は、連鎖端子の全ての端子接続体に対して挿入方向の押動力を作用させながら、この全ての端子接続体を端子収容室の収容完了位置まで挿入していくことができる。従って、この連鎖端子挿入治具は、その全ての端子接続体の収容完了位置への挿入嵌合が可能になる。更に、この連鎖端子挿入治具は、全ての端子接続体に挿入方向の押動力を作用させることができるので、端子接続体の挿入動作に伴う端子収容室からの反力による連鎖端子の変形を抑えることができる。
【0025】
次に、この連鎖端子挿入治具の具体例の1つについて説明する。
【0026】
図1から
図7の符号1は、本実施形態の連鎖端子挿入治具を示す。この連鎖端子挿入治具1は、
図1から
図4及び
図6に示す連鎖端子500を収容体600の内方に収容させる際に用いられる治具である。
【0027】
連鎖端子500は、金属板を母材にしてプレス成形されている。ここで示す連鎖端子500は、1列に等間隔で配列された3つの端子接続体501と、電線Weの端末に対して物理的且つ電気的に接続された1つの電線接続体502と、を有している(
図1から
図4、
図8及び
図9)。この例示の連鎖端子500においては、3つの端子接続体501の内の真ん中を第1端子接続体501Aとし、その内の両端を各々第2端子接続体501Bとする。従って、この連鎖端子500においては、第1端子接続体501Aに対して挿入方向とは逆側に電線接続体502が配置されている。
【0028】
更に、ここで示す連鎖端子500は、その3つの端子接続体501と1つの電線接続体502との間に配置させ、この3つの端子接続体501と1つの電線接続体502とを連結させる連結体503を有している(
図1から
図4、
図8及び
図9)。この例示の連結体503は、3つの端子接続体501の配列方向に山部と谷部を交互に配置させるべく折曲げ成形されている。
【0029】
この連結体503は、端子接続体501に対して挿入方向側で連ならせた連接部503aを端子接続体501毎に有している(
図8及び
図9)。この例示の連接部503aは、連結体503における谷部を成すものであり、その内方に空間部503bが設けられている。ここでは、方体状の空間部503bが形成されるように連接部503aが形成されている。
【0030】
更に、この例示の連結体503は、隣り合う連接部503aの間毎に、それぞれの端子接続体501の配列方向の間隔を可変させる調整部503cを有している(
図8及び
図9)。この調整部503cは、連鎖端子500や収容体600の公差ばらつき(それぞれの端子接続体501の配列方向の間隔の公差ばらつき、後述するそれぞれの端子収容室601aの配列方向の間隔の公差ばらつき等)に伴う端子接続体501と端子収容室601aの位置ずれを補正させるためのものであって、連鎖端子500や収容体600の公差ばらつきを吸収させる。この例示の調整部503cは、隣り合う連接部503aの間でそれぞれの連接部503aに連ならせたものであり、谷部としての一方の連接部503aに連ならせた山部と、谷部としての他方の連接部503aに連ならせた山部と、その2つの山部の間の谷部と、によって構成されている。
【0031】
収容体600には、その連鎖端子500を収容させる収容室601が形成されている(
図1から
図7)。この収容室601には、連鎖端子500の全体が収容される。この収容室601には、連鎖端子500の端子接続体501毎に設けられた端子収容室601aが形成されている(
図6)。この例示の収容室601においては、その連鎖端子500の端子接続体501の数に合わせて、3つの端子収容室601aが形成されている。
【0032】
その端子収容室601aには、端子接続体501を収容完了位置で係止させる端子係止部602が設けられている(
図6)。この端子係止部602は、収容完了位置の端子接続体501の挿入方向とは逆側への移動を係止させるものとして形成されている。例えば、この端子係止部602は、爪状の突起部として形成されており、収容完了位置の端子接続体501の被係止部501aに対して挿入方向とは逆側で対向配置させる。
【0033】
端子収容室601aには、端子接続体501が収容完了位置に到達するまでの間、この端子係止部602を退避させ、端子接続体501が収容完了位置に到達したときに、この端子係止部602を被係止部501aに対して挿入方向とは逆側で対向配置させる可撓部603が設けられている(
図6)。この可撓部603は、そのような端子係止部602の動きを担う弾性変形が可能なものであり、端子係止部602を有している。この例示の可撓部603は、挿入方向側を自由端とするべく延在させた弾性変形可能な片持ちの片部であり、その自由端に端子係止部602を有している。
【0034】
ここで示す連鎖端子挿入治具1の押動体10は、方体状に形成された挟持部11と、この挟持部11における挿入方向側の壁面から挿入方向に向けて突出させた方体状の押動部12と、を有している(
図1から
図4、
図7及び
図9)。
【0035】
この例示の押動体10においては、連鎖端子500の第2端子接続体501Bに対して第2端子接続体501B毎に押動力を作用させるべく、その2つの押動部12が互いに間隔を空けて突出させられている。そして、この例示の押動体10は、その2つの押動部12の間に電線接続体502を配置させるものとして形成されている(
図4)。よって、この例示の挟持部11には、その電線接続体502から引き出された電線Weを避けつつ収容させる収容溝11aが形成されている(
図1から
図5及び
図7)。その収容溝11aは、挟持部11と電線Weとを作業者又は端子挿入機のアーム等に挟み持たせることが可能な形状のものとして形成される。例えば、収容溝11aは、作業者の手指で挟持部11と電線Weとを把持させることができるものとして、その溝深さや開口等が形成されている。
【0036】
この例示の挟持部11は、電線Weと共に作業者に把持させた上で、この電線Weと一緒に作業者が挿入方向の押動力を作用させることができる大きさに形成されている。つまり、この挟持部11は、作業者が持ち易い大きさに形成されている。
【0037】
また、この例示の押動部12は、連結体における第2端子接続体501Bとの連接部503aに対して挿入方向の押動力を作用させるものとして形成されている。
【0038】
更に、ここで示す押動体10は、押動部12から挿入方向に突出させ、かつ、第2端子接続体501Bとの連接部503aに設けた空間部503bに挿入させることで当該連接部503aにおける挿入方向に対する交差方向の動きを係止させる係止部13を有している(
図1から
図3及び
図6)。つまり、この係止部13は、調整部503cに隣接させた連接部503a(第2端子接続体501Bとの連接部503a)の空間部503bに対して挿入されている。よって、この係止部13には、その調整部503cによる端子接続体501と端子収容室601aの位置ずれの補正が可能な範囲内で、第2端子接続体501Bとの連接部503aにおける挿入方向に対する交差方向の動きを係止させる。ここで示す連鎖端子挿入治具1は、この係止部13によって、押動部12から第2端子接続体501Bとの連接部503aに作用させた押動力の逃げを可能な限り抑えることができる。従って、この連鎖端子挿入治具1は、より的確に連鎖端子500の全ての端子接続体501を端子収容室601aの収容完了位置まで挿入させることができる。
【0039】
以上示した本実施形態の連鎖端子挿入治具1は、作業者等が挟持部11及び電線Weに挿入方向の押動力を作用させることによって、この作業者等による押動力を第1端子接続体501Aに対して電線接続体502と連接部503aを介して作用させつつ、この押動力を第2端子接続体501Bに対して押動部12と連接部503aを介して作用させることができる。よって、この連鎖端子挿入治具1は、連鎖端子500の全ての端子接続体501に対して挿入方向の押動力を作用させながら、この全ての端子接続体501を端子収容室601aの収容完了位置まで挿入していくことができる。従って、この連鎖端子挿入治具1は、その全ての端子接続体501の収容完了位置への挿入嵌合が可能になる。
【0040】
特に、ここで示す連鎖端子挿入治具1は、2つの押動部12の間に電線接続体502を配置させるので、この2つの押動部12からそれぞれに押動力を受けた第2端子接続体501Bとの連接部503aによって、それぞれの調整部503cが第2端子接続体501Bとの連接部503a側で且つ挿入方向側に引っ張られ、そのそれぞれの引張力を第1端子接続体501Aとの連接部503aに伝えることができる。よって、この連鎖端子挿入治具1は、その連接部503aに伝えられたそれぞれの引張力によっても、第1端子接続体501Aを挿入方向に押し動かすことができる。従って、ここで示す連鎖端子挿入治具1は、喩え電線Weの柔軟性に伴い電線接続体502に伝えられる押動力が減少したとしても、第1端子接続体501Aとの連接部503aに伝えられたそれぞれの引張力によって、第1端子接続体501Aに伝えられる押動力を増加させることができるので、より確実に全ての端子接続体501を収容完了位置に挿入嵌合させることができる。
【0041】
更に、ここで示す連鎖端子挿入治具1は、全ての端子接続体501に挿入方向の押動力を作用させることができるので、端子接続体501の挿入動作に伴う端子収容室601aからの反力による連鎖端子500の変形を抑えることができる。特に、ここで示す連鎖端子挿入治具1は、第1端子接続体501Aに対して、電線接続体502を介して第1端子接続体501Aとの連接部503aに伝えられた押動力と、先に示した第1端子接続体501Aとの連接部503aに伝えられたそれぞれの引張力と、を作用させる。このため、ここで示す連鎖端子挿入治具1は、その第1端子接続体501Aに作用する押動力と押動部12から第2端子接続体501Bに伝えられる押動力との差を小さくし、全ての端子接続体501が端子収容室601aから受ける反力の差も小さくするので、より確実に連鎖端子500の変形を抑えることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 連鎖端子挿入治具
10 押動体
11 挟持部
12 押動部
13 係止部
500 連鎖端子
501 端子接続体
501A 第1端子接続体
501B 第2端子接続体
502 電線接続体
503 連結体
503a 連接部
503b 空間部
600 収容体
601a 端子収容室