(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両スライドドア用開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/20 20140101AFI20230912BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20230912BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20230912BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230912BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E05B81/20 B
E05B79/08
B60J5/06 A
B60J5/04 C
B60J5/00 M
(21)【出願番号】P 2020003279
(22)【出願日】2020-01-11
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】花木 直樹
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030982(JP,A)
【文献】特開平11-303483(JP,A)
【文献】特開2014-009588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 81/20
E05B 79/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(10)に設けられたストライカ(16)と係合可能のラッチ(41)と;
前記ラッチ(41)と係合して前記ラッチ(41)と前記ストライカ(16)との係合を保持するラチェット(43)と;
パワークローズ(PC)のモータ動力で回転して前記ラッチ(41)をハーフラッチ位置からフルラッチ位置にクローズ回転させうるクローズレバー(62)と;
前記クローズレバー(62)の回転を前記ラッチ(41)に伝達しうる連結位置と前記クローズレバー(62)の回転を前記ラッチ(41)に伝達させないキャンセル位置とに切り替わるキャンセルレバー(65)と;
スライドドア(12)の操作ハンドルの操作で前記キャンセルレバー(65)を連結位置からキャンセル位置に変位させ得る第1レバー(45)および第2レバー(49)と;
を備えた車両スライドドア用開閉装置において;
前記キャンセルレバー(65)は、前記第1レバー(45)及び前記第2レバー(49)がそれぞれ当接可能な非平坦の補強当接部(65b)を備えた車両スライドドア用開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1レバー(45)および前記第2レバー(49)は共通軸(46)で軸止させ、前記クローズレバー(62)は前記共通軸(46)とは別のクローズ軸(68)で軸止させ、前記補強当接部(65b)と前記共通軸(46)とを結ぶ第1の線分(71)と、前記補強当接部(65b)と前記クローズ軸(68)とを結ぶ第2の線分(72)とを、V字状になるように配置した車両スライドドア用開閉装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記第1レバー(45)はロック機構(67)を介して操作ハンドルに連結すると共に前記操作ハンドルの操作により前記ラチェット(43)をラッチ離脱方向に回転させる構成とし、前記第2レバー(49)は前記ロック機構(67)を介さずに操作ハンドルに連結させた車両スライドドア用開閉装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記第1レバー(45)はアウターハンドル(OH)に連結し、前記第2レバー(49)はインナーハンドル(IH)に連結し、前記第1レバー(45)はロック機構(67)を介して前記ラチェット(43)をラッチ離脱方向に回転させ得る構成とした車両スライドドア用開閉装置。
【請求項5】
請求項4において、前記インナーハンドル(IH)と前記アウターハンドル(OH)とは、チャイルドロック機構(70)を介して操作的に連結した車両スライドドア用開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両スライドドア用開閉装置に関するものであり、スライドドアのリア側に設けられる全閉リアラッチ機構と、スライドドアを閉扉させるパワークローザー機構と、パワークローザー機構に対するキャンセル機構とを有する開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスライドドアには、スライドドアをモータ動力でハーフラッチ状態からフルラッチ状態に移動させるパワークローザー機構が設けられることが多い。パワークローザー機構は、全閉リアラッチ機構のラッチをハーフラッチ位置(またはその近傍)からフルラッチ位置(またはオーバーストローク位置)までモータ動力でクローズ回転させることで、スライドドアの快適な閉扉をもたらしている。
【0003】
パワークローザー機構は、スライドドアが開扉位置からハーフラッチ位置まで移動すると、センターやスイッチ等からの信号等に基づいて起動し、ラッチをクローズ方向(フルラッチ方向)に回転させる。
【0004】
パワークローザー機構(その動力伝達経路を含む)には、クローズ作動中に異常が起きたとき、クローズ作動を停止させるキャンセル機構が設けられる。キャンセル機構は、自動及び手動により作動するが、手動操作にあっては、ドアの操作ハンドル(アウターハンドル・インナーハンドル)の操作により、クローズ作動をキャンセルする構成が一般的である(特許文献1)。
【0005】
特許文献1のキャンセル機構は、パワークローザー機構の動力でラッチをクローズ回転させるクローズレバーと、クローズレバーによるラッチのクローズ回転を可能にする連結位置とクローズ回転を不能にするキャンセル位置とに変位するキャンセルレバーと、ドアのハンドル操作によりキャンセルレバーを連結位置からキャンセル位置に変位させうる第1レバーと、同様にドアのハンドル操作によりキャンセルレバーを連結位置からキャンセル位置に変位させうる第2レバーとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のキャンセル機構では、キャンセルレバーの当接片に、第1レバーの第1押圧部と第2レバーの第2押圧部とが状況に応じて当接して、キャンセルレバーをキャンセル位置に変位させているが、キャンセルレバー、第1レバーおよび第2レバーからなる3個のレバーが、1つの共通軸に軸止されているため、第1押圧部と第2押圧部とは互いに干渉しないように考慮しなくてはならず、特許文献1では、第1押圧部と第2押圧部とは共通軸の半径方向に距離をずらす構成としている。
このように、第1押圧部と第2押圧部とを共通軸からの距離をずらすと、キャンセルレバーの当接片は、特許文献1の
図7のように、共通軸の半径方向に長く形成した平坦な当接片となってしまい、当接片が平坦であると第1押圧部および第2押圧部から受ける押圧力に対する耐性強度において劣って押圧方向に変形する畏れが生じる。
また、特許文献1のキャンセル機構では、共通軸、キャンセルレバーの当接片、および、クローズレバーを軸止するクローズ軸の3部材がほぼ直線状に並ぶことになる。このため、共通軸とクローズ軸との間隔が長くなり、キャンセル機構の大型化を招いていた。
共通軸とクローズ軸との間隔が長くなることに加えて、その側部にはクローズレバーのスイング用スペース(可動空間)や、キャンセルレバーのスイング用スペース(可動空間)を配置するため、キャンセル機構は更に大型化になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって、本発明は、車体10に設けられたストライカ16と係合可能のラッチ41と、前記ラッチ41と係合して前記ラッチ41と前記ストライカ16との係合を保持するラチェット43と、パワークローズPCのモータ動力で回転して前記ラッチ41をハーフラッチ位置からフルラッチ位置にクローズ回転させうるクローズレバー62と、前記クローズレバー62の回転を前記ラッチ41に伝達しうる連結位置と前記クローズレバー62の回転を前記ラッチ41に伝達させないキャンセル位置とに切り替わるキャンセルレバー65と、スライドドア12の操作ハンドルの操作で前記キャンセルレバー65を連結位置からキャンセル位置に変位させ得る第1レバー45および第2レバー49とを備えた車両スライドドア用開閉装置において;前記キャンセルレバー65は、前記第1レバー45及び前記第2レバー49がそれぞれ当接可能な非平坦の補強当接部65bを備えた車両スライドドア用開閉装置としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明では、第1レバー45及び第2レバー49がそれぞれ当接するキャンセルレバー65の当接部65bを補強当接部としたため、第1レバー45及び第2レバー49の第1押圧部45b及び第2押圧部49aを当接部65bに対して、高さ方向においては異なるが、長さ方向では、同じ長さ位置において当接させることができ、優れた操作性を期待できる。
本発明の請求項2に係る発明では、第1の線分71と第2の線分72とをV字状(逆V字状を含む)に配置したため、小型化に大きく貢献できる。
本発明の請求項3に係る発明では、従来構成と同じようにロック機構67や操作ハンドルに連結できる。
本発明の請求項4に係る発明では、第1レバー45と第2レバー49とを、ロック機構67の影響を受けずにアウターハンドルOHとインナーハンドルIHとに区別して連結できるため、連結用ケーブルの配策性に優れる。
本発明の請求項5に係る発明では、チャイルドロック機構70をロック機構67と共に設置できるため、コンパクトな設計が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による車両スライドドア用開閉装置を備えた車体およびスライドドアの概略を示した側面図である。
【
図2】開閉装置の全閉リアラッチ機構のリアラッチユニットの正面図である。
【
図3】全閉リアラッチ機構の操作ユニットの室外側の内部構造を示した側面図である。
【
図4】操作ユニットの室内側の内部構造を示した側面図である。
【
図5】操作ユニットのキャンセルレバーとクローズレバーの側面図である。
【
図6】第2実施例の操作ユニットの室外側の内部構造を示した側面図である。
【
図7】第2実施例の操作ユニットのチャイルドロック機構を示す側面図である。
【
図8】共通軸と当接部とを結ぶ第1の線分と、クローズ軸と当接部とを結ぶ第2の線分とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る車両スライドドア用開閉装置の好適な実施形態を図面により説明する。実施例において説明する開閉装置とは、スライドドアを閉扉状態に維持する全閉ラッチ機構や、スライドドアを開扉状態に保つ全開ラッチ機構や、スライドドアの閉扉状態を解放する解放機構や、スライドドアの開扉状態を解放する解放機構や、解放機構の機能を規制するロック機構などを含んでいる。
【0012】
図1は、開閉装置を備えた車両の側面を示しており、車両は、車体10と、車体10のドア開口部11と、車体10にスライド自在に取り付けられたスライドドア12とを備えている。スライドドア12は、車体10又はスライドドア12に配設したパワースライド機構13の動力より前方の閉扉方向と後方の開扉方向にスライドする。
【0013】
車体10のドア開口部11の前縁部にはフロントストライカ14を設け、スライドドア12の前端にはフロントストライカ14と係合することでスライドドア12を閉扉状態に維持する全閉フロントラッチ機構15(以下、フロントラッチ機構15、若しくは全閉ラッチ機構15と省略することがある)を設ける。車体10のドア開口部11の後縁部にはリアストライカ16を設け、スライドドア12の後端にはリアストライカ16と係合することでスライドドア12を閉扉状態に維持する全閉リアラッチ機構17(以下、リアラッチ機構17、若しくは全閉ラッチ機構17と省略することがある)を設ける。全閉ラッチ機構15、17は、周知のようにラッチ及びラチェットを備えたものであり、また、全閉ラッチ機構15、17は、共同してスライドドア12を正規の閉扉状態に保持する。
【0014】
更に、
図1に示したように、スライドドア12には、周知のラッチ及びラチェット機構を備えた全開ラッチ機構18が設けられる。全開ラッチ機構18は、スライドドア12が開扉スライドにより所定の全開位置まで移動すると、車体10に固定した全開ストライカ19と係合して、スライドドア12を全開位置に保持する。
【0015】
スライドドア12の室外面にはアウターハンドルOHが設けられ、スライドドア12の室内面にはインナーハンドルIHが設けられる。以下において、アウターハンドルOHおよびインナーハンドルIHを区別する必要がないときは「操作ハンドル」と称する。アウターハンドルOHおよびインナーハンドルIHの操作力は、機械的連結手段(ボーデンケーブル等)を介して全閉フロントラッチ機構15、全閉リアラッチ機構17および全開ラッチ機構18に伝達される。機械的連結手段は、スライドドア12の内部の中継機構20を介して配策する。
【0016】
全閉リアラッチ機構17は、リアストライカ16と噛合するリアラッチユニット37と、操作ユニット38とを備えている。
【0017】
リアラッチユニット37は、
図2のように、合成樹脂等で形成されるラッチボディ39を有し、ラッチボディ39にはラッチ軸40によりラッチ41が軸止され、また、ラチェット軸42によりラチェット43が軸止される。スライドドア12が閉扉移動すると、アンラッチ位置のラッチ41は、車体10のリアストライカ16との当接により、ハーフラッチ位置を越えてフルラッチ位置(正確には。オーバーストローク位置)までクローズ回転する。ラチェット43は、周知のように、ラッチ41と係合して、ラッチ41とリアストライカ16との係合状態を保持し、スライドドア12を閉扉状態に保持する。
図2のラッチ41はフルラッチ位置にあり、ラッチ41はラッチバネ(図示なし)により反時計回転方向(アンラッチ方向)に付勢され、ラチェット43はラチェットバネ(図示なし)により時計回転方向(ラッチ係合方向)に付勢され、ラッチ41に係合している。
【0018】
図3~5には、操作ユニット38の第1実施例が示されている。操作ユニット38は、上下に伸びる第1レバー45を備え、第1レバー45は、操作ユニット38のハウジングに第1軸(共通軸)46で軸止される。第1レバー45は、後方に伸びる連結アーム45aを有し、連結アーム45aの先端はラチェット43に操作的・関連的に連結する。
【0019】
第1実施例では、第1レバー45はケーブル48を介してロック機構67に連結させる。ロック機構67は周知のようにロック状態とアンロック状態とに切り替わるものであり、アンロック状態では操作ハンドル(アウターハンドルOHまたはインナーハンドルIH)が操作されたときは、操作ハンドルの操作力をケーブル48を介して第1レバー45に伝達させ、第1レバー45を
図3において第1軸46を中心に反時計回転(開扉回転)させるが、ロック状態では操作ハンドルの操作力は第1レバー45に伝達させない。ロック機構67は中継機構20若しくは操作ユニット38に設けられる。
【0020】
第1レバー45が
図3において第1軸46を中心に反時計回転(開扉回転)すると、連結アーム45aを介してラチェット43がラッチ離脱方向に回転して、リアラッチユニット37のアンラッチが行われ、スライドドア12は開扉可能状態となる。
【0021】
第1軸46には、第1レバー45と重合するように配置した上下に伸びる第2レバー49を軸止する。第2レバー49は、ケーブル32を介して操作ハンドル(通常、アウターハンドルOHとインナーハンドルIHの双方)に連結され、アウターハンドルOHまたはインナーハンドルIHが操作されると
図3において第1軸46を中心に反時計回転する。
【0022】
第1実施例の第1レバー45は、ロック機構67を介して操作ハンドルに連結されると共にラチェット43に操作的に連結されている。これに対して、第1実施例の第2レバー49は、アウターハンドルOHまたはインナーハンドルIHの操作(特に開扉操作)でロック機構67の影響を受けずに反時計回転するが、単独では、ラチェット43をラッチ離脱方向に回転させることはできない。この関係性は、特許文献1に示された関係性と同類である。
【0023】
本開閉装置は、
図1のように、パワークローザー機構PCを備えている。パワークローザー機構PCは全閉リアラッチ機構17の下方近傍に配設する。パワークローザー機構PCのモータ動力は、
図3に示したクローズレバー62に図示のない減速機構等やケーブルを介して伝達される。クローズレバー62は全閉リアラッチ機構17(操作ユニット38)のハウジング(図示なし)に第2軸(クローズ軸)68で軸止する。
【0024】
クローズレバー62は、パワークローザー機構PCのモータ動力で回転する受動レバー63と、ラッチ駆動レバー64とを備えている。受動レバー63は、操作ユニット38のハウジングに第2軸68で軸止され、モータ動力により
図3で時計回転する。ラッチ駆動レバー64は受動レバー63に連結軸62aで軸止され、受動レバー63に対して
図3においてバネ62bにより、反時計回転方向に付勢される。ラッチ駆動レバー64の基端側には、コロ状の当接部64aが設けられる。
【0025】
クローズレバー62の上方には、キャンセルレバー65が操作ユニット38のハウジングに第3軸(キャンセル軸)69で軸止される。キャンセルレバー65は、
図3に示した連結位置と、
図3の状態から反時計回転したキャンセル位置とに切り替わる。キャンセルレバー65の下端の支持部65aは、連結位置では、ラッチ駆動レバー64のコロ状の当接部64aと上下に対峙し、当接部64aの上動(ラッチ駆動レバー64の反時計回転)を規制する。なお、第3軸69は、第1軸46および第2軸68と互いに平行である。
【0026】
支持部65aと当接部64aとの当接によりラッチ駆動レバー64の反時計回転が規制された状態で、クローズレバー62の受動レバー63が、パワークローザー機構PCのモータ動力で
図3において第2軸68を中心に時計回転(クローズ回転)すると、受動レバー63に連結軸62aで軸止されたラッチ駆動レバー64は、受動レバー63と一体で時計回転する。つまり、1つのクローズレバー62として
図3において時計回転する。
【0027】
ラッチ駆動レバー64は、ラッチ41に関連的に連結されているため、クローズレバー62(ラッチ駆動レバー64)がパワークローザー機構PCのモータ動力で回転すると、ラッチ41をハーフラッチ位置(またはその近傍)からフルラッチ位置(オーバーストローク位置)までクローズ回転させる。
【0028】
キャンセルレバー65の上部には当接部65bを形成し、第1レバー45および第2レバー49の上部には、当接部65bに向かって突き出す第1押圧部45bおよび第2押圧部49aをそれぞれ設ける。第1レバー45または第2レバー49が反時計回転すると、第1押圧部45bまたは第2押圧部49aが当接部65bに当接し、
図3のキャンセルレバー65を連結位置からキャンセル位置に変位させる。キャンセルレバー65がキャンセル位置に切り替わると、支持部65aは当接部64aとの対峙を解除し、これにより、受動レバー63とラッチ駆動レバー64との連結回転は解除され、ラッチ41のモータ動力によるクローズ回転はキャンセルされる。
【0029】
従って、第1実施例においては、ロック機構67がアンロック状態のときは、操作ハンドル(アウターハンドルOHまたはインナーハンドルIH)を操作すれば、ロック機構67およびケーブル48および第1レバー45を介して、キャンセルレバー65をキャンセル位置に切り替えることで、ラッチ41のモータ動力によるクローズ回転をキャンセルさせることができる。
【0030】
また、ロック機構67がロック状態であっても、操作ハンドル(アウターハンドルOHまたはインナーハンドルIH)の操作力はケーブル32を介して第2レバー49に伝達され、第2レバー49がキャンセルレバー65をキャンセル位置に切り替えることで、ラッチ41のモータ動力によるクローズ回転をキャンセルさせることができる。
【0031】
第1押圧部45bおよび第2押圧部49aが当接するキャンセルレバー65の当接部65bは、湾曲若しくは屈曲させることで第1押圧部45bおよび第2押圧部49aから受ける押圧力に対して強い耐性を備えた非平坦の補強面である。補強面は、一部を湾曲若しくは屈曲させて形成してもよく、全体を湾曲させてもよい。実施例においては、第1押圧部45bおよび第2押圧部49aは、当接部65bの平坦部に当接した後、湾曲面若しくは屈曲面に当接する構成になっている。
【0032】
当接部65bの湾曲若しくは屈曲は、キャンセルレバー65を、第1レバー45および第2レバー49を軸止する第1軸46とは別の第3軸69に軸止させていることにより、操作性を損なうことなく実施可能になっている。
【0033】
第1押圧部45bおよび第2押圧部49aは、好適には、第1軸46から同じ距離に設ける。互いに重合した第1レバー45および第2レバー49の第1押圧部45bおよび第2押圧部49aは、当接部65bの高さ方向(第3軸69の軸芯方向)においては、異なる2点の高さ位置で当接するが、当接部65bの長さ方向では、同じ長さ位置において当接する。これは、当接部65bが、第1押圧部45bおよび第2押圧部49aから受ける押圧力に対して強い耐性を備えた非平坦の補強面に形成できたためである。
【0034】
図6には、操作ユニット38の第2実施例を示す。第2実施例では、配置関係や、連結関係を変更してある。なお、符号は、第1実施例と基本的に同じ符号を用いている。
【0035】
第2実施例では、ロック機構67は、第1レバー45の連結アーム45aとラチェット43との間に配置し、第1レバー45は、アウターハンドルOHに操作的に連結し、第2レバー49は、インナーハンドルIHに操作的に連結させている。
【0036】
第2実施例では、アウターハンドルOHが操作されると、第1レバー45が反時計回転し、ロック機構67がアンロック状態であれば、ラチェット43をラッチ離脱方向に回転させ、併せて、キャンセルレバー65もキャンセル位置に変位させる。ロック機構67がロック状態であれば、ラチェット43は回転せずに、キャンセルレバー65がキャンセル位置に変位する。
【0037】
インナーハンドルIHが操作されたときは、第2レバー49が反時計回転し、キャンセルレバー65をキャンセル位置に移動させる。しかし、ラチェット43の解放は行われない。ラチェット43の解放を行う構成にするときは、インナーハンドルIHとアウターハンドルOHとをチャイルドロック機構を介して連結するのが好適である。
【0038】
図7は、第2実施例に追加されるチャイルドロック機構70を示している。
【0039】
第2レバー49にはスロット49bを設け、スロット49bにはチャイルドリンク50のチャイルドピン50aを挿通させる。チャイルドピン50aは第2レバー49の反時計回転(
図7)と共に移動して、第1レバー45の係合部45cに当接して、第1レバー45を開扉回転させ、もって、ラチェット43をラッチ離脱方向に回転させることが可能となる。
【0040】
チャイルドリンク50は、チャイルドレバー51にピン51aで連結し、チャイルドレバー51の先端の操作摘み51bはリアラッチユニット37の近傍から、スライドドア12の外部に露呈させる。つまり、操作摘み51bはスライドドア12の後端面から露出させるため、悪戯操作を効果的に避けられる。
【0041】
操作摘み51bがチャイルドロック側に操作されると、チャイルドレバー51はチャイルド軸51cを中心に
図7において反時計回転し、チャイルドピン50aをスロット49bの上側に移動させる。これにより、チャイルドピン50aは係合部45cに対して非対峙(チャイルドロック状態)となり、第2レバー49の開扉回転では第1レバー45に伝達されなくなる。
【0042】
第1実施例および第2実施例では共に、第1レバー45および第2レバー49を軸止する共通軸46と、キャンセルレバー65の当接部65bとを結ぶ第1の線分71と、クローズレバー62を軸止するクローズ軸68と、キャンセルレバー65の当接部65bとを結ぶ第2の線分72とが、
図8のようにV字状(逆V字状)に折れ曲がっている。このため、従来の構成に比べ、とてもコンパクトに形成できる。また、逆V字状の構成により、キャンセルレバー65の当接部65bを、操作性を損なうことなく、平坦な当接部に対して強度に優れた湾曲面若しくは屈曲面とすることが実施可能となった。
【符号の説明】
【0043】
OH…アウターハンドル、IH…インナーハンドル、PC…パワークローザー機構、10…車体、11…ドア開口部、12…スライドドア、13…パワースライド機構、14…フロントストライカ、15…全閉フロントラッチ機構、16…リアストライカ、17…全閉リアラッチ機構、18…全開ラッチ機構、19…全開ストライカ、20…中継機構、32…ケーブル、37…リアラッチユニット、38…操作ユニット、39…ラッチボディ、40…ラッチ軸、41…ラッチ、42…ラチェット軸、43…ラチェット、45…第1レバー、45a…連結アーム、45b…第1押圧部、45c…係合部、46…第1軸、48…ケーブル、49…第2レバー、49a…第2押圧部、49b…スロット、50…チャイルドリンク、50a…チャイルドピン、51…チャイルドレバー、51a…ピン、51b…操作摘み、51c…チャイルド軸、62…クローズレバー、62a…連結軸、62b…バネ、63…受動レバー、64…ラッチ駆動レバー、64a…当接部、65…キャンセルレバー、65a…支持部、65b…当接部、67…ロック機構、68…第2軸、69…第3軸、70…チャイルドロック機構、71…第1の線分、72…第2の線分。