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7348101高周波電源装置の制御方法及び高周波電源装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】高周波電源装置の制御方法及び高周波電源装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/40 20060101AFI20230912BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H03H7/40
H05H1/46 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020025573
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021132260
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 敦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 寿徳
(72)【発明者】
【氏名】高田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】横山 聡一
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-310245(JP,A)
【文献】特開2010-114001(JP,A)
【文献】特開2013-197080(JP,A)
【文献】特開平10-257774(JP,A)
【文献】特開2017-135705(JP,A)
【文献】特開2004-008893(JP,A)
【文献】特開2016-046951(JP,A)
【文献】特開2012-050296(JP,A)
【文献】特表2018-533855(JP,A)
【文献】特開平11-087097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/30- 7/54
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置の制御方法において、
直流―交流変換により高周波電力を出力する高周波増幅器の出力を出力指令に基づいて制御する出力制御と、
前記高周波増幅器と負荷との間のインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング制御を備え、
前記インピーダンスマッチング制御は、
(A)前記高周波増幅器のフィードバック信号に基づいて制御周波数を変動させてインピーダンス整合を行う周波数制御と、
(B)出力制御において、出力指令値の上限を制限する出力リミット状態にあるか否かを判定して周波数リミット値を設定し、前記周波数制御の周波数範囲を規定する周波数リミット値を定める周波数リミット値制御と、
を備え、
(C)前記周波数制御は、前記周波数リミット値制御で定められた周波数リミット値の周波数範囲内において前記高周波増幅器の周波数を制御し、
前記出力制御は、
(D)前記周波数範囲において、出力を制限する出力リミット値を定める出力リミット値制御を備え、
(E)前記出力リミット値制御で定められた出力リミット値を上限とする出力指令値により前記高周波増幅器の出力を制御し、
(F)前記出力制御と前記インピーダンスマッチング制御とは個別に独立した制御である、
高周波電源装置の制御方法。
【請求項2】
前記出力指令は、負荷に供給する実効的な負荷電力(LOAD電力)、又は高周波電源装置から負荷に向けて供給する進行波電力である、
請求項に記載の高周波電源装置の制御方法。
【請求項3】
前記出力制御は、連続する制御過程において、前記出力指令の指令値を複数段階で切り替え自在である、
請求項1又は2に記載の高周波電源装置の制御方法。
【請求項4】
前記出力リミット値制御において、前記高周波増幅器の出力指令値が出力リミット値を超えたとき、出力指令値を出力リミット値に置き換えることにより出力指令値を制限する、
請求項1から3の何れか一つに記載の高周波電源装置の制御方法。
【請求項5】
前記フィードバック信号は、前記高周波増幅器の進行波電力、反射波電力、出力電圧、直流電圧、直流電流の少なくとも何れか一つの信号であり、
前記出力リミット値は、それぞれ前記各フィードバック信号に対応して設定された、進行波電力リミット値、反射波電力リミット値、出力電圧リミット値、直流電圧リミット値、直流電流リミット値、及び/又は損失電力リミット値であり、
各制御周波数において、前記出力指令値が出力指令リミット値を超えるときには、前記出力指令値を当該出力リミット値に制限し、制限された出力指令値により高周波増幅器の出力を制御する、請求項1から4の何れか一つに記載の高周波電源装置の制御方法。
【請求項6】
前記出力リミット値の周波数特性は、前記周波数範囲内の基準周波数に対して対称であることを特徴とする、
請求項1から5の何れか一つに記載の高周波電源装置の制御方法。
【請求項7】
前記出力リミット値の周波数特性は、前記周波数範囲内の基準周波数に対して非対称であり、
前記非対称は、高周波増幅器の増幅の周波数特性、及び負荷インピーダンスの周波数特性に対応した周波数特性である、
請求項1から5の何れか一つに記載の高周波電源装置の制御方法。
【請求項8】
負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置において、
前記高周波電力を出力する高周波増幅器と
前記高周波増幅器の出力を出力制御する出力制御部と、
前記高周波増幅器と負荷とのインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング制御部とを備え、
前記インピーダンスマッチング制御部は、
(a)前記高周波増幅器のフィードバック信号に基づく周波数制御により制御周波数を変動させてインピーダンス整合を行う周波数制御部と、
(b)出力制御において、出力指令値の上限を制限する出力リミット状態にあるか否かを判定して周波数リミット値を設定し、前記周波数制御の周波数範囲を規定する周波数リミット値を定める周波数リミット値制御部と、
を備え、
前記周波数制御部は、
(c)前記周波数リミット値制御部で定められた周波数リミット値の周波数範囲内において前記高周波増幅器の周波数を制御し、
前記出力制御部は、
(d)前記周波数範囲において前記出力制御部の出力制御値を制限する出力リミット値を定める出力リミット値制御を備え、
(e)前記出力リミット値制御で定められた出力リミット値を上限とする出力指令値により前記高周波増幅器の出力を制御し、
前記出力制御部と前記インピーダンスマッチング制御部とは、
(f)個別に独立した制御である、
高周波電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電力を負荷に供給する高周波電源装置の制御方法、及び高周波電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電源装置から負荷に高周波電力を高効率に供給するには、反射波電力を低減するために、負荷のインピーダンス変動に応じてインピーダンス整合(インピーダンスマッチング)を行うことが知られている。例えば、負荷がプラズマ負荷の場合には、プラズマが未着火状態から着火状態に遷移する過程の他、チャンバ内のガス状態や圧力状態等のチャンバ環境の変化により負荷のインピーダンスが変動する。負荷インピーダンスの変動によりインピーダンス不整合が生じると、負荷から高周波電源装置に戻る反射波電力が増加し、実効的に負荷に供給される負荷電力が低下する。なお、負荷電力は、高周波電源装置から負荷に供給する進行波電力から負荷から戻る反射波電力量を差し引いた電力であり、負荷に実効的に供給される電力である。
【0003】
インピーダンス整合技術として、負荷側から高周波電源側に戻る反射波電力を検出し、検出した反射波電力に応じて高周波電源から負荷側に供給する進行波電力を増加することにより、反射波電力による負荷電力の低下を補完する技術が知られている。
【0004】
特許文献1には周波数制御によるインピーダンス整合が示されている。進行波電力に反射波電力に相当する電力を加算することにより負荷電力の低下を補完する際に、反射波電力が大きい場合に進行波電力が過剰となり出力が過大となるおそれがある。特許文献1は、過大出力を低減するために、周波数を制御して反射波を低減させた後、反射波電力に相当する電力を進行波電力に加算するように出力を制御する技術を開示している(特許文献1)。
【0005】
特許文献2には周波数制御によるインピーダンス整合において可変周波数の周波数範囲を制限する技術が示され、基準周波数を含む予め定められた周波数範囲内で反射係数絶対値が最小となるように発振周波数を変更させる。発振周波数を変更させた場合、発振周波数の変化幅が狭い場合でも負荷のインピーダンスが大きく変動することがある。負荷インピーダンスが大きく変動すると負荷に印加される電圧が低下し、放電の維持が困難な状態となることがある。そのため、特許文献2では周波数制御の周波数範囲を制限し、供給電力の低下を抑制している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-197080号公報
【文献】特開2006-310245号公報(段落0073)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、周波数制御は発振周波数を変化させる制御形態である。この制御形態では、発振周波数の変化による大きなインピーダンス変化を抑制するために、周波数制御の可変周波数の周波数範囲を制限している。
【0008】
周波数制御の課題として、特許文献2は負荷インピーダンスの変動による供給電力の低下を挙げている。特許文献2では、可変周波数の周波数範囲を制限することにより供給電力の低下を抑制している。この場合には、周波数制御の可変周波数は周波数範囲内に限られ、周波数範囲外の周波数については周波数制御の対象外となる。
【0009】
そのため、インピーダンスの変動幅が大きくなる負荷条件では、制限された狭小な周波数範囲内での周波数制御によっては十分に制御できないという課題があり、より広い周波数範囲での周波数制御が望まれる。
【0010】
周波数制御では、高周波増幅器の出力特性の制約による出力の低下を補償するために高周波電源装置が備える高周波増幅器の出力を上昇させる。このとき、可変周波数の周波数範囲を拡大した場合には高周波増幅器の出力上昇がより大きくなるため、高周波フィルタ等の回路の構成要素であるコンデンサやコイルへの印加電圧や印加電流が上昇して定格値を超えるおそれがある。
【0011】
この高周波増幅器の出力上昇は、高周波増幅器のオープンループ特性が負荷インピーダンスに対してフラットではないために生じる。負荷によっては、高周波増幅器は出力指令値に対して出力値の上昇が不足する。周波数制御は、出力値の上昇不足を解消しようとして、高周波増幅器への指令値を更に上昇させる。
【0012】
図23は高周波増幅器のオープンループ特性と出力制御との関係を説明するための図である。なお、図23に示すオープンループ特性は概略を示すものであって実際の特性を示すものではない。横軸は周波数、縦軸は高周波増幅器の出力を示し、実線は高周波増幅器のオープンループ特性を示し、破線はフラットなオープンループ特性を示し、一点鎖線は高周波増幅器の出力の上限値を示している。
【0013】
高周波増幅器は周波数に依存したオープンループ特性を備える。そのため、フラットな出力特性を予定した出力指令値Pcommand1を用いると、出力値Poutはオープンループ特性により出力指令値Pcommand1よりも小さな値となる。そのため、高周波増幅器は、出力値Poutを上昇させるために、出力制御により出力指令値Pcommand1よりも大きな出力指令値Pcommand2を生成する。このとき、出力指令値Pcommand2は高周波増幅器の出力の上限値Plimitを超える場合がある。
【0014】
高周波増幅器の出力の上限値を超える出力指令値は、高周波増幅器やフィルタの回路素子を損傷するおそれがある。そのため、回路の構成要素を保護するために、高周波増幅器への出力指令値が上限を超えないようにすることが求められる。
【0015】
本発明は前記した問題点を解決し、周波数制御の可変周波数の周波数範囲内において、設定した負荷電力(LOAD電力)あるいは進行波電力(FWD電力)を負荷に供給すると共に、出力指令値を高周波増幅器が許容する出力指令の上限を超えないように抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は高周波電源装置の制御方法及び高周波電源装置の各形態を備え、可変周波数の周波数範囲において周波数制御を行うと共に、可変周波数の周波数範囲において、高周波増幅器の出力を制御する出力指令値の上限を出力リミット値に制限することにより、過剰な出力指令による高周波増幅器の損傷を防ぎ、反射波電力を低減する。
【0017】
(高周波電源装置の制御方法)
本発明の高周波電源装置の制御方法は、
(1)高周波電源装置の出力を出力指令に基づいて制御する出力制御と、
(2)直流―交流変換により高周波電力を出力する高周波増幅器と負荷との間のインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング制御を備え、出力制御とインピーダンスマッチング制御とを個別に独立して行う。本発明の制御により電力を供給する負荷対象は、例えばインピーダンス状態が変動するプラズマ負荷がある。
【0018】
インピーダンスマッチング制御は、
(A)高周波増幅器のフィードバック信号に基づいて制御周波数を変動させてインピーダンス整合を行う周波数制御と、
(B)周波数制御の周波数範囲を規定する周波数リミット値を定める周波数リミット値制御とを備え、
(C)周波数制御は、周波数リミット値制御で定められた周波数リミット値の周波数範囲内において高周波増幅器の周波数を制御することでインピーダンス整合を行う。
インピーダンスマッチング制御は、周波数制御の可変周波数の周波数範囲を制限し、周波数範囲を制限することにより、高周波増幅器が許容する出力指令の上限を超えないように出力指令値を抑制する。
【0019】
出力制御は、さらに、
(D)周波数範囲において、出力を制限する出力リミット値を定める出力リミット値制御を備え、
(E)出力リミット値制御で定められた出力リミット値を上限とする出力指令値により高周波増幅器の出力を制御する。
(F)出力制御とインピーダンスマッチング制御とは個別に独立して行う。
【0020】
本発明のインピーダンスマッチング制御は、インピーダンス整合を行う周波数制御において、出力指令値の上限を、出力リミット値制御で定められた出力リミット値により抑えることにより、出力指令値を高周波増幅器が許容する出力指令の上限を超えないように抑制する。
【0021】
(高周波電源装置)
本発明の高周波電源装置は、負荷に高周波電力を供給する高周波電源装置であり、高周波電力を出力する高周波増幅器と、
高周波電源装置の出力を出力制御する出力制御部と、
高周波増幅器の出力を周波数制御して負荷とのインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング制御の制御部とを備える。
【0022】
インピーダンスマッチング制御部は、
(a)高周波増幅器のフィードバック信号に基づく制御周波数により制御周波数を変動させてインピーダンス整合を行う周波数制御部と、
(b)周波数制御の周波数範囲を規定する周波数リミット値を定める周波数リミット値制御部と、
を備え、
周波数制御部は、
(c)周波数リミット値制御部で定められた周波数リミット値の周波数範囲内において高周波増幅器の周波数を制御する。
【0023】
制御部は、インピーダンス整合を行う周波数制御において、出力指令値の上限を、出力リミット値制御で定められた出力リミット値により抑えることにより、出力指令値を高周波増幅器が許容する出力指令の上限を超えないように抑制する。
【0024】
さらに、
出力制御部は、
(d)周波数範囲において出力制御部の出力制御値を制限する出力リミット値を定める出力リミット値制御を備え、
(e)出力リミット値制御で定められた出力リミット値を上限とする出力指令値により高周波増幅器の出力を制御する。
出力制御部とインピーダンスマッチング制御部とは、
(f)個別に独立して制御される。
【0025】
(リミット値制御:周波数リミット値制御及び出力リミット値制御)
周波数制御は、高周波電源装置と負荷とのインピーダンス整合状態を目指して制御周波数を変更する制御である。周波数制御において、インピーダンス整合時の周波数を基準周波数としたとき、制御周波数が基準周波数からのずれる程度が大きい程、出力指令値と出力フィードバック信号との差異が大きくなるため、この差異を解消しようとして出力指令値を増大させる。
【0026】
インピーダンス整合の周波数特性は、可変周波数の周波数範囲において、周波数範囲の周波数端側の出力リミット値は周波数中央側の出力リミット値よりも低い値となる。本発明は、周波数特性を有するインピーダンス整合の周波数制御に対してリミット制御を適用し、インピーダンス整合の周波数特性に対して、インピーダンスマッチングの周波数制御における周波数リミット値制御、及び出力制御における出力リミット値制御のリミット値制御を備える。
【0027】
周波数リミット値制御は、可変周波数の周波数範囲を制御する制御であり、出力リミット値制御は、増大した出力指令値が高周波増幅器の許容を超えないように抑制する制御であり、出力リミット値を定め、この出力リミット値を上限として出力指令値を制限する。
【0028】
リミット制御において、周波数リミット値制御による周波数範囲の制限、出力リミット値制御による出力指令値の制限により、周波数制御の過程で得られた制御周波数に対する出力指令値を制限し、出力指令値が高周波増幅器により許容される出力指令の上限を超えないように抑制する。
【0029】
(周波数リミット値制御)
周波数リミット値制御は、周波数制御によってインピーダンス整合を行うインピーダンスマッチング制御において、制御を行う制御周波数について周波数リミット値を定め、この周波数リミット値で規定される周波数範囲内で制御周波数を可変とする。
【0030】
(出力リミット値制御)
出力リミット値制御は、可変周波数の周波数範囲内において出力指令値を出力リミット値に制限する制御であり、出力指令値が出力リミット値を超える場合には、出力指令値を出力リミット値に制限し、出力リミット値を超える出力指令値が高周波増幅器に出力されないように制御する。
【0031】
出力リミット値は周波数特性を有し、出力リミット値が周波数範囲内において一定値である周波数特性の他、出力リミット値が周波数範囲内で異なる値をとる周波数特性としてもよい。例えば、可変周波数の周波数範囲において周波数端側の出力リミット値を周波数中央側の出力リミット値よりも低い値に設定する周波数特性とする。
【0032】
出力リミット値制御は、出力指令値の増大に伴って出力が上昇し、過剰な出力電圧により高周波増幅器等の回路素子の損傷を防ぐために、出力指令値の上限を出力リミット値に制限し、出力指令値が出力リミット値を超えて増大することを抑制する。出力指令値の周波数特性は、負荷のインピーダンスの周波数特性に依存するところが大きい。一般に出力指令値は、制御周波数が基準周波数からずれる程度が大きい程大きくなる特性があることから、制御周波数が基準周波数よりも高い周波数の出力指令値の周波数特性と、制御周波数が基準周波数よりも低い周波数の出力指令値の周波数特性とはほぼ対称な周波数特性を示す。
【0033】
このように、基準周波数に対して高周波数側と低周波数側の出力指令値の周波数特性が同様で対称性を有すると見なせる場合には、出力リミット値の周波数特性は、可変周波数の周波数範囲内の基準周波数に対して、高周波数側の周波数特性と低周波数側の周波数特性とを対称に設定することができる。
【0034】
また、可変周波数の周波数範囲において、制御周波数が基準周波数よりも高い周波数の出力指令値の周波数特性と、制御周波数が基準周波数よりも低い周波数の出力指令値の周波数特性とが異なる周波数特性となる場合がある。例えば、高周波増幅器のオープンループ特性が出力リミット値の周波数特性に大きく影響し、制御周波数が基準周波数に対して高周波数側と低周波数側の周波数特性が異なる場合がある。このような場合には、周波数特性は基準周波数に対して非対称となるため、出力リミット値の周波数特性を、可変周波数の周波数範囲内の基準周波数に対して非対称に設定することができる。
【0035】
出力リミット値は、高周波電源装置の出力形態に応じて複数の種類を設定することができ、周波数制御に用いる複数のフィードバック信号に対応する出力指令に対して定められる。
【0036】
(フィードバック信号)
周波数制御及びリミット制御において、高周波電源装置のフィードバック信号は、高周波電源装置の出力側で得られる高周波増幅器の信号を用いる。このフィードバック信号として進行波電力(FWD電力)、反射波電力(REF電圧)、負荷電力(LOAD電力)、及び出力電圧がある。一方、高周波電源装置の入力側の直流電源の信号として直流電圧、直流電流があり、また、高周波電源装置の電力供給に発生するものとして損失電力がある。負荷電力は、進行波電力から反射波電力を差し引くことにより取得することができる。
【0037】
進行波電力、反射波電力、負荷電力、及び出力電圧のフィードバック信号は、負荷インピーダンスの変動に応じて変化し、周波数制御はこれらフィードバック信号に基づいて高周波増幅器の出力の周波数を制御する。また、直流電圧、直流電流のフィードバック信号は、高周波増幅器に駆動電力を供給する直流電源の出力状態を表し、負荷インピーダンスの変動と同様に負荷に供給する供給電力の変動に影響を及ぼす。
【0038】
周波数制御はこれらフィードバック信号に基づいて高周波増幅器の出力の周波数を制御してインピーダンス整合を行い、負荷インピーダンスの変動や、直流電源の出力状態の変動の影響に対応して、高周波電源装置と負荷との間のインピーダンスを整合し、反射波電力を低減する。また、出力制御は、周波数制御と個別に行って電力供給が目標電力となるように制御する。目標電力は、例えば、進行波電力あるいは負荷電力とし、高周波電源装置の出力が進行波電力指令値あるいは負荷電圧指令値となるように制御する。
【0039】
進行波電力、反射波電力、及び出力電圧の各フィードバック信号に対応する出力リミット値は、それぞれ進行波電力リミット値、反射波電力リミット値、及び出力電圧リミット値である。また、直流電源の直流電圧、及び直流電流の各フィードバック信号に対応する出力リミット値は、それぞれ直流電圧ミット値、直流電流リミット値である。
【0040】
損失電力のフィードバック信号に対応する損失電力リミット値は、高周波電源装置から負荷への電力供給において発生する損失電力に対応する出力リミット値である。ここで、損失電力は高周波電源装置の電力供給において発生する損失分であり、供給電力から実効電力を減算した電力に相当し、高周波電源装置が供給する電力分から進行波電力と反射波電力とを減算することにより算出される。
【0041】
出力リミット値はこれら複数のフィードバック信号の少なくとも一つに対して定めることができ、複数のフィードバック信号に対する出力リミット値について任意の組み合わせにより定めてもよい。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、周波数制御の可変周波数の周波数範囲内において、設定した負荷電力(LOAD電力)あるいは進行波電力(FWD電力)を負荷に供給すると共に、出力指令値を高周波増幅器が許容する出力指令の上限を超えないように抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の高周波電源装置の概略を説明するための図である。
図2】出力電圧立ち上がり時の出力制御から周波数制御への移行を説明するためのフローチャートである。
図3】出力電圧立ち上がり時の出力制御から周波数制御への移行を説明するための電力変化状態を示す波形図である。
図4】本発明の高周波電源装置の概略構成を説明するための図である。
図5】周波数制御及び周波数リミット値制御によるインピーダンスマッチング制御のフローチャートである。
図6】周波数制御の出力周波数特性図である。
図7】反射電力制御のS2を説明するための図である。
図8】周波数リミット値制御を説明するための図である。
図9】FWDリミット値制御の動作状態を説明するための図である。
図10】FWDリミット値制御の動作状態を説明するための図である。
図11】周波数リミット値制御、リミット値制御のフローチャートである。
図12図10のフローチャートの工程を説明する周波数特性図である。
図13】FWDリミット値制御とREFリミット制御の切替えを示す図である。
図14】負荷電力(LOAD電力)の切替え(P1→P2)を説明するための図である。
図15】負荷電力(LOAD電力)の切替え(P1→P2)を説明するための電力変化図である。
図16】負荷電力(LOAD電力)の切替え(P1→P2)を説明するためのフローチャートである。
図17】負荷電力(LOAD電力)の切替え(P2→P1)を説明するための図である。
図18図17とはスタート周波数を異にした負荷電力(LOAD電力)の切替え(P2→P1)を説明するための図である。
図19】本発明の高周波電源装置の構成例を説明するための図である。
図20】FWDリミット値の周波数特性の例を説明するための図である。
図21】FWDリミット値の周波数特性の例を説明するための図である。
図22】FWDリミット値の周波数特性の例を説明するための図である。
図23】高周波増幅器のオープンループ特性と出力制御との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の高周波電源装置及び制御方法の概略を図1図5を用いて説明し、周波数制御及びリミット制御について図6図18を用いて説明し、高周波電源装置の構成例について図19を用いて説明し、進行波電力リミット値の周波数特性の例について図20~22を用いて説明する。なお、周波数制御及びリミット制御については、出力指令を負荷電力指令(LOAD電力指令)とした場合を例として説明する。
【0045】
図1は高周波電源装置の制御方法、及び高周波電源装置の概略図であり、図2,3は出力電圧立ち上がり時の出力制御から周波数制御への移行を説明するためのフローチャート、及び電力変化状態を示す波形図である。
【0046】
図4は本発明の高周波電源装置の概略構成を説明するための図であり、図5は周波数制御及び周波数リミット値制御によるインピーダンスマッチング制御のフローチャートである。
【0047】
図6図18で説明する周波数制御及びリミット制御は、負荷電力指令を出力指令とした場合の制御例であり、図6は周波数制御の出力周波数特性図であり、図7は反射電力制御のチューニングを説明するための図であり、図8は周波数リミット値制御を説明するための図であり、図9,10は出力リミット値制御(FWDリミット値制御(進行波電力リミット制御値制御))の動作状態を説明するための図であり、図11,12は周波数リミット値制御、出力リミット値制御のフローチャート、及び周波数特性図であり、図13は出力リミット値制御(FWDリミット値制御(進行波電力リミット制御値制御))とREFリミット制御(反射波電力リミット制御値制御)の切替えを示す図である。
【0048】
図14図18は負荷電力指令(LOAD電力指令)の切替えを説明するための図であり、図14図15,及び図16は負荷電力指令をP1からP2への切替え時での周波数―電力特性を説明する図、電力の時間変化を説明する図、及び切替えを説明するためのフローチャートである。図17,18は負荷電力指令をP2からP1への切替え時での周波数―電力特性を説明する図である。なお、図17のスタート周波数と図18のスタート周波数は異なる例である。図19は本発明の高周波電源装置の構成例を説明するための図である。図20は進行波電力リミット値の周波数特性の一例を示し、図21,22は進行波電力リミット値の周波数特性の他の例を示している。
【0049】
以下、図1を用いて本発明の高周波電源装置の制御方法、及び高周波電源装置の概略構成を説明する。
【0050】
(概略構成、概略制御)
(出力制御及びインピーダンスマッチング制御)
本発明の高周波電源装置の制御は、高周波電源装置の出力を設定出力に制御する出力制御と、高周波電源装置と負荷との間のインピーダンスを整合するインピーダンスマッチング制御とをそれぞれ個別に行う。図1は本発明の高周波電源装置の制御の概略を示している。
【0051】
図1において、出力制御は、高周波電源装置から負荷に供給する電力を指令値に従って所定電力となるように制御する。出力制御は、高周波電源装置から負荷に向けて送られる進行波電力(FWD電力)を制御する進行波電力制御(FWD制御)、あるいは負荷に供給される負荷電力(LOAD電力)を制御する負荷電力制御(LOAD制御)を適用することができる。なお、負荷電力(LOAD電力)は、高周波電源装置から負荷に向けて送られる進行波電力(FWD電力)から、負荷から高周波電源装置に戻る反射波電力(REF電力)を差し引いた電力(LOAD電力=FWD電力-REF電力)に相応する。以下では、出力制御として負荷電力(LOAD電力)制御について説明する。負荷電力(LOAD電力)制御は、進行波電力のフィードバック値(FWD-FB)から反射波のフィードバック値(REF-FB)を差し引いた負荷電力を負荷電力指令値(LOAD-CO)に向けて制御する。
【0052】
インピーダンスマッチング制御は、高周波電源装置と負荷との間のインピーダンスを整合する制御である。インピーダンス整合を行うことにより、負荷から高周波電源装置に戻る反射波電力(REF電力)を低減させ、高周波電源装置から負荷に供給する負荷電力(LOAD電力)の低減を抑制する。
【0053】
インピーダンスマッチング制御は、周波数制御により高周波増幅器の動作周波数を制御することでインピーダンスを整合する。インピーダンスマッチング制御において、周波数制御が行う周波数範囲を周波数リミット値制御(FLV制御:Frequency Limit Value制御)により定める。周波数リミット値制御は、進行波電力値(FWD電力値)に応じて周波数リミット値を求める。周波数リミット値は、周波数制御の周波数範囲を規定する上限周波数及び下限周波数である。周波数制御は、周波数リミット値制御で求めた周波数リミット値で定まる周波数範囲の周波数でインピーダンス整合を行う。本発明の高周波電源装置の制御方法は、進行波電力値(FWD電力値)から定まる周波数リミット値を随時求め、求めた周波数リミット値による周波数範囲を周波数制御に反映させる。
【0054】
一方、出力制御において、負荷への供給電力を許容電力内に納めるために、出力リミット制御値制御を行う。出力リミット制御値制御は、出力リミット値により供給電力を出力リミット値内に抑制する。出力制御は、進行波電力指令に基づく進行波電力制御、あるいは負荷電力指令に基づく負荷電力制御を適用することができる。
【0055】
進行波電力制御は、進行波電力フィードバック値(FWD-FB)が進行波電力指令値(FWD-CO)となるように高周波増幅器を駆動する出力指令値を制御する。負荷電力制御は、進行波電力フィードバック値(FWD-FB)から反射波電力フィードバック値(REF-FB)を差し引いた負荷電力(LOAD電力)が負荷電力指令値(LOAD-CO)となるように高周波増幅器を駆動する出力指令値を制御する。
【0056】
出力リミット値制御は、出力指令値の上限を出力リミット値に抑えることにより供給電力を出力リミット値内に抑制する。出力リミット値として、出力リミット値制御により求めたFWDリミット値、あるいはLOADリミット値を用いる。
【0057】
出力制御においてFWD制御を適用する場合には、進行波電力の上限をFWDリミット値制御で求めたFWDリミット値で抑制する。また、出力制御においてLOAD制御を適用する場合には、負荷電力の上限をLOADリミット値制御で求めたLOADリミット値で抑制する。
【0058】
出力制御として進行波電力制御を行う場合には、出力リミット値としてFWDリミット値制御で求めたFWDリミット値を用いる。出力制御のFWD制御は、進行波電力の上限をFWDリミット値制御で求めたFWDリミット値で抑制する。
【0059】
また、出力制御として負荷電力制御を行う場合には出力リミット値としてLOADリミット値制御で求めたLOADリミット値を用い、負荷電力指令値がLOADリミット値以下となるように抑制する他、LOAD指令値に反射波電力フィードバック(FER-FB)を加算して得られる進行波電力指令値がFWDリミット値以下となるように抑制する。
【0060】
この出力リミット制値により、出力指令値の上限を出力リミット値に抑えることにより供給電力を出力リミット値内に抑制する。
【0061】
(出力制御から周波数制御への移行)
図2,3のフローチャート及び波形図を用いて、高周波電源装置による出力制御及び可変周波数制御について説明する。図3は電力波形の一例を示している。
【0062】
本発明は、出力制御により負荷電力(LOAD電力)あるいは進行波電力(FWD電力)を負荷に供給すると共に、周波数制御により反射波電力を最小化する。出力制御において、出力電力の立ち上がり時や負荷状態の変化等で発生するインピーダンス不整合により、設定した負荷電力(LOAD電力)あるいは進行波電力(FWD電力)を出力するために出力指令値が増大する場合がある。本発明は、出力指令値を制限する出力リミット値を設定しておき、出力制御により出力指令値が増大して出力リミット値を超える場合には、出力リミット制御に移行し出力指令値の増大を制限する。
【0063】
この出力指令値を制限することにより、負荷電力(LOAD電力)あるいは進行波電力(FWD電力)の負荷への供給が制限されて負荷に対する電力供給が不十分となり、出力電力の立ち上が困難となる場合がある。このような状態を避けるために、出力リミット制御に至った場合には可変周波数制御を行って出力リミット状態を脱し、出力リミット状態を脱した出力非リミット状態において最小反射電力制御により反射波電力を最小化し、設定電力を負荷へ供給し、定常出力制御を行う。定常出力制御において、負荷変動等によるインピーダンス不整合により出力指令値が出力リミット値を超えた場合には出力リミット制御に再移行し、インピーダンスマッチング制御の周波数制御と出力制御とを個別に行う。なお、ここでは、リミット状態を脱する周波数制御を可変周波数制御で表し、インピーダンスマッチング制御の周波数制御については周波数制御で表す。
【0064】
図2の左側に示す出力制御は、出力リミット状態に至る状態を示している。出力制御により設定出力を制御し(A1)、出力が設定出力に到達する前に(A2)出力リミット状態となった場合には(A3,A5)には、可変周波数制御によって出力リミット状態から脱する制御を行う。
【0065】
図2の右側に示す可変周波数制御は、出力リミット状態から脱する状態を示している。可変周波数制御により出力リミット状態から脱し、最小反射電力制御で反射波電力を最小化した後、定常出力制御において出力制御とインピーダンスマッチング制御により設定電力の供給制御を行う。
【0066】
出力リミット状態として、例えば、反射波電力がリミット値を超えた反射波電力リミット状態、あるいは損失電力がリミット値を超えた損失電力リミット状態がある。この出力リミット状態において、制御周波数を行うsetpoint周波数を変更し(B1)、制御周波数を変化させる可変周波数制御を行う。なお、setpoint周波数は可変周波数制御を開始する任意に設定する周波数である(B2)。可変周波数制御により進行波電力のフィードバック値(FWD―FB)が低減し(B3)、進行波電力リミット値(FWD―Limit)を下回る状態とすることにより出力リミット状態からの脱出が行われる(B4)。出力リミット状態を脱した状態において、最小反射電力制御により反射波電力を最小化し、負荷への電力供給を増加させる(B5)。反射波電力を最小化により、負荷への電力供給が設定出力に到達した後(B6)、定常出力制御に移行し、出力制御とインピーダンスマッチング制御により設定電力の供給制御を行う。
【0067】
図3は出力制御(A)から可変周波数制御(B)への移行状態を示している。図3(a),(b),及び(c)は、それぞれ負荷電力(LOAD電力)、進行波電力のフィードバック値(FWD-FB)、及び反射波電力のフィードバック値(REF-FB)の各変化を示し、図3(d)は周波数制御の制御周波数ωを示している。なお、図3(a)において、一点鎖線は負荷電力指令値(LOAD-CO)を示し、実線はリミット制御を行う場合の負荷電力フィードバック値(LOAD-FB)を示し、破線はリミット制御を行わない場合の負荷電力フィードバック値(LOAD-FB)を示している。また、図3(b)において、長い破線は進行波電力リミット(FWD-Limit)を示し、実線はリミット制御を行う場合の進行波電力のフィードバック値(FWD-FB)を示し、短い破線はリミット制御を行わない場合の出力値(進行波電力値)を示している。
【0068】
t0からt1の区間は出力制御(A)の状態を示している。出力制御により進行波電力フィードバック値(FWD-FB)は増加し、反射波電力フィードバック値(REF-FB)も増加する。負荷電力(LOAD電力)は、進行波電力フィードバック値(FWD-FB)から反射波電力フィードバック値(REF-FB)を差し引いた値となる。
【0069】
進行波電力フィードバック値(FWD-FB)が進行波電力リミット(FWD-Limit)を超え、出力リミット状態となった時点(t1)で、出力制御(A)から可変周波数制御(B)に移行し、setpoint周波数に切替え(B1)、制御周波数を可変とする(B2)。可変周波数制御(B)では、進行波電力(FWD)は進行波電力リミット(FWD-Limit)による制限を受け、進行波電力リミット(FWD-Limit)に向かって減少する。図3(b)において、リミット制御が行われない場合には、出力値は短い破線で示す様に進行波電力リミット(FWD-Limit)電圧を超えて増加するが、リミット制御が行わる場合には、出力値は実線で示す様に進行波電力リミット(FWD-Limit)に向かって減少する。この状態においては、進行波電力リミット(FWD-Limit)を超える進行波電力(FWD)が負荷に向けて出力されるが、出力電力の立ち上がりの期間は高周波増幅器が許容し得る程度の比較的に短い時間幅であり、設定出力に達した後(B6)は定常出力制御に切替えて制御を行う。進行波電力(FWD)が進行波電力リミット(FWD-Limit)を下回ることで出力リミット制御を要さない状態となるため、リミット状態を脱出する(B4)。この後、最小反射電力制御により反射波電力を最小化し(B5)、負荷に供給するLOAD電力を設定出力であるLOAD電力指令値に向けて増加させる(B6)。
【0070】
本発明の高周波電源装置の制御によれば、出力制御とインピーダンスマッチング制御とを個別に行うと共に、インピーダンスマッチング制御を周波数リミット値制御により求めた周波数範囲で行い、出力制御を出力リミット値制御で求めた出力リミット値により上限電力を抑制する。
【0071】
本発明の高周波電源装置の制御によれば、出力制御として進行波電力(FWD電力)あるいは負荷電力(LOAD電力)を垂下させる垂下制御を行わないため、負荷へ供給する出力を低下させることなく、出力制御及びインピーダンスマットイング制御を行うことができる。
【0072】
(概略構成)
本発明の高周波電源装置の概略構成について図4を用いて説明する。図4において、高周波電源装置1は、電力供給源、高周波増幅器3、高周波センサ4、整合器5、及び制御器10を備え、高周波出力を負荷6に出力する。図4では、制御器10が行う出力制御として負荷電力制御(LOAD制御)又は進行波電力制御(FWD制御)の例を示している。
【0073】
高周波電源装置1の電力供給源は図4に示す構成例では直流電源2を示しているが、直流電源に限らず交流電源を用いた構成としてもよい。
【0074】
高周波増幅器3は、直流電源2の直流電力を高周波の交流電力に変換し高周波交流電力を生成する。電力供給源として交流電源を用いる構成では、交流電源の交流信号を高周波信号に周波数変換し、高周波交流電力を生成する。
【0075】
高周波センサ4は、高周波電源装置1から負荷6に出力される進行波電力FWD、及び負荷6から高周波電源装置1に戻る反射波電力REFを検出し、検出した進行波電力FWDのフィードバック値FWD-FB、及び反射波電力REFのフィードバック値REF-FBを制御器10に帰還する。進行波電力FWDと反射波電力REFとは、例えば、図示していない方向性結合器により分離されて検出される。
【0076】
整合器5は、高周波電源装置1と負荷6との間のインピーダンスを整合する回路である。整合器5は、例えば、整合器5の回路素子の値を設定することにより、定常動作時における高周波電源装置1のインピーダンスと負荷6のインピーダンスを整合させ、インピーダンス整合により、最大電力を供給する際に負荷6から高周波電源装置1に戻る反射波電力を最小化し、高周波増幅器3から負荷6に向かう進行波電力を最大化する。一般に、整合器5は固定コイル及び固定コンデンサを用いた固定マッチング回路で構成される。整合器を可燃容量や可変コイルを用いた可変マッチング回路で構成することができるが、可変マッチング回路を構成した場合には、整合器自体の他、制御回路やモータ等の駆動機構のコストが増加する。
【0077】
整合器5は定常時でのインピーダンス整合を行うが、定常時のインピーダンス整合状態から負荷変動等によってインピーダンス不整合状態となった場合には、高周波増幅器を周波数制御することによりインピーダンス不整合を解消する。
【0078】
制御器10は、高周波増幅器3に対して出力制御(FWD制御又はLOAD制御)、及びインピーダンスマッチング制御を行う。
【0079】
出力制御は、出力を目標値に到達させる出力指令値を生成し高周波増幅器3を制御する。進行波電力制御(FWD制御)の出力制御は、進行波電力目標値に向けて進行波電力FWDを制御する出力指令値を生成する。負荷電力制御(LOAD制御)の出力制御は、進行波電力フィードバック値から反射波電力フィードバックを差し引いた負荷電力が設定電力となるように、進行波電力FWDを制御する出力指令値を生成する。
【0080】
インピーダンスマッチング制御は、インピーダンス整合状態が定常状態からずれた際に出力の周波数を制御することによりインピーダンス整合を行う。なお、定常状態は、高周波電力源と負荷との間のインピーダンスが整合している状態であり、固定マッチング回路で構成された整合器5では、固定コイル及び固定コンデンサの値を定めることによりインピーダンスを整合する。
【0081】
制御器10は、インピーダンス不整合時において周波数制御により出力の制御周波数ωを変更してインピーダンス整合を行って反射波電力を低減すると共に、出力制御により高周波増幅器3が出力する出力値を制御する出力指令値を生成する。
【0082】
制御器10は、高周波センサ4で検出される進行波電力FWD及び反射波電力REFの各フィードバック値FWD-FB及びREF-FB、高周波電源装置1の出力端で検出される出力電圧Vppのフィードバック値Vpp-FB、直流電源2から高周波増幅器3に電力を供給する直流電圧Vdc及び直流電流Idcのフィードバック値Vdc-FB及びIdc-FBの各フィードバック値に基づいて、周波数制御部10Baにより制御周波数ωを生成し、出力制御部(FWD制御部又はLOAD制御部)により出力指令値を生成する。
【0083】
制御器10は、出力制御部10A、インピーダンスマッチング制御部10B、及び駆動制御部10Cを備え、インピーダンスマッチング制御の周波数制御と出力制御とを個別に独立して行う。
【0084】
(出力制御部10A)
出力制御部10Aは、出力制御を進行波電力制御(FWD制御)により行う場合には、出力制御部10AaとしてFWD制御部を備え、出力リミット値制御部10AbとしてFWDリミット値制御部を備える。出力制御を負荷電力制御(LOAD制御)により行う場合には、出力制御部10AaとしてLOAD制御部を備え、出力リミット値制御部10AbとしてLOADリミット値制御部を備える。
【0085】
出力制御部10Aaは、高周波センサ4で検出された進行波電力FWDのフィードバック値FWD-FB、反射波電力REFのフィードバック値REF-FB、及び出力目標値に基づいて出力指令値を生成する。
【0086】
出力制御部10Aaは、出力リミット値制御部10Abが生成する出力リミット値に基づいて出力指令値の上限を抑制する。
【0087】
出力リミット値制御部10Abは、基準周波数を含む可変周波数の周波数範囲内において、出力指令値の上限値を定める出力リミット値を周波数毎に備えておき、出力指令値が出力リミット値を超える場合に出力指令値を出力リミット値に置き換えることにより出力指令値の上限を制限する。出力リミット値は、周波数制御で求めた制御周波数がこの周波数範囲内にあるとき、そのときの制御周波数に対応する値を読み出される。
【0088】
出力制御を進行波電力制御(FWD制御)により行う場合には、出力リミット値制御部10Abは、基準周波数を含む可変周波数の周波数範囲内において、進行波電力指令値の上限値を定める進行波電力リミット値を周波数毎に備えておき、進行波電力指令値が進行波電力リミット値を超える場合に進行波電力指令値を進行波電力リミット値に置き換えることにより進行波電力指令値の上限を制限する。
【0089】
出力制御を負荷電力制御(LOAD制御)により行う場合には、出力リミット値制御部10Abは、基準周波数を含む可変周波数の周波数範囲内において、進行波電力指令値の上限値を定める進行波電力リミット値を周波数毎に備えておき、反射波電力が無い場合を仮定して負荷電力指令値を進行波電力指令値として扱い、この負荷電力指令値が進行波電力リミット値を超える場合に負荷電力指令値を進行波電力リミット値に置き換えることにより負荷電力指令値の上限を制限する。
【0090】
(インピーダンスマッチング制御部10B)
インピーダンスマッチング制御部10Bは、周波数制御部10Ba、及び周波数リミット値制御部10Bbを備える。
【0091】
周波数制御部10Baは、高周波センサ4で検出された進行波電力FWDのフィードバック値FWD-FB、反射波電力REFのフィードバック値REF-FB等の各フィードバック信号に基づいて高周波増幅器3の制御周波数ωを求める。以後、周波数制御を繰り返す際には、前回の周波数制御で得られた制御周波数を基準周波数ωoとし、この基準周波数ωoから周波数を変更することによりインピーダンスを整合する制御周波数ωを求める。
【0092】
周波数リミット値制御部10Bbは周波数リミット値を制御し、周波数制御部10Baがインピーダンス整合を行う際の制御周波数の周波数範囲の上限及び下限を定める周波数リミット値を求める。周波数リミット値制御部10Bbは、出力リミット値制御部10Abで生成した出力指令値の上限を出力リミット値に制限し、高周波増幅器3に対して過大な出力指令値が出力されることによって生じる高周波増幅器3の回路要素の損傷を制御する。
【0093】
(駆動制御部10C)
駆動制御部10Cは、出力制御部10Aの出力制御部10Aaで求めた出力指令値、及びインピーダンスマッチング制御部10Bの周波数制御部10Baで求めた制御周波数ωを出力指令値として、高周波増幅器3の増幅を制御する。
【0094】
なお、出力制御部10A、インピーダンスマッチング制御部10B、及び駆動制御部10Cは、必ずしも個々の回路による構成に限られるものではなく各制御部をDSPにより構成してもよい。さらに、10A,10B,及び10Cの各制御部は、出力制御(FWD制御、LOAD制御)、出力リミット値制御、周波数制御、周波数リミット値制御等の各制御機能を説明するための構成要素として示すものであり、出力リミット値制御及び周波数リミット値制御は、必ずしもそれぞれ出力制御部10A及びインピーダンスマッチング制御部10Bにおいて行う構成に限らず、例えば、出力リミット値制御及び周波数リミット値制御をインピーダンスマッチング制御部10Bの周波数制御と共に行う構成としてもよい。
【0095】
(周波数制御、及び周波数リミット値制御)
周波数制御、及び周波数リミット値制御について、図5のフローチャート、及び図6図10の各制御の周波数特性を用いて説明する。
【0096】
以下のフローチャートにおいて、出力値は、進行波電力FWD、反射波電力REF、出力電圧Vppの高周波電源装置の出力に係るフィードバック値、及び高周波電源装置の電源出力に係る電圧、電流の各フィードバック値を総称するものとして説明する。
【0097】
図5のフローチャートにおいて、周波数制御(S1,S2)と周波数リミット値制御(FLV(Frequency Limit Value)制御)(S11~S19)とは並列処理により行われる。
以下、周波数制御、周波数リミット値制御(FLV(Frequency Limit Value)制御)、及び出力リミット値制御について順に説明する。なお、図6、7は周波数制御中の反射電力制御(S2)を説明するための図であり、図8は周波数リミット値制御(FLV(Frequency Limit Value)制御)を説明するための図であり、図9、10は出力リミット値制御を説明するための図である。
【0098】
(周波数制御)
周波数制御は、高周波電源装置の出力周波数を周波数変更するによって、負荷のインピーダンス変動に対してインピーダンス整合を行うインピーダンスマッチング制御であり、負荷から高周波電源装置に戻る反射波電力を低減させ、高周波電源装置から負荷への電力供給を制御する。
【0099】
高周波電源装置と負荷との間に設けた整合器は、定常状態において負荷との間のインピーダンスを整合すべく設定される。また、高周波増幅器は、動作周波数を可変とすることにより、負荷のインピーダンス変動に対するインピーダンス整合を行う。電源の出力インピーダンスをZ、負荷のインピーダンスを含む整合器の特性インピーダンスをZ、高周波電源装置から見たときの負荷側の入力インピーダンスをZinとしたとき、反射係数ΓはΓ=(Z-Z)/(Z+Z)で表され、各インピーダンスZ,Z,Zin、及びΓは周波数ωの関数である。高周波電源装置は、負荷のインピーダンスの変動に対して、出力する高周波の周波数ωを可変とすることによって各インピーダンスを可変とし、反射係数Γを極小値に周波数制御する。
【0100】
周波数制御は、出力する高周波の周波数ωを可変することによるインピーダンス整合において、制御開始時の位相制御工程(S1)と、制御開始後の反射電力制御工程(S2)の2つの制御工程によって反射波電力を極小とする周波数の高周波を出力する。周波数制御によって得られた維持すると共に、そのときの反射係数Γ及び/又は反射量Wrを極小値として記憶する。
【0101】
さらに、位相制御工程と反射電力制御工程の2つの制御工程を繰り返すことによって、反射波電力を極小な状態に維持する。S1の位相制御工程及びS2の反射電力制御工程は、それぞれ以下の制御を行う。
【0102】
(位相制御工程S1)
位相制御工程は、制御開始時において、高周波電源装置の位相状態に基づいて、周波数変更の周波数を増加又は減少させる周波数の掃引方向を定める。
【0103】
周波数の掃引方向は、周波数制御において反射係数及び/又は反射量を低減させる周波数の増減方向である。位相制御工程では、制御開始時において周波数制御の掃引方向を定めることによって、反射波電力を低減させる周波数制御の処理時間を短縮することができる。
【0104】
位相制御工程は、反射係数Γの位相φが正位相であるか、あるいは負位相であるか位相状態によって、周波数の掃引方向を定める。正位相は遅れ負荷に相当し、負位相は進み負荷に相当する。
【0105】
位相制御工程において、高周波電源装置の出力端における電圧と電流の位相、あるいは高周波電源装置の出力端における反射波の位相と進行波の位相との位相差から位相状態を検出し(S1a)、検出した位相状態について正位相であるか、あるいは負位相であるかを判定する(S1b)。
【0106】
位相状態が正位相である場合には、遅れ負荷であると判断して周波数ωを増加させる周波数掃引を行い、初期周波数ω(0)に対して周波数ωを上昇させ周波数ω(1)を定める(S1c)。位相状態が負位相である場合には、進み負荷であると判断して周波数ωを減少させる周波数掃引を行い、初期周波数ω(0)に対して周波数ωを下降させ周波数ω(1)を定める(S1d)。
【0107】
位相制御工程で定めた周波数の掃引方向に基づいて周波数を増加あるいは減少させ、反射電力制御(S2)を行う。なお、図5に示す反射電力制御工程では、周波数ω(k)の反射係数Γ(k)について示している。
【0108】
位相制御S1において、負荷の状況によっては前記した位相状態と周波数の掃引方向との関係が逆の関係となる場合がある。このような場合には、S1e~S1hの工程で掃引方向を反転させる。
【0109】
S1cの工程又はS1dの工程で定めた掃引方向で周波数を変化させ、反射係数Γまたは反射量Wrを検出して(S1e)、反射係数Γまたは反射量Wrの増減を判定する(S1f)。反射係数Γまたは反射量Wrが増加している場合には、掃引方向が逆方向であったと判定して周波数ωの掃引方向を反転させる逆制御を行う(S1g)。一方、反射係数Γまたは反射量Wrが減少している場合には、掃引方向が正しい方向であったと判定して周波数ωの掃引方向を維持した状態で制御を行う(S1h)。
【0110】
(反射電力制御工程S2)
周波数制御の制御目標は反射係数Γの絶対値|Γ|を極小とすることであるが、反射係数Γの絶対値|Γ|は位相φが0°において必ずしも極小とはならない。そこで、位相制御工程によって反射係数Γの位相φを0°に向かって周波数掃引を開始させた後、反射電力制御によって反射係数の絶対値|Γ|が極小となるように周波数を制御する。
【0111】
反射電力制御工程S2は、位相制御工程S1で定めた掃引方向で周波数変更を開始した後、高周波電源装置の反射係数値、及び/又は反射量を制御完了条件として周波数変更の継続/停止を制御する。ここでは、完了制御完了条件として、周波数変更の制御により高周波電源装置の反射係数値、及び/又は反射量が極小となることを用い、これによって反射係数Γ/又は反射量が極小であるか否かを判定する。
【0112】
周波数制御の開始点が正位相である場合には、位相制御工程によって周波数を増加させる周波数制御によって位相0°に向けてシフトさせた後、反射電力制御によって反射係数Γ又は反射量が極小となる周波数を求める。また、周波数制御の開始点が負位相である場合には、位相制御工程によって周波数を減少させる周波数制御によって位相0°に向かわせた後、反射電力制御によって反射係数Γ又は反射量が極小となる周波数を求める。
【0113】
位相制御工程(S1)に続いて行う反射電力制御(S2)において、タイミング(サンプリング)kで周波数ω(k)を変えながら周波数掃引を行い(S2a)、各サンプリングのタイミングkの周波数ω(k)において反射係数Γ(k)を求める(S2b)。
【0114】
タイミング(k-1)で得た反射係数Γ(k-1)とタイミング(k)で得た反射係数Γ(k)とを比較する(S2c)。後のサンプリング(k)で得られたΓ(k)が1サンプリング前のサンプリング(k-1)で得られたΓ(k-1)よりも小さい場合(Γ(k-1)≧Γ(k))には、周波数掃引を続けることによってより小さな反射係数Γが得られると判断し、S2a,S2bの工程を繰り返す。
【0115】
一方、後のサンプリング(k)で得られたΓ(k)が1サンプリング前のサンプリング(k-1)で得られたΓ(k-1)を越えた場合(Γ(k-1)<Γ(k))には、周波数掃引を続けると反射係数Γは大きくなると判断し、次のサンプリング(k+1)でΓ(k+1)=Γ(k-1)として制御を完了する(S2d)。
【0116】
(再制御工程)
位相制御工程及び反射電力制御工程で求めた周波数を維持して出力を負荷に供給する。その後、負荷側等が変動するとインピーダンス整合が適正な状態から外れることになる。このような場合に、再制御工程によって位相制御工程S1と反射電力制御工程S2とを繰り返して、再度適切な周波数ωを求めて、インピーダンス整合を行う。再制御工程では、位相制御工程及び反射電力制御工程で得られた周波数における反射係数、反射量を極小値として記憶しておき、以後に得られる反射係数、反射量がしきい値を越えた場合には、再制御を行う。
【0117】
反射電力制御工程S2でnの制御周波数の遷移例を図6の周波数特性変化の一例に基づいて説明する。ここでは、出力指令値を負荷電力指令とした場合を例として説明する。なお、図6に示す周波数特性変化は模式的に示したものであり、実際の特性を示すものではない。
【0118】
(a)制御周波数ωo:
図6(a)はインピーダンスが整合した状態を示している。インピーダンスの整合状態では、高周波増幅器は反射係数Γが小さい基準周波数ωoにおいて高周波数波電力を出力する。インピーダンス整合状態の反射係数Γは小さいため、反射波電力のフィードバック値REF-FBは小さくなり、進行波電力指令値FWD-COは負荷電力指令値LOAD-COとほぼ同等と見なせる値となり、進行波電力のフィードバック値FWD-BFは負荷電力指令値LOAD-CO(進行波電力指令値FWD-CO)に近い値となる。以下、進行波電力と進行波電力フィードバック値とをFWD-BFで表し、反射波電力と反射波電力フィードバック値とをREF-BFで表す。進行波電力FWD-BFから反射波電力REF-BFを減算した電力(FWD-BF-REF-BF)は負荷電力であり、負荷に実効的に供給される実効電力である。
【0119】
(b)制御周波数ωo:
図6(b)は、基準周波数ωoを制御周波数とした状態において、インピーダンスが整合状態から不整合状態に遷移した状態を示している。負荷変動等によりインピーダンス整合状態から外れ、インピーダンス不整合状態となると反射係数Γの周波数特性が変化し、反射係数Γが最小となる周波数は基準周波数ωoから外れる。図6(b)では、反射係数Γの特性曲線が低周波数側に遷移した状態を示している。反射係数Γの遷移により基準周波数ωoでの反射係数Γが増加すると、反射波電力REF-FBが増加する。反射波電力REF-FBの増加に伴い、進行波電力フィードバック値FWD-FBが増加する。このとき、進行波電力フィードバック値FWD-FBは進行波電力閾値を超え、反射波電力フィードバック値REF-FBは反射波電力閾値を超える。
【0120】
(c)制御周波数ω1:
周波数制御により、制御周波数は基準周波数ωoから制御周波数ω1に変化する。図6(c)は、制御周波数ω1における周波数制御の状態を示している。制御周波数ω1の反射係数Γは基準周波数ωoの反射係数Γよりも小さくなり、反射波電力REF-FBが減少する。反射波電力REF-FBの減少に伴い、進行波電力フィードバック値FWD-FBも減少する。図6(c)に示す状態は、依然として、進行波電力フィードバック値FWD-FBが進行波電力閾値を超え、反射波電力フィードバック値REF-FBが反射波電力閾値を超えた状態にある。
【0121】
(d)制御周波数ω2:
周波数制御により、制御周波数は基準周波数ω1から制御周波数ω2に変化する。図6(d)は、制御周波数ω2における周波数制御の状態を示している。制御周波数ω2の反射係数Γは基準周波数ω1の反射係数Γよりもさらに小さくなり、反射波電力フィードバック値REF-FBも減少する。反射波電力フィードバック値REF-FBの減少に伴い、進行波電力フィードバック値FWD-FBもさらに減少する。図6(d)に示す状態において、反射波電力フィードバック値REF-FBは最小の状態になる。
【0122】
図7は反射電力制御(S2)中のS2a~S2dの工程を模式的に示している。
S2cの工程において、サンプリングのタイミングを異にして得られた反射係数Γ(k-1)と反射係数Γ(k)とを比較し、後のサンプリング(k)で得られたΓ(k)が1サンプリング前のサンプリング(k-1)で得られたΓ(k-1)を越えた場合(Γ(k-1)<Γ(k))には、周波数掃引を続けると反射係数Γは大きくなると判断し、S2dの工程において、次のサンプリング(k+1)でΓ(k+1)=Γ(k-1)として制御を完了する。図7中のチューニング周波数付近において、周波数のりターン箇所はこのS2dの工程を示している。
【0123】
(周波数リミット値制御)
次に、周波数リミット値制御(FLV制御;Frequency Limit Value制御)について説明する。以下、図5のフローチャート、及び図8の説明図に基づいて説明する。
【0124】
出力制御において、出力指令値の上限を制限する出力リミット状態にあるか否かを判定する。なお、出力リミット状態の判定は、出力制御を進行波電力制御で行う場合には、進行波電力フィードバック値(FWD-FB)と進行波電力リミット値(FWD-Limit)との比較に基づいて進行波電力リミット状態(FWDリミット状態)であるか否かを判定する。また、出力制御を負荷電力制御で行う場合には、進行波電力フィードバック値(FWD-FB)から反射波電力フィードバック値(REF-FB)を差し引いて得られる負荷電力フィードバック値(LOAD-FB)と負荷電力リミット値(LOAD-Limit)との比較に基づいて負荷電力リミット状態(LOADリミット状態)であるか否かを判定する(S11)。
【0125】
出力リミット状態にある場合には、周波数リミット値制御を更新して行うために、制御周波数ωを基準周波数ωoに向けてシフトし(S12)、出力リミット状態を解消してリセット状態とし、このときの制御周波数をωsとして格納する(S13)。制御周波数±ωsを周波数リミット値±ωLimitとして設定する(S14)。
【0126】
一方、出力リミット状態にない場合には、出力状態に応じて周波数リミット値ωLimitを設定する(S15~S19)。出力リミット状態において、高周波電源装置から出力値を取得する。出力値として、進行波電力のフィードバック値FWD-FB、反射波電力のフィードバック値REF-FB、出力電圧のフィードバック値Vpp-FB、直流電源の出力電圧、出力電流のフィードバック値Vdc-FB,Idc-FB、負荷電力フィードバック値(LOAD-FB)の中から選択したフィードバック値を用いることができる(S15)。
【0127】
取得した出力値を前回の周波数リミット値制御で取得した出力値と比較し、その差分の出力変化分Δを求め(S16)、予め定めておいた閾値と比較する。閾値は、出力値の変動の有無を判定するために設定する値であり、インピーダンス整合された状態において予想されるヒステリシスに基づいて定めることができる(S17)。
【0128】
出力値の出力変化分Δと閾値との比較工程において、出力変化分Δが閾値を超えない場合には、周波数リミット値を設定することなく制御周波数を維持する。一方、出力変化分Δが閾値以上の場合には制御周波数ωに対する周波数リミット値を設定する。周波数リミット値の設定は、周波数リミット値ωLimitを予め設定しておいたデフォルト値ωmaxに戻すことにより行い(S18)、ωmaxを用いて周波数リミット値±ωLimitを設定する(S19)。なお、S17の出力変化分Δと閾値の比較工程において、出力変化分Δと閾値とが等しい場合には、周波数リミット値の設定を有とするか無とするかの何れとしてもよい。
【0129】
図8は、周波数リミット値制御を説明するための図であり、図8(a)はS11において進行波電力リミット状態にある場合を示し、図8(b)はS11において進行波電力リミット状態にない場合を示しる。
【0130】
進行波電力リミット状態にある場合:
図8(a)において、斜線を付した周波数範囲は進行波電力リミット状態にある領域を示している。進行波電力リミット状態にある場合には、出力周波数ωが内側にシフトして(S12)進行波電力リミット状態を解除し、その時の周波数ωsを周波数リミット値ωLimitとする(S13、S14)。
【0131】
進行波電力リミット状態にない場合:
図8(b)において、斜線を付した周波数範囲は進行波電力リミット状態にない領域を示している。進行波電力リミット状態にない場合には、周波数リミット値ωLimitを予め設定しておいた最大周波数のωmaxに戻し(S18)、周波数ωmaxを周波数リミット値ωLimitとする(S19)。
【0132】
周波数制御において、反射電力制御を行う周波数ωは周波数リミット値で設定された周波数リミット値±ωLimitの周波数範囲において行う。
【0133】
一方、周波数制御と別に行われる出力制御(FWD制御、LOAD制御)は、出力リミット値制御(FWDリミット値制御、LOADリミット値制御)(S20)で設定された出力リミット値(FWDリミット値、LOADリミット値)の制限内で行われる。
【0134】
[周波数リミット値制御、出力リミット値制御、及び出力制御の動作例]
周波数リミット値制御、出力リミット値制御、及び出力制御の動作例を、図9,10の周波数特性変化の一例に基づいて説明する。ここでは、出力指令値を負荷電力指令値とし、進行波電力値を出力値として出力制御を行う例とし、このときの周波数リミット値制御、及び出力リミット値制御を示している。なお、図9,10に示す周波数特性変化は模式的に示したものであり、実際の周波数特性変化を示すものではない。
【0135】
図9(A),(B)は、基準周波数ωoにおいてインピーダンスが整合状態にある場合を示し、図10(A),(B)は基準周波数ωoにおいてインピーダンスが不整合状態にある場合を示している。なお、ここでは、図9図10において、進行波電力フィードバック値FWD-FBを“×”の印で示し、反射波電力フィードバック値REF-FBを“○”の印で示し、制御値を“△” の印で示し、進行波電力リミット値FWD-Limitを破線で示している。
【0136】
・インピーダンス整合時:
インピーダンス整合状態を示す図9(A),(B)において、図9(A)は出力値が進行波電力リミット値よりも大きい場合を示し、図9(B)は出力値が進行波電力リミット値未満の場合を示している。なお、図9(A),(B)に示す進行波電力リミット値の周波数特性は、周波数リミット値で定まる周波数範囲[ω-,ω+]において進行波電力リミット値FWD-Limitが等しい値に設定される例を示し、破線で示される進行波電力リミット値FWD-Limitは周波数範囲[ω-,ω+]の全範囲において同一の値である。
【0137】
(A)進行波電力値>進行波電力リミット値:
(A1)は、出力値である進行波電力値が進行波電力リミット値を超える状態を示している。出力(進行波電力(FWD))リミット値制御は、進行波電力FWD-FBが進行波電力リミット値FWD-Limitよりも大きい場合に、進行波電力リミット値FWD-Limitの値を制御値として、制御値に制限を加える。
(A2)は、制御値を進行波電力リミット値FWD-Limitに制限した状態を示している。制御値は、周波数範囲[ω-,ω+]の全範囲において破線で示される進行波電力リミット値FWD-Limitに制限される。
(A3)は、進行波電力リミット値FWD-Limitに制限された制御値に基づいて行われる出力制御(進行波電力制御)の状態を示している。
進行波電力(FWD)リミット制御で得られた制御値に基づいて出力制御が行われることにより、反射波電力フィードバック値REF-FBは反射波電力閾値以下に抑制される。図示する進行波電力フィードバック値FWD-FB及び反射波電力フィードバック値REF-FBは、周波数リミット値制御による周波数リミット値、及び進行波電力リミット値制御による進行波電力リミット値に制限された制御値に基づいて出力制御された一例を示している。
【0138】
(B)進行波電力≦進行波電力リミット値:
(B1)は、出力値である進行波電力値が進行波電力リミット値以下である状態を示している。なお、(B)は、(A)と同様に、破線で示される進行波電力リミット値FWD-Limit値は、周波数リミット値で定まる周波数範囲[ω-,ω+]の全範囲において同一の値に設定される。
(B2)は、進行波電力リミット値による制限が加えらない制御値の基づく制御状態を示している。出力(進行波電力(FWD))リミット値制御は、進行波電力FWD-FBが進行波電力リミット値FWD-Limitよりも小さい場合には制御値に制限を加える必要はない。制御値は、負荷電力指令値LOAD-COに基づいて定まる。
(B3)は、制御値に基づいて行われる出力制御(進行波電力制御)の状態を示している。出力制御は、負荷電力指令値LOAD-COによる制御値に基づいて行われる制御値は進行波電力リミット値FWD-Limit未満であるため、制御値に基づいて出力制御を行うことにより、反射波電力フィードバック値REF-FBは反射波電力閾値以下に抑制される。図示する進行波電力フィードバック値FWD-FB及び反射波電力フィードバック値REF-FBは、制御値に基づいて出力制御された一例を示している。なお、上記した進行波電力値と進行波電力リミット値との比較において、両者の値が等しい場合の選択は(A)又は(B)の何れで行ってもよい。
【0139】
・インピーダンス不整合時:
インピーダンス不整合状態を示す図10(A),(B)は、何れも進行波電力値が進行波電力リミット値よりも大きい場合を示している。図10(A)は周波数範囲内において進行波電力リミット値が同一の値に設定されるフラットな周波数特性例を示し、図10(B)の周波数特性例は、図10(A)の周波数範囲よりも広い周波数範囲内において進行波電力リミット値が異なる値で設定された傾斜特性を有した周波数特性例を示している。なお、図10の進行波電力及び反射波電力の周波数特性は、インピーダンス不整合により基準周波数ωoを最小とすることなく、高周波数から低周波数に向かって傾斜する周波数特性を有する例を示している。
【0140】
インピーダンス不整合状態では、反射係数Γはインピーダンス整合状態からずれ、反射係数Γの最小値はインピーダンス整合時の基準周波数ωoからずれる。そのため、反射波電力フィードバック値REF-FBは反射波電力閾値を超えた値となる。
【0141】
(A)進行波電力値>進行波電力リミット値:
破線で示す進行波電力リミット値FWDlimitは、進行波電力リミット値が設定される周波数範囲内[ω-,ω+]の全範囲において進行波電力リミット値FWDlimitが同一値である周波数特性例である。
(A1)は、出力値である進行波電力値が進行波電力リミット値を超える状態を示している。出力(進行波電力(FWD))リミット値制御は、進行波電力FWD-FBが進行波電力リミット値FWD-Limitよりも大きい場合に、進行波電力リミット値FWD-Limitの値を制御値として、制御値に制限を加える。
(A2)は、制御値を進行波電力リミット値FWD-Limitに制限した状態を示している。制御値は、周波数範囲[ω-,ω+]の全範囲において破線で示される進行波電力リミット値FWD-Limitに制限される。
(A3)は、進行波電力リミット値FWD-Limitに制限された制御値に基づいて行われる出力制御(進行波電力制御)の状態を示している。進行波電力(FWD)リミット制御で得られた制御値に基づいて出力制御が行われることにより、反射波電力フィードバック値REF-FBは反射波電力閾値を下回る方向に向かって低減し、反射波電力閾値以下に抑制される。図示する進行波電力フィードバック値FWD-FB及び反射波電力フィードバック値REF-FBは、周波数リミット値制御による周波数リミット値、及び進行波電力リミット値制御による進行波電力リミット値に制限された制御値に基づいて出力制御された一例を示している。
【0142】
(B)非フラットな周波数特性を有す進行波電力リミット値:
広い周波数範囲において出力リミット値制御を行うために、基準周波数ωo近傍の周波数については進行波電力リミット値を大きな値に設定し、基準周波数ωoからのずれが大きい周波数については進行波電力リミット値を小さな値に設定して、進行波電力リミット値を非フラットな周波数特性とする。(B)の非フラットな周波数特性例は、(A)の周波数範囲よりも広い周波数範囲内において進行波電力リミット値が異なる値で設定された傾斜特性を有した周波数特性例を示し、破線で示す進行波電力リミット値は進行波電力リミット値の周波数範囲[ω-,ω+]において、基準周波数ωoの近傍では同一値とし、その外側のω-,ω+に向かって減少する値である。
【0143】
(B1)は出力値である進行波電力値が進行波電力リミット値を超える状態を示している。出力(進行波電力(FWD))リミット値制御は、進行波電力FWD-FBが進行波電力リミット値FWD-Limitよりも大きい場合に、進行波電力リミット値FWD-Limitの値を制御値として、制御値に制限を加える。
(B1)に示す周波数特性では、周波数範囲が広いため、反射波電力REF-FBが反射波電力閾値(一点鎖線で示す)を超え、過剰な反射波電力が発生する場合がある。(B1)では高周波数域において反射波電力REF-FBは反射波電力閾値を超えている。
【0144】
(B2)は、制御値を進行波電力リミット値FWD-Limitに制限した状態を示している。制御値は、周波数範囲[ω-,ω+]の全範囲において破線で示される進行波電力リミット値FWD-Limitに制限される。(B2)において、制御値は、周波数範囲[ω-,ω+]の全範囲において破線で示される進行波電力リミット値FWD-Limitに制限される。周波数範囲[ω-,ω+]内において、周波数端側の進行波電力リミット値FWD-Limitは、周波数中央側の基準周波数ωo付近の進行波電力リミット値FWD-Limitよりも低く設定される。(B2)に示す例では、進行波電力リミット値FWD-Limitの値は、基準周波数ωoの近傍において一定の値に設定され、周波数端側に向かって漸次減少するように設定される。
【0145】
進行波電力リミット値FWD-Limitは、周波数範囲の周波数端側では小さな値に設定され、周波数範囲の周波数中央側では大きな値に設定される。周波数中央側で設定される進行波電力リミット値FWD-Limitは、(A)で示したフラットな周波数特性で設定される進行波電力リミット値FWD-Limitを適用することができる。進行波電力リミット値FWD-Limitの最大値は、例えば、高周波電源装置の定格値に所定のマージン分を加えた値を用いることができる。マージン分は、例えば、短時間であれば過大な電力供給に耐える許容値等、高周波電源装置の使用条件に応じて任意に設定することができる。
【0146】
(B3)は、進行波電力リミット値FWD-Limitに制限された制御値に基づいて行われる出力制御(進行波電力制御)の状態を示している。
【0147】
周波数制御を行う制御値は、周波数リミット値制御、及び進行波電力リミット値制御(FWDリミット制御)により進行波電力リミット値FWD-Limitに制限された制御値に基づいて行われる。周波数リミット値制御、及び進行波電力リミット値制御(FWDリミット制御)で得られた制御値に基づいて周波数制御を行うことにより、反射波電力フィードバック値REF-FBは反射波電力閾値を下回る方向に向かって低減する。
【0148】
周波数制御において進行波電力リミット値を非フラットな周波数特性とすることにより、制御値は、周波数端側では周波数中央側よりも大きく制限される。周波数端側での進行波電力リミット値の制限量を大きく設定することにより、基準周波数から大きく外れた制御周波数での制御値を大きく制限して制御値を低減し、これにより反射波電力フィードバック値REF-FBを抑制すると共に、リミット制御の周波数範囲を拡大することができる。
【0149】
周波数端側で進行波電力リミット値制御の制限量を大きく設定して、進行波電力の制御量を低く抑えることにより、(B)の周波数範囲を(A)に示す周波数範囲よりも広く設定した場合であっても、反射波電力フィードバック値REF-FBを反射波電力閾値未満に抑制することができる。
【0150】
[周波数リミット値制御の例]
次に、周波数リミット値制御として、出力指令が負荷電力指令である制御について、図11のフローチャート、及び図12の進行波電力リミット値制御の電力状態図を用いて説明する。ここでは、負荷電力指令値に基づいた進行波電力制御による出力制御を例として説明する。図11のフローチャートのS31~S39は周波数リミット値制御を示し、図5に示したフローチャートのS11~S20の周波数リミット値制御に対応する。また、図11のフローチャートのS41~S45はFWDリミット値制御を示し、図5に示したフローチャートのS20の周波数リミット値制御に対応する。
【0151】
負荷電力指令を出力指令とした場合の出力リミット値制御において、制御値に対して進行波電力リミット値が設定されているか否かのFWDリミット状態を判定する。なお、負荷電力は進行波電力から反射波電力を差し引いた電力であることから、進行波電力指令値が設定されている場合には、進行波電力から反射波電力を差し引いて得られる負荷電力指令値に基づいた指令値として得ることができる(S31)。
【0152】
(FWDリミット状態)
進行波電力リミット値が設定されたFWDリミット状態にある場合には、進行波電力リミット値の設定が外れるまでFWDリミット状態にある周波数を周波数範囲内の基準周波数ωoに向かってシフトし(S32)、進行波電力リミット状態を解消し、動作中の周波数ωsを格納する(S33)。(図12(a)のS32,S33)。格納した周波数ωsを周波数リミット値ωLimitとして設定する。これにより周波数範囲[-ωLimit,+ωLimit]が設定される(S34,図12(a)のS34)。その後、周波数制御、及びFWDリミット値制御を経てFWD制御に戻る。
【0153】
(FWD非リミット状態)
S31の工程においてFWDリミット動作状態にないと判定された場合には、S35~S39の工程により、周波数リミット値ωLimitの設定を行う。
【0154】
周波数制御の出力データを取得する。ここでは、高周波センサで検出した進行波電力のフィードバック値FWD-FB及び反射波電力のフィードバック値REF-FBから各モニタ値FWDmonitor(t1)及びREFmonitor(t1)を取得する。なお、各モニタ値は検出時の時刻(t1)の値とする(S35)。取得した進行波電力モニタ値FWDmonitor(t1)と前回の検出時刻(t0)で取得した進行波電力モニタ値FWDmonitor(t0)との差分ΔFWD(=FWDmonitor(t1)-FWDmonitor(t0))から進行波電力の変化分を求める(S36、図12(d)のS36)。
【0155】
S36で求めた進行波電力モニタ値FWDmonitorの変化分である差分ΔFWDの変動状態を判定する。変動状態の判定は、差分ΔFWDと閾値ΔFWDsetとを比較することにより行うことができる。閾値ΔFWDsetは、例えば、差分ΔFWDのヒステリシス分に基づいて定めることができる(S37、図12(d)のS37)。
【0156】
S37の判定において、差分ΔFWDが閾値ΔFWDset以上である場合には、進行波電力フィードバック値FWD-FBのヒステリシス分を超える変動があり、インピーダンスの整合状態に変化があったと判定し、周波数リミット値ωLimitを予め設定しておいたデフォルト値ωmaxに戻し(S38)、ωmaxに基づいて周波数リミット値±ωLimitを設定する(S39)。その後、周波数制御、及びFWDリミット値制御を経てFWD制御に戻る。
【0157】
一方、S37の判定において、差分ΔFWDが閾値ΔFWDset未満である場合には、進行波電力フィードバック値FWD-FBに変動が無い、あるいは進行波電力フィードバック値FWD-FBに変動が有った場合であっても、その変動分はヒステリシス分未満の大きさであると判定し、次に反射波電力REFについて同様の変動判定を行う。
【0158】
取得した反射波電力モニタ値REFmonitor(t1)と前回の検出時刻(t0)で取得した反射波電力モニタ値REFmonitor(t0)との変化分である差分ΔREF(=REFmonitor(t1)-REFmonitor(t0))を求める(S37a、図12(d)のS37)。
【0159】
S37aで求めた反射波電力モニタ値REFmonitorの時間変化の変化分である差分ΔREFの変動状態を判定する。判定は、差分ΔREFと閾値ΔREFsetとを比較することにより行うことができる。閾値ΔREFsetは、例えば、差分ΔREFのヒステリシス分に基づいて定めることができる(S37b、図12(d)のS37)。
【0160】
S37bの判定において、差分ΔREFが閾値ΔREFset以上である場合には、反射波電力REF-FBのヒステリシス分を超える変動があり、インピーダンスの整合状態に変化があったと判定し、S38以降の工程で周波数リミット値ωLimitを設定する。
【0161】
S37bの判定において、差分ΔREFが閾値ΔREFset未満である場合には、反射波電力REF-FBに変動が無い、あるいは反射波電力REF-FBに変動が有った場合であっても、その変動分はヒステリシス分未満の大きさであると判定し、進行波電力リミット値制御は不要であると判定し、その後、周波数制御、及びFWDリミット値制御を経てFWD制御に戻る(S37c)。
【0162】
(出力リミット値制御(FWDリミット値制御))
出力リミット値制御(FWDリミット値(進行波電力リミット値))を設定する制御はS41~S45により行われる。制御周波数は周波数範囲の周波数端の周波数±ωLimitからシフトする。制御周波数のシフトは、周波数範囲の高周波数端+ωLimitからの低周波数側に向かうシフト、あるいは周波数範囲の低周波数端-ωLimitからの高周波数側に向かうシフトの何れかを選択することができる(S41、図12(b),(e)のS41)。制御周波数のシフトにおいて、シフト時の周波数ωsについて設定された進行波電力リミット値FWD-limitを読み出す(S42、図12(b)のS42)。
【0163】
出力指令値はS42の工程で読み出した進行波電力リミット値FWD-Limitと比較される(S43)。S43の比較工程において、出力指令値が進行波電力リミット値FWD-Limit未満であるときには、進行波電力リミット値による制限は不要であるため、出力指令値を制御値とする(S44、図12(b)のS44)。一方、出力指令値が進行波電力リミット値FWD-limit以上であるときには、進行波電力リミット値による制限を行うために、進行波電力リミット値FWD-Limitを制御値として出力指令値の上限を制限する(S45、図12(b),(e)のS45)。
【0164】
(周波数制御)
図12(b),(c)及び図12(e),(f)は、FWDリミット状態にある場合及びFWDリミット状態にない場合について、周波数制御及びリミット制御を示している。なお、FWDリミット状態にある場合において、図12(b)は出力値≧進行波電力リミット値FWD-Limitの場合を示し、図12(c)は出力値<進行波電力リミット値FWD-Limitの場合を示している。また、FWDリミット状態にない場合において、図12(e)は出力値≧進行波電力リミット値FWD-Limitの場合を示し、図12(f)は出力値<進行波電力リミット値FWD-Limitの場合を示している。
【0165】
・FWDリミット状態にある場合:
図12(b)はFWDリミット状態であって、出力値≧進行波電力リミット値FWD-Limitの場合の周波数制御の一例を示している。S34で得られた周波数リミット値ωsから周波数制御を行う。この周波数ωsでの出力値は進行波電力制限値FWD-Limitを超えた値であるため(S43)、進行波電力制限値FWD-Limitを制限値として出力制御を行う(S45)。
図12(c)はFWDリミット状態であって、出力値<進行波電力リミット値FWD-Limitの場合の周波数制御の一例を示している。FWDリミット状態にある場合には、S34で得られた周波数リミット値ωsから周波数制御を行う。この周波数ωsでの出力値は進行波電力制限値FWD-Limitを超えない値であるため(S43)、進行波電力制限値FWD-Limitによる制限を加えることなく出力制御を行う(S44)。
【0166】
・FWDリミット状態にない場合:
図12(e)はFWDリミット状態にない場合であって、出力値≧進行波電力リミット値FWD-Limitの場合の周波数制御の一例を示している。S39で得られた周波数リミット値ωmaxから周波数制御を行う。この周波数制御で得られた出力値は進行波電力制限値FWD-Limitを超えた値であるため(S43)、進行波電力制限値FWD-Limitを制限値として出力制御を行う(S45)。
図12(f)はFWDリミット状態にない場合であって、出力値<進行波電力リミット値FWD-Limitの場合の周波数制御の一例を示している。S39で得られた周波数リミット値ωsから周波数制御を行う。この周波数制御で得られた出力値は進行波電力制限値FWD-Limitを超えない値であるため(S43)、進行波電力制限値FWD-Limitによる制限を加えることなく出力制御を行う(S44)。
【0167】
[FWDリミット値制御とREFリミット値制御の切替え]
次に、FWDリミット値制御とREFリミット値制御の切替えについて、図13を用いて説明する。
【0168】
出力値が進行波電力リミット値FWD-Limitよりも大きい場合には、FWDリミット値制御により進行波電力リミット値FWD-Limitを制御値として出力制御を行う。
【0169】
FWDリミット値制御により進行波電力リミット値FWD-Limitを制御値とする場合であっても、反射波電力が反射波電力リミット値REF-Limitよりも大きくなる場合には、REFリミット値制御により、制御値として進行波電力リミット値FWD-Limitに代えて反射波電力リミット値REF-Limitを用いて出力制御を行う。FWDリミット値制御からREFリミット値制御の切替えることにより、過剰な反射波電力により回路素子の損傷を抑制する。
【0170】
図13(a),(b)はFWDリミット値制御とREFリミット値制御との切替え状態の周波数特性、及びフローチャートを示している。
図13(a)において、一点鎖線で示す周波数よりも低い周波数範囲では、反射波電力REF-FBは反射波電力リミット値REF-Limitを超えない値であるため、進行波電力リミット値に制限した制御値を用いて出力リミット値制御を行う。一方、一点鎖線で示す周波数よりも高い周波数範囲では、反射波電力REF-FBは反射波電力リミット値REF-Limitを超える値であるため、反射波電力リミット値に制限した制御値を用いて反射波リミット値制御を行う。
【0171】
S41の工程において±ωLimitから周波数をシフトし、S42の工程において周波数ωsの進行波電力リミット値を読み出した後、負荷電力指令値LOAD-COと負荷電力制限値LOAD-Limitとを比較する(S51)。
【0172】
S51の工程において、負荷電力指令値LOAD-COが負荷電力制限値LOAD-Limit未満の場合には、S43以降の工程により制御値を設定する。S51の工程において、負荷電力指令値LOAD-COが負荷電力制限値LOAD-Limitよりも大きい場合には、反射波電力フィードバック値REF-FBと反射波電力制限値REF-Limitとを比較する(S52)。
【0173】
S52の工程において、反射波電力フィードバック値REF-FBが反射波電力制限値REF-Limit未満の場合には、S43以降の工程により制御値を設定する。S52の工程において、反射波電力フィードバック値REF-FBが反射波電力制限値REF-Limit未満よりも大きい場合には、反射波電力制限値REF-Limitを制御値として設定する(S53)。
【0174】
[負荷電力指令値の切替え]
次に、負荷電力指令値の切替えた場合の制御例について図14図18を用いて説明する。以下、3つの切替え例について示す。切替え例1は、負荷電力を小電力から大電力に切替える例であり、切替え例2,3は、負荷電力を大電力から小電力に切替える例である。切替え例2,3は制御を開始する周波数が異なる例を示している。なお、ここで、大電力と小電力の大小は電力の大きさを比較するための表記であり、電力値の絶対値について特定されるものではない。ここでは、小電力を200Wとし大電力を600Wとする例を示す。なお、図14,17,18において、横軸に示す%Freqは基準周波数からのずれの程度を表すものであり、基準周波数を0%Freqとし、基準周波数からずれた周波数分を基準周波数に対して%表示で示している。
【0175】
図14図18において、負荷電力200Wの出力特性をP1で示し、負荷電力600Wの出力特性をP2で示している。図において、FWD(P1)は出力特性P1の進行波電力特性を示し、FWD(P2)は出力特性P2の進行波電力特性を示し、REF(P1)は出力特性P1の反射波電力特性を示し、REF(P2)は出力特性P2の反射波電力特性を示し、FWDLimitは進行波電力リミット値を示し、REFLimitは反射波電力リミット値を示している。
【0176】
(切替え例1)
図14図16は切替え例1を示している。切替え例1では、負荷レシピP1から負荷レシピP2に切替える例であり、図14において、負荷レシピP1は丸文字1から丸文字3の順に従って制御され、丸文字4において負荷レシピP1から負荷レシピP2への切替えが行われ、負荷レシピP2は丸文字5から丸文字7の順に従って制御される。
【0177】
図16のフローチャートにおいて、負荷電力200Wの負荷レシピP1に従って周波数制御を開始する(S100)。周波数制御により周波数は反射波電力が低減する方向に変化する(S101)。
【0178】
反射波電力が最小に達したか否かを判定する(S102)。反射波電力が最小に達した場合には、負荷レシピP1による周波数制御を終了(S104)。反射波電力が最小に達する前に、進行波電力FWDが進行波電力リミット値FWD-Limitに達した場合においても(S103)、負荷レシピP1による周波数制御を終了(S104)。
【0179】
負荷レシピP1による周波数制御を終了した後、負荷レシピの変更する場合には(S105)、負荷レシピP1を負荷レシピP2に変更する(S106)。
負荷レシピP2において、周波数制御により周波数は反射波電力が低減する方向に変化する(S107)。
【0180】
反射波電力が最小に達したか否かを判定する(S108)。反射波電力が最小に達した場合には、負荷レシピP2による周波数制御を終了(S110)。反射波電力が最小に達する前に、進行波電力FWDが進行波電力リミット値FWD-Limitに達した場合においても(S109)、負荷レシピP1による周波数制御を終了(S110)。
【0181】
図15(a),(b),(c),(d)はそれぞれ負荷電力(LOAD電力)、進行波電力フィードバック値(FWD-FB)、反射波電力フィードバック値(REF-FB)、及び周波数ωの時間変化を示している。図14図15に示した丸文字1~丸文字7は同じ出力状態を示している。
【0182】
負荷レシピP1による周波数制御は、進行波電力フィードバック値FWD-FBが進行波電力リミット値FWD-Limitを超える周波数まで変化して周波数制御を終了し、負荷レシピP2への切替えが行われる。負荷レシピP2への切替えは、負荷レシピP2の進行波電力フィードバック値FWD-FBが進行波電力リミット値FWD-Limit以下となる周波数から開始される。
【0183】
(切替え例2)
図17は切替え例2を示している。切替え例2では、負荷レシピP2から負荷レシピP1に切替える例であり、負荷レシピP2は丸文字1から丸文字2の順に従って制御され、丸文字2から丸文字3の間において負荷レシピP2から負荷レシピP1への切替えが行われ、負荷レシピP1は丸文字3から丸文字5の順に従って制御される。なお、切替え例2において制御を開始する周波数は切替え例1の開始周波数と同じ例を示している。
【0184】
(切替え例3)
図18は切替え例3を示している。切替え例3は切替え例2と同様に、負荷レシピP2から負荷レシピP1に 切替える例であるが、制御を開始する周波数が異なっている。切替え例2では、負荷レシピP2は丸文字1から丸文字4の順に従って制御され、丸文字4から丸文字5の間において負荷レシピP2から負荷レシピP1への切替えが行われ、負荷レシピP1は丸文字5から丸文字7の順に従って制御される。
【0185】
切替え例3において、丸文字1の制御開始時の進行波電力フィードバック値FWD-FBは進行波電力リミット値FWD-Limitを超えた値であるため、進行波電力フィードバック値FWD-FBの特性と進行波電力リミット値FWD-Limitの特性が交差する丸文字2から周波数制御を開始する。
【0186】
[詳細構成例]
本発明の高周波電源装置の詳細な構成例を図19に基づいて説明する。高周波電源装置1は、直流電源2、高周波増幅器3、変圧器7、高周波フィルタ8、高周波センサ4、整合器5、及び制御器10を備え、出力を負荷6に供給する。
【0187】
直流電源2は、高周波増幅器3に直流電力を供給する電力供給源である。高周波増幅器3は、直流電源2から供給された直流電力を高周波に変換すると共に制御器10の制御値に基づいて増幅制御を行い、周波数及び出力を制御する。変圧器7は高周波増幅器3の高周波の電圧値を負荷6に応じた電圧となるように変圧する。高周波フィルタ8は変圧器7の出力の高周波をフィルタ処理し、負荷6が求める周波数成分を出力する。
【0188】
高周波センサ4は、高周波電源装置1から負荷6に向かう進行波電力FWD、及び負荷6で反射して高周波電源装置1に戻ってくる反射波電力REFを検出し、検出した進行波電力のフィードバック値FWD-FB及び反射波電力のフィードバック値REF-FBの各フィードバック値を制御器10に帰還する。高周波センサ4において、進行波電力FWDと反射波電力REFとの分離は、例えば、図示していない方向性結合器を用いることができる。
【0189】
整合器5は、高周波電源装置1と負荷6との間のインピーダンスを整合する。整合器5によるインピーダンス整合は、高周波電源装置1の定格出力時のインピーダンスと、負荷6の定常状態におけるインピーダンスとを整合する。高周波電源装置1の出力電圧Vppは整合器5の出力端の出力電圧により検出され、検出されたフィードバック値Vpp-FBが制御器10に帰還される。なお、出力電圧Vppは出力電圧の正負のピーク値間のピークtoピーク電圧である。
【0190】
制御器10は、出力制御部10AA、リミット制御部10AB、及び駆動制御部10Cを備える。なお、出力制御部10AAは図4の構成図に示した出力制御部10Aa及び周波数制御部10Baを含む構成である。また、リミット制御部10ABは図4の構成図に示した出力リミット値制御部10Ab及び周波数リミット値制御部10Bbを含む構成である。駆動制御部10Cは、出力制御部10Aaから出力制御に関わる制御値、及び周波数制御部10Baの周波数制御に関わる制御値を出力指令値として受け、高周波増幅器3を制御する。制御器10は、出力制御(FWD制御)と周波数制御とを個別に行う。
【0191】
制御器10において、周波数制御部10Baに相当する制御部分は、出力指令値(進行波電力指令値10a)及び各フィードバック信号(進行波電力フィードバック値FWD-FB及び反射波電力フィードバック値REF-FB)に基づいて周波数制御を行い、高周波電源装置1と負荷6との間のインピーダンス整合を行う制御周波数を求める。出力制御部10Aaに相当する制御部分は、出力指令値(進行波電力指令値10a)及び各フィードバック信号(進行波電力フィードバック値FWD-FB及び反射波電力フィードバック値REF-FB)に基づいて、FWD制御あるいはLOAD制御の出力制御を行う。この出力制御において、インピーダンスマッチング制御部10Bで得られた制御周波数を用いると共に、出力を制御周波数の周波数範囲内で定められた出力リミット値を用いて制限電力内への抑制を行う。出力制御を進行波電力で行う場合には、周波数リミット値制御で定められた周波数範囲内において定められたFWDリミット値を用いて行う。
【0192】
なお、出力制御部10AAにおいては、進行波電力指令値10aに基づく進行波電力制御と、負荷電力指令値(LOAD電力指令値)10bに基づく負荷電力制御をスイッチ10Aa-2により切替えて行うことができる。負荷電力制御は、演算部10Aa-1により進行波電力フィードバック値FWD-FBから反射波電力フィードバック値REF-FBを差し引いた値を負荷電力フィードバック値LOAD-FBとして用いる。
【0193】
リミット制御部10ABは、周波数リミット値制御により制御周波数の周波数範囲を制限し、進行波電力リミット値制御(FWDリミット値制御)により制御周波数における出力指令値の上限を進行波電力リミット値(FWDリミット値)に制限する。
【0194】
リミット制御部10ABは、進行波電力指令値を制限する進行波電力リミット値10d、反射波電力指令値を制限する反射波電力リミット値10e、出力電圧Vppを制限する出力電圧リミット値10c、直流電源の電圧を制限する直流(DC)電圧リミット値10f、直流電源の電流を制限する直流(DC)電流リミット値10g、損失電力を制限する損失(LOSS)電力リミット値10hの各リミット値を備える。また、出力制御部10AAは高周波電源装置が出力する進行波電力の目標値に相当する進行波電力指令値10a、負荷電力の目標値に相当する負荷電力指令値(LOAD電力指令値)10bを備える。
【0195】
各リミット値は、例えば、リミット制御部10ABが備えるメモリ内に格納しておく他、図示していない外部装置に格納しておき、当該外部装置から入力する構成としてもよい。
【0196】
リミット制御部10ABは、出力電圧のフィードバック値Vpp-FBと出力電圧リミット値10c(Vpp-limit)との差分を求める演算部10Ab-c、進行波電力のフィードバック値FWD-FBと進行波電力リミット値10dとの差分を求める演算部10Ab-d、及び各出力のフィードバック値と各リミット値との比較に基づいて出力指令値を出力する演算部10Ab-e~10Ab-hを備える。
【0197】
演算部10Ab-cは、出力電圧のフィードバック値Vpp-FBと出力電圧リミット値10c(Vpp-limit)とを比較し、出力電圧のフィードバック値Vpp-FBが出力電圧リミット値10c(Vpp-limit)未満である場合には、出力電圧指令値Vpp-COをそのまま出力し、出力電圧のフィードバック値Vpp-FBが出力電圧リミット値10c(Vpp-limit)を超えたときは、出力電圧指令値Vpp-COに代えて出力電圧リミット値10c(Vpp-limit)を出力電圧指令値Vpp-COとして出力する。
【0198】
演算部10Ab-dは、進行波電力のフィードバック値FWD-FBと進行波電力リミット値10dとの差分を求め、周波数制御部10Baはこの差分に基づいて周波数制御を行う。
【0199】
演算部10Ab-e~10Ab-hは、出力のフィードバック値が各リミット値未満である場合には、出力指令値をそのまま出力し、出力のフィードバック値が各リミット値を超えたときは、出力指令値に代えてリミット値を出力指令値として出力する。
【0200】
演算部10Ab-dは、進行波電力のフィードバック値FWD-FBと進行波電力リミット値10d(FWD-limit)とを比較し、進行波電力のフィードバック値FWD-FBが進行波電力リミット値10d(FWD-limit)未満である場合には、進行波電力指令値FWD-COをそのまま出力し、進行波電力のフィードバック値FWD-FBが進行波電力リミット値10d(FWD-limit)を超えたときは、進行波電力指令値FWD-COに代えて進行波電力リミット値10d(FWD-limit)を出力する。
【0201】
演算部10Ab-eは、反射波電力のフィードバック値REF-FBと反射波電力リミット値10e(REF-limit)とを比較し、反射波電力のフィードバック値REF-FBが反射波電力リミット値10e(REF-limit)未満である場合には、反射波電力指令値REF-COをそのまま出力し、反射波電力のフィードバック値REF-FBが反射波電力リミット値10e(REF-limit)を超えたときは、反射波電力指令値REF-COに代えて反射波電力リミット値10e(ERF-limit)を反射波電力指令値REF-COとして出力する。
【0202】
演算部10Ab-fは、直流電源電圧のフィードバック値Vdc-FBと直流(DC)電圧リミット値10f(Vdc-limit)とを比較し、直流(DC)電圧のフィードバック値Vdc-FBが直流(DC)電圧リミット値10f(Vdc-limit)未満である場合には、直流(DC)電圧指令値Vdc-COをそのまま出力し、直流(DC)電圧のフィードバック値Vdc-FBが直流電圧リミット値10f(Vdc-limit)を超えたときは、直流電圧指令値Vdc-COに代えて直流電圧リミット値10f(Vdc-limit)を直流電圧指令値Vdc-COとして出力する。
【0203】
演算部10Ab-gは、直流電源電流のフィードバック値Idc-FBと直流電流リミット値10g(Idc-limit)とを比較し、直流電源電流のフィードバック値Idc-FBが直流電流リミット値10g(Idc-limit)未満である場合には、直流電流指令値Idc-COをそのまま出力し、直流電源電流のフィードバック値Idc-FBが直流電流リミット値10g(Idc-limit)を超えたときは、直流電流指令値Idc-COに代えて直流電流リミット値10g(Idc-limit)を直流電流指令値Idc-COとして出力する。
【0204】
演算部10Ab-hは、損失電力のフィードバック値Loss-FBと損失電力リミット値10h(Loss-limit)とを比較し、損失電力のフィードバック値Loss-FBが損失電力リミット値10h(Loss-limit)未満である場合には、損失電力指令値Loss-COをそのまま出力し、損失電力のフィードバック値Loss-FBが損失電力リミット値10h(Loss-limit)を超えたときは、損失電力指令値Loss-COに代えて損失電力リミット値10h(Loss-limit)を損失電力指令値Loss-COとして出力する。
【0205】
損失電力のフィードバック信号Loss-FBに対応する損失電力リミット値Loss-limitは、高周波電源装置から負荷への電力供給において発生する損失電力に対応するリミット値である。損失電力は高周波電源装置の電力供給において発生する損失分であり、供給電力から実効電力を減算した電力に相当し、高周波電源装置が供給する電力分から進行波電力と反射波電力とを減算することにより算出される。演算部10Ab-2は、直流電源電圧のフィードバック値Vdc-FBと直流電源電流のフィードバック値Idc-FBとの積により直流電源電力のフィードバック値Pdc-FBを演算する。演算部10Ab-3は、直流電源電力のフィードバック値Pdc-FBから進行波電力のフィ-ドバック値FWD-FBを減算し、反射波電力のフィ-ドバック値REF-FBを加算する演算により損失電力Lossを求める。
【0206】
制御器10は、リミット制御部10ABにより上限を制限された出力リミット値を用いることにより、高周波増幅器3に対して過大な出力指令値が出力されることによって生じる高周波増幅器3の回路要素の損傷をよく制御する。
【0207】
駆動制御部10Cは、前制御周期で求めた制御値を保持するホールド回路10Ca、ホールド回路10Caに保持された前制御周期の制御値と、今制御周期の制御値との差分を求め、この誤差分を増幅する制御値誤差増幅回路10Cb、制御値誤差増幅回路10Cbで信号増幅した信号に基づいて、高周波増幅器3を駆動する駆動信号を生成する駆動回路10Ccを備える。駆動制御部10Cは、周波数制御部10Ba(図4)で求めた制御周波数、及びリミット制御部10ABで上限を制限した出力指令値を制御値として、高周波増幅器3の増幅を制御する。
【0208】
[進行波電力リミット例]
以下、出力リミット値の例について図20~22を用いて説明する。出力リミット値は基準周波数を含む周波数範囲内に設定され、周波数特性は周波数範囲内の基準周波数に対して対称又は非対称に設定することができる。
【0209】
図20は出力リミット値の一例を示している。ここでは、周波数範囲として[-20%~+20%]としている。出力リミット値の周波数特性は定在波比(VSWR)に依存する。反射係数が“0”は定在波比が“1”に相当し、このときの1の出力リミット値の周波数特性は図中の太い実線で表され、0%の周波数において進行波電力リミット値FWD-Limitを頂点として周波数範囲の端部に向かって直線状にリミット値が低減する。
【0210】
図中の破線及び一点鎖線で示された出力リミット値の周波数特性は、それぞれ定在波比(VSWR)が1.1、2、3,5,10の例であり、定在波比(VSWR)が大きいほど出力リミット値は小さな値とすることにより反射波電力の影響を低減する。また、横軸に示す%Freqは、図13,16,17で示したものと同様に基準周波数からのずれの程度を%表示で示している。
【0211】
(対称な周波数特性の例)
基準周波数に対して高周波数側と低周波数側の出力指令値の周波数特性が同様と見なせる場合には、の周波数特性は周波数範囲内の基準周波数に対して対称に設定することができる。
【0212】
図21は対称な周波数特性の例であり、何れの例も基準周波数ωoを中心として高周波数側と低周波数側に等しい周波数幅の周波数範囲を有すると共に、対称な周波数特性を有する。
【0213】
(a)の例は、周波数範囲内において、基準周波数ωoの両側に一定値の出力リミット値を有する範囲と、周波数端ω-及び周波数端ω+に向かって一定の傾斜で出力リミット値が減少する。基準周波数ωoの近傍の出力リミット値は、定格出力に基づいて定めることができる。例えば、高周波電源装置の定格値に所定のマージン分を加えた値を用いることができる。マージン分は、例えば、短時間であれば過大な電力供給に耐える許容値等、高周波電源装置の使用条件に応じて任意に設定することができる。
【0214】
(b)の例は、基準周波数ωoを中心から周波数端ω-及び周波数端ω+に向かって一定の傾斜で出力リミット値が減少する。基準周波数ωoの出力リミット値は、定格出力に基づいて定めることができる。例えば、高周波電源装置の定格値に所定のマージン分を加えた値を用いることができる。(b)の例のマージン分は(a)の例のマージン分よりも大きく設定することができる。図19周波数特性は(a),(b)の例を示している。
【0215】
(c),(d),(e)の例は、周波数範囲内において、基準周波数ωoの両側に一定値の出力リミット値を有する範囲と、周波数端ω-及び周波数端ω+に向かって所定の曲線での値が減少する。
【0216】
基準周波数ωoの近傍の出力リミット値は、(a)の例と同様に、定格出力に基づいて定めることができる。減少曲線は、例えば、高周波増幅器のオープンループ特性に対応した減少特性とすることができる。(c),(d)の例は、周波数端に向かって凹の曲線状に減少し、基準周波数ωo側の減少率が大きく、周波数端ω-及び周波数端ω+側の減少率が小さい例であり、(c)の例は減少特性が緩慢な例を示し、(d)の例は減少特性が急峻な例を示している。
【0217】
(e)の例は、周波数端に向かって凸の曲線状に減少する例である。
【0218】
(f)の例は、基準周波数ωoを中心として高周波数側と低周波数側に等しい周波数幅の周波数範囲を有し、この周波数範囲内で一定の出力リミット値を備える。
【0219】
(非対称な周波数特性の例)
制御周波数が基準周波数よりも高い周波数の出力指令値の周波数特性と、制御周波数が基準周波数よりも低い周波数の出力指令値の周波数特性とが異なる周波数特性となる場合がある。出力指令値の周波数特性が基準周波数に対して非対称であるときには、出力リミット値の周波数特性は周波数範囲内の基準周波数に対して非対称に設定することができる。
【0220】
例えば、高周波増幅器のオープンループ特性が周波数特性に大きく影響し、制御周波数が基準周波数に対して高周波数側と低周波数側の周波数特性が異なる場合には、オープンループ特性に応じての周波数特性を周波数範囲内の基準周波数に対して非対称に設定する。
【0221】
図22において、以下の(a)~(d)は、高周波増幅器のオープンループ特性と、このオープンループ特性に対応する出力リミット値の例を示している。
【0222】
図22(a)の高周波増幅器のオープンループ特性は、カットオフ周波数から高周波側に向かって直線状に進行波電力が減少する。(a)の出力リミット値は、基準周波数ωoから低周波数側では一定値とし、基準周波数ωoから高周波数側では、周波数端ω+に向かって一定の傾斜で出力リミット値が減少する。
【0223】
図22(b),(c)の高周波増幅器のオープンループ特性は、カットオフ周波数から高周波側に向かって凹の曲線状に進行波電力が減少する。(b),(c)の出力リミット値は、基準周波数ωoから低周波数側では一定値とし、基準周波数ωoから高周波数側では、周波数端ω+に向かって凹の曲線状に出力リミット値が減少する。(b)の例は減少特性が緩慢な例を示し、(c)の例は減少特性が急峻である例を示している。
【0224】
図22(d)の高周波増幅器のオープンループ特性は、カットオフ周波数から高周波側に向かって凸の曲線状に進行波電力が減少する。(d)の出力リミット値は、基準周波数ωoから低周波数側では一定値とし、基準周波数ωoから高周波数側では、周波数端ω+に向かって凸の曲線状に出力リミット値が減少する。
【0225】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る高周波電源の一例であり、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明の高周波電源装置は、プラズマ発生装置に電力を供給する電源として適用する他、パルスレーザ励起、放電加工機等の負荷へパルス出力を供給する電源装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0227】
1 高周波電源装置
2 直流電源
3 高周波増幅器
4 高周波センサ
5 整合器
6 負荷
7 変圧器
8 高周波フィルタ
10 制御器
10A 出力制御部
10B インピーダンスマッチング制御部
10C 駆動制御部
10AA 出力制御部
10AB リミット制御部
10Aa 出力制御部
10Ab 出力リミット値制御部
10Ba 周波数制御部
10Bb 周波数リミット値制御部
10Ca ホールド回路
10Cb 制御値誤差増幅回路
10Cc 駆動回路
10Ab-c~10Ab-h 演算部
10Ab-2、10Ab-3 演算部
10a 進行波電力指令値
10b 負荷電力指令値
10c 出力(Vpp)電圧リミット値
10d 進行波電力リミット値
10e 反射波電力リミット値
10f 直流電圧リミット値
10g 直流電流リミット値
10h 損失電力リミット値
FWD 進行波電力
FWD-CO 進行波電力指令値
FWD-BF 進行波電力フィードバック値
FWD-limit 進行波電力リミット値
FWDmonitor 進行波電力モニタ値
Idc-CO 直流電流指令値
Idc-FB 直流電流フィードバック値
Loss-limit 損失電力リミット値
Loss- CO 負荷電力指令値
Loss 損失電力
Pcommand1 出力指令値
Pcommand2 出力指令値
Pdc-FB 直流電源電力のフィードバック値
Plimit 上限値
Pout 出力
REF 反射波電力
REF-CO 反射波電力指令値
REF-BF 反射波電力フィードバック値
REFmonitor 反射波電力モニタ値
Vdc-CO 直流電圧指令値
Vdc-FB 直流電圧フィードバック値
Vpp 出力電圧
Vpp-CO 出力電圧指令値
Vpp-FB 出力電圧フィードバック値
Γ 反射係数
Δ 差分
Δhigh 所定周波数幅分
Δlow 所定周波数幅分
ΔFWD 差分
ΔFWDset 閾値
ΔREF 差分
ΔREFset 閾値
ω 制御周波数
ωo 基準周波数
図1
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