(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】エラー判定方法、加湿装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
F24F6/00 F
F24F6/00 D
(21)【出願番号】P 2020044958
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 長
(72)【発明者】
【氏名】井浦 真
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-117895(JP,A)
【文献】特開2008-180470(JP,A)
【文献】特開2003-311271(JP,A)
【文献】特開2007-181839(JP,A)
【文献】特開平10-080687(JP,A)
【文献】特開昭63-039689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と、
当該給水管の途中に少なくとも2つ以上直列に配置され所定の定電流を通電することで金属イオンを水中へ溶出する電極と、
当該電極の残存率を推定する残存率推定手段と、
前記給水管内の水が流動する時、最も下流側に配置された前記電極である下流側電極にのみ通電し、前記残存率推定手段で推定された前記下流側電極の残存率が所定値以下と推定されれば、前記下流側電極への通電を停止すると共に、前記下流側電極よりも上流側に配置された前記電極である上流側電極にのみ通電する制御部と、を備えた金属イオン溶出装置のエラー判定方法であって、
前記制御部は、
前記給水管内の水が流動する時で前記下流側電極にのみ通電する前に各前記電極に通電し、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも高ければ、
前記下流側電極の方が前記上流側電極よりも消耗するはずが、前記上流側電極の方が前記下流側電極よりも消耗しているというエラー判定をすることを特徴としたエラー判定方法。
【請求項2】
前記制御部は、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも低く、かつ、前記下流側電極の残存率よりも前記上流側電極の残存率の方が低いと推定されれば、
前記電極の残存率の情報が誤っているというエラー判定をすることを特徴とした請求項1記載のエラー判定方法。
【請求項3】
器具本体内に設置され水を貯める貯水室と、
当該貯水室内に設置され加湿空気を発生させる加湿空気発生手段と、
当該加湿空気発生手段で発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する送風ファンと、
前記貯水室と接続した給水管と、
当該給水管の途中に少なくとも2つ以上直列に配置され所定の定電流を通電することで金属イオンを水中へ溶出する電極と、
当該電極の残存率を推定する残存率推定手段と、
前記貯水タンク内への給水時、最も下流側に配置された前記電極である下流側電極にのみ通電し、前記残存率推定手段で推定された前記下流側電極の残存率が所定値以下と推定されれば、前記下流側電極への通電を停止すると共に、前記下流側電極よりも上流側に配置された前記電極である上流側電極にのみ通電する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記給水管内の水が流動する時で前記下流側電極にのみ通電する前に各前記電極に通電し、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも高ければ、
前記下流側電極の方が前記上流側電極よりも消耗するはずが、前記上流側電極の方が前記下流側電極よりも消耗しているというエラー判定をすることを特徴とした加湿装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも低く、かつ、前記下流側電極の残存率よりも前記上流側電極の残存率の方が低いと推定されれば、
前記電極の残存率の情報が誤っているというエラー判定をすることを特徴とした請求項3記載の加湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給水管の途中に複数の電極を直列に配置した加湿装置、及びエラー判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、給水管の途中に対向する2枚の銀プレートで構成された電極が配置され、給水管内の水が流動する時に電極へ所定の定電流が通電されることで、電極から金属イオンを溶出するものがあり、電極への通電時間、及び電極に印加される電圧値に基づいて電極の残存率を把握し、電極の消耗が進み残存率が所定値以下に達したと判定したら、報知して電極の交換を促すものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、電極の交換頻度を下げるため給水管の途中に複数の電極を直列に配置し、下流側の電極にのみ通電して残存率が所定値以下になった後、上流側の電極にのみ通電するよう、通電対象の電極を切り替える内容が考えられるが、電極の交換が実施された時、誤って給水管の上流側に下流側よりも残存率が低い電極が配置されると、
給水管内の水流で消耗した上流側の電極を構成する銀プレートが破損して下流側に流れ、給水管の下流側に設置された電極に接触してショートが発生する虞があることから、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は給水管の上流側に下流側よりも残存率が低い電極が配置されたかを判定可能なエラー判定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、給水管と、当該給水管の途中に少なくとも2つ以上直列に配置され所定の定電流を通電することで金属イオンを水中へ溶出する電極と、当該電極の残存率を推定する残存率推定手段と、前記給水管内の水が流動する時、最も下流側に配置された前記電極である下流側電極にのみ通電し、前記残存率推定手段で推定された前記下流側電極の残存率が所定値以下と推定されれば、前記下流側電極への通電を停止すると共に、前記下流側電極よりも上流側に配置された前記電極である上流側電極にのみ通電する制御部と、を備えた金属イオン溶出装置のエラー判定方法であって、前記制御部は、前記給水管内の水が流動する時で前記下流側電極にのみ通電する前に各前記電極に通電し、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも高ければ、前記下流側電極の方が前記上流側電極よりも消耗するはずが、前記上流側電極の方が前記下流側電極よりも消耗しているというエラー判定をすることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2では、前記制御部は、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも低く、かつ、前記下流側電極の残存率よりも前記上流側電極の残存率の方が低いと推定されれば、前記電極の残存率の情報が誤っているというエラー判定をすることを特徴としている。
【0008】
また、請求項3では、器具本体内に設置され水を貯める貯水室と、当該貯水室内に設置され加湿空気を発生させる加湿空気発生手段と、当該加湿空気発生手段で発生した加湿空気を前記器具本体外へ送風する送風ファンと、前記貯水室と接続した給水管と、当該給水管の途中に少なくとも2つ以上直列に配置され所定の定電流を通電することで金属イオンを水中へ溶出する電極と、当該電極の残存率を推定する残存率推定手段と、前記貯水タンク内への給水時、最も下流側に配置された前記電極である下流側電極にのみ通電し、前記残存率推定手段で推定された前記下流側電極の残存率が所定値以下と推定されれば、前記下流側電極への通電を停止すると共に、前記下流側電極よりも上流側に配置された前記電極である上流側電極にのみ通電する制御部と、を備え、前記制御部は、前記給水管内の水が流動する時で前記下流側電極にのみ通電する前に各前記電極に通電し、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも高ければ、前記下流側電極の方が前記上流側電極よりも消耗するはずが、前記上流側電極の方が前記下流側電極よりも消耗しているというエラー判定をすることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4では、前記制御部は、前記上流側電極に印加される電圧値が前記下流側電極に印加される電圧値よりも低く、かつ、前記下流側電極の残存率よりも前記上流側電極の残存率の方が低いと推定されれば、前記電極の残存率の情報が誤っているというエラー判定をすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、給水管の上流側、下流側にそれぞれ配置された各電極に通電し、上流側電極に印加される電圧値が、下流側電極に印加される電圧値よりも高ければ、エラー判定をするので、電極の交換が実施された時、誤って給水管の上流側に下流側よりも残存率が低い電極が配置されたまま電極に通電し続けることを阻止できるため、上流側の電極が破損し下流側の電極と接触してショートが発生する事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図である。
【
図3】同実施形態のイオン溶出ユニットを説明する正面視断面図である。
【
図6】同実施形態の運転開始から終了までの動作を説明するフローチャートである。
【
図7】同実施形態の通電する電極の設定動作を説明するフローチャートである。
【
図8】同実施形態のエラー判定動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の一実施形態におけるイオン溶出ユニットを用いた加湿装置を説明する。
図1を参照する。1は器具本体、2は器具本体1上部に器具本体1の前面と平行な位置関係となるように形成され複数のルーバー3が設置された送風口、4は器具本体1の正面上部を構成する上面パネル、5は器具本体1の正面下部を構成する下面パネル、6は複数のスイッチが備えられ各種操作指令を行う操作部、7は図示しないブレーカーを隠すブレーカーカバー、8は器具本体1の底面及び前面下方に形成され室内空気を器具本体1内に取り込む吸入口である。
【0013】
図2を参照する。10は器具本体1内の略中段高さ位置にあって所定量の水を貯水する貯水室であり、この貯水室10内には、水に下端を水没させ駆動軸11に軸支された筒状の回転体12が備えられている。
【0014】
前記回転体12は、中空逆円錐形で上方に向かって円周が徐々に拡大するものであり、駆動軸11に接続され回転体12を回転駆動させるミストモータ13を駆動させ、回転体12が回転することによる回転の遠心力で貯水室10の水を汲み上げ、回転体12の外壁および内壁を伝わせて水を押し上げて、回転体12の外壁を伝わせて押し上げた水を周囲に飛散させると共に、回転体12の内壁を伝わせて押し上げた水を回転体12の上端に形成された複数の図示しない飛散口から外周方向へ飛散させる。
【0015】
14は回転体12の上部外周に所定間隔を離間させて位置し回転体12と共に回転する円筒状の多孔体で、該多孔体14には、その全周壁に多数のスリットや金網やパンチングメタル等から成る衝突体としての多孔部15が設置されている。
【0016】
前記ミスト発生部を構成するミストモータ13を駆動させ、回転体12を回転させたことで発生する遠心力で貯水室10内の水を汲み上げると共に空気を飛散させ、多孔部15を通過した水滴が破砕されることで、水を微細化して粒径がナノメートル(nm)サイズのミスト(以下、微細ミスト)が多量に生成されると共に、比較的粒径の大きな水滴(以下、大径水滴)とが生成され、水の微細化によるレナード効果によって微細ミストに負イオンが帯電し、大径水滴に正イオンが帯電した状態となる。
そして、回転体12、ミストモータ13、及び衝突体としての多孔部15で加湿空気発生手段が構成される。
【0017】
20は下面パネル5内に設置され所定の回転数で駆動することで室内の乾燥空気を吸引して器具本体1の上部方向へ送風する送風ファン、21は当該送風ファン20下流側にあり送風が通過する送風経路であり、器具本体1の下部から吸い込まれた乾燥空気が前記送風経路21を通過して器具本体1の上部へ案内され、貯水室10の上部にありミストモータ13が載置された風洞22を介して貯水室10内へ流入する。
【0018】
なお、前記送風経路21は筐体で外部と区画された形態に限られず、例えば、ホース等による専用の区画壁により流路を形成したものであってもよい。
【0019】
23は貯水室10の上方の他端に風路が鉛直上向きとなるよう接続され貯水室10内で発生した微細ミスト及び大径水滴を含む加湿空気が内部を流通する気水分離風路、24は当該気水分離風路23内の途中に複数設置され鉛直上方へ傾斜する傾斜面を備えたバッフル板であり、気水分離風路23内の上段、中段、下段にそれぞれ設置されている。
【0020】
25は気水分離風路23の壁面を貫通し送風経路21を流通する空気の一部が流入可能なバイパス流入口であり、バイパス流入口25から気水分離風路23内へ空気が流入することで、貯水室10から上昇してきた加湿空気の風量を増大させ、送風口2から室内へ送風される加湿空気の送風量を上昇させることができる。
【0021】
30は貯水室10内に設置され貯水を加熱する加熱ヒータであり、貯水室10の外壁に設置され貯水温度を検知する貯水温度センサ31で検知される温度が所定温度となるよう、ON/OFF状態が適宜切り替えられる。
【0022】
32は貯水室10内に設置されフロートが上下することで水位を検知する水位センサであり、貯水室10内の水位が低下して所定水位以下になったらOFF信号を出力し、水位が上昇して所定水位以上になったらON信号を出力し、更に水位が上昇して貯水室10内が満水となったら満水信号を出力する。
【0023】
40は貯水室10側面に接続され貯水室10内に市水を給水する給水管であり、該給水管40の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内への給水を制御する給水弁41と、給水圧を所定値まで減圧し一定流量で貯水室10内へ給水可能とする減圧弁42と、上流側にある上流側ユニット43aと下流側にある下流側ユニット43bとで構成されるイオン溶出ユニット43と、が備えられている。
【0024】
イオン溶出ユニット43について詳述する。
図3を参照する。イオン溶出ユニット43を構成する上流側ユニット43aと下流側ユニット43bとは同一構造であり、ティーズ形状のケース44と、当該ケース44内にあり流入口から流出口まで通水する通水流路45とで構成されている。
前記通水流路45には、2枚の銀プレートで構成された電極46が対向するように配置され、通水流路45の外側に位置し電極46の端部と一端側が接続し他端側がケース44外に突出する端子47がある。
【0025】
前記端子47の他端側に接続された図示しないリード線を介して所定の定電流が2枚の銀プレートの一方ずつに対して交互に電極46に印加されることで、定電流が通電された側の銀プレートを構成する電極46から金属イオンである銀イオンが水中に溶出する。銀イオンが溶出した水が貯水室10内に供給されることで、貯水室10内の銀イオン濃度を目標とする所定値に保持することができ、貯水室10周辺でのバイオフィルムによるぬめりの発生を阻止することができる。
【0026】
また、説明の便宜上、上流側ユニット43a内に配置された電極は上流側電極46a、下流側ユニット43b内に配置された電極は下流側電極46bとする。
【0027】
図2を参照する。50は貯水室10底部に接続され貯水室10内の水を器具本体1外部に排水する硬質塩化ビニル管で構成された排水管であり、該排水管50の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室10内の水の排水を制御する排水切り替え手段としての排水弁51が備えられている。
【0028】
60は送風口2の上壁面に設置され送風口2から室内へ向けて送風される加湿空気の温度を検知する送風温度センサ、61は送風ファン20の近傍に設置され器具本体1の下部から吸い込まれた室内空気の温度を検知する吸気温度センサ、62は前記吸気温度センサ61の近傍に設置され器具本体1が設置された室内の湿度を検知する湿度センサであり、各センサで検知された温度や湿度に基づいて、ミストモータ13や送風ファン20の回転数を変化させ、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替える。
【0029】
図4を参照する。操作部6には、ミスト運転の開始及び停止を指示する運転スイッチ70と、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替えて貯水室10内の貯水温度を調節し所定時間あたりの加湿量を変化させる3段階の加湿レベルと、湿度センサ62で検知された湿度が予め設定された湿度となるよう前記加湿レベルを変化させるオートモードとから設定可能な加湿スイッチ71と、ミストモータ13と送風ファン20との回転数の大小を設定可能な3段階の風量レベルと、湿度センサ62で設定された湿度が予め設定された湿度となるよう前記風量レベルを変化させるオードモードとから設定可能な風量スイッチ72と、が備えられている。
【0030】
また、操作部6の各スイッチ上部には各スイッチに対応したランプが備えられており、運転スイッチ70が操作されたら点灯する運転ランプ73と、ミスト運転が所定時間以上継続したら開始する除菌運転時に点灯する除菌ランプ74と、加湿スイッチ71で設定された加湿レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する加湿レベルランプ75と、風量スイッチ72で設定された風量レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する風量レベルランプ76と、が備えられている。
【0031】
また、操作部6には、後述するエラー判定動作により、上流側電極46aと下流側電極46bとが誤った状態で配置されていると判定された場合に点灯する交換ランプ77と、電極46の交換後に実施する残存率情報のリセット動作が実施されていないと判定された場合に点灯するリセットランプ78と、が備えられている。前記交換ランプ77、及び前記リセットランプ78が点灯することでユーザーに電極46の交換し忘れ、及びリセットし忘れを報知し、メンテナンス業者による作業の実施を促す。
【0032】
図5を参照する。80は各センサで検知された検知値、及び操作部6上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき、運転内容や弁の開閉を制御するマイコンで構成された制御部であり、ミストモータ13を可変の回転数で駆動させるミストモータ制御手段81と、送風ファン20を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段82と、加熱ヒータ30のON/OFF状態を切り替えて貯水室10内の水温を調節する加熱ヒータ制御手段83と、各電極46への通電時間と印加される電圧値とに基づき各電極46の残存率を推定する残存率推定手段84と、が備えられている。
【0033】
(一連の運転動作の説明)
次に、この一実施形態での運転開始から終了までの動作について説明する。
図6を参照する。まず、操作部6の運転スイッチ70が操作されたら、制御部80は、排水弁51を開放して貯水室10内の水を排水する。水位センサ32でOFF信号が検知されたら、給水弁41を開放して貯水室10内を水で洗い流すクリーニング動作を行い、所定時間経過したら排水弁51を閉止する。排水弁閉止の後、後述する電極46の残存率から上流側ユニット43a内の上流側電極46a、または下流側ユニット43b内にある下流側電極46bのいずれか一方にのみ定電流を印加することで銀イオンを溶出し、給水管40を介して貯水室10へ銀イオンを含んだ水を流入させる。そして、水位センサ32でON信号が検知されたら、所定量の水が貯水室10内に供給されたとして給水弁41を閉止し、上流側電極46a、または下流側電極46bへの定電流印加を停止する水入替モードを行う(ステップS101)。
【0034】
ステップS101の水入替モードが終了したら、制御部80は、貯水温度センサ31で検知される貯水温度が室温と同値になるまで加熱ヒータ制御手段83で加熱ヒータ30をON状態にして、ミストモータ13及び送風ファン20が所定の回転数となるようミストモータ制御手段81及び送風ファン制御手段82で制御する立ち上げ動作を実行する立ち上げモードを行う(ステップS102)。
【0035】
ステップS102の立ち上げモードが終了したら、制御部80は、設定された加湿レベルと風量レベルとに基づいてミストモータ13と送風ファン20とが所定の回転数で駆動するようミストモータ制御手段81と送風ファン制御手段82とで回転数を制御し、加熱ヒータ30のON/OFF状態を加熱ヒータ制御手段83で切り替えて制御して、加湿レベルと風量レベルとに合わせた所定の温度範囲内にするミスト運転を実行する通常運転モードを行う(ステップS103)。
【0036】
この通常運転モード時、貯水室10内の水位が低下し水位センサ32でOFF信号が検知されたら、制御部80は、給水弁41を開放すると共に後述する電極46の残存率から上流側ユニット43a内の上流側電極46a、または下流側ユニット43b内にある下流側電極46bのいずれか一方にのみ定電流を印加し、貯水室10内に所定濃度の銀イオンを含んだ水を供給する。これにより、貯水室10内の水への抗菌作用が働き、貯水室10周辺でのぬめり発生を抑制することができる。
【0037】
ステップS103の通常運転モード中に運転スイッチ70が操作され運転終了の指示があったか、所定の運転継続時間が経過したと判断したら、制御部80は、ミストモータ13を停止させてから排水弁51を開弁して貯水室10内の水を排水し、所定時間経過したら給水弁41を開放すると共に後述する電極46の残存率から上流側ユニット43a内の上流側電極46a、または下流側ユニット43b内にある下流側電極46bのいずれか一方にのみ定電流を印加し、貯水室10内を洗浄してから排水弁51を閉止して貯水室10内に所定量だけ貯水する水入替運転を行う。
その後、加熱ヒータ30をON状態にして水を加熱することで除菌を行う除菌運転を所定時間行い、所定時間経過後に貯水室10内を冷却する冷却運転を実行し、貯水温度が所定温度以下になったら排水弁51を開放して排水するクリーニングモードを行う(ステップS104)。
【0038】
ステップS104のクリーニングモードが終了したら、制御部80は、送風ファン20が所定の回転数(例えば、800rpm)で駆動するよう送風ファン制御手段82で制御し、貯水室10や送風経路21に送風して乾燥させることで菌の増殖を防止する乾燥モードを行い(ステップS105)、送風ファン20の駆動時間が所定時間(例えば、3時間)をカウントしたか判断し、3時間カウントしたら、送風ファン20を停止させて運転を終了する。
【0039】
(電極の残存率推定方法の説明)
次に、通電により消耗する電極46の残存率の推定方法について説明する。
電極46は、定電流が印加されることで銀イオンを放出する2枚の銀プレートが対向した構成であることから、通電することで銀プレートが溶出し体積が減少する。よって、積算の通電時間が長くなり電極46の体積が減少すると抵抗値が増大し、電極46に印加する電圧値が大きくなる。
【0040】
つまり、電極46に定電流を通電した積算時間と印加した電圧値とから消耗度合いを把握し、電極46の残存率を推定することができる。
よって、電極46がイオン溶出ユニット43内で確実に支持可能な残存率の所定値を予め設定し、電極46の残存率が前記所定値以下になったら電極46への通電を停止することで、電極46がイオン溶出ユニット43内で支持不可能となって銀プレートがイオン溶出ユニット43の下流側にある給水管40に流れ出てしまうことが阻止できる。
【0041】
なお、本実施形態では、予め設定する前記したイオン溶出ユニット43内で確実に支持可能な電極46の残存率の所定値を10%とし、電極46の残存率が10%より高ければ通電を続行し、電極46の残存率が10%以下になると電極46への通電を停止することで、イオン溶出ユニット43の下流側にある給水管40に銀プレートが流れ出てしまうことが阻止できる。
【0042】
(通電する電極の設定動作の説明)
次に、貯水室10への給水時に通電する電極46の設定動作について説明する。
図7を参照する。貯水室10内への給水指示が出され、後述するエラー判定動作により各電極46の設置状態、及び残存率のリセット状態は正常だと判断されたら、制御部80は、残存率推定手段84により推定される下流側電極46bの残存率を推定する(ステップS201)。
【0043】
そして、制御部80は、前記ステップS201で推定した下流側電極46bの残存率が所定値である10%より高いか判断し(ステップS202)、残存率が10%より高ければ、下流側電極46bにのみ通電し(ステップS203)、残存率が10%以下であれば上流側電極46aの残存率を推定する(ステップS204)
【0044】
制御部80は、前記ステップS204で上流側電極46aの残存率を推定し、上流側電極46aの残存率が10%より高いか判断し(ステップS205)、残存率が10%より高ければ、上流側電極46aにのみ通電し(ステップS206)、残存率が10%以下であれば上流側電極46a、及び下流側電極46bのいずれにも通電せず銀イオンを発生させない(ステップS207)。
【0045】
このように、給水管40の下流側に位置する下流側電極46bの残存率が所定値以下となるまでは下流側電極46bにのみ通電し、下流側電極46bの残存率が所定値以下となったら上流側電極46aにのみ通電するので、上流側電極46aへ先に通電することで上流側電極46aを構成する銀プレートが先に消耗し、給水管40内の水流によって上流側電極46aが破損して銀プレートの破片が下流側電極46bを構成する2枚の銀プレートに接触した状態となって、下流側電極46bに通電した時にショートして故障する事態を未然に防止することができる。
【0046】
そして、前記ステップS207にある上流側電極46a、及び下流側電極46bの残存率が共に所定値以下となるタイミングで、メンテナンス業者が各イオン溶出ユニット43内にある電極46を交換し、記憶された上流側電極46a、及び下流側電極46bの残存率情報をリセットする作業を実施する。
【0047】
なお、給水管40内を流動する水質により電極46の消耗度合いが異なることで、上流側電極46a、及び下流側電極46bの残存率が所定値以下となるタイミングがずれることから、メンテナンス業者が電極46を交換する時、上流側電極46aの残存率が高い場合がある。
また、ユーザーの希望で2つの電極46の残存率が所定値以下となるタイミングよりも早い時期に電極46の交換を実施する場合にも、上流側電極46aの残存率が高い場合がある。
【0048】
このように、電極46を交換するタイミングで上流側電極46aの残存率が高い場合、上流側電極46aを取り外して未使用の電極46を上流側ユニット43a内に設置し、取り外した上流側電極46aを下流側ユニット43b内に設置して、上流側電極46aの残存率情報を下流側電極46bの残存率情報に移して使用することで、電極46の交換時に残存率の高い上流側電極46aを廃棄することなく継続して使用することができるため、交換コストを抑えることができる。
【0049】
また、給水管40と、当該給水管40の途中に2つ以上直列に配置され所定の定電流を通電することで金属イオンを水中へ溶出する電極46と、給水管40内の水が流動する時、給水管40の最も下流側に配置された下流側電極46bにのみ通電し、残存率推定手段84で推定される下流側電極46bの残存率が所定値以下であれば、下流側電極46bへの通電を停止して上流側電極46aにのみ通電する制御部80とで金属イオン溶出装置が構成される。
【0050】
(エラー判定動作の説明)
次に、上流側電極46a、及び下流側電極46bが消耗し交換した後の各電極46の配置場所、及び各電極46の残存率情報が正しいかを判断するエラー判定動作について説明する。
図8を参照する。貯水室10内への給水指示があったと判断したら、制御部80は、上流側電極46aに所定の定電流値を通電して印加電圧値を確認したら通電を停止し、次に、下流側電極46bへ所定の定電流を通電して印加電圧値を確認したら通電を停止することで、各電極46に印加された電圧値を確認し(ステップS301)、上流側電極46aに印加された電圧値よりも下流側電極46bに印加された電圧値の方が高いか判断する(ステップS302)。
【0051】
制御部80は、前記ステップS302で判断した結果、印加された電圧値の関係が上流側電極46aより下流側電極46bの方が高い(ステップS302でYes)としたら、残存率推定手段84で推定される上流側電極46a、及び下流側電極46bの残存率を確認する(ステップS303)。
【0052】
制御部80は、前記ステップS303で各電極46の残存率を確認し、上流側電極46aの残存率の方が下流側電極46bの残存率より高いか判断し(ステップS304)、上流側電極46aの残存率の方が高いと判断したら、下流側電極46bが上流側電極46aよりも消耗した状態であり、メンテナンス業者により各電極46の交換作業、及び残存率のリセット作業が正しく実施されたとして正常判定をし(ステップS305)、制御を終了する。
【0053】
制御部80は、前記ステップS304で上流側電極46aの残存率が下流側電極46b以下だと判断(ステップS304でNo)したら、各電極46の交換作業は正常に実施されたが、上流側電極46aの残存率情報をリセットし忘れたか、あるいは、上流側電極46aの残存率情報を下流側に移して上流側電極46aの残存率情報をリセットする作業をし忘れた状態であり、残存率情報が誤っているとしてエラー判定をし、操作部6のリセットランプ78を点灯して電極46の残存率情報のリセット作業を促すエラー報知をして(ステップS306)、制御を終了する。
【0054】
また、制御部80は、前記ステップS302で上流側電極46aに印加された電圧値が下流側電極46bに印加された電圧値以上だと判断(ステップS302でNo)したら、残存率推定手段84で推定される上流側電極46a、及び下流側電極46bの残存率を確認する(ステップS307)。
【0055】
制御部80は、前記ステップS307で各電極46の残存率を確認したら、上流側電極46aの残存率の方が下流側電極46bの残存率より高いか判断し(ステップS308)、上流側電極46aの残存率の方が高いと判断したら、電極46の交換作業の時、各電極46の残存率情報のリセット作業は正常に実施されたが、上流側電極46a、及び下流側電極46bの交換作業が正しく実施されておらず、下流側電極46bよりも上流側電極46aの消耗が進んだ状態であるとして交換し忘れのエラー判定をし、操作部6の交換ランプ77を点灯して交換作業を促すエラー報知をして(ステップS309)、制御を終了する。
【0056】
制御部80は、前記ステップS308で上流側電極46aの残存率が下流側電極46b以下だと判断(ステップS308でNo)したら、上流側電極46a、及び下流側電極46bの交換作業が実施されておらず、下流側電極46bよりも上流側電極46aの消耗が進んだ状態であり、また、残存率のリセット作業をし忘れた状態であり、残存率情報が誤っているとしてエラー判定をし、操作部6の交換ランプ77、及びリセットランプ78を点灯して電極46の交換作業、及び電極46の残存率情報のリセット作業を促すエラー報知をして(ステップS310)、制御を終了する。
【0057】
このように、貯水室10内への給水開始前に上流側電極46a、及び下流側電極46bの印加電圧値、及び推定される残存率を確認し、各電極46が誤って設置されている場合にエラー判定をするので、電極46の交換作業が実施された後、下流側電極46bよりも消耗し残存率が低い状態の上流側電極46aが上流側ユニット43a内に設置されたまま使用され続けることがなく、給水管内の水が流動した時に上流側電極46aを構成する銀プレートが破損して破片が下流側ユニット43b内に流れ込み、下流側電極46bを構成する銀プレートと接触して下流側電極46bへの通電時にショートが発生し故障する事態を防止することができる。
【0058】
なお、前記ステップS306ではエラー報知をして制御を終了しているが、本ステップの状態は電極46の残存率情報が誤っているだけであり、電極46の交換作業は正常に実施されていることから、残存率情報を自動で修正する制御であってもよい。
【0059】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0060】
給水管40の上流側、下流側にそれぞれ配置された上流側電極46a、及び下流側電極46bに通電し、上流側電極46aに印加される電圧値が下流側電極46bに印加される電圧値よりも高ければ、エラー判定をするので、メンテナンス業者等により各電極46が交換された時、誤って給水管40の上流側に下流側よりも残存率が低い電極が配置された状態で電極46へ通電されるのを阻止できるため、給水管40の水流により上流側電極46aを構成する銀プレートが破損し下流側電極46bと接触して下流側電極46bへ通電した時にショートが発生する事態を防止できる。
【0061】
また、上流側電極46aに印加される電圧値が下流側電極46bに印加される電圧値よりも低く、かつ、下流側電極46bの残存率よりも上流側電極46aの残存率の方が低いと推定されれば、エラー判定をするので、印加電圧値の関係から上流側電極46aよりも下流側電極46bの方が消耗しているが、上流側電極46aの方が下流側電極46bよりも残存率が低く消耗していると推定され、電極46の交換作業時に残存率情報をリセットし忘れたことでのエラー判定をするため、誤った残存率情報のまま各電極46が使用され続けることを防止できる。
【0062】
また、上流側電極46a、及び下流側電極46bに印加される電圧値、及び残存率によるエラー判定を加湿装置に適用することで、各電極46が誤った状態で使用されたことでショートが発生し、電極46が使用不可となって貯水室10内に銀イオンを含む水が供給できず、貯水室10周辺にバイオフィルムによるぬめりが発生する事態を防止できる。
【0063】
なお、本実施形態では給水管40に電極46を備えたイオン溶出ユニット43を2つ直列に配置した構成で説明したが、これに限らず2つ以上の電極46を給水管40へ直列に配置したものにも本発明は適用可能である。2つ以上の電極46を給水管40に設置した場合、給水管40の水が流動したら最下流に設置された電極40に通電し、最下流の電極46の残存率が所定値以下となったら最下流よりも一つ上流側の電極46に通電する、というように、最下流の電極46から上流側に向かって各電極46に通電することで、上流側の電極46を構成する銀プレートが破損して下流側の銀プレートに接触しショートが発生する事態を防止することができる。
【0064】
また、本実施形態では電極46が銀プレートで構成された内容で説明したが、これに限らず金属イオンを溶出可能な金属を用いていればよい。例えば、銅や亜鉛等で構成されたプレートを電極46として使用し、銅イオンや亜鉛イオンを水中に溶出して貯水室10内の水を清浄化することで、貯水室10周辺のぬめり発生を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では給水管40の途中に上流側電極46a、及び下流側電極46bを直列に設置し、各電極46の印加電圧値と残存率からエラー判定をする加湿装置で説明したが、これに限らず給湯器等の他の電気機器であり、給水管に複数の電極を直列に設置し、各電極の印加電圧値と残存率からエラー判定をする金属イオン溶出装置が用いられていれば適用可能であり、本発明の範疇に入る。
【符号の説明】
【0066】
1 器具本体
10 貯水室
12 回転体(加湿空気発生手段)
13 ミストモータ(加湿空気発生手段)
15 多孔部(加湿空気発生手段)
20 送風ファン
40 給水管
46 電極
46a 上流側電極
46b 下流側電極
80 制御部
84 残存率推定手段