(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】鞘管測定用治具
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20230912BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230912BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20230912BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230912BHJP
C10B 29/02 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01B11/00 B
G01B11/26 Z
G01C15/00 103A
G01C15/00 104Z
C10B29/02
(21)【出願番号】P 2020047842
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 珠樹
(72)【発明者】
【氏名】薬眞寺 尉之
(72)【発明者】
【氏名】上村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】杉村 裕二
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-272947(JP,A)
【文献】特開2019-086330(JP,A)
【文献】特開2018-146332(JP,A)
【文献】国際公開第2015/102032(WO,A1)
【文献】特開2013-017792(JP,A)
【文献】特開2017-227033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/06
G01B 11/00
G01B 11/26
G01C 15/00
C10B 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩上げされるべき炉床盤のスラブ上に露出する既設鞘管の位置及び姿勢を測定するために使用する鞘管測定用治具であって、
前記既設鞘管の内径に嵌装されると共に、該既設鞘管と実質的に同軸に上方へ延びるように立設されるポールと、
前記既設鞘管から上方へ延出する前記ポールの上下2ヶ所に設定され、鞘管測定装置のリフレクタが載置されるリフレクタ支持部と、を備え、
前記鞘管測定装置からの照射光が前記リフレクタで反射するように該リフレクタを支持することを特徴とする鞘管測定用治具。
【請求項2】
前記ポールは前記既設鞘管に嵌装された際、前記既設鞘管の内周面に弾接する位置決め機構を有し、前記ポールが前記位置決め機構を介して前記既設鞘管と同軸に支持されることを特徴とする請求項1に記載の鞘管測定用治具。
【請求項3】
前記ポールの嵌装部の上端付近にストッパを有し、前記ストッパが前記既設鞘管の上端に当接するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞘管測定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉において嵩上げを行う炉床盤に新設埋込管を設置するために使用する鞘管測定用の治具に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の蓄熱室は、燃焼室からの燃焼排ガスを導入して熱を奪い、その熱で上部にある燃焼室に供給する燃料又は空気の温度を高める。蓄熱室には、燃料や空気を供給する多数の配管が列設され、これらの配管が燃焼室の炉床盤において埋込管として所定のピッチ間隔で配設される。
【0003】
既設の炉床盤の構造変更等のために、炉床盤のコンクリートスラブを嵩上げし、更にこれに伴い埋込管(鋼管)を新設する必要が生じる。その場合、先ずスラブ面から露出する既設の埋込管の根元を切断し、その後、コンクリートスラブの嵩上げ分に対応する長さの埋込管(新設埋込管)にすべく、鞘管等と称する埋込管を既設の埋込管に取付設置する。
【0004】
コークス炉改修工事にあたり、旧煉瓦を除去した後の既設炉床盤の上に新設埋込管を接続設置し、コンクリートを打設することで嵩上げが行なわれる。その際、特許文献1に開示されるように既設炉床盤に当初から埋め込んであった鞘管をフラットに切断し、その上に新規鞘管を接続しコンクリート打設を行っている。即ち既設炉床盤に埋め込まれた既設鞘管はそのまま継続使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既設埋込管の中には施工精度が悪く、新規埋込管との接続具合に支障をきたす場合がある。その場合は既設埋込管を交換する必要があり、既設コンクリートから掘り出し設置し直すことになる。
また、既設埋込管の位置・傾き等が基準値以内に収まっているかどうかは測定して判断することとなるが、鞘管の本数は数が非常に多く、コークス炉改修工事の工期短縮のためには素早い測定が要求されている。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、既設鞘管の位置及び傾きを効率的且つ正確に測定可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鞘管測定用治具は、嵩上げされるべき炉床盤のスラブ上に露出する既設鞘管の位置及び姿勢を測定するために使用する鞘管測定用治具であって、前記既設鞘管の内径に嵌装されると共に、該既設鞘管と実質的に同軸に上方へ延びるように立設されるポールと、前記既設鞘管から上方へ延出する前記ポールの上下2ヶ所に設定され、鞘管測定装置のリフレクタが載置されるリフレクタ支持部と、を備え、前記鞘管測定装置からの照射光が前記リフレクタで反射するように該リフレクタを支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多数の既設鞘管の位置及び垂直等を正確にしかも短時間で効率的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る嵩上げを行うコークス炉の例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る炉床盤の既設スラブ上における既設埋込管の配設例を示す平面図である。
【
図3】嵩上げが完成した炉床盤の例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る鞘管測定用治具の構成例を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る鞘管測定装置による測定時の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明における好適な実施の形態を説明する。
本発明の実施形態において、例えば
図1のように老朽化したコークス炉100を解体して、既存の同じ基礎部(炉床盤1)の上に同規模で新しい炉体を建設するものとし、既存の炉床盤1にコンクリートを打設してその嵩上げを行う。この場合、当該コークス炉100において、
図2のように炉床盤1の既設スラブ2上には多数の既設埋込管3が所定の間隔ピッチで列設されている。なお、既設スラブ2はPS(Pusher Side)及びCS(Coke Side)間の炉長方向(本例では
図2のX方向)で、炉団長方向(
図2のY方向)に沿った極めて広い領域に亘っている。
コークス炉100は基本的に煉瓦製であり、炉床盤の上に多数の煉瓦を積み重ねて構成される。
【0012】
煉瓦が解体され既設スラブ2が露出したコークス炉100において、既設スラブ2に埋め込まれている既設埋込管3(鞘管)はその埋込面から所定高さ位置で、その垂直方向に対してフラットに切断される。既設埋込管3を切断するために、例えば前述した従来例に係る埋込管切断装置等を使用する。
図2は、既設スラブ2上の既設埋込管3がそれぞれ、埋込管切断装置等により所定長さに切断された状態を示している。各既設埋込管3に対して新設埋込管が嵌装される。
【0013】
図3において嵩上げを行うべき炉床盤1全体に、全ての既設埋込管3に対して鞘管4が嵌装・接続される。既設スラブ2上には更に、
図3のようにコンクリート5が打設され、コンクリート5の打設により既設埋込管3及び鞘管4はコンクリート5内に埋設され、炉床盤1の嵩上げが完成する。
【0014】
図4は、本発明による鞘管測定用治具10の構成例を示す断面図である。この鞘管測定用治具10は、既設鞘管(具体的には上述のように切断された既設埋込管3)の位置及び姿勢を測定するために使用され、既設鞘管の内径に嵌装されると共に、該既設鞘管と実質的に同軸に上方へ延びるように立設されるポール11と、前記既設鞘管から上方へ延出するポール11の上下2ヶ所に設定され、鞘管測定装置のリフレクタが載置される鍔状のリフレクタ支持部12と、を備える。
【0015】
ポール11は既設埋込管3よりも小径の長尺の円筒体であり、既設埋込管3に嵌装される嵌装部11aの上端付近にストッパ13を有し、ストッパ13が既設埋込管3の上端に当接するようになっている。
また、ポール11の嵌装部11aには、既設埋込管3の内周面に弾接する位置決め機構14を有する。この例では嵌装部11aの上端部付近と下端部付近に2つの位置決め機構14が配設される。
【0016】
位置決め機構14は、ポール11の円周4分割位置にそれぞれ配置された4つのプランジャ15を有し、各プランジャ15は嵌装部11aの外周面から突出し、その先端が既設埋込管3の内周面に弾接する。嵌装部11aの内周面にはプランジャ15を支持するための内環16が付設され、内環16に螺合して取り付けられたプランジャ15はロックナット17によって固定される。
【0017】
ここで、
図5に示されるように鞘管測定装置100はリフレクタ103に向けてレーザ光を照射するレーザ照射部101とリフレクタ103からの反射光を受光するレーザ受光部102を有する。リフレクタ103は精密な真球からなるもので、照射されたレーザ光を測定装置へ反射することで、測定装置はリフレクタ103の中心位置を精密に捉える。ここで、測定者がリフレクタ103をポール外壁に当接させると、リフレクタ103の中心はポール11の半径とリフレクタの半径の合計値分だけポール11の中心から離れて位置することとなるので、リフレクタ支持部12に載置しその上3か所についてリフレクタ103の中心位置を測定することで、リフレクタ支持部12におけるポール11の中心位置が測定できる。
【0018】
鞘管測定装置100による測定に際して、鞘管測定用治具10のポール11は
図4のように嵌装部11aが既設埋込管3の内径に嵌装される。このとき上下の位置決め機構14の4つのプランジャ15が既設埋込管3の内周面に均等に弾接することで、ポール11はガタつくことなく、既設埋込管3と同軸に上方へ延びるように立設される。このような状態のポール11に対して、鞘管測定装置100はリフレクタ支持部12上のリフレクタ103(3か所)にレーザ光を照射することで、ポール11のリフレクタ支持部12における中心座標を精密に捉えることができる。リフレクタ支持部12は上下2か所にあるので、夫々の位置におけるポール11の中心座標を測定することで、ポール11の位置及び軸線の鉛直方向に対する傾斜角度を得ることができる。
【0019】
測定されたポール11の位置及び姿勢は、既設埋込管3自体の位置及び姿勢を反映しており、
図4のようにポール11の測定で得られた傾斜角度θがそのまま既設埋込管3の傾斜角度となり、既設埋込管3の傾斜等を知ることができる。既設埋込管3の傾斜角度θが許容値範囲ない場合、その既設埋込管3を取外し、あるいはその傾斜角度を修正し、許容値範囲内の傾斜角度にすることができる。炉床盤1の嵩上げの際、予め既設埋込管3の傾斜角度を修正しておくことができるため、その後嵌装・接続される鞘管4の適正な位置及び姿勢を確保維持することができる。
【0020】
本発明によれば、鞘管測定用治具10のポール11を既設埋込管3に差し込むだけの簡単な作業で済むため、多数の既設埋込管3、即ち鞘管の位置及び垂直等を正確にしかも短時間で効率的に測定することができ、改修工事全体の工期を大幅に短縮することが可能となる。
【0021】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
本実施形態における位置決め機構14のプランジャ15の個数等は必要に応じて適宜増減可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 炉床盤、2 既設スラブ、3 既設埋込管、10 鞘管測定用治具、11 ポール、12 リフレクタ支持部、13 ストッパ、14 位置決め機構、15 プランジャ、16 内環、100 鞘管測定装置、101 レーザ照射部、102 レーザ受光部、103 リフレクタ。