(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04302 20160101AFI20230912BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230912BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20230912BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20230912BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230912BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20230912BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20230912BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230912BHJP
H01M 8/00 20160101ALN20230912BHJP
【FI】
H01M8/04302
H01M8/04 J
H01M8/04225
H01M8/0438
H01M8/04746
B60L50/70
B60L58/30
H01M8/10 101
H01M8/00 Z
(21)【出願番号】P 2020052554
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 健
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-112492(JP,A)
【文献】特開2006-120363(JP,A)
【文献】特開2006-310236(JP,A)
【文献】特開2017-201584(JP,A)
【文献】特開2018-113154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0119378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
F17C 13/00-13/12
B60L 50/00-50/90
B60L 58/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮された水素が貯留される第1の水素タンク及び第2の水素タンクと、
前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクに貯留される水素を燃料電池に供給する配管であって、前記燃料電池に接続される統合配管と、前記統合配管から前記第1の水素タンクに向けて分岐する第1の分岐配管と、前記統合配管から前記第2の水素タンクに向けて分岐する第2の分岐配管とにより形成される水素供給配管と、
前記第1の分岐配管に接続され、前記第1の分岐配管に水素が流動する状態と、前記第1の分岐配管に水素が流動しない状態と、を切り換える第1の主止弁と、
前記第2の分岐配管に接続され、前記第2の分岐配管に水素が流動する状態と、前記第2の分岐配管に水素が流動しない状態とを切り換える第2の主止弁と、
前記第1の分岐配管に接続され、前記第1の主止弁を通過した水素の圧力を降圧する第1の圧力レギュレータと、
前記第2の分岐配管に接続され、前記第2の主止弁を通過した水素の圧力を降圧する第2の圧力レギュレータと、
前記第1の主止弁、及び前記第2の主止弁の動作を制御する制御部と、を備え、
前記第1の分岐配管における前記第1の主止弁と前記第1の圧力レギュレータとの間の圧力を第1の圧力とし、前記第2の分岐配管における前記第2の主止弁と前記第2の圧力レギュレータとの間の圧力を第2の圧力とすると、
前記制御部は、
前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクのうち予め定められた方に水素が充填された後、最初に前記燃料電池が起動する第1の起動時に前記第1の主止弁及び前記第2の主止弁を開弁させる総合水素供給制御と、
前記第1の起動時の前記第1の圧力と、所定条件を満たしたときの前記第1の圧力との差分である第1の差分値が、前記第1の起動時の前記第2の圧力と、前記所定条件を満たしたときの前記第2の圧力との差分である第2の差分値よりも大きい場合、前記所定条件を満たした場合に行う制御を実施した次の前記燃料電池の起動時において、前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクのうち予め定められた方に水素が充填されていなければ、前記第2の主止弁を閉弁させた状態で前記第1の主止弁を開弁させる第1水素供給制御と、
前記第1の差分値が前記第2の差分値よりも小さい場合、前記所定条件を満たした場合に行う制御を実施した次の前記燃料電池の起動時において、前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクのうち予め定められた方に水素が充填されていなければ、前記第1の主止弁を閉弁させた状態で前記第2の主止弁を開弁させる第2水素供給制御と、を実施することを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定条件を満たしたとき、前記第1水素供給制御が終了したとき、及び前記第2水素供給制御が終了したときの前記第1の圧力及び前記第2の圧力を更新して記憶する前回圧記憶制御を実施し、
前記前回圧記憶制御を実施した後、最初に前記燃料電池が起動したときの前記第1の圧力と、前記前回圧記憶制御にて記憶された前記第1の圧力との差分、又は前記前回圧記憶制御を実施した後、最初に前記燃料電池が起動したときの前記第2の圧力と、前記前回圧記憶制御にて記憶された前記第2の圧力との差分が所定値を上回る場合、前記前回圧記憶制御を実施した後、最初の前記燃料電池の起動時に前記総合水素供給制御を実施することを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【請求項3】
前記第1の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値である第1の設定値と、前記第2の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値である第2の設定値とは、同じであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料供給装置。
【請求項4】
前記燃料供給装置は、燃料電池車両に搭載されるものであり、
前記所定条件は、前記燃料電池車両のキーオフであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるような燃料供給装置が知られている。
上記の燃料供給装置は、圧縮された水素が貯留される複数の水素タンクと、複数の水素タンクに貯留される水素を燃料電池に供給するための水素供給配管と、を備えている。水素供給配管は、燃料電池に接続される統合配管と、統合配管から第1の水素タンクに向けて分岐する第1の分岐配管と、統合配管から第2の水素タンクに向けて分岐する第2の分岐配管と、により形成されている。
【0003】
燃料供給装置は、電磁開閉式の複数の主止弁と、複数の調圧弁とを備えている。複数の主止弁それぞれは、複数の分岐配管それぞれに接続されている。複数の主止弁それぞれは、複数の分岐配管それぞれに水素が流動する状態と、複数の分岐配管それぞれに水素が流動しない状態とを切り換える。複数の調圧弁は、複数の分岐配管にそれぞれに設けられ、主止弁を通過した水素の圧力を降圧する圧力レギュレータである。
【0004】
燃料供給装置は、複数の主止弁の動作を制御する制御部を備えている。制御部は、水素タンクに水素充填が確認された場合、全ての主止弁を開弁し、且つ水素タンクに貯留される水素の残量を検出する。燃料供給装置は、水素タンクに貯留される水素の残量を検出した後、1つの主止弁を除く残りの主止弁を閉弁することにより1つの水素タンクに貯留される水素のみを燃料電池に供給させる。また、燃料供給装置は、次に水素充填が確認されるまでの間、1つの主止弁のみを開弁させることにより1つの水素タンクに貯留される水素のみを燃料電池に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の燃料供給装置において、全ての主止弁を開弁させ、水素タンクの水素の残量を検出した後、1つの主止弁を除く残りの主止弁を閉弁させるため、残りの主止弁と調圧弁との間には高圧の水素が滞留する。
【0007】
ところで、複数の調圧弁それぞれの個体差や、調圧弁内での異物の詰まり等の要因により、複数の調圧弁それぞれが降圧する水素の圧力の設定値が変動することがある。複数の調圧弁それぞれが降圧する水素の圧力の設定値が変動する場合、1つの主止弁を開弁させて1つの水素タンクに貯留される水素のみを燃料電池に供給するとき、複数の調圧弁のうち最も水素の圧力の設定値が高い調圧弁と、当該調圧弁の上流に設けられる主止弁との間に滞留する水素が先に統合配管に引き込まれ、燃料電池に供給されることを発明者は発見した。
【0008】
1つの主止弁のみを開弁させて1つの水素タンクに貯留される水素のみを燃料電池に供給する場合、残りの主止弁と調圧弁との間に滞留した水素が先に燃料電池に供給されると、残りの主止弁の水素タンク側の圧力と残りの主止弁の調圧弁側の圧力との圧力差が大きくなる。圧力差が大きくなる状態が繰り返されると、圧力差に起因して主止弁の閉弁不良が発生する虞がある。
【0009】
本発明の目的は、圧力差に起因する主止弁の閉弁不良を抑制できる燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する燃料供給装置は、圧縮された水素が貯留される第1の水素タンク及び第2の水素タンクと、前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクに貯留される水素を燃料電池に供給する配管であって、前記燃料電池に接続される統合配管と、前記統合配管から前記第1の水素タンクに向けて分岐する第1の分岐配管と、前記統合配管から前記第2の水素タンクに向けて分岐する第2の分岐配管とにより形成される水素供給配管と、前記第1の分岐配管に接続され、前記第1の分岐配管に水素が流動する状態と、前記第1の分岐配管に水素が流動しない状態と、を切り換える第1の主止弁と、前記第2の分岐配管に接続され、前記第2の分岐配管に水素が流動する状態と、前記第2の分岐配管に水素が流動しない状態とを切り換える第2の主止弁と、前記第1の分岐配管に接続され、前記第1の主止弁を通過した水素の圧力を降圧する第1の圧力レギュレータと、前記第2の分岐配管に接続され、前記第2の主止弁を通過した水素の圧力を降圧する第2の圧力レギュレータと、前記第1の主止弁、及び前記第2の主止弁の動作を制御する制御部と、を備え、前記第1の分岐配管における前記第1の主止弁と前記第1の圧力レギュレータとの間の圧力を第1の圧力とし、前記第2の分岐配管における前記第2の主止弁と前記第2の圧力レギュレータとの間の圧力を第2の圧力とすると、前記制御部は、前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクのうち予め定められた方に水素が充填された後、最初に前記燃料電池が起動する第1の起動時に前記第1の主止弁及び前記第2の主止弁を開弁させる総合水素供給制御と、前記第1の起動時の前記第1の圧力と、所定条件を満たしたときの前記第1の圧力との差分である第1の差分値が、前記第1の起動時の前記第2の圧力と、前記所定条件を満たしたときの前記第2の圧力との差分である第2の差分値よりも大きい場合、前記所定条件を満たした場合に行う制御を実施した次の前記燃料電池の起動時において、前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクのうち予め定められた方に水素が充填されていなければ、前記第2の主止弁を閉弁させた状態で前記第1の主止弁を開弁させる第1水素供給制御と、前記第1の差分値が前記第2の差分値よりも小さい場合、前記所定条件を満たした場合に行う制御を実施した次の前記燃料電池の起動時において、前記第1の水素タンク及び前記第2の水素タンクのうち予め定められた方に水素が充填されていなければ、前記第1の主止弁を閉弁させた状態で前記第2の主止弁を開弁させる第2水素供給制御と、を実施する。
【0011】
これによれば、第1の差分値が第2の差分値よりも大きい場合とは、第1の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値が、第2の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値よりも大きいことを示している。第1の差分値が第2の差分値よりも小さい場合とは、第1の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値が、第2の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値よりも小さいことを示している。
【0012】
所定条件を満たした次の燃料電池の起動時において、第1の水素タンク及び第2の水素タンクのうち予め定められた方に水素が充填されていなければ、第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータのうち降圧する水素の圧力の設定値が大きい方の圧力レギュレータの上流に設けられる第1の主止弁又は第2の主止弁のみを開弁させて燃料電池に水素を供給する第1水素供給制御又は第2水素供給制御を実施する。そのため、第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータのいずれかの設定値が変動しても、第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータのうち設定値が小さい方の圧力レギュレータと、当該圧力レギュレータの上流に設けられる第1の主止弁又は第2の主止弁との間に滞留する高圧の水素が統合配管に引き込まれ難くなる。よって、設定値が小さい方の圧力レギュレータの上流に設けられる主止弁に作用する圧力差が大きくなることを抑制できる。したがって、圧力差に起因する主止弁の閉弁不良を抑制できる。
【0013】
上記の燃料供給装置において、前記制御部は、前記所定条件を満たしたとき、前記第1水素供給制御が終了したとき、及び前記第2水素供給制御が終了したときの前記第1の圧力及び前記第2の圧力を更新して記憶する前回圧記憶制御を実施し、前記前回圧記憶制御を実施した後、最初に前記燃料電池が起動したときの前記第1の圧力と、前記前回圧記憶制御にて記憶された前記第1の圧力との差分、又は前記前回圧記憶制御を実施した後、最初に前記燃料電池が起動したときの前記第2の圧力と、前記前回圧記憶制御にて記憶された前記第2の圧力との差分が所定値を上回る場合、前記前回圧記憶制御を実施した後、最初の前記燃料電池の起動時に前記総合水素供給制御を実施するとよい。
【0014】
これによれば、水素タンクに水素が充填されたことを好適に確認することができる。
上記の燃料供給装置において、前記第1の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値である第1の設定値と、前記第2の圧力レギュレータが降圧する水素の圧力の設定値である第2の設定値とは、同じであるとよい。
【0015】
第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータの設定値が変動するときの要因は、主に第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータそれぞれの個体差である。第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータそれぞれの設定値が設計上同じであると、第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータそれぞれの個体差は、判断し難い。そのため、圧力差に起因する主止弁の閉弁不良の抑制効果は、水素の圧力を降圧するときの第1の圧力レギュレータ及び第2の圧力レギュレータの設定値が同じである場合に顕著である。
【0016】
上記の燃料供給装置において、前記燃料供給装置は、燃料電池車両に搭載されるものであり、前記所定条件は、前記燃料電池車両のキーオフであるとよい。
所定条件は、総合水素供給制御から第1水素供給制御への切り換え、総合水素供給制御から第2水素供給制御への切り換えの契機である。当該契機を燃料電池車両のキーオフにすることにより、既存の構成を利用して所定条件を決めることができる。したがって、燃料供給装置の制御をより簡易的にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、圧力差に起因する主止弁の閉弁不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】燃料電池が起動した場合に行う燃料供給装置の制御フロー図。
【
図3】燃料供給装置の各構成の動作タイミングを示したタイミングチャート。
【
図4】所定条件を満たした場合に行う燃料供給装置の制御フロー図。
【
図5】燃料電池が稼働しているに行う燃料供給装置の制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、燃料供給装置を具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。なお、本実施形態の燃料供給装置は、燃料電池システムに適用されている。そのため、燃料電池システムの構成について説明する中で燃料供給装置の構成を説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システム1は、例えば、燃料電池車両に搭載されるものである。燃料電池システム1は、燃料電池10を備えている。燃料電池10は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルとは、例えば、固体高分子型燃料電池である。燃料電池10は、アノード極と、カソード極と、電解質膜とを有している。燃料電池10は、アノード極に供給される燃料ガスとしての水素と、カソード極に供給される酸化剤ガスとしての酸素を含む空気との電気化学反応により発電を行う。燃料電池10は、アノード極に水素が供給され、カソード極に酸素を含む空気が供給されると、アノード極での触媒反応により発生した水素イオンが電解質膜を通過してカソード極まで移動し、カソード極で酸素と電気化学反応を起こして発電する。燃料電池10では、水素と酸素とが反応することにより水が生成される。
【0021】
燃料電池システム1は、酸素用アクチュエータ80を備えている。酸素用アクチュエータ80は、例えば、燃料電池10に酸素を含む空気を供給するエアコンプレッサ、及びエアコンプレッサと燃料電池10とを接続するカソードガス供給路を開閉するエアシャットバルブを含んでいる。
【0022】
燃料電池システム1は、冷却回路90を備えている。冷却回路は、例えば、燃料電池10に冷却水を循環させる冷却水循環路、冷却水循環路に設けられるとともに冷却水が吸収した熱を外部に放出する熱交換器としてのラジエータ、及び冷却水を循環させる循環ポンプを含んでいる。
【0023】
燃料電池システム1は、燃料電池10に水素を供給する燃料供給装置50を備えている。燃料供給装置50は、圧縮された水素が貯留される第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2と、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2に貯留される水素を燃料電池10に供給する配管である水素供給配管20とを備えている。水素供給配管20は、燃料電池10に接続される統合配管23と、統合配管23から第1の水素タンクT1に向けて分岐する第1の分岐配管21と、統合配管23から第2の水素タンクT2に向けて分岐する第2の分岐配管22とにより形成されている。なお、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2に貯留される水素の圧力は、約35MPaである。
【0024】
燃料供給装置50は、電磁開閉式の第1の主止弁31と、電磁開閉式の第2の主止弁32と、第1の圧力レギュレータ41と、第2の圧力レギュレータ42と、インジェクタ43と、を備えている。第1の主止弁31は、第1の分岐配管21に水素が流動する状態と、第1の分岐配管21に水素が流動しない状態とを切り換える。第1の主止弁31は、水素が導入される導入口31aと、導入口31aに導入された水素が吐出される吐出口31bとを有している。第2の主止弁32は、第2の分岐配管22に水素が流動する状態と、第2の分岐配管22に水素が流動しない状態とを切り換える。第2の主止弁32は、水素が導入される導入口32aと、導入口32aから導入された水素が吐出される吐出口32bとを有している。
【0025】
第1の圧力レギュレータ41は、第1の主止弁31を通過した水素を降圧する調圧弁である。第1の圧力レギュレータ41は、第1の主止弁31を通過した水素の圧力を約1MPaにまで降圧する。第1の圧力レギュレータ41は、第1の主止弁31を通過した水素が導入される導入口41aと、導入口41aに導入された水素が吐出される吐出口41bと、を有している。第2の圧力レギュレータ42は、第2の主止弁32を通過した水素を降圧する調圧弁である。第2の圧力レギュレータ42は、第2の主止弁32を通過した水素の圧力を約1MPaにまで降圧する。第2の圧力レギュレータ42は、第2の主止弁32を通過した水素が導入される導入口42aと、導入口42aに導入された水素が吐出される吐出口42bと、を有している。なお、約1MPaとは、第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42が降圧する水素の圧力の設定値Pmである第1の設定値及び第2の設定値の一例である。よって、本実施形態では、第1の圧力レギュレータ41が降圧する水素の圧力の第1の設定値と、第2の圧力レギュレータ42が降圧する水素の圧力の第2の設定値とは同じである。
【0026】
第1の分岐配管21は、上流配管21aと、中間配管21bと、下流配管21cとを有している。上流配管21aの第1の端部は、第1の水素タンクT1に接続され、上流配管21aの第2の端部は、第1の主止弁31の導入口31aに接続されている。中間配管21bの第1の端部は、第1の主止弁31の吐出口31bに接続され、中間配管21bの第2の端部は、第1の圧力レギュレータ41の導入口41aに接続されている。下流配管21cの第1の端部は、第1の圧力レギュレータ41の吐出口41bに接続され、下流配管21cの第2の端部は、後述する第2の分岐配管22における下流配管22cの第2の端部に接続されている。
【0027】
第2の分岐配管22は、上流配管22aと、中間配管22bと、下流配管22cとを有している。上流配管22aの第1の端部は、第2の水素タンクT2に接続され、上流配管22aの第2の端部は、第2の主止弁32の導入口32aに接続されている。中間配管22bの第1の端部は、第2の主止弁32の吐出口32bに接続され、中間配管22bの第2の端部は、第2の圧力レギュレータ42の導入口42aに接続されている。下流配管22cの第1の端部は、第2の圧力レギュレータ42の吐出口42bに接続され、下流配管22cの第2の端部は、第1の分岐配管21における下流配管21cの第2の端部に接続されている。第1の主止弁31及び第1の圧力レギュレータ41は、第1の分岐配管21に接続されている。第2の主止弁32及び第2の圧力レギュレータ42は、第2の分岐配管22に接続されている。
【0028】
統合配管23は、上流統合配管23aと、下流統合配管23bとを有している。上流統合配管23aの第1の端部は、下流配管21c,22cの第2の端部に接続され、上流統合配管23aの第2の端部は、インジェクタ43の導入口43aに接続されている。下流統合配管23bの第1の端部は、インジェクタ43の吐出口43bに接続され、下流統合配管23bの第2の端部は、燃料電池10のアノード極に接続されている。インジェクタ43は、導入口43aに導入された水素を吐出口43bに吐出させる状態と、導入口43aに導入された水素を吐出口43bに吐出させない状態とを切り換える電磁バルブである。
【0029】
燃料供給装置50は、中間配管21bを流れる水素の圧力を検出する第1の圧力センサ61と、中間配管22bを流れる水素の圧力を検出する第2の圧力センサ62と、第1の主止弁31、第2の主止弁32、及びインジェクタ43の動作を制御する制御部としてのFCECU65と、を備えている。第1の圧力センサ61は、第1の主止弁31と第1の圧力レギュレータ41との間の圧力である第1の圧力P1hを検出するために用いられるセンサである。第2の圧力センサ62は、第2の主止弁32と第2の圧力レギュレータ42との間の圧力である第2の圧力P2hを検出するために用いられるセンサである。第1の圧力P1hは、第1の圧力センサ61の検出結果が電気信号となってFCECU65へ入力されることによって常時検出されている。第2の圧力P2hは、第2の圧力センサ62の検出結果が電気信号となってFCECU65へ入力されることによって常時検出されている。
【0030】
燃料供給装置50は、残量計70を備えている。残量計70は、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2の水素の残量を表示する装置である。残量計70には、FCECU65により演算される水素の残量が表示される。
【0031】
FCECU65は、プログラムや各種の検出値が記憶されるメモリとプログラムを実行するプロセッサとを備えた電子制御装置である。FCECU65は、燃料電池車両に搭載されたキー(図示せず)のキーオフ及びキーオンを検出する。FCECU65は、第1の主止弁31、第2の主止弁32、インジェクタ43、酸素用アクチュエータ80、及び冷却回路90の動作を制御している。FCECU65は、メモリに記憶されたプログラムをCPUにより実行することにより第1の主止弁31、第2の主止弁32、インジェクタ43、酸素用アクチュエータ80、及び冷却回路90を動作させ、燃料電池10の動作を制御している。
【0032】
FCECU65は、燃料電池10が起動した場合に行う制御と、所定条件を満たした場合に行う制御と、燃料電池10が稼働している場合に行う制御と、を実施する。以下、それぞれの制御について説明する。なお、燃料電池10が起動した場合に行う制御の説明は、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2に水素が充填された状態で、第1の主止弁31及び第2の主止弁32は閉弁していることを前提として説明する。
【0033】
最初に、燃料電池10が起動した場合に行うFCECU65の制御について
図2にしたがって説明する。
図2に示すように、FCECU65は、燃料電池車両がキーオンして、燃料電池10が起動した場合、燃料電池車両のキーオフ時に次回起動時に第1の主止弁31を開弁すると判断したか否かを判定する(ステップS101)。FCECU65は、燃料電池車両のキーオフ時に次回起動時に第1の主止弁31を開弁すると判断した場合(ステップS101がYES)、ステップS102を実施する。FCECU65は、燃料電池車両のキーオフ時に次回起動時に第1の主止弁31を開弁すると判断しなかった場合(ステップS101がNO)、ステップS108を実施する。
【0034】
ステップS102において、FCECU65は、記憶している第1の圧力P1hの前回圧P1h_oldを読み込む。前回圧P1h_oldは、燃料電池車両のキーオフ時にメモリに記憶された第1の圧力P1hを示す値である。
【0035】
FCECU65は、ステップS102を実施した後、第1の主止弁31を開弁する(ステップS103)。第1の主止弁31を開弁することにより第1の水素タンクT1に貯留される水素は、第1の主止弁31を介して第1の圧力レギュレータ41に供給される。そのため、第1の分岐配管21の中間配管21bに高圧の水素が流れる。FCECU65は、ステップS103を実施した後、第1の圧力センサ61から出力される電気信号に基づき第1の圧力P1hを検出する(ステップS104)。
【0036】
FCECU65は、ステップS104を実施した後、今回検出した第1の圧力P1hと前回圧P1h_oldとの差分が所定値P_refよりも大きいか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、FCECU65は、ステップS105において、前回の燃料電池車両のキーオフから今回の燃料電池10の起動までの間に第1の水素タンクT1に水素が充填されたか否かを判定する。
【0037】
所定値P_refは、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2に水素が充填されたことを判断することができる値である。所定値P_refは、第1の圧力センサ61及び第2の圧力センサ62により検出される電気信号に基づきFCECU65により演算される水素の圧力の検出誤差や、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2が置かれる環境による水素の圧力の誤差により第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2に水素が充填されたことを誤判定しないように設定された値である。
【0038】
FCECU65は、第1の圧力P1hと前回圧P1h_oldとの差分が所定値P_refよりも大きいと判定した場合(ステップS105がYES)、すなわち、第1の水素タンクT1に水素が充填されたと判定した場合、ステップS106を実施する。FCECU65は、第1の圧力P1hと前回圧P1h_oldとの差分が所定値P_ref以下である場合(ステップS105がNO)、すなわち、第1の水素タンクT1に水素が充填されていないと判定した場合、第2の主止弁32を閉弁させた状態でステップS107を実施する。
【0039】
ステップS106において、FCECU65は、第2の主止弁32を開弁する。第2の主止弁32を開弁することにより第2の水素タンクT2に貯留された水素は、第2の主止弁32を介して第2の圧力レギュレータ42に供給される。
【0040】
FCECU65は、ステップS106を実施した後、残量計70に水素の残量を表示する(ステップS107)。FCECU65は、第1の主止弁31及び第2の主止弁32の両者が開弁している状態において、第1の圧力P1h、第2の圧力P2h、中間配管21b,22bの配管容積、圧縮係数等から第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2の水素の残量を演算し、この演算結果に基づく制御信号を残量計70に出力し、残量計70の残量表示を更新する。FCECU65は、ステップS105でNOである場合においても同様に第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2の残量を演算する。FCECU65は、ステップS107を実施した後、処理を終了する(END)。
【0041】
ステップS108において、FCECU65は、記憶している第2の圧力P2hの前回圧P2h_oldを読み込む。前回圧P2h_oldは、燃料電池車両のキーオフ時にメモリに記憶された第2の圧力P2hを示す値である。
【0042】
FCECU65は、ステップS108を実施した後、第2の主止弁32を開弁する(ステップS109)。第2の主止弁32を開弁することにより第2の水素タンクT2に貯留される水素は、第2の主止弁32を介して第2の圧力レギュレータ42に供給される。そのため、第2の分岐配管22の中間配管22bに高圧の水素が流れる。FCECU65は、ステップS109を実施した後、第2の圧力センサ62から出力される電気信号に基づき第2の圧力P2hを検出する(ステップS110)。
【0043】
FCECU65は、ステップS110を実施した後、今回検出した第2の圧力P2hと前回圧P2h_oldとの差分が所定値P_refよりも大きいか否かを判定する(ステップS111)。すなわち、FCECU65は、ステップS111において、前回の燃料電池車両のキーオフから今回の燃料電池10の起動までの間に第2の水素タンクT2に水素が充填されたか否かを判定する。
【0044】
FCECU65は、第2の圧力P2hと前回圧P2h_oldとの差分が所定値P_refよりも大きいと判定した場合(ステップS110がYES)、すなわち、第2の水素タンクT2に水素が充填されたと判定した場合、ステップS112を実施する。FCECU65は、第2の圧力P2hと前回圧P2h_oldとの差分が所定値P_ref以下である場合(ステップS110がNO)、すなわち、第2の水素タンクT2に水素が充填されていないと判定した場合、第1の主止弁31を閉弁させた状態でステップS107を実施する。
【0045】
ステップS112において、FCECU65は、第2の主止弁32を開弁する。第2の主止弁32を開弁することにより第2の水素タンクT2に貯留された水素は、第2の主止弁32を介して第2の圧力レギュレータ42に供給される。
【0046】
FCECU65は、ステップS112を実施した後、残量計70に水素の残量を表示する(ステップS107)。FCECU65は、ステップS111でNOである場合においても同様に第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2の残量を演算する。FCECU65は、ステップS107を実施した後、処理を終了する(END)。FCECU65は、残量計70に水素の残量を表示した後にインジェクタ43の動作を制御して燃料電池10に水素を供給する。なお、ステップS101がYESである場合、第1の水素タンクT1が予め定められた水素タンクの一例であり、ステップS102がNOである場合、第2の水素タンクT2が予め定められた水素タンクの一例である。「予め定められた水素タンク」とは、本実施形態では、燃料電池車両のキーオフした次回の燃料電池で10の起動時に使用する水素タンクを示している。
【0047】
燃料電池10が起動した場合に行う制御において、予め定められた水素タンクT1,T2に水素が充填された後、最初に燃料電池10が起動する第1の起動時には、第1の主止弁31及び第2の主止弁32の両者を開弁させている。第1の起動時にFCECU65が第1の主止弁31及び第2の主止弁32を開弁させる制御は、総合水素供給制御である。
【0048】
燃料電池車両のキーの操作、第1の主止弁31、第2の主止弁32、及びインジェクタ43の動作と、第1の圧力P1h及び第2の圧力P2hの変化について
図3にしたがって説明する。なお、以下の説明では、
図2に示す、ステップS101~S107の処理を実行する場合を想定して説明する。
【0049】
図3に示すように、燃料電池車両がキーオンされたとき、第1の主止弁31が開弁される。燃料電池車両がキーオンされて第1の主止弁31が開弁されるため、第1の分岐配管21の中間配管21bに高圧の水素が流れ、第1の圧力P1hが上昇する。予め定められた水素タンクである第1の水素タンクT1に水素が充填されていれば、第2の主止弁32が開弁される。そのため、第2の主止弁32の開弁のタイミング及び第2の圧力P2hが上昇するタイミングは、第1の主止弁31の開弁のタイミング及び第1の圧力P1hが上昇するタイミングよりも遅くなる。その後、残量計70に水素の残量を表示させ、インジェクタ43を動作させる。インジェクタ43は、第1の主止弁31及び第2の主止弁32が開弁している状態で、開弁及び閉弁を短い周期で繰り返す。
【0050】
ここで、第1の主止弁31及び第2の主止弁32の個体差(ばらつき)や、第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42内での異物の詰まり等の要因により、第1の圧力レギュレータ41の設定値Pmの方が第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmよりも大きくなる場合を想定する。この場合、第1の主止弁31及び第2の主止弁32の両者が開弁しているが、第1の圧力レギュレータ41と第1の主止弁31との間に位置する中間配管21bに滞留する水素が統合配管23に引き込まれ、インジェクタ43を介して燃料電池10に供給されることを発明者が発見した。インジェクタ43を動作させてから第1の水素タンクT1に貯留されている水素の使用量の方が多くなることから、第1の圧力P1hの低下量が第2の圧力P2hの低下量よりも大きくなる。燃料電池車両がキーオフしたとき、第1の主止弁31及び第2の主止弁32を閉弁させ、インジェクタ43の動作を停止し、第1の圧力P1h及び第2の圧力P2hも安定する。
【0051】
第1の圧力レギュレータ41の設定値Pmの方が第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmよりも大きくなる場合を想定すると、第1の起動時における第1の圧力P1hと、燃料電池車両がキーオフしたときの第1の圧力P1hである前回圧P1h_oldとの差分である第1の差分値ΔP1hが、第1の起動時における第2の圧力P2hと、燃料電池車両がキーオフしたときの第2の圧力P2hである前回圧P2h_oldとの差分である第2の差分値ΔP2hよりも大きい。
【0052】
第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmの方が第1の圧力レギュレータ41の設定値Pmよりも大きくなる場合を想定すると、第2の圧力P2hの低下量が第1の圧力P1hの低下量よりも大きくなる。そのため、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも小さい。
【0053】
次に、所定条件を満たした場合に行うFCECU65の制御について
図4にしたがって説明する。
図4に示すように、FCECU65は、所定条件を満たした場合、第1の差分値ΔP1h及び第2の差分値ΔP2hを演算する(ステップS201)。所定条件は、燃料電池車両のキーオフである。FCECU65は、ステップS201を実施した後、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きいか否かを判定する(ステップS202)。第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きいことは、第1の圧力レギュレータ41の設定値Pmが第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmよりも大きいことを示している。第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きくないことは、第1の圧力レギュレータ41の設定値Pmが第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmよりも小さいことを示している。FCECU65は、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きいと判定した場合(ステップS202がYES)、ステップS203を実施する。FCECU65は、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きくないと判定した場合(ステップS202がNO)、ステップS204を実施する。
【0054】
FCECU65は、ステップS202がYESである場合、次回の燃料電池10の起動時において、第2の主止弁32を閉弁した状態で第1の主止弁31を開弁させるようにメモリに記憶する。FCECU65は、ステップS202がNOである場合、次回の燃料電池10の起動時において、第1の主止弁31を閉弁した状態で第2の主止弁32を開弁させるようにメモリに記憶する。
【0055】
FCECU65は、ステップS203及びステップS204を実施した後、燃料電池車両がキーオフしたときの第1の圧力P1hである前回圧P1h_old及び燃料電池車両がキーオフしたときの第2の圧力P2hである前回圧P2h_oldをメモリに記憶する。FCECU65は、ステップS205を実施した後、処理を終了する(END)。
【0056】
図2に示すように、FCECU65は、所定条件を満たした場合に行う制御を実施した次の燃料電池10の起動時に、再度ステップS101を実施する。FCECU65は、所定条件を満たした場合にステップS203を実施していれば、ステップS102以降の制御を実施する。FCECU65は、所定条件を満たした次の燃料電池10の起動時において、予め定められた水素タンクT1に水素が充填されていなければ、ステップS105がNOとなり、第2の主止弁32を閉弁させた状態で第1の主止弁31を開弁し、ステップS107を実施する。すなわち、FCECU65は、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きい場合、燃料電池車両がキーオフした次の燃料電池10の起動時において、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2のうち予め定められた第1の水素タンクT1に水素が充填されていなければ、第2の主止弁32を閉弁させた状態で第1の主止弁31を開弁させる第1水素供給制御を実施する。
【0057】
FCECU65は、所定条件を満たした場合にステップS204を実施していれば、ステップS108以降の制御を実施する。FCECU65は、所定条件を満たした次の燃料電池10の起動時において、予め定められた水素タンクT2に水素が充填されていなければ、ステップS111がNOとなり、第1の主止弁31を閉弁させた状態で第2の主止弁32を開弁し、ステップS107を実施する。すなわち、FCECU65は、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも小さい場合、燃料電池車両がキーオフした次の燃料電池10の起動時において、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2のうち予め定められた第2の水素タンクT2に水素が充填されていなければ、第1の主止弁31を閉弁させた状態で第2の主止弁32を開弁させる第2水素供給制御を実施する。
【0058】
図4に示すように、FCECU65は、第1水素供給制御を実施し、燃料電池車両がキーオフされると、ステップS201以降の制御を実施する。この場合、第2の主止弁32が閉弁された状態で第1の主止弁31が開弁している状態であり、ステップS202では、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きくなるため(ステップS202がYES)、FCECU65は、ステップS203を実施する。
【0059】
FCECU65は、第2水素供給制御を実施し、燃料電池車両がキーオフされると、ステップS101以降の制御を実施する。この場合、第1の主止弁31が閉弁された状態で第2の主止弁32が開弁している状態であり、ステップS202では、第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも小さくなるため(ステップS202がNO)、FCECU65は、ステップS204を実施する。
【0060】
FCECU65は、ステップS203及びステップS204を実施した後、再びステップS205を実施する。FCECU65は、ステップS205において、前回圧P1h_old及び前回圧P2h_oldを更新してメモリに記憶する。すなわち、FCECU65で実施するステップS205は、所定条件を満たしたとき、第1水素供給制御が終了したとき、及び第2水素供給制御が終了したときの前回圧P1h_old及び前回圧P2h_oldを更新して記憶する前回圧記憶制御である。
【0061】
図2に示すように、仮に、前回圧記憶制御が実施された後に第1の水素タンクT1に水素が充填されているとする。FCECU65が実施するステップS105では、前回圧記憶制御を実施した後、最初に燃料電池10が起動したときの第1の圧力P1hと、前回圧記憶制御にて記憶された前回圧P1h_oldとの差分が所定値P_refを上回るため、ステップS106を実施する。すなわち、FCECU65は、前回圧記憶制御を実施した後、最初に燃料電池10が起動したときの第1の圧力P1hと、前回圧記憶制御にて記憶された前回圧P1h_oldとの差分が所定値P_refを上回る場合、前回圧記憶制御を実施した後、最初の燃料電池10の起動時に総合水素供給制御を実施する。
【0062】
また、仮に、前回圧記憶制御が実施された後に第2の水素タンクT2に水素が充填されているとする。FCECU65が実施するステップS111では、前回圧記憶制御を実施した後、最初に燃料電池10が起動したときの第2の圧力P2hと、前回圧記憶制御にて記憶された前回圧P2h_oldとの差分が所定値P_refを上回るため、ステップS112を実施する。すなわち、FCECU65は、前回圧記憶制御を実施した後、最初に燃料電池10が起動したときの第2の圧力P2hと、前回圧記憶制御にて記憶された前回圧P2h_oldとの差分が所定値P_refを上回る場合、前回圧記憶制御を実施した後、最初の燃料電池10の起動時に総合水素供給制御を実施する。
【0063】
次に、燃料電池10が稼働している場合に行うFCECU65の制御について
図5にしたがって説明する。
図5に示すように、FCECU65は、第1の圧力P1hが第1の圧力レギュレータ41の設定値Pmよりも小さいか否かを判定する(ステップS301)。第1の水素タンクT1に貯留される水素が少なくなると、第1の圧力P1hが小さくなる。すなわち、FCECU65は、ステップS301において、第1の水素タンクT1に貯留される水素の残量が設定値Pmを満たすことができる程度に残っているか否かを判定している。FCECU65は、第1の圧力P1hが設定値Pmよりも小さいと判定した場合(ステップS301がYES)、すなわち、第1の水素タンクT1に貯留される水素が設定値Pmに満たないと判定した場合、ステップS302を実施する。FCECU65は、第1の圧力P1hが設定値Pmよりも小さくないと判定した場合(ステップS301がNO)、すなわち、第1の水素タンクT1に貯留される水素が設定値Pmを満たすことができると判定した場合、ステップS303を実施する。
【0064】
FCECU65は、ステップS301がYESである場合、第1の主止弁31を閉弁し、且つ第2の主止弁32を開弁する(ステップS302)。FCECU65は、ステップS301がNOである場合、第2の圧力P2hが第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmよりも小さいか否かを判定する(ステップS303)。第2の水素タンクT2に貯留される水素が少なくなると、第2の圧力P2hが小さくなる。すなわち、FCECU65は、ステップS303において、第2の水素タンクT2に貯留される水素の残量が設定値Pmを満たすことができる程度に残っているか否かを判定している。FCECU65は、第2の圧力P2hが設定値Pmよりも小さいと判定した場合(ステップS303がYES)、すなわち、第2の水素タンクT2に貯留される水素が設定値Pmに満たないと判定した場合、ステップS304を実施する。FCECU65は、第2の圧力P2hが設定値Pmよりも小さくないと判定した場合(ステップS301がNO)、すなわち、第2の水素タンクT2に貯留される水素が設定値Pmを満たすことができると判定した場合、処理を収容する(END)。
【0065】
本実施形態の作用を説明する。
第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも大きい場合とは、第1の圧力レギュレータ41が降圧する水素の圧力の設定値Pmが、第2の圧力レギュレータ42が降圧する水素の圧力の設定値Pmよりも大きいことを示している。第1の差分値ΔP1hが第2の差分値ΔP2hよりも小さい場合とは、第1の圧力レギュレータ41が降圧する水素の圧力の設定値Pmが、第2の圧力レギュレータ42が降圧する水素の圧力の設定値Pmよりも小さいことを示している。
【0066】
燃料電池車両がキーオフした次の燃料電池10の起動時において、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2のうち予め定められた方に水素が充填されていなければ、第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42のうち降圧する水素の圧力の設定値Pmが大きい方の圧力レギュレータの上流に設けられる第1の主止弁31又は第2の主止弁32のみを開弁させて燃料電池10に水素を供給する第1水素供給制御又は第2水素供給制御を実施する。そのため、第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42のいずれかの設定値Pmが変動しても、第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42のうち設定値Pmが小さい方の圧力レギュレータと、当該圧力レギュレータの上流に設けられる第1の主止弁31又は第2の主止弁32との間に滞留する高圧の水素が統合配管23に引き込まれ難くなる。
【0067】
本実施形態の効果を説明する。
(1)設定値Pmが小さい方の第1の圧力レギュレータ41又は第2の圧力レギュレータ42の上流に設けられる第1の主止弁31又は第2の主止弁32に作用する圧力差が大きくなることを抑制できる。したがって、圧力差に起因する主止弁31,32の閉弁不良を抑制できる。
【0068】
(2)前回圧記憶制御を実施した後、最初に燃料電池10が起動したときの第1の圧力P1hと前回圧記憶制御にて記憶された前回圧P1h_oldとの差分が所定値P_refを上回る場合、前回圧記憶制御を実施した後、最初の燃料電池10の起動時に総合水素供給制御を実施する。また、前回圧記憶制御を実施した後、最初に燃料電池10が起動したときの第2の圧力P2hと前回圧記憶制御にて記憶された前回圧P2h_oldとの差分が所定値P_refを上回る場合、前回圧記憶制御を実施した後、最初の燃料電池10の起動時に総合水素供給制御を実施する。そのため、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2に水素が充填されたことを好適に確認することができる。
【0069】
(3)第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmが変動するときの要因は、主に第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42それぞれの個体差(ばらつき)である。第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42それぞれの設定値Pmが設計上同じであると、第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42それぞれの個体差は、判断し難い。そのため、圧力差に起因する主止弁31,32の閉弁不良の抑制効果は、水素の圧力を降圧するときの第1の圧力レギュレータ41及び第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmが同じである場合に顕著である。
【0070】
(4)所定条件は、総合水素供給制御から第1水素供給制御への切り換え、総合水素供給制御から第2水素供給制御への切り換えの契機である。当該契機を燃料電池車両のキーオフにすることにより、既存の構成を利用して所定条件を決めることができる。したがって、燃料供給装置50の制御をより簡易的にすることができる。
【0071】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 燃料供給装置50は、燃料電池車両に搭載されるものであったがこれに限らない。例えば、定置型燃料電池や燃料電池が搭載されたフォークリフト等の産業車両に搭載されるものであってもよい。
【0072】
○ 所定条件は、燃料電池車両のキーオフでなくてもよい。例えば、所定条件は、FCECU65が総合水素供給制御を実施して規定時間経過したときとしてもよい。このように変更する場合、規定時間は、第1の差分値ΔP1h及び第2の差分値ΔP2hのいずれかが明確になる程度の時間に設定するとよい。
【0073】
○ 本実施形態において、燃料電池車両がキーオフしてインジェクタ43の動作を停止させたが、例えば、第1の主止弁31及び第2の主止弁32の閉弁状態を確認するために燃料電池車両がキーオフして所定時間が経過してから動作させてもよい。このとき、第1の主止弁31及び第2の主止弁32に閉弁不良が生じている場合、第1の圧力センサ61及び第2の圧力センサ62から検出される第1の圧力P1h及び第2の圧力P2hが減少しないため、好適に第1の主止弁31及び第2の主止弁32の閉弁不良を確認することができる。ここで、所定条件を、例えば、燃料電池車両がキーオフして所定時間後としてもよい。すなわち、FCECU65が所定条件を満たした場合に行う制御であるステップS201,S202,S203,S204,S205を、第1の主止弁31及び第2の主止弁32の閉弁不良を確認した後に実施してもよい。
【0074】
○ 第1の圧力レギュレータ41の設定値Pmと、第2の圧力レギュレータ42の設定値Pmとは、同じであったが、若干異なっていてもよい。例えば、第1の圧力レギュレータ41の設定値が第2の圧力レギュレータの設定値よりも若干大きくてもよい。
【0075】
○ 燃料供給装置50は、残量計70を割愛してもよい。
○ 第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2に水素を充填する際、第1の水素タンクT1及び第2の水素タンクT2の両者に同時に水素を充填してもよいし、第1の水素タンクT1のみに水素を充填してもよいし、第2の水素タンクT2のみに水素を充填してもよい。
【0076】
○ FCECU65は、第1の主止弁31、第2の主止弁32、インジェクタ43、酸素用アクチュエータ80、及び冷却回路90の動作を制御していたが、これに限らない。例えば、制御部として燃料供給装置用ECUを採用し、当該燃料供給装置用ECUにより第1の主止弁31及び第2の主止弁32の動作を制御し、FCECU65は、インジェクタ43、酸素用アクチュエータ80、及び冷却回路90の動作を制御してもよい。
【符号の説明】
【0077】
10…燃料電池、20…水素供給配管、21…第1の分岐配管、22…第2の分岐配管、23…統合配管、31…第1の主止弁、32…第2の主止弁、41…第1の圧力レギュレータ、42…第2の圧力レギュレータ、50…燃料供給装置、65…FCECU、T1…第1の水素タンク、T2…第2の水素タンク、P1h…第1の圧力、P1h_old…第1の圧力の前回圧、P2h…第2の圧力、P2h_old…第2の圧力の前回圧、Pm…設定値、P_ref…所定値、ΔP1h…第1の差分値、ΔP2h…第2の差分値。