(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ルーツポンプ
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20230912BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20230912BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20230912BHJP
F04C 18/18 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F04B39/00 104A
F04C29/00 C
F04C29/00 S
F04C18/18 A
(21)【出願番号】P 2020080539
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 史也
(72)【発明者】
【氏名】正木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】柏 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼荷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】三木 陽平
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168714(JP,A)
【文献】特開2009-210049(JP,A)
【文献】実開昭59-025744(JP,U)
【文献】実開昭48-036245(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F04B 39/00
F04C 29/00
F04C 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって回転される回転軸によって駆動される駆動ロータと、
前記駆動源によって前記駆動ロータとともに従動する従動ロータと、
前記駆動ロータ及び前記従動ロータが収容され、前記回転軸が貫通する底壁及び前記底壁の外周部から筒状に延びる周壁を有するロータハウジングと、前記ロータハウジングの開口を閉塞するカバー部材と、を有するハウジングと、
前記周壁と前記カバー部材との合わせ面の少なくとも一方に形成される環状の第1の凹溝と、
前記第1の凹溝に収容され、前記ハウジングの内部と外部とをシールするシール部材と、を備えるルーツポンプであって、
前記ロータハウジングには、前記駆動ロータと前記従動ロータとの間において前記周壁が内周側に向けて膨出し、前記カバー部材との合わせ面を有する膨出部が形成され、
前記シール部材は、
環状のシール本体部と、
前記シール本体部から前記第1の凹溝の内周側又は外周側の側面に向けて突出し、前記シール本体部の周方向に間隔をおいて複数配置される第1の突起と、
前記シール本体部から前記第1の突起よりも内周側に向けて突出する第2の突起と、を備え、
前記第1の突起の先端部は、前記第1の凹溝の内周側又は外周側の側面に接触し、
前記第2の突起は、前記膨出部に設けられるとともに前記第1の凹溝の内周側の側面に繋がる第2の凹溝に配置されて、前記シール本体部の前記第1の凹溝内での位置決めを行うことを特徴とするルーツポンプ。
【請求項2】
前記第2の突起は、突起先端部と、前記シール本体部と前記突起先端部との間を繋ぐ連結部と、を備え、
少なくとも前記突起先端部が前記第2の凹溝に接触していることを特徴とする請求項1に記載のルーツポンプ。
【請求項3】
前記第2の突起は、突起先端部と、前記シール本体部と前記突起先端部との間を繋ぐ連結部と、を備え、
前記突起先端部は前記第2の凹溝に接触せず、前記突起先端部と前記第2の凹溝との間には空隙が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のルーツポンプ。
【請求項4】
前記周壁の内周面には、前記駆動ロータの回転軸線周りで半円弧状に延びる第1案内面と、前記従動ロータの回転軸線周りで半円弧状に延びる第2案内面と、前記第1案内面に連続して前記駆動ロータの回転軸線周りで弧状に延びる第1弧状面と、前記第2案内面に連続して前記従動ロータの回転軸線周りで弧状に延びて前記第1弧状面に連続する第2弧状面と、が形成され、
前記膨出部は、前記第1弧状面及び前記第2弧状面で区画され、前記周壁の他部分よりも内周側に膨出することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のルーツポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーツポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているルーツポンプは、駆動源によって回転される回転軸によって駆動される駆動ロータと、駆動源によって駆動ロータとともに従動する従動ロータと、を備えている。また、ルーツポンプのハウジングは、回転軸が貫通する底壁及び底壁の外周部から筒状に延びる周壁を有するロータハウジングと、ロータハウジングの開口を閉塞するカバー部材と、を有している。ロータハウジングは、駆動ロータ及び従動ロータを収容する。ロータハウジングの周壁とカバー部材との合わせ面の少なくとも一方には、環状の第1の凹溝が形成されている。そして、第1の凹溝には、ハウジングの内部と外部とをシールするシール部材が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、ルーツポンプを搭載した車両が海岸付近を走行する等した場合に、塩水が、ハウジングの外部からロータハウジングの周壁とカバー部材との間を介してハウジングの内部に向けて侵入しようとする場合がある。この場合、シール部材は、ロータハウジングの周壁とカバー部材との間を介したハウジングの外部からハウジングの内部への塩水の侵入を抑制する。しかし、第1の凹溝の外周側の側面とシール部材との間の隙間が大きいと、その隙間に塩水が溜まり易くなる。そして、その隙間に溜まった塩水の塩分濃度が高まっていくと、塩水に接するハウジングの部位や、塩水に接するシール部材の部位が塩水によって腐食してしまうという問題が起こり得る。
【0005】
また、燃料電池自動車には、燃料電池に酸素及び水素を供給して発電させる燃料電池システムが搭載されており、例えば特許文献1に開示されているルーツポンプは、燃料電池に水素を供給するポンプとして用いられている。ルーツポンプには、燃料電池にて酸素と反応しなかった水素が吸入される。水素は、燃料電池の発電に伴い生成された生成水を含んでいる。シール部材は、ロータハウジングの周壁とカバー部材との間を介したハウジングの内部からハウジングの外部への生成水を含んだ水素の洩れを抑制する。しかし、第1の凹溝の内周側の側面とシール部材との間の隙間が大きいと、その隙間に生成水を含んだ水素が溜まり易くなる。すると、その隙間に溜まった水素に含まれる生成水に接するハウジングの部位や、生成水に接するシール部材の部位が生成水によって腐食してしまうという問題が起こり得る。
【0006】
また、第1の凹溝が、真円環状ではなく、例えば、楕円環状や四角環状に形成されており、第1の凹溝に収容されるシール部材が、第1の凹溝の形状に合わせて楕円環状や四角環状に予め形成されている場合がある。この場合、シール部材が、第1の凹溝に対して位相がずれた状態で収容されてしまうと、第1の凹溝の側面とシール部材との間に隙間が生じてしまう虞があり、その隙間に上述したような塩水や生成水が溜まって、結果として、ハウジングやシール部材の耐腐食性が低下してしまう虞がある。また、ルーツポンプは、小型化の要求が高いため、大型化を招くことなく、耐腐食性を向上させることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、大型化を招くことなく、耐腐食性を向上させることができるルーツポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するルーツポンプは、駆動源によって回転される回転軸によって駆動される駆動ロータと、前記駆動源によって前記駆動ロータとともに従動する従動ロータと、前記駆動ロータ及び前記従動ロータが収容され、前記回転軸が貫通する底壁及び前記底壁の外周部から筒状に延びる周壁を有するロータハウジングと、前記ロータハウジングの開口を閉塞するカバー部材と、を有するハウジングと、前記周壁と前記カバー部材との合わせ面の少なくとも一方に形成される環状の第1の凹溝と、前記第1の凹溝に収容され、前記ハウジングの内部と外部とをシールするシール部材と、を備えるルーツポンプであって、前記ロータハウジングには、前記駆動ロータと前記従動ロータとの間において前記周壁が内周側に向けて膨出し、前記カバー部材との合わせ面を有する膨出部が形成され、前記シール部材は、環状のシール本体部と、前記シール本体部から前記第1の凹溝の内周側又は外周側の側面に向けて突出し、前記シール本体部の周方向に間隔をおいて複数配置される第1の突起と、前記シール本体部から前記第1の突起よりも内周側に向けて突出する第2の突起と、を備え、前記第1の突起の先端部は、前記第1の凹溝の内周側又は外周側の側面に接触し、前記第2の突起は、前記膨出部に設けられるとともに前記第1の凹溝の内周側の側面に繋がる第2の凹溝に配置されて、前記シール本体部の前記第1の凹溝内での位置決めを行う。
【0009】
これによれば、シール本体部が、複数の第1の突起によって第1の凹溝の内周側及び外周側の側面間に押圧されるため、第1の凹溝の側面とシール部材との間の隙間が小さくなる。このため、第1の凹溝の側面とシール部材との間の隙間に流体が溜まり難くなる。したがって、ハウジングやシール部材の耐腐食性を向上させることができる。
【0010】
ところで、第1の凹溝が、真円環状ではなく、例えば、楕円環状や四角環状に形成されており、第1の凹溝に収容されるシール部材が、第1の凹溝の形状に合わせて楕円環状や四角環状に予め形成されている場合がある。この場合、シール部材が、第1の凹溝に対して位相がずれた状態で収容されてしまうと、第1の凹溝の側面とシール部材との間に隙間が生じてしまう虞がある。
【0011】
そこで、第1の凹溝の内周側の側面に繋がる第2の凹溝を膨出部に設け、シール本体部から第1の突起よりも内周側に向けて突出する第2の突起を第2の凹溝に配置し、シール本体部の第1の凹溝内での位置決めを行うようにした。これによれば、第1の凹溝の側面とシール部材との間に隙間が生じ難くなる。その結果として、第1の凹溝の側面とシール部材との間の隙間に流体が溜まり難くなり、ハウジングやシール部材の耐腐食性を向上させることができる。
【0012】
ここで、膨出部は、駆動ロータと従動ロータとの間においてロータハウジングの周壁が内周側に向けて膨出することで形成されているため、ロータハウジングに膨出部が形成されていても、膨出部が駆動ロータ及び従動ロータの回転に影響を及ぼすことは無く、ルーツポンプが大型化することも無い。そして、膨出部に第2の凹溝を設けた。これによれば、ルーツポンプが大型化すること無く、第2の凹溝を第1の凹溝の内周側の側面に繋がるように形成することができる。したがって、大型化を招くことなく、耐腐食性を向上させることができる。
【0013】
上記ルーツポンプにおいて、前記第2の突起は、突起先端部と、前記シール本体部と前記突起先端部との間を繋ぐ連結部と、を備え、少なくとも前記突起先端部が前記第2の凹溝に接触しているとよい。
【0014】
これによれば、シール本体部が、第1の突起に加えて、第2の突起によっても第1の凹溝の内周側及び外周側の両側面間に押圧されるため、第1の凹溝の側面とシール部材との間の隙間をさらに小さくし易くすることができる。したがって、第1の凹溝の側面とシール部材との間の隙間に流体がさらに溜まり難くなるため、ハウジングやシール部材の耐腐食性をさらに向上させることができる。
【0015】
上記ルーツポンプにおいて、前記第2の突起は、突起先端部と、前記シール本体部と前記突起先端部との間を繋ぐ連結部と、を備え、前記突起先端部は前記第2の凹溝に接触せず、前記突起先端部と前記第2の凹溝との間には空隙が形成されているとよい。
【0016】
これによれば、例えば、第2の突起の突起先端部と第2の凹溝との間の空隙に流体が流れ込むことにより、シール本体部が、第1の突起に加えて、流体の圧力によっても第1の凹溝の内周側及び外周側の両側面間に押圧されるため、第1の凹溝の側面とシール部材との間の隙間をさらに小さくし易くすることができる。したがって、第1の凹溝の側面とシール部材との間の隙間に流体がさらに溜まり難くなるため、ハウジングやシール部材の耐腐食性をさらに向上させることができる。
【0017】
上記ルーツポンプにおいて、前記周壁の内周面には、前記駆動ロータの回転軸線周りで半円弧状に延びる第1案内面と、前記従動ロータの回転軸線周りで半円弧状に延びる第2案内面と、前記第1案内面に連続して前記駆動ロータの回転軸線周りで弧状に延びる第1弧状面と、前記第2案内面に連続して前記従動ロータの回転軸線周りで弧状に延びて前記第1弧状面に連続する第2弧状面と、が形成され、前記膨出部は、前記第1弧状面及び前記第2弧状面で区画され、前記周壁の他部分よりも内周側に膨出するとよい。
【0018】
このような構成は、ロータハウジングに膨出部が形成されていても、膨出部が駆動ロータ及び従動ロータの回転に影響を及ぼすことは無く、ルーツポンプが大型化することも無い構成として好適である。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、大型化を招くことなく、耐腐食性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態におけるルーツポンプを示す平断面図。
【
図9】位置決め用突起及び位置決め用溝の周辺を拡大して示す断面図。
【
図11】シール部材の一部分を拡大して示す断面図。
【
図12】ロータハウジングの開口端面を拡大して示す正面図。
【
図14】別の実施形態における位置決め用突起の周辺を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、ルーツポンプを具体化した一実施形態を
図1~
図13にしたがって説明する。本実施形態のルーツポンプは、燃料電池車に搭載されている。燃料電池車には、酸素及び水素を供給して発電させる燃料電池システムが搭載されている。そして、ルーツポンプは、燃料電池から排出される流体としての水素(水素オフガス)を循環させて再び燃料電池に供給する燃料電池車用の水素ポンプとして用いられている。
【0022】
図1に示すように、ルーツポンプ10のハウジング11は、モータハウジング12、ギアハウジング13、ロータハウジング14、及びカバー部材15を有する筒状である。モータハウジング12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周部から筒状に延びる周壁12bと、を有する有底筒状である。ギアハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有する有底筒状である。
【0023】
ギアハウジング13は、ギアハウジング13の底壁13aの外面13cとモータハウジング12の周壁12bの開口端面12cとが突き合わされた状態で、モータハウジング12の周壁12bの開口側に連結されている。ギアハウジング13の底壁13aは、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。モータハウジング12の周壁12bの軸線方向とギアハウジング13の周壁13bの軸線方向とはそれぞれ一致している。
【0024】
ロータハウジング14は、板状の底壁14a、及び底壁14aの外周部から筒状に延びる周壁14bを有する有底筒状である。本実施形態のロータハウジング14の周壁14bは、楕円筒状である。ロータハウジング14は、ロータハウジング14の底壁14aの外面14cとギアハウジング13の周壁13bの開口端面13dとが突き合わされた状態で、ギアハウジング13の周壁13bの開口側に連結されている。ロータハウジング14の底壁14aは、ギアハウジング13の周壁13bの開口を閉塞している。ギアハウジング13の周壁13bの軸線方向とロータハウジング14の周壁14bの軸線方向とはそれぞれ一致している。
【0025】
カバー部材15は、板状である。本実施形態のカバー部材15は、平面視すると、楕円形状である。カバー部材15は、カバー部材15の一端面15aとロータハウジング14の周壁14bの開口端面14dとが突き合わされた状態で、ロータハウジング14の周壁14bの開口側に連結されている。カバー部材15は、ロータハウジング14の周壁14bの開口を閉塞した状態でロータハウジング14に連結されている。
【0026】
ルーツポンプ10は、ハウジング11に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される駆動軸16及び従動軸17を有している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向は、各周壁12b,13b,14bの軸線方向に一致している。駆動軸16には、円板状の駆動ギア18が固定されている。従動軸17には、駆動ギア18と噛合する円板状の従動ギア19が固定されている。駆動軸16には駆動ロータ20が設けられている。従動軸17には駆動ロータ20と噛合する従動ロータ21が設けられている。
【0027】
ルーツポンプ10は、駆動軸16を回転させる駆動源としての電動モータ22を備えている。したがって、駆動軸16は、駆動源である電動モータ22によって回転される回転軸である。電動モータ22は、ハウジング11内に形成されたモータ室23に収容されている。モータ室23は、モータハウジング12の底壁12a、モータハウジング12の周壁12b、及びギアハウジング13の底壁13aによって区画されている。電動モータ22は、駆動軸16に一体回転可能に止着された円筒状のモータロータ22aと、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定されるとともにモータロータ22aを取り囲む円筒状のステータ22bと、を有している。ステータ22bは、図示しないティースに巻回されたコイル22cを有している。そして、電動モータ22は、コイル22cに電力が供給されることにより駆動して、モータロータ22aが駆動軸16と一体的に回転する。
【0028】
ハウジング11内には、駆動ギア18及び従動ギア19を収容するギア室24が形成されている。ギア室24は、ギアハウジング13の底壁13a、ギアハウジング13の周壁13b、及びロータハウジング14の底壁14aによって区画されている。駆動ギア18及び従動ギア19は、互いに噛合した状態でギア室24に収容されている。ギア室24には、オイルが封入されている。オイルは、駆動ギア18及び従動ギア19の潤滑及び温度上昇の抑制に寄与する。駆動ギア18及び従動ギア19は、オイルに浸されながら回転することにより、焼き付いたり磨耗したりすることなく高速回転が可能になっている。
【0029】
ハウジング11内には、互いに噛合する駆動ロータ20及び従動ロータ21を収容するロータ室25が形成されている。ロータ室25は、ロータハウジング14の底壁14a、ロータハウジング14の周壁14b、及びカバー部材15によって区画されている。したがって、ロータハウジング14には、駆動ロータ20及び従動ロータ21が収容されている。駆動ロータ20及び従動ロータ21は、互いに噛合した状態でロータ室25に収容されている。本実施形態において、モータ室23、ギア室24、及びロータ室25は、駆動軸16の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されている。
【0030】
ギアハウジング13の底壁13aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とモータ室23とを隔てている。ロータハウジング14の底壁14aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とロータ室25とを隔てている。カバー部材15は、駆動軸16の回転軸線方向でロータ室25と外部とを隔てている。
【0031】
駆動軸16は、ギアハウジング13の底壁13a及びロータハウジング14の底壁14aを貫通している。従動軸17は、ロータハウジング14の底壁14aを貫通している。ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eは、ギア室24における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向でのモータ室23側の壁面を形成している。ロータハウジング14の底壁14aの外面14cは、ギア室24における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向でのロータ室25側の壁面を形成している。
【0032】
ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eには、駆動軸16を回転可能に支持する第1軸受26を収容する円孔状の第1軸受収容凹部27が形成されている。駆動軸16は、第1軸受収容凹部27を貫通している。また、第1軸受収容凹部27の底面27aには、駆動軸16が貫通するとともにギア室24とモータ室23との間をシールする環状の第1シール材28が収容される円孔状の第1シール収容凹部29が形成されている。第1シール収容凹部29は、第1軸受収容凹部27に連通している。また、駆動軸16の回転軸線方向における第1軸受26と第1軸受収容凹部27の底面27aとの間には、環状の第1スペーサ30が配置されている。
【0033】
ロータハウジング14の底壁14aの外面14cには、駆動軸16を回転可能に支持する第2軸受31を収容する円孔状の第2軸受収容凹部32が形成されている。駆動軸16は、第2軸受収容凹部32を貫通している。したがって、ロータハウジング14の底壁14aには、駆動軸16が貫通する。また、第2軸受収容凹部32の底面32aには、駆動軸16が貫通するとともにギア室24とロータ室25との間をシールする環状の第2シール材33が収容される円孔状の第2シール収容凹部34が形成されている。第2シール収容凹部34は、第2軸受収容凹部32に連通している。また、駆動軸16の回転軸線方向における第2軸受31と第2軸受収容凹部32の底面32aとの間には、環状の第2スペーサ35が配置されている。
【0034】
また、ロータハウジング14の底壁14aの外面14cには、従動軸17を回転可能に支持する第3軸受36を収容する円孔状の第3軸受収容凹部37が形成されている。従動軸17は、第3軸受収容凹部37を貫通している。また、第3軸受収容凹部37の底面37aには、従動軸17が貫通するとともにギア室24とロータ室25との間をシールする環状の第3シール材38が収容される円孔状の第3シール収容凹部39が形成されている。第3シール収容凹部39は、第3軸受収容凹部37に連通している。また、従動軸17の回転軸線方向における第3軸受36と第3軸受収容凹部37の底面37aとの間には、環状の第3スペーサ40が配置されている。
【0035】
ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eには、従動軸17の一端部を回転可能に支持する第4軸受41を収容する円孔状の第4軸受収容凹部42が形成されている。従動軸17の一端部は、第4軸受収容凹部42内に配置され、第4軸受41に回転可能に支持されている。従動軸17の他端部は、第3軸受収容凹部37及び第3シール収容凹部39を貫通してロータ室25に突出している。従動軸17の他端部には従動ロータ21が取り付けられており、従動軸17の他端部は自由端になっている。よって、従動軸17は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0036】
モータハウジング12の底壁12aの内底面12eには、駆動軸16の一端部を回転可能に支持する第5軸受43を収容する円筒状の軸受部44が形成されている。駆動軸16の一端部は、軸受部44の内側に配置され、第5軸受43に回転可能に支持されている。駆動軸16の他端部は、第1シール収容凹部29、第1軸受収容凹部27、ギア室24、第2軸受収容凹部32、及び第2シール収容凹部34を貫通してロータ室25に突出している。駆動軸16の他端部には駆動ロータ20が取り付けられており、駆動軸16の他端部は自由端になっている。よって、駆動軸16は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向から見たときに、周壁14bの長手方向で隣り合うように並んで配置されている。ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向から見たときに、駆動軸16の回転軸線r1と従動軸17の回転軸線r2とは、水平方向に延びる直線上に位置している。
【0038】
駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が二葉状(瓢箪状)に形成されている。駆動ロータ20は、二条の山歯20aと、両山歯20aの間に形成された谷歯20bと、を有している。従動ロータ21は、二条の山歯21aと、両山歯21aの間に形成された谷歯21bと、を有している。
【0039】
そして、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動ロータ20の山歯20aと従動ロータ21の谷歯21bとの噛合、及び駆動ロータ20の谷歯20bと従動ロータ21の山歯21aとの噛合を繰り返しながらロータ室25内を回転可能になっている。駆動ロータ20は、
図2及び
図3に示す矢印R1の方向に回転し、従動ロータ21は、
図2及び
図3に示す矢印R2の方向へ回転する。
【0040】
ロータハウジング14は、ロータ室25内に水素を吸入する吸入口45と、ロータ室25内の水素を吐出する吐出口46と、を有している。吸入口45及び吐出口46は、ロータハウジング14の周壁14bにおけるロータ室25を挟んで対向する位置にそれぞれ形成されている。吸入口45及び吐出口46は、ロータ室25と外部とを連通する。
【0041】
吸入口45と吐出口46とを結ぶ直線方向Z1は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線r1,r2のそれぞれに対して垂直に交差する。本実施形態のルーツポンプ10は、吸入口45が重力方向における下向きに開口し、吐出口46が重力方向における上向きに開口するように燃料電池自動車に搭載されている。したがって、吸入口45は、ロータ室25に対して重力方向における下側に配置されるとともに、吐出口46は、ロータ室25に対して重力方向における上側に配置されている。
図2及び
図3における直線方向Z1は重力方向に一致している。
【0042】
ロータハウジング14の周壁14bの内周面には、第1案内面141bと、第2案内面142bと、一対の連結面143bと、が形成されている。第1案内面141bは、駆動ロータ20の回転軸線周りで半円弧状に延びるとともに駆動ロータ20を案内する。第1案内面141bは、駆動ロータ20が回転しているときに駆動ロータ20の山歯20aの最外周部20eが通過する仮想円C1に沿って延びている。なお、駆動ロータ20の回転軸線は、駆動軸16の回転軸線r1に一致する。第2案内面142bは、従動ロータ21の回転軸線周りで半円弧状に延びるとともに従動ロータ21を案内する。第2案内面142bは、従動ロータ21が回転しているときに従動ロータ21の山歯21aの最外周部21eが通過する仮想円C2に沿って延びている。なお、従動ロータ21の回転軸線は、従動軸17の回転軸線r2に一致する。一対の連結面143bは、第1案内面141bと第2案内面142bとを繋ぐとともにロータ室25を挟んで互いに対向する位置に配置されている。
【0043】
一対の連結面143bの一方は、第1弧状面47a及び第2弧状面47bを有している。第1弧状面47aは、第1案内面141bに連続して駆動ロータ20の回転軸線周りで弧状に延びるとともに駆動ロータ20を案内する。第1弧状面47aは、駆動ロータ20が回転しているときに駆動ロータ20の山歯20aの最外周部20eが通過する仮想円C1に沿って延びている。第1弧状面47aは、第1案内面141bと同心円上に位置している。第2弧状面47bは、第2案内面142bに連続して従動ロータ21の回転軸線周りで弧状に延びて第1弧状面47aに連続するとともに従動ロータ21を案内する。第2弧状面47bは、従動ロータ21が回転しているときに従動ロータ21の山歯21aの最外周部21eが通過する仮想円C2に沿って延びている。第2弧状面47bは、第2案内面142bと同心円上に位置している。そして、ロータハウジング14の周壁14bの一部分は、第1弧状面47a及び第2弧状面47bを有する膨出部47になっている。したがって、ロータハウジング14には、駆動ロータ20と従動ロータ21との間において周壁14bが内周側に向けて膨出する膨出部47が形成されている。膨出部47は、第1弧状面47a及び第2弧状面47bで区画され、周壁14bの他部分よりも内周側に膨出している。
【0044】
膨出部47は、ロータハウジング14の周壁14bにおける重力方向の上側に配置されている。また、一対の連結面143bのうち、ロータ室25を挟んで膨出部47と対向配置する連結面143bは、膨出部47に向けて膨出することのない平滑面48になっている。本実施形態において、平滑面48は、水平方向に延びる平坦面状である。吸入口45は、ロータハウジング14の周壁14bを貫通して平滑面48に開口している。吐出口46は、膨出部47を貫通している。吐出口46は、連結面143bにおける第1弧状面47aと第2弧状面47bとを跨ぐ部位に開口している。
【0045】
電動モータ22の駆動によって駆動軸16が回転すると、互いに噛合された駆動ギア18及び従動ギア19のギア連結を介して従動軸17が駆動軸16に対して逆回転する。これにより、駆動ロータ20及び従動ロータ21が互いに噛合された状態でそれぞれ逆回転し、ルーツポンプ10は、駆動ロータ20及び従動ロータ21の回転によって、吸入口45を介したロータ室25への水素の吸入、及び吐出口46を介したロータ室25からの水素の吐出を行う。したがって、駆動ロータ20は、駆動軸16によって駆動され、従動ロータ21は、電動モータ22によって駆動ロータ20とともに従動する。
【0046】
図1に示すように、モータハウジング12の開口端面12cとギアハウジング13の底壁13aの外面13cとの間、ギアハウジング13の開口端面13dとロータハウジング14の底壁14aの外面14cとの間、及びロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間には、環状のシール部材50が設けられている。各シール部材50は、モータハウジング12の開口端面12cとギアハウジング13の底壁13aの外面13cとの間、ギアハウジング13の開口端面13dとロータハウジング14の底壁14aの外面14cとの間、及びロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間をシールしている。したがって、各シール部材50は、ハウジング11の内部と外部とをシールしている。各シール部材50は、弾性体である。シール部材50は、ゴム製である。
【0047】
なお、以下の説明においては、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間に設けられたシール部材50に関する構成について詳しく説明する。なお、モータハウジング12の開口端面12cとギアハウジング13の底壁13aの外面13cとの間に設けられたシール部材50に関する構成は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間に設けられたシール部材50に関する構成とほぼ同じであるため、その詳細な説明を省略する。同様に、ギアハウジング13の開口端面13dとロータハウジング14の底壁14aの外面14cとの間に設けられたシール部材50に関する構成は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間に設けられたシール部材50に関する構成とほぼ同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、シール部材50は、ロータハウジング14の開口端面14dに形成される環状の第1の凹溝であるシール収容溝60に収容されている。シール収容溝60の開口は、カバー部材15の一端面15aに閉塞されている。ロータハウジング14の開口端面14dは、カバー部材15との合わせ面を形成する第1形成面であり、カバー部材15の一端面15aは、ロータハウジング14との合わせ面を形成する第2形成面である。そして、本実施形態において、シール収容溝60は、第1形成面に形成されており、シール収容溝60の開口は、第2形成面に閉塞されている。シール収容溝60は、ロータハウジング14の周壁14bとカバー部材15との合わせ面の一方に形成されている。つまり、シール収容溝60は、合わせ面を形成するロータハウジング14の第1形成面及びカバー部材15の第2形成面の一方に形成されている。膨出部47は、カバー部材15との合わせ面を有する。
【0049】
シール収容溝60は、ハウジング11の内部側に位置する環状の溝内側周面61と、ハウジング11の外部側に位置する環状の溝外側周面62と、を有している。溝内側周面61は、シール収容溝60の内周側の側面であり、溝外側周面62は、シール収容溝60の外周側の側面である。また、シール収容溝60は、溝内側周面61におけるシール収容溝60の開口側とは反対側の端縁と溝外側周面62におけるシール収容溝60の開口側とは反対側の端縁とを接続する環状の溝底面63を有している。したがって、シール収容溝60は、溝底面63と、溝底面63に接続される一対の溝側面である溝内側周面61及び溝外側周面62と、を有している。
【0050】
溝内側周面61は、溝底面63に対してロータハウジング14の周壁14bの内周面側に位置している。溝外側周面62は、溝底面63に対してロータハウジング14の周壁14bの外周面側に位置している。したがって、一対の溝側面の一方は、溝底面63に対してロータハウジング14の周壁14bの内周面側に位置し、一対の溝側面の他方は、溝底面63に対してロータハウジング14の周壁14bの外周面側に位置している。溝内側周面61及び溝外側周面62は、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向に互いに平行に延びている。溝底面63は、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向に対して直交する方向に延びている。溝底面63は、ロータハウジング14の開口端面14dと平行に延びている。
【0051】
シール収容溝60は、溝内側周面61におけるシール収容溝60の開口側の端縁とロータハウジング14の開口端面14dとの間に形成された環状の溝内側面取り部64を有している。また、シール収容溝60は、溝外側周面62におけるシール収容溝60の開口側の端縁とロータハウジング14の開口端面14dとの間に形成された環状の溝外側面取り部65を有している。溝内側面取り部64及び溝外側面取り部65は、ロータハウジング14の開口端面14dに対して直線状に斜交するテーパ形状(C面取り形状)である。そして、シール収容溝60が溝内側面取り部64及び溝外側面取り部65を有していることにより、シール収容溝60に対するシール部材50の組み付け作業が行い易くなっている。
【0052】
図3に示すように、ロータハウジング14の開口端面14dに形成されるシール収容溝60は、ロータハウジング14の周壁14bに沿って延びる楕円環状である。そして、ロータハウジング14の開口端面14dに形成されるシール収容溝60に収容されるシール部材50は、シール収容溝60の形状に合わせて楕円環状に予め形成されている。
【0053】
図5に示すように、シール部材50は、楕円環状のシール本体部51と、シール本体部51の内周面51aから突出するとともにシール本体部51の周方向に間隔をおいて複数配置される第1の突起である押付け用突起52と、を備えている。なお、以下の説明において、シール本体部51を貫通する方向をシール本体部51の軸線方向とし、シール本体部51の軸線を中心に軸線に対して直交する方向をシール本体部51の径方向とする。
【0054】
複数の押付け用突起52は、シール本体部51の周方向で等間隔置きに配置されている。各押付け用突起52は、シール本体部51の内周面51aから膨出する薄板状である。各押付け用突起52の厚み方向は、シール本体部51の軸線方向に一致する。各押付け用突起52における厚み方向の両側に位置する両面は、互いに平行に延びる平坦面状である。各押付け用突起52におけるシール本体部51の内周面51aからの膨出方向に位置する面は、湾曲面状であるとともにシール本体部51の内周面51aに連続している。
【0055】
図6に示すように、シール本体部51は、環状の第1の接触部531及び環状の第2の接触部532を有している。第1の接触部531及び第2の接触部532は、シール本体部51の径方向で互いに離間した状態でシール本体部51の周方向全周に亘って延びている。そして、シール本体部51は、隣り合う第1の接触部531と第2の接触部532との間に形成される環状の第1の溝53aを有している。
【0056】
第1の接触部531は、第1の溝53aよりも内周側に位置している。第2の接触部532は、第1の溝53aよりも外周側に位置している。第1の接触部531は、シール本体部51の内周面51aに連続している。第2の接触部532は、シール本体部51の外周面51bに連続している。第1の接触部531及び第2の接触部532は、シール本体部51の径方向で隣り合っている。第1の接触部531の外面及び第2の接触部532の外面同士は、シール本体部51の径方向で重なっている。第1の接触部531の外面及び第2の接触部532の外面同士は、第1の溝53aの内面によって接続されている。第1の溝53aの内面は、弧状に湾曲している。
【0057】
第1の接触部531におけるシール本体部51の径方向の幅H1は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。第2の接触部532におけるシール本体部51の径方向の幅H2は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。第1の接触部531の幅H1及び第2の接触部532の幅H2は、同じ幅である。
【0058】
シール本体部51は、環状の第3の接触部541及び環状の第4の接触部542を有している。第3の接触部541及び第4の接触部542は、シール本体部51の径方向で互いに離間した状態でシール本体部51の周方向全周に亘って延びている。そして、シール本体部51は、隣り合う第3の接触部541と第4の接触部542との間に形成される環状の第2の溝54aを有している。
【0059】
第3の接触部541は、第2の溝54aよりも内周側に位置している。第4の接触部542は、第2の溝54aよりも外周側に位置している。第3の接触部541は、シール本体部51の内周面51aに連続している。第4の接触部542は、シール本体部51の外周面51bに連続している。第3の接触部541及び第4の接触部542は、シール本体部51の径方向で隣り合っている。第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面同士は、シール本体部51の径方向で重なっている。第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面同士は、第2の溝54aの内面によって接続されている。第2の溝54aの内面は、弧状に湾曲している。
【0060】
第3の接触部541におけるシール本体部51の径方向の幅H3は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。第4の接触部542におけるシール本体部51の径方向の幅H4は、シール本体部51の周方向で一定の幅になっている。第3の接触部541の幅H3及び第4の接触部542の幅H4は、同じ幅である。第1の接触部531の幅H1、第2の接触部532の幅H2、第3の接触部541の幅H3、及び第4の接触部542の幅H4は、同じ幅である。
【0061】
シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の内周面51aと外周面51bとの間の距離L1は、シール本体部51の軸線方向における第1の接触部531及び第2の接触部532の外面と第3の接触部541及び第4の接触部542の外面との間の距離L2よりも小さい。また、第1の溝53aの最深部531a及び第2の溝54aの最深部541aは、シール本体部51の軸線方向で互いに重なる位置に配置されている。したがって、第1の溝53aの最深部531aと第2の溝54aの最深部541aとを結ぶ直線S1は、シール本体部51の軸線方向に延びており、直線S1の長さL3は、シール本体部51の周方向で一定である。第1の溝53a及び第2の溝54aの深さは、シール本体部51の周方向で一定である。第1の溝53aの深さは、第2の溝54aの深さと同じである。
【0062】
図7に示すように、シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、各押付け用突起52は、シール本体部51の内周面51aにおけるシール本体部51の軸線方向の中央部に配置されている。シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4は、第1の溝53aの最深部531aと第2の溝54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも小さい。また、シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の外周面51bと押付け用突起52の先端部52eまでの距離L5は、
図4に示すように、シール収容溝60の径方向における溝内側周面61と溝外側周面62との間の距離L6よりも小さい。さらに、シール収容溝60の深さL7は、第1の溝53aの最深部531aと第2の溝54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも大きい。したがって、シール収容溝60の深さL7は、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4よりも大きい。
【0063】
第1の接触部531及び第2の接触部532は、シール収容溝60の溝底面63に接している。したがって、第1の接触部531の外面及び第2の接触部532の外面は、ロータハウジング14に圧接する面である。そして、第1の溝53aは、環状の全周において、ロータハウジング14に圧接する面である第1の接触部531の外面及び第2の接触部532の外面に対して凹条に形成され、ロータハウジング14と非接触である。第1の接触部531及び第2の接触部532は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向(
図4において矢印X1で示す方向)でロータハウジング14に接している。
【0064】
第3の接触部541及び第4の接触部542は、カバー部材15の一端面15aに接している。したがって、第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面は、カバー部材15に圧接する面である。そして、第2の溝54aは、環状の全周において、カバー部材15に圧接する面である第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面に対して凹条に形成され、カバー部材15と非接触である。第3の接触部541及び第4の接触部542は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でカバー部材15に接している。ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向は、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向に一致している。このように、シール部材50は、シール収容溝60に収容され、ロータハウジング14に圧接するとともにカバー部材15に圧接する。そして、第1の溝53aと第2の溝54aとはロータハウジング14の周壁14bとカバー部材15との合わせ方向において互いに反対方向に凹んでいる。
【0065】
さらに、複数の押付け用突起52は、シール本体部51の内周面51aからシール収容溝60の溝内側周面61に向けて突出している。そして、複数の押付け用突起52の先端部52eは、溝内側周面61に接触して溝内側周面61を押圧している。シール本体部51は、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより、溝外側周面62に押圧された状態で接している。したがって、シール本体部51は、複数の押付け用突起52によって溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧されている。よって、複数の押付け用突起52は、シール本体部51をシール収容溝60の外周側に対して押し付けて接触させている。
【0066】
第1の接触部531の外面、第2の接触部532の外面、及びシール本体部51の外周面51bは、ロータハウジング14に圧接して第1のシール長を有する第1シール部53を形成している。一方で、第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面は、カバー部材15に圧接して第1のシール長とは異なるシール長を有する第2シール部54を形成している。
【0067】
したがって、シール本体部51は、ロータハウジング14に圧接する第1シール部53、及びカバー部材15に圧接する第2シール部54を有している。そして、第1シール部53は、第1の接触部531と、第2の接触部532と、を有している。第2シール部54は、第3の接触部541と、第4の接触部542と、を有している。
【0068】
図8及び
図9に示すように、シール部材50は、シール本体部51の内周面51aから突出する第2の突起である位置決め用突起55を備えている。位置決め用突起55は、細長薄板状である。位置決め用突起55の厚み方向は、シール本体部51の軸線方向に一致する。位置決め用突起55における厚み方向の両側に位置する両面は、互いに平行に延びる平坦面状である。位置決め用突起55におけるシール本体部51の周方向両側に位置する両側面は、互いに平行に延びる平坦面状であるとともにシール本体部51の内周面51aに連続している。位置決め用突起55における厚み方向の両側に位置する両面同士を接続し、且つ位置決め用突起55におけるシール本体部51の周方向両側に位置する両側面同士を接続する位置決め用突起55の突起先端部55eは、シール本体部51の内周面51aに対して離間する方向に凸である湾曲面状である。位置決め用突起55は、突起先端部55eと、シール本体部51と突起先端部55eとの間を繋ぐ連結部55aと、を備えている。
【0069】
図8に示すように、位置決め用突起55は、シール本体部51の内周面51aにおけるシール本体部51の軸線方向の中央部に配置されている。位置決め用突起55におけるシール本体部51の軸線方向の長さL8は、シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態での押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4と同じである。また、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の外周面51bから位置決め用突起55の突起先端部55eまでの距離L9は、シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態でのシール本体部51の径方向におけるシール本体部51の外周面51bと押付け用突起52の先端部52eまでの距離L5よりも大きい。したがって、位置決め用突起55は、押付け用突起52よりもシール本体部51の内周側に向けて突出している。
【0070】
図9及び
図10に示すように、シール収容溝60の溝内側周面61には、位置決め用突起55が挿入される第2の凹溝である位置決め用溝66が形成されている。したがって、位置決め用溝66は、溝内側周面61及び溝外側周面62のうち、溝底面63に対してロータハウジング14の周壁14bの内周面側に位置する溝内側周面61に形成されている。位置決め用溝66は、溝内側周面61における膨出部47と対応する部位に形成されている。したがって、位置決め用溝66は、膨出部47に設けられるとともにシール収容溝60の溝内側周面61に繋がっている。位置決め用溝66の開口は、ロータハウジング14の周壁14bの開口端面14dに連続している。位置決め用溝66の開口は、カバー部材15の一端面15aに閉塞されている。
【0071】
位置決め用溝66は、位相決め用底面66a、一対の位相決め用側面66b、及び位相決め用接続面66cを有している。位相決め用底面66aは、溝底面63に連続するとともに溝底面63と同一平面上に位置している。一対の位相決め用側面66bは、溝内側周面61に連続するとともに位相決め用底面66aに接続されている。一対の位相決め用側面66bは、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向に互いに平行に延びるとともに、ロータハウジング14の周壁14bの開口端面14dにそれぞれ連続している。位相決め用接続面66cは、位相決め用底面66a及び一対の位相決め用側面66bを接続するとともにシール収容溝60から離間する方向に凹となる湾曲面状である。位相決め用接続面66cは、ロータハウジング14の周壁14bの開口端面14dに連続している。
【0072】
位置決め用溝66の径方向における溝外側周面62から位置決め用溝66の最深部66eまでの間の距離L10は、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の外周面51bから位置決め用突起55の突起先端部55eまでの距離L9よりも大きい。
図9に示すように、位置決め用突起55におけるシール本体部51の周方向の長さL11は、位置決め用溝66における周方向の長さL12よりも小さい。また、
図10に示すように、位置決め用溝66の深さL13は、シール収容溝60の深さL7と同じである。したがって、位置決め用溝66の深さL13は、位置決め用突起55におけるシール本体部51の軸線方向の長さL8よりも大きい。
【0073】
位置決め用突起55は、位相決め用底面66a、及び一対の位相決め用側面66bそれぞれに押し付けられることなく位置決め用溝66に挿入されている。したがって、位置決め用突起55は、少なくとも位置決め用突起55の突起先端部55eを除く部位が位置決め用溝66に押し付けられることなく位置決め用溝66に挿入されている。位置決め用突起55は、位置決め用突起55の突起先端部55eが、位相決め用接続面66cから離間した状態で位置決め用溝66に挿入されている。したがって、位置決め用突起55の突起先端部55eは、位置決め用溝66から離間している。このように、位置決め用突起55の突起先端部55eは位置決め用溝66に接触せず、位置決め用突起55の突起先端部55eと位置決め用溝66との間には空隙が形成されている。
【0074】
シール部材50は、シール部材50がシール収容溝60内に収容されてシール収容溝60内で弾性変形する前の状態において、押付け用突起52の先端部52eをシール本体部51の軸線方向で通過するシール部材50の断面(
図4に示す断面)でのシール収容溝60に対する充填率が100%を超えるように設計されている。
【0075】
図11に示すように、シール本体部51には、貫通孔56が複数形成されている。各貫通孔56は、円孔状である。複数の貫通孔56は、シール本体部51の周方向に間隔をおいて形成されている。各貫通孔56は、シール本体部51において、シール本体部51の周方向で隣り合う押付け用突起52の間の領域に位置する。各貫通孔56は、隣り合う押付け用突起52それぞれに対してシール本体部51の周方向で同じ距離だけ離れた位置に配置されている。
【0076】
図6に示すように、各貫通孔56は、第1の溝53aと第2の溝54aとを連通する。したがって、シール本体部51は、第1の溝53aと第2の溝54aとは各貫通孔56によって連通されている部位を有する。各貫通孔56の軸線方向は、シール本体部51の軸線方向と一致している。したがって、各貫通孔56は、シール本体部51の軸線方向に真っ直ぐに延びている。各貫通孔56における第1の溝53a側の開口縁と第1の接触部531の外面及び第2の接触部532の外面それぞれとは、第1の溝53aの内面の一部によって接続されている。また、各貫通孔56における第2の溝54a側の開口縁と第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面それぞれとは、第2の溝54aの内面の一部によって接続されている。
【0077】
図12に示すように、複数の貫通孔56のうち、最も重力方向における下側に配置されている貫通孔56の最下部56eは、隣り合う第1の接触部531及び第2の接触部532のうち、第1の溝53aよりも内周側の第1の接触部531の最下部53eよりも重力方向における下側に位置している。また、複数の貫通孔56のうち、最も重力方向における下側に配置されている貫通孔56の最下部56eは、隣り合う第3の接触部541及び第4の接触部542のうち、第2の溝54aよりも内周側の第3の接触部541の最下部54eよりも重力方向における下側に位置している。
【0078】
次に、本実施形態の作用について説明する。
シール部材50は、まず、位置決め用突起55を位置決め用溝66に挿入し、その後、シール本体部51をシール収容溝60内に挿入するようにして、シール収容溝60に組み付けられる。これにより、位置決め用突起55は、位置決め用溝66に配置されて、シール本体部51のシール収容溝60内での位置決めを行う。よって、シール部材50におけるシール収容溝60に対する位相のずれが、位置決め用突起55が位置決め用溝66に挿入されることにより抑制され、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間に隙間が生じ難くなっている。
【0079】
シール部材50は、シール部材50がシール収容溝60内に収容されてシール収容溝60内で弾性変形する前の状態において、押付け用突起52の先端部52eをシール本体部51の軸線方向で通過するシール部材50の断面でのシール収容溝60に対する充填率が100%を超えるように設計されている。このため、カバー部材15がロータハウジング14に取り付けられる際に、シール部材50は、第1の接触部531及び第2の接触部532がシール収容溝60の溝底面63に接するとともに、第3の接触部541及び第4の接触部542がカバー部材15の一端面15aに接した状態で、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向に押し潰される。そして、シール部材50が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向に押し潰されるように弾性変形することにより、複数の押付け用突起52が、溝内側周面61に接触して溝内側周面61を押圧する。
【0080】
複数の押付け用突起52が溝内側周面61を押圧すると、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより各押付け用突起52が押し潰される。そして、シール本体部51は、各押付け用突起52が押し潰されることにより、各押付け用突起52に対してシール本体部51の周方向両側に広がるように弾性変形しようとする。このとき、第1の接触部531及び第2の接触部532がシール収容溝60の溝底面63に接するとともに、第3の接触部541及び第4の接触部542がカバー部材15の一端面15aに接していることから、シール本体部51全体としては、シール本体部51の外周面51bと溝外側周面62との間の隙間への弾性変形が許容される。その結果、シール本体部51の外周面51bが溝外側周面62に接触するとともに溝外側周面62を押圧するようにシール本体部51が弾性変形する。
【0081】
ところで、例えば、燃料電池車が海岸付近を走行する等した場合に、塩水が、ハウジング11の外部からロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を介してハウジング11の内部に向けて侵入しようとする場合がある。この場合、シール部材50は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を介したハウジング11の外部からハウジング11の内部への塩水の侵入を抑制する。
【0082】
例えば、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を流れる塩水が、シール本体部51の外周面51bと溝外側周面62との間、及び第1の接触部531及び第2の接触部532のうち、第1の溝53aよりも外周側の第2の接触部532と溝底面63との間を通過する場合がある。この場合であっても、第1の溝53aの内部で塩水が拡散され、塩水の流れの直進性が失われる。これにより、塩水がシール部材50を通過し難くなり、塩水がハウジング11の内部へ侵入し難くなっている。
【0083】
例えば、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を流れる塩水が、第3の接触部541及び第4の接触部542のうち、第2の溝54aよりも外周側の第4の接触部542とカバー部材15の一端面15aとの間を通過する場合がある。この場合であっても、第2の溝54aの内部で塩水が拡散され、塩水の流れの直進性が失われる。これにより、塩水がシール部材50を通過し難くなり、塩水がハウジング11の内部へ侵入し難くなっている。
【0084】
また、シール本体部51の外周面51bが、複数の押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより、溝外側周面62に押圧された状態で接しているため、溝外側周面62とシール部材50との間の隙間が小さくなっている。このため、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水が溜まり難くなる。
【0085】
図13に示すように、ロータハウジング14に圧接する第1シール部53の第1のシール長は、第1の接触部531の外面、第2の接触部532の外面、及びシール本体部51の外周面51bの合計である。それに対して、カバー部材15に圧接する第2シール部54の第2のシール長は、第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面の合計である。したがって、ロータハウジング14及びカバー部材15とシール部材50との間にそれぞれ存在する塩水が原因で生じるロータハウジング14、カバー部材15、及びシール部材50の腐食の進行度合がそれぞれ異なる。
【0086】
例えば、ロータハウジング14及びカバー部材15の材質や表面粗さが同等である場合、シール長が短いカバー部材15と第2シール部54との間のほうが、ロータハウジング14と第1シール部53との間よりも腐食の進行度合が高い。しかし、第2の溝54aの内部に溜まった塩水の一部が、各貫通孔56を介して第1の溝53aに向けて流れるため、カバー部材15と第2シール部54との間の腐食の進行度合を低くすることが可能となっている。
【0087】
また、例えば、ロータハウジング14の表面粗さが、カバー部材15の表面粗さよりも大きい場合、カバー部材15と第2シール部54との間での塩水の洩れよりも、ロータハウジング14と第1シール部53との間での塩水の洩れのほうが起こり易くなる。よって、第1シール部53の第1のシール長が、第2シール部54の第2のシール長よりも長くても、ロータハウジング14と第1シール部53との間のほうが、カバー部材15と第2シール部54との間よりも腐食の進行度合が高くなる場合がある。しかし、第1の溝53aの内部に溜まった塩水の一部が、各貫通孔56を介して第2の溝54aに向けて流れるため、ロータハウジング14と第1シール部53との間の腐食の進行度合を低くすることが可能となっている。
【0088】
このように、第1の溝53aの内部、及び第2の溝54aの内部にそれぞれ溜まった塩水が、各貫通孔56を介して第1の溝53aの内部、及び第2の溝54aの内部にそれぞれ行き来することが可能となっている。したがって、互いにシール長が異なるロータハウジング14とシール部材50との間での腐食の進行度合と、カバー部材15とシール部材50との間での腐食の進行度合との差が小さくなり易くなっている。
【0089】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)シール本体部51が、複数の押付け用突起52によって溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧されているため、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間が小さくなる。このため、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水が溜まり難くなる。したがって、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性を向上させることができる。
【0090】
ところで、本実施形態のように、シール収容溝60が、真円環状ではなく、例えば、楕円環状や四角環状に形成されており、シール収容溝60に収容されるシール部材50が、シール収容溝60の形状に合わせて楕円環状や四角環状に予め形成されている場合がある。この場合、シール部材50が、シール収容溝60に対して位相がずれた状態で収容されてしまうと、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間に隙間が生じてしまう虞がある。
【0091】
そこで、本実施形態のルーツポンプ10では、シール収容溝60の溝内側周面61に繋がる位置決め用溝66を膨出部47に設け、シール本体部51から突出する位置決め用突起55を位置決め用溝66に配置し、シール本体部51のシール収容溝60内での位置決めを行うようにした。これによれば、シール部材50におけるシール収容溝60に対する位相のずれが、位置決め用突起55が位置決め用溝66に配置されることにより抑制されるため、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間に隙間が生じ難くなる。その結果として、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水が溜まり難くなり、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性を向上させることができる。
【0092】
ここで、膨出部47は、駆動ロータ20と従動ロータ21との間においてロータハウジング14の周壁14bが内周側に向けて膨出することで形成されているため、ロータハウジング14に膨出部47が形成されていても、膨出部47が駆動ロータ20及び従動ロータ21の回転に影響を及ぼすことは無く、ルーツポンプ10が大型化することも無い。そして、膨出部47に位置決め用溝66を設けた。これによれば、ルーツポンプ10が大型化すること無く、位置決め用溝66をシール収容溝60の溝内側周面61に繋がるように形成することができる。したがって、大型化を招くことなく、耐腐食性を向上させることができる。
【0093】
(2)位置決め用突起55の突起先端部55eは位置決め用溝66に接触せず、位置決め用突起55の突起先端部55eと位置決め用溝66との間には空隙が形成されている。これによれば、例えば、位置決め用突起55の突起先端部55eと位置決め用溝66との間の空隙に流体が流れ込むことにより、シール本体部51が、押付け用突起52に加えて、流体の圧力によってもシール収容溝60の溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧される。
【0094】
より具体的には、本実施形態において、吐出口46は、膨出部47を貫通している。したがって、ロータ室25における膨出部47の周囲は、吐出圧になっている。そして、位置決め用溝66は、溝内側周面61及び溝外側周面62のうち、溝底面63に対してロータハウジング14の周壁14bの内周面側に位置する溝内側周面61における膨出部47と対応する部位に形成されている。これによれば、ロータ室25内における膨出部47の周囲に存在する吐出圧の水素が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を介して、位置決め用突起55と位置決め用溝66との間の空隙に流れ込むことにより、シール部材50が、水素の圧力によって、溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧される。
【0095】
よって、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間がさらに小さくなり易くなる。したがって、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水がさらに溜まり難くなり、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性をさらに向上させることができる。
【0096】
(3)膨出部47は、第1弧状面47a及び第2弧状面47bで区画され、ロータハウジング14の周壁14bの他部分よりも内周側に膨出する。このような構成は、ロータハウジング14に膨出部47が形成されていても、膨出部47が駆動ロータ20及び従動ロータ21の回転に影響を及ぼすことは無く、ルーツポンプ10が大型化することも無い構成として好適である。
【0097】
(4)例えば、吸入口45を介してロータ室25内に吸入される水素に水が含まれている場合がある。このような場合、例えば、膨出部47が、ロータハウジング14の周壁14bにおける重力方向下側に配置されていると、ロータ室25内に存在する水が、膨出部47を貫通する吸入口45に流れ難くなり、ロータ室25内に水が溜まり易くなってしまう。そこで、膨出部47を、ロータハウジング14の周壁14bにおける重力方向上側に配置し、一対の連結面143bのうち、ロータ室25を挟んで膨出部47と対向配置する連結面143bを、膨出部47に向けて膨出することのない平滑面48にした。これによれば、ロータ室25内に水が存在している場合であっても、ロータ室25内において、自重によって平滑面48上に溜まる水が吸入口45を介してロータ室25外へ排出され易くなる。その結果、例えば、ロータ室25内の水が凍結して氷となって、駆動ロータ20及び従動ロータ21が氷を介してロータハウジング14の周壁14bの内周面に固着してしまい、駆動ロータ20及び従動ロータ21がスムーズに回転しなくなってしまうことを抑制することができる。
【0098】
(5)位置決め用突起55は、少なくとも位置決め用突起55の突起先端部55eを除く部位が位置決め用溝66に押し付けられることなく位置決め用溝66に挿入されている。これによれば、例えば、少なくとも位置決め用突起55の突起先端部55eを除く部位が位置決め用溝66に押し付けられることで、シール本体部51における複数の押付け用突起52による溝内側周面61及び溝外側周面62間での押圧が行われ難くなってしまうといった問題が回避される。したがって、位置決め用突起55を位置決め用溝66に挿入しても、シール本体部51が、複数の押付け用突起52によって溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧され難くなって、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間に隙間が生じてしまうことを回避することができる。よって、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水が溜まり難くなり、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性を向上させることができる。
【0099】
(6)位置決め用突起55の突起先端部55eは、位置決め用溝66から離間している。これによれば、例えば、シール部材50をシール収容溝60に組み付ける際に、シール本体部51が、位置決め用突起55によって溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧されることが無いため、シール部材50をシール収容溝60に組み付け易くすることができる。
【0100】
(7)シール部材50は、第1の溝53aと第2の溝54aとは貫通孔56によって連通されている部位を有する。これによれば、第1の溝53aの内部、及び第2の溝54aの内部にそれぞれ溜まった塩水が、貫通孔56を介して第1の溝53aの内部、及び第2の溝54aの内部にそれぞれ行き来することが可能となる。したがって、ロータハウジング14とシール部材50との間での腐食の進行度合と、カバー部材15とシール部材50との間での腐食の進行度合との差を小さくすることが可能となり、結果として、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性を向上させることができる。
【0101】
(8)貫通孔56は、シール本体部51において、シール本体部51の周方向で隣り合う押付け用突起52の間の領域に位置する。これによれば、例えば、貫通孔56が、シール本体部51において、シール本体部51の周方向で押付け用突起52と対応する部分に配置されている場合に比べると、押付け用突起52が押し潰されてシール本体部51が変形したときに、貫通孔56が消滅してしまうことを抑制することができる。
【0102】
(9)複数の貫通孔56のうち、最も重力方向における下側に配置されている貫通孔56の最下部56eは、第1の接触部531の最下部53e及び第3の接触部541の最下部54eよりも重力方向における下側に位置している。これによれば、例えば、第1の溝53aの内部に溜まった塩水が、第1の接触部531及び第2の接触部532のうち、第1の溝53aよりも内周側の第1の接触部531に到達する前に、貫通孔56に流れ込む。したがって、第1の溝53aの内部に溜まった塩水が、第1の接触部531とロータハウジング14との間に溜まってしまうことが抑制される。また、例えば、第2の溝54aの内部に溜まった塩水が、第3の接触部541及び第4の接触部542のうち、第2の溝54aよりも内周側の第3の接触部541に到達する前に、貫通孔56に流れ込む。したがって、第2の溝54aの内部に溜まった塩水が、第3の接触部541とカバー部材15との間に溜まってしまうことが抑制される。よって、ロータハウジング14とシール部材50との間での腐食、及びカバー部材15とシール部材50との間での腐食が抑制され易くなり、結果として、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性を向上させることができる。
【0103】
(10)シール本体部51には、貫通孔56がシール本体部51の周方向に間隔をおいて複数形成されている。これによれば、シール本体部51の剛性を確保することができ、シール部材50のシール性の低下を抑えることができる。
【0104】
(11)各貫通孔56における第1の溝53a側の開口縁と第1の接触部531の外面及び第2の接触部532の外面それぞれとは、第1の溝53aの内面の一部によって接続されている。また、各貫通孔56における第2の溝54a側の開口縁と第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面それぞれとは、第2の溝54aの内面の一部によって接続されている。これによれば、例えば、第1の溝53aの内部に溜まった塩水が、各貫通孔56における第1の溝53a側の開口縁と第1の接触部531の外面及び第2の接触部532の外面それぞれとを接続する第1の溝53aの内面の一部によって各貫通孔56へ案内され易くなる。また、例えば、第2の溝54aの内部に溜まった塩水が、各貫通孔56における第2の溝54a側の開口縁と第3の接触部541の外面及び第4の接触部542の外面それぞれとを接続する第2の溝54aの内面の一部によって各貫通孔56へ案内され易くなる。したがって、各貫通孔56を介した第1の溝53aの内部と第2の溝54aの内部との間の塩水の行き来を行い易くすることができる。
【0105】
(12)ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を流れる塩水は、第1の溝53a、及び第2の溝54aの内部で拡散される。これにより、塩水の流れの直進性が失われるため、塩水がシール部材50を通過し難くなる。その結果、シール部材50のシール性を向上させることができる。
【0106】
(13)シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の内周面51aと外周面51bとの間の距離L1が、シール本体部51の軸線方向における第1の接触部531及び第2の接触部532の外面と第3の接触部541及び第4の接触部542の外面との間の距離L2よりも小さい。この場合であっても、カバー部材15がロータハウジング14に取り付けられる際に、複数の押付け用突起52が溝内側周面61に接触することにより、シール部材50の倒れ(捩れ)を抑制することができる。
【0107】
(14)押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4は、第1の溝53aの最深部531aと第2の溝54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも小さい。そして、シール収容溝60の深さL7は、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4よりも大きい。これによれば、複数の押付け用突起52が、シール収容溝60の溝底面63やカバー部材15の一端面15aに接触することが抑制される。このため、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けることにより、シール本体部51の外周面51bが溝外側周面62に接触するとともに溝外側周面62を押圧するようにシール本体部51が弾性変形し易くなる。その結果、シール収容溝60における溝外側周面62とシール部材50との間の隙間を確実に小さくすることができる。
【0108】
(15)シール部材50がシール収容溝60に収容される前の状態において、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の外周面51bと押付け用突起52の先端部52eまでの距離L5は、シール収容溝60の径方向における溝内側周面61と溝外側周面62との間の距離L6よりも小さい。これによれば、シール部材50をシール収容溝60内に収容し易くなるため、シール部材50におけるシール収容溝60に対する組み付け性を向上させることができる。
【0109】
(16)シール収容溝60の深さL7は、第1の溝53aの最深部531aと第2の溝54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも大きい。これによれば、シール部材50が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向に押し潰されるように弾性変形したときに、第1の溝53a及び第2の溝54aが消滅してしまうことを抑制することができる。また、各押付け用突起52による溝内側周面61への押圧力に対する反発力を溝内側周面61から受けて、シール本体部51が弾性変形したときに、第1の溝53a及び第2の溝54aが消滅してしまうことを抑制することができる。
【0110】
(17)複数の押付け用突起52は、シール本体部51の周方向に間隔をおいて配置されている。これによれば、例えば、シール本体部51の内周面51aから押付け用突起がシール本体部51の内周面51aの全周に亘って突出している場合に比べると、各押付け用突起52が押し潰されたときに、各押付け用突起52におけるシール本体部51の周方向両側への弾性変形が許容され易くなる。したがって、シール本体部51が、カバー部材15を押し退けるように弾性変形してしまうことが抑制され、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間のシール性が低下してしまうことを抑制することができる。
【0111】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0112】
○
図14に示すように、少なくとも位置決め用突起55の突起先端部55eが位置決め用溝66に接触していてもよい。これによれば、シール本体部51が、複数の押付け用突起52に加えて、位置決め用突起55によっても溝内側周面61及び溝外側周面62間に押圧されるため、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間をさらに小さくし易くすることができる。したがって、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に塩水がさらに溜まり難くなるため、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性をさらに向上させることができる。
【0113】
○ 実施形態において、例えば、シール収容溝60が真円環状であり、シール収容溝60に収容されるシール部材50もシール収容溝60の形状に合わせて真円環状に予め形成されていてもよい。この場合であっても、シール部材50におけるシール収容溝60に対する位相のずれが、位置決め用突起55が位置決め用溝66に挿入されることにより抑制される。これによれば、貫通孔56の最下部56eが、第1の接触部531の最下部53e及び第3の接触部541の最下部54eよりも重力方向における下側に位置するようにシール部材50をシール収容溝60に収容することができる。
【0114】
○ 実施形態において、ルーツポンプ10は、シール収容溝60がロータハウジング14の開口端面14dに形成されておらず、カバー部材15の一端面15aに形成され、シール収容溝60の開口がロータハウジング14の開口端面14dによって閉塞されている構成であってもよい。
【0115】
○ 実施形態において、ルーツポンプ10は、ロータハウジング14の開口端面14dに加えて、カバー部材15の一端面15aにもシール収容溝60が形成されており、両シール収容溝60が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向で重なっている構成であってもよい。要は、シール収容溝60は、ロータハウジング14の周壁14bとカバー部材15との合わせ面の少なくとも一方に形成されていればよい。つまり、シール収容溝60は、ロータハウジング14の第1形成面及びカバー部材15の第2形成面の少なくとも一方に形成されていればよい。この場合、第3の接触部541及び第4の接触部542は、カバー部材15の一端面15aに形成されたシール収容溝60の溝底面63に接している。そして、複数の押付け用突起52は、両シール収容溝60それぞれの溝内側周面61を跨ぐ部分を押圧し、シール本体部51の外周面51bは、両シール収容溝60それぞれの溝外側周面62に押圧された状態で接している。これによれば、カバー部材15とシール部材50との間のシール長と、ロータハウジング14とシール部材50との間のシール長との差を小さくすることができ、シール部材50のシール性を向上させることができる。
【0116】
○ 実施形態において、複数の押付け用突起52がシール本体部51の外周面51bから突出していてもよい。そして、シール部材50は、複数の押付け用突起52がシール本体部51から溝外側周面62に向けて突出するとともに溝外側周面62に接触し、シール収容溝60内に収容されていてもよい。この場合、シール本体部51の内周面51aは、複数の押付け用突起52による溝外側周面62への押圧力に対する反発力を溝外側周面62から受けることにより、溝内側周面61に押圧された状態で接している。例えば、ロータ室25内に吸入される水素は、燃料電池の発電に伴い生成された生成水を含んでいる。シール部材50は、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの間を介したロータ室25内からハウジング11の外部への生成水を含んだ水素の洩れを抑制する。そして、シール本体部51の内周面51aが、複数の押付け用突起52による溝外側周面62への押圧力に対する反発力を溝外側周面62から受けることにより、溝内側周面61に押圧された状態で接しているため、溝内側周面61とシール部材50との間の隙間が小さくなっている。このため、シール収容溝60の溝外側周面62とシール部材50との間の隙間に生成水を含んだ水素が溜まり難くなる。したがって、ハウジング11やシール部材50の耐腐食性が向上する。
【0117】
○ 実施形態において、膨出部47が、ロータハウジング14の周壁14bにおける重力方向下側に配置されていてもよい。
○ 実施形態において、一対の連結面143bそれぞれが、第1弧状面47a及び第2弧状面47bを有していてもよい。すなわち、一対の連結面143bの少なくとも一方が、第1弧状面47a及び第2弧状面47bを有していればよい。この場合、ロータハウジング14の周壁14bにおけるロータ室25を挟んで対向する部位それぞれが膨出部47になっている。
【0118】
○ 実施形態において、吐出口46が、ロータハウジング14の周壁14bを貫通して平滑面48に開口しており、吸入口45が、膨出部47を貫通していてもよい。要は、吸入口45が、ロータ室25に対して重力方向上側に配置されるとともに、吐出口46が、ロータ室25に対して重力方向下側に配置されていてもよい。
【0119】
○ 実施形態において、平滑面48が、例えば、膨出部47に向けて膨出することのない湾曲面状であってもよい。要は、一対の連結面143bのうち、ロータ室25を挟んで膨出部47と対向配置する連結面143bが、膨出部47に向けて膨出することのない平滑面48になっていればよい。
【0120】
○ 実施形態において、位置決め用突起55は、少なくとも位置決め用突起55の突起先端部55eを除く部位が位置決め用溝66に押し付けられた状態で、位置決め用溝66に配置されていてもよい。
【0121】
○ 実施形態において、複数の貫通孔56のうち、最も重力方向下側に配置されている貫通孔56の最下部56eが、第1の接触部531の最下部53e及び第3の接触部541の最下部54eと水平方向で同一平面上に位置していてもよい。
【0122】
○ 実施形態において、複数の貫通孔56のうち、最も重力方向下側に配置されている貫通孔56の最下部56eが、第1の接触部531の最下部53e及び第3の接触部541の最下部54eよりも重力方向上側に位置していてもよい。
【0123】
○ 実施形態において、各貫通孔56が、隣り合う押付け用突起52のうちの一方に対して、シール本体部51の周方向で接近した位置に配置されていてもよい。
○ 実施形態において、貫通孔56が、例えば、シール本体部51において、シール本体部51の周方向で押付け用突起52と対応する部分に配置されていてもよい。
【0124】
○ 実施形態において、貫通孔56の数は特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
○ 実施形態において、貫通孔56が、シール本体部51の周方向全周に亘って形成される環状の孔であってもよい。
【0125】
○ 実施形態において、貫通孔56の形状は、円孔状に限らず、例えば、四角孔形状であってもよい。要は、貫通孔56によって第1の溝53aと第2の溝54aとが連通可能であれば、貫通孔56の形状は特に限定されるものではない。
【0126】
○ 実施形態において、シール本体部51に貫通孔56が形成されていなくてもよい。
○ 実施形態において、シール部材50は、第1の溝53aを有していない構成であってもよい。そして、シール部材50は、シール本体部51の軸線方向の一方に位置する端面全体が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でロータハウジング14に接する構成であってもよい。これによれば、ロータハウジング14とシール部材50との間のシール長を長く確保することができる。
【0127】
○ 実施形態において、シール部材50は、第2の溝54aを有していない構成であってもよい。そして、シール部材50は、シール本体部51の軸線方向の他方に位置する端面全体が、ロータハウジング14の開口端面14dとカバー部材15の一端面15aとの合わせ方向でカバー部材15に接する構成であってもよい。これによれば、カバー部材15とシール部材50との間のシール長を長く確保することができる。
【0128】
○ 実施形態において、シール部材50は、シール本体部51に第1の溝53aが2つ以上形成されている構成であってもよい。
○ 実施形態において、シール部材50は、シール本体部51に第2の溝54aが2つ以上形成されている構成であってもよい。
【0129】
○ 実施形態において、例えば、第3の接触部541の幅H3と第4の接触部542の幅H4との合計を、第1の接触部531の幅H1と第2の接触部532の幅H2との合計よりも大きくしてもよい。
【0130】
○ 実施形態において、シール本体部51の径方向におけるシール本体部51の内周面51aと外周面51bとの間の距離L1が、シール本体部51の軸線方向における第1の接触部531及び第2の接触部532の外面と第3の接触部541及び第4の接触部542の外面との間の距離L2よりも大きくてもよい。
【0131】
○ 実施形態において、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4が、第1の溝53aの最深部531aと第2の溝54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3と同じであってもよい。
【0132】
○ 実施形態において、押付け用突起52におけるシール本体部51の軸線方向の長さL4は、シール本体部51の軸線方向における第1の接触部531及び第2の接触部532の外面と第3の接触部541及び第4の接触部542の外面との間の距離L2よりも小さければ、第1の溝53aの最深部531aと第2の溝54aの最深部541aとを結ぶ直線S1の長さL3よりも大きくてもよい。
【0133】
○ 実施形態において、押付け用突起52の数は、複数であれば特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
○ 実施形態において、溝内側周面61及び溝外側周面62は、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向に互いに平行に延びていなくてもよく、ロータハウジング14の周壁14bの軸線方向に対して斜交して延びるとともに互いに斜交していてもよい。
【0134】
○ 実施形態において、シール部材50の材質は、弾性体であれば、ゴム製に限定されるものではない。
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が、例えば、三葉状であったり、四葉状であったりしてもよい。
【0135】
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21が、例えば、ヘリカル形状であってもよい。
○ 実施形態において、例えば、エンジンを駆動源とするルーツポンプ10であってもよい。
【0136】
○ 実施形態において、ルーツポンプ10は、燃料電池に水素を供給する燃料電池車用の水素ポンプでなくてもよく、その他の用途で用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0137】
10…ルーツポンプ、11…ハウジング、14…ロータハウジング、14a…底壁、14b…周壁、15…カバー部材、16…回転軸である駆動軸、20…駆動ロータ、21…従動ロータ、22…駆動源としての電動モータ、47…膨出部、47a…第1弧状面、47b…第2弧状面、50…シール部材、51…シール本体部、52…第1の突起である押付け用突起、55…第2の突起である位置決め用突起、55a…連結部、55e…突起先端部、60…第1の凹溝であるシール収容溝、66…第2の凹溝である位置決め用溝、141b…第1案内面、142b…第2案内面。