(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ヌクレアーゼ媒介ゲノム遺伝子操作のための送達方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20230912BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230912BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230912BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20230912BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230912BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230912BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
A61K48/00 ZNA
A61K35/76
A61K31/573
A61K39/395 U
A61P7/04
A61P43/00 121
C12N15/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020209010
(22)【出願日】2020-12-17
(62)【分割の表示】P 2018501179の分割
【原出願日】2016-07-13
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2015-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ケー. リー
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット イー. レイリー
(72)【発明者】
【氏名】スーザン ジェイ. セント マーティン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウェクスラー
【審査官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/089541(WO,A2)
【文献】特表2013-523776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0003583(US,A1)
【文献】国際公開第2014/059173(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/164758(WO,A1)
【文献】J. Virol., 2003, 77(11), pp.6394-6404
【文献】J. Virol., 1998, 72(12), pp.9835-9843
【文献】Mol. Ther., 2007, 15(7), pp.1323-1330
【文献】Nat. Med., 2003, 9(10), pp.1306-1312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴
ウイルス(AAV)
ベクターを含む、核酸を対象の細胞内に導入するための組成物であって、前記AAV
ベクターは
前記対象の前記細胞内に導入される前記核酸を含み、
前記組成物は
、ステロイド、および
抗CD20抗体と組み合わせて前記対象に投与されるものであ
り、前記抗CD20抗体は、前記組成物の投与の前に前記対象に投与されるものである、組成物。
【請求項2】
前記
核酸が導入遺伝子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記対象がヒトであり、前記導入遺伝子が治療用タンパク質をコードし、さらに前記対象が前記治療用タンパク質に寛容化されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記対象が血友病を有し、前記導入遺伝子がVIII因子またはIX因子
から選択される凝固因子をコードする、請求項3に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月13日出願の米国特許仮出願第62/191,918号、2015年10月28日出願の米国特許仮出願第62/247,469号、及び2016年3月30日出願の米国特許仮出願第62/315,438号の利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、ゲノム遺伝子操作、特に細胞のゲノムの標的化された改変の分野にある。
【背景技術】
【0003】
ゲノムDNAの標的化された開裂のための種々の方法及び組成物が説明されてきた。このような標的化された開裂事象を使用して、例えば標的化された突然変異誘発を誘導し、細胞DNA配列の標的化された欠失を誘導し、所定の染色体遺伝子座における標的化された組換えを容易にすることができる。例えば、米国特許第255,250号、同第9,200,266号、同第9,045,763号、同第9,005,973号、同第9,150,847号、同第8,956,828号、同第8,945,868号、同第8,703,489号、同第8,586,526号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,888,121号、同第7,972,854号、同第7,914,796号、同第7,951,925号、同第8,110,379号、同第8,409,861号、米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060063231号、同第20080159996号、同第201000218264号、同第20120017290号、同第20110265198号、同第20130137104号、同第20130122591号、同第20130177983号、同第20130196373号、同第20140120622号、同第20150056705号、同第20150335708号、同第20160030477号、及び同第20160024474号を参照し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
これらの方法は、多くの場合、非相同末端結合(NHEJ)などのエラーを生じる過程による切断の修復または修復テンプレートを使用した修復(相同組換え修復またはHDR)が、遺伝子のノックアウトまたは目的の配列の挿入(標的化組込み)をもたらし得るような、標的DNA配列に二本鎖切断(DSB)またはニックを誘導するための遺伝子操作された開裂系の使用に関与する。遺伝子操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などの特異的ヌクレアーゼの使用により、特異的開裂をガイドするための遺伝子操作されたcrRNA/tracrRNA(「単一ガイドRNA」)によるCRISPR/Cas系(Cas及び/またはCfp1を含む)を使用して、及び/またはアルゴノート系に基づくヌクレアーゼ(例えば「TtAgo」として知られるT.サーモフィルス由来)を使用して、開裂を生じることができる(Swarts et al(2014)Nature507(7491):258-261)。
【0005】
上述のヌクレアーゼ系の1つを使用する標的化された開裂は、HDRまたはNHEJ媒介性処理のいずれかを使用して、特異的標的位置に核酸を挿入するために利用できる。しかし、細胞にヌクレアーゼ系及びドナーの両方を送達することは、問題になり得る。例えば、細胞内へのプラスミドの形質導入を介したドナーまたはヌクレアーゼの送達は、レシピエント細胞、特に一次細胞であり、したがって細胞株由来の細胞ほどには頑強でない細胞に対して、毒性であり得る。
【0006】
多くの場合、細胞への核酸の送達のために利用される一方法は、ウイルス核酸送達ベクターの使用を含む。特にアデノ随伴ウイルス(AAV)は、その効率及び相対的非毒性のため、核酸を送達するために広く使用される。AAVゲノムは、ウイルス核酸をほぼ除去して、ドナー導入遺伝子または操作したヌクレアーゼをコードする核酸と置き換えられて、導入遺伝子のレシピエント細胞のDNAへの組込みを容易にする。
【0007】
哺乳動物細胞のAAV形質導入は、標的細胞上の一次及び二次共受容体の両方に依存する。一次受容体が標的細胞(及びその指向性)にウイルスの初期粘着力にとって重要である一方で、二次受容体は細胞内にAAVウイルスのエンドサイトーシスを介在する。例えば血清型AAV6において、一次受容体は、α2,3N-結合シアル酸(Wu et al,(2006)J.Virol.80(18):9093)及び二次受容体はEGFRとして同定されている。更に追加の二次共受容体の使用も提案されている(Weller
et al,(2010)Nat Med 16(6):662)。
【0008】
細胞及び/または組織のin vivo送達(移植)は、抗体媒介性反応によって多くの場合妨げられ得る。例えば一部の腎臓移植患者は、移植組織に対する宿主の抗体の出現によって媒介される急性拒絶反応を起こしやすい。したがって医師はステロイド治療を日常的に使用して、移植後の抗体反応を抑制し(例えばKu et al(1973)Br.Med J4:702を参照)、B細胞抑制のためにリツキシマブ(抗CD20抗体)を使用できる(例えばBecker et al(2004)Am J Transpl
4:996)。AAV媒介性送達システムによる投与の後、ヒト集団の抗AAV抗体の非公式な有病率及びこれらの抗体のde novo出現のため、抗体媒介性反応はAAV送達の使用が直面する課題でもある(Kotterman et al(2015)Gene Ther 22(2):116-126を参照)。
【0009】
身体には、免疫系の細胞群の活性化または抑制を制御できる複雑な機序がある。例えば樹枝細胞(DC)は、免疫活性化対免疫寛容の間のバランスの中心的存在として認められている。それらは免疫系の最も強力な抗原提示細胞であり、特にナイーブT細胞に対する抗原を捕捉かつ提示する。未成熟なDCは、Toll様受容体などの特異的受容体によって有望な抗原と相互作用し、そこで抗原は微飲作用によって細胞内に集められる。それから抗原は、主要組織適合遺伝子複合体によってT細胞に提示される、より小さいペプチドに分解される。更に成熟DCは、炎症性メディエータ(例えばT細胞を活性化するのに更に役立つ、IL-1β、IL-12、IL-6及びTNF)を分泌する。一方でDCは、中枢性及び末梢性トレランスを維持するために、いくつかの抗原に身体を寛容化する役割も果たす。免疫寛容を誘発するDC(tolDC)は細胞表面に少量の共刺激シグナルを有し、上述の炎症性メディエータの減少した発現を有する。しかし、これらのtolDCはIL-10のような大量の抗炎症性サイトカインを発現し、これらの細胞がナイーブT細胞と相互作用するとき、T細胞はアネルギー性/制御性T細胞(CD8+Treg)になるように促進される。事実、この処理は、これらの未成熟/免疫寛容誘発のDCによるT細胞の反復刺激で強化されることが示されている。異なる種類のTregを誘発するためにtolDCと協調して作用するいくつかの因子も、同定されている。例えば、tolDCs及びHGF、VIPペプチド、TSLPまたはビタミンD3に共曝露したナイーブT細胞は、CD4+CD25+Foxp3+Tregの誘発を引き起こし、TGF-βまたはIL-10への共曝露はTr1 T regの誘発を引き起こし、副腎皮質ホルモン、ラパマイシン、レチノイン酸への共曝露はCD4+/CD8+Tregの誘発を引き起こすことができる。(Raker et al(2015)Front Immunol
6:art 569及びOsorio et al(2015)Front Immunol 6:art 535)。
【0010】
CD34+幹細胞または前駆細胞は、リンパ球系(例えばT細胞、B細胞、NK細胞)及び骨髄細胞系(例えば単球、赤血球、好酸球、好塩基球及び好中球)の細胞に自己複製及び/または分化するその能力によって特徴づけられる、異質な細胞の集合である。CD34+幹細胞集団内に、特定の群の多分化能(関係している系統のいずれか)を多くの場合反映する複数のサブグループがあるという事実から、それらの異質な性質は生じる。例えばCD38-であるCD34+細胞は、より原始的かつ未成熟のCD34+前駆細胞(長期造血前駆細胞とも称される)であり、一方でCD34+CD38+(短期造血前駆細胞)であるものは系統と関連付けされている(Stella et al(1995)Hematologica 80:367-387を参照)。それからこの母集団が分化経路を更に進行するとき、CD34マーカーは失われる。CD34+幹細胞には、臨床細胞療法の非常に大きな可能性がある。しかし、その異質な性質も一部起因して、細胞への遺伝子操作(例えば遺伝子ノックアウト、導入遺伝子挿入など)を実施することは、困難であり得る。具体的には、これらの細胞は従来の送達ベクターによって十分には形質導入されず、最も原始的な幹細胞は改変に敏感であり、誘発されたDNA DSBに続いて限定的HDRがあり、長期の標準的培養条件下での不十分なHSC維持がある。そのうえ、他の目的の細胞(単に非限定例として、心筋細胞、中型有棘神経細胞、初代肝細胞、胚幹細胞、人工多能性幹細胞及び筋細胞)は、ゲノム編集において他よりうまく形質導入するのが少ない。
したがって、ゲノム遺伝子操作において、ウイルスベクターを使用して核酸を目的のCD34+細胞及び他の細胞に効率的に送達するための追加の組成物及び方法への必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第255,250号明細書
【文献】米国特許第9,200,266号明細書
【文献】米国特許第9,045,763号明細書
【文献】米国特許第9,005,973号明細書
【文献】米国特許第9,150,847号明細書
【文献】米国特許第8,956,828号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Swarts et al(2014)Nature507(7491):258-261
【文献】Wu et al,(2006)J.Virol.80(18):9093
【文献】Weller et al,(2010)Nat Med 16(6):662
【文献】Ku et al(1973)Br.Med J4:702
【文献】Becker et al(2004)Am J Transpl 4:996
【文献】Kotterman et al(2015)Gene Ther 22(2):116-126
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、遺伝子療法及びゲノム遺伝子操作における使用のための組成物及び方法を記載する。具体的には、記載されている方法及び組成物は、核酸を細胞(例えば造血幹細胞/前駆細胞(HSC/PC)を含む一次細胞及びT細胞)内に導入することに関する。更に本発明の方法及び組成物は、目的のドナーDNAを含むAAV粒子(ベクター)をこのような細胞に送達するのに有用である。
いくつかの態様において、本発明は、ゲノム遺伝子操作のために少なくとも1つのヌクレアーゼの、細胞(例えば、HSC/PCまたは他の造血系細胞(例えばT細胞、B細胞またはNK細胞))への送達を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼはペプチドとして送達され、その一方で他では、ヌクレアーゼをコードする核酸として送達される。いくつかの実施形態で、2つ以上のヌクレアーゼを使用する。いくつかの好ましい実施形態において、ヌクレアーゼをコードする核酸はmRNAであり、場合によってmRNAは保護されている。ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALE-ヌクレアーゼ(TALEN)、もしくはCRISPR/Cas(Cas及び/またはCfpl)もしくはTtAgoヌクレアーゼ系、またはこれらの組み合わせを含むことができる。好ましい実施形態において、ヌクレアーゼ(複数可)をコードする核酸は、エレクトロポレーションを介して送達される。
【0014】
別の態様において、核酸を分離細胞(例えば、造血幹細胞、T細胞、B細胞またはNK細胞)内に導入する方法は、本明細書に記載されており、その方法は、成長因子受容体結合の少なくとも1つの阻害剤の存在下で、ドナー分子(例えば細胞で発現する導入遺伝子)を含む、少なくとも1つのアデノ随伴ウイルスベクターを細胞に投与することを含む。特定の実施形態で、成長因子阻害剤は、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、Met/肝細胞成長因子受容体(HGFR)、リポアラビノマンナン受容体(LamR)、αVβ5インテグリン受容体、細胞間接着分子1受容体(Icam-1)及び/または血小板由来成長因子受容体に結合することを阻害する。導入遺伝子はエピソームであり得て、細胞のゲノム中に組み込まれていてもよい。本明細書に記載の方法のいずれかで、導入遺伝子は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードすることができる。更に本明細書に記載されている方法のいずれかは、少なくとも1つのヌクレアーゼを細胞内に導入することを更に含むことができ、導入遺伝子は、ヌクレアーゼによる1つ以上の遺伝子の開裂の後、細胞の1つ以上の遺伝子内に組み込まれる。追加のヌクレアーゼは、標的組み込みの有無にかかわらず、追加の遺伝子の不活化(ノックアウト)のために使用してよい。特定の実施形態で、ヌクレアーゼは、プログラムされた細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遺伝子、β2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはT細胞受容体α(TRAC)遺伝子を切断する。特定の実施形態で、細胞は組み込まれた導入遺伝子を有する少なくとも1つの遺伝子を含み、その遺伝子は不活性化(KO)されており、及び更に不活性化(KO)された少なくとも1つの第2の(異なる)遺伝子である。少なくとも1つの第2の遺伝子は、導入遺伝子の組み込みの有無にかかわらず、不活性化されることができる。
【0015】
したがって本発明は、核酸の細胞への送達の効率を増加させる方法及び組成物を含む、核酸を細胞内に導入するための方法ならびに組成物を提供する。特定の実施形態で、少なくとも50%~60%(またはその間の任意の値)、より好ましくは少なくとも60~70%(またはその間の任意の値)、更により好ましくは少なくとも70%~80%(またはその間の任意の値)、または更により好ましくは80%超(80~100%の間の任意の値)の細胞は、その中への(例えば、細胞のゲノム内への)核酸の導入によって改変される。いくつかの実施形態において、送達はウイルスベクターの使用を包含する。好ましい実施態様で、ベクターはAAVベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターの増大した送達の効率は、ウイルスベクター(例えばAAV)と結合する細胞上の1つ以上のウイルス受容体の能力を選択的に阻害することを介して、及びそれによってウイルスベクターによって1つ以上の交互の受容体により細胞へ運ばれる核酸の送達を増加させることを介して達成される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクター(例えば、AAV)を上皮成長因子受容体(EGFR)に結合することはブロックされるまたは阻害され、一方で他の実施形態では、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)への結合はブロックされるまたは阻害される。他の実施形態において、ウイルスベクター(例えば、AAV)に結合することからブロックされ得るまたは阻害され得る受容体は、Met/肝細胞成長因子受容体(HGFR)、リポアラビノマンナン受容体(LamR)、αVβ5インテグリン受容体、細胞間接着分子1受容体(Icam-1)及び/または血小板由来成長因子受容体(PDGFRβ及びPDGFRαを含むPDGFR)を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態で、受容体の阻害は、ウイルス送達の効率を2、3、4、5、6、7、8、9または10倍上昇させる。阻害剤は、AAVによる細胞の処理のために事前に(例えば4~5日、2~3日、1日、12~24時間、6~11時間、1~5時間または1時間未満(またはそれらの間の任意の時間))投与されることができる。ウイルスベクター(例えばAAV)を細胞に送達するとき同時に、及び/またはウイルスベクター(例えばAAV)を細胞に送達した後(1日またはそれより長い任意の時間)、阻害剤を投与することもできる。いくつかの実施形態で、使用する阻害剤(複数可)は、EGFR、FGFR、HGFR及び/またはPDGFRの阻害のためのゲフィチニブ、BGJ398、SU11274、CP-673451及び/またはCrenolanibである。PDGFR阻害剤CP-673451(PDGFR1とも称される)及びCrenolanib(PDGFR2とも称される)は、異なる親和性にもかかわらず、PDGFRα及びβを阻害する。本明細書に記載の方法のいずれかで、ウイルスベクターは、1つ以上のヌクレアーゼ及び/または1つ以上のドナーをコードする核酸(例えば治療用タンパク質をコードする配列)を運ぶことができる。
【0016】
一態様で、ウイルスベクターは、導入遺伝子がゲノム内に組み入れられないように、導入遺伝子を送達するために使用する。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は誘導性プロモーターを含む。他の実施形態で、導入遺伝子は構成的プロモーターを含む。他の更なる実施形態において、ウイルスベクターは、AAVまたはレンチウイルスベクターである。ウイルスベクターを1つ以上の細胞表面受容体に結合することを阻害する1つ以上の分子の送達の前、その間またはその後に、ウイルスベクターを送達できる。
【0017】
一態様では、1つ以上の導入遺伝子を分離細胞のゲノム内に組み込む方法は、本明細書に開示されており、その方法は、ヌクレアーゼが導入遺伝子の標的組み込みを媒介するように、導入遺伝子及び少なくとも1つのヌクレアーゼを細胞内に連続的にまたは同時に導入することを含む。その方法は、成長因子受容体結合の少なくとも1つの阻害剤またはB細胞阻害剤の存在下で、ドナー分子を含む少なくとも1つのアデノ随伴ウイルスベクターを細胞に投与することを含み、及び少なくとも1つのヌクレアーゼを細胞内に導入することを更に含み、ヌクレアーゼによる開裂(例えば、標的ヌクレアーゼによるPD1、CTLA-4及び/またはTRACの開裂)の後、導入遺伝子(例えば、キメラ抗原受容体)はゲノム内に組み込まれる。したがって特定の態様において、1つ以上の導入遺伝子を分離細胞のゲノム内に組み込む方法は、本明細書に開示されており、その方法は、細胞内へ(a)1つ以上の導入遺伝子を含むドナーベクター(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)及び/または操作されたTCRをコードする)、及び(b)少なくとも1つのヌクレアーゼを導入することを含み、少なくとも1つのヌクレアーゼは、1つ以上の導入遺伝子が細胞のゲノム内に組み込まれるように、細胞のゲノムを切断し、更に(i)少なくとも1つのヌクレアーゼの前にドナーベクターが細胞内に導入される場合、少なくとも1つのヌクレアーゼは、ドナーベクターが導入された後、48時間以内に細胞内に導入されて、(ii)ドナーベクターの前に少なくとも1つのヌクレアーゼが導入される場合、ドナーベクターは、少なくとも1つのヌクレアーゼが導入された後、4時間以内に細胞に導入される。特定の実施形態で、前記方法は、(a)1つ以上の導入遺伝子を含むドナーベクターを細胞内に導入すること、(b)48時間未満(例えば、数秒~48時間またはそれらの間の任意の時間)細胞を培養すること、及び(c)少なくとも1つのヌクレアーゼを細胞内に導入すること、を含むことができ、1つ以上の導入遺伝子が細胞のゲノム内に組み込まれるように、少なくとも1つのヌクレアーゼは細胞のゲノムを切断する。あるいは前記方法は、(a)少なくとも1つのヌクレアーゼを細胞内に導入すること、(b)24時間未満(例えば、数秒~24時間またはそれらの間の任意の時間)細胞を培養すること、及び(c)1つ以上の導入遺伝子を含むドナーベクターを細胞内に導入すること、を含むことができ、1つ以上の導入遺伝子が細胞のゲノム内に組み込まれるように、少なくとも1つのヌクレアーゼは細胞のゲノムを切断する。方法の工程は、追加の導入遺伝子を同じ及び/または異なる座内へ取り込むために繰り返すことができる。特定の実施形態で、細胞は、24時間未満(例えば、数秒~24時間またはそれらの間の任意の時間)培養される(工程(b))。他の更なる実施形態において、例えばヌクレアーゼ(複数可)がドナーベクターの導入前に導入されるとき、細胞は4時間未満培養される。これらの方法のいずれかは、ヌクレアーゼ及び/またはドナーベクターを細胞に導入する工程の前に、それと同時に及び/またはその後に、ウイルスベクター(例えば、ヌクレアーゼ(複数可)及び/またはドナーベクターを運ぶ)と細胞受容体との結合を阻害する分子を投与する工程を更に含むことができる。
【0018】
任意の細胞は、例えば、造血幹細胞(例えばCD34+細胞)またはT細胞(例えば、CD4+またはCD8+細胞(Treg細胞を含む))またはB細胞またはNK細胞を使用することができる。いくつかの実施形態では、T細胞は、腫瘍浸潤性Tリンパ球(TIL)である。ドナーベクターは、ウイルスまたは非ウイルスベクター、例えばAAVベクター(例えばAAV2/6などのAAV6またはAAV6キメラベクター)として導入され得る。ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、TtAgo及び/またはCRISPR/Cas)は更に、例えばmRNAの形で、ウイルスまたは非ウイルスベクターを使用して導入され得る。特定の実施形態で、ヌクレアーゼは、セーフハーバー遺伝子(例えば、CCR5遺伝子、AAVS1遺伝子、Rosa遺伝子、アルブミン遺伝子など)を標的とする。導入遺伝子は、タンパク質、例えば疾患(例えばリソソーム蓄積症、異常ヘモグロビン症、血友病など)を有する対象で欠如または欠損している治療用タンパク質をコードし得る。特定の実施形態で、それを必要とする対象に1つ以上のタンパク質を提供する方法が開示されており、前記方法は、本明細書に記載のいずれかの方法に従って1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の導入遺伝子を分離細胞内に導入すること、及び1つ以上のタンパク質が対象に提供されるように細胞を対象内に導入することを含む。
【0019】
他の態様では、本発明は、標的細胞へのドナー核酸の送達を含む。ドナーは、ヌクレアーゼ(複数可)及び/または任意のウイルス受容体阻害剤をコードする核酸の前に、その後に、またはそれと一緒に送達することができる。特定の実施形態で、ドナーは、ヌクレアーゼ(複数可)及び/または任意のウイルス受容体阻害剤と同時に送達される。他の実施形態で、ヌクレアーゼ(複数可)より前の任意の時間、例えばその直前、1~60分前(またはそれらの間の任意の時間)、1~24時間前(またはそれらの間の任意の時間)、1~48時間前(またはそれらの間の任意の時間)または48時間超前を含む、ヌクレアーゼ(複数可)よりも前に、ドナーを送達する。特定の実施形態では、ヌクレアーゼの後に、好ましくは4時間以内にドナーを送達する。特定の実施形態で、核酸を細胞内に導入する方法が本明細書に開示されており、前記方法は、核酸を含むドナー分子を細胞内に投与すること、ヌクレアーゼを細胞に投与すること、を含み、ヌクレアーゼは、ドナー分子の1~48時間後またはその前の4時間以内に投与され、更にドナー分子は、ヌクレアーゼによる開裂後、細胞のゲノム内に組み込まれる。他の実施形態において、1つ以上の導入遺伝子を細胞のゲノム内に導入する方法が本明細書に開示されており、前記方法は、少なくとも1つのヌクレアーゼを細胞内に導入することを含み、少なくとも1つのヌクレアーゼは、1つ以上の導入遺伝子が細胞のゲノム内に組み込まれるように、細胞のゲノムを切断し、更に(i)少なくとも1つのヌクレアーゼの前にドナーベクターが細胞内に導入される場合、少なくとも1つのヌクレアーゼは、ドナーベクターが導入された後、48時間以内に細胞内に導入されて、(ii)ドナーベクターの前に少なくとも1つのヌクレアーゼが導入される場合、ドナーベクターは、少なくとも1つのヌクレアーゼが導入された後、4時間以内に細胞に導入される。ドナー核酸は、細胞のゲノム、例えば内因性遺伝子座中に組み込まれる外因性配列(導入遺伝子)を含む。導入遺伝子は、ヌクレアーゼ(複数可)による開裂部位にまたはその近傍(例えば、1~50塩基対内)に組み込まれることが好ましい。いくつかの実施形態で、ドナーは、標的化された開裂部位との相同性領域が隣接する、完全長遺伝子またはその断片を含む。いくつかの実施形態で、ドナーは相同領域を欠き、相同性非依存的機序(すなわちNHEJ)を介して標的遺伝子座中に組み込まれる。他の実施形態では、ドナーは、細胞で使用するため(すなわち、遺伝子補正のため)の相同領域が隣接する、核酸のより小さな断片を含む。いくつかの実施形態では、ドナーは、機能的または構造的成分、例えばshRNA、RNAi、miRNAなどをコードする遺伝子を含む。他の実施形態では、ドナーは、目的の遺伝子に結合及び/またはその発現を調節する制御エレメントをコードする遺伝子を含む。
【0020】
他の態様で、ウイルス及び/または非ウイルス遺伝子導入方法によってドナーを送達する。好ましい実施態様で、アデノ随伴ウイルス(AAV)を介してドナーを細胞に送達する。AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8及びこれらの組み合わせを含む、任意のAAVベクターを使用することができるが、これらに限定されない。場合によっては、AAVは、カプシド血清型と比較して異種血清型であるLTR(例えば、AAV5カプシド、AAV6カプシド、またはAAV8カプシドを有するAAV2 ITR)を含む。ヌクレアーゼを送達するために使用するものと同じ遺伝子導入系を使用して送達することもでき(同じベクター上を含める)、または、ヌクレアーゼのために使用する異なる送達系を使用して、ドナーを送達することができる。特定の実施形態で、ドナーは、ウイルスベクター(例えば、AAV)を使用して送達され、ヌクレアーゼ(複数可)はmRNA形態で送達される。細胞は、本明細書に記載されるようにウイルスベクター(例えば、ヌクレアーゼ(複数可)及び/またはドナーを運ぶ)の送達の前に、それと同時に及び/またはその後に、細胞表面受容体へのウイルスベクターの結合を阻害する、1つ以上の分子で処理されることもできる。
【0021】
ドナー分子の目的の配列は、プロモーターの有無にかかわらず、機能性ポリペプチドをコードする1つ以上の配列(例えば、cDNA)を含むことができる。ある場合には、ドナーは、特異的細胞型だけで発現するプロモーター(例えば、T細胞またはB細胞またはNK細胞特異的プロモーター)を含む。特定の実施形態では、核酸配列は、抗体、抗原、酵素、成長因子、受容体(細胞表面または核)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポーター、上述のいずれかの機能的断片、及び上述の組み合わせをコードする配列を含む。例としてはリソソーム蓄積症または血友病を含む、疾患または障害を有する対象に欠如している及び/または異常に発現している1つ以上のタンパク質を、核酸配列はコードすることもできる。核酸配列は、癌療法に有用な1つ以上のタンパク質(例えば、1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)及び/または操作されたT細胞受容体(TCR))もコードすることができる。配列をコードする機能性ポリペプチドがプロモーターを持たない実施形態では、組み込まれた配列の発現は、次いで目的の領域の内因性プロモーターまたは他の制御エレメントによって引き起こされる転写によって確実にされる。他の実施形態では、「タンデム」カセットは、このように選択された部位中に組み込まれており、カセットの第1成分は、上述のようにプロモーターを持たない配列を含み、その後転写終止配列、及び自律的発現カセットをコードする第2の配列が続く。2Aペプチド、SA部位、IRESなどをコードする配列を含むがこれらに限定されない、追加の配列(コード配列または非コード配列)は、相同アーム間のドナー分子中に含まれ得る。
【0022】
別の態様では、相同性非依存的機序を介して細胞のゲノム中にドナー核酸を組み込む方法が、本明細書に記載される。前記方法は、細胞のゲノムに二本鎖切断(DSB)を生じること、及びヌクレアーゼを使用してドナー分子を開裂させることを含み、その結果、ドナー核酸はDSBの部位に組み込まれる。特定の実施形態では、ドナー核酸は、非相同性依存的方法(例えば、NHEJ)によって組み込まれる。上述のように、in vivo開裂の際、ドナー配列は、DSBの位置で細胞のゲノム中に標的化した様式で組み込まれ得る。ドナー配列は、DSBを生成するために使用されるヌクレアーゼのうちの1つ以上と、同じ標的部位のうちの1つ以上を含み得る。したがってドナー配列は、組み込みが望まれる内因性遺伝子を開裂させるために使用するのと同じヌクレアーゼのうちの1つ以上によって開裂され得る。特定の実施形態では、ドナー配列は、DSBを誘導するために使用するヌクレアーゼとは異なるヌクレアーゼ標的部位を含む。標的細胞のゲノム中のDSBは、任意の機序によって生じ得る。特定の実施形態では、DSBは、1つ以上のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、目的の領域内の配列に結合するように遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメイン及び開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインを含む融合タンパク質によって生じる。他の実施形態では、DSBは、ヌクレアーゼドメインに融合し1つ以上のTALE DNA結合ドメイン(天然起源または非天然起源)(TALEN)によって生じる。他の更なる実施形態では、DSBは、遺伝子操作された単一ガイドRNAまたはその機能的等価物がゲノム中の標的化された部位にヌクレアーゼをガイドするために必要に応じて使用される、CRISPR/Cas(Cas及び/またはCfp1)またはTtAgoヌクレアーゼ系を使用して生じる。
【0023】
他の態様では、ヌクレアーゼ(複数可)は、セーフハーバー遺伝子、例えば哺乳動物細胞のCCR5遺伝子、PPP1R12C(AAVS1としても公知)遺伝子、Rosa遺伝子、及びアルブミン遺伝子に結合する及び/またはそれらを開裂する。更に哺乳動物系の選択を補助するために、HPRT遺伝子座を使用することができる。
【0024】
いくつかの態様において、ヌクレアーゼ(複数可)は、チェックポイント阻害剤遺伝子(例えばPD-1、CTLA4、阻害性リガンドのB7ファミリーにおける受容体)に結合する及び/もしくはそれらを開裂する、またはLAG3、2B4、BTLA、TIM3、A2aRを介したシグナル伝達に伴う受容体もしくはリガンド遺伝子、及びキラー阻害性受容体(KIR及びC型レクチン受容体)を開裂する。Pardoll(2012)Nat Rev Cancer 12(4):252を参照のこと。
【0025】
他の態様では、ヌクレアーゼ(複数可)は、拒絶に関与する因子をコードする遺伝子、例えばHLA複合体(クラスI:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、β-2ミクログロブリン(B2M)、クラスII:HLA-DMA、HLA-DOA、HLA-DPA1、HLA-DQA、HLA-DRA、HLA-DMB、HLA-DOB、HLA-DPB1、HLA-DQB、HLA-DRB)またはTCRのサブユニットをコードする遺伝子に結合する及び/もしくはそれらを開裂する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ(複数可)は、HLA複合体(例えばTAP、タパシン、カルレティキュリン、カルネキシン、LMP2、LMP7またはErp57)のためのペプチド負荷処理及び抗原プロセシングに関与する生成物をコードする遺伝子を標的とする。
【0026】
一態様では、ドナーは、目的の遺伝子に結合する及び/またはその発現を調整する、目的の調節タンパク質(例えば、ZFP TF、TALE TFまたはCRISPR/Cas TF)である。一実施形態では、調節タンパク質はDNA配列に結合し、他の調節因子の結合を防止する。別の実施形態では、調節タンパク質の結合は、標的DNAの発現を調節(すなわち、誘導または抑圧)し得る。
【0027】
他の態様では、ドナーは、T細胞をリダイレクトできるタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、タンパク質は操作された抗原受容体である。更なる実施形態では、遺伝子操作された受容体はキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)であり、いくつかの実施形態のTCRは、増強した親和性の操作されたTCRまたは天然起源のTCRである。他の態様では、遺伝子操作されたタンパク質は、抗体結合T細胞受容体(ACTR)である。
【0028】
他の態様では、例えば遺伝子改変を導入するためにヌクレアーゼを使用して、本明細書に記載されるように遺伝子改変した細胞(例えば、トランスジェニック)を、本明細書に開示する。細胞の1つ以上の遺伝子は、例えば標的化された組込みを介して、1つ以上の遺伝子及び/または1つ以上の遺伝子の部分的もしくは完全な不活性化(KO)へ改変され得て、それは、1つ以上の遺伝子及びKOの標的化された組込み(標的遺伝子の不活化の有無にかかわらず)を含有する遺伝子改変(1つ以上の遺伝子の標的化された組込みの有無にかかわらず(例えば、1つの遺伝子の標的化された組込み及び不活性化(KO)ならびに第2の異なる遺伝子のKO))を含む。特定の実施形態で、細胞は本明細書に記載の方法によって生成される。特定の実施形態では、細胞は、セーフハーバー遺伝子座(例えばCCR5、AAVS1、ALB、Rosa26及び/またはHPRT)内に組み込まれた導入遺伝子を含む。細胞への遺伝子改変(例えば、核酸の組込み)は、例えばヌクレアーゼのDNA結合分子が結合する遺伝子の標的部位の12以上の(例えば12~35またはその間の任意の値)の連続するヌクレオチドを含む、部位内、そこでまたはその近くであり得る。組み込まれた導入遺伝子を含む細胞は、内在性プロモーターからの導入遺伝子を発現することができる、または導入遺伝子は、調整及び制御因子(例えば導入遺伝子の発現を引き起こす外因性プロモーター(例えばセーフハーバー遺伝子座内に組み込まれるとき))を含むことができる。特定の実施形態で、導入遺伝子を含む細胞は、ゲノム内に組み込まれる任意のウイルスベクター配列を含まない。細胞は、任意の真核細胞、例えばCD34+幹細胞(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)もしくは他の動員剤の投与を介して骨髄から末梢血に患者で動員された、または骨髄もしくは臍帯から直接搾取した患者由来の幹細胞)であり得る。細胞を採取し、精製し、培養し、ならびに任意の適切な方法によってヌクレアーゼ及び/またはドナーを細胞中に導入することができる。
【0029】
本明細書に記載されているように遺伝子改変された細胞を含む医薬組成物などの組成物も提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、CD34+HSC/PCまたはHSC/PC細胞集団を含む。他の実施形態では、組成物は、T細胞(例えば、CD4+及び/またはCD8+T細胞もしくはTIL)を含む。他の更なる実施形態では、T細胞組成物は、CD4+細胞のみ、またはCD8+細胞のみを含む。
【0030】
別の態様では、本明細書に記載されるように遺伝子改変した細胞を使用する方法が提供される。特定の実施形態では、遺伝子改変した血液細胞前駆体(「HSC/PC」)は、骨髄移植において投与され、HSC/PCはin vivoで分化及び成熟する。いくつかの実施形態において、HSC/PCは、G-CSFに誘導された動員の後に単離され、他の実施形態では、これらの細胞はヒト骨髄または臍帯から単離される。いくつかの態様では、HSC/PCは、特定の遺伝子または調節配列をノックアウトするように設計されたヌクレアーゼによる処理によって編集される。他の態様では、HSC/PCは、野生型遺伝子もしくは他の目的の遺伝子が挿入及び発現され、及び/または内因性の異常な遺伝子が補正されるように、遺伝子操作されたヌクレアーゼとドナー核酸とで改変される。いくつかの実施形態では、改変されたHSC/PCは、穏やかな骨髄破壊的前処理の後に患者に投与される。他の態様では、移植後に造血細胞の100%が改変されたHSC/PCに由来するように、HSC/PCは完全な骨髄破壊後に投与される。
【0031】
本発明の方法と組成物は、ウイルスベクター(例えばAAV)の標的組織の細胞へのin vivo送達効率を増大させるため、対象(例えば、動物)の追加的な治療も含み得る。いくつかの実施形態では、治療は、AAV送達の前、その間及び/またはその後に提供される。いくつかの実施形態では、治療は、体液性抗体反応を阻害するために、対象へのステロイドの提供を含む。好適なステロイドの非限定例は、メチルプレドニゾロン(例えばMedrol(登録商標)、Solu Medrol(登録商標))及びプレドニゾロンを含む。他の実施態様において、治療は、リツキシマブ(例えばRituxan(登録商標))などのB細胞阻害剤を含む、体液性反応の阻害剤の使用を含む。他の更なる実施形態において、治療方法は、少なくともステロイド及びB細胞阻害剤で動物を治療するなどの送達効率を上昇させるために、群を組み合わせる。これらの治療群は、AAVによる動物の治療の前、その間またはその後に使用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の本発明の方法及び組成物は、導入遺伝子によってコードされる治療用タンパク質の濃度が、抗治療用タンパク質抗体の一時的増大の後、治療的に関連したレベルで残るように、治療的タンパク質への哺乳動物の忍容性を誘導するために用いることができる。したがって、対象の治療用タンパク質への忍容性を誘導する方法が本明細書に開示されており、前記方法は、本明細書に記載されるような方法を使用して(例えば、細胞が治療用タンパク質を生成するように)、動物が治療用タンパク質に寛容化されるように、所望により追加の組成物(例えば、ステロイド及び/またはB細胞阻害剤)で対象を治療することと共に、対象の細胞を遺伝子改変することを含む。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質のレシピエント細胞への挿入は、免疫抑制性ステロイドまたはB細胞阻害剤による治療と同時に行われ、他の場合では、免疫調節剤は使用されない。場合によっては、免疫調節剤は、抗治療用タンパク質抗体が生成される場合のみ投与される。更なる場合において、免疫調節剤はしばらくして中止する。したがって核酸を対象(例えば血友病などの疾患に罹患した対象)の細胞に導入する方法が提供されており、前記方法は、ドナー分子(例えば、治療用タンパク質(例えば凝固因子、所望によりVIII因子及び/またはIX因子)をコードする導入遺伝子)及び少なくとも1つのステロイド及び/または少なくとも1つのB細胞阻害剤を含む、少なくとも1つのアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を対象に投与することを含む。特定の実施形態で、対象は哺乳動物であり、導入遺伝子は治療用タンパク質をコードし、哺乳動物は治療用タンパク質に寛容化される。
【0033】
本明細書に記載され方法及び組成物のいずれかで、使用する治療用導入遺伝子は、凝固因子をコードする。好ましい実施形態で、導入遺伝子は、FVIIIタンパク質またはF.IXタンパク質をコードする。特に好ましい実施形態で、FVIIIタンパク質をコードする導入遺伝子は、Bドメインを欠いている(Bドメイン欠失またはBDD)FVIIIをコードする。
【0034】
他の実施態様において、本明細書に記載されているように遺伝子改変したT細胞を使用する方法が提供される。場合によっては自家T細胞(患者に由来)を使用し、他の実施形態では異質遺伝子型(ドナーに由来)が使用される。場合によっては、T細胞は、アフェレーシスによってドナーまたは患者から分離されて、それからex vivo処理して、所望の遺伝子改変を得る。そうして、患者への注入のために多くの細胞を得るために、改変T細胞を増殖させる。いくつかの実施形態では、単離されたT細胞は最初に増殖して、それから所望の遺伝子改変を得るために改変される。いくつかの態様では、T細胞は、特定の遺伝子または調節配列をノックアウトするように設計されたヌクレアーゼによる処理によって編集される。他の態様では、T細胞は、野生型遺伝子もしくは他の目的の遺伝子が挿入及び発現され、及び/または内因性の異常な遺伝子が補正されるように、遺伝子操作されたヌクレアーゼとドナー核酸とで改変される。いくつかの実施形態では、TILは周知の方法(例えば、Ellebaek et al(2012)J.Transl Med 10:169のみを参照のこと)により切除した腫瘍組織から分離され、更なる実施形態で、患者は、腫瘍組織の切除の後だが、改変TILの注入前に、免疫療法を受けることができる。他の更なる実施形態で、T細胞は制御性T細胞(Treg)である。更に細胞は、細胞周期のG2期で停止され得る。
【0035】
いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物の特異的疾患を治療するまたは予防するための、方法及び組成物を含む。いくつかの実施形態で、前記方法及び組成物は、癌(例えば濾胞性リンパ腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、神経膠芽腫、慢性リンパ性白血病またはCLL及び急性リンパ性白血病またはALL、卵巣癌、前立腺、結腸、腎細胞及び細胞腫)を治療するために使用する(例えばKershaw et al(2014)Clin Transl Immunol 3,e16,doi:10.1038/cti.2014.7を参照のこと)。他の実施態様において、前記方法及び組成物は、例えばHIV、HCV、HBV(Sautto et al(2015)Gut
0:1-12を参照)、エボラ、CMV、EBV及びアデノウイルスなどの感染症を治療するために用いる。他の更なる態様において、本発明の方法及び組成物は、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、乾癬、ループス及び強皮症)の治療を含む。
【0036】
別の態様においては、対象の癌を治療する方法が提供されており、前記方法は記載した方法のいずれかによって核酸を単離された細胞に導入することを含み、そこでドナー分子は、細胞がCARを発現するようにCARをコードして、CARを発現する細胞を対象に投与する配列を含む。特定の実施形態において、CARコード配列は、ヌクレアーゼによる遺伝子開裂の後、PD1、CTLA-4及び/またはTRAC遺伝子に組み込まれる。特定の実施形態において、CARコード配列は、開裂後、ヌクレアーゼによる遺伝子の開裂後に第1の遺伝子(例えば、PD1、CTLA-4及び/またはTRAC遺伝子)に組み込まれ、第2の(異なる)遺伝子(例えば、PD1、CTLA-4及び/またはTRAC遺伝子)は、第2のヌクレアーゼによって不活性化される。
【0037】
いくつかの実施形態において、遺伝子導入HSC/PC細胞もしくはT細胞、及び/または動物は、ヒト遺伝子をコードする導入遺伝子を含む。場合によっては、遺伝子導入動物は、外因性導入遺伝子に対応する内因性遺伝子座のノックアウトを含み、それによって、ヒトタンパク質が単離で試験され得るin vivoシステムの開発を可能にする。そのような遺伝子導入モデルは、小分子もしくは大きい生体分子、または目的のヒトタンパク質と相互作用し得るもしくはそれを改変し得る他の実体を同定するために、スクリーニング目的で使用され得る。いくつかの態様において、導入遺伝子は、本明細書に記載の方法のいずれかによって得られた幹細胞(例えば、胚幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞または前駆細胞など)、T細胞(例えば、CD4+、CD8+(Tregを含む)またはTIL)または動物胚中の選択された遺伝子座(例えば、セーフハーバー)内に組み込まれ、次いで胚は、生きた動物が出生するように移植される。それから動物は性的成熟期になるまで育成され、子孫を生じさせて、子孫の少なくとも一部は、編集された内因性遺伝子配列または組み込まれた導入遺伝子を含む。
【0038】
本発明のAAV及び核酸を含むキットも提供される。キットは、ヌクレアーゼをコードする核酸(例えば、RNA分子、または適切な発現ベクター中に含有されるZFN、TALEN、TtAgoもしくはCRISPR/Cas系コード遺伝子)、またはヌクレアーゼタンパク質のアリコート、ドナー分子、適切な幹細胞性改変因子、本発明の方法を実施するための指示書などを含み得る。これらのキットは、選択マーカーまたはスクリーニングマーカーなどの目的のドナー分子も含み得る。
【0039】
これら及び他の態様は、全体としての開示を踏まえて、当業者に容易に明らかである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
核酸を分離細胞内に導入する方法であって、前記方法が、
成長因子受容体結合の少なくとも1つの阻害剤の存在下で、ドナー分子を含む、少なくとも1つのアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を前記細胞に投与することを含む、前記方法。
(項目2)
前記成長因子阻害剤が、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、Met/肝細胞成長因子受容体(HGFR)、リポアラビノマンナン受容体(LamR)、αVβ5インテグリン受容体、細胞間接着分子1受容体(Icam-1)及び/または血小板由来成長因子受容体に結合することを阻害する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ドナー分子が前記細胞で発現する導入遺伝子を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記導入遺伝子が前記細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記導入遺伝子がキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、項目4に記載の方法。
(項目6)
少なくとも1つのヌクレアーゼを前記細胞内に導入することを更に含み、前記導入遺伝子が、前記ヌクレアーゼによる1つ以上の遺伝子の開裂の後、前記細胞の1つ以上の遺伝子内に組み込まれ、前記方法が前記細胞の1つ以上の追加の遺伝子を不活性化する第2のヌクレアーゼを導入することを更に含む、項目4に記載の方法。
(項目7)
前記ヌクレアーゼが、プログラムされた細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遺伝子、β2-ミクログロブリン(B2M)及び/またはT細胞受容体α(TRAC)遺伝子を切断する、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記細胞が、造血幹細胞、T細胞、B細胞またはNK細胞である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
対象の癌を治療する方法であって、
前記方法が、項目1~8のいずれか一項に記載の方法に従って核酸を細胞内に導入することであって、そこで前記細胞がCARを発現するように、ドナー分子が前記CARをコードする配列を含む、前記導入することと、
前記対象に前記細胞を投与することと、を含む、前記方法。
(項目10)
核酸を対象の細胞内に導入する方法であって、前記方法が、
ドナー分子及び少なくとも1つのステロイド及び/または少なくとも1つのB細胞阻害剤を含む、少なくとも1つのアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を対象に投与することを含む、前記方法。
(項目11)
前記ドナー分子が導入遺伝子をコードする配列を含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記対象が哺乳動物であり、前記導入遺伝子が治療用タンパク質をコードし、更に前記哺乳動物が治療用タンパク質に寛容化される、項目10または項目11に記載の方法。
(項目13)
前記対象が血友病を有し、前記ドナー分子がVIII因子またはIX因子などの凝固因子をコードする、項目12に記載の方法。
(項目14)
核酸を細胞内に導入する方法であって、前記方法が、
核酸を含むドナー分子を細胞内に投与することと、
ヌクレアーゼを前記細胞に投与すること、を含み、前記ヌクレアーゼが、ドナー分子の1~48時間後またはその前の4時間以内に投与され、更に前記ドナー分子が、前記ヌクレアーゼによる開裂後、前記細胞の前記ゲノム内に組み込まれる、前記方法。
(項目15)
1つ以上の導入遺伝子を細胞のゲノム内に導入する方法であって、前記方法が、
少なくとも1つのヌクレアーゼを前記細胞内に導入することを含み、前記少なくとも1つのヌクレアーゼは、前記1つ以上の導入遺伝子が前記細胞の前記ゲノム内に組み込まれるように、前記細胞の前記ゲノムを切断し、更に(i)前記少なくとも1つのヌクレアーゼの前に前記ドナーベクターが前記細胞内に導入される場合、前記少なくとも1つのヌクレアーゼは、前記ドナーベクターが導入された後、48時間以内に前記細胞内に導入されて、(ii)前記ドナーベクターの前に前記少なくとも1つのヌクレアーゼが導入される場合、前記ドナーベクターは、前記少なくとも1つのヌクレアーゼが導入された後、4時間以内に前記細胞に導入される、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】T細胞導入遺伝子ドナーベクターのデザインを示す。ドナーは、切断部位に隣接するゲノム配列に相同の右(R)及び左(L)相同性アームを含む。ドナーは、目的の導入遺伝子に結合するプロモーター配列も含む。導入遺伝子は、操作された抗原受容体(例えばCAR、TCRまたはACTR)をコードする。ポリAシグナル伝達配列は、導入遺伝子の効率的な発現を得るために、ドナーにもある。T細胞を形質導入するために使用する方法も示される。
【
図2】培養基に存在する血清が、ドナーのCD3+T細胞への標的化された組込みに有する、効果を示すグラフである。RFLPドナーを含むAAV2/6の増加した投与量で検出した、組込まれたRFLPの割合によってドナーの組込みは測定される。CCR5特異的ZFNは、mRNA電気穿孔法を介して送達された。
【
図3】AAV2/6形質導入した細胞のヌクレアーゼ活性を示すグラフである。示した阻害剤(ウイルス受容体へのAAVの結合を阻害する)の存在下で、Hep3B細胞は、一対のヒトアルブミン特異的ZFNを含むAAV2/6の3e4 vg/細胞のMOI(感染多重度)により形質導入された。形質導入の3日後、ゲノムDNAは細胞から分離されて、ZFN切断部位周辺の小さな挿入及び欠失の形で(indel%)ヌクレアーゼ活性について分析した。阻害剤は示された濃度で使用されて、PDGFRの阻害剤が観察した活性の量を増加させることをデータは示す。
【
図4】リポフェクタミンRNAiMAXによるmRNA形質導入を介して送達された、ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性を示すグラフである。データは、
図3に示される結果と異なることを示し、AAV2/6送達が使用した際、PDGFR阻害剤の濃度を上昇させることは検出したindelの数に影響を及ぼさない。したがって、PDGFR阻害剤の存在下で観察されるindel頻度の増加は、DNA切断修復経路に直接作用する阻害剤が原因ではない。
【
図5】アルブミン特異的ZFNならびにPDGFR及びEGFR阻害剤の組み合わせを含む、AAVによるHep3B細胞の処理後のヌクレアーゼ活性を示すグラフであり、各条件は2回ずつ行われた。両方の阻害剤型の存在下でindel形成の増加がないことを、結果は示す。
【
図6】阻害剤をHepG2細胞で使用したときのヌクレアーゼ活性を示すグラフである。異なる阻害剤の濃度が以下のデータに示されており、ZFN含有AAV2/6(3e4vg/細胞のMOI)のこの用量で、PDGFR阻害剤は増加した検出可能なヌクレアーゼ活性をもたらすことを実証する。
【
図7】血清及び示したウイルス受容体阻害剤の存在下または不存在下で、Hep3B細胞のヌクレアーゼ活性を示すグラフである。各データセットは血清の有無の結果を示し、すべての阻害剤は、ZFN含有AAV2/6を用いて試験した。各セットの左のグラフは血清のない状態で測定したデータに対応しており、各セットの右のグラフは血清有りで行われた実験の結果である。Hep3Bで、約40倍血清がある場合に、全体のAAV2/6形質導入が下がることをデータは示す。しかし、PDGFR阻害剤の存在下で、AAV形質導入は、検出可能な20%のindelがあって頑強である。
【
図8】血清の存在下または不存在下でPDGFR阻害剤がある場合、indel検出の倍増を示すグラフである。2つの条件においてZFNのみと比較して、検出したindel形成の倍増変化としてデータをプロットした。実験を血清で実施したとき、血清中ZFNのみと比較してPDGFR阻害剤がある場合、検出されるindelは70倍増加したことをこのデータは示す。
【
図9】初代肝細胞のAAV取り込みでのPDGFR阻害剤2(クレノラニブ)の効果を示すグラフである。阻害剤がない場合と比較して、PDGFR阻害剤9μMが、検出されたindelの大きい増加を引き起こしたことを、データは証明する。
【
図10A】
図10A及び
図10Bは、非ヒト霊長類試験における投与概略を示す。試験物投与後のリツキサン(登録商標)及びソルメドロール(登録商標)投与を、
図10Aは示す。試験物投与前のリツキサン(登録商標)及びソルメドロール(登録商標)投与を、
図10Bは示す。
【
図10B】
図10A及び
図10Bは、非ヒト霊長類試験における投与概略を示す。試験物投与後のリツキサン(登録商標)及びソルメドロール(登録商標)投与を、
図10Aは示す。試験物投与前のリツキサン(登録商標)及びソルメドロール(登録商標)投与を、
図10Bは示す。
【
図11A】
図11A~
図11Dは、IX因子(F.IX)を運ぶAAVドナーによるNHPの処理後、全AAV-F.IX用量によるピークヒトF.IXレベルを表すグラフである。
図11A及び
図11Bは、試験物投与後のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Aは、グループ3(実施例を参照、1.5e15vg/kg、1:1:8、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ4(9e13vg/kg、1:1:4、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ5(6e13vg/kg、1:1:2、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ6(5e13vg/kg、1:1:8、中用量ZFN+hF9ドナー)、グループ7(中用量ZFN+hF9ドナー、1:1:2、2e13vg/kg)、及びグループ8(低用量ZFN+hF9ドナー、1:1:8、1.5e13vg/kg)の用量曲線を示す。
図11Bは、ZFN:ZFN:hF9ドナーの1:1:8比におけるZFN+hF9ドナー用量レベルによる、ピーク循環hF.IXレベルについてまとめている。
図11Cは、試験物投与前のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Dは、リツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)投与後(灰色)及びその前(黒)両方の収集データを示す。
【
図11B】
図11A~
図11Dは、IX因子(F.IX)を運ぶAAVドナーによるNHPの処理後、全AAV-F.IX用量によるピークヒトF.IXレベルを表すグラフである。
図11A及び
図11Bは、試験物投与後のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Aは、グループ3(実施例を参照、1.5e15vg/kg、1:1:8、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ4(9e13vg/kg、1:1:4、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ5(6e13vg/kg、1:1:2、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ6(5e13vg/kg、1:1:8、中用量ZFN+hF9ドナー)、グループ7(中用量ZFN+hF9ドナー、1:1:2、2e13vg/kg)、及びグループ8(低用量ZFN+hF9ドナー、1:1:8、1.5e13vg/kg)の用量曲線を示す。
図11Bは、ZFN:ZFN:hF9ドナーの1:1:8比におけるZFN+hF9ドナー用量レベルによる、ピーク循環hF.IXレベルについてまとめている。
図11Cは、試験物投与前のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Dは、リツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)投与後(灰色)及びその前(黒)両方の収集データを示す。
【
図11C】
図11A~
図11Dは、IX因子(F.IX)を運ぶAAVドナーによるNHPの処理後、全AAV-F.IX用量によるピークヒトF.IXレベルを表すグラフである。
図11A及び
図11Bは、試験物投与後のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Aは、グループ3(実施例を参照、1.5e15vg/kg、1:1:8、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ4(9e13vg/kg、1:1:4、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ5(6e13vg/kg、1:1:2、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ6(5e13vg/kg、1:1:8、中用量ZFN+hF9ドナー)、グループ7(中用量ZFN+hF9ドナー、1:1:2、2e13vg/kg)、及びグループ8(低用量ZFN+hF9ドナー、1:1:8、1.5e13vg/kg)の用量曲線を示す。
図11Bは、ZFN:ZFN:hF9ドナーの1:1:8比におけるZFN+hF9ドナー用量レベルによる、ピーク循環hF.IXレベルについてまとめている。
図11Cは、試験物投与前のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Dは、リツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)投与後(灰色)及びその前(黒)両方の収集データを示す。
【
図11D】
図11A~
図11Dは、IX因子(F.IX)を運ぶAAVドナーによるNHPの処理後、全AAV-F.IX用量によるピークヒトF.IXレベルを表すグラフである。
図11A及び
図11Bは、試験物投与後のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Aは、グループ3(実施例を参照、1.5e15vg/kg、1:1:8、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ4(9e13vg/kg、1:1:4、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ5(6e13vg/kg、1:1:2、高用量ZFN+hF9ドナー)、グループ6(5e13vg/kg、1:1:8、中用量ZFN+hF9ドナー)、グループ7(中用量ZFN+hF9ドナー、1:1:2、2e13vg/kg)、及びグループ8(低用量ZFN+hF9ドナー、1:1:8、1.5e13vg/kg)の用量曲線を示す。
図11Bは、ZFN:ZFN:hF9ドナーの1:1:8比におけるZFN+hF9ドナー用量レベルによる、ピーク循環hF.IXレベルについてまとめている。
図11Cは、試験物投与前のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、用量曲線を示す。
図11Dは、リツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)投与後(灰色)及びその前(黒)両方の収集データを示す。
【
図12A】
図12A~
図12Cは、1:1:8用量比グループにおけるNHPの処理後、遺伝子改変のレベル(Indel%)を示すグラフである。
図12Aは、試験物投与後のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、28日目のIndel%を示す。グループ3(1.5e15vg/kg、高用量ZFN+hF9)、グループ6(5e13vg/kg、1:1:8、中用量ZFN+hF9ドナー)、及びグループ8(低用量ZFN+hF9ドナー、1:1:8、1.5e13vg/kg)。
図12Bは、試験物投与前のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、61日目のIndel%を示す。
図12Cは、リツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)投与後(灰色)及びその前(黒)両方の収集データを示す。
【
図12B】
図12A~
図12Cは、1:1:8用量比グループにおけるNHPの処理後、遺伝子改変のレベル(Indel%)を示すグラフである。
図12Aは、試験物投与後のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、28日目のIndel%を示す。グループ3(1.5e15vg/kg、高用量ZFN+hF9)、グループ6(5e13vg/kg、1:1:8、中用量ZFN+hF9ドナー)、及びグループ8(低用量ZFN+hF9ドナー、1:1:8、1.5e13vg/kg)。
図12Bは、試験物投与前のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、61日目のIndel%を示す。
図12Cは、リツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)投与後(灰色)及びその前(黒)両方の収集データを示す。
【
図12C】
図12A~
図12Cは、1:1:8用量比グループにおけるNHPの処理後、遺伝子改変のレベル(Indel%)を示すグラフである。
図12Aは、試験物投与後のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、28日目のIndel%を示す。グループ3(1.5e15vg/kg、高用量ZFN+hF9)、グループ6(5e13vg/kg、1:1:8、中用量ZFN+hF9ドナー)、及びグループ8(低用量ZFN+hF9ドナー、1:1:8、1.5e13vg/kg)。
図12Bは、試験物投与前のリツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)によるNHP試験における、61日目のIndel%を示す。
図12Cは、リツキサン(登録商標)/ソルメドロール(登録商標)投与後(灰色)及びその前(黒)両方の収集データを示す。
【
図13A】
図13A~
図13Dは、VIII因子(F8)Bドメイン欠失(FVIII-BDD)タンパク質を運ぶAAVドナーを使用したNHP試験における、ヒトFVIII血漿レベルの概要を表すグラフである。
図13Aは、グループ2動物(AAV2/6、2E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Bは、グループ3動物(AAV2/6、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Cは、グループ4動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Dは、グループ5動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。ヒトVIII因子の1U/mLは生理的正常値と考えられ、したがって正常な生理的循環ヒトVIII因子の100%に等しい。
【
図13B】
図13A~
図13Dは、VIII因子(F8)Bドメイン欠失(FVIII-BDD)タンパク質を運ぶAAVドナーを使用したNHP試験における、ヒトFVIII血漿レベルの概要を表すグラフである。
図13Aは、グループ2動物(AAV2/6、2E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Bは、グループ3動物(AAV2/6、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Cは、グループ4動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Dは、グループ5動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。ヒトVIII因子の1U/mLは生理的正常値と考えられ、したがって正常な生理的循環ヒトVIII因子の100%に等しい。
【
図13C】
図13A~
図13Dは、VIII因子(F8)Bドメイン欠失(FVIII-BDD)タンパク質を運ぶAAVドナーを使用したNHP試験における、ヒトFVIII血漿レベルの概要を表すグラフである。
図13Aは、グループ2動物(AAV2/6、2E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Bは、グループ3動物(AAV2/6、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Cは、グループ4動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Dは、グループ5動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。ヒトVIII因子の1U/mLは生理的正常値と考えられ、したがって正常な生理的循環ヒトVIII因子の100%に等しい。
【
図13D】
図13A~
図13Dは、VIII因子(F8)Bドメイン欠失(FVIII-BDD)タンパク質を運ぶAAVドナーを使用したNHP試験における、ヒトFVIII血漿レベルの概要を表すグラフである。
図13Aは、グループ2動物(AAV2/6、2E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Bは、グループ3動物(AAV2/6、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Cは、グループ4動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。
図13Dは、グループ5動物(AAV2/8、6E+12vg/kg)の結果を示す。ヒトVIII因子の1U/mLは生理的正常値と考えられ、したがって正常な生理的循環ヒトVIII因子の100%に等しい。
【
図14】103日目のすべての免疫抑制の除去を含む、ヒトFVIII-BDD非ヒト霊長類(NHP)試験における投与スキームを示す。リツキサン及びソルメドロール投与の概要。リツキサン(10mg/kg、IV)投与は試験物投与前であり、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール)(10mg/kg、IM)投与は103日目まで毎日あった。
【
図15】非ヒト霊長類(NHP)の処理後、試験にわたるピークヒトFVIII抗原濃度を示すグラフである。2E+12vg/kgの用量レベル(n=3)で、ヒトの正常hFVIII血漿レベルの111.0%、493.9%及び840.0%のピーク値(hFVIII ELISAで測定される全体の平均481.6%)は得られた。6E+12vg/kg(n=3)を表す高用量で、hFVIII血漿レベルの450.0%、625.6%及び886.7%[全体の平均654.1%]のピーク値は得られた。
【
図16A】
図16A~
図16Cは、投与後168日の期間にわたるAAV2/6-FVIII-BDD cDNAの低用量(2E+12vg/kg、グループ2)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。すべての3つのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物2101、2102及び2103)の結果を示す。
【
図16B】
図16A~
図16Cは、投与後168日の期間にわたるAAV2/6-FVIII-BDD cDNAの低用量(2E+12vg/kg、グループ2)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。すべての3つのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物2101、2102及び2103)の結果を示す。
【
図16C】
図16A~
図16Cは、投与後168日の期間にわたるAAV2/6-FVIII-BDD cDNAの低用量(2E+12vg/kg、グループ2)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。すべての3つのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物2101、2102及び2103)の結果を示す。
【
図17A】
図17A~
図17Cは、投与後180日の期間にわたるAAV2/6-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ3)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。すべての3つのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物3101、3102及び3103)の結果を示す。
【
図17B】
図17A~
図17Cは、投与後180日の期間にわたるAAV2/6-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ3)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。すべての3つのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物3101、3102及び3103)の結果を示す。
【
図17C】
図17A~
図17Cは、投与後180日の期間にわたるAAV2/6-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ3)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。すべての3つのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物3101、3102及び3103)の結果を示す。
【
図18A】
図18A~
図18Dは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ4)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。18A~18Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図18Dは、動物4103についてのグラフの低値の「ブローアップ」である(18A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、18DがFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物4101、4102及び4103)の結果を示す。
【
図18B】
図18A~
図18Dは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ4)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。18A~18Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図18Dは、動物4103についてのグラフの低値の「ブローアップ」である(18A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、18DがFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物4101、4102及び4103)の結果を示す。
【
図18C】
図18A~
図18Dは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ4)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。18A~18Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図18Dは、動物4103についてのグラフの低値の「ブローアップ」である(18A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、18DがFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物4101、4102及び4103)の結果を示す。
【
図18D】
図18A~
図18Dは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ4)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。18A~18Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図18Dは、動物4103についてのグラフの低値の「ブローアップ」である(18A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、18DがFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物4101、4102及び4103)の結果を示す。
【
図19A】
図19A~
図19Eは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ5)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。19A~19Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図19D及び
図19Eは、グラフの低値の「ブローアップ」である(19A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、19D及び19Eの軸がFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物5101、5102及び5103)の結果を示す。
【
図19B】
図19A~
図19Eは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ5)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。19A~19Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図19D及び
図19Eは、グラフの低値の「ブローアップ」である(19A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、19D及び19Eの軸がFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物5101、5102及び5103)の結果を示す。
【
図19C】
図19A~
図19Eは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ5)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。19A~19Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図19D及び
図19Eは、グラフの低値の「ブローアップ」である(19A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、19D及び19Eの軸がFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物5101、5102及び5103)の結果を示す。
【
図19D】
図19A~
図19Eは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ5)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。19A~19Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図19D及び
図19Eは、グラフの低値の「ブローアップ」である(19A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、19D及び19Eの軸がFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物5101、5102及び5103)の結果を示す。
【
図19E】
図19A~
図19Eは、投与後168日の期間にわたるAAV2/8-FVIII-BDD cDNAの高用量(6E+12vg/kg、グループ5)を投与した、個々のカニクイザル(n=3)からの結果を示すグラフである。19A~19Cのグラフで、ELISAにより測定された血漿のFVIII-BDDの濃度は、黒で示される。そのうえ血漿の抗FVIII抗体を中和する濃度(ベセスダ単位と示す)は、灰色で示される。
図19D及び
図19Eは、グラフの低値の「ブローアップ」である(19A~Cのy軸がFVIII抗原の0~5U/mLからはじまり、19D及び19Eの軸がFVIII抗原の0~1U/mLからはじまることに注意)。水平点線はベセズダ単位カットオフポイントを表し、その下の値は、抗FVIII中和抗体において陽性とはみなされない。ソルメドロールは、垂直点線で示される103日目で止めた。各グラフは、1匹のサル(動物5101、5102及び5103)の結果を示す。
【
図20A】
図20A~
図20Dは、TRAC及びB2Mシングルならびダブルノックアウト(KO)、ならびに標的化された組込み(TI)のFACs分析を示す。TRAC-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の88%がTRAC遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の71%がTRAC遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Aは示す。B2M-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の93%がB2M遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の72%がB2M遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Bは示す。TRAC及びB2Mの両方が同じ細胞(ダブルKO/改変遺伝子細胞)で標的とされる細胞の分析を、
図20C及び
図20Dは示す。
【
図20B】
図20A~
図20Dは、TRAC及びB2Mシングルならびダブルノックアウト(KO)、ならびに標的化された組込み(TI)のFACs分析を示す。TRAC-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の88%がTRAC遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の71%がTRAC遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Aは示す。B2M-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の93%がB2M遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の72%がB2M遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Bは示す。TRAC及びB2Mの両方が同じ細胞(ダブルKO/改変遺伝子細胞)で標的とされる細胞の分析を、
図20C及び
図20Dは示す。
【
図20C】
図20A~
図20Dは、TRAC及びB2Mシングルならびダブルノックアウト(KO)、ならびに標的化された組込み(TI)のFACs分析を示す。TRAC-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の88%がTRAC遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の71%がTRAC遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Aは示す。B2M-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の93%がB2M遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の72%がB2M遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Bは示す。TRAC及びB2Mの両方が同じ細胞(ダブルKO/改変遺伝子細胞)で標的とされる細胞の分析を、
図20C及び
図20Dは示す。
【
図20D】
図20A~
図20Dは、TRAC及びB2Mシングルならびダブルノックアウト(KO)、ならびに標的化された組込み(TI)のFACs分析を示す。TRAC-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の88%がTRAC遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の71%がTRAC遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Aは示す。B2M-ヌクレアーゼ/AAV GFPドナー処理細胞の93%がB2M遺伝子を不活性化し(左パネル)、細胞の72%がB2M遺伝子内に組み込まれたAAV送達GFPドナーを有する(右パネル)ことを、
図20Bは示す。TRAC及びB2Mの両方が同じ細胞(ダブルKO/改変遺伝子細胞)で標的とされる細胞の分析を、
図20C及び
図20Dは示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
遺伝子治療及びゲノム遺伝子操作に使用するための細胞の形質導入の組成物及び方法を、本明細書に開示する。特に、標的化された開裂、続いて非相同末端結合による、外因性配列または遺伝子変化のヌクレアーゼ媒介性(すなわちZFN、TALEN、TtAgoまたはCRISPR/Cas(Cas及び/またはCfp1)系)標的化された組込みを、細胞に効率的に得る。HSC/PC及び初代T細胞の形質導入及び遺伝子操作に特に有用であるが、前記方法及び組成物は他の細胞型にも使用することができる。
【0042】
ZFN及びドナーテンプレートDNAの送達は、細胞表面受容体へのウイルスベクターの結合を阻害するウイルスベクター及び/または分子を使用して、本明細書に詳述されるように最適化された。本明細書で記載される方法及び組成物は、CD34+細胞などの任意の造血幹細胞または前駆体細胞を含む、細胞型で使用可能である。CD34+細胞は、原始(CD133+CD90+、またはCD90-)、初期(CD34+、CD133+)及び委任(CD34+CD133-)CD34+サブセットならびにT細胞を含み得る。T細胞は、CD4+もしくはCD8+細胞、またはTILを含むことができる。本出願に含まれる方法及び組成物は、AAVを介して一次細胞に核酸を送達するためのin vivo使用にも関することができる。本明細書に記載の方法により、改変細胞で処置した動物の長期の多系列移植がもたらされる。
【0043】
概要
本明細書に開示される方法、ならびに組成物の調製及び使用の実施は、特に指示がない限り、当該技術分野の範囲内である分子生物学、生化学、クロマチン構造及び分析、計算化学、細胞培養、組換えDNAならびに関連分野における従来技術を用いる。これらの技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 and Third edition,2001、Ausubel
et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,New York,1987 and periodic updates、the series METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego、Wolffe,CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998、METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,“Chromatin”(P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds.),Academic Press,San Diego,1999、及びMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,“Chromatin Protocols”(P.B.Becker,ed.)Humana Press,Totowa,1999を参照のこと。
【0044】
定義
「核酸」「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は同じ意味で使用され、直鎖状もしくは環状配座の、一本鎖形態もしくは二本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のため、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的であると解釈してはならない。前記用語は、天然ヌクレオチドの周知の類似体、ならびに塩基、糖及び/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)に修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有する、すなわちAの類似体はTと塩基対合する。
【0045】
「ポリペプチド」「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は同じ意味で使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。前記用語は、1つ以上のアミノ酸が、対応する天然起源アミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0046】
「結合」とは、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸の間)の配列特異的な非共有結合性相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用のすべての構成成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要はない。このような相互作用は一般に、10-6M-1以下の解離定数(Kd)を特徴とする。「親和性」とは結合の強度を指し、結合親和性の増大はより低いKdと相関性がある。
【0047】
「結合タンパク質」は、別の分子と結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えばDNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)及び/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合できる。タンパク質結合タンパク質の場合、これは、それ自体と結合でき(ホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)及び/または異なるタンパク質(複数可)の1つ以上の分子に結合できる。結合タンパク質は、2つ以上の種類の結合活性を有し得る。例えばジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合及びタンパク質結合活性を有する。
【0048】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)はタンパク質である、またはより大きいタンパク質内のドメインであり、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的様式でDNAに結合する。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
【0049】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つ以上のTALE繰り返しドメイン/単位を含むポリペプチドである。これらの繰り返しドメインは、その同族標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「繰り返し単位」(「繰り返し」とも呼ぶ)は通常33~35アミノ酸長であり、天然起源のTALEタンパク質内の他のTALE繰り返し配列と少なくともいくつかの配列相同性を示す。
【0050】
ジンクフィンガー及びTALE結合ドメインは、例えば天然起源のジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の遺伝子操作(1つ以上のアミノ酸を変更する)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「遺伝子操作され」得る。したがって遺伝子操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然起源のタンパク質である。DNA結合タンパク質を遺伝子操作するための方法の非限定例は、デザイン及び選択である。デザインしたDNA結合タンパク質は、そのデザイン/組成が合理的基準から主に生じる、天然起源でないタンパク質である。デザインの合理的基準には、置換ルールの適用、ならびに既存のZFP及び/またはTALEのデザイン及び結合データの情報を記憶するデータベース中の情報を処理するためのコンピューターアルゴリズムが含まれる。例えば米国特許第8,586,526号、同第6,140,081号、同第6,453,242号及び同第6,534,261号を参照、更に国際特許第WO98/53058号、同第WO98/53059号、同第WO98/53060号、同第WO02/016536号及び同第WO03/016496号も参照のこと。
【0051】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その産生がファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験過程から主に生じる、天然には見出されないタンパク質である。例えば、米国特許第8,586,526号、同第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,200,759号、国際特許第WO95/19431号、同第WO96/06166号、同第WO98/53057号、同第WO98/54311号、同第WO00/27878号、同第WO01/60970号、同第WO01/88197号、同第WO02/099084号を参照のこと。
【0052】
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与していると考えられる原核アルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌サーマスサーモフィラスに由来する(例えばSwarts et al,ibid,G.Sheng et al.,(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.111,652を参照)。「TtAgo系」は、例えばTtAgo酵素による開裂におけるガイドDNAを含む、必要とされるすべての構成成分である。
【0053】
「組換え」とは、限定されないが、非相同末端結合(NHEJ)及び相同組換えによるドナー捕捉を含む、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換の過程を指す。本開示の目的において、「相同組換え(HR)」とは、例えば相同組換え修復機序を介した細胞の二本鎖切断の修復の間に行われる、このような交換の特殊形態を指す。この工程はヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経験したもの)のテンプレート修復のために「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の移動を引き起こすので、「非交差型遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として様々に周知である。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、このような移動は、切断された標的とドナーの間に形成するヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、及び/または標的の一部となる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存的鎖アニーリング」、及び/または関連する工程に関与し得る。このような特殊HRは多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部またはすべてが標的ポリヌクレオチド中に取り込まれるように、標的分子の配列の変更をもたらす。
【0054】
本開示の方法では、本明細書に記載される1つ以上の標的化されたヌクレアーゼは、所定の部位で標的配列(例えば、細胞クロマチン)に二本鎖切断を生じ、切断の領域中のヌクレオチド配列に対する相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが、細胞中に導入され得る。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組込みを容易にすることが示されている。ドナー配列は物理的に組み込まれることができ、またはドナーポリヌクレオチドは、相同組換えを介した切断の修復のテンプレートとして使用されて、細胞クロマチン中への、ドナーと同様のヌクレオチド配列のすべてまたは一部の導入を生じる。したがって細胞クロマチン中の第1配列は変更され得て、特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列へと変換され得る。したがって「置き換える」または「置換」という用語の使用は、1つのヌクレオチド配列の別のものによる置換(すなわち、情報的意味での配列の置換)を表すと理解され得て、1つのポリヌクレオチドの別のものによる物理または化学置換を必ずしも必要としない。
【0055】
本明細書に記載の方法のいずれかで、ジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質またはTALENの追加の対は、細胞内の更なる標的部位の更なる二本鎖開裂に使用され得る。
【0056】
本明細書に記載される方法のいずれかは、任意のサイズのドナーの挿入、及び/または目的の遺伝子(複数可)の発現を破壊するドナー配列の標的化された組込みによる細胞中の1つ以上の標的配列の部分的もしくは完全な不活性化に使用され得る。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株も提供される。
【0057】
更に本明細書に記載される標的化された組込みの方法は、1つ以上の外因性配列を組み込むためにも使用され得る。外因性核酸配列は、例えば1つ以上の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の型のコード配列もしくは非コード配列、及び1つ以上の制御エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。更に外因性核酸配列は、1つ以上のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害的RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)など)を生成し得る。
【0058】
細胞クロマチン中の目的の領域中の配列の標的化された組換え及び/または置換及び/または変更のための方法の特定の実施形態では、染色体の配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列との相同組換えによって変更される。このような相同組換えは、切断の領域と相同な配列が存在する場合、細胞クロマチン中の二本鎖切断の存在によって刺激される。
【0059】
本明細書に記載される方法のいずれかで、外因性ヌクレオチド配列(「ドナー配列」または「導入遺伝子」)は、目的の領域中のゲノム配列と相同ではあるが同一ではない配列を含み得て、それによって目的の領域に非同一配列を挿入するように相同組換えを刺激する。したがって特定の実施形態で、目的の領域中の配列と相同なドナー配列の一部は、置き換えられるゲノム配列に対して約80~99%の間(またはその間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の実施形態では、ドナー配列とゲノム配列の間の相同性は、例えば1つのヌクレオチドのみが100を超える連続する塩基対のドナー配列とゲノム配列の間で異なる場合、99%よりも高い。特定の場合、ドナー配列の非相同部分は、新たな配列が目的の領域中に導入されるように、目的の領域中に存在しない配列を含み得る。これらの例では、非相同配列には一般に、目的の領域中の配列と相同または同一な、50~1,000塩基対(またはそれらの間の任意の整数値)または1,000よりも大きい任意の数の塩基対の配列が隣接する。他の実施形態では、ドナー配列は第1配列に非相同であり、非相同組換え機序によってゲノム中に挿入される。
【0060】
「開裂」とは、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。開裂は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解が含まれるがこれらに限定されない種々の方法によって開始され得る。一本鎖開裂及び二本鎖開裂の両方が可能であり、二本鎖開裂は、2つの個別の一本鎖開裂事象の結果として生じ得る。DNA開裂は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生を生じ得る。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、標的化された二本鎖DNA開裂に使用される。
【0061】
「開裂ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なるのいずれか)と共に、開裂活性(好ましくは二本鎖開裂活性)を有する複合体を形成する、ポリペプチド配列である。「第1及び第2の開裂ハーフドメイン」「+及び-の開裂ハーフドメイン」及び「右及び左の開裂ハーフドメイン」という用語は同じ意味で用いられ、二量体化する開裂ハーフドメインの対を指す。
【0062】
「遺伝子操作された開裂ハーフドメイン」は、別の開裂ハーフドメイン(例えば、別の遺伝子操作された開裂ハーフドメイン)と絶対ヘテロ二量体を形成するように改変された開裂ハーフドメインである。例えば、米国特許公開第2005/0064474号、同第20070218528号、同第2008/0131962号、及び同第2011/0201055号も参照し、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
「配列」という用語は、DNAまたはRNAであり得て、直鎖状、環状または分枝状であり得て、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。「ドナー配列」という用語は、ゲノム中に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば2ヌクレオチド長と100,000,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間もしくはそれらを上回る任意の整数値)、好ましくは約100ヌクレオチド長と100,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは約100ヌクレオチド長と5,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間の任意の値)、更により好ましくは約100と2,000塩基対との間(またはそれらの間の任意の値)のものであり得る。
【0064】
「相同非同一配列」は、第2配列とある程度の配列同一性を共有するが、その配列が第2の配列と同一ではない第1配列を指す。例えば、突然変異遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、突然変異遺伝子の配列と相同かつ非同一である。特定の実施形態において、2つの配列の間の相同性の程度は、正常な細胞機序を利用して、その間の相同組換えを可能にするために十分なものである。2つの相同非同一配列は任意の長さであり得て、その非相同性の程度は、単一のヌクレオチドほどに小さくても(例えば、標的化相同組換えによるゲノム点突然変異の補正のため)、10キロベースまたはそれを超えるほどに大きくてもよい(例えば、染色体の所定の異所での遺伝子の挿入のため)。相同非同一配列を含む2つのポリヌクレオチドは、同じ長さである必要はない。例えば、20と10,000のヌクレオチドまたはヌクレオチド対の間の外因性ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)を使用することができる。
【0065】
核酸及びアミノ酸配列同一性を決定するための技術は、当技術分野において周知である。一般的にこのような技術は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列の決定及び/またはそれによってコードされるアミノ酸配列の決定、ならびに第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列とこのような配列の比較を含む。この様式でゲノム配列を決定及び比較することもできる。一般に、同一性は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列それぞれの、正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の一致を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、標準的な技術を使用してそれらの同一性%を決定することにより比較することができる。一般的に配列間の同一性%は、少なくとも70~75%、好ましくは80~82%、より好ましくは85~90%、更により好ましくは92%、なおより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性である。
【0066】
あるいは、ポリヌクレオチド間の配列類似性の程度は、相同領域間に安定的二重鎖の形成を可能にする条件下におけるポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションと、続く一本鎖特異的ヌクレアーゼ(複数可)による消化及び消化した断片のサイズ決定により決定することができる。当該技術分野において周知の方法を使用して決定されるとおり、配列が、定義される長さの分子にわたり少なくとも約70%~75%、好ましくは80%~82%、より好ましくは85%~90%、更により好ましくは92%、なおより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性を提示する場合、2つの核酸または2つのポリペプチド配列は互いに実質的に相同である。ハイブリダイゼーションの条件は、当業者に周知のものである。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーとは、ハイブリダイゼーション条件が、ミスマッチしたヌクレオチドを含有するハイブリッドの形成を嫌う程度を指し、より高いストリンジェンシーは、ミスマッチしたハイブリッドに対するより低い忍容性と相関する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える因子は、当業者に周知のものであり、温度、pH、イオン強度、ならびに例えばホルムアミド及びジメチルスルホキシドなどの有機溶媒の濃度が挙げられるがこれらに限定されない。当業者に周知のとおり、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、より高い温度、より低いイオン強度及びより低い溶媒濃度により増加する。
【0067】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストン及び非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大部分はヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3及びH4のそれぞれ2つを含む、八量体を伴うおよそ150塩基対のDNAを含み、リンカーDNA(生物に依存して変動する長さのもの)はヌクレオソームコア間に延在する。ヒストンH1の分子が一般的に、リンカーDNAと会合する。本開示の目的において「クロマチン」という用語は、原核生物及び真核生物の両方のすべての種類の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンには、染色体クロマチン及びエピソームクロマチンの両方が含まれる。
【0068】
「染色体」は、細胞のゲノムのすべてまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは多くの場合、細胞のゲノムを含むすべての染色体のコレクションである、その核型によって特徴づけられる。細胞のゲノムは、1つ以上の染色体を含み得る。
【0069】
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製する核酸、核タンパク質複合体または他の構造である。エピソームの例には、プラスミド及びある特定のウイルスゲノムが含まれる。
【0070】
「到達可能領域」は、核酸に存在する標的部位が、前記標的部位を認識する外因性分子に結合され得る、細胞クロマチンにおける部位である。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、到達可能領域は、ヌクレオソーム構造へパッケージ化されない領域であると考えられている。到達可能領域の独特な構造は、多くの場合、化学的及び酵素的プローブ、例えばヌクレアーゼに対するその感受性により検出することができる。
【0071】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在する場合に、結合分子が結合する核酸の一部分を定義する核酸配列である。
【0072】
「外因性」分子は細胞中に通常は存在しない分子であるが、1つ以上の遺伝学的、生化学的または他の方法によって細胞中に導入され得る。「細胞中での通常の存在」とは、細胞の特定の発生段階または環境条件に関して決定される。したがって例えば筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、成人筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に関して外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全内因性分子の機能型、または正常機能する内因性分子の機能不全型を含み得る。
【0073】
外因性分子はとりわけ、例えばコンビナトリアルケミストリー処理によって生成されるような小分子、または巨大分子、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上述分子の任意の修飾された誘導体、あるいは上述分子のうちの1つ以上を含む任意の複合体であり得る。核酸にはDNA及びRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であり得て、直鎖状、分枝状または環状であり得て、任意の長さのものであり得る。核酸には、二重鎖を形成することが可能な核酸、ならびに三重鎖を形成する核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号及び同第5,422,251号を参照のこと。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース及びヘリカーゼが含まれるがこれらに限定されない。
【0074】
外因性分子は、内因性分子と同じ型の分子、例えば外因性タンパク質または核酸であり得る。例えば外因性核酸は、細胞中に導入された感染性ウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞中に通常は存在しない染色体を含み得る。細胞中への外因性分子の導入のための方法は当業者に周知であり、それは、脂質媒介性移入(すなわち、中性及びカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、生体高分子ナノ粒子送達(Nitta and Numata(2013)Int J Mol Sci 14:1629参照)、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性移入及びウイルスベクター媒介性移入を含むが、これらに限定されない。外因性分子は内因性分子と同じ型の分子でもあり得るが、細胞から由来するのとは異なる種に由来し得る。例えばヒト核酸配列は、マウスまたはハムスターに元々由来する細胞株中に導入され得る。
【0075】
それに反して「内因性」分子は、特定の発生段階で特定の環境条件下で特定の細胞中に通常存在する分子である。例えば内因性核酸は、染色体、ミトコンドリアもしくは他のオルガネラのゲノム、または天然起源のエピソーム核酸を含み得る。更なる内因性分子には、タンパク質、例えば転写因子及び酵素が含まれ得る。
【0076】
本明細書で使用する場合「外因性核酸の産物」という用語には、ポリヌクレオチド産物及びポリペプチド産物の両方、例えば転写産物(RNAなどのポリヌクレオチド)及び翻訳産物(ポリペプチド)が含まれる。
【0077】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に結合された分子である。サブユニット分子は、同じ化学型の分子であり得る、または異なる化学型の分子であり得る。第1型の融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALEのDNA結合ドメインと1つ以上の活性化ドメインとの間の融合物)及び融合核酸(例えば、上述の融合タンパク質をコードする核酸)が含まれるが、これらに限定されない。第2型の融合分子の例には、三重鎖形成性核酸とポリペプチドの間の融合物、及び小溝結合剤と核酸の間の融合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
細胞での融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達によって生じ得て、前記ポリヌクレオチドは転写され、転写物は翻訳されて、融合タンパク質を生成する。トランス・スプライシング、ポリペプチド開裂及びポリペプチドライゲーションも、細胞でのタンパク質の発現に関与し得る。細胞へのポリヌクレオチド及びポリペプチドの送達の方法は、本開示の他の場所で示される。
【0079】
「遺伝子」には、本開示の目的のために、遺伝子産物をコードするDNA領域(以下を参照)、ならびにそのような調節配列がコード配列及び/または転写された配列に隣接してもしなくても、遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域が含まれる。したがって遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列(例えばリボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位)、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製開始点、マトリックス結合部位、及び遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0080】
「遺伝子発現」とは、遺伝子中に含まれる情報の、遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他の型のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されたタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化及び編集などの過程によって修飾されたRNA、ならびに例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリストイル化及びグリコシル化によって修飾されたタンパク質も含まれる。
【0081】
遺伝子発現の「調節」とは、遺伝子の活性での変化を指す。発現の調節には、遺伝子活性化及び遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。ゲノム編集(例えば、開裂、変更、不活性化、ランダム突然変異)は、発現を調節するために使用され得る。遺伝子不活性化とは、本明細書に記載されるZFP、TALEまたはCRISPR/Cas系を含まない細胞と比較して、遺伝子発現の任意の低下を指す。したがって遺伝子不活性化は、部分的または完全であり得る。
【0082】
「目的の領域」は、外因性分子に結合することが望ましい、細胞クロマチンの任意の領域、例えば遺伝子、または遺伝子内もしくは遺伝子に隣接した非コード配列などである。結合は、標的化されたDNA開裂及び/または標的化された組換えを目的とすることができる。目的の領域は、例えば染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えばミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノム中に存在し得る。目的の領域は、遺伝子のコード領域内、転写された非コード領域内(例えばリーダー配列、トレーラー配列またはイントロン)、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内に存在し得る。目的の領域は、単一のヌクレオチド対ほどの小ささもしくは最大2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
【0083】
「真核」細胞として、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞及びヒト細胞(例えば、T細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
「分泌組織」は、通常上皮に由来するいくつかの種類の管腔内に、個別細胞からの産物を分泌する動物の組織である。胃腸管に局在化する分泌組織の例は、腸、膵臓及び胆嚢を覆う細胞を含む。他の分泌組織は、肝臓、目と関連する組織及び粘膜(例えば唾液腺、乳腺、前立腺、下垂体及び内分泌系の他の器官)を含む。そのうえ分泌組織は、分泌することができる組織型の個別細胞を含む。
【0085】
「機能的連結」及び「機能的連結した」(または「機能的に連結した」)という用語は、2つ以上の成分(例えば配列エレメント)の並置に関連して同じ意味で使用され、前記成分は、両方の成分が正常に機能し、他の成分のうちの少なくとも1つに対して発揮される機能をこれらの成分のうちの少なくとも1つが媒介し得る可能性を許容するように、配置される。例として転写調節配列(例えばプロモーター)は、転写調節配列が、1つ以上の転写調節因子の存在または非存在に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に機能的に連結される。転写調節配列は一般に、コード配列とシスで機能的に連結されるが、このコード配列に直接隣接する必要はない。例えばエンハンサーは、エンハンサーとコード配列とが連続していない場合でも、コード配列に機能的に連結した転写調節配列である。
【0086】
融合ポリペプチドに関して、「機能的に連結した」という用語は、各成分が他の成分と連結して、そのように連結されていない場合にそれが果たすのと同じ機能を果たすという事実を指し得る。例えばZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合された融合ポリペプチドに関して、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメイン及び活性化ドメインは、融合ポリペプチド中で、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメイン部分がその標的部位及び/またはその結合部位に結合できるが、活性化ドメインは遺伝子発現を上方調節できる場合に、機能的連結状態にある。ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメインが開裂ドメインに融合した融合ポリペプチドの場合、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメイン及び開裂ドメインは、融合ポリペプチド中で、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメイン部分がその標的部位及び/またはその結合部位に結合できるが、開裂ドメインは標的部位の近位(例えば、1~500の塩基対、または標的部位の両側の間の任意の値)でDNAを開裂できる場合に、機能的連結状態にある。
【0087】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然の分子よりも多い、より少ない、もしくは同じ数の残基を有し得て、及び/または1つ以上のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含み得る。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を測定するための方法は、当該技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を測定するための方法は周知である。例えばポリペプチドのDNA結合機能は、例えばフィルター結合、電気泳動移動度シフトまたは免疫沈降アッセイによって測定され得る。DNA開裂は、ゲル電気泳動によってアッセイされ得る。上述のAusubelらを参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは遺伝学的及び生化学的の両方の相補性によって決定され得る。例えば、Fields et al.(1989)Nature 340:245-246、米国特許第5,585,245号及びPCT出願第WO98/44350号を参照のこと。
【0088】
「ベクター」は、標的細胞に遺伝子配列を導入させることが可能である。一般的に「ベクター構築物」「発現ベクター」及び「遺伝子導入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指向することが可能であり、標的細胞に遺伝子配列を導入させることができる、任意の核酸構築物を意味する。したがってこの用語は、クローニング及び発現ビヒクル、ならびに組込みベクターを含む。
【0089】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」とは、好ましくはルーチンアッセイで必須ではないが、容易に測定されるタンパク質産物を産生する任意の配列を指す。好適なレポーター遺伝子には、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光もしくは発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)ならびに増強された細胞成長及び/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列が含まれるが、これらに限定されない。エピトープタグには、例えばFLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つ以上のコピーが含まれる。「発現タグ」には、目的の遺伝子の発現をモニターするために、所望の遺伝子配列に機能的に連結され得るレポーターをコードする配列が含まれる。
【0090】
「セーフハーバー」遺伝子座は、遺伝子が宿主細胞に対する任意の悪影響なしに挿入され得る、ゲノム内の遺伝子座である。挿入された遺伝子配列の発現が隣接する遺伝子からのいずれのリードスルー発現によっても乱されないセーフハーバー遺伝子座が、最も有益である。哺乳動物細胞のセーフハーバー遺伝子座の非限定例は、AAVS1遺伝子(米国特許第8,110,379号)、CCR5遺伝子(米国特許公開第20080159996号)、Rosa遺伝子座(国際特許第WO2010/065123号)及び/またはアルブミン遺伝子座(米国特許公開第20130177960号及び同第20130177983号)である。植物細胞のセーフハーバーは、ZP15遺伝子座である(米国特許公開第20100199389号)。
【0091】
「対象」及び「患者」という用語は同じ意味で用いられ、哺乳動物、例えばヒト患者及び非ヒト霊長類、ならびに実験動物、例えばウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス及び他の動物を指す。したがって「対象」または「患者」という用語は本明細書で使用する場合、本発明の幹細胞が投与され得る任意の哺乳動物の患者または対象を意味する。本発明の対象は、例えば神経毒素を含む、1つ以上の化学的毒素に曝露されたものを含む。
【0092】
「幹細胞性」とは、幹細胞様の様式で作用する任意の細胞の相対能力、すなわち全能性、多能性または少能性の程度、及び任意の特定の幹細胞が有し得る拡張したまたは不確定の自己複製に関連する。
【0093】
ヌクレアーゼ
導入遺伝子が標的化された様式でゲノム中に組み込まれるように、導入遺伝子と細胞のゲノムの開裂のためのヌクレアーゼを運ぶドナー分子のin vivo開裂に有用な組成物、特にヌクレアーゼ(例えばZFN、TALE、ホーミングエンドヌクレアーゼ、Ttago及び/またはCRISPR/Cas系)が本明細書に記載される。特定の実施形態では、ヌクレアーゼのうちの1つ以上は天然起源である。他の実施形態では、ヌクレアーゼのうちの1つ以上は非天然起源であり、すなわち、DNA結合ドメイン及び/または開裂ドメインに遺伝子操作されている。例えば天然起源のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更され得る(例えば、同系結合部位とは異なる部位に結合するように遺伝子操作されたメガヌクレアーゼ)。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種のDNA結合ドメイン及び開裂ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;TALエフェクタードメインDNA結合タンパク質;異種開裂ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含む。他の実施形態において、ヌクレアーゼは、CRISPR/CasまたはTtago系などの系を含む。
【0094】
A.DNA結合ドメイン
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、ドナー分子に結合するため及び/または細胞のゲノム中の目的の領域に結合するために、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)DNA結合ドメインを使用する。天然起源のメガヌクレアーゼは、15~40の塩基対の開裂部位を認識し、4つのファミリー、LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cystボックスファミリー及びHNHファミリーへ一般に分類される。代表的なホーミングエンドヌクレアーゼは、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I
-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII及びI-TevIIIを含む。それらの認識配列は周知である。米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.(1989)Gene 82:115-118、Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228、Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345-353及びthe New England Biolabs catalogueも参照のこと。
【0095】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法及び組成物は、遺伝子操作された(非天然起源の)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含むヌクレアーゼを使用する。ホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼの認識配列(例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-Cs
mI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII及びI-TevIII)は周知である。米国特許第5,420,032号、米国特許第6,833,252号、Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388、Dujon et al.(1989)Gene 82:115-118、Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125-1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228、Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163-180、Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345-353及びthe New England Biolabs catalogueも参照のこと。更にホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように遺伝子操作され得る。例えば、Chevalier et al.(2002)Molec. Cell 10:895-905、Epinat et
al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952-2962、Ashworth et al.(2006)Nature 441:656-659、Paques et al.(2007)Current Gene Therapy
7:49-66、米国特許公開第20070117128号を参照のこと。ホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、全体としてヌクレアーゼに関して変更され得て(すなわち、ヌクレアーゼが同系開裂ドメインを含むように)、または異種開裂ドメインに融合され得る。
【0096】
他の実施形態では、本明細書に記載される方法及び組成物で使用する1つ以上のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、天然起源のまたは遺伝子操作された(非天然起源の)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば米国特許第8,586,526号を参照し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。キサントモナス属の植物病原菌は、重要農植物に多くの疾患を引き起こすことが周知である。キサントモナスの病原性は、25つ超の異なるエフェクタータンパク質を植物細胞に注入する、保存III型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されたタンパク質のなかで、植物転写活性化因子を模倣し、植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様(TAL)エフェクターである(Kay et al(2007)Science 318:648~651を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインを含有する。最もよく特性決定したTALエフェクターの1つは、キサントモナスカンペストリス病原型ベスカトリア由来のAvrBs3である(Bonas et al(1989)Mol Gen Genet 218:127~136及び国際特許第WO2010079430号を参照のこと)。TALエフェクターは縦列繰り返しの集中ドメインを含有し、各繰り返しは、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要である、およそ34アミノ酸を含有する。更にこれらは、核局在化配列及び酸性転写活性化ドメインを含有する(概説については、Schornack S,et al(2006)J Plant Physiol 163(3):256~272を参照のこと)。更に植物病原細菌Ralstonia solanacearumでは、R.solanacearum
biovar1株GMI1000及びbiovar4株RS1000のbrg11及びhpx17と称される2つの遺伝子が、キサントモナスのAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されている(Heuer et al(2007)Appl and Envir Micro 73(13):4379~4384を参照のこと)。これらの遺伝子は、互いにヌクレオチド配列で98.9%同一であるが、hpx17の繰り返しドメインで1,575bpの欠失が異なる。しかし両方の遺伝子産物は、キサントモナスのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば米国特許公開第8,586,526号を参照し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0097】
これらのTALエフェクターの特異性は、これらの縦列繰り返し中に見出される配列に依存する。繰り返される配列はおよそ102bpを含み、繰り返しは通常互いに91~100%相同である(Bonas et al、同書)。前記繰り返しの多型は12位及び13位に通常位置し、12位及び13位での超可変二残基の同一性と、TALエフェクターの標的配列中の連続ヌクレオチドの同一性の間には、一対一の相関が存在するようにみえる(Moscou and Bogdanove,(2009)Science 326:1501及びBoch et al(2009)Science 326:1509~1512を参照のこと)。12位及び13位におけるHD配列がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、ならびにINGがTに結合するように、実験的にこれらのTALエフェクターのDNA認識のための天然コードは決定されている。これらのDNA結合の繰り返しは、新たな配列と相互作用でき、植物細胞での非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化できる人工の転写因子を作製するために、新たな組み合わせ及び繰り返し数を有するタンパク質内へ組み込まれる(Boch et al、同書)。遺伝子操作されたTALタンパク質は、FokI開裂ハーフドメインに連結されて、酵母レポーターアッセイで活性を示すTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を生じる(プラスミドベース標的)。例えば、米国特許第8,586,526号、Christian et al((2010年)<Genetics epub 10.1534/genetics.110.120717)を参照のこと。
【0098】
特定の実施形態では、細胞のゲノムのin vivo開裂及び/または標的化された開裂に使用されるヌクレアーゼのうちの1つ以上のDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、最適な標的部位に結合するように遺伝子操作されているという点で、非天然起源である。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141、Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656-660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416、米国特許第6,453,242号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,030,215号、同第6,794,136号、同第7,067,317号、同第7,262,054号、同第7,070,934号、同第7,361,635号、同第7,253,273号、及び米国特許公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2005/0267061号を参照し、すべては参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0099】
遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然起源のジンクフィンガータンパク質と比較して、新規結合特異性を有し得る。遺伝子操作方法には、合理的デザイン及び種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的デザインには、例えばトリプレット(またはクアドルプレット)ヌクレオチド配列及び個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と関連する。例えば共有の米国特許第6,453,242号及び同第6,534,261号を参照し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
ファージディスプレイ及びツーハイブリッドシステムを含む、例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号及び同第6,242,568号、ならびに国際特許第WO98/37186号、同第WO98/53057号、同第WO00/27878号及び第WO01/88197号に開示されている。更にジンクフィンガー結合ドメインにおける結合特異性の増強は、例えば共有の国際特許第WO02/077227号に記載されている。
【0101】
更にこれら及び他の文献に開示されるように、ジンクフィンガードメイン及び/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば5以上のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。代表的なリンカー配列については、米国特許第8,772,453号、同第6,479,626号、同第6,903,185号及び同第7,153,949号も参照のこと。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。
【0102】
標的部位の選択、融合タンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)のデザイン及び構築のためのZFPならびに方法は当業者に周知であり、米国特許第6,140,815号、同第5,789,538号、同第6,453,242号、同第6,534,261号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,200,759号、国際特許第WO95/19431号、同第WO96/06166号、同第WO98/53057号、同第WO98/54311号、同第WO00/27878号、同第WO01/60970号、同第WO01/88197号、同第WO02/099084号、同第WO98/53058号、同第WO98/53059号、同第WO98/53060号、同第WO02/016536号、及び同第WO03/016496号に詳細に記載されている。
【0103】
更にこれら及び他の文献に開示されるように、ジンクフィンガードメイン及び/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば5以上のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。6以上のアミノ酸長の代表的なリンカー配列について、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、及び同第7,153,949号も参照のこと。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。
【0104】
特定の実施形態で、DNA結合領域はCRISPR/Casヌクレアーゼ系の一部である。例えば、米国特許第8,697,359号及び米国特許出願第14/278,903号を参照のこと。前記系のRNA成分をコードするCRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)遺伝子座、及びタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansen et al.,2002.Mol.Microbiol.43:1565-1575、Makarova et al.,2002.Nucleic Acids Res.30:482-496、Makarova et al.,2006.Biol.Direct 1:7、Haft et al.,2005.PLoSComput.Biol.1:e60)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主中のCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子及びCRISPR媒介性の核酸開裂の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントの組み合わせを含有する。
【0105】
II型CRISPRは、最もよく特徴決定された系の1つであり、4つの連続した工程で標的化されたDNA二本鎖切断を実施する。第1に、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイ及びtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAは、プレcrRNAの繰り返し領域にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプレcrRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA、tracrRNA複合体は、標的認識に更に必要とされている、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーの間のワトソン・クリック型塩基対合を介して、標的DNAにCas9を指向させる。最後に、Cas9は、標的DNAの開裂を媒介して、プロトスペーサー内の二本鎖切断を生成する。CRISPR/Cas系の活性は、3つの工程(i)「適応」と呼ばれる過程における、更なる攻撃を防止するためのCRISPRアレイ中への異質DNA配列の挿入、(ii)関連タンパク質の発現、ならびにアレイの発現及びプロセシング、その後の(iii)異質核酸によるRNA媒介性の干渉、からなる。したがって細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかがCRISPR/Cas系の天然機能と関連して、異質DNAなどの挿入などの機能において役割を果たす。
【0106】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cpf1系を使用する。Francisella属で同定したCRISPR-Cpfl系は、ヒト細胞での強力なDNA干渉を媒介するクラス2CRISPR-Cas系である。機能的に保存されるが、Cpf1及びCas9は、ガイドRNA及び基質特異性に含有される多くの態様で異なる(Fagerlund et al,(2015)Genom Bio 16:251を参照のこと)。Cas9とCpf1タンパク質の間の重大な差は、Cpf1がtracrRNAを利用せず、したがってcrRNAだけを必要とするということである。FnCpf1 crRNAsは42~44ヌクレオチド長(19ヌクレオチド繰り返し及び23~25ヌクレオチドスペーサー)であり、単一のステムループを含有して、それは二次構造を保持する配列変化を許容する。更にCpf1 crRNAは、Cas9に必要とされる約100ヌクレオチドを操作されたsgRNAより著しく短く、及びFnCpf1のPAM要件は置換した鎖の5’-TTN-3’及び5’-CTA-3’である。Cas9及びCpf1の両方が標的DNAの二本鎖切断を生じさせるが、Cas9はそのRuvC及びHNH様ドメインを使用して、ガイドRNAのシード配列内にブラント末端切断を生じさせ、一方Cpf1はRuvC様ドメインを使用して、シードの外側に互い違いの切断を作成する。Cpf1が大切なシード領域から離れる方向に互い違いの切断を作成するので、NHEJは標的部位を破壊せず、したがって所望のHDR再結合事象が起きるまで、Cpf1が同じ部位を切断し続け得ることを確実にする。したがって本明細書に記載される方法及び組成物では、「Cas」という用語はCas9及びCfp1タンパク質の両方を含むものと理解される。したがって本明細書で使用する場合「CRISPR/Cas系」は、ヌクレアーゼ及び/または転写因子系の両方を含む、CRISPR/Cas及び/またはCRISPR/Cfp1系の両方を指す。
【0107】
特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然起源のCasタンパク質の「機能的誘導体」であり得る。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通する定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、対応する天然配列ポリペプチドと共通した生物学的活性を有することを条件として、天然配列の断片ならびに天然配列ポリペプチド及びその断片の誘導体が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で企図される生物活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。「誘導体」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列変異、共有結合的修飾、及びその融合物の両方を包含する。Casポリペプチドまたはその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質またはその断片の突然変異、融合物、共有結合的修飾が含まれるが、これらに限定されない。Casタンパク質またはその断片を含むCasタンパク質、及びCasタンパク質またはその断片の誘導体は、細胞から得ることができる、もしくは化学的に合成され得る、またはこれらの2つの手順の組み合わせによって得ることができる。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、またはCasタンパク質を天然に産生し、より高い発現レベルで内因性Casタンパク質を産生するように、もしくは外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であり得て、核酸は内因性Casと同じまたは異なるCasをコードする。一部の場合、細胞はCasタンパク質を天然には産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
【0108】
いくつかの実施形態で、DNA結合ドメインはTtAgo系の一部である(Swarts et al,同書、Sheng et al,同書を参照のこと)。真核生物では、遺伝子サイレンシングは、タンパク質のアルゴノート(Ago)ファミリーによって媒介される。このパラダイムでは、Agoは小さな(19~31nt)RNAに結合する。このタンパク質-RNAサイレンシング複合体は、低分子RNAと標的の間のワトソン・クリック型塩基対合を介して、標的RNAを認識し、標的RNAをエンドヌクレアーゼ的に開裂する(Vogel(2014)Science 344:972~973)。それに対し、原核生物Agoタンパク質は小さな一本鎖DNA断片に結合し、外来(多くの場合ウイルス)DNAを検出かつ除去するように機能する可能性が高い(Yuan et al.,(2005)Mol.Cell 19,405、Olovnikov et al.(2013)Mol.Cell 51,594、Swarts et al.,同書)。例示的な原核生物Agoタンパク質としては、Aquifex aeolicus、Rhodobacter sphaeroides及びThermus thermophilus由来のものが挙げられる。
【0109】
最もよく特性決定した原核生物Agoタンパク質のうちの1つは、T.thermophilus由来のもの(TtAgo、Swarts et al、同書)である。TtAgoは、5’リン酸基を伴う15ntまたは13~25ntの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoが結合するこの「ガイドDNA」は、第3のDNA分子内のワトソン・クリック型相補DNA配列に結合するために、タンパク質-DNA複合体を導くように機能する。これらのガイドDNAの配列情報により標的DNAの同定が可能になったら、TtAgo-ガイドDNA複合体が標的DNAを開裂する。そのような機構は、その標的DNAと結合する一方でTtAgo-ガイドDNA複合体の構造によっても支持される(G.Sheng et al.,同書)。Rhodobacter sphaeroides(RsAgo)由来のAgoは同様の性質を有する(Olivnikov et al、同書)。
【0110】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAをTtAgoタンパク質に負荷することができる(Swarts et al、同書)。TtAgo開裂の特異性はガイドDNAによって導かれるので、したがって外因性の研究者指定のガイドDNAと形成されるTtAgo-DNA複合体により、相補的な研究者指定の標的DNAへのTtAgo標的DNA開裂が導かれる。このように、DNAに標的化された二本鎖切断を生じさせることができる。TtAgo-ガイドDNA系(または他の生物由来のオルソロガスなAgo-ガイドDNA系)の使用により、細胞内のゲノムDNAの標的化された開裂が可能になる。そのような開裂は、一本鎖または二本鎖でもあり得る。哺乳動物ゲノムDNAの開裂において、哺乳動物細胞での発現についてコドン最適化されたTtAgoのバージョンを使用することが好ましい。更にTtAgoタンパク質を細胞透過性ペプチドと融合する場合、細胞を、in vitro形成されたTtAgo-DNA複合体で処理することが好ましい場合がある。更に37℃での活性が改善されるように突然変異誘発によって変更されたTtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago-RNA媒介性DNA開裂を使用して、DNA切断を活用するための当該技術分野の標準技術を使用した遺伝子ノックアウト、標的化された遺伝子付加、遺伝子補正、標的化された遺伝子欠失を含む、転帰のひと揃いを得ることができる。
【0111】
したがってヌクレアーゼは、ドナー(導入遺伝子)を挿入することが望まれる任意の遺伝子中の標的部位に特異的に結合するという点で、DNA結合ドメインを含む。本明細書に記載のDNA結合ドメインは一般的に、12~35ヌクレオチド(またはその間の任意の値)を含む標的部位に結合する。DNA結合ドメインに結合される標的部位内のヌクレオチドは、隣接または非隣接であり得る(例えばDNA結合ドメインは、標的部位を形成するすべての塩基対未満と結合することができる)。
【0112】
B.開裂ドメイン
任意の好適な開裂ドメインは、DNA結合ドメインに機能的に連結されて、ヌクレアーゼを形成し得る。例えばZFP DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼドメインに融合されて、ZFN(その遺伝子操作された(ZFP)DNA結合ドメインを介してその意図した核酸標的を認識でき、ヌクレアーゼ活性を介してZFP結合部位の近くでDNAが切断されるようにする、機能的物質)を生成する。例えば、Kim et al(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93(3):1156-1160を参照のこと。更に最近になるとZFNは、種々の生命体のゲノム改変に使用されている。例えば、米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号、及び国際特許公開第WO07/014275号を参照のこと。同様にTALE DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼドメインに融合されて、TALENを生じている。例えば、米国特許第8,586,526号を参照のこと。
【0113】
上述のように、開裂ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種(例えばジンクフィンガーDNA結合ドメイン及びヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメイン及び開裂ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン及び異なるヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン)であり得る。異種開裂ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。開裂ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼ及びホーミングエンドヌクレアーゼが含まれるが、これらに限定されない。例えば、2002-2003 Catalogue,New England Biolabs,Beverly,MA、及びBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379-3388を参照のこと。DNAを開裂する更なる酵素は周知である(例えば、S1ヌクレアーゼ、リョクトウヌクレアーゼ、膵臓DNase I、小球菌ヌクレアーゼ、酵母HOエンドヌクレアーゼ。Linn et al.(eds.)Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照のこと)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうちの1つ以上は、開裂ドメイン及び開裂ハーフドメインの供給源として使用され得る。
【0114】
同様に開裂ハーフドメインは、開裂活性のために二量化を必要とする、上述の任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が開裂ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が開裂に必要とされる。あるいは、2つの開裂ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。2つの開裂ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る、または各開裂ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。更に2つの融合タンパク質における標的部位は、好ましくは互いに関して配置され、その結果、そのそれぞれの標的部位への2つの融合タンパク質の結合は、例えば二量体化によって開裂ハーフドメインに機能的開裂ドメインを形成させる互いに対する空間的配向に、開裂ハーフドメインを置く。したがって特定の実施形態では、標的部位の近くの端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド離れている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対は、2つの標的部位間に介在し得る(例えば、2~50ヌクレオチド対以上)。一般に、開裂の部位は、標的部位間に存在する。
【0115】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在しており、(認識部位で)DNAへの配列特異的結合が可能であり、結合の部位またはその近傍でDNAを開裂させることが可能である。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から取り出された部位でDNAを開裂させ、分離可能な結合ドメイン及び開裂ドメインを有する。例えばIIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド及び他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドの場所で、DNAの二本鎖開裂を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号、同第5,436,150号及び同第5,487,994号、ならびにLi et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4275-4279、Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2764-2768、Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:883-887、Kim et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31,978-31,982を参照のこと。したがって一実施形態では、融合タンパク質は、遺伝子操作されてもされなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素及び1つ以上のジンクフィンガー結合ドメイン由来の開裂ドメイン(または開裂ハーフドメイン)を含む。
【0116】
その開裂ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaite et
al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:10,570-10,575。したがって本開示の目的のため、開示された融合タンパク質で使用されるFokI酵素の一部は、開裂ハーフドメインとみなされる。したがってジンクフィンガー-FokI融合物を使用した細胞配列の標的化された二本鎖開裂及び/または標的化された置換において、各々がFokI開裂ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質が、触媒として活性な開裂ドメインを再構成するために使用され得る。あるいは、1つのジンクフィンガー結合ドメイン及び2つのFokI開裂ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子も使用され得る。ジンクフィンガー-FokI融合物を使用した標的化された開裂及び標的された配列変更のためのパラメーターは、本開示の別の場所に提供される。
【0117】
開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインは、機能的開裂ドメインを形成するために、開裂活性を保持するまたは多量体形成する(例えば、二量体化する)能力を保持する、タンパク質の任意の部分であり得る。
【0118】
例示的なIIS型制限酵素は、米国特許第7,888,121号に記載されており、その全体が本明細書に組み込まれる。更なる制限酵素も、分離可能な結合及び開裂ドメインを含み、これらは本開示によって企図される。例えば、Roberts et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:418-420を参照のこと。
【0119】
特定の実施形態では、開裂ドメインは、例えば米国特許第8,772,453号、同第8,623,618号、同第8,409,861号、同第8,034,598号、同第7,914,796号及び同第7,888,121号に記載される(そのすべての開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)ように、ホモ二量体を最小化または防止する1つ以上の遺伝子操作された開裂ハーフドメイン(二量体化ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位及び538位のアミノ酸残基は、すべて、FokI開裂ハーフドメインの二量体化に影響を与えるための標的である。
【0120】
絶対ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な遺伝子操作された開裂ハーフドメインには、第1の開裂ハーフドメインがFokIの490位及び538位のアミノ酸残基での変異を含み、第2の開裂ハーフドメインがアミノ酸残基486及び499での変異を含む、対が含まれる。
【0121】
したがって一実施形態では、490位での変異によりGlu(E)がLys(K)に置き換えられ、538位での変異によりIso(I)がLys(K)に置き換えられ、486位での変異によりGln(Q)がGlu(E)に置き換えられ、499位での変異によりIso(I)がLys(K)に置き換えられる。特に本明細書に記載の遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、一方の開裂ハーフドメインで490位(E→K)及び538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と称される遺伝子操作された開裂ハーフドメインを産生し、ならびに別の開裂ハーフドメインで486位(Q→E)及び499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と称される遺伝子操作された開裂ハーフドメインを産生することにより調製された。本明細書に記載の遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、異常な開裂が最小化または消失される、絶対ヘテロ二量体突然変異体である。例えば、米国特許第7,914,796号及び同第8,034,598号を参照し、その開示が、参照によりすべての目的でその全体を組み込む。特定の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、486位、499位及び496位での突然変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で置き換える突然変異、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で置き換える突然変異、及び496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える突然変異(それぞれ、「ELD」ドメイン及び「ELE」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、490位、538位及び537位での突然変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える突然変異、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で置き換える突然変異、及び537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える突然変異(それぞれ、「KKK」ドメイン及び「KKR」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、490位及び537位での突然変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える突然変異、及び537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える突然変異(それぞれ、「KIK」ドメイン及び「KIR」ドメインとも呼ばれる)を含む。例えば、米国特許第8,772,453号を参照のこと。他の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、「シャーキー」及び/または「シャーキー」突然変異を含む(Guo et al,(2010)J.Mol.Biol.400(1):96-107を参照のこと)。
【0122】
本明細書に記載の遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、例えば米国特許第8,772,453号、同第8,623,618号、同第8,409,861号、同第8,034,598号、同第7,914,796号、及び同第7,888,121号に記載されるように、野生型開裂ハーフドメイン(FokI)の部位指定突然変異誘発によって、任意の適切な方法を使用して調製できる。
【0123】
あるいはヌクレアーゼは、いわゆる「開裂酵素」技術を使用して、核酸標的部位においてin vivoアセンブルされ得る(例えば、米国特許公開第20090068164号を参照のこと)。そのような開裂酵素の成分は、別々の発現構築物のいずれか上に発現され得る、または例えば自己開裂性2AペプチドもしくはIRES配列によって個々の成分が分離される、1つのオープンリーディングフレームで連結され得る。成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0124】
ヌクレアーゼは、例えば米国特許第8,563,314号に記載の酵母ベースの染色体系での使用前に、活性についてスクリーニングされ得る。
【0125】
ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えばラフィノース及び/またはガラクトースの存在下で活性化(抑制解除)され、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にあり得る。
【0126】
Cas9関連のCRISPR/Cas系は、同一のダイレクトリピート(DR)によって空間が置かれたヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有する2つのRNA非コード成分、tracrRNA及びpre-crRNAアレイを含む。ゲノム遺伝子操作を達成するためにCRISPR/Cas系を使用するために、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Cong et al,(2013)Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照のこと)。いくつかの実施形態では、tracrRNA及びプレcrRNAは、別々の発現構築物を介して、または別々のRNAとして供給される。他の実施形態では、遺伝子操作された成熟crRNA(標的特異性を付与する)がtracrRNA(Cas9との相互作用を供給する)に融合されてキメラcr-RNA-tracrRNAハイブリッド(単一ガイドRNAとも呼ぶ)を生じる、キメラRNAが構築される(Jinek同書及びCong、同書を参照)。
【0127】
標的部位
上で詳細に記載したように、DNAドメインは、選択された任意の配列に結合するように遺伝子操作され得る。遺伝子操作されたDNA結合ドメインは、天然起源のDNA結合ドメインと比較して、新規の結合特異性を有し得る。遺伝子操作方法には、合理的デザイン及び種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的デザインには、例えばトリプレット(またはクアドルプレット)ヌクレオチド配列及び個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と関連する。例えば共有の米国特許第6,453,242号及び同第6,534,261号を参照し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。TALエフェクタードメインの合理的デザインも実施され得る。例えば、米国特許第8,586,526号を参照のこと。
【0128】
ファージディスプレイ及びツーハイブリッドシステムを含む、DNA結合ドメインに適用可能な代表的な選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号及び同第6,242,568号、ならびに国際特許第WO98/37186号、同第WO98/53057号、同第WO00/27878号、同第WO01/88197号及び英国特許第2,338,237号に開示されている。更にジンクフィンガー結合ドメインにおける結合特異性の増強は、例えば共有の国際特許第WO02/077227号に記載されている。
【0129】
標的部位の選択、融合タンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)の設計及び構築のためのヌクレアーゼ及び方法は、当業者に公知であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号及び同第20060188987号に詳細に記載されている。
【0130】
更に、これら及び他の文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質)は、例えば、5以上のアミノ酸のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して連結され得る。6以上のアミノ酸長の代表的なリンカー配列について、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、及び同第7,153,949号も参照のこと。本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間に適切なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。米国特許第8,586,526号も参照のこと。
【0131】
好適な標的遺伝子の非限定例としては、ベータ(β)グロビン遺伝子(HBB)、ガンマ(γ)グロビン遺伝子(HBG1)、B細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)遺伝子、クルッペル様因子1(KLF1)遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(AAVS1)遺伝子、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、アルブミン遺伝子、VIII因子遺伝子、IX因子遺伝子、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)遺伝子、ハンチンチン(Htt)遺伝子、ロドプシン(RHO)遺伝子、嚢胞性線維症膜貫通制御因子(CFTR)遺伝子、サーファクタントタンパク質B遺伝子(SFTPB)、T細胞受容体アルファ(TRAC)遺伝子、T細胞受容体ベータ(TRBC)遺伝子、プログラム細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遺伝子、ヒト白血球抗原(HLA)A遺伝子、HLA B遺伝子、HLA C遺伝子、HLA-DPA遺伝子、HLA-DQ遺伝子、HLA-DRA遺伝子、LMP7遺伝子、抗原プロセシング輸送体(TAP)1遺伝子、TAP2遺伝子、タパシン遺伝子(TAPBP)、クラスII主要組織適合性遺伝子複合体トランス活性化因子(CIITA)遺伝子、ジストロフィン遺伝子(DMD)、グルココルチコイド受容体遺伝子(GR)、IL2RG遺伝子、Rag-1遺伝子、RFX5遺伝子、FAD2遺伝子、FAD3遺伝子、ZP15遺伝子、KASII遺伝子、MDH遺伝子及び/またはEPSPS遺伝子が挙げられる。いくつかの態様において、ヌクレアーゼ(複数可)は、チェックポイント阻害剤遺伝子(例えばPD-1、CTLA4、阻害性リガンドのB7ファミリーにおける受容体)に結合する及び/またはそれらを開裂する、またはLAG3、2B4、BTLA、TIM3、A2aRを介したシグナル伝達に伴う受容体もしくはリガンド遺伝子及びキラー阻害性受容体(KIR及びC型レクチン受容体)を開裂する。Pardoll(2012)Nat Rev Cancer 12(4):252を参照のこと。米国特許第8,956,828号及び同第8,945,868号、ならびに米国特許公開第20140120622号及び同第20150056705号も参照のこと。
【0132】
他の態様では、ヌクレアーゼ(複数可)は、拒絶に関与する因子をコードする遺伝子、例えばHLA複合体(クラスI:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、B2M、クラスII:HLA-DMA、HLA-DOA、HLA-DPA1、HLA-DQA、HLA-DRA、HLA-DMB、HLA-DOB、HLA-DPB1、HLA-DQB、HLA-DRB)もしくはTCRのサブユニットをコードする遺伝子に結合する及び/またはそれらを開裂する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼ(複数可)は、HLA複合体(例えばTAP、タパシン、カルレティキュリン、カルネキシン、LMP2、LMP7またはErp57)のためのペプチド負荷処理及び抗原プロセシングに関与する生成物をコードする遺伝子を標的とする。例えば、米国特許第8,956,828号及び同第8,945,868号を参照のこと。
【0133】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、ヒト細胞のAAVS1、HPRT、アルブミン及びCCR5遺伝子、ならびにマウス細胞のRosa26などの「セーフハーバー」遺伝子座(例えば、米国特許第7,888,121号、同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号、同第8,409,861号、同第8,586,526号、米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20060063231号、同第20080159996号、同第201000218264号、同第20120017290号、同第20110265198号、同第20130137104号、同第20130122591号、同第20130177983号及び同第20130177960号を参照)、ならびに植物のZp15遺伝子座(米国特許第8,329,986号を参照)を標的とする。
【0134】
ドナー
本開示は、HSC/PCのゲノムへの外因性配列のヌクレアーゼ媒介性の標的化された組込みに関する。上述したとおり、外因性配列(「ドナー配列」または「ドナー」または「導入遺伝子」とも言う)の挿入は、例えば変異遺伝子を補正するため、または野生型遺伝子の発現を増加させるため、または導入遺伝子の発現のためである。ドナー配列は通常、それが配置されるゲノム配列と同一ではないことが容易に明らかとなる。ドナー配列は、2つの相同性領域に隣接する非相同配列を含有し、目的の位置での効率的なHDRを可能とする。更にドナー配列は、細胞クロマチン内の目的の領域に相同でない配列を含有するベクター分子を含むことができる。ドナー分子は、細胞クロマチンに相同ないくつかの不連続な領域を含有することができる。例えば通常は目的の領域に存在しない標的化された配列を挿入するために、前記配列をドナー核酸分子中に存在させることができ、目的の領域中の配列に相同性領域を隣接させることができる。
【0135】
選択された位置内へ挿入するための、任意のポリヌクレオチドの標的化された挿入の方法が、本明細書に記載されている。挿入のためのポリヌクレオチドは、「外因性」ポリヌクレオチド、「ドナー」ポリヌクレオチドもしくは分子、または「導入遺伝子」とも呼ばれ得る。ドナーポリヌクレオチドは、DNA、一本鎖及び/または二本鎖であってもよく、直鎖状または環状の形態で細胞内に導入することができる。例えば、米国特許公開第20100047805号及び同第20110207221号を参照のこと。ドナー配列(複数可)はDNA MC形態でも導入されることができ、それは細胞内へ環状または直鎖状の形態で導入されてもよい。直鎖状の形態で導入される場合、当業者に周知の方法によりドナー配列の末端を保護する(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)ことができる。例えば1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基を直鎖状分子の3’末端に添加する、及び/または自己相補的なオリゴヌクレオチドを一端または両端にライゲーションする。例えば、Chang et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959-4963、Nehls et al.(1996)Science 272:886-889を参照のこと。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するための追加の方法としては、末端アミノ基(複数可)の追加、及び例えばホスホロチオエート、ホスホルアミダートやO-メチルリボースもしくはデオキシリボース残基などの修飾ヌクレオチド間の結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。二本鎖形態で導入する場合、ドナーは、1つ以上のヌクレアーゼ標的部位、例えば細胞のゲノム中に組み込まれる導入遺伝子に隣接するヌクレアーゼ標的部位を含み得る。例えば、米国特許公開第20130326645号を参照のこと。
【0136】
ポリヌクレオチドは、例えば複製開始点、プロモーターや抗生物質耐性をコードしている遺伝子などの追加的な配列を有するベクター分子の一部として、細胞内に導入することができる。更にドナーポリヌクレオチドを、裸の核酸として、リポソーム、ナノ粒子またはポロキサマーなどの薬剤と複合体を形成した核酸として、導入することができる、または、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達することができる。
【0137】
特定の実施形態では、二本鎖のドナーは、1kb超の長さの配列(例えば、導入遺伝子とも呼ばれるコード配列)、例えば2と200kbの間、2と10kbの間(またはこれらの間の任意の値)を含む。二本鎖ドナーも、例えば少なくとも1つのヌクレアーゼ標的部位を含む。特定の実施形態では、ドナーは、例えばZFNまたはTALENの対において、少なくとも2つの標的部位を含む。一般的にヌクレアーゼ標的部位は、導入遺伝子の開裂において、導入遺伝子配列の外側、例えば導入遺伝子配列に対して5’及び/または3’にある。ヌクレアーゼの開裂部位(複数可)は、任意のヌクレアーゼ(複数可)においてである。特定の実施形態では、二本鎖ドナーに含有されているヌクレアーゼ標的部位(複数可)は、内因性の標的を開裂するために使用されるのと同じヌクレアーゼ(複数可)においてであり、その内因性の標的に、開裂されたドナーが相同性非依存的な方法を介して組み込まれる。
【0138】
ドナーは一般的に、組込み部位の内因性プロモーター、すなわちドナーが挿入されている内因性遺伝子(例えばグロビン、AAVS1など)の発現を引き起こすプロモーターによって、発現が引き起こされるように挿入される。しかしドナーが、プロモーター及び/またはエンハンサー、例えば構成的プロモーターまたは誘導可能なもしくは組織特異的なプロモーターを含み得ることは明らかである。
【0139】
ドナー分子は、内因性遺伝子のすべてもしくはいくつかが発現する、またはそのどれも発現しないように、内因性遺伝子内に挿入されてもよい。他の実施形態では、導入遺伝子(例えばペプチドがコードする配列の有無に関係なく)は、任意の内因性遺伝子座、例えばセーフハーバー遺伝子座に組み込まれている。例えば、米国特許公開第20080299580号、同第20080159996号及び同第201000218264号を参照のこと。
【0140】
更に発現を必要としていなくとも、外因性配列は、転写調節配列または翻訳調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/またはポリアデニル化シグナルをも含み得る。そのうえスプライスアクセプター配列を含めることができる。例示的なスプライスアクセプター部位配列は当業者に周知であり、あくまで例としては、CTGACCTCTTCTCTTCCTCCCACAG(配列番号1)(ヒトHBB遺伝子由来)及びTTTCTCTCCACAG(配列番号2)(ヒト免疫グロブリン-ガンマ遺伝子由来)が挙げられる。
【0141】
本明細書に記載のドナー配列に運ばれる導入遺伝子は、プラスミド、細胞または他の供給源から、PCRなど当技術分野で既知の標準技術を使用して単離され得る。使用するドナーとしては、環状スーパーコイル型、環状リラックス型、線型などを含めて様々な種類の形態を挙げることができる。あるいは、それらを、標準的なオリゴヌクレオチド合成技法を使用して、化学的に合成してもよい。更にドナーをメチル化してもよいし、メチル化を欠いてもよい。ドナーは、細菌または酵母の人工染色体であってもよい(BACまたはYAC)。
【0142】
本明細書に記載の二本鎖のドナーポリヌクレオチドは、1つ以上の非天然の塩基及び/または骨格を含んでいてもよい。具体的には、本明細書に記載の方法を使用して、メチル化シトシンを伴うドナー分子の挿入を実施して、目的の領域での転写的に静止した状態を達成することができる。
【0143】
外因性の(ドナー)ポリヌクレオチドは、任意の目的の配列(外因性配列)を含んでいてもよい。例示的な外因性配列としては、任意のポリペプチドをコードする配列(例えば、cDNAまたはその断片)、プロモーター配列、エンハンサー配列、エピトープタグ、マーカー遺伝子、開裂酵素認識部位、及び様々な種類の発現構築物が挙げられるが、これらに限定されない。マーカー遺伝子としては、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、発色または蛍光または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、増強型緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに細胞増殖の増強及び/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。エピトープタグには、例えばFLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つ以上のコピーが含まれる。
【0144】
好適な実施形態では、外因性配列(導入遺伝子)は、細胞での発現が望ましい任意のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、そのようなポリペプチドとしては、抗体、抗原、酵素、受容体(細胞表面のまたは核の)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポーターポリペプチド、増殖因子及び前出のいずれかの機能的断片が挙げられるが、これらに限定されない。コード配列は、例えばcDNAであってもよい。外因性配列は、目的の内因性遺伝子配列と連結するための導入遺伝子の断片でもよい。例えば、目的の遺伝子の3’末端の配列を含む導入遺伝子の断片を利用して、挿入または置き換えを介して、内因性遺伝子配列の3’末端の変異をコードする配列を補正することができる。同様に断片は、そのような内因性配列を補正または改変するための内因性配列の挿入/置き換えのための、内因性遺伝子の5’末端と同様の配列を含んでいてもよい。更に断片は、内因性遺伝子配列とin situ連結して融合タンパク質を産生するための目的の機能的ドメイン(触媒、分泌など)をコードしてよい。
【0145】
例えば外因性配列は、遺伝性疾患に罹っている対象に欠失している、または機能しないポリペプチドをコードする配列を含んでいてもよく、そのような遺伝性疾患としては、軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症(OMIM No.102700)、副腎白質萎縮症、アイカルディ症候群、α1アンチトリプシン欠損症、α地中海貧血症、アンドロゲン不応症、アペール症候群、不整脈性右心室異形成、毛細血管拡張性小脳失調症、バルト症候群、β地中海貧血症、青色ゴム乳首様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫症(CGD)、ネコ泣き症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉形成異常症、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維異形成症、脆弱X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、血色素症、βグロビンの第6コドンのヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ血症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガーギーデオン症候群、白血球粘着不全(LAD、OMIM No.116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダー・ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全症(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球病(鎌状赤血球貧血症)、スミス・マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ・ザックス病、血小板減少橈骨欠損症(TAR)症候群、トリーチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ワールデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、X連鎖リンパ球増殖症候群(XLP、OMIM No.308240)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
標的化された組込みによって治療され得る更なる例示の疾患としては、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積病(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病及びテイ・ザックス病)、ムコ多糖沈着症(例えば、ハンター病、フルラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病、HbC、α地中海貧血、β地中海貧血)ならびに血友病が挙げられる。
【0147】
特定の実施形態では、外因性配列は、標的化された組込みを受けた細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子(上述)と、追加的な機能をコードする連結された配列とを含むことができる。マーカー遺伝子の非限定例としては、GFP、薬物選択マーカー(複数可)などが挙げられる。
【0148】
挿入することのできる追加的な遺伝子配列としては、例えば変異配列を置き換える野生型遺伝子が挙げられ得る。例えば野生型のIX因子の遺伝子配列を、内因性の遺伝子コピーが変異している幹細胞のゲノム内へ挿入してもよい。野生型コピーは、内因性遺伝子座へ挿入してもよく、または代替的にセーフハーバー遺伝子座へ標的化してもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、ドナー配列は、T細胞の機能を導くのに役立つ受容体をコードする。キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞表面に発現した特異的な分子標的に免疫細胞を標的化するようにデザインされた分子である。その最も基本的な形状で、それらは、細胞内部のシグナル伝達経路に細胞外側で発現する特異的ドメインを連結する細胞に導入される受容体であり、その結果、特異的ドメインがその標的と相互作用する場合、細胞は活性化される。多くの場合、特異的ドメイン(例えばscFvまたは数種の受容体)がTCRのシグナル伝達ドメインに融合する、T細胞受容体(TCR)の変異体から、CARは作成される。これらの構造体はそれからT細胞内に導入されて、標的抗原を発現する細胞の存在下で、T細胞を活性化させて、非MHC依存的に活性化T細胞による標的細胞への攻撃をもたらす(Chicaybam et al(2011)Int Rev Immunol 30:294-311を参照のこと)。あるいは、CAR発現カセットがT細胞に特有のプロモーター(例えばFOXP3プロモーター、Mantel et al(2006)J.Immunol 176:3593-3602を参照)の制御下にあるように、CAR発現カセットは後の移植のためのHSC/PC内に導入されることができる。
【0150】
現在、様々な腫瘍抗原を標的とする腫瘍特異的CARは、様々な異なる癌の治療のためのクリニックで試験されている。標的とされるこれらの癌及びその抗原の例は、濾胞性リンパ腫(CD20またはGD2)、神経芽細胞腫(CD171)、非ホジキンリンパ腫(CD20)、リンパ腫(CD19)、神経膠芽腫(IL13Rα2)、慢性リンパ性白血病またはCLL、及び急性リンパ性白血病またはALLを(両方ともCD19)を含む。
【0151】
ウイルス特異的CARも、HIVなどのウイルスを保有している細胞を攻撃するために開発された。例えば臨床試験は、HIVの治療についてGp100に特異的なCARを使用して開始された(Chicaybam、同書)。他のウイルス特異的CARは、エボラウイルスを保有する細胞をノックアウトするために開発することができる、またはCAR含有T細胞を、これらのウイルスに特定的なCARを含む操作されたT細胞を使用して、CMV、アデノウイルス及び/またはEBVを標的とするために移植後に使用することができる。
【0152】
CARは、自己免疫疾患の治療用も開発されている。制御性T細胞(Treg)は、IL-2受容体α鎖及び転写因子FoxP3を恒常的に発現するCD4+T細胞のサブセットである。例えばエフェクターT細胞増殖及び炎症誘発性サイトカインの生成を阻害し、ならびに自然免疫系の成分を妨げることによって、Tregは大腸炎を抑制すると考えられている。特異性抗原に対するTregの欠乏が原因で、T細胞が自己免疫と関連した抗原に対してCARを発現するために改変されている、操作された抗原特異的Tregの養子移入の可能性を、研究者は探っている(例えば大腸炎についてCEA、Blat et
al(2014)Mol Ther 22(5):1018を参照)。
【0153】
T細胞受容体(TCR)はT細胞の選択的活性化の必須部分であり、通常、ヘテロ二量体を形成するために共集合する2つの鎖、α及びβから作成される。TCR鎖をコードするゲノム遺伝子座は、TCRα遺伝子がV及びJセグメントを含む一方、β鎖遺伝子座がV及びJセグメントに加えてDセグメントを含むという点において、遺伝子座をコードする抗体に似ている。そのうえTCR複合体は、T細胞にCD3抗原複合体の一部を構成する。T細胞活性化中に、TCRは、抗原提示細胞の主要組織適合複合体(MHC)に表示された抗原と相互作用する。TCRによる抗原-MHC複合体の認識はT細胞刺激をもたらし、これは続いて、メモリー及びエフェクターリンパ球でのヘルパーT細胞(CD4+)及び細胞傷害性Tリンパ球(CD8+)の両方の分化をもたらす。したがって操作されたTCRの使用は、T細胞活性(米国特許第8,956,828号を参照)の方向を変えることをもたし得て、ドナー配列はTCRをコードする操作された配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、内因性TCRサブユニット(すなわちTRACまたはTRBC)をコードする遺伝子を切断するためにデザインされた操作されたヌクレアーゼを使用することにより、内因性TCRも破壊される。例えば、米国特許第8,956,828号及び同第8,945,868号を参照のこと。
【0154】
抗体結合T細胞受容体(ACTR)技術は、T細胞を配向するために様々な異なる抗体と組み合わせるACTR分子を含むT細胞の単一種の使用である。ACTRは、CD3シグナル伝達ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、CD8膜貫通及びヒンジドメイン、ならびにCD16Fc受容体ドメインからなる、膜貫通タンパク質である。抗体がACTRを発現するT細胞と結合するように、このタンパク質はT細胞で発現されて、抗体とin
vivo結合されて、抗体-ACTR複合体は、抗体が結合する特異性抗原を発現する特異的細胞または組織にTCRを標的化するのに役立つ。いくつかの実施形態では、ACTRで改変されるT細胞は患者に由来する。他の実施態様で、T細胞は、特異的内在性T細胞受容体(例えばTCR、MHC)が不活性した「万能」T細胞である。場合によっては、受容体は、ACTR-抗体複合体の不存在下で宿主抗原と反応しないT細胞バンクを作成する、操作されたヌクレアーゼによって不活性化される。
【0155】
本明細書の教示に従い、そのような発現カセットの構築は、分子生物学の当該技術分野で周知の方法を利用する(例えば、AusubelまたはManiatisを参照)。発現カセットを使用して遺伝子導入動物を生成する前に、選択された制御エレメントに関連があるストレス誘導物質に対する発現カセットを安定な細胞株(例えば、一次細胞、形質転換細胞または不死化細胞株)内へ導入することによって、発現カセットの応答性を試験することができる。
【0156】
更に発現に必要でなくとも、外因性配列は更に、転写調節配列または翻訳調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/またはポリアデニル化シグナルであり得る。更に目的の遺伝子の制御エレメントをレポーター遺伝子へ機能的に連結して、キメラ遺伝子(例えば、レポーター発現カセット)を作成することができる。
【0157】
非コード核酸配列の標的挿入も達成され得る。アンチセンスRNA、RNAi、shRNA及びマイクロRNA(miRNA)をコードする配列も、標的挿入のために使用され得る。
【0158】
追加の実施形態で、ドナー核酸は、追加のヌクレアーゼのデザインのために、特異的な標的部位である非コード配列を含んでもよい。その後に、元のドナー分子が開裂されて、別の目的のドナー分子を挿入されることによって改変されるように、追加のヌクレアーゼを細胞に発現させてもよい。このように、ドナー分子の反復的な組込みを生成して、目的の特定の遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で、形質スタッキングを可能とし得る。
【0159】
ドナー(複数可)は、ヌクレアーゼ(複数可)を細胞中に導入する前に、それと同時に、またはその後に送達することができる。特定の実施形態では、ドナー(複数可)をヌクレアーゼ(複数可)と同時に送達する。他の実施形態で、ドナーをヌクレアーゼ(複数可)の前に、例えばこれらに限定されないが、ヌクレアーゼ(複数可)の1~60分(またはその間の任意の時間)前、ヌクレアーゼ(複数可)の1~24時間(またはその間の任意の時間)前、またはヌクレアーゼ(複数可)の24時間超前を含む、ドナーの数秒前~数時間~数日前に送達する。特定の実施形態では、ヌクレアーゼの後に、好ましくは4時間以内にドナーを送達する。
【0160】
ドナーは、ヌクレアーゼ(複数可)と同じ送達系を使用して送達することができる。同時に送達する場合、ドナー及びヌクレアーゼは、同じベクター、例えばAAVベクター(例えば、AAV6)上にあってよい。特定の実施形態で、ドナーはAAVベクターを使用して送達され、ヌクレアーゼ(複数可)はmRNA形態で送達される。
【0161】
細胞
したがって、遺伝子改変した細胞、例えば細胞で機能的なタンパク質を発現する導入遺伝子を含有する導入遺伝子を含む一次HSC/PCまたはT細胞が本明細書で提供される。本明細書に記載の方法によって産生される細胞も提供される。導入遺伝子を、1つ以上のヌクレアーゼを使用して、標的化された様式で細胞のゲノム中に組み込む。特定の実施形態で、導入遺伝子をセーフハーバー遺伝子中に組み込む。
【0162】
ランダムな組込みとは異なり、標的化された組込みでは、指定の遺伝子または遺伝子座中への導入遺伝子の組込みが確実になる。導入遺伝子は、標的遺伝子中のどこにでも組み込むことができる。特定の実施形態で、導入遺伝子をヌクレアーゼ開裂部位またはその近く、例えば開裂部位の上流または下流の1~300(またはその間の任意の値)塩基対内、より好ましくは開裂部位のいずれか側の1~100塩基対(またはその間の任意の値)内、更により好ましくは開裂部位のいずれか側の1~50塩基対(またはその間の任意の値)内に組み込む。特定の実施形態では、導入遺伝子を含む組み込まれた配列は、任意のベクター配列(例えば、ウイルスベクター配列)を含まない。
【0163】
これらに限定されないが細胞及び細胞株を含む任意の細胞型を、本明細書に記載されるように遺伝子改変することができる。本明細書に記載の細胞の他の非限定例としては、T細胞(例えばCD4+、CD3+、CD8+(Tregを含む)など)、樹状細胞、B細胞、自己由来(例えば患者由来)もしくは異種の万能性幹細胞、全能性幹細胞または多能性幹細胞(例えば、CD34+細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚性幹細胞など)が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に記載の細胞は、治療することが望まれる疾患の患者に由来するCD34+細胞である。
【0164】
本明細書に記載の細胞は、疾患を、例えばex vivo療法によって治療及び/または予防することにおいて有用である。ヌクレアーゼ修飾細胞を増殖させて、次いで標準的な技術を使用して患者に再導入することができる。例えば、Tebas et al(2014)New Eng J Med370(10):901を参照のこと。幹細胞の場合、対象に注入後、これらの前駆体の、機能的な導入遺伝子を発現する細胞へのin vivo分化も生じる。本明細書に記載の細胞を含む医薬組成物も提供される。更に細胞は、患者に投与する前に凍結保存することができる。
【0165】
送達
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびに本明細書に記載のタンパク質及び/またはポリヌクレオチドを含む組成物を、任意の好適な手段によって、任意の細胞型へin vivoまたはex vivo送達し得る。
【0166】
好適な細胞としては、真核(例えば、動物)及び原核細胞及び/または細胞株が挙げられる。このような細胞、またはこのような細胞から生成される細胞株の非限定例としては、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)及びperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces、Pichia及びSchizosaccharomycesなどの真菌細胞が挙げられる。特定の実施形態で、細胞株は、CHO、MDCKまたはHEK293細胞株である。好適な細胞としては、例として胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞及び間葉幹細胞などの幹細胞も挙げられる。
【0167】
本明細書に記載されているようなヌクレアーゼの送達方法は、例えば、米国特許第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号及び同第7,163,824号に記載されており、それらのすべての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0168】
本明細書に記載されているようなヌクレアーゼ及び/またはドナー構築物を更に、1つ以上のZFN(複数可)、TALEN(複数可)またはCRISPR/Cas系(複数可)をコードする配列を含有するベクターを使用して送達してもよい。以下に限定されないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター及びアデノ関連ウイルスベクターなどを含む、任意のベクター系を使用してもよい。米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号及び同第7,163,824号も参照し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。更に、これらのベクターのいずれかが、治療に求められる1つ以上の配列を含み得ることは明らかである。したがって1つ以上のヌクレアーゼ及びドナー構築物を細胞内に導入する際に、ヌクレアーゼ及び/またはドナーポリヌクレオチドを同じベクターまたは異なるベクターに運ばせてもよい(DNA MC(複数可))。複数のベクターを使用する際に、各ベクターは、1つもしくは複数のヌクレアーゼ及び/またはドナー構築物をコードする配列を含んでもよい。
【0169】
従来のウイルス及び非ウイルスに基づく遺伝子導入方法は、細胞(例えば、哺乳動物細胞)及び標的組織のヌクレアーゼ及びドナー構築物をコードする核酸を導入するために使用することができる。非ウイルスベクター送達系としては、DNAまたはRNAプラスミド、DNA MC、裸の核酸、及びリポソーム、ナノ粒子またはポロキサマーなどの送達ビヒクルとの複合体を形成する核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、DNA及びRNAウイルスが挙げられ、これらは細胞へ送達された後に、エピソームまたは組み込まれたゲノムのどちらかを有する。遺伝子操作されたDNA結合タンパク質及びこれらの結合タンパク質を含む融合タンパク質のin vivo送達の概要については、例えば、Rebar(2004)Expert Opinion Invest.Drugs 13(7):829-839、Rossi et al.(2007)Nature
Biotech.25(12):1444-1454、ならびにAnderson,Science 256:808-813(1992)、Nabel & Felgner,TIBTECH 11:211-217(1993)、Mitani & Caskey,TIBTECH 11:162-166(1993)、Dillon,TIBTECH 11:167-175(1993)、Miller,Nature 357:455-460(1992)、Van Brunt,Biotechnology 6(10):1149-1154(1988)、Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36(1995)、Kremer & Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31-44(1995)、Haddada et al.,in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm(eds.)(1995)、及びYu et al.,Gene Therapy 1:13-26(1994)などの一般的な遺伝子送達の文献を参照されたい。
【0170】
核酸の非ウイルス送達方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、他のナノ粒子、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、及び薬剤で増強されたDNA取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
【0171】
更なる例示の核酸送達系としては、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston,MA)及びCopernicus Therapeutics Inc,によって提供されるものが挙げられる(例えば、米国特許第6008336号を参照のこと)。リポフェクションは、例えば米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号及び同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性及び中性脂質としては、Felgnerの国際特許第WO91/17424号、同第WO91/16024号の脂質が挙げられる。
【0172】
免疫脂質複合体などの標的化されたリポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal,Science 270:404-410(1995)、Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291-297(1995)、Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382-389(1994)、Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647-654(1994)、Gao et al.,Gene Therapy 2:710-722(1995)、Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817-4820(1992)、ならびに米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号及び第4,946,787号を参照のこと)。
【0173】
追加の送達方法としては、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)内へのパッケージングを使用することが挙げられる。これらのEDVは、抗体の1つのアームが標的組織に対する特異性を有し、かつ他方がEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体は、EDVを標的細胞の表面に運び、次いでEDVは、エンドサイトーシスにより細胞内に運ばれる。細胞内に取り込まれると、内容物が放出される(MacDiarmid et al(2009)Nature Biotechnology 27(7):643を参照のこと)。
【0174】
遺伝子操作されたZFP、TALE、及び/またはCRISPR/Cas系をコードする核酸を送達するためのRNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用は、ウイルスに体内の特定の細胞を標的とさせ、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に発展した過程を利用する。ウイルスベクターは患者に直接投与(in vivo)することができる、または細胞をin vitro処置するために使用することができ、改変された細胞は患者に投与される(ex vivo)。ZFPを送達するための従来のウイルスに基づく系としては、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクチン、及び単純ヘルペスウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。宿主ゲノム内の組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ関連ウイルスの遺伝子導入方法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。そのうえ高い形質導入効率は、多くの異なる細胞型及び標的組織で観察されている。
【0175】
レトロウイルスの指向性は、標的細胞の潜在的な標的集団を増殖させる、外来のエンベロープタンパク質を組み入れることによって変更することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることができるレトロウイルスベクターであり、一般的には高ウイルス力価を生じる。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列に用いるパッケージング能力を有する、シス作用性の長い末端反復からなる。最小限のシス作用性LTRは、ベクターの複製及びパッケージングには十分であり、それらは次いで、治療遺伝子を標的細胞内に組み込むために使用されて、導入遺伝子の永続的な発現を提供する。広く用いられるレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、及びそれらの組み合わせに基づくものが挙げられる(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731-2739(1992)、Johann et al.,J.Virol.66:1635-1640(1992)、Sommerfelt et al.,Virol.176:58-59(1990)、Wilson et al.,J.Virol.63:2374-2378(1989)、Miller et al.,J.Virol.65:2220-2224(1991)、国際出願PCT/米国第94/05700号を参照のこと)。
【0176】
一過性発現が好適な用途では、アデノウイルスに基づく系を使用することができる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率で形質導入が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高力価及び高レベルの発現を得ている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生することができる。またアデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して、例えば核酸及びペプチドのin vitro産生において、ならびにin vivo及びex vivoの遺伝子治療の手順に用いるために、細胞に標的核酸を形質導入することもできる(例えば、West et
al.,Virology 160:38-47(1987)、米国特許第4,797,368号、国際特許第WO93/24641号、Kotin,Human Gene Therapy 5:793-801(1994)、Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)を参照のこと)。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251-3260(1985)、Tratschin,et
al.,Mol.Cell.Biol.4:2072-2081(1984)、Hermonat & Muzyczka,PNAS 81:6466-6470(1984)、及びSamulski et al.,J.Virol.63:03822-3828(1989)を含む、多数の刊行物に記載されている。
【0177】
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、現在、臨床試験の遺伝子導入に利用可能であり、それらは、形質導入剤を生成するために、ヘルパー細胞株内に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを利用する。
【0178】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al.,Blood 85:3048-305(1995)、Kohn et al.,Nat.Med.1:1017-102(1995)、Malech et al.,PNAS 94:22 12133-12138(1997))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用した最初の治療ベクターであった(Blaese et al.,Science 270:475-480(1995))。MFG-Sでパッケージされたベクターについて、50%以上の形質導入効率が観察されている(Ellem et al.,Immunol Immunother.44(1):10-20(1997年)、Dranoff et al.,Hum.Gene Ther.1:111-2(1997))。
【0179】
組換えアデノ関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠損型及び非病原性のパルボウイルスアデノ関連2型ウイルスに基づく有望な代替の遺伝子送達系である。すべてのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bpの逆位末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノム内への組込みに起因する効率的な遺伝子導入及び安定な導入遺伝子送達は、このベクター系の鍵となる特長である(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702-3(1998)、Kearns et al.,Gene Ther.9:748-55(1996))。AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9及びAAVrh10、ならびに任意の新規AAV血清型を含む他のAAV血清型も、本発明に従って使用することができる。いくつかの実施形態では、ウイルス核酸のLTR配列のウイルス起源がカプシド配列のウイルス起源と異種である場合、キメラAAVを使用する。例として、AAV2に由来するLTRと、AAV5、AAV6、AAV8またはAAV9に由来するカプシドを有するキメラウイルス(すなわち、それぞれAAV2/5、AAV2/6、AAV2/8及びAAV2/9)が挙げられる。
【0180】
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生されることができ、多数の異なる細胞型を容易に感染させる。アデノウイルスベクターのほとんどは、導入遺伝子がAdE1a、E1b及び/またはE3遺伝子を置き換えて、その後、複製欠損性ベクターが、欠失した遺伝子機能をトランスに供給するヒト293細胞で増殖するように、遺伝子操作される。Adベクターは、肝臓、腎臓及び筋肉で見出されるものなど非分裂性の分化細胞を含む、複数の種類の組織をin vivo形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな運搬能を有する。臨床試験でAdベクターを使用する例は、筋肉注入による抗腫瘍免疫化のポリヌクレオチド治療を含有した(Sterman et
al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。臨床試験で遺伝子導入に用いるアデノウイルスベクターの使用の追加の例としては、Rosenecker et al.,Infection 24:1 5-10 (1996)、Sterman et al.,Hum.Gene Ther.9:7 1083-1089(1998)、Welsh et al.,Hum.Gene Ther.2:205-18(1995)、Alvarez et al.,Hum.Gene Ther.5:597-613(1997)、Topf et al.,Gene Ther.5:507-513(1998)、Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-1089(1998)が挙げられる。
【0181】
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。そのような細胞としては、AAV及びアデノウイルスをパッケージングする293細胞、及びレトロウイルスをパッケージングするΨ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子内に核酸ベクターをパッケージングする産生細胞株によって生成される。前記ベクターは通常、パッケージング及びその後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用される場合)、発現させるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられている他のウイルス配列を含有する。欠けているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスに供給される。例えば遺伝子治療に使用するAAVベクターは通常、宿主ゲノム内へのパッケージング及び組込みに必要とされるAAVゲノム由来の逆位末端反復(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAは細胞株中にパッケージングされ、他のAAV遺伝子、すなわちrep及びcapをコードするものがITR配列を欠失したヘルパープラスミドを含有する。細胞株は、ヘルパーとしてアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、及びヘルパープラスミド由来のAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠失しているため、有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えばAAVよりも感受性があるアデノウイルスに対する熱処理によって低減することができる。いくつかの実施形態において、AAVは、バキュロウイルス発現系を使用して作成される。
【0182】
多くの遺伝子治療用途では、遺伝子治療ベクターが、高度な特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。したがって、ウイルスの外表面上でウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、ウイルスベクターを所与の細胞型に対する特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型上に存在することが公知の受容体に対する親和性を有するように選ばれる。例えば、Han et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:9747-9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスを改変して、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現することができ、その組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現している特定のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質をウイルスが発現する、他のウイルス-標的細胞の対にまで及び得るものである。例えば繊維状ファージを遺伝子操作して、ほとんどの任意の選ばれた細胞受容体について特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示することができる。上の記載は主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターを遺伝子操作して、特異的な標的細胞による取り込みに好都合な特異的な取り込み配列を含有することができる。
【0183】
遺伝子治療ベクターは、後述のとおり、個々の患者への投与によって、一般的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下もしくは頭蓋内注入)または局所適用によって、in vivo送達することができる。あるいは、個々の患者から移植された細胞(例えばリンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)や万能ドナーの造血幹細胞などの細胞に、ベクターをex vivo送達し、続いて通常はベクターを組み入れた細胞を選択した後に、患者への細胞の再移植を行うことができる。
【0184】
ヌクレアーゼ及び/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)を、細胞のin vivo形質導入のために、生物に直接投与することもできる。あるいは、裸のDNAを投与することができる。投与は、血液または組織の細胞との最終的な接触内に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかによるものであり、そのような経路としては、注射、注入、局所適用及びエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与する好適な方法は利用可能であり、当業者に周知であり、2つ以上の経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、多くの場合、特定の経路は、別の経路よりも速やかかつ有効な反応を提供することができる。
【0185】
本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えばヌクレアーゼをコードする及び/または二本鎖ドナー)の導入に好適なベクターは、非組込みレンチウイルスベクター(IDLV)を含む。例えば、Ory et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11382-11388、Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463-8471、Zuffery et al.(1998)J.Virol.72:9873-9880、Follenzi et al.(2000)Nature Genetics 25:217-222、米国特許公開第2009/054985号を参照のこと。
【0186】
薬学的に許容される担体は、投与されている特定の組成物によって、及び組成物を投与するために使用される特定の方法によって、ある程度は決定される。したがって後述のように、利用可能な医薬組成物の多種多様な好適な形態な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,1989を参照のこと)。
【0187】
ヌクレアーゼをコードする配列とドナー構築物とを、同じまたは異なる系を使用して送達することができることは明らかである。例えばヌクレアーゼ及びドナーを同じDNA MCによって運ぶことができる。あるいは、ドナーポリヌクレオチドをMCによって運ぶことができ、一方、1つ以上のヌクレアーゼを標準的なプラスミドまたはAAVベクターによって運ぶことができる。更に異なるベクターを、同じまたは異なる経路(筋肉注射、尾部静脈注射、他の静脈注射、腹腔内投与及び/または筋肉内注射)によって投与することができる。前記ベクターを、同時にまたは任意の順番で送達することができる。
【0188】
したがって本開示は、治療タンパク質をコードする導入遺伝子の挿入に適応し易い疾患及び状態のin vivoまたはex vivo治療を含み、例えばVIII因子(F8)などの凝固因子のヌクレアーゼ媒介性組込みを介した血友病の治療などを含む。組成物は、血清または標的器官もしくは標的細胞で所望の濃度の治療ポリペプチドを得るのに効果的な量で、ヒト患者へ投与される。投与は、ポリヌクレオチドが所望の標的細胞に送達される任意の手段による。例えば、in vivo及びex vivoの両方の方法が意図される。門脈への静脈注射は、好ましい投与方法である。他のin vivo投与の様式としては、例えば、肝動脈によるものを含む肝臓葉もしくは胆管への直接注射及び肝臓遠位への静脈注射、肝実質への直接注射、肝動脈を介した注射ならびに/または胆樹による逆行性注射が挙げられる。ex vivo投与の様式としては、切除した肝細胞または肝臓の他の細胞をin vitro形質導入し、続いて形質導入された切除肝細胞をヒト患者の門脈脈管、肝実質または胆樹へ戻して注入することが挙げられる。例えば、Grossman et al.,(1994)Nature Genetics,6:335-341を参照のこと。
【0189】
投与する有効量のヌクレアーゼ(複数可)及びドナーは、患者間で異なり、目的の治療ポリペプチドによって変化する。したがって有効量は、組成物を投与する臨床医によって最適に決定され、適切な投与量は当業者によって容易に決定され得る。十分な時間で組込み及び発現させた後(例えば通常は4~15日間)、治療ポリペプチドの血清または他の組織のレベルの分析、及び投与前の初期レベルとの比較によって、投与される量が少なすぎるのか、適正な範囲内か、または多すぎるのかを決定する。初期投与及びそれに引き続いての投与に適した状況も変化し得るが、初期投与と、必要であればそれに引き続いての投与とを行うのが典型的である。引き続いての投与は、種々の間隔で投与されてもよく、毎日から毎年まで数年に1回までの範囲に及ぶ。当業者は、適切な免疫抑制技法が、送達ベクターの免疫抑制による形質導入の阻害または遮断を回避するために推奨され得ることを理解する。例えば、Vilquin et al.,(1995)Human Gene Ther.,6:1391-1401を参照のこと。
【0190】
ex vivoとin vivoとの両方の投与に用いる製剤としては、懸濁液または乳化液が挙げられる。多くの場合、活性成分は、薬学的に許容され、かつ活性成分に適合する賦形剤と混合される。適当な賦形剤としては、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど及びこれらの組み合わせが挙げられる。更に組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤または医薬組成物の効果を高める他の試薬などの微量の補助的な物質を含有していてもよい。
【0191】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALENまたはCRISPR/Casヌクレアーゼ系を含む、本開示の例示的実施形態に関する。これが、あくまで例示目的であること、ならびに他のヌクレアーゼが使用され得ること、例えば遺伝子操作されたDNA結合ドメイン、及び/または天然起源のもしくは遺伝子操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)DNA結合ドメインと異種開裂ドメインの融合物、及び/またはメガヌクレアーゼとTALEタンパク質との融合物と共にTtago系、ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)が使用され得ることは、理解されるであろう。
【実施例】
【0192】
実施例1:ジンクフィンガーヌクレアーゼの組み立て
Miller et al.(2007)Nat.Biotechnol.25:778-785に記載のとおり、ZFNをヒトPD1遺伝子に対して組み立て、ELISA及びCEL1アッセイによって活性を試験した。TCR(例えばTRAC)、B2M、CTLA-4及びPD1特異的ヌクレアーゼについては、米国特許第8,956,828号、同第8,945,868号、同第8,563,314号、ならびに米国特許公開第20140120622号及び同第20150056705号を参照し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0193】
実施例2:AAV形質導入及び遺伝子改変TI
A.CD4+もしくはCD8+T細胞
IL2(20ng/ml)及びDynabeads(登録商標)ヒトT活性化因子CD3/CD28(Life Technology)の存在下で、プロモーター(例えばEF1aまたはPGK)促進性かつ操作された抗原受容体導入遺伝子(例えば
図1に示すCAR、TCRまたはACTR)及びmRNAがコードするPD1特定的ZFNまたはTRAC特異的ZFNを含有するAAV6ベクターを、初代CD4+またはCD8+T細胞に形質導入した。次いで感染の5日後(dpi)に細胞を収集し、操作された抗原受容体の発現について分析した。PD1チェックポイント阻害剤またはTCRα鎖TRACに特異的なZFNと組み合わせた遺伝子操作された抗原受容体導入遺伝子を含むAAV6ベクターの使用が、導入遺伝子のPD1またはTRAC座への組込みをもたらすことを、結果は示す。
【0194】
B.CD3+T細胞
CCR5-RFLPドナーを運搬するAAV2/6ベクターをCD3+T細胞に形質導入するために、標準条件下で、CD3+T細胞をAAV2/6-RFLPドナーベクターに4時間曝露した(PCT出願PCT/US2015/041807号を参照)。標準状態は、培地の血清の使用を含む。上述のとおり、mRNAがコードするCCR5特異的ZFN(DeKelver et al(2010)Gen.Res.20:1133-1142)は、60μg/mLでエレクトロポレーションを介して細胞に導入された。形質導入効率における血清の効果を試験するために、4時間の形質導入中、比較実験は培地の血清なしで実施した。形質導入及びエレクトロポレーションの後、細胞は、血清含有条件下で5日間増殖されて、その後採取した。ゲノムDNAは、標準的な手順によってIlluminaディープシーケンシングにより分離されて、RFLP含有ドナー(「RFLP%」)の標的化された組込みの効率を測定した。
【0195】
結果を
図2に示し、AAV2/6ドナーの低濃度で、ドナーの標的化された組込みが血清の存在下で抑制されて、血清の不存在下では観察されないことを実証する。
【0196】
実施例3:AAV形質導入及び遺伝子改変
1つ以上の内因性遺伝子が本明細書に記載の組成物及び方法を使用して改変された(例えば、TIの有無にかかわらず不活性化された)細胞でも、AAVドナー発現を試験した。特にTRAC及び/またはB2M遺伝子は、初代T細胞(CD3+)で基本的には上述のとおり改変された。簡潔には、ヌクレアーゼ標的化TRAC及び/またはB2Mは、GFPをコードする導入遺伝子(TRAC1ヌクレアーゼ単独で250ug/mL及び1e5vg/細胞のAAV MOI、B2Mヌクレアーゼ単独で120ug/mL及び1e5vg/細胞のAAV MOI、B2Mを120ug/mL、ならびにTRAC1及びB2Mヌクレアーゼについて60ug/mL及び1e5vg/細胞のAAV MOI)を含むAAVドナーと一緒に細胞に投与された。T細胞は、抗CD3/CD28ビーズを使用して活性化されて、血清代替物及びIL-2を有する培地で培養した。活性化後2日目、1E5vg/細胞のAAV6 GFPドナーベクター(TRACまたはB2M ZFN切断部位のいずれかに特異的な相同アームを含む)によって、活性化された細胞は形質導入された。翌日、60~250ug/mLの範囲のmRNA濃度でのエレクトロポレーションによるTRACまたはB2Mいずれかを標的化するZFNについて、コードするmRNAと共に細胞をトランスフェクトした。それからT細胞を標準T細胞培地で希釈し、一晩30℃にてインキュベートした。培養液をその後に、更に7~11日間、標準T細胞増殖条件下で増殖させた。
【0197】
図20に示すように、大部分の細胞(すべての場合で70%超)は、TRACまたはB2M座へのAAVドナーの標的化された組込み(TI)を示した。更に、TRAC及びB2M両方の標的化ヌクレアーゼを受ける細胞の同程度の割合は、TRAC及びB2M両方の不活化(KO)、ならびにAAV GFPドナーの標的化された組込み(TRAC相同アームを有するドナーを使用する場合、TRAC内への)を示した。
【0198】
実施例4:Ex vivo法
前述したように(Aiuti et al.(2013)Science 341,1233151)、CD34+HSPC(例えば患者由来のCD34+細胞、及びまたは改変したCD4+、CD3+及び/またはCD8+T細胞)を含み、本明細書に記載されるように1つ以上のCARを発現する、遺伝子改変した細胞は、上述したように(Aiuti et al.同所)対象に投与されて、改変細胞で治療した対象に長期の多系列移植をもたらす。
【0199】
実施例5:PDGFr阻害剤を使用するAAV形質導入
AAV形質導入への共受容体の相対的な関与を試験するために、上皮成長因子受容体(EGFR)、肝細胞成長因子受容体(HGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)及び血小板由来成長因子受容体(PDGFR)に対する阻害剤を、ヒトアルブミン座を標的とするジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使用する、Hep3B(ヒト肝細胞癌細胞株)細胞のin vitro AAV2/6形質導入実験の前に使用した。Hep3B細胞は、AAV2/6による形質導入の前日に、完全増殖培地300μL中の48ウェル組織培養プレートの1ウェル当たり1×105細胞密度で蒔かれた。形質導入の朝に、細胞を無血清培地で3回洗浄し、3時間の無血清培地でインキュベートした。成長因子受容体阻害剤をウェルに加えて、1時間インキュベートした。それからアルブミン座に標的化したZFNを送達するためにAAV2/6粒子を、ウェルに加えた。3時間後に、血清をウェルに加えて、10%の最終濃度にした。細胞を、形質導入後4日目に採取した。ゲノムDNAは抽出されて、アルブミン座でディープシーケンシング(MiSeq)によって分析された。使用する成長因子受容体阻害剤を下の表1に示し、それらは
図3で示される濃度実験で使用されて、各阻害剤はその標的によって標示される。例えばゲフィチニブ(EGFRの阻害剤)は、「EGFRi」と標示される。
【0200】
図3に示すように対照と比較して、EGFRiのみが穏やかな阻害(AAV6共受容体としてのその役割のため予想どおり)を示し、HGFRi及びFGFRiはAAV形質導入の穏やか刺激を示した。対照的に、使用した両方のPDGFR阻害剤(CP-673451及びクレノラニブ)は、indel形成最高8倍の著しい用量依存的な刺激を示した(濃度9μMで)。
【表1】
【0201】
阻害剤がそれら単独でDSB修復の誤作動を何とか不注意に刺激しなかった(したがってAAV形質導入に影響を及ぼさない)ことを確実にするために、AAVによる、及びmRNA送達によるZFNの送達を比較した。Hep3B細胞は、AAV2/6による形質導入またはmRNAによる形質導入の前日に、完全増殖培地300μL中の48ウェル組織培養プレートの1ウェル当たり1×105細胞密度で蒔かれた。形質導入及びトランスフェクションの朝に、細胞を無血清培地で3回洗浄し、3時間の無血清培地でインキュベートした。成長因子受容体阻害剤をウェルに加えて、1時間インキュベートした。AAV2/6形質導入において、それからアルブミン座に標的化したZFNを送達するためにAAV2/6粒子を、ウェルに加えた。mRNAトランスフェクションにおいて、ZFN当たり5ngのmRNAは、Opti-MEM及びRNAiMaxリポフェクタミン試薬によって細胞に送達された。3時間後に、血清をウェルに加えて、10%の最終濃度にした。細胞を、形質導入後4日目に採取した。ゲノムDNAは抽出されて、アルブミン座でディープシーケンシング(MiSeq)によって分析された。
【0202】
図4に示すように、ZFNがRNAとして送達されるとき、阻害剤効果がAAVの形質導入にあることを示し、阻害剤の増加投与量で処理した細胞で検出されるヌクレアーゼ活性(indel%)に著しい差は見られなかった。
【0203】
AAV2/6形質導入のPDGFRi刺激の機序を調べるために、Hep3B細胞を、同時にPDGFRi及びEGFRiで処理した。Hep3B細胞は、AAV2/6による形質導入の前日に、完全増殖培地300μL中の48ウェル組織培養プレートの1ウェル当たり1×105細胞密度で蒔かれた。形質導入の朝に、細胞を無血清培地で3回洗浄し、3時間の無血清培地でインキュベートした。成長因子受容体阻害剤をウェルに加えて、1時間インキュベートした。それからアルブミン座に標的化したZFNを送達するためにAAV2/6粒子を、ウェルに加えた。3時間後に、血清をウェルに加えて、10%の最終濃度にした。細胞を、形質導入後4日目に採取した。ゲノムDNAは抽出されて、アルブミン座でディープシーケンシング(MiSeq)によって分析された。
【0204】
図5に示すように、AAV形質導入全体の穏やかな減少(indel%として示される)は、EGFRiが存在するとき、EGFRが増加したAAV2/6形質導入の間、少なくとも一部使用されていることを示唆する。他の受容体による関与の可能性が高い。
【0205】
Hep3Bが大量の表面EGFRを発現するとされている一方で、HepG2などの他の細胞株は高水準でEGFRを発現しない。本明細書に記載の方法及び組成物がEGFR発現レベルとは独立して機能することを証明するために、HepG2細胞のPDGFRiの存在下で、AAV2/6形質導入を試験した。HepG2/C3a細胞は、AAV2/6による形質導入の前日に、完全増殖培地300μL中の48ウェル組織培養プレートの1ウェル当たり1×105細胞密度で蒔かれた。形質導入の朝に、細胞を無血清培地で3回洗浄し、3時間の無血清培地でインキュベートした。成長因子受容体阻害剤をウェルに加えて、1時間インキュベートした。それからアルブミン座に標的化したZFNを送達するためにAAV2/6粒子を、ウェルに加えた。3時間後に、血清をウェルに加えて、10%の最終濃度にした。細胞を、形質導入後4日目に採取した。ゲノムDNAは抽出されて、アルブミン座でディープシーケンシング(MiSeq)によって分析された。
【0206】
図6に示すように、Hep3B細胞でのように、AAV2/6形質導入率は、HepG2細胞の対照と比較してPDGFRiと組み合わせて最高7倍だった。PDGFR阻害が、EGFR発現状態に依存しない様々な細胞型で使用可能な技術であることを、これは示す。
【0207】
これまでのすべての実験は血清の不存在下で実施して、血清中に存在するEGFRの干渉を防いだが、血清がある場合もPDGFR阻害がAV2/6形質導入を刺激するか、更に試験した。Hep3B細胞は、AAV2/6による形質導入の前日に、完全増殖培地300μL中の48ウェル組織培養プレートの1ウェル当たり1×105細胞密度で蒔かれた。血清なしウェルにおける形質導入の朝に、細胞を無血清培地で3回洗浄し、3時間の無血清培地でインキュベートした。成長因子受容体阻害剤をウェルに加えて、1時間インキュベートした。それからアルブミン座に標的化したZFNを送達するためにAAV2/6粒子を、ウェルに加えて3時間インキュベートした。血清をウェルに加えて、10%の最終濃度にした。完全血清ウェルにおいて、細胞は完全増殖培地で洗浄されて、AAV2/6粒子をウェルに加えた。細胞を、形質導入後4日目に採取した。ゲノムDNAは抽出されて、アルブミン座でディープシーケンシング(MiSeq)によって分析された。
【0208】
図7に示すように、HepG2細胞で、約40倍血清がある場合に、全体のAAV2/6形質導入が下がることを見いだした。しかし、PDGRiが加えられるとき、AAV2/6形質導入は血清の存在下でさえ非常に強力だった(最大20%indel)。未処置のAAV2/6形質導入にわたる倍率変化として換算すると(
図8を参照)、PDGRiは、血清の不存在下で用量依存的方法の4倍(最大50%indel)、血清の存在下で最高70倍(最大20%indel)、AAV形質導入を増加させた。ウイルスベクター(例えばAAV)を使用する核酸の送達を強化するために、PDGFR阻害が血清タンパク質の存在下で、in vivo使用できることを、これは示す。
【0209】
PDGFR阻害剤のヒト患者由来の初代肝細胞への効果を、次に試験した。ヒト肝細胞について、48ウェル細胞培養皿を、コラーゲンでプレコーティングして購入した(Life Technologies)。プレートを37℃で1時間インキュベートした。解凍/平板培地を、18mLのInVitroGRO CP培地(BioreclamationlVT)及び400μLのTorpedo抗生物質混合物(Celsis In Vitro Technologies)を混ぜ合わせて調整した。プレートが調整されると、雌付着可能ヒト肝細胞(Lot# AKB)を、液体窒素蒸気相から37℃の水浴内に直接移動させて、穏やかに撹拌しながら解凍した。細胞を、5mLの予熱した解凍/平板培地を含有する50mlの円錐管に直接移動した。すべての細胞を回収するために、バイアルを1mLの解凍/平板培地で洗浄し、それを細胞に加えた。細胞の再懸濁液の後、少量(20μL)を除去して、細胞の計数を実施し、トリパンブルー液(1:5、Corning、カタログ番号#25-900-C1)を使用して細胞生存度を測定した。それから細胞を5分間の75×gで遠心分離し、上清を除去して、細胞を1e6細胞/mLで再懸濁した。細胞を、コーティングした48ウェルプレートの3e5細胞/ウェルに播種した。それから細胞を、37℃/5%CO2インキュベーターでインキュベートした。
【0210】
細胞が蒔かれた1日後に、細胞をHCM維持培地(Lonza、HBM及びHCM SingleQuots)に切り替えた。翌日、細胞に新しいHCM培地を供給した。成長因子受容体阻害剤をウェルに加えて、1時間インキュベートした。AAV2/6粒子は、HCM培地(1ウェル当たり300μLの)を有する好適なMOIで混合して、細胞に加えた。24時間後、培地を新しいHCM培地と交換して、初代肝細胞培養の最高の健康状態を確実にした。細胞を、形質導入後4日目に採取した。ゲノムDNAは抽出されて、アルブミン座でディープシーケンシング(MiSeq)によって分析された。
【0211】
図9に示すように、DMSO処理済み対照と比較して、増加したAAV2/6形質導入は、低用量(3μM)ではなく、高用量のPDGFRi(9μM)処理で観察された。一次細胞での、したがってin vivoの本明細書に記載の方法の有効性が、5倍増加することを示す。重要なことに、これらの細胞は血清なしで増殖した。
【0212】
実施例6:非ヒト霊長類へのAAVのin vivo送達
ヌクレアーゼ活性で測定されるように、AAV送達の効率でステロイドと抗B細胞を組み合わせる状況の影響を調べるために、以下の試験を実施した。これらの試験で、AAVはAAV2 ITRを含むがAAV6キャプシドを有することを、専門用語2/6が意味する場合、AAV2/6は使用される優勢な血清型であった(別に示していなければ)。試験は、M.fascicularisアルブミン座を切断するようにデザインされたジンクフィンガーヌクレアーゼを利用した(SBS#37804「左ZFN」/SBS#43083「右ZFN」、PCT出願第WO2015/127439号を参照)。使用するドナーは、導入遺伝子のヌクレアーゼ媒介性の標的化された組込みを介してヒトF.IXまたはヒトFVIII導入遺伝子を導入するようにデザインされた。ドナー構造物は、国際特許第WO2015127439号(ヒトF.IX)及び同第WO2015089077号(ヒトFVIII)に記載されている。
【0213】
カニクイザル(M.fascicularis)を、ステンレスの網目状床及び自動水まき弁を備えるステンレス鋼ケージに収容した。試験は、Final Rules of
the Animal Welfare Act regulations(Code
of Federal Regulations,Title 9)のすべての適用できる部分に対応した。
【0214】
対照物(製剤緩衝液、PBS、35mMのNaCl、1%のショ糖、0.05%のプルロニック 188、pH7.1)及び試験物を、試験1日目に解凍して分配し、そこで試験物及び対象物は、1mL/分で末梢静脈に静脈内注射を介して投与された。リツキシマブ投与において、動物は、静脈内投与によって1mL/kg量の濃度10mg/mLで、10mg/kg/投与量の用量を受けた。メチルプレドニゾロン(Solu-Medrol(登録商標))において、薬剤は、筋肉内に投与されて、投与量0.5mL/kgの濃度20mg/mL、10mg/kg/投与量の用量で投与された。
【0215】
投与スキームは
図10に示され、組み合わせがSolu-Medrol(登録商標)及びRituxan(登録商標)の投与を遅延させたことを
図10Aは示す。AAV6試験物は1日目に動物に投与されて、Solu-Medrol(登録商標)は5日目に開始して16日目まで毎日与えられ、Rituxan(登録商標)は7日目と14日目に与えられた。第2のスキームを
図10Bに示し、そこでRituxan(登録商標)は8日目及び試験物の前日に与えられ、Solu-Medrol(登録商標)は試験物と同じ日に与えられ、その後毎日与えられた。
【0216】
投与グループを下の表2及び表3に示す。表2は
図10Aに示されるスキームで使用したグループを示し、表3は
図10Bのスキームで使用するグループを示す。表2及び表3に示される試験物は、表の項目で特徴づけられる。
【表2】
【表3】
【0217】
ヒトFIX及び抗FIX抗体の検出のため及び尿検査のために、標準血液学、凝固、臨床化学パラメーターを評価するために、試料をとった。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)及びプロトロンビン時間を測定することによって、凝固を分析した。更に、ゲノムDNAのAAV6ベクターゲノムコピー数を分析して、ヌクレアーゼ活性を測定するために、生検をとった。
【0218】
遅延した(試験後物、
図10A)処理状況についての結果を、
図11に示す。すべての投与グループは、最も高い全AAV2/6投与グループで見られる最高レベルで、hFIX濃度の増加を示した(
図11A)。1:1:8投与グループ(AAV-ZFN1:AAV-ZFN2:AAV-ドナー)で、最高hFIX濃度は、最も高い全AAV2/6投与で再び見られた(
図11B)。前処理状況(
図10B)において、FIXは、両方の投与グループで検出可能だった(
図11C)。両方の治療レジメンからのデータをまとめたとき(
図11D)、増加した全AAV2/6の投与としての検出可能なhF.IXの増加が観察された。
【0219】
動物は更に、遺伝子改変のレベル(切断部位での挿入または欠失を含む遺伝子%「indel」)についても分析した。28日目で検出される遺伝子改変のレベル(
図12)は、免疫調節剤の試験物後投与(
図10A)で、全AAV2/6投与が増加した際、遺伝子改変が増加したことを示した。リツキシマブが試験物前に投与されて、それからステロイドが試験物と同時に投与されて、その後毎日投与されたとき、全AAV2/6投与が増加した際、遺伝子改変は増加した(
図12A)。両方の状況からの遺伝子改変のレベルをまとめると(
図12B)、一般的な傾向は、増加したAAV2/6投与は増加した遺伝子改変に関連するということだった(
図12C)。重要なことに試験物による処理前のステロイド処理の使用は、投与前ステロイド処理のない処理と比較して、低用量の試験物の使用が、遺伝子改変の所与のレベルを達成すると共に、タンパク質発現の治療レベルも更に達成するのを可能にした。
【0220】
類似の実験も、F.IXドナーの代わりにFVIII-BDD導入遺伝子を使用してNHPで実施した。この実験で、AAV6及びAAV8血清型を評価した。以下の表4に、投与グループの成分を示す。グループ2~4(「cDNA1」)とグループ5(「cDNA2」)のF8導入遺伝子発現カセットの間の差は、グループ5ドナーがわずかに異なるプロモーターモジュールを有している(複合型肝臓プロモーター、McIntosh e
t al(2013)Blood 121(17):3335を参照)が、残りのF8-BDD導入遺伝子発現カセット(コード領域を含む)は同一であった。この実験では、ZFNは、ゲノム内への標的化された組込みを生じさせるために使用されなかった。
【表4】
この実験において、
図10Bで概説する投与レジメンを使用し(リツキシマブが試験物前に投与され、ステロイドは試験物と同時に、その後毎日投与される)、実験は14日間実施された。
【0221】
データを13~
図19に示し、各グループはそれぞれサルであり、データポイントが付与されている。AAV6血清型バックグラウンドの試験物の高用量(
図13Aを
図13Bと比較)が、通常のヒトプラズマで見られるレベルのほぼ10倍で、FVIII-BDDの発現をしたことを、データは示す。AAV2/8血清型の試験物のデータは、FVIII活性の増加を示したが、AAV2/6で観察したものと同程度ではなかった。
【0222】
上述の最初の14日間の後に、実験は、AAV-FVIII-BDDの単回投与後、168日目まで続けられた。ステロイドの共投与は、103日目に止められた(
図14)。サルの血漿のhFVIII-BDDレベルの測定は、以下のとおりにカスタムELISAを使用して測定した。96ウェルハーフエリアHB(高結合)ポリスチレンマイクロプレート(Corning)を、0.2Mの炭酸重炭酸塩緩衝液pH9.4(Thermo Fisher Scientific,Waltham MA)中のマウスモノクローナル抗hFVIII抗体(Green Mountain,Burlington,VT)で4℃にて一晩、コーティングした。翌日、プレートを、1×TBST(Thermo Fisher Scientific,Waltham MA)を使用して4回洗浄した。それから96ウェルプレートを、3%のBSA/TBSブロッキング緩衝液を使用して室温にて2時間ブロックして、続いて1×TBSTで4回洗浄した。血漿をプレートに加えて、室温にて2時間揺り動かしながらインキュベートし、続いて1×TBSTで4回洗浄した。検出抗体(ビオチン化モノクローナルマウス抗FVIII抗体)(Green Mountain,Burlington,VT)を加えて、室温にて1時間インキュベートして、続いて1×TBSTで4回洗浄した。ストレプトアビジンHRP(Jackson ImmunoResearch,West Grove PA)を加えて、室温にて1時間インキュベートして、続いて1×TBSTで4回洗浄した。TMB Ultra(Thermo Fisher Scientific,Waltham MA)を加えて、10分間成長させて、反応を停止液で停止して、吸光度をプレートリーダーを使用して450nMで読み取った。バックグラウンド吸光度表示は無視できる(一般的に0)。阻害抗FVIII抗体の存在は、ベセスダアッセイ(例えば、Kasper et al(1975)Thromb Diath Haemorrh 34:869-72)を使用して測定した。
図15は、実験にわたって血漿で検出されるAAV2/6を介して送達されるFVIII-BDDのピーク濃度を示す。
【0223】
強力なhFVIII抗原濃度(Ag)の検出後、2E+12vg/kgで投与された、AAV2/6のFVIII-BDD cDNAドナーを含む低用量動物(n=3)について、hFVIII-BDDレベルはベセスダ単位(BU)の付随する増加によって減少した。BUはだんだんと減少し、hFVIII Agは増加した(
図16)。免疫抑制療法の停止後、ヒトFVIII抗原の濃度が低下したことを、前記結果は証明した。
【0224】
6E+12vg/kgで投与された、AAV2/6のFVIII-BDD cDNAドナーを含む高用量動物(n=3)について、類似のパターンを観察した(
図17を参照)。しかし、Solu-medrol除去後の一動物3101について、FVIII抗原(通常のhFVIIIレベルの200%を表す)の検出可能及び持続的濃度にもかかわらず、抗FVIII抗体は検出されず、それはヒトFVIII抗原への動物の忍容性を示す可能性がある。
【0225】
実験を高用量のAAV2/8ベクターの送達によって行ったとき、血漿で検出可能なFVIII抗原の量が、AAV2/6ベクターを使用して見られるものより少ないことを除いて、類似の結果が観察された(
図18)。同様に、異なるFVIII-BDD cDNAプロモーターモジュールがAAV2/8ベクターで試験したとき(上述のグループ5)、FVIII-BDD血漿レベルは、グループ4で見られるものと類似していた(
図19)。しかし上述のように、FVIII-BDD発現の検出可能な量を維持した2つの個体(5101及び5102)、及びSolu-medrolの除去後、実験の初日に見られた強力な反応レベル後の抗原への寛容化を再び思わせる著しい抗体反応のないグループ4の個体(4103、
図18D)がいた。
【0226】
図19Dに示すように、メチルプレドニゾロンの除去後に、動物番号5101はhFVIII-BDDに寛容化されたように見え、hFVIII-BDDレベルは、約0.1U/mL(正常なhFVIIIレベルの10%を表す)で8週間安定している。
図19Eに示すように、メチルプレドニゾロンの除去後に、動物番号5102はhFVIII-BDDに寛容化されたように見え、hFVIII-BDDレベルは、約0.6U/mL(正常なhFVIIIレベルの60%を表す)で8週間安定している。ヒト血漿のhFVIIIの正常レベルは約1U/mLまたは200ng/mLであり、正常(>0.001U/mL)の平均1%~5%の発現が治療有効性を有することは注目に値する(Llung RC(1999)Thromb Haemost 82(2):525-530)。
【0227】
本明細書にて言及されているすべての特許、特許出願及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0228】
開示は、理解を明確にする目的で、例証及び実施例によっていくらか詳細に提供されているが、本開示の趣旨または範囲を逸脱することなく様々な変形及び改変が実践され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって前述の記載及び実施例は、限定的として解釈されるべきものではない。
【配列表】