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特許7348165電子デバイス封止体、シート状接着剤、電子デバイス封止用接着フィルム、及び電子デバイス封止体の製造方法
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  • 特許-電子デバイス封止体、シート状接着剤、電子デバイス封止用接着フィルム、及び電子デバイス封止体の製造方法 図1
  • 特許-電子デバイス封止体、シート状接着剤、電子デバイス封止用接着フィルム、及び電子デバイス封止体の製造方法 図2
  • 特許-電子デバイス封止体、シート状接着剤、電子デバイス封止用接着フィルム、及び電子デバイス封止体の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電子デバイス封止体、シート状接着剤、電子デバイス封止用接着フィルム、及び電子デバイス封止体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20230912BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230912BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230912BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20230912BHJP
   H10K 71/00 20230101ALI20230912BHJP
【FI】
H10K50/844
H01L23/30 F
H10K50/86
H10K71/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020511008
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2019013695
(87)【国際公開番号】W WO2019189618
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2018061660
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018128365
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 樹
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 健太
(72)【発明者】
【氏名】前谷 枝保
(72)【発明者】
【氏名】樫尾 幹広
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-082266(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047868(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/106582(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/054168(WO,A1)
【文献】特開2017-031383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/844
H01L 23/29
H01L 23/31
H10K 50/86
H10K 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム、電子デバイス、及び、前記機能性フィルムと電子デバイスの間を封止する接着剤硬化物層を備え、前記接着剤硬化物層は、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、(A)成分の含有量が、シート状接着剤全体に対し、固形分として、20~80質量%であるシート状接着剤の硬化物である、電子デバイスの封止体。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
(C)変性ポリオレフィン樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上のバインダー樹脂
【請求項2】
前記(A)成分の環状エーテル当量が、115g/eq以上300g/eq以下であり、
前記シート状接着剤に含まれる(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項1に記載の電子デバイスの封止体。
【請求項3】
下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、(A)成分の含有量が、シート状接着剤全体に対し、固形分として、20~80質量%であるシート状接着剤であって、請求項1に記載の電子デバイスの封止体の製造に用いられるものである、シート状接着剤。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
(C)変性ポリオレフィン樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上のバインダー樹脂
【請求項4】
前記シート状接着剤は、少なくとも一方の面に剥離フィルムを有し、以下の条件(i)で測定されるソーダガラス板に対する粘着力が3N/25mm以上である、請求項3に記載のシート状接着剤。
(i)前記シート状接着剤の前記剥離フィルムが貼り合わされているのとは逆側の面に、アルミニウムを蒸着した厚さ23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと貼り合わせた積層体を作製し、前記剥離フィルムを貼り合わせた状態で、前記剥離フィルム側から、波長365nmの紫外線を、照度:50mW/cm、光量:200mJ/cmの条件で前記積層体に照射し、その3分後に、前記積層体から前記剥離フィルムを剥離し、露出したシート状接着剤の層をソーダガラス板に対向させ、前記積層体上で2kgのロールを一往復させることによりソーダガラス板に貼付して、23℃で50%相対湿度の環境下に24時間保管された後に180°引き剥がし試験を実施する。
【請求項5】
前記(A)成分の環状エーテル当量が、115g/eq以上300g/eq以下であり、
前記(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項3に記載のシート状接着剤。
【請求項6】
波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルムと、下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、(A)成分の含有量が、シート状接着剤全体に対し、固形分として、20~80質量%であるシート状接着剤からなる接着剤層を有する、電子デバイス封止用接着フィルム。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
(C)変性ポリオレフィン樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上のバインダー樹脂
【請求項7】
前記電子デバイス封止用接着フィルムは、機能性フィルムが貼り合わされていない側の前記接着剤層の表面に剥離フィルムを有し、以下の条件(ii)で測定されるソーダガラス板に対する粘着力が3N/25mm以上である、請求項6に記載の電子デバイス封止用接着フィルム。
(ii)前記電子デバイス封止用接着フィルムに前記剥離フィルムを貼り合わせた状態で、前記剥離フィルム側から、波長365nmの紫外線を、照度:50mW/cm、光量:200mJ/cmの条件で照射し、その3分後に、前記電子デバイス封止用接着フィルムから前記剥離フィルムを剥離し、露出した接着剤層をソーダガラス板に対向させ、前記電子デバイス封止用接着フィルム上で2kgのロールを一往復させることによりソーダガラス板に貼付して、23℃で50%相対湿度の環境下に24時間保管された後に180°引き剥がし試験を実施する。
【請求項8】
前記(A)成分の環状エーテル当量が、115g/eq以上300g/eq以下であり、
前記(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項6に記載の電子デバイス封止用接着フィルム。
【請求項9】
(α1)請求項6~8のいずれかに記載の電子デバイス封止用接着フィルムに対し、機能性フィルムよりも接着剤層に近い表面側から紫外線を照射する工程と、
(β1)上記接着フィルムを電子デバイスに貼付する工程とを有し、
(β1)工程よりも前に(α1)工程を行う電子デバイスの封止体の製造方法。
【請求項10】
(α2)下記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含み、(A)成分の含有量が、シート状接着剤全体に対し、固形分として、20~80質量%であるシート状接着剤に紫外線を照射する工程と、
(β2)前記シート状接着剤を、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム又は電子デバイスに貼付する工程と
(γ2a)前記(β2)工程において得られた、シート状接着剤と前記機能性フィルムを有する積層体のシート状接着剤を電子デバイスと貼合する工程、又は、(γ2b)前記(β2)工程において得られた、シート状接着剤と電子デバイスを有する積層体のシート状接着剤を波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルムと貼合する工程、と
を有し、
(β2)工程よりも前に(α2)工程を行う電子デバイスの封止体の製造方法。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
(C)変性ポリオレフィン樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上のバインダー樹脂
【請求項11】
前記(A)成分の環状エーテル当量が、115g/eq以上300g/eq以下であり、
前記シート状接着剤に含まれる(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項10に記載の電子デバイスの封止体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス及び紫外線非透過性の機能性フィルムと電子デバイスの間を封止する接着剤硬化物層を備える電子デバイス封止体、前記接着剤硬化物層の形成に用いられるシート状接着剤、前記機能性フィルムとシート状接着剤とからなる接着剤層を有する電子デバイス封止用接着フィルム、及び電子デバイス封止体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子等の電子デバイスを封止する封止接着剤として、熱硬化性の接着剤が存在する。しかしながら、熱硬化性の接着剤には、デバイスを封止した後に硬化させると熱によるデバイスへのダメージが懸念される。その一方で、電子デバイスに貼り合せる前に硬化させたものでは、初期の感圧接着性が消失してしまうという問題がある。
一方、紫外線等の活性エネルギー線硬化性の接着剤であれば、電子デバイスに貼り合わせた後に硬化させる場合であっても、有機EL素子等の電子デバイスへのダメージは小さい。
【0003】
特許文献1には、環状エーテル基を有する化合物及び光カチオン重合開始剤を含む電子デバイスの封止用接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-534309号公報(国際公開2013/057265号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、「感圧接着剤は、電子的装置への適用後に初めて部分的または最終的に架橋されるのが好ましい」と記載されている〔段落(0066)〕。そして、このような架橋のためのカチオンUV硬化は、例えば、PETライナーやガラスといった紫外線が透過する材料に封止用接着剤が担持された状態で行われることを前提としたものであった。
本発明は、封止用接着剤が貼り合わされる部材が紫外線非透過性の機能性フィルムであることを前提とし、前記機能性フィルムと電子デバイスの間を封止する接着剤硬化物層を備える電子デバイス封止体、前記接着剤硬化物層の形成材料であるシート状接着剤、前記機能性フィルムとシート状接着剤とからなる接着剤層を有する電子デバイス封止用接着フィルム、並びに、電子デバイス封止体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
環状エーテル基を有する化合物及び光カチオン重合開始剤を含有する接着剤は、紫外線が照射された後であっても接着剤表面の粘着性が残存する。そのため、このような接着剤からなるシート状接着剤は紫外線を照射した後であっても、電子デバイスに貼付することができる。そして、このようなシート状接着剤は、紫外線の照射後経時により接着剤層が硬化し、最終的に、(紫外線非透過性の機能性フィルム)/(接着剤硬化物層)/(電子デバイス)の層構造を有する、耐久性に優れた電子デバイス封止体を効率よく得ることができる。
【0007】
かくして本発明によれば、下記〔1〕~〔4〕の電子デバイス封止体、〔5〕のシート状接着剤、〔6〕、(7〕の電子デバイス封止用接着フィルム、〔8〕、〔9〕の電子デバイス封止体の製造方法が提供される。
【0008】
〔1〕波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム、電子デバイス、及び、前記機能性フィルムと電子デバイスの間を封止する接着剤硬化物層を備え、前記接着剤硬化物層は、下記(A)成分及び(B)成分を含むシート状接着剤の硬化物である、電子デバイスの封止体。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
〔2〕下記(A)成分及び(B)成分を含むシート状接着剤であって、請求項1に記載の電子デバイスの封止体の製造に用いられるものである、シート状接着剤。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
〔3〕前記シート状接着剤は、少なくとも一方の面に剥離フィルムを有し、以下の条件(i)で測定されるソーダガラス板に対する粘着力が3N/25mm以上である、〔2〕に記載のシート状接着剤。
(i)前記シート状接着剤の前記剥離フィルムが貼り合わされているのとは逆側の面に、アルミニウムを蒸着した厚さ23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと貼り合わせた積層体を作製し、前記剥離フィルムを貼り合わせた状態で、前記剥離フィルム側から、波長365nmの紫外線を、照度:50mW/cm、光量:200mJ/cmの条件で前記積層体に照射し、その3分後に、前記積層体から前記剥離フィルムを剥離し、露出したシート状接着剤の層をソーダガラス板に対向させ、前記積層体上で2kgのロールを一往復させることによりガラスに貼付して、23℃で50%相対湿度の環境下に24時間保管された後に180°引き剥がし試験を実施する。
〔4〕さらに、変性ポリオレフィン樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上を含む、〔2〕又は〔3〕に記載のシート状接着剤。
【0009】
〔5〕波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルムと、下記(A)成分及び(B)成分を含むシート状接着剤からなる接着剤層を有する、電子デバイス封止用接着フィルム。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
〔6〕前記電子デバイス封止用接着フィルムは、機能性フィルムが貼り合わされていない側の前記接着剤層の表面に剥離フィルムを有し、以下の条件(ii)で測定されるソーダガラス板に対する粘着力が3N/25mm以上である、〔5〕に記載の電子デバイス封止用接着フィルム。
(ii)前記電子デバイス封止用接着フィルムに前記剥離フィルムを貼り合わせた状態で、前記剥離フィルム側から、波長365nmの紫外線を、照度:50mW/cm、光量:200mJ/cmの条件で照射し、その3分後に、前記電子デバイス封止用接着剤接着フィルムから前記剥離フィルムを剥離し、露出した接着剤層をソーダガラス板に対向させ、前記電子デバイス封止用接着フィルム上で2kgのロールを一往復させることによりソーダガラス板に貼付して、23℃で50%相対湿度の環境下に24時間保管された後に180°引き剥がし試験を実施する。
〔7〕さらに、シート状接着剤が、変性ポリオレフィン樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群から選ばれる一種以上を含む、〔5〕又は〔6〕に記載の電子デバイス封止用接着フィルム。
〔8〕(α1)上記〔5〕~〔7〕のいずれかの接電子デバイス封止用着性フィルムに対し、機能性フィルムよりも接着剤層に近い表面側から紫外線を照射する工程と、
(β1)前記接着性フィルムを電子デバイスに貼付する工程とを有し、
(β1)工程よりも前に(α1)工程を行う電子デバイスの封止体の製造方法。
〔9〕(α2)下記(A)成分及び(B)成分を含むシート状接着剤に紫外線を照射する工程と、
(β2)前記シート状接着剤を、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム又は電子デバイスに貼付する工程とを有し、
(β2)工程よりも前に(α2)工程を行う電子デバイスの封止体の製造方法。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線を照射した後においても、紫外線非透過性の機能性フィルムや被着体である電子デバイスに強く接着し、貼付時、あるいは貼付後の剥離を生じることがなく、また、経時的に接着剤層が硬化し、最終的に耐久性に優れたデバイスの封止体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の電子デバイス封止体の一例を示す図である。
図2】本発明の電子デバイス封止体の製造方法の概略工程図である。
図3】本発明の電子デバイス封止体の製造方法の概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、2)電子デバイス封止体、2)シート状接着剤、3)電子デバイス封止用接着フィルム、及び、4)電子デバイス封止体の製造方法、に項分けして詳細に説明する。
【0013】
1)電子デバイス封止体
本発明の電子デバイス封止体は、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム、電子デバイス及び機能性フィルムと電子デバイスの間を封止する接着剤硬化物層を備え、前記接着剤硬化物層は、下記(A)成分及び(B)成分を含むシート状接着剤(以下、「本発明のシート状接着剤」ということがある。)の硬化物であることを特徴とする。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
【0014】
本発明の電子デバイス封止体の層構成例を図1に示す。図1に示す電子デバイス封止体10は、電子デバイス3の表面を覆うように、電子デバイス3と硬化接着剤層2とが対向するように積層され、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム1が、最表面に配置された層構造を有する。
【0015】
本発明の電子デバイス封止体において、被封止物である電子デバイスとしては、例えば、有機ELディスプレイ、有機EL照明等の有機EL素子;液晶ディスプレイ等の液晶素子;電子ペーパー;有機薄膜太陽電池等の太陽電池素子;発光ダイオード等が挙げられる。
【0016】
〔機能性フィルム〕
本発明の電子デバイス封止体を構成する機能性フィルム1は、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下のフィルムである。機能性フィルムの波長365nmの紫外線の透過率は、本発明の効果がより顕著に得られる観点から、55%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
【0017】
機能性フィルムの波長365nmの紫外線の透過率は実施例に記載された方法により測定することができる。
【0018】
本発明に用いる機能性フィルム1は、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下であって、何らかの機能を有するフィルムであれば特に限定されない。例えば、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下の、導電層、ガスバリアフィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。これらのうち、例えば、ガスバリアフィルムとしては、金属や無機化合物の膜を有するフィルム等が挙げられ、金属の膜を有するフィルムが好ましい。用いられる金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅等が挙げられ、これらの中でも、アルミニウムが好ましい。
本発明に用いる機能性フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常、5~200μm、好ましくは10~100μmである。
【0019】
波長365nmの紫外線の透過率が60%以下の機能性フィルムを有する場合には、シート状接着剤を電子デバイスに貼り合わせた後に、機能性フィルム側から紫外線を照射しても、紫外線がシート状接着剤に到達する量が少なく、シート状接着剤を硬化させることができない。
後述するように、本発明のシート状接着剤は、光カチオン重合反応により硬化するものである。光カチオン重合反応は、ラジカル重合反応等に比較して、反応速度が相対的に遅い。従って、シート状接着剤に紫外線を照射した後であっても、硬化反応が進行の途中である間は、シート状接着剤は十分な接着性を有しているので、被着体である電子デバイスに強く接着し、貼付時、あるいは貼付後の剥離を生じることを防止することができる。また、経時的に接着剤層が硬化し、最終的に耐久性に優れた電子デバイスの封止体を得ることができる。
【0020】
〔接着剤硬化物層〕
本発明の電子デバイス封止体の接着剤硬化物層2は、本発明のシート状接着剤の硬化物からなるものであり、電子デバイスを封止する封止し、電子デバイスと機能性フィルムを接着する役割を果たす。
【0021】
〔シート状接着剤)
本発明のシート状接着剤は、接着性を有するシート状物であって、下記(A)成分及び(B)成分を含むものである。
(A)環状エーテル基を有する化合物
(B)光カチオン重合開始剤
【0022】
シート状接着剤とは、常温(25℃程度)では非流動性を示すシート状に成形された接着剤を言う。本発明において、シート状接着剤は、短冊状のものであっても、長尺状(帯状)のものであってもよい。
【0023】
〔(A)成分:環状エーテル基を有する化合物〕
本発明のシート状接着剤は、(A)成分として、環状エーテル基を有する化合物を含有する。
環状エーテル基を有する化合物を使用することにより、シート状接着剤の硬化性及び水蒸気遮断性に優れるシート状接着剤の硬化物を得ることができる。
【0024】
環状エーテル基としては、オキシラン基(エポキシ基)、オキセタン基(オキセタニル基)、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
環状エーテル基を有する化合物とは、分子内に少なくとも1個以上の環状エーテル基を有する化合物をいう。なかでも、接着強度により優れた接着剤の硬化物を得ることができるという観点から、オキシラン基又はオキセタン基を有する化合物であることが好ましく、分子内に2個以上のオキシラン基又はオキセタン基を有する化合物が特に好ましい。
【0025】
分子内にオキシラン基を有する化合物としては、例えば、脂肪族エポキシ化合物(脂環式エポキシ化合物を除く)、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル化物、アルキルカルボン酸のグリシジルエステル等の単官能エポキシ化合物;
脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル化物、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、トリアジン骨格を有するエポキシ化合物等の多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0026】
これらの脂肪族エポキシ化合物の代表的な化合物としては、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12~13混合アルキルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種、又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル化物、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル;
脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルや高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン;
2,4,6-トリ(グリシジルオキシ)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0027】
また、脂肪族エポキシ化合物として、市販品を用いることもできる。市販品としては、デナコールEX-121、デナコールEX-171、デナコールEX-192、デナコールEX-211、デナコールEX-212、デナコールEX-313、デナコールEX-314、デナコールEX-321、デナコールEX-411、デナコールEX-421、デナコールEX-512、デナコールEX-521、デナコールEX-611、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-810、デナコールEX-811、デナコールEX-850、デナコールEX-851、デナコールEX-821、デナコールEX-830、デナコールEX-832、デナコールEX-841、デナコールEX-861、デナコールEX-911、デナコールEX-941、デナコールEX-920、デナコールEX-931(以上、ナガセケムテックス社製);
エポライトM-1230、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF(以上、共栄社化学社製);
アデカグリシロールED-503、アデカグリシロールED-503G、アデカグリシロールED-506、アデカグリシロールED-523T、アデカレジンEP-4088S、アデカレジンEP-4088L、アデカレジンEP-4080E(以上、ADEKA社製);
TEPIC-FL、TEPIC-PAS、TEPIC-UC(以上、日産化学社製)等が挙げられる。
【0028】
芳香族エポキシ化合物としては、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール等の、芳香族環を少なくとも1個以上有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のモノ/ポリグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
これらの芳香族エポキシ化合物の代表的な化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらにさらにアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物やエポキシノボラック樹脂;
レゾルシノールやハイドロキノン、カテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のモノ/ポリグリシジルエーテル化物;
フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のグリシジルエーテル化物;
フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のグリシジルエステル、安息香酸のグリシジルエステル、スチレンオキサイド又はジビニルベンゼンのエポキシ化物等が挙げられる。
【0029】
また、芳香族エポキシ化合物として、市販品を用いることもできる。市販品としては、デナコールEX-146、デナコールEX-147、デナコールEX-201、デナコールEX-203、デナコールEX-711、デナコールEX-721、オンコートEX-1020、オンコートEX-1030、オンコートEX-1040、オンコートEX-1050、オンコートEX-1051、オンコートEX-1010、オンコートEX-1011、オンコート1012(以上、ナガセケムテックス社製);
オグソールPG-100、オグソールEG-200、オグソールEG-210、オグソールEG-250(以上、大阪ガスケミカル社製);
HP4032、HP4032D、HP4700(以上、DIC社製);
ESN-475V(以上、新日鉄住金化学社製);
JER(旧エピコート)YX8800(三菱化学社製);
マープルーフG-0105SA、マープルーフG-0130SP(以上、日油(株)社製);
エピクロンN-665、エピクロンHP-7200(以上、DIC社製);
EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、XD-1000、NC-3000、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、NC-7000L(以上、日本化薬社製);
アデカレジンEP-4000、アデカレジンEP-4005、アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP-4901(以上、ADEKA社製);
TECHMORE VG-3101L(以上、プリンテック社製)等が挙げられる。
【0030】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個以上の脂環式構造を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化物、又はシクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物等のシクロアルケンオキサイド化合物が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物の代表的な化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、プロパン-2,2-ジイル-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-エポキシエチルシクロヘキサン、α-ピネンオキシド、リモネンジオキシド等が挙げられる。
【0031】
また、脂環式エポキシ化合物として、市販品を用いることができる。市販品としては、YX8000(三菱ケミカル社製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド3000(ダイセル社製)等が挙げられる。
【0032】
分子内にオキセタン基を有する化合物としては、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン等の二官能脂肪族オキセタン化合物、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン等の一官能オキセタン化合物等が挙げられる。
【0033】
分子内にオキセタン基を有する化合物としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(以上、丸善石油化学社製);
アロンオキセタンOXT-121、OXT-221、EXOH、POX、OXA、OXT-101、OXT-211、OXT-212(以上、東亞合成社製);
エタナコールOXBP、OXTP(以上、宇部興産社製)等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、シート加工性(造膜性)により優れた接着剤、及び接着強度により優れた接着剤の硬化物を得ることができるという観点から、25℃で液状である化合物が好ましい。また、環状エーテル基がオキシラン基であるものが好ましい。環状エーテル基がオキシラン基である化合物(エポキシ化合物)の中でも、接着剤の硬化物の特性を調整し、着色を防ぐ観点から脂環式エポキシ化合物が好ましく、光カチオン重合の反応性の向上の観点からは、シクロアルケンオキサイド化合物が好ましい。
【0035】
また、多官能エポキシ化合物、二官能脂肪族オキセタン化合物のような、分子内に2つ以上の環状エーテル基を有する化合物が、シート状接着剤の硬化性を向上させる観点から好ましい。
【0036】
環状エーテル基を有する化合物の分子量は、通常、100~5,000、好ましくは200~4,000である。
環状エーテル基を有する化合物の環状エーテル当量は、好ましくは100g/eq以上500g/eq以下、より好ましくは115g/eq以上300g/eq以下である。
シート状接着剤に含まれる環状エーテル基を有する化合物の環状エーテル当量が上記範囲にあることで、接着強度が強く硬化性に優れる封止材を効率よく得ることができる。
これらの環状エーテル基を有する化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における環状エーテル当量とは、分子量を環状エーテル基数で除した値を意味する。
【0037】
本発明のシート状接着剤が後述するバインダー樹脂を含有する場合、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは20~180質量部、より好ましくは40~140質量部である。
環状エーテル基を有する化合物の含有量を上記範囲とすることで、接着強度により優れる接着剤層の硬化物が得られやすくなる。
【0038】
本発明のシート状接着剤中の前記(A)成分の含有量は、接着剤全体に対し、固形分(不揮発分であり、液状のものを含む。以下同じ。)として、20~80質量%が好ましく、25~70質量%がより好ましく、30~65質量%が特に好ましい。
本発明のシート状接着剤の前記(A)成分の含有量が、上記範囲にあることにより、紫外線照射後のシート状接着剤の粘着力を調整することが容易となる。
【0039】
〔(B)成分:光カチオン重合開始剤〕
本発明のシート状接着剤は、(B)成分として、光カチオン重合開始剤を含有する。これにより、紫外線照射後のシート状接着剤の粘着力を調整することが容易となる。
光カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線が照射されることによってカチオン種を発生して、カチオン硬化性化合物の硬化反応を開始させる化合物であり、活性エネルギー線を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0040】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、アンチモン酸塩系化合物、ジアゾニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられる。これらの中でも、(A)成分との相溶性に優れ、得られる接着剤の保存安定性に優れるという観点から、スルホニウム塩系化合物が好ましく、芳香族基を有する芳香族スルホニウム塩系化合物がより好ましい。
【0041】
スルホニウム塩系化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’-ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’-ビス[ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7-[ジ(p-トルイル)スルホニオ]-2-イソプロピルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロホスフェート、フェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロホスフェート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-ヘキサフルオロアンチモネート、4-tert-ブチルフェニルカルボニル-4’-ジフェニルスルホニオ-ジフェニルスルフィド-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-{4-(2-クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートのハロゲン化物、4,4’,4’’-トリ(β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4’-ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド-ビスヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、トリス[4-(4-アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド等が挙げられる。
【0042】
ヨードニウム塩系化合物としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0043】
ホスホニウム塩系化合物としては、トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等が挙げられる。
【0044】
アンモニウム塩系化合物としては、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0045】
アンチモン酸塩系化合物としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート及びジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0046】
これらの光カチオン重合開始剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
また、光カチオン重合開始剤として、市販品を用いることができる。市販品としては、サイラキュアUVI-6970、サイラキュアUVI-6974、サイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-950(以上、ユニオンカーバイド社製)、イルガキュア250、イルガキュア261、イルガキュア264(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、SP-150、SP-151、SP-170、オプトマーSP-171(以上、ADEKA社製)、CG-24-61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、DAICAT II(ダイセル社製)、UVAC1590、UVAC1591(以上、ダイセル・サイテック社製)、CI-2064、CI-2639、CI-2624、CI-2481、CI-2734、CI-2855、CI-2823、CI-2758、CIT-1682(以上、日本曹達社製)、PI-2074(ローディア社製)、FFC509(3M社製)、BBI-102、BBI-101、BBI-103、MPI-103、TPS-103、MDS-103、DTS-103、NAT-103、NDS-103(以上、ミドリ化学社製)、CD-1010、CD-1011、CD-1012(Sartomer社製)、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-310B(以上、サンアプロ社製)等が挙げられる。
【0048】
光カチオン重合開始剤の含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、通常、0.1~10質量部、好ましくは0.3~8質量部、より好ましくは0.5~4.5質量部である。
光カチオン重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、紫外線照射後のシート状接着剤の粘着力を調整することが容易となる。
【0049】
本発明のシート状接着剤は、前記(A)成分、(B)成分以外の成分を含有してもよい。前記(A)成分、(B)成分以外の成分としては、バインダー樹脂、粘着付与剤、及びシランカップリング剤及等が挙げられる。
【0050】
〔バインダー樹脂〕
本発明のシート状接着剤がバインダー樹脂を含有する場合には、シート状接着剤を形成するための組成物に優れたシート加工性(造膜性)を付与し、所望の厚みのシート状接着剤を効率よく形成することができる。
【0051】
バインダー樹脂としては、(A)成分との相溶性に優れる観点から、変性ポリオレフィン系樹脂及びフェノキシ樹脂から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
変性ポリオレフィン系樹脂を用いる場合には、主剤であるポリオレフィンが硬化構造に取り込まれつつ、低い透湿性を維持することが可能となる。また、フェノキシ樹脂を用いる場合には、シート状接着剤の硬化物の弾性率を高く保つことが可能となり、電子デバイス封止体の高温環境下での信頼性が向上するという理由から好ましい。
【0052】
本発明のシート状接着剤が、バインダー樹脂を含有する場合、その含有量は、シート状接着剤全体に対し、30~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。
バインダー樹脂をこのような範囲で含有させることにより、シート状接着剤を形成するための組成物に優れたシート加工性(造膜性)を付与し、所望の厚みのシート状接着剤を効率よく形成することができる。
【0053】
(変性ポリオレフィン系樹脂)
変性ポリオレフィン系樹脂は、前駆体としてのポリオレフィン樹脂に、変性剤を用いて変性処理を施して得られる、官能基が導入されたポリオレフィン樹脂である。
【0054】
ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位を含む重合体をいう。ポリオレフィン樹脂は、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位の1種又は2種以上のみからなる重合体であってもよいし、オレフィン系単量体由来の繰り返し単位と、オレフィン系単量体と共重合可能な他の単量体由来の繰り返し単位とからなる重合体であってもよい。
【0055】
オレフィン系単量体としては、炭素数2~8のα-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、又は1-ヘキセンがより好ましく、エチレン又はプロピレンがさらに好ましい。
オレフィン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を表す(以下にて同じである)。
【0056】
ポリオレフィン樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0057】
ポリオレフィン樹脂の変性処理に用いる変性剤は、分子内に、官能基を有する化合物である。
官能基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、アルコキシシリル基、シラノール基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アルコキシシリル基が好ましく、カルボン酸無水物基、アルコキシシリル基がより好ましく、カルボン酸無水物基が特に好ましい。
官能基を有する化合物は、分子内に2種以上の官能基を有していてもよい。
【0058】
変性ポリオレフィン系樹脂としては、酸変性ポリオレフィン系樹脂、シラン変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、本発明のより優れた効果が得られる観点から、酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0059】
酸変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して、酸又は酸無水物でグラフト変性したものをいう。例えば、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物を反応させて、カルボキシル基又は酸無水物基を導入(グラフト変性)したものが挙げられる。
【0060】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、アコニット酸等が挙げられる、不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、シート加工性(造膜性)により優れた接着剤、及び接着強度により優れたシート状接着剤の硬化物が得られ易いことから、無水マレイン酸が好ましい。
【0061】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部、さらに好ましくは0.2~1質量部である。このようにして得られた酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有するシート状接着剤は、接着強度により優れた硬化物が得られ易くなる。
【0062】
酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、アドマー(登録商標)(三井化学社製)、ユニストール(登録商標)(三井化学社製)、BondyRam(Polyram社製)、orevac(登録商標)(ARKEMA社製)、モディック(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0063】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン樹脂に対して不飽和シラン化合物でグラフト変性したものをいう。シラン変性ポリオレフィン系樹脂は、主鎖であるポリオレフィン樹脂に側鎖である不飽和シラン化合物がグラフト共重合した構造を有する。例えば、シラン変性ポリエチレン樹脂およびシラン変性エチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられ、シラン変性低密度ポリエチレン、シラン変性超低密度ポリエチレン、シラン変性直鎖状低密度ポリエチレン等のシラン変性ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0064】
上記ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物としては、ビニルシラン化合物が好ましい。ビニルシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシラン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、不飽和シラン化合物を主鎖であるポリオレフィン樹脂にグラフト重合させる場合の条件は、公知のグラフト重合の常法を採用すればよい。
【0065】
ポリオレフィン樹脂に反応させる不飽和シラン化合物の量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.3~7質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。シラン変性ポリオレフィン系樹脂を含有するシート状接着剤は、接着強度により優れた硬化物が得られ易くなる。
【0066】
シラン変性ポリオレフィン系樹脂としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、リンクロン(登録商標)(三菱化学社製)等が挙げられる。これらの中でも、低密度ポリエチレン系のリンクロン、直鎖状低密度ポリエチレン系のリンクロン、超低密度ポリエチレン系のリンクロン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体系のリンクロンを好ましく使用することができる。
【0067】
変性ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000~300,000、より好ましくは、20,000~150,000である。
変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲にあることで、シート状接着剤を形成するための組成物に優れた造膜性を付与しつつ、その特性を調整し易い。
変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0069】
(フェノキシ樹脂)
フェノキシ樹脂は、主鎖が芳香族ジオールと芳香族ジグリシジルエーテルとの重付加構造である高分子である。
フェノキシ樹脂としては、主鎖骨格の種類によって、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA-ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールE型フェノキシ樹脂等が挙げられる。
フェノキシ樹脂は、ビスフェノール又はビフェノール化合物とエピクロルヒドリンのようなエピハロヒドリンとの反応や、ビスフェノール又はビフェノール化合物と液状エポキシ樹脂との反応により得ることができる。
【0070】
フェノキシ樹脂としては、市販品を用いることができる。市販品としては、商品名:PKHC、PKHH,PKHJ(いずれも巴化学社製)、商品名:エピコート4250、エピコート1255HX30、エピコート5580BPX40(いずれも日本化薬社製)、商品名:YP-50、YP50S、YP-55、YP-70(いずれも東都化成社製)、商品名:JER 1256、4250、YX6954BH30、YX7200B35、YL7290BH30(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0071】
フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000~200,000、好ましくは20,000~100,000、より好ましくは30,000~80,000である。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が小さすぎると、シート状接着剤の支持性が弱くなり、脆弱性が強くなる傾向にあり、大きすぎると、溶融粘度が高くなり、取り扱い性に劣るものとなり易い。
なお、本明細書においては、フェノキシ樹脂がエポキシ基を有するものである場合、重量平均分子量(Mw)が10,000以下のものを、前記(A)成分:環状エーテル基を有する化合物とし、重量平均分子量(Mw)が10,000超のものを、フェノキシ樹脂とする。
フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行い、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0072】
〔粘着付与剤〕
本発明のシート状接着剤は、前記(A)成分及び(B)成分、並びに、所望によりバインダー樹脂に加えて、粘着付与剤を含有していてもよい。粘着付与剤を含有することで、シート状接着剤の貯蔵弾性率を調整しやすくなる。
【0073】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のロジン系樹脂;これらロジン系樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂;
テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂;これらテルペン系樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂;
α-メチルスチレン単一重合系樹脂、α-メチルスチレン/スチレン共重合系樹脂、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂、スチレン系モノマー/α-メチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合系樹脂、スチレン系モノマー単一重合系樹脂、スチレン系モノマー/芳香族系モノマー共重合系樹脂等のスチレン系樹脂;これらスチレン系樹脂を水素化した水素化スチレン系樹脂;
石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂及びこのC5系石油樹脂の水素化石油樹脂;
石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂及びこのC9系石油樹脂を水素化石油樹脂;等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂が好ましく、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合系樹脂がより好ましい。
これらの粘着付与剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
粘着付与剤は、市販品を用いることができる。市販品としては、YSレジンP、Aシリーズ、クリアロン(登録商標)Pシリーズ(ヤスハラケミカル製)、ピコライトA、Cシリーズ(PINOVA社製)等のテルペン系樹脂;
クイントン(登録商標)A、B、R、CXシリーズ(日本ゼオン社製)等の脂肪族系石油樹脂;
FTR(登録商標)シリーズ(三井化学社製)等のスチレン系樹脂;
アルコンP、Mシリーズ(荒川化学社製)、ESCOREZ(登録商標)シリーズ(エクソンモービル・ケミカル社製)、EASTOTAC(登録商標)シリーズ(イーストマン・ケミカル社製)、IMARV(登録商標)シリーズ(出光興産社製)等の脂環族系石油樹脂;
フォーラルシリーズ(PINOVA社製)、ペンセル(登録商標)Aシリーズ、エステルガム、スーパー・エステル、パインクリスタル(登録商標)(荒川化学工業社製)等のエステル系樹脂;等が挙げられる。
【0075】
粘着付与剤の重量平均分子量(Mw)は、優れた粘着性を付与する観点から、好ましくは、100~10,000、より好ましくは500~5,000である。
粘着付与剤の軟化点は、優れた粘着性を付与する観点から、好ましくは、50~160℃、より好ましくは60~140℃、さらに好ましくは70~130℃である。
【0076】
本発明のシート状接着剤が粘着付与剤を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~200質量部、より好ましくは10~150質量部である。
【0077】
〔シランカップリング剤〕
本発明のシート状接着剤は、前記(A)成分及び(B)成分、並びに、所望により、バインダー樹脂、粘着付与剤に加えてシランカップリング剤を含有していてもよい。
シランカップリング剤を含有させることにより、接着強度により優れるシート状接着剤の硬化物が得られやすくなる。
シランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン等のビニル基を有するシランカップリング剤;
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;
p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基を有するシランカップリング剤;
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル・ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノ基を有するシランカップリング剤;
3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するシランカップリング剤;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のハロゲン原子を有するシランカップリング剤;
3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;
ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するシランカップリング剤;
3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシランカップリング剤;
アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン等のアリル基を有するシランカップリング剤;
3-ヒドキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドキシプロピルトリエトキシシラン等の水酸基を有するシランカップリング剤;等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
本発明のシート状接着剤がシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.02~3質量部である。
シランカップリング剤の含有量を上記範囲とすることで、接着強度により優れるシート状接着剤の硬化物がより得られやすくなる。
【0079】
また、本発明のシート状接着剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、前記粘着付与剤及びシランカップリング剤以外の成分をさらに含有してもよい。
前記前記粘着付与剤、シランカップリング剤以外の成分としては、帯電防止剤、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、着色顔料等が挙げられる。これらの含有量は、目的に合わせて適宜決定すればよい。
【0080】
本発明のシート状接着剤は、後述するように、所定の成分を、常法に従って適宜混合し、攪拌することにより調製した接着剤組成物を用いて形成することができる。
【0081】
(シート状接着剤)
本発明のシート状接着剤は、外部環境からの保護の観点から、少なくとも一方の面に剥離フィルムを有することが好ましく、両面に剥離フィルムを有していてもよい。
【0082】
なお、少なくとも一方の面に剥離フィルムを有する本発明のシート状接着剤は使用前の状態を表したものであり、本発明のシート状接着剤を使用する際は、通常、剥離フィルムは剥離除去される。シート状接着剤が両面に剥離フィルムを有する場合、通常、剥離力の低い剥離フィルムが先に剥離除去される。
【0083】
剥離フィルムとしては、通常、樹脂フィルムを利用することができる。
樹脂フィルムの樹脂成分としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂が好ましく、樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、耐熱性や扱いやすさに優れ、紫外線の透過性が波長365nmにおいて80%程度と高い、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
剥離剤としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離フィルムの厚みは、耐熱性を向上させる観点や、紫外線を剥離フィルムを透過させてシート状接着剤に照射する場合に、妨げとならないようにする観点から、好ましくは10~300μm、より好ましくは10~200μm、さらに好ましくは15~100μmである。本発明のシート状接着剤に、剥離フィルムを透過させて波長365nmの紫外線を照射して、光カチオン重合を開始させることを容易とする観点から、剥離フィルムの波長365nmの紫外線の透過率は、65%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましい。なお、剥離フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とする場合、紫外線の波長が330nm未満であると、透過性が著しく低下する。
【0084】
シート状接着剤の厚みは、通常、1~50μmであり、好ましくは5~30μmである。厚みが上記範囲内にあるシート状接着剤は、シート状封止材として好適に用いられる。
シート状接着剤の厚みは、公知の厚み計を用いて、JIS K 7130(1999)に準じて測定することができる。なお、シート状接着剤の厚みは、剥離フィルムの厚みを除いた厚みである。
【0085】
本発明のシート状接着剤は紫外線が照射された後であっても、粘着力を有し、電子デバイスや機能性フィルムに強く接着し、貼付時、あるいは貼付後の剥離が生じることがないものである。従って、電子デバイス封止体、特に、表面に紫外線非透過性の機能性フィルムを有する電子デバイス封止体の封止材料として好適に用いることができる。
【0086】
本発明のシート状接着剤が少なくとも一方の面に剥離フィルムを有する場合は、その逆側の面に、アルミニウムを蒸着した厚さ23μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと貼り合わせて積層体を作製し、剥離フィルムを貼り合わせた状態で、剥離フィルム側から、波長365nmの紫外線を、照度:50mW/cm、光量:200mJ/cmの条件で積層体に照射し、その3分後に、積層体から剥離フィルムを剥離し、露出したシート状接着剤の層をソーダガラス板に対向させ、積層体上で2kgのロールを一往復させることによりソーダガラス板に貼付して、23℃で50%相対湿度の環境下に24時間保管された後のソーダガラス板に対する粘着力が、3N/25mm以上のものであることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましい。
ガラスに対する粘着力は、実施例に記載の方法(180°引き剥がし試験)により測定されるものである。
【0087】
(シート状接着剤の製造方法)
本発明のシート状接着剤の製造方法は、特に限定されない。例えば、キャスト法を用いて製造することができる。
【0088】
シート状接着剤をキャスト法により製造する方法は、公知の方法を用いて、接着剤組成物を剥離フィルムの剥離処理された剥離層面に塗工し、得られた塗膜を乾燥することで、剥離フィルム付シート状接着剤を得るものである。
【0089】
接着剤組成物は、前記(A)成分及び(B)成分、並びに、所望により他の成分を、公知の方法により混合し、撹拌することにより調製することができる。
接着剤組成物の調製に溶媒を用いる場合には、溶媒の使用量により、接着剤組成物の粘度を適宜調整することができる。
【0090】
溶媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶媒の含有量は、塗工性や膜厚等を考慮して適宜決定することができる。
【0091】
シート状接着剤の製造に用いる剥離フィルムは、シート状接着剤の製造工程においては支持体として機能するとともに、シート状接着剤を使用するまでの間は、上述したシート状接着剤の剥離フィルムとして機能する。
【0092】
前記接着剤組成物を塗工する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0093】
接着剤組成物の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が挙げられる。
塗膜を乾燥するときの条件としては、例えば、80~150℃で30秒から5分間である。
【0094】
〔電子デバイス封止用接着フィルム〕
本発明の電子デバイス封止用接着フィルムは、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルムと、前記(A)成分及び(B)成分を含むシート状接着剤からなる接着剤層を有するものである。
本発明の電子デバイス封止用接着フィルムは、そのシート状接着剤を介して、電子デバイスを封止するために用いられる。
「波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム」、「シート状接着剤」は、上述したものと同様のものが使用できる。本発明の電子デバイス封止用接着フィルムは、例えば、後述するように機能性フィルムとシート状接着剤を貼り合せることにより得ることができる。
【0095】
本発明の電子デバイス封止用接着フィルムは、少なくとも、前記機能性フィルムと、シート状接着剤からなる接着剤層を有するものであればよく、前記接着剤層の1層のみからなるものであっても、複数の接着剤層の積層体であっても、接着剤の他に他の層を有するものであってもよい。
他の層としては、接着剤層と機能性フィルムの界面の接着性を向上させるプライマー層、機能性フィルムの接着剤層を有しない面に設けられる機能性コート層やプロテクトフィルム、機能性フィルムの両面に形成し得る帯電防止層や応力緩和層等が挙げられる。
また、本発明の電子デバイス封止用接着フィルムに、複数の接着剤層を用いる場合、各接着剤層は、同一の組成からなるものであっても、相異なる組成からなるものであってもよい。
本発明の電子デバイス封止用接着フィルムは、機能性フィルムが貼り合わされていない側の前記接着剤層の表面に剥離フィルムを有することが好ましく、剥離フィルムとしては、上述したシート状接着剤に用いるものと同様のものが好ましい。
【0096】
本発明の電子デバイス封止用接着フィルムの厚みは、通常6~270μmである。なお、電子デバイス封止用接着フィルムの厚みは、剥離フィルム、プロテクトフィルム等の使用前に剥離除去される部材を除いた厚みである。
【0097】
本発明の電子デバイス封止用接着フィルムは、紫外線が照射された後であっても粘着力を有し、電子デバイスに強く接着し、貼付時、あるいは貼付後の剥離が生じることがないものであり、表面に紫外線非透過性の機能性フィルムを有する電子デバイス封止体の封止材料として好適に用いることができる。
【0098】
本発明の電子デバイス封止用接着フィルムが、機能性フィルムが貼り合わされていない側の前記接着剤層の表面に剥離フィルムを有する場合は、デバイス封止用接着フィルムに剥離フィルムを貼り合わせた状態で、剥離フィルム側から、波長365nmの紫外線を、照度:50mW/cm、光量:200mJ/cmの条件で照射し、その3分後に、電子デバイス封止用接着フィルムから剥離フィルムを剥離し、露出した接着剤層をソーダガラス板に対向させ、デバイス封止用接着フィルム上で2kgのロールを一往復させることによりソーダガラス板に貼付して、23℃で50%相対湿度の環境下に24時間保管された後のソーダガラス板に対する粘着力が、3N/25mm以上のものであることが好ましく、5N/25mm以上であることがより好ましい。
ガラスに対する粘着力は、実施例に記載の方法(180°引き剥がし試験)により測定されるものである。
【0099】
〔電子デバイス封止体の製造方法〕
本発明の電子デバイス封止体、例えば、次のようにして製造することができる。
以下、図を参照しながら説明する。
(製造方法1)
本発明の電子デバイスは、(α1)本発明の電子デバイス封止用接着フィルムに対し、機能性フィルムよりも接着剤層に近い表面側から紫外線を照射する工程と、
(β1)上記接着性フィルムを電子デバイスに貼付する工程とを有し、
(β1)工程よりも前に(α1)工程を行うことにより製造することができる。
【0100】
より具体的には、次のように行う。
まず、図2(a)に示すように、シート状接着剤2aを用意する。
この場合、シート状接着剤2aは、表裏両面に剥離フィルムが積層された両面剥離フィルム付接着フィルムとして、保管することができる。
次いで、得られたシート状接着剤2aの一方の面側に、波長365nmの紫外線の透過率が60%以下である機能性フィルム1を積層することにより、図2(b)に示す積層体4aを得る。
なお、シート状接着剤2aが、両面剥離フィルム付接着フィルムである場合には、一方の面側の剥離フィルムを剥離して、機能性フィルム1と貼り合せる。この場合、機能性フィルム1/シート状接着剤/剥離フィルムの層構成を有する積層体が得られる。
【0101】
次いで、図2(c)に示すように、積層体4aの機能性フィルム1が積層されている面と反対側から、シート状接着剤に紫外線を照射して、シート状接着剤2aの光硬化反応を開始させる。このとき、シート状接着剤中では光硬化反応が開始しているが、光カチオン重合の反応速度は比較的緩やかであるため、硬化反応が完結しておらず、シート状接着剤は、十分な接着力を有している(図2(c)中、シート状接着剤2b)。
【0102】
なお、機能性フィルム1/シート状接着剤/剥離フィルムの層構成を有する積層体を用いる場合であって、剥離フィルムが紫外線透過性のものである場合には、シート状接着剤上の剥離フィルムを剥離することなく、剥離フィルム側から紫外線を照射することが、取り扱い性の面から好ましい。
ここで、「紫外線透過性を有する」とは、波長365nmの紫外線の65%以上、好ましくは70%以上を透過させる性質をいう(以下にて同じ)。
【0103】
紫外線源の具体例としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源が挙げられる。また、照射する紫外線の波長としては、190~380nmの波長域を使用することができる。機能性フィルム1/シート状接着剤/紫外線透過性の剥離フィルムの層構成を有する積層体の剥離フィルムを剥離することなく、剥離フィルム側から紫外線を照射する場合において、剥離フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とするものであると、紫外線の波長が330nm未満の領域において、剥離フィルムの紫外線の透過性が著しく低下してしまう。そのため、330~380nmの波長域の紫外線を照射することが好ましい。
紫外線の種類や照射量、照射時間等は、照射するシート状接着剤の構成成分や各構成成分の含有量などにより、適宜決定することができる。
照射照度は、20~1000mW/cm、光量50~1000mJ/cm程度が好ましい。
また、照射時間は、通常、0.1~1000秒、好ましくは1~500秒程度である。
【0104】
その後、図2(d)に示すように、硬化反応が完結していない状態のシート状接着剤2bと電子デバイスを貼り合せることにより、目的とする電子デバイス封止体10を得ることができる。
紫外線を照射した後、電子デバイスに貼り合せるまでの時間は、紫外線が照射されたシート状接着剤が、硬化反応が完結していない状態であって、十分な接着力を有している間であればよい。
紫外線を照射した後、電子デバイスに貼り合せるまでの時間は、特に限定されないが、通常、1分~5時間であり、5~60分であることが好ましい。
【0105】
硬化反応が完結していない状態のシート状接着剤2bは電子デバイスを貼り合わせた後においても、シート状接着剤中では光硬化反応は進行し、経時的にシート状接着剤は完全に硬化した状態(接着剤硬化物層2)となる。
このように、本発明のシート状接着剤は、紫外線が照射された後であっても、硬化反応が十分に進行していない間であれば、十分な接着性を有しているので、被着体である電子デバイスに強く接着し、貼付時、あるいは貼付後の剥離を生じることを防止することができ、また、経時的にシート状接着剤が硬化し、最終的に耐久性に優れた電子デバイス封止体を得ることができる。
【0106】
(製造方法2)
また、本発明の電子デバイス封止体は、(α2)下記(A)成分及び(B)成分を含むシート状接着剤に紫外線を照射する工程と、
(β2)前記シート状接着剤を、機能性フィルム又は電子デバイスに貼付する工程とを有し、
(β2)工程よりも前に(α2)工程を行うことにより製造することもできる。
【0107】
この方法は、具体的には次のように行う。
まず、シート状接着剤2aを用意する。シート状接着剤2aは、表裏両面に剥離フィルムが積層された両面剥離フィルム付接着フィルムとして保管することができる。
次いで、図3(a)に示すように、シート状接着剤2aに紫外線を照射して、シート状接着剤2aの光硬化反応を開始させる。この場合、紫外線を剥離フィルム越しに照射することが好ましい。
【0108】
紫外線が照射されると、シート状接着剤中では光硬化反応が開始するが、光カチオン重合の反応速度は比較的緩やかであるため、硬化反応が完結しておらず、シート状接着剤は、十分な接着力を有している。
紫外線の種類、紫外線の照射条件等は、製造方法1で述べたものと同様である。
【0109】
次いで、シート状接着剤2bの一方の面側に、機能性フィルム1又は電子デバイス3を貼り合せることにより、図3(b)に示す状態を得る。
【0110】
その後、図3(c)に示すように、硬化反応が完結していない状態のシート状接着剤2bの、機能性フィルム1又は電子デバイス3が貼り合されている面と反対側の面と、電子デバイス3又機能性フィルム1を重ね合わせることにより、目的とする電子デバイス封止体10を得ることができる。すなわち、シート状接着剤2bの一方の面側に機能性フィルム1が貼り合されている場合には、機能性フィルム1が貼り合されている面と反対側の面に電子デバイス3を貼り合せることで、電子デバイス封止体10を得ることができる。また、シート状接着剤2bの一方の面側に電子デバイス3が貼り合されている場合には、電子デバイス31が貼り合されている面と反対側の面に機能性フィルム1を貼り合せることで、電子デバイス封止体10を得ることができる。
【0111】
硬化反応が完結していないシート状接着剤2bと、機能性フィルム1又は電子デバイス3を貼り合わせた後においても、シート状接着剤の層中で光硬化反応は進行し、経時的にシート状接着剤の層は完全に硬化した状態(接着剤硬化物層2)となる。
このように、本発明のシート状接着剤は、その接着剤層に紫外線を照射した後であっても、硬化反応が十分に進行していない間であれば、接着剤層は十分な接着性を有しているので、被着体である電子デバイスに強く接着し、貼付時、あるいは貼付後の剥離を生じることを防止することができ、また、経時的に接着剤層が硬化し、最終的に耐久性に優れた電子デバイス封止体を得ることができる。
【実施例
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0113】
[機能性フィルムの波長365nmの紫外線の透過率]
機能性フィルムの波長365nmの紫外線の透過率は、紫外可視光透過率測定装置(島津製作所社製、UV-3600)を用いて測定した。
【0114】
[紫外線照射後の接着剤層の粘着力測定]
実施例および比較例で得られた、剥離フィルム付電子デバイス封止用接着フィルムから、剥離フィルムを剥がさずに、幅25mmに裁断して試料を得た。23℃、50%環境下で、剥離フィルム側から、照度50mW/cm、積算光量200mJ/cmで、波長365nmの紫外線を照射した。紫外線の照射は、アイグラフィックス社製、高圧水銀ランプを使用して行った。また、光量計は、アイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用した。
3分経過後に、剥離フィルムを剥がし、露出した接着剤層のシート状接着剤面を厚さ1.1mmのソーダガラス板に重ねて、機能性フィルムの表面上で2kgロールを一往復させて圧着させた。電子デバイス封止用接着フィルムをソーダガラス板に圧着させてから24時間、温度23℃、相対湿度50%の条件下に静置し、その後300mm/分の剥離速度で180°引き剥がし試験を行い、粘着力を測定した。
【0115】
以下の実施例及び比較例においては、環状エーテル基を有する化合物〔(A)成分〕、光カチオン重合開始剤〔(B)成分〕、バインダー樹脂〔(C)成分〕、粘着付与剤、及びシランカップリング剤として、以下のものを用いた。
【0116】
<環状エーテル基を有する化合物〔(A)成分〕>
(1)環状エーテル基を有する化合物(A-1)
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔三菱ケミカル社製、商品名:YX8000、環状エーテル当量:205g/eq、25℃で液状〕
(2)環状エーテル基を有する化合物(A-2)
3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔株式会社ダイセル製、商品名:セロキサイド2021P、環状エーテル当量:128~145g/eq、常温(23℃)で液状物〕
【0117】
<光カチオン重合開始剤〔(B)成分〕>
(1)光カチオン重合開始剤(B-1)
トリアリールスルホニウム塩〔サンアプロ社製、商品名:CPI-200K、アニオン:ヘキサフルオロホスフェート骨格を有するアニオン〕
(2)光カチオン重合開始剤(B-2)
トリアリールスルホニウム塩〔サンアプロ社製、商品名:CPI-100P〕
【0118】
<バインダー樹脂〔(C成分)〕
(1)バインダー樹脂(C-1)
酸変性α-オレフィン重合体〔三井化学社製、商品名:ユニストールH-200、重量平均分子量:52,000〕
(2)バインダー樹脂(C-2)
フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、商品名:YX7200B35)
【0119】
[実施例1]
環状エーテル基を有する化合物(A-1)50質量部、環状エーテル基を有する化合物(A-2)20質量部、光カチオン重合開始剤(B-1)1質量部、光カチオン重合開始剤(B-2)を1.5部、酸変性α-オレフィン重合体(A)100質量部、シランカップリング剤0.1質量部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度30%の接着剤組成物を調製した。
この接着剤組成物(1)を、シリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである剥離フィルム(リンテック社製、商品名:SP-PET752150、厚さ75μm)の剥離処理面上に塗工し、得られた塗膜を100℃で2分間乾燥し、厚みが30μmの接着剤層を形成した。
その接着剤層の上に、機能性フィルムとして、金属アルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱伸銅社製、商品名:メタライズドフィルム、厚さ23μm)を、金属アルミニウムが蒸着されていない面側にして貼り合わせ、剥離フィルムを有する状態で電子デバイス封止用接着フィルムを得た。この機能性フィルムの波長365nmにおける透過率は0%であった。また、紫外線照射後の粘着力は12N/25mmであった。
【0120】
[実施例2]
光カチオン重合開始剤(B-1)を使用せず、光カチオン重合開始剤(B-2)の配合量を3.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子デバイス封止用接着フィルムを得た。紫外線照射後の粘着力は4N/25mmであった。
【0121】
[実施例3]
光カチオン重合開始剤(B-1)を使用せず、光カチオン重合開始剤(B-2)の配合量を3.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子デバイス封止用接着フィルムを得た。紫外線照射後の粘着力は1N/25mmであった。
【0122】
[実施例4]
実施例1で使用した接着剤組成物の原材料(固形分)に代えて、環状エーテル基を有する化合物(A-2)120質量部、(2)光カチオン重合開始剤(B-2)2.5質量部、バインダー樹脂(C-2)100質量部、シランカップリング剤(信越化学工業社性、商品名:KBM6803)を、0.2質量部を使用して接着剤組成物を調製したこと以外は実施例1と同様にして、電子デバイス封止用接着フィルムを得た。紫外線照射後の粘着力は6N/25mmであった。
【符号の説明】
【0123】
1・・・機能性フィルム
2a・・・シート状接着剤
2b・・・硬化反応が完結していないシート状接着剤
2・・・接着剤硬化物層
3・・・電子デバイス
4a・・・積層体
10・・・電子デバイス封止体
図1
図2
図3